説明

地盤改良材及び地盤改良材の製造方法

【課題】自己溶解を誘発するナトリウム等のアルカリ分が完全に除去されて耐久性に優れ、液状化対策工や岩盤注入工などに用いるに好適な地盤改良材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】従来使用されていた水ガラスではなく、金属珪素を原材料とすることによって製造されたアルカリ金属を含有しないシリカゾルとともに、カルシウム塩以外のアルカリ土類金属塩が配合されている地盤改良材。アルカリ土類金属塩はマグネシウム塩が望ましく、前記シリカゾル対する配合割合を1000L:10g〜1000L:500gとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化対策工や岩盤注入工などに用いるに好適な地盤改良材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良材(グラウト)としては、硫酸等の硬化材とともに注入する水ガラス(珪酸ソーダ)や、水ガラスに硫酸等の酸性中和剤を反応させてアルカリを除去し熟成してゾル状にした酸性シリカゾル(コロイダルシリカ)、水ガラスからイオン交換等によってアルカリを除去したコロイダルシリカ(シリカゾル)、あるいはこれらを混合したものなどがある(例えば、水ガラス及びコロイダルシリカを主材とし、硬化材として燐酸及びグリオキザールが添加された特許文献1参照。)。これら従来の地盤改良材は、硬化後強度、ゲルタイム、地盤への浸透性、環境への影響など、さまざまな配慮がなされ、提案されたものである。
【0003】
しかしながら、この従来の地盤改良材は、耐久性の点で十分なものとはいえなかった。これは、水ガラスはもちろん、コロイダルシリカ(シリカゾル)も、自己溶解を誘発するナトリウム等のアルカリ分が完全に除去されていないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10‐36843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする主たる課題は、耐久性に優れた地盤改良材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
金属珪素を原材料とするアルカリを除去することなく製造されたシリカゾルとともに、カルシウム塩以外のアルカリ土類金属塩が配合されている、
ことを特徴とする地盤改良材。
【0007】
〔請求項2記載の発明〕
前記アルカリ土類金属塩がマグネシウム塩である、
請求項1記載の地盤改良材。
【0008】
〔請求項3記載の発明〕
前記シリカゾルと前記マグネシウム塩との配合割合が、1000L:10g〜1000L:500gである、
請求項2記載の地盤改良材。
【0009】
〔請求項4記載の発明〕
シリカゾル及びマグネシウム塩を混合して地盤改良材を製造するにあたり、
前記シリカゾルとして金属珪素を原材料とするアルカリを除去することなく製造されたものを用いるとともに、
前記シリカゾル及び前記マグネシウム塩を混合するに先立って、前記シリカゾルを無機酸によってpH2〜8に調整する、
ことを特徴とする地盤改良材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、耐久性に優れた地盤改良材及びその製造方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の地盤改良材は、金属珪素(シリコン)から製造されたシリカゾル(コロイダルシリカ)が配合されていること、つまり水ガラスではなく金属珪素を原材料とするアルカリを除去することなく製造されたコロイダルシリカが配合されていることを特徴とする。水ガラスを原材料とすると、硬化材や中和剤として硫酸等の酸と反応させたとしても製造されるコロイダルシリカコロイド中に残留したアルカリが残り、耐久性が劣る。これに対し、金属珪素はアルカリを含まないため、金属珪素を原材料とするアルカリを除去することなく製造されたコロイダルシリカもアルカリを含まず、したがって当該コロイダルシリカが配合された地盤改良材は、耐久性に優れたものとなる。
【0012】
ここで金属珪素からシリカゾルを製造する方法は、特に限定されない。例えば、金属珪素からシリカゾルを製造する方法を開示する米国特許2614995号公報や、金属珪素からテトラメチルシリケートを製造する方法を開示する米国特許2473260号公報、テトラメチルシリケートからシリカゾル(コロイダルシリカ)を製造する方法を開示する特開平6−316407号公報などを参考にすることができる。
【0013】
本形態の地盤改良材は、その用途にかかわらず、好ましくは先行してセメント系の地盤改良材が注入されている地盤に注入される場合(岩盤注入など)は、金属珪素を原材料とするアルカリを除去することなく製造されたシリカゾルとともに、マグネシウム塩を配合するのが好ましい。この点、本形態の地盤改良材による固結物(本形態の地盤改良材が注入されて強度の高まった地盤)は、アルカリ金属水酸化物に対して溶解する傾向がある。しかしながら、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩を配合すると、アルカリ側でアルカリ土類金属珪酸塩が生成され、アルカリに対する固結物の耐久性が向上する。ただし、たとえアルカリ土類金属塩であってもカルシウム塩を配合すると、混合後数分以内に白濁、沈殿(ゲル化)してしまい、溶液系の特徴である高浸透性を期待できない。したがって、マグネシウム塩を配合するのが好ましい。特に、先行してセメント系の地盤改良材が注入されている地盤に注入される場合は、金属珪素から製造されたシリカゾルとともに、マグネシウム塩が配合されていると、安定したゲルタイムを得ることができるとの利点がある。
【0014】
ここで、マグネシウム塩が配合される前にシリカゾルのpHを2〜8、好ましくは3〜7に、硫酸を代表とする無機酸でpH調整を行うのが好ましい。本形態のシリカゾルはpH9〜10であるが、この状態でマグネシウム塩を添加すると、瞬結となり、高い浸透性が得られない可能性がある。
【0015】
ここでシリカゾルとマグネシウム塩との配合割合(容量:重量基準)は、1000L:10g〜1000L:500g、好ましくは1000L:50g〜1000L:200gである。コロイダルシリカの配合割合に対するマグネシウム塩の配合割合が多いと、粘度が上昇し浸透性能が劣る。他方、コロイダルシリカの配合割合に対するマグネシウム塩の配合割合が少ないと、セメントと注入材が接触し、注入材がアルカリになったとき、ゲルタイムが大幅に長くなる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明の実施例を説明する。
〔試験例1〕
金属珪素から製造されたシリカゾルとアルカリ土類金属塩とが配合された地盤改良材について、アルカリ土類金属塩としてマグネシウム塩を使用した場合とカルシウム塩を使用した場合とを比較する試験を行った。原材料の種類及び配合割合並びに結果を、表1に示した。なお、外観は目視によって評価した。
【0017】
【表1】

【0018】
〔試験例2〕
金属珪素から製造されたシリカゾルにアルカリ土類金属塩を配合する場合と配合しない場合とを比較する試験を行った。また、アルカリ土類金属塩を配合した場合のシリカゾルのpHとゲル化時間の関係および原材料の種類及び配合割合並びに結果を、表2に示した。
【0019】
【表2】

【0020】
〔試験例3〕
試験例3で示した地盤改良材の一部(実施例3、実施例4、実施例5及び比較例5)について、数mm〜数十mmに粉砕した超微粒子セメント固結物と混合し、サンドゲルタイム及び硫化水素発生量(ppm、24時間平均)を測定した。地盤改良材の種類及び結果を表3に示した。なお、超微粒子セメント固結物としては、アロフィックス(W/C:100%、MCセット1%、材令2日)を用いた。
【0021】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、液状化対策工や岩盤注入工などに用いる地盤改良材及びその製造方法として、適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属珪素を原材料とするアルカリを除去することなく製造されたシリカゾルとともに、カルシウム塩以外のアルカリ土類金属塩が配合されている、
ことを特徴とする地盤改良材。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属塩がマグネシウム塩である、
請求項1記載の地盤改良材。
【請求項3】
前記シリカゾルと前記マグネシウム塩との配合割合が、1000L:10g〜1000L:500gである、
請求項2記載の地盤改良材。
【請求項4】
シリカゾル及びマグネシウム塩を混合して地盤改良材を製造するにあたり、
前記シリカゾルとして金属珪素を原材料とするアルカリを除去することなく製造されたものを用いるとともに、
前記シリカゾル及び前記マグネシウム塩を混合するに先立って、前記シリカゾルを無機酸によってpH2〜8に調整する、
ことを特徴とする地盤改良材の製造方法。

【公開番号】特開2012−97265(P2012−97265A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259846(P2011−259846)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【分割の表示】特願2007−313151(P2007−313151)の分割
【原出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【出願人】(509023447)強化土株式会社 (31)
【Fターム(参考)】