説明

地表下地層の加熱用共通上層土区画付き三相ヒーター

地表下地層用の加熱システムに関し、該システムは3つのほぼu形のヒーターを有し、該ヒーターの第一端部は単一の三相Y字状回路変圧器に電気的に連結し、該ヒーターの第二端部は互いに及び/又は地面に連結する。該3つのヒーターの磁場が共通の坑井孔内で少なくとも部分的に相殺されるように、該ヒーターは第一の共通の坑井孔を経由して地層に入り、第二の共通の坑井孔を経由して地層を出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は一般に炭化水素含有地層のような各種地表下地層から炭化水素、水素及び/又はその他の生成物を生産するための加熱方法及び加熱システムに関する。特定の実施態様は地表下地層の加熱用三相ヒーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
地下(subterranean)地層から得られる炭化水素はエネルギー資源として、供給原料として、また消費生成物として使用されることが多い。入手可能な炭化水素資源の枯渇に対する関心及び生産した炭化水素の全体的な品質低下に対する関心により、入手可能な炭化水素資源の一層効率的な回収、処理及び/又は使用方法が開発されてきた。地下の地層から炭化水素材料を取り出すため、現場プロセスが使用できる。地下の地層から炭化水素材料を一層容易に取り出すためには、地下地層中の炭化水素材料の化学的及び/又は物理的特性を変える必要があるかも知れない。このような化学的物理的変化は、地層中の炭化水素材料についての取出し可能な流体、組成変化、溶解度変化、密度変化、相変化及び/又は粘度変化を生成する現場反応を含むかも知れない。流体は、限定されるものではないが、ガス、液体、エマルジョン、スラリー、及び/又は液体流と同様の流動特性を有する固体粒子の流れであってよい。
【0003】
地層には坑井孔(wellbore)を形成してよい。幾つかの実施態様では、坑井孔にケーシング又は他のパイプシステムを設けるか形成してよい。幾つかの実施態様では坑井孔に拡大可能な管状体(tubular)を使用してよい。現場プロセス中、地層を加熱するため、坑井孔内にヒーターを設けてよい。
【0004】
Ljungstromの米国特許第2,923,535号及びVan Meurs等の米国特許第第4,886,118号には油頁岩地層に熱を加えることが記載されている。熱は地層も破壊して、地層の透過性を増大させる。透過性の増大により、地層流体は生産坑井に運ばれ、そこで油頁岩地層から流体が除去される、Ljungstromにより開示された幾つかの方法では、例えば燃焼を開始させるため、好ましくは予備加熱工程によりなお熱いうちに、酸素含有ガス媒体を透過性層に導入している。
【0005】
地下地層を加熱するため、熱源が使用できる。電気ヒーターは輻射及び/又は伝導により地下地層を加熱するのに使用できる。電気ヒーターは素子を抵抗加熱できる。Germainの米国特許第2,548,360号、Eastlund等の米国特許第4,716,960号及びVan Egmondの米国特許第5,065,818号には坑井孔内に配置した電気加熱素子が記載されている。Vinegar等の米国特許第6,023,554号にはケーシング内に配置した電気加熱素子が記載されている。
【0006】
Van Meurs等の米国特許第4,570,715号には電気加熱素子が記載されている。この加熱素子は、電導性コア、絶縁材料の周囲層、金属の周囲被覆を有する。導電性コアは高温で比較的低い抵抗を有する。絶縁層は高温で比較的高い、電気抵抗、圧縮強度、及び熱電導率特性を持っていてよい。絶縁層はコアから金属被覆へのアーク発生を防止できる。金属被覆は高温で比較的高い、引張り強度及びクリープ抵抗特性を有する。Van Egmondの米国特許第5,060,287号には銅−ニッケル合金コアを有する電気加熱素子が記載されている。
【0007】
ヒーターは錬ステンレス鋼から製造できる。Maziasz等の米国特許第7,153,373号及び米国特許出願公開第US 2004/0191109号には鋳造微細構造又は微細粉のシート及び箔として変性237ステンレス鋼が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、炭化水素含有地層から炭化水素、水素、及び/又はその他の生成物を経済的に生産するための、ヒーター、方法及びシステムの開発には多大の努力が払われてきた。しかし、現在、経済的には生産できない炭化水素、水素、及び/又はその他の生成物を含む炭化水素含有地層が多く存在する。したがって、各種炭化水素含有地層から炭化水素、水素、及び/又はその他の生成物を生産するための加熱方法及び装置をなお改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
ここで説明する実施態様は一般に地表下(subsurface)地層を処理するためのシステム、方法及びヒーターに関する。また、ここで説明する実施態様は一般に内部に新規な部品を有するヒーターに関する。このようなヒーターは、ここに説明するシステム及び方法を用いて得ることができる。
【0010】
特定の実施態様では、本発明は1つ以上のシステム、方法及び/又はヒーターを提供する。幾つかの実施態様ではこのシステム、方法及び/又はヒーターは地表下地層を処理するために使用される。
【0011】
特定の実施態様では本発明は、ヒーターの第一端部は単一の三相Y字状回路変圧器に電気的に連結し、ヒーターの第二端部は互いに及び/又は地面に連結した3つのほぼu形のヒーターであって、これら3つのヒーターの磁場が共通の坑井孔内で少なくとも部分的に相殺されるように、これらのヒーターは第一の共通の坑井孔を経由して地層に入り、第二の共通の坑井孔を経由して地層を出る該3つのヒーターを有する地表下地層用加熱システムを提供する。
【0012】
別の実施態様では特定の実施態様の特徴は他の実施態様のいずれかの特徴と組合わせてよい。例えば一実施態様の特徴は他の実施態様のいずれかの特徴と組合わせてよい。
【0013】
別の実施態様では地表下地層の処理は、ここで説明した方法、システム又はヒーターのいずれかを用いて行われる。
【0014】
別の実施態様では、ここで説明した特定の実施態様に追加の特徴を加えてよい。
【0015】
図面の簡単な説明
本発明の利点は、以下の詳細な説明の援助により添付図面を参照して当業者に明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の実施態様を概略的に示す。
【0017】
【図2】単一の三相変圧器に連結した共通の上層土(overburden)区画を有する3つのu形ヒーターの実施態様を示す。
【0018】
【図3】坑井孔中のヒーター及び掘削ガイドの実施態様の上面図である。
【0019】
【図4】坑井孔中の2つのヒーター及び掘削ガイドの実施態様の上面図である。
【0020】
【図5】坑井孔中の3つのヒーター及び掘削ガイドの実施態様の上面図である。
【0021】
【図6】坑井孔中のヒーターの端部を連結するための実施態様を示す。
【0022】
【図7】坑井孔から異なる方向に延びる多数ヒーターの実施態様図である。
【0023】
【図8】2つの坑井孔間に延びる複数ヒーターの多段(multiple)レベルの実施態様図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は各種の変形及び代替形態に影響を受け易いが、それらの特定の実施態様を図面で例示し、ここで詳細に説明できる。図面は、物差しで測定できない。しかし、図面及び図面についての詳細な説明は、本発明の限定を意図するものではなく、却って本発明は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変形、均等物及び代替物を包含するものであると理解すべきである。
【0025】
詳細な説明
以下の説明は一般には地層中の炭化水素を処理するためのシステム及び方法に関する。このような地層は炭化水素、水素及びその他の生成物を得るために処理できる。
【0026】
”交流(AC)”とは、方向を実質的に正弦状に逆転する時間変動電流をいう。ACは強磁性導電体に表皮効果電流を生じる。
【0027】
”流体圧力”は、地層中の流体によって発生する圧力である。”地盤圧力”(しばしば”地盤応力”といわれる)は、地層内圧力であり、重量/(被さっている岩盤の単位面積)に等しい。”静水圧”は、水柱によって発揮される地層内圧力である。
【0028】
”地層”としては、1つ以上の炭化水素含有層、1つ以上の非炭化水素層、上層土(overburden)、及び/又は下層土(underburden)が挙げられる。”炭化水素層”とは、炭化水素を含む地質内の層をいう。炭化水素層は、非炭化水素材料及び炭化水素材料を含んでもよい。”上層土”及び/又は”下層土”には、1つ以上の異なるタイプの非透過性材料が含まれる。例えば、上層土及び/又は下層土には、岩石、頁岩、泥岩、又は湿潤/緊密(tight)炭酸塩が含まれてもよい。現場熱処理法の幾つかの実施態様においては、上層土及び/又は下層土には、比較的非透過性であり、現場熱処理中の温度を受けない炭化水素含有層が含まれてもよい。上層土及び/又は下層土の炭化水素含有層がこのような温度を受ければ、炭化水素含有層に著しい特性変化をもたらす。例えば下層土は頁岩又は泥岩を含んでもよいが、下層土は現場熱処理プロセス中に、熱分解温度まで加熱することはできない。幾つかの場合においては、上層土及び/又は下層土は、幾らか透過性であってもよい。
【0029】
”地層流体”とは地層内に存在する流体をいい、これには、熱分解流体、合成ガス、易動性炭化水素、及び水(水蒸気)が含まれてもよい。地層流体には炭化水素流体、同様に非炭化水素流体が含まれてもよい。用語”易動性(mobilized)流体”とは、地層の熱処理の結果として、炭化水素含有地層内の流動可能な流体をいう。”生産流体(produced fluids)”とは、地層から除去された(又は取り出された)流体をいう。
【0030】
”熱源”は、熱を、実質的に導電及び/又は輻射熱伝達によって、地層の少なくとも一部に供給するいずれかのシステムである。例えば熱源には電気ヒーターが含まれてもよい。絶縁導電体、長尺部材、及び/又は導管中に配置した導電体などである。熱源にはまた、燃料を地層の外又は中で燃焼することによって、熱を生成するシステムが含まれてもよい。システムは、表面バーナー、ダウンホールガスバーナー、無炎分配型燃焼器、及び自然分配型燃焼器であってもよい。幾つかの実施態様においては、1つ以上の熱源に供給されるか、又はそこで発生する熱は、他のエネルギー源によって供給してもよい。他のエネルギー源は地層を直接加熱してもよく、或いはこのエネルギーは地層を直接又は間接に加熱する伝達媒体に適用してもよい。地層に熱を加える1つ以上の熱源は、異なるエネルギー源を用いてよいことは、理解すべきである。したがって、例えば所定の地層に対しては、幾つかの熱源は電気抵抗ヒーターから熱を供給してもよく、幾つかの熱源は燃焼により熱を供給してもよく、幾つかの熱源は1つ以上の他のエネルギー源(例えば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、又は他の再生可能なエネルギー源)から熱を供給してもよい。化学反応には発熱反応(例えば、酸化反応)が含まれてもよい。熱源にはまた、ヒーター坑井のような加熱場所の近傍、及び/又はそれを取り囲む帯域に熱を供給するヒーターが含まれてもよい。
【0031】
”ヒーター”は、熱を坑井内又は坑井孔領域付近で生成するためのいずれかのシステム又は熱源である。ヒーターは、限定されるものではないが、電気ヒーター、バーナー、地層内の材料、又はそこから生産される材料と反応する燃焼器、及び/又はそれらの組合せであってもよい。
【0032】
”炭化水素”は、一般に主として炭素及び水素原子によって形成される分子として定義される。炭化水素には、他の元素(限定されるものではないが、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、及び/又は硫黄など)が含まれてもよい。炭化水素は、限定されるものではないが、ケローゲン、ビチューメン、ピロビチューメン、油、天然鉱ワックス、及びアスファルト鉱であってもよい。炭化水素は地球の鉱物基質中、又はそれに隣接して配置されていてもよい。基質には、限定されるものではないが、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻土、及び他の多孔質媒体が含まれてもよい。”炭化水素流体”は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水、及びアンモニアなど非炭化水素流体を含有していてよいし、これを混入してもよいし、これに混入されてもよい。
【0033】
”現場転化法”とは、炭化水素含有地層を、熱源で加熱して、地層の少なくとも一部の温度を熱分解温度を超える温度に昇温させ、こうして熱分解流体が地層内に生産される方法をいう。
【0034】
”現場熱処理法”とは、炭化水素含有地層を熱源で加熱して、層の少なくとも一部の温度を、炭化水素含有材料の易動性流体、粘度低下(visbreaking)、及び/又は熱分解が生じる温度を超える温度に上昇させ、こうして易動性流体、ビスブレーキング流体、及び/又は熱分解流体が、地層内に生産される方法をいう。
【0035】
”絶縁導電体”とは電気を導くことができ、かつ全体又は一部が、電気絶縁材料によって被覆されるいずれかの長尺材料をいう。
【0036】
”熱分解”は、熱を加えることによる化学結合の切断である。例えば、熱分解には、化合物を熱のみによって1種以上の他の材料に変換する工程が含まれてもよい。熱は地層の或る区画に移送されて、熱分解を引起こしてもよい。
【0037】
”熱分解流体”又は”熱分解生成物”とは、実質的に炭化水素の熱分解中に、生産又は生成される流体をいう。熱分解反応によって生産される流体は、地層内の他の流体と混合してもよい。混合物は熱分解流体又は熱分解生成物とみなされる。ここで使用する”熱分解帯域”とは、反応させるか、又は反応して熱分解流体を形成する或る容積の地層(例えば、タールサンド地層などの比較的透過性の地層)をいう。
【0038】
“熱の重なり”とは、2つ以上の熱源間の少なくとも1箇所の地層の温度が、これらの熱源により影響を受けるように、地層の選択された区画に2つ以上の熱源から熱を供給することである。
【0039】
“u形坑井孔”とは、地層の第一開口から延びて、地層の少なくとも一部を経由し、地層の第二開口経由で出る坑井孔のことである。これに関連して坑井孔は、単に大凡“v”又は“u”の形状であって、“u”の脚が 、“u”形とみなされる坑井孔の“u”底部に対し互いに平行か、或いは垂直である必要はないと理解する。
【0040】
“品質向上”とは、炭化水素の品質を向上させることである。例えば重質炭化水素を品質向上すると、重質炭化水素のAPI比重を増大できる。
【0041】
用語“坑井孔”とは、地層中に導管を掘削又は挿入して作った地層中の孔のことである。坑井孔は、ほぼ円形の断面又は他の断面形状を有する。ここで、地層の開口に関して使用した用語“坑井”及び“開口”は、用語“坑井孔”と交換可能に使用できる。
【0042】
地層は多数の異なる生成物を生産するため、種々の方法で処理してよい。現場熱処理プロセス中、地層を処理するため、種々の段階又は方法を使用してよい。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は、可溶鉱物を除去するため、溶液採鉱される。鉱物の溶液採鉱は、現場熱処理法の前、処理法中又は処理法の後に行ってよい。幾つかの実施態様では、溶液採鉱される1つ以上の区画の平均温度は約120℃未満に維持してよい。
【0043】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は水を除去するため、及び/又はメタン及びその他の揮発性炭化水素を除去する(取り出す)ため、加熱される。幾つかの実施態様では水及び揮発性炭化水素の除去中、平均温度は周囲温度から約220℃未満の温度に上げてよい。
【0044】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は地層中の炭化水素を移動及び/又は粘度低下させる温度に加熱される。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度はその区画の炭化水素の易動化温度(例えば100〜250℃、120〜240℃、又は150〜230℃の範囲の温度)に上げられる。
【0045】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は地層中で熱分解反応させる温度に加熱される。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度はその区画の炭化水素の熱分解温度(例えば230〜900℃、240〜400℃、又は250〜350℃の範囲の温度)に上げてよい。
【0046】
炭化水素含有地層を複数の熱源で加熱すると、地層中の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度に上昇させる熱源周囲の熱勾配を確立できる。所望生成物用の易動化温度範囲及び/又は熱分解温度範囲内での昇温速度は、炭化水素含有地層から生成する地層流体の品質及び量に影響を与える可能性がある。易動化温度範囲及び/又は熱分解温度範囲内で温度を徐々に上昇させると、地層から高品質で高API比重の炭化水素を生産することが可能である。熱分解温度範囲内で地層の温度を徐々に上昇させると、炭化水素生成物として地層中に存在する炭化水素を多量に取出すことが可能である。
【0047】
幾つかの現場熱処理の実施態様では地層の一部は、或る温度範囲内で徐々に所望温度に加熱することなく、所望温度に加熱される。幾つかの実施態様では所望温度は300℃、325℃又は350℃である。所望温度として、その他の温度も選択できる。
【0048】
複数の熱源から熱を重ねると、地層中に比較的早く、かつ効率的に所望温度を確立することができる。熱源からの地層へのエネルギー入力は、地層の温度をほぼ所望温度に維持するように調節してよい。
【0049】
易動化及び/又は熱分解生成物は地層から生産坑井経由で生産できる。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度は炭化水素の易動化温度まで上げられ、生産坑井から炭化水素が生産される。1つ以上の区画の平均温度は選択値未満に低下する。幾つかの実施態様では1つ以上の区画の平均温度は熱分解温度に達する前に著しい生産物を伴うことなく熱分解温度に上げてよい。
【0050】
幾つかの実施態様では1つ以上の区画の平均温度は易動化及び/又は熱分解後に合成ガスを生産するのに充分な温度に上げてよい。幾つかの実施態様では炭化水素は、合成ガスを生産するのに充分な温度に達する前に、著しい生産物を伴わずに合成ガスを生産するのに充分な温度に上げてよい。例えば合成ガスは約400〜1200℃、約500〜1100℃、約550〜1000℃の範囲の温度で生産できる。合成ガス発生用流体(例えば水蒸気及び/又は水)は合成ガスを発生する区画に導入してよい。合成ガスは生産坑井から生産できる。
【0051】
溶液採鉱、揮発性炭化水素及び水の除去、炭化水素の易動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの発生、及び/又はその他の方法は現場熱処理法中、行ってよい。幾つかの実施態様では幾つかの方法は現場熱処理法の後で行ってもよい。このような方法としては、限定されるものではないが、処理区画から熱を回収する方法、予備処理区画の流体(例えば水及び/又は炭化水素)を貯蔵する方法、及び/又は予備処理区画に二酸化炭素を隔離する方法が挙げられる。
【実施例】
【0052】
図1は炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の実施態様を概略的に示す。現場熱処理システムは、障壁坑井(barrier wall)200を有する。障壁坑井は処理領域の周囲に障壁を形成するために使用される。この障壁は流体流が処理領域内及び/又は処理領域外に入るのを阻止する。障壁坑井としては、限定されるものではないが、水除去性坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、又はそれらの組合わせが挙げられる。幾つかの実施態様では、障壁坑井200は水除去性坑井である。水除去性坑井は液体水を除去できる、及び/又は液体水が加熱すべき又は加熱中の地層又は地層の或る部分に入るのを阻止できる。図1に示す実施態様では障壁坑井200は熱源202の片側沿いにだけ延びているが、障壁坑井は地層の処理領域を加熱するために、使用されるか又は使用すべき熱源202を全て囲っている。
【0053】
熱源202は地層の少なくとも一部に配置される。熱源202としては、絶縁導電体、導管内導電体型(conductor-in-conduit)ヒーター、表面バーナー、無炎分配燃焼器、及び/又は自然分配燃焼器のようなヒーターが挙げられる。熱源202は、他種のヒーターであってもよい。熱源202は、地層中の炭化水素を加熱するため、地層の少なくとも一部に熱を供給する。供給ライン204経由で熱源202にエネルギーを供給してもよい。供給ライン204は、地層の加熱に使用する熱源の種類に従って、構造的に異なっていてもよい。熱源用供給ライン204は、電気ヒーター用の電気を伝達できるか、燃焼器用の燃料を輸送できるか、或いは地層に循環させる熱交換流体を輸送できる。幾つかの実施態様では現場熱処理プロセス用の電気は原子力発電所により供給できる。原子力を使用すれば、現場熱処理プロセスからの二酸化炭素排出量を低減又は無くすことができる。
【0054】
生産坑井206は地層から地層流体を取出すために使用される。幾つかの実施態様では生産坑井206は熱源を備える。生産坑井中の熱源は、この生産坑井での又は生産坑井近くの地層の1つ以上の部分を加熱できる。現場熱処理法の幾つかの実施態様では、生産坑井から地層に供給される生産坑井1m当たりの熱量は、地層を加熱する熱源から地層に供給される熱源1m当たりの熱量よりも少ない。
【0055】
幾つかの実施態様では、生産坑井206の熱源により、地層からの地層流体の気相除去が可能となる。生産坑井で、又は生産坑井を通して加熱を行うと、(1)これらの生産流体が上層土近傍の生産坑井内を移動している場合には、生産流体の凝縮及び/又は逆流を防止できる、(2)地層中への熱入力を増大できる、(3)生産坑井からの生産速度を、熱源を用いない生産坑井に比較して増大できる、(4)生産坑井における高炭素数化合物(C以上)の凝縮を防止できる、及び/又は(5)生産坑井で、又は生産坑井近傍で地層の透過性を増大できる。
【0056】
地層内の地下圧力は、地層内に生じた流体圧力と一致してもよい。地層の加熱部分における温度が増大するにつれて、流体の熱膨張、流体の生成及び水の気化が増大する結果として、加熱部分における圧力は増大してもよい。地層からの流体除去速度を制御することにより、地層内の圧力の制御が可能である。地層内の圧力は多数の異なる場所(生産坑井付近又は生産坑井、熱源付近又は熱源、又は監視坑井など)で測定してよい。
【0057】
幾つかの炭化水素含有地層では地層からの炭化水素の生産は、地層内の少なくとも若干の炭化水素が易動化及び/又は熱分解するまで抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合には、地層流体は地層から生産してもよい。幾つかの実施態様では、選択された品質には、少なくとも約15°、20°、25°、30°、又は40°のAPI比重が含まれる。少なくとも若干の炭化水素が熱分解するまで生産を抑制することにより、重質炭化水素の軽質炭化水素への転化が増大できる。初期の生産を抑制することにより、地層からの重質炭化水素の生産が最小化できる。相当量の重質炭化水素の生産は、高価な設備を必要とするか、及び/又は生産設備の寿命を低下するかも知れない。
【0058】
熱分解温度に達し、地層からの生産が可能になった後、地層内の圧力は、生産された地層流体の組成を変更及び/又は制御するため、地層流体中の非凝縮性流体に比較して凝縮性流体の%割合を制御するため、及び/又は生産中の地層流体のAPI比重を制御するため、変化させてもよい。例えば、圧力の低下により、更に多くの凝縮性流体成分を生産してもよい。凝縮性流体成分はオレフィンを大きな%割合で含んでもよい。
【0059】
幾つかの現場熱処理プロセスの実施態様では地層内の圧力は、API比重が20°を超える地層流体の生産を促進するのに十分に高く、保持してよい。増大した圧力を地層内で保持することにより、現場熱処理中、地層の沈下が防止できる。増大した圧力を保持することにより、地層流体を表面で圧縮する必要性を低下又は回避して、流体を収集導管で処理設備に輸送できる。
【0060】
増大した圧力を地層の加熱部分で保持することにより、意外にも、品質の向上及び比較的低分子量を有する多量の炭化水素の生産が可能となる。生産された地層流体が特定の選択された炭素数を超える化合物の量を最少にするように、圧力を保持できる。選択された炭素数は最大で25、最大で20、最大で12、又は最大で8であってよい。高炭素数の幾つかの化合物は地層内の蒸気に同伴されてもよく、蒸気と共に地層から除去されてもよい。増大圧力を地層内で保持することにより、高炭素数の化合物及び/又は多環炭化水素化合物の蒸気への同伴が防止できる。高炭素数の化合物及び/又は多環炭化水素化合物は、かなりの時間の間、液相で地層内にあってもよい。かなりの時間は、化合物が熱分解して、低炭素数の化合物を形成するのに十分な時間であってよい。
【0061】
生産坑井206から生産された地層流体は収集配管208を通って処理設備210に輸送してもよい。また地層流体は熱源202から生産されてもよい。例えば流体は熱源202から生産されて、熱源に隣接する地層内の圧力を制御してもよい。熱源202から生産された流体は配管を通って、収集配管208へ輸送してもよいし、又は生産された流体は、配管を通って、直接に処理設備210へ輸送してもよい。処理設備210としては、分離ユニット、反応ユニット、品質高向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、及び/又はその他、生産された地層流体を処理するためのシステム又はユニットが挙げられる。処理設備は、地層で生産された炭化水素の少なくとも一部から輸送用燃料を形成できる。幾つかの実施態様では輸送用燃料はジェット燃料であってよい。
【0062】
図2は単一の三相変圧器に連結した共通の上層土部分を有する3つのu形ヒーターの実施態様を示す。特定の実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは露出金属ヒーターである。幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは、ヒーター上に薄い電気絶縁被覆を有する露出金属ヒーターである。例えばヒーター212A、212B、212Cは410ステンレス鋼、炭素鋼、347Hステンレス鋼又はその他の耐腐食性ステンレス鋼のロッド又は管状体(例えば2.5cm又は3.2cm径のロッド)であってよい。ロッド又は管状体は、ロッドを電気絶縁するため、ロッドの外側に磁器エナメル被覆を持っていてよい。
【0063】
幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは絶縁導電体ヒーターである。幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは導管内導電体型ヒーターである。ヒーター212A、212B、212Cは炭化水素層216中でほぼ平行か、或いは傾斜してよい。幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは共通坑井孔220A経由で地層に入ってよい。幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは共通坑井孔220B経由で地層を出てもよい。特定の実施態様では坑井孔220A、220Bは炭化水素層216中でケースなし(例えば開放坑井孔)でもよい。
【0064】
開口222A、222B、222Cは坑井孔220Aと坑井孔220B間に及ぶ。開口222A、222B、222Cは炭化水素層216中でケースなしの開口でもよい。特定の実施態様では開口222A、222B、222Cは坑井孔220A及び/又は坑井孔220Bから掘削により形成される。幾つかの実施態様では開口222A、222B、222Cは各坑井孔220A及び220Bから掘削し、開口の中央又はその近くで接続することにより形成される。炭化水素層の両側から中央に向かって掘削すると、炭化水素層中に長い開口を形成できる。したがって、炭化水素層216には長いヒーターが配置できる。例えばヒーター212A、212B、212Cの長さは約1500m以上、約3000m以上又は約4500m以上であってよい。
【0065】
炭化水素層216中に2つの坑井孔だけから延びる多数の長いほぼ平行な又は傾斜したヒーターを有すると、地層の加熱に必要な表面上の坑井のフットプリントは減少する。地層中に掘削するのに必要な上層土坑井孔の数は減少し、地層中のヒーター1つ当たりの資金が少なくなる。地層を複数の長いほぼ平行な又は傾斜したヒーターで加熱すると、地層の処理に使用される上層土区画の数が減ったため、地層の加熱時における上層土236全体の熱損失も低下する(例えば上層土236での損失は地層に供給される合計電力の何分の1かである)。
【0066】
幾つかの実施態様では、ヒーター212A、212B、212Cを一端から他端に亘る坑井孔220A、220B及び開口222A、222B、222Cから(through)引っ張ることにより、複数のヒーターをこれらの坑井孔及び開口内に取付ける。例えば取付け道具を開口に押し込んで、坑井孔220A内のヒーターに連結できる。次に、この取付け道具を用いて、ヒーターを開口から坑井孔220Bに向かって引っ張ることができる。ヒーターは爪、キャッチャー又はその他、当該技術分野で既知の器具のようなコネクターを用いて取付け道具に連結できる。
【0067】
幾つかの実施態様では坑井孔220Aから開口の第一の半分が掘削され、次いで該開口の第一半分経由で坑井孔220Bから開口の第二の半分が掘削される。ドリルビットは坑井孔220Aに押し込むことができ、またこのドリルビットに第一のヒーターを連結して、第一ヒーターを該開口から引っ張り戻し、第一ヒーターを該開口中に取付けできる。第一ヒーターは爪、キャッチャー又はその他、当該技術分野で既知の器具のようなコネクターを用いてドリルビットに連結できる。
【0068】
第一ヒーターを取付けた後、第二の開口の掘削を案内するため、管又はその他のガイドを坑井孔220A及び/又は坑井孔220Bに配置してよい。図3は坑井孔220中のヒーター212A及び掘削ガイド224の実施態様の上面図である。掘削ガイド224は地層中の第二開口の掘削及び第二開口中の第二のヒーターの取付けを案内するのに使用できる。絶縁体226Aは掘削ガイド224からヒーター212Aを電気的、機械的に絶縁できる。掘削ガイド224及び絶縁体226Aは第二開口の掘削中及び第二ヒーター212Aの取付け中、ヒーター212Aの損傷を保護することができる。
【0069】
第二ヒーターを取付けた後、掘削ガイド224は、図4に示すように、第三の開口の掘削を案内するため、坑井孔220内に配置してよい。掘削ガイド224は地層中の第三開口の掘削及び第三開口中の第三のヒーターの取付けを案内するのに使用できる。絶縁体226A及び226Bは掘削ガイド224から、それぞれヒーター212A、212Bを電気的、機械的に絶縁できる。掘削ガイド224及び絶縁体226A及び226Bは第三開口の掘削中及び第三ヒーターの取付け中、ヒーター212A及び212Bの損傷を保護することができる。第三ヒーターを取付け後、絶縁体226A及び226Bは取り除いてよく、またヒーター212A、212B、212Cを分離し間隔を空けるため、坑井孔220内に集中化群を配置してよい。図5は集中化群218により分離された坑井孔220内のヒーター212A、212B、212Cを示す。
【0070】
幾つかの実施態様では開口を全て地層中に形成し、次いでヒーターを地層中に取付ける。特定の実施態様では開口の1つを形成し、ヒーターの1つを地層中に取付けた後、他の開口を形成し、他のヒーターを取付ける。第一の取付けヒーターは、別の開口を形成中、ガイドとして使用してよい。第一取付けヒーターはエネルギーを付与されて、他の開口の形成を案内するのに使用される電磁場を生成できる。例えば第一取付けヒーターは2極DC電流によりエネルギーを付与されて、他の開口の掘削を機械的に案内できる。
【0071】
特定の実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは、図2に示すように、ヒーターの一端で単一の三相変圧器228に連結される。ヒーター212A、212B、212Cは三組構造中で電気的に互いに連結していてよい。幾つかの実施態様では2つのヒーターは二組構造中で互いに連結している。変圧器228は三相Y字状回路変圧器である。各ヒーターは変圧器228の一相に連結してよい。ヒーターの電力に三相電力を使用すると、一相電力を使用した場合よりも一層効率的かも知れない。ヒーターに三相接続を使用すると、坑井孔220A内のヒーターの磁場は互いに相殺される。相殺された磁場は上層土ケーシング230Aを強磁性にする(例えば炭素鋼)。坑井孔に強磁性ケーシングを使用すると、非強磁性ケーシング(例えばガラス繊維ケーシング)の場合よりも安価になる、及び/又は取付け容易になるかも知れない。
【0072】
幾つかの実施態様ではヒーターの上層土区画間のショートを防止するため、ヒーター212A、212B、212Cの上層土区画は重合体又はエナメル被覆のような絶縁体で被覆される。幾つかの実施態様では坑井孔220B内のヒーター区画は大きな電気損失を示さない可能性があるので、坑井孔220A内のヒーターの上層土区画だけが絶縁体で被覆される。幾つかの実施態様では坑井孔220A内のヒーター212A、212B、212Cの端又は端部(端、その近く又はその付近)は、絶縁体を必要としないように、上層土ケーシング230Aから離れた複数のヒーターのうちの少なくとも1つの直径である。ヒーター212A、212B、212Cの端又は端部は、例えばこれらのヒーターを上層土ケーシング230Aから離れた所望の距離に保持するため、集中化部材を用いて坑井孔220A中で集中化してよい。
【0073】
幾つかの実施態様では坑井孔220Bを通るヒーター212A、212B、212Cの端又は端部は、図2に示すように該坑井孔220Bの外側に電気的に連結し、接地される。坑井孔220B内ではこれらヒーターの磁場は互いに相殺できる。こうして上層土ケーシング230Bは強磁性(例えば炭素鋼)であってよい。特定の実施態様ではヒーター212A、212B、212Cの上層土区画は銅の棒又は管状体である。ヒーターの構造(build)区画(上層土区画と加熱区画との間の過渡区画)も銅又は同様な導電材料製でよい。
【0074】
幾つかの実施態様では坑井孔220Bを通るヒーター212A、212B、212Cの端又は端部は、一緒に該坑井孔の内側に電気的に連結してよい。これらヒーターの端又は端部は、上層土236の底部又はその近くで坑井孔の内側と連結してよい。上層土236の底部又はその近くでヒーター同士を連結すると、坑井孔の上層土区画での電気損失が減少する。
【0075】
図6は坑井孔220B内のヒーター212A、212B、212Cの端又は端部を連結する実施態様を示す。坑井孔220Bの上層土区画の底部又はその近くにプレート232を配置してよい。プレート232はヒーター212A、212B、212Cを該プレート中に挿入する大きさの開口を備えてよい。プレート232は坑井孔220Bの所定位置にヒーター212A、212B、212Cを滑り落とせる。プレート232は銅又は同様な導電材料製でよい。
【0076】
坑井孔220Bの上層土部分中にボール234を置いてよい。プレート232はボール234をヒーター212A、212B、212Cの周囲の坑井孔220Bの上層土区画に定置できる。ボール234は銅又はニッケルメッキ銅のような導電材料製でよい。ボール234及びプレート232は、ヒーター212A、212B、212Cが接地されるように互いに電気的に連結できる。幾つかの実施態様ではプレート232上方のヒーター部分(ヒーターの上層土区画)は炭素鋼製であるが、プレート下方のヒーター部分(ヒーターの過渡区画)は銅製である。
【0077】
幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは図2に示すように、ヒーターの長さ沿いに変化する熱出力を供給する。例えばヒーター212A、212B、212Cはヒーターの長さ沿いに変化する寸法(例えば厚さ又は直径)を有する。このように変化する厚さは、ヒーターの長さ沿いに異なる電気抵抗を付与でき、こうしてヒーターの長さ沿いに異なる熱出力を付与できる。
【0078】
幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212Cは、2つ以上の加熱区画に分割される。幾つかの実施態様では、これらのヒーターは異なる熱出力の繰り返し区画に分割される(例えば異なる熱出力の交互繰り返し区画)。幾つかの実施態様では異なる熱出力の繰り返し区画を使用して階段状に(in stages)地層を加熱できる。一実施態様では坑井孔220Aに最も近い複数のヒーターのうち半分は炭化水素層216の第一区画に熱を供給してよく、また坑井孔220Bに最も近い複数のヒーターのうち半分は炭化水素層216の第二区画に熱を供給してよい。地層中の炭化水素は第一区画に供給される熱により易動化できる。第二区画の炭化水素の品質を向上するため、第二区画の炭化水素は第一区画よりも高温に加熱できる(例えば第二区画の炭化水素は更に易動化及び/又は熱分解できる)。第一部分からの炭化水素は品質向上のため、第二区画に移動し、又は移動させてよい。例えば第二区画の易動化炭化水素を第二区画に移動させるため、駆動流体を坑井孔220Aに通してよい。
【0079】
幾つかの実施態様では4つ以上のヒーターが坑井孔220A及び/又は220Bから延びている。複数の坑井孔から3の倍数(multiples)のヒーターが延び、変圧器に連結していれば、坑井孔の3つのヒーターの場合と同様、磁場は坑井孔の上層土区画で相殺できる。例えば坑井孔中の磁場を相殺するため、変圧器228の各相に連結した2つのヒーターを有する変圧器228に6つのヒーターを連結できる。
【0080】
幾つかの実施態様では1つの坑井孔から異なる方向に多数のヒーターが延びている。図7は坑井孔220Aから異なる方向に延びる多数のヒーターの実施態様を概略的に示す。ヒーター212A、212B、212Cは坑井孔220Bに延びてよい。ヒーター212D、212E、212Fは、ヒーター212A、212B、212Cとは反対方向で坑井孔220Cに延びてよい。ヒーター212A、212B、212C及びヒーター212D、212E、212Fは坑井孔220A中で磁場が相殺されるように単一の三相変圧器に連結してよい。
【0081】
幾つかの実施態様では炭化水素層216が異なる加熱速度及び/又は温度を有する2つの加熱区画(例えば易動化区画及び熱分解化区画)に分割されるように、ヒーター212A、212B、212Cはヒーター212D、212E、212Fとは異なる熱出力を持ってよい。幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212C及び/又はヒーター212D、212E、212Fは、炭化水素層216を更に多くの加熱区画に分割するようにヒーターの長さ沿いに変化する熱出力を持ってよい。幾つかの実施態様では追加のヒーターを図7のダッシュ(―)線で示すように、坑井孔220B及び/又は坑井孔220Cから地層中の他の坑井孔まで延長してよい。
【0082】
幾つかの実施態様では2つの坑井孔間に多段レベルのヒーターが延びる。図8は坑井孔220Aと坑井孔220B間に延びる多段レベルのヒーターの実施態様を概略的に示す。ヒーター212A、212B、212Cは第一レベルの炭化水素層216に熱を供給できる。ヒーター212D、212E、212Fは第二レベルの炭化水素層216に熱を供給できる。ヒーター212G、212H、212Iは更に分岐して第三レベルの炭化水素層216に熱を供給できる。幾つかの実施態様ではヒーター212A、212B、212C、ヒーター212D、212E、212F、及びヒーター212G、212H、212Iは地層中に異なる特性を有するレベルまで熱を供給する。例えば異なるヒーター群は地層中に異なる特性を有するレベルまで異なる熱出力を供給して、これらのレベルを同じか、ほぼ同じ速度で加熱できる。
【0083】
幾つかの実施態様ではこれらのレベルは、地層中に異なる加熱帯域を作るため、異なる速度で加熱される。例えば第一レベル(ヒーター212A、212B、212Cで加熱される)は、炭化水素が易動化するまで加熱でき、第二レベル(ヒーター212D、212E、212Fで加熱される)は、炭化水素が第一レベルから若干品質向上するまで加熱でき、また第三レベル(ヒーター212G、212H、212Iで加熱される)は炭化水素を熱分解するまで加熱できる。他の一例として、第一レベルは同レベル内でガスを生成し、及び/又は流体を駆逐する(drive)まで加熱でき、また第二レベル又は第三レベルは流体を易動化する、及び/又は熱分解するまで、或いは該レベル中で丁度、生産レベルまで加熱できる。更にヒーター212A、212B、212C、ヒーター212D、212E、212F及び/又はヒーター212G、212H、212Iは、更に炭化水素層216を多くの加熱区画に分割するため、ヒーターの長さ沿いに変化する熱出力を持ってよい。
【0084】
以上の説明から本発明の各種面での更なる改変及び代替実施態様を使用できることは当業者には明らかである。したがって、以上の説明は単に例証と解釈すべきであり、当業者に本発明を実施する一般的な方法を教示する目的のためである。ここに示し説明した本発明の形態は、現在の好ましい実施態様として受取るものと理解すべきである。構成要素及び材料は、ここで例証し、説明したものに取替え可能であり、部品及び方法は取替え可能であり、また本発明の特定の特徴は、独立に利用可能である。これらは全て本発明についての以上の説明の利益を享受した後、当業者には明らかであろう。特許請求の範囲に記載した本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、以上説明した構成要素に変化を行うことは可能である。更に、ここで説明した特徴は、特定の実施態様において組合わせ可能であると理解すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】米国特許第2,923,535号
【特許文献2】米国特許第4,886,118号
【特許文献3】米国特許第2,548,360号
【特許文献4】米国特許第4,716,960号
【特許文献5】米国特許第5,065,818号
【特許文献6】米国特許第6,023,554号
【特許文献7】米国特許第4,570,715号
【特許文献8】米国特許第5,060,287号
【特許文献9】米国特許第7,153,373号
【特許文献10】米国特許出願公開第US 2004/0191109号
【符号の説明】
【0086】
200 障壁坑井
202 熱源
204 供給ライン
206 生産坑井
208 収集配管
210 処理設備
212 ヒーター
216 炭化水素層
218 集中化群
220 坑井孔
222 開口
224 掘削ガイド
226 絶縁体
228 三相変圧器
230 上層土ケーシング
232 プレート
234 ボール
236 上層土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターの第一端部は単一の三相Y字状回路変圧器に電気的に連結し、ヒーターの第二端部は互いに及び/又は地面に連結した3つのほぼu形のヒーターであって、これら3つのヒーターの磁場が共通の坑井孔内で少なくとも部分的に相殺されるように、これらのヒーターは第一の共通の坑井孔を経由して地層に入り、第二の共通の坑井孔を経由して地層を出る該3つのヒーターを有する地表下地層用加熱システム。
【請求項2】
前記ヒーターのうち少なくとも2つのヒーターは、地層の炭化水素層内で少なくとも部分的にほぼ平行である加熱区画を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項3】
前記3つのヒーターのうち少なくとも1つのヒーターは、露出した金属加熱区画を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項4】
前記3つのヒーターのうち少なくとも1つのヒーターは、絶縁された導電体加熱区画を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項5】
前記3つのヒーターのうち少なくとも1つのヒーターは、導管内導電体型加熱区画を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項6】
前記3つのヒーターが、これらヒーターの加熱区画の少なくとも一部中に410ステンレス鋼を含むと共に、これらヒーターの上層土区画の少なくとも一部中に銅を含む請求項1に記載の加熱システム。
【請求項7】
前記第一共通坑井孔の上層土区画の少なくとも一部中に強磁性ケーシングを更に含む請求項1に記載の加熱システム。
【請求項8】
前記第二共通坑井孔の上層土区画の少なくとも一部中に強磁性ケーシングを更に含む請求項1に記載の加熱システム。
【請求項9】
前記各ヒーターが変圧器の一相に連結される請求項1に記載の加熱システム。
【請求項10】
前記第一共通坑井孔を経由して入る3の倍数の追加のヒーターを更に含む請求項1に記載の加熱システム。
【請求項11】
前記第一共通坑井孔を経由して入り、第二共通坑井孔を経由して出る3の倍数の追加のヒーターを更に含む請求項1に記載の加熱システム。
【請求項12】
前記ヒーターのうち少なくとも1つのヒーターが、他のヒーターのうちの少なくとも1つのヒーターに使用される地層の開口の掘削を指向的に舵取りするために使用される請求項1に記載の加熱システム。
【請求項13】
前記3つのヒーターが、第二共通坑井孔内で電気的に一緒に連結される請求項1に記載の加熱システム。
【請求項14】
前記3つのヒーターが、第一共通坑井孔と第二共通坑井孔との間に広がる3つの開口に配置される請求項1に記載の加熱システム。
【請求項15】
前記3つのヒーターのうち少なくとも1つのヒーターが、該ヒーターの長さの少なくとも一部沿いに異なる熱出力を供給する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項16】
前記3つのヒーターのうち少なくとも1つのヒーターが、該ヒーターの長さの少なくとも一部沿いに異なる熱出力を供給するために、該ヒーターの長さの少なくとも一部沿いに異なる材料を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項17】
前記3つのヒーターのうち少なくとも1つのヒーターが、該ヒーターの長さの少なくとも一部沿いに異なる熱出力を供給するために、該ヒーターの長さの少なくとも一部沿いに異なる寸法を有する請求項1に記載の加熱システム。
【請求項18】
前記第一共通坑井孔の少なくとも大部分が、垂直であるか、ほぼ垂直であるか、又は垂直に傾いていると共に、前記第二共通坑井孔の少なくとも大部分が、垂直であるか、ほぼ垂直であるか、又は垂直に傾いている請求項1に記載の加熱システム。
【請求項19】
前記3つのヒーターのうち少なくとも1つのヒーターの少なくとも大部分が、水平であるか、ほぼ水平であるか、又は水平に傾いている請求項1に記載の加熱システム。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の加熱システムを用いて地表下地層を加熱する方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−501004(P2011−501004A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530046(P2010−530046)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/079709
【国際公開番号】WO2009/052047
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP