説明

地盤改良工法

【課題】土質ないしは地盤性状に応じて攪拌混合装置に供給する改良材として粉粒体と流動物とを途中で切替えることで、当該地盤に最適な改良条件を充足できるようにした。
【解決手段】攪拌軸19及び撹拌翼20と、改良材を攪拌軸19に沿って設けられた供給管路に導入する材料供給装置とを備え、供給管路の下側吐出口より吐出される改良材と原位置土とを混合処理する地盤改良工法において、材料供給装置は、粉粒体を圧縮空気により供給可能な粉体圧送プラント1と、粉粒体と水とを混合した流動物を供給可能な流動物圧送プラント2と、供給配管の上流側に対し粉体圧送プラント1と流動物圧送プラント2とを切替手段を介し選択的に接続可能な輸送経路7とを備え、地盤深さ方向の土質性状として、含水比が高い地層Bには粉体圧送プラント1の粉粒体を含水比が低い地層Aには流動物圧送プラント2の流動物を輸送経路7の切替手段8,9を介し供給配管に圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中で改良材(セメント等の粉粒体か、セメントミルク等の流動物の何れか)を吐出し、攪拌軸の下側に設けられた攪拌翼により地盤中の原位置土と改良材とを混合処理して地盤を改良する地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤改良工法では、攪拌軸及び該攪拌軸下側に付設された撹拌翼と、攪拌軸に沿って設けられた供給管路と、地表側に設けられて前記供給管路の上流側に改良材を導入する材料供給装置とを備え、攪拌軸の地中への貫入や引き抜き過程等で、前記供給管路の下側吐出口から吐出される改良材と原位置土とを混合処理するようにしている。この工法では、事前に施工現場の土をボーリングで採取し、目標改良強度に合わせて室内配合実験を行い、安全率等を考慮し、改良材として、セメント等の粉粒体、又は、セメントミルク等の流動物にするかを決めて、吐出量ないしは地盤配合量を設定している。また、この工法では、対象地盤の土質性状が高含水比の場合は粉粒体による施工を行い、低含水比の場合は流動物による施工を行っている。前者は、粉粒体が原位置土中に含まれる水と直接水和反応して硬化を促進するものである。従来工法には、特許文献1に例示されるように、含水比が地盤深さ方向に大きく変動しているような場合、水和反応が維持されるよう含水比の低い地層に対して加水して土質性状を調整することもある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−245898合公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した地盤改良工法の施工設計では、対象地盤に対して粉粒体を用いるか、流動物を用いるかを決めて、その吐出量や配合量を算出している。ところが、土質性状は地盤深さ方向に含水比が大きく変化した互層となっていることも多いため、粉粒体だけを用いた改良、又は、流動物だけを用いた改良では次のような問題が生じている。
(a)粉粒体による改良では、含水比が低い地層に対して特許文献1のように部分的に加水処理すると施工効率が悪くなる。砂層では、貫入時にジャーミング現象が発生し、攪拌軸、攪拌翼の引抜きが困難になり易い。地盤のゆるい層では、粉粒体を圧送するための圧縮空気で周囲の地層を緩めたり、既存構造物に悪影響を与える虞がある。粘性土では流動物施工に比べて原位置土との混合性が悪く、いわゆるダマができ易い。貫入深度が深くなったり、硬質粘土層では、圧送用圧縮空気の回収、すなわち圧縮空気を地表側へ排出することが困難になり、それに起因して粉粒体を設計通り吐出できなくなる虞がある。
(b)流動物による改良では、混練用水分に起因して地表側への排土や排泥量が粉粒体施工に比べて多くなる。混練水は空気よりも土中に残留し易い。なお、セメントを硬化するに必要な水量は、一般にセメント重量の25%程度であり、残部は土中に拡散される。
【0005】
本発明の目的は、以上のような課題に対し、原位置土に吐出する改良材として、地盤深さ方向の土質性状に応じて粉粒体と流動物とを切り替えることにより、当該地盤に最適な改良条件を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、駆動機構で回転される攪拌軸及び該攪拌軸下側に設けられた撹拌翼と、前記攪拌軸に沿って設けられた供給管路と、地表側に設けられて前記供給管路の上流側に改良材を導入する材料供給装置とを備え、前記攪拌軸の地中への貫入や引き抜き過程等で、前記供給管路の下側吐出口より吐出される改良材と原位置土とを混合処理する地盤改良工法において、前記材料供給装置は、前記改良材として粉粒体を圧縮空気により供給可能な粉体圧送プラントと、前記改良材として粉粒体と水とを混合した流動物を供給可能な流動物圧送プラントと、前記供給配管の上流側に対し前記粉体圧送プラントと前記流動物圧送プラントとを切替手段を介し選択的に接続可能な輸送経路とを備え、地盤深さ方向の土質性状として、含水比が高い地層には前記粉体圧送プラントの粉粒体を、含水比が低い地層には前記流動物圧送プラントの流動物を前記輸送経路の切替手段を介し前記供給配管に圧送することを特徴としている。
【0007】
以上の本発明工法において、施工設計では、例えば、事前調査等で把握された地盤深さ方向の含水比の変動に応じて、粉粒体を用いる地層A(高含水比の地層)と、流動物を用いる地層B(低含水比の地層)とが決められ、かつ、各地層A,Bに混入する粉粒体や流動物の吐出量(吐出総量と吐出流量等)が算出される。そして、実施工では、例えば、攪拌軸の貫入深さが検出センサにより計測されており、その計測値に基づいて、地層Aに粉粒物を吐出し、地層Aを通過する直前で輸送経路の切替手段を切り替え、地層Bに達したら流動物を吐出してそれぞれ原位置土と混合処理する。このような工法では、前記流動物から粉粒体に切り替えるとき、又は/及び、前記粉粒体から流動物に切り替えるときは、前記粉体圧送プラントの圧縮空気を圧送して前記輸送経路及び供給管路に残留したり付着しているものを除去してから切り替えること(請求項2)、前記流動物圧送プラントは、粉粒体と水とを混合して流動物を製造する流動物製造部を有し、前記流動物製造部が前記粉体圧送プラントから圧縮空気により送られてくる前記粉粒体を使用すると共に、前記粉粒体と水とを混合する前か、混合後に脱気すること(請求項3)が好ましい。
【発明の効果】
【0008】
以上の本発明工法にあっては次のような利点を具備できる。
・請求項1の発明では、地盤深さ方向の土質性状に応じて、輸送経路の切替手段により、低含水比の地層には粉粒体を吐出し、高含水比の地層には流動物を吐出することから、地盤性状に合致した最適な改良を実現でき、段落0004に挙げた問題を一掃できる。
・請求項2の発明では、輸送経路や供給管路に残っている残留物や付着物を粉粒圧送プラント側の圧縮空気を利用して除去することで、粉粒体及び流動物としての純度や物性を構成簡易に維持可能にし、同時に各部の目詰まりを未然に防止できる。
・請求項3の発明では、流動物圧送プラント側の流動物製造部で使用する粉粒体を粉体圧送プラント側より供給することで、粉粒体用の設備を共用化して設備を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図1は本発明工法に使用する装置全体を示す模式構成図、図2と図3は本発明工法を実施するときの主な工程を示す模式作用図、図4は本発明工法を実施するときの細部手順例を示すフローチャートである。図5は粉体圧送プラントの粉体圧送機例を示し、図6と図7は流動物製造部の2つの具体例を示している。以下の説明では、地盤改良工法の構成、施工手順例を述べた後、各プラントの主要部の構造例を図5〜図7により言及する。
【0010】
(地盤改良工法)図1において、符号1は粉体圧送プラント、符号2は流動物圧送プラント、3は対象地盤の地表に設置された攪拌混合装置である。また、対象地盤は、事前の地質調査により地盤深さ方向の土質性状が詳細に把握され、地表側より所定深度までが含水比が低い超軟弱ないしは軟弱な地層Aと、それより深くなると含水比が高い比較的硬質な地層Bとからなる。なお、この形態において、粉粒体はセメントを想定しているが、これ以外でもよい。流動物はセメントと水を混合したセメントミルクを想定しているが、セメントミルクに類似するものであればよい。
【0011】
ここで、粉体圧送プラント1は、セメントを貯留しているサイロ4と、圧縮空気を供給するコンプレッサ5と、粉体圧送機6とを少なくとも備えている。このうち、粉体圧送機6は、サイロ4からセメントを受け取ると共に、該セメントをコンプレッサ5で生成した圧縮空気に混合し、圧縮空気を輸送媒体としてセメントを圧送する。粉体圧送機6の出口は、輸送経路7及び輸送経路7内に付設された第1切替バルブ8及び第2切替バルブ9を介して攪拌混合装置3側の攪拌軸19内に沿って配置されている不図示の供給管路の上端側に切替え可能に接続している。また、コンプレッサ5の出口は、バイパス経路15及びバイパスバルブ16を介して輸送経路7に接続されている。バイパス流路15は、コンプレッサ5で生成した圧縮空気をパイパスバルブ16を介して輸送経路7内に直に圧送可能にして、輸送経路7、攪拌軸19内の供給管路、該供給管路の下端に設けられているノズル等の吐出口に残留したり付着しているセメントやセメントミルク等を系外へ排出し、例えば、切替え後における各部の目詰りを未然に防止可能にする。なお、実際には、コンプレッサ5で生成される圧縮空気は不図示のドライアーで加温可能になっており、前記残留物や付着物を排出するときは加熱された圧縮空気を生成して圧送するようになっている。
【0012】
流動物圧送プラント2は、輸送経路7に設けられている第1切替バルブ8を介して切替可能に接続された流動物製造部であるミキサ10と、ミキサ10内に水を供給する水槽11と、ミキサ10内で所定配合比で混合した水−セメントのセメントミルクを輸送経路12から輸送経路7側へ供給するグラウトポンプ13とを少なくとも備えている。このうち、ミキサ10は、セメントと共に供給された粉体輸送用の圧縮空気を混合前又は混合後、集塵機14を介して大気側に排出するようになっている。輸送経路12の下流側は、第2切替バルブ9を介して輸送経路7の下流側に接続されて、該輸送経路7を介して前記した攪拌混合装置3側の攪拌軸19内に沿って配置されている供給管路の上端側に切替可能に接続している。なお、実際には、輸送経路12内の基端側とコンプレッサ5との間に圧縮空気を圧送する不図示の経路が設けられ、輸送経路12内の残留物や付着物を圧縮空気により排出可能となっている。
【0013】
攪拌混合装置3は、キャタピラ走行式のベースマシン16と、ベースマシン16の先端に立設された起倒式の鉛直ガイド17と、ガイド17に沿って昇降可能な回転駆動機構である駆動ヘッド18と、駆動ヘッド18の下部に回転可能に垂設された攪拌軸19と、攪拌軸19の下端外周に突設された複数の攪拌翼20とを備え、前記輸送経路7の接続端は駆動ヘッド18に付設されているスイベルジョイント18aを介して攪拌軸19内の供給管路に連結され、該供給管路の下端に接続されて攪拌軸19の下端周囲や攪拌翼20側に付設されているノズル等の吐出口から、粉粒体であるセメント、又は、流動物であるセメントミルクを噴出する構成である。なお、駆動ヘッド18、攪拌軸19、攪拌翼20等は模式化しているが、これらは特許文献1と同じか類似している。
【0014】
(施工手順例)次に、実施工時の手順について図2と図3及び図4のフローチャートを参照しながら説明する。まず、本形態では、前述したように、地表から所定深度までの層が含水率の大きな軟弱な地層A、その下が含水率の小さな比較的硬質の地層Bとなっている。また、地層Aでは粉粒体であるセメントを用いた地盤改良が、地層Bでは流動物であるセメントミルクを用いた地盤改良がそれぞれ最適なものと判断されている。なお、両地層A,Bの境界は必ずしも一定ではなく、場所によって多少の変動があるが、これの境界位置は、攪拌軸19の貫入深度用検出センサや、トルクセンサなどにより検出可能となっている。
【0015】
この実施工では、まず、図2(a)に示すように、前記各プラント1,2の稼働を停止している状態で、攪拌混合装置3を駆動して攪拌軸19を回転し、攪拌翼20により周囲を解しつつ貫入し、地盤改良深度まで到達したら貫入を停止し、アイドル回転を持続する(ステップST1〜6)。また、貫入までの間に、回転トルクが変化したらその変化位置を記録する(ステップST3,4)。この位置が両層A,Bの境界位置である。
【0016】
すなわち、通常は、攪拌軸19の先端(最下段の攪拌翼20)が地層Aと地層Bの境界位置まで下降すると、貫入抵抗及び回転抵抗が高まり、これをトルクセンサにより検出し、かつこの検出値と、貫入深度検出センサの検出値が事前調査で判明した境界深度の変動範囲にほぼ収っていることで、境界位置に到達したことが判定され、その位置が記録される。なお、境界位置に到達する以前でも、地層A内に礫などが混在すると一時的にトルクが高まる場合がある。しかし、これは、境界深度の変動範囲内でないことにより無視される。
【0017】
そして、攪拌軸19がアイドル回転を継続している間、第1切替バルブ8を流動物製造プラント2の接続側に切替え、粉体圧送プラント1を稼働状態とすると共に、流動物製造プラント2を稼働状態とする(ステップST7〜9)。具体的には、サイロ4内のセメントを粉体圧送機6、第1切替バルブ8を介してミキサ10内に圧送すると共に、水槽11側より所定の水−セメント比となる水量をミキサ10内に供給する。ミキサ10はそれらセメントと水とを混練しセメントミルクを製造する。
【0018】
このようにして、セメントミルクが製造された後、第2切替バルブ9を切替えて流体輸送経路12を輸送経路7側に合流させ、同時にグラウトポンプ13を駆動する。これにより、ミキサ10で製造されたセメントミルクは、攪拌軸19内の供給配管を通ってノズル等の吐出口より噴射され、その状態から攪拌軸19を上昇させつつ回転を持続することにより、図2(b)に示すように、原位置土とセメントミルクとを混合したソイルセメント柱bが造成される(ステップST10〜12)。
【0019】
なお、供給されるセメントミルクは、水−セメント比及び時間当りの供給量(ポンプ13による吐出量)が事前調査により判明している地層Bの含水比や土質、粘度等に応じた値であり、かつ攪拌軸19の地盤引抜速度や攪拌翼20の回転速度に応じて算出される。
【0020】
攪拌軸19が先に記録されたトルク変化位置まで上昇すると、その位置に停止した状態でアイドル回転を持続し、プラント1,2の稼働を一時停止し、第1切替バルブ8と第2切替バルブ9とも通常の輸送経路7、つまり切替バルブ8はミキサ10側との間を閉じ、切替バルブ9は輸送経路12側との間を閉じとなるよう切替える(ステップST13〜16)。その後、バイパスバルブ16を切り替えて、バイパス流路15からコンプレッサ5の圧縮空気を輸送経路7内に直に噴出させ、輸送経路7や攪拌軸19内の供給管路等の管内に付着した残余のセメントミルクを吐出口から排出する。その後は、コンプレッサ5を一旦停止し、バイパスバルブ16を切り替えて、再度、駆動待機状態にする(ステップST17〜21)。なお、排出される付着や残余のセメントミルクは、ソイルセメント柱b内に添加されるが、その量は僅かなので、改良体に及す影響は無視できる。
【0021】
次いで、今度は流動物製造プラント2を停止状態とし、粉体圧送プラント1だけを稼働し、攪拌軸19を再び上昇させる(ステップST22,23)。すなわち、この過程では、サイロ4内のセメントが粉体圧送機6に定量移送され、かつ、コンプレッサ5側より粉体圧送機6内に導入される圧縮空気に同伴されて粉体圧送機6の出口から圧送され、輸送経路7及び攪拌軸19内の供給管路を通じて下端側の吐出口より噴出される。すると、噴射されたセメントは、攪拌翼20の作用により原位置土と混合されることで、図3(a)に示すように地層A内にソイルセメント柱aが造成される。このソイルセメント柱aは前記ソイルセメント柱bに連続して形成される。なお、以上の粉粒体であるセメントの時間当りの供給量は、例えば、事前調査により判明している地層Aの含水比と、攪拌軸19の地盤貫入速度や攪拌翼20の回転速度等を考慮して設定される。また、輸送媒体として噴射された圧縮空気は、攪拌軸19に沿って地表側に上昇し、地表側から大気に向けて放散排出される。
【0022】
以上のようにして、攪拌軸1が地表部まで引き上げられて、図3(b)に示すように、地層A内にソイルセメント柱aが造成されたら、プラント1の駆動停止、攪拌軸19の回転及び上昇を停止し、次いでステップ17〜21と同様の操作により輸送経路7や攪拌軸19内の供給管路等の管内に付着した残余のセメントを排出すれば、一回ないしは1本の地盤改良作業が完了する(ステップST22〜26)。造成後は、時間経過に応じて水和反応が進行して硬化し、上下に連続して一体化されたソイルセメント柱a,bが地盤中に造成されることになる。以後は、攪拌混合装置3を隣接工区に移動させた後、前記と同様な作業手順を繰返すことにより、地層A,Bにまたがって連続的に造成されたソイルセメント柱a,bの柱列が形成されることになる。
【0023】
なお、以上の形態では、比較的硬質な地層Bを突抜けて予め所定の改良深度まで攪拌軸19を貫入した後、これを引き上げつつセメントミルクによる地盤改良を行い、次いで、軟弱な地層Aでセメントによる地盤改良を行った。これは攪拌混合工法における一般的施工手順である。しかし、施工手順は例えば、セメント、又は、セメントミルクの地層内への噴射は攪拌軸19の貫入過程、或いは、貫入及び引き抜き過程で行うようにしてもよい。要は、図4の手順は一例に過ぎず本発明を制約するものではない。
【0024】
(粉体圧送機)次に、前記粉体圧送プラント1に用いられる粉体圧送機6の詳細構造例を説明する。図5において、粉体圧送機6は、圧力容器32を有し、設置部Sに対し容器32の上部フランジ30を荷重計測手段としてのロードセル31を介して支持されている。容器32は、内部に配置された隔壁33を挟んでその上半部がセメントの受入容器部34、下半部が圧送用ポンプ室35となっている。そして、圧力容器32の上部には、セメント用サイロ4の供給ノズル4aに対向させたホッパ36が設けられている。また、圧力容器32の上部内側には、ホッパ36の供給口に対向し、内圧上昇により供給口を閉じる逆止弁37が配置されている。隔壁33は漏斗形をなしている。そして、隔壁33の中央に形成された開口部33aには圧力容器32の側面を貫通し、かつコンプレッサ5に接続されたL字形のノズル38が配置され、その先端をポンプ室35内に向けている。
【0025】
ポンプ室35内では、圧力容器32の下部に設けた軸受部39に軸受されたロータ軸40と、ロータ軸40周縁に一体化された複数のロータ41と、圧力容器32の下部にブラケット42を介して取付けられ、かつ傘歯車などの回転伝達機構43を介して前記ロータ軸40を回転駆動するためのモータ44を備えている。また、圧力容器32の一側下部にはポンプ室35の対応部を連通し、他端を前記した輸送経路7に接続した吐出管45が突出配置されている。吐出管45には、電磁バルブ46が設けられると共に、電磁バルブ46の手前側の管内に前記バイパス流路15の先端ノズル47が合流している。
【0026】
以上において、粉体圧送機6の駆動時においては、電磁バルブ46を開き、前記コンプレッサ5を駆動してポンプ室35内に圧縮空気をノズル38を通じて吹き込むと共に、モータ44を駆動してロータ41を回転駆動することにより、上部の受入容器部34は負圧となり、逆止弁37が開き、供給ノズル4aからホッパ36内に導出されたセメントを内部に取り込み、隔壁33の開口部33aを通じてポンプ室35に順次セメントを入れ、圧縮空気を輸送媒体として吐出管45を通じて輸送経路7内に送り込む。この駆動中、ロードセル31により圧力容器32内の重量は常時計測され、サイロ4から供給されるセメントの重量が設定値に達した場合には、前記供給ノズル4aに設けた図示しない電磁バルブが閉じ、設定値を下回った場合には電磁バルブが開くことによってセメントの定量供給が可能となっており、セメントがポンプ室35を通じて輸送経路7内に定量供給される。粉体圧送機6の駆動停止時にはコンプレッサ5及びモータ44の駆動を停止し、電磁バルブ46を閉じれば、停止状態となる。
【0027】
(流動物製造部)流動物製造プラント2は、粉体圧送プラント1からのセメントを受け、そのセメントと水とを練り混ぜるのであるが、その場合の構造例を、輸送媒体として用いられた圧縮空気の脱気処理と共に図6,7を用いて説明する。
【0028】
図6の構造は大気開放型とした形態例である。この例では、粉体圧送プラント1から圧送されてくるセメントがミキサ50(図1のミキサ10に相当する)に導入される前に脱気処理される。すなわち、ミキサ50は、スクリュー式からなり、取入口に立設された脱気手段としての漏斗状のサイクロン51と、サイクロン51の上側周囲に接続された導入管52と、サイクロン51の上側中心に垂設された排気管53aと、排気管53aに接続された集塵機53と、集塵機53の吐出側に接続されたブロワ54とを備えている。
【0029】
そして、この構造では、粉粒体であるセメントが圧縮空気と共に導入管52からサイクロン51内に導入されると、サイクロン51内でサイクロン流を生じ、比重の重いセメントがサイクロン51内面に沿って螺旋を描きながら落下し、ミキサ50内に連続して導入される。また、圧縮空気は、サイクロン51内から排気管53aを通じて集塵機53側に導かれ、集塵機53の吐出側に接続されたブロワ54を通じて大気側に排出される。なお、ブロワ54の吸引力は粉体圧縮機6の吐出圧力とほぼ同等であり、これによって、セメントはミキサ50の直前で圧縮空気と分離される。但し、分離された圧縮空気中にはセメントが僅かに混在することもある。そのセメントは集塵機53内に配置されたフィルタ55により分離ないしは除去される。
【0030】
また、この構造では、ミキサ50の入口側、つまりサイクロン51が接続される側には水槽11の水が配管及び水中ポンプ56を介して供給されるようになっている。該配管には、流量計57及び流量調整弁58等が設けられている。そして、水槽11内の水は、ポンプ56を介しミキサ50の入口側へ導入されるが、その際、連続して定量供給されるセメントに対し、適宜な水−セメント比となるよう、所定の水量ないしは流量にて導入されように流量計57及び流量調整弁58を介して制御される。ミキサ50は、導入されるセメントと水とをスクリューで練り混ぜてセメントミルクとして、ミキサ50の吐出端からポンプ13側溜め部に供給される。該溜め部内に収容されたセメントミルクは、ポンプ13を介して上記した輸送経路12側へ圧送されることになる。
【0031】
図7の構造は閉鎖型とした形態例である。この例では、粉体圧送プラント1から圧送されてくるセメントが密閉型ミキサ60(図1のミキサ10に相当する)に導入され、水と練り混ぜられてセメントミルクに製造された後に脱気処理される。すなわち、密閉型ミキサ60は、容器本体に接続されているスターティックミキサ61を有し、スターティックミキサ61の一端側供給口から水が定量供給されると共に、粉体圧送プラント1から逆止弁62を介してセメントが供給され、スターティックミキサ61内で気液及び粉体混合されつつミキサ60内に吐出される。また、ミキサ60内は、縦配置の隔壁63により下側を除いて前後に区画されている。隔壁63の左側つまりスターティクミキサ61側の前空間部には、駆動モータ65により回転される攪拌手段66が設けられている。隔壁63の右側、つまり後空間部には空気分離手段が設けられている。そして、後空間部は、上部が集塵機64に接続され、下部が前記したポンプ13に接続されている。
【0032】
そして、この構造では、スターティックミキサ61から供給されてくるセメントと水との混合物、つまりセメントミルクはミキサ60の前空間部側に導入されて攪拌手段66により更に攪拌混合される。隔壁63の下部側は開いており、この下開口部分からセメントミルクが後空間部内に導入される。該後空間部は溢流堰67によって更に二分され、攪拌混合された気泡混じりのセメントミルクが溢流堰67を越えるとき気泡が上昇してはじけ、そのはじけた空気が後空間部の上部から集塵機64を介して大気に放出される。また、溢流堰67から溢流したセメントミルクは、空気を分離したセメントミルクであり、このセメントミルクがポンプ13により上記した輸送経路12側へ圧送されることになる。なお、以上の各構造では、粉体圧送プラント1を流動物製造プラントのセメント供給源として共用できるため、プラントの重複がなく、設備を簡素化できる。
【0033】
なお、以上の実施形態は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項1で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明工法を適用する場合の改良装置を含む全体構成を示す概略図である。
【図2】(a),(b)は施工手順を示す断面説明図である。
【図3】(a),(b)は図2に引続く施工手順を示す断面説明図である。
【図4】上記施工手順の細部を示すフローチャートである。
【図5】本発明工法の粉体圧送プラント側の粉体圧送機例を示す断面図である。
【図6】本発明工法の流動物製造プラント側の構成例を示す模式図である。
【図7】本発明工法の他の流動物製造プラント側の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1…粉体圧送プラント
2…流動物製造プラント
3…攪拌混合装置(19は攪拌軸、20は攪拌翼)
5…コンプレッサ(空気圧縮機)
6…粉体圧送機
7,12…輸送経路
8,9…第1、第2切替バルブ(切替手段)
10,50,60…ミキサ(流動物製造部)
11…水槽
13…ポンプ
15…バイパス流路
16…バイパスバルブ(切替手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構で回転される攪拌軸及び該攪拌軸下側に設けられた撹拌翼と、前記攪拌軸に沿って設けられた供給管路と、地表側に設けられて前記供給管路の上流側に改良材を導入する材料供給装置とを備え、前記攪拌軸の地中への貫入や引き抜き過程等で、前記供給管路の下側吐出口より吐出される改良材と原位置土とを混合処理する地盤改良工法において、
前記材料供給装置は、前記改良材として粉粒体を圧縮空気により供給可能な粉体圧送プラントと、前記改良材として粉粒体と水とを混合した流動物を供給可能な流動物圧送プラントと、前記供給配管の上流側に対し前記粉体圧送プラントと前記流動物圧送プラントとを切替手段を介し選択的に接続可能な輸送経路とを備え、
地盤深さ方向の土質性状として、含水比が高い地層には前記粉体圧送プラントの粉粒体を、含水比が低い地層には前記流動物圧送プラントの流動物を前記輸送経路の切替手段を介し前記供給配管に圧送することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
前記流動物から粉粒体に切り替えるとき、又は/及び、前記粉粒体から流動物に切り替えるときは、前記粉体圧送プラントの圧縮空気を圧送して前記輸送経路及び供給管路に残留したり付着しているものを除去してから切り替える請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
前記流動物圧送プラントは、粉粒体と水とを混合して流動物を製造する流動物製造部を有し、前記流動物製造部が前記粉体圧送プラントから圧縮空気により送られてくる前記粉粒体を使用すると共に、前記粉粒体と水とを混合する前か、混合後に脱気する請求項1又は2に記載の地盤改良工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−63596(P2006−63596A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246089(P2004−246089)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000236610)不動建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】