説明

地盤改良方法

【課題】注入材の圧入方法を改良して、静的圧入締固め工法における地盤改良効果を向上させる。
【解決手段】特殊注入ポンプで注入材を圧送し、注入管1を介して地盤中に該注入材を圧入する。その際、特殊注入ポンプによる注入材の押し出しストロークと、次の押し出しストロークとの間にインターバルを空けるようにする。押し出しストロークの間は、第1のバルブ21は開弁し、第2のバルブ22は閉弁する。その結果、押し出しストロークの間、注入材に対する載荷が行われる。一方、インターバルの間は、第1のバルブ21は閉弁し、第2のバルブ22は開弁する。その結果、インターバルの間は、第2の管路12を介して圧力が開放され、注入材に対する除荷が行われる。載荷と除荷を繰り返しながら圧入すれば、連続載荷の場合に比して、地盤の圧縮効率が向上し、地盤の密度増大やK値増大が実現でき、また地盤隆起も抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクショングラウチング工法に代表される静的圧入締固め工法を利用した地盤改良方法の技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
静的サンドコンパクションパイル工法などの静的圧入締固め工法では、拡径砂杭を連続的に造成することにより、周辺地盤の締固めを行なっている。この方法では、従来の振動締固め砂杭にくらべ、締固め効果が小さく、ある一定の補正を行なっている。また、地盤の細粒分が多くなると所定の締固め効果が得られない恐れがあった。
【0003】
また、コンパクショングラウチング工法に代表される静的圧入締固め工法では、一般にステップアップしながら圧入を行なう。ステップ内の圧入は連続的に行なわれるが、圧入時の圧力が管理基準値を超過すると、所定の注入量にいたらず、改良効果に不安が残っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、注入材の圧入方法を改良して、静的圧入締固め工法における地盤改良効果を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的は、下記(1)〜(5)に記載の地盤改良方法によって達成される。
【0006】
(1) 静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、地盤改良材に対する載荷と除荷を繰り返しながら、該地盤改良材を地盤中に圧入することを特徴とする地盤改良方法。
【0007】
(2) 静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
ポンプによる地盤改良材の押し出しストロークと、次の押し出しストロークとの間にインターバルを空けるようにして、地盤改良材を圧送し、
前記押し出しストロークの間、地盤改良材に対する載荷が行われ、
前記インターバルの間、地盤改良材に対する除荷が行われることを特徴とする地盤改良方法。
【0008】
(3) 静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
ポンプによる地盤改良材の押し出しストロークの後に、逆方向のストロークでサクションを行うようにして、地盤改良材を圧送し、
前記押し出しストロークの間、地盤改良材に対する載荷が行われ、
前記サクションの間、地盤改良材に対する除荷が行われることを特徴とする地盤改良方法。
【0009】
(4) ポンプを用いて地盤改良材を圧入する静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
地盤改良材をポンプで押し出して、注入管を介して地盤中に圧入する工程と、
前記押し出し工程の後に、前記注入管を33cm未満の微小長さ引き上げる工程と、を含んでおり、
上記工程を繰り返すことにより前記地盤改良材から成る固結体を連続的に造成することを特徴とする地盤改良方法。
【0010】
(5) ポンプを用いて地盤改良材を圧入する静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
地盤改良材をポンプで押し出して、第1の注入管を介して地盤中に圧入する工程と、
地盤改良材をポンプで押し出して、前記第1の注入管に隣接する第2の注入管を介して地盤中に圧入する工程と、を含んでおり、
上記工程を交互に繰り返すことにより前記地盤改良材から成る固結体を地盤中に連続的に造成することを特徴とする地盤改良方法。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によれば、コンパクショングラウチング工法に代表される静的圧入締固め工法において、載荷と除荷を繰り返しながら注入材を地盤中に圧入するようになっている。これにより、地盤の圧縮効率が向上し、地盤の密度増大やK値増大、隆起抑制が実現でき、効率的かつ効果的に液状化対策が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〈コンパクショングラウチング工法の概要〉
最初に、図1に基づいて、静的圧入締固め工法であるCPG(コンパクショングラウチング)工法を概略的に説明する。なお、本発明において、「静的圧入締固め工法」とは、動的エネルギー(打撃や振動)を与えない、静的な力(ポンプによる注入圧力)による締固め工法を意味する。CPG工法は、静的圧入締固め工法の代表例である。
【0013】
CPG工法では、ボーリングマシンを用いて、ロッド状の注入管1を継ぎ足しながら所定深度まで削孔し、孔内に該注入管を臨ませる。注入管1は、注入管リフト装置3によって上下動可能に設けられている。特殊注入プラント5で生成された注入材(特殊骨材・固化材・水で構成される流動性の極めて低いモルタル状の地盤改良材)は、特殊注入ポンプ7で強制圧送し、圧送ホース9に接続された注入管1を介して地盤中へ圧入する。注入管1は、従来の場合では1ステップ33cm〜50cmで、ステップアップさせるようになっている。
【0014】
地盤中に圧入された注入材は、その低い流動性のため土中で迷走することなく所定の位置で固結する。したがって、上述した特殊注入ポンプによる低流動性材料の圧送と、注入管のステップアップとを繰り返すことにより、図示するような注入材から成る球根状の固結体が連続的に造成される。そして、この固結体の体積増加により周辺地盤を圧縮し、密度を増大させることで液状化地盤を非液状化地盤へと改良することができる。
以下、上述したCPG工法を背景技術とする本発明の地盤改良方法について説明する。
【0015】
〈第1実施形態〉
図2に基づいて、本発明に係る地盤改良方法の第1実施形態について説明する。
【0016】
図2において、注入管1の上部には、第1の管路11及び第2の管路12が接続されている。第1の管路11には第1のバルブ21が設けられており、その一端は圧送ホース等を介して特殊注入ポンプに接続されている。また、第2の管路12には第2のバルブ22が設けられており、その一端は開放されている。
【0017】
施工時には、特殊注入ポンプで注入材を圧送し、注入管1を介して地盤中に該注入材を圧入する。その際、特殊注入ポンプによる注入材の押し出しストロークと、次の押し出しストロークとの間にインターバル(時間間隔)を空けるようにする。図2において、押し出しストロークの工程を図2(A)及び(C)に示し、インターバルの工程を図2(B)及び(D)に示す。
【0018】
図2(A)及び(C)に示す押し出しストロークの間は、第1のバルブ21は開弁し、第2のバルブ22は閉弁する。その結果、押し出しストロークの間、注入材に対する載荷が行われる。一方、図2(B)及び(D)に示すインターバルの間は、第1のバルブ21は閉弁し、第2のバルブ22は開弁する。その結果、インターバルの間は、第2の管路12を介して圧力が開放され、注入材に対する除荷が行われる。
【0019】
なお、第2の管路12に吸引装置を接続し、第2のバルブ22を開弁している間だけ強制的なサクションをするようにしてもよい。この方法によっても、インターバルの間、注入材に対する除荷が可能である。また、開弁及び閉弁操作は手動で行ってもよく、或いは、電子制御で自動的に行うようにしてもよい。
【0020】
上述した工程を繰り返して所定量の注入材を圧入し終えたら、注入管1を所定長さステップアップさせ、前述と同様に、押し出しストロークとインターバルを繰り返しながら、注入材を圧入する。
【0021】
上述した方法によれば、従来のように1ステップ内の圧入を連続的に行うのではなく、各押し出しストローク間にインターバルを空け、注入材を間欠的に圧送するようになっている。これにより、載荷と除荷を繰り返しながら注入材を圧入することが可能になり、その結果、地盤の圧縮効率が向上し、地盤の密度増大やK値増大、隆起抑制が実現でき、効率的かつ効果的に液状化対策が行える。そして、このような効果が達成される要因としては、主として、以下の点が挙げられる。
【0022】
すなわち、発明者らの実験によれば、注入材を圧入した場合において、圧入停止直後から圧入圧力の低下が起こることが明らかになった(図3)。この圧入圧力の低下に伴い、周辺地盤の水平応力も低下する(図4)。また、圧入圧力および水平応力の低下は、圧入停止直後に急激に低下する。
【0023】
したがって、連続して圧入するのではなく、断続的な圧入または載荷と除荷を繰り返しながら注入材を圧入することにより、圧入圧力が管理基準値を超過することなく、所期の量の注入材を地盤中へ圧入することができる。よって、載荷と除荷を繰り返しながら圧入すれば、連続載荷の場合に比して、地盤の圧縮効率が向上し、地盤の密度増大やK値増大が実現でき、また地盤隆起も抑制できる。
【0024】
〈第2実施形態〉
次に、図5に基づいて、地盤改良方法の第2実施形態について説明する。
【0025】
図5に示す特殊注入ポンプ7は、切り替え可能なスイングチューブ30を備えた2連式のピストンポンプである。この特殊注入ポンプ7は、第1のピストン31と第2のピストン32を有しており、圧送ホース等を介して注入管に接続されている。往復運動する第1のピストン31と第2のピストン32は、交互に注入材を押し出し可能に設けられている。
【0026】
上述構成の特殊注入ポンプ7を用いて圧送する際には、たとえば、第1のピストン31による押し出し中に、第2のピストン32側のシリンダー内に注入材を充填する(図5(A))。そして、第1のピストン31による押し出しが完了した時点で、スイングチューブ30を第2のピストン32側に切り替える(図5(B))。この一連の動作を経て、注入材を押し出すための「1ストローク」が完了する。
【0027】
スイングチューブ30を第2のピストン32側に切り替えたら、前述と同様に、第2のピストン32による押し出し中に、第1のピストン31側のシリンダー内に注入材を充填する(図5(C))。このように、切り替えと押し出しストロークを繰り返すことにより、切り替えの度に圧力が開放され、脈動的に注入材が圧送される。
【0028】
そして、数ストロークに1回、スイングチューブ30を切り替えずに、押し出しストロークを終えたピストンをリバースさせて、圧送された注入材に対するサクションを行う(図5(D))。このサクションは、引き抜きストローク(押し出しストロークとは逆方向のストローク)によって行われる。ピストンのリバースは、自動で行ってもよく、或いは手動で行ってもよい。
【0029】
上述した方法によれば、押し出しストロークの間は注入材に対する載荷(加圧作用)が行われ、引き抜きストロークの間は注入材に対する除荷(負圧作用)が行われる。したがって、複数回の押し出しストロークと、それに続く引き抜きストロークとを含む一連の操作を繰り返すことにより、注入材に対する載荷と除荷を繰り返しながら該注入材を圧入することができる。よって、第1実施形態で述べた場合と同様の効果を達成することができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、スイングチューブ30を備えた2連式のピストンポンプを用いる場合について例示したが、本発明で用いるポンプの種類は特にこれに限定されない。すなわち、注入材の押し出し方向(正方向)・吸い込み方向(逆方向)のいずれの方向にも作動可能である限り如何なる種類のポンプも用いることができ、使用可能な他のポンプの具体例としては、例えば公知のスクイズ式ポンプを挙げることができる。
【0031】
〈第3実施形態〉
次に、図6に基づいて、地盤改良方法の第3実施形態について説明する。
図6において、上段は本発明に対応する従来の方法を示しており、下段は第3実施形態に係る地盤改良方法を示している。
【0032】
図6において、注入管1は、圧送ホース等を介して特殊注入ポンプに接続されている。特殊注入ポンプから圧送された注入材は、注入管1を介して地盤中に圧入されるようになっている。
【0033】
施工する際には、まず注入材を特殊注入ポンプで押し出して、注入管1を介して地盤中に圧入する。所定量の注入材を圧入し終えたら、注入管1を33cm未満の微小長さ(たとえば10cm程度)引き上げる。そして、前述した圧入工程と注入管引き上げ工程とを繰り返すことにより、注入材から成る固結体を連続的に造成する。
【0034】
上述した方法によれば、以下の効果が達成される。
すなわち、図6の上段に示す従来のCPG工法の場合では、1ステップ33cmを標準としてステップアップを行っている。これに対し、図6の下段に示す本発明の場合では、ステップアップ長さを短縮(たとえば10cm程度に短縮)している。図3に示すように、ステップアップ時には圧入圧力は除荷され、このとき地盤に与えられた応力も減少する。したがって、本発明によれば、注入管1本当たりのステップアップ回数が増加し、圧入の繰り返し回数が増加するので、結果として圧縮効率が上昇する。
【0035】
〈第4実施形態〉
次に、図7に基づいて、地盤改良方法の第4実施形態について説明する。
【0036】
図7において、改良対象の地盤中には、2本の注入管1a,1bが隣接した状態で配設されている。第1の注入管1aおよび第2の注入管1bは、それぞれ、圧送ホース等を介して特殊注入ポンプに接続されている。
【0037】
施工する際には、注入材を特殊注入ポンプで押し出して、第1の注入管1aを介して地盤中に圧入する(図7(A))。このとき、圧入に伴って生じる水平応力が、矢印Rで示すように、第2の注入管1b方向へ作用する。第1の注入管1aの側において1ステップ内の圧入が完了したら、続いて、第2の注入管1bを介して注入材を地盤中に圧入する(図7(B))。このとき、圧入に伴って生じる水平応力が、矢印Lで示すように、第1の注入管1a方向へ作用する。
【0038】
第2の注入管1bの側において1ステップ内の圧入が完了したら、続いて、第1の注入管1aをステップアップさせる(図7(C))。そして、所定長さステップアップさせたら、注入材を第1の注入管1aを介して地盤中に圧入する(図7(D))。第1の注入管1aの側において1ステップ内の圧入が完了したら、続いて、第2の注入管1bをステップアップさせて注入材を圧入する。そして、図示するこれらの工程を繰り返すことにより、連続する固結体が、隣接する地盤中に同時並行的に造成される。
【0039】
上述した方法によれば、隣接する2本の注入管に対して、特殊注入ポンプから交互に注入材を圧送するようになっている。したがって、2本の注入管の中間領域に介在する地盤では、一方側の圧入による載荷と他方側の圧入による載荷を交互に受けることとなる。また、一方側の注入管のステップアップによる応力開放と、他方側の注入管のステップアップによる応力開放を、交互に受けることとなる。その結果、1本の注入管で圧入する場合と比較して、地盤の圧縮効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】コンパクショングラウチング工法の実施態様の概略を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る地盤改良方法を示す工程図である。
【図3】圧入圧力の経時変化を示す図である。
【図4】水平応力の経時変化を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る地盤改良方法を示す工程図である。
【図6】第3実施形態に係る地盤改良方法を示す工程図である。
【図7】第4実施形態に係る地盤改良方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0041】
1 注入管
1a 第1の注入管
1b 第2の注入管
3 注入管リフト装置
5 特殊注入プラント
7 特殊注入ポンプ
9 圧送ホース
11 第1の管路
12 第2の管路
21 第1のバルブ
22 第2のバルブ
30 スイングチューブ
31 第1のピストン
32 第2のピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、地盤改良材に対する載荷と除荷を繰り返しながら、該地盤改良材を地盤中に圧入することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項2】
静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
ポンプによる地盤改良材の押し出しストロークと、次の押し出しストロークとの間にインターバルを空けるようにして、地盤改良材を圧送し、
前記押し出しストロークの間、地盤改良材に対する載荷が行われ、
前記インターバルの間、地盤改良材に対する除荷が行われることを特徴とする地盤改良方法。
【請求項3】
静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
ポンプによる地盤改良材の押し出しストロークの後に、逆方向のストロークでサクションを行うようにして、地盤改良材を圧送し、
前記押し出しストロークの間、地盤改良材に対する載荷が行われ、
前記サクションの間、地盤改良材に対する除荷が行われることを特徴とする地盤改良方法。
【請求項4】
ポンプを用いて地盤改良材を圧入する静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
地盤改良材をポンプで押し出して、注入管を介して地盤中に圧入する工程と、
前記押し出し工程の後に、前記注入管を33cm未満の微小長さ引き上げる工程と、を含んでおり、
上記工程を繰り返すことにより前記地盤改良材から成る固結体を連続的に造成することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項5】
ポンプを用いて地盤改良材を圧入する静的圧入締固め工法を利用して地盤を改良する方法であって、
地盤改良材をポンプで押し出して、第1の注入管を介して地盤中に圧入する工程と、
地盤改良材をポンプで押し出して、前記第1の注入管に隣接する第2の注入管を介して地盤中に圧入する工程と、を含んでおり、
上記工程を交互に繰り返すことにより前記地盤改良材から成る固結体を地盤中に連続的に造成することを特徴とする地盤改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−170136(P2007−170136A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372909(P2005−372909)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【出願人】(505477338)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(390001993)みらい建設工業株式会社 (26)
【出願人】(393003505)復建調査設計株式会社 (13)
【出願人】(598076502)みらいジオテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】