説明

地表下炭化水素含有地層を処理するための鉱坑及びトンネルの使用

地表下炭化水素含有地層用処理システムが開示される。このシステムは1つ以上のトンネルを有する。トンネルの平均直径は1m以上で、少なくとも1つのトンネルは地層の表面に接続している。2つ以上の坑井孔がトンネルの少なくとも1つから該地表下炭化水素含有地層の少なくとも一部内に延びている。坑井孔の少なくとも2つは、該地表下炭化水素含有地層の少なくとも一部を加熱して、少なくとも若干の炭化水素が流動化するように構成した長尺の熱源を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には炭化水素含有地層のような各種炭化水素含有地層から炭化水素、水素及び/又はその他の製品生産する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
地表下地層から得られる炭化水素はエネルギー資源として、供給原料として、また消費製品として使用されることが多い。有用な炭化水素資源の枯渇に対する関心及び生産した炭化水素の全体的な品質低下に対する関心により、有用な炭化水素資源の一層効率的な回収、処理及び/又は使用方法が開発されてきた。地下の地層から炭化水素材料を取り出すため、現場プロセスが使用できる。地下の地層から炭化水素材料を一層容易に取り出すためには、地下地層中の炭化水素材料の化学的及び/又は物理的特性を変える必要があるかも知れない。このような化学的物理的変化は、地層中の炭化水素材料についての取出し可能な流体、組成変化、溶解度変化、密度変化、相変化及び/又は粘度変化を生成する現場反応を含むかも知れない。流体は、限定されるものではないが、ガス、液体、エマルジョン、スラリー、及び/又は液体流と同様の流動特性を有する固体粒子の流れであってよい。
【0003】
現場プロセス中、地層を加熱するため、ダウンホール(downhole)ヒーターを設けてよい。ダウンホールヒーターを用いる現場プロセスの例は、Ljungstromの米国特許第2,634,961号、同じく米国特許第2,732,195号、同じく米国特許第2,780,450号、同じく米国特許第2,789,805号、同じく米国特許第2,923,535号、及びVan Meurs等の米国特許第4,886,118号に記載されている。
【0004】
現場熱処理法を用いて炭化水素含有地層を処理するため多くの異なる種類の坑井又は坑井孔が使用できる。幾つかの実施態様では地層の処理に垂直及び/又はほぼ垂直の坑井が使用されている。幾つかの実施態様では地層の処理に水平及び/又はほぼ水平の坑井(例えばJ形坑井及び/又はL形坑井)、及び/又はu形坑井が使用されている。幾つかの実施態様では地層の処理に水平坑井、垂直坑井の組合わせ、及び/又はその他の組合わせが使用されている。特定の実施態様では坑井は、地層の上層土(overburden)を通って地層の炭化水素含有層に延びている。幾つかの状況では杭井内の熱は上層土までに失われる。幾つかの状況ではヒーターの支持に使用される表面及び上層土の基盤施設(infrastructure)及び/又は水平杭井孔又はu形坑井孔内の生産機器(equipment)は大型及び/又は多数である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭化水素含有地層から炭化水素、水素及び/又はその他の製品を経済的に生産する方法及びシステムの開発には大きな努力が払われてきた。しかし、現在、炭化水素、水素及び/又はその他の製品を経済的に生産できない炭化水素含有地層がなお多数存在する。したがって、地層の処理に小型のヒーター及び/又は小型の機器を使用可能にする改良方法及び改良システムが必要である。また、表面を基盤とする(based)機器を利用する炭化水素回収法に比べて、地層処理のエネルギーコストを低下させ、該処理方法からの放出物を低減し、加熱システムの設置を容易化し、及び/又は上層土への熱の損失を低減する改良方法及び改良システムも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
ここに記載した実施態様は一般に地表下地層を処理するためのシステム、方法及びヒーターに関する。
【0007】
特定の実施態様では、本発明は1つ以上の方法、システム及び/又はヒーターを提供する。幾つかの実施態様ではこれらの方法、システム及び/又はヒーターが地表下地層の処理に使用される。
【0008】
特定の実施態様では本発明は、トンネルの平均直径が1m以上で、少なくとも1つのトンネルは地表下炭化水素含有地層の表面に接続した1つ以上のトンネル;及び該トンネルの少なくとも1つから該地表下炭化水素含有地層の少なくとも一部に延びた2つ以上の坑井孔であって、該坑井孔の少なくとも2つは、該地表下炭化水素含有地層の少なくとも一部を加熱して、少なくとも若干の炭化水素が流動化するように構成した長尺の熱源を有する該坑井孔;を備えた地表下炭化水素含有地層用処理システムを提供する。
【0009】
特定の実施態様では本発明は、前記システムから地表下炭化水素含有地層に熱を供給して地層中の炭化水素の少なくとも若干を流動化させる工程を含む地表下炭化水素含有地層の処理方法を提供する。
【0010】
更なる実施態様では特定の実施態様の特徴は他の実態の特徴と組み合わせてよい。例えば一実施態様の特徴は他の実施態様のいずれかの特徴と組み合わせてよい。
【0011】
更なる実施態様では前述した方法、システム又はヒーターのいずれかを用いて地表下地層の処理が行われる。
【0012】
更なる実施態様では前述した特定の実施態様に別の特徴を追加してよい。
【0013】
図面の簡単な説明
本発明の利点は、以下の詳細な説明の利得により、添付図面を参照して当業者に明らかになる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】炭化水素含有地層を処理するための現場処理システムの一部の概略図を示す。
【0015】
【図2】地下処理システムの一実施態様の透視図を示す。
【0016】
【図3】地下処理システムの一実施態様のトンネルの透視図を示す。
【0017】
【図4】地下処理システム及びトンネルの一部の他の拡大透視図を示す。
【0018】
【図5】トンネル間の熱源に加熱流体を流すための一実施態様の側面図を示す。
【0019】
【図6】トンネル間の熱源に加熱流体を流すための一実施態様の上面図を示す。
【0020】
【図7】地下処理システムの2つのトンネルまでの間に亘るヒーター坑井孔を有する地下処理システムの一実施態様の透視図を示す。
【0021】
【図8】坑井孔室を有するトンネルの一実施態様の上面図を示す。
【0022】
【図9】地下処理システムの一実施態様のトンネル区画の概略図を示す。
【0023】
【図10】表面生産を有する地下処理システムの一実施態様の概略図を示す。
【0024】
【図11】地下処理システムの一実施態様の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は各種の変形及び代替形態に影響を受け易いが、それらの特定の実施態様を図面で例示し、ここで詳細に説明できる。図面は、物差しで測定できない。しかし、図面及び図面についての詳細な説明は、本発明の限定を意図するものではなく、却って本発明は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変形、均等物及び代替物を包含するものであると理解すべきである。
【0026】
詳細な説明
以下の説明は一般には地層中の炭化水素を処理するためのシステム及び方法に関する。このような地層は炭化水素製品、水素及びその他の製品を得るために処理できる。
【0027】
“API比重”とは、15.5℃(60°F)でのAPI比重のことである。API比重はASTM法D6822又はASTM法D1298により測定されるものとする。
【0028】
“ASTM”とは米国標準試験及び材料(American Standard Testing and Materials)のことである。
【0029】
“炭素数”とは分子中の炭素原子の数のことである。炭化水素流体は異なる炭素数を有する種々の炭化水素を含有してよい。炭化水素流体は炭素数分布により説明してよい。炭素数及び/又は炭素数分布は正確な沸点分布及び/又は気体−液体クロマトグラフィーにより測定できる。
【0030】
“分解”とは、有機化合物の分解及び分子再結合により初期に存在する分子よりも多数の分子を生成する工程を含む方法のことである。分解では一連の反応が分子間で水素原子の移行を伴って起こる。例えばナフサは熱分解反応を受けてエテン及びHを形成する。
【0031】
“流体圧”は、地層中の流体によって発生する圧力である。“地盤圧”(しばしば”地盤応力”といわれる)は、地層内圧力であり、重量/(被さっている岩盤塊の単位面積)に等しい。“静水圧”は、水柱によって発揮される地層内圧力である。
【0032】
“地層”としては、1つ以上の炭化水素含有層、1つ以上の非炭化水素層、上層土(overburden)、及び/又は下層土(underburden)が含まれる。“炭化水素層”とは、炭化水素を含む地層内の層のことである。炭化水素層は、非炭化水素材料及び炭化水素材料を含んでもよい。“上層土”及び/又は“下層土”には、1つ以上の異種の不浸透性材料が含まれる。例えば、上層土及び/又は下層土には、岩石、頁岩、泥岩、又は湿潤/緊密(tight)炭酸塩が含まれてもよい。現場熱処理法の幾つかの実施態様においては、上層土及び/又は下層土には、比較的不浸透性であり、現場熱処理中の温度を受けない炭化水素含有層が含まれてもよい。上層土及び/又は下層土の炭化水素含有層がこのような温度を受ければ、炭化水素含有層に著しい特性変化をもたらす。例えば下層土は頁岩又は泥岩を含んでもよいが、下層土は現場熱処理プロセス中に、熱分解温度まで加熱することはできない。幾つかの場合においては、上層土及び/又は下層土は、幾らか浸透性であってもよい。
【0033】
“地層流体”とは地層内に存在する流体をいい、これには、熱分解流体、合成ガス、流動化(mobilized)炭化水素、及び水(水蒸気)が含まれてよい。地層流体には炭化水素流体や非炭化水素流体が含まれてもよい。用語“流動化流体”とは、地層の熱処理の結果として、炭化水素含有地層内の流動可能な流体のことである。“生産流体”とは、地層から除去された(又は取り出された)流体のことである。
【0034】
“熱源”は、実質的に導電及び/又は輻射熱伝達によって、熱を地層の少なくとも一部に供給又は付与するいずれかのシステムである。例えば熱源には、絶縁導電体、長尺部材、及び/又は導管中に配置した導電体のような電気ヒーターが含まれてよい。熱源にはまた、燃料を地層の外又は中で燃焼することによって、熱を生成するシステムが含まれてもよい。このようなシステムは、表面バーナー、ダウンホールガスバーナー、無炎分配型燃焼器、及び自然分配型燃焼器であってもよい。幾つかの実施態様においては、1つ以上の熱源に供給されるか、又はそこで発生する熱は、他のエネルギー源によって供給してもよい。他のエネルギー源は地層を直接加熱してもよく、或いはこのエネルギーは地層を直接又は間接に加熱する伝達媒体に適用してもよい。地層に熱を加える1つ以上の熱源は、異なるエネルギー源を用いてよいことは、理解すべきである。したがって、例えば所定の地層に対しては、幾つかの熱源は電気抵抗ヒーターから熱を供給してもよく、幾つかの熱源は燃焼により熱を供給してもよく、幾つかの熱源は1つ以上の他のエネルギー源(例えば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、又は他の再生可能なエネルギー源)から熱を供給してもよい。化学反応には発熱反応(例えば、酸化反応)が含まれてよい。熱源にはまた、ヒーター坑井のような加熱場所の近傍、及び/又はそれを取り囲む帯域に熱を供給するヒーターが含まれてもよい。
【0035】
“ヒーター”は、坑井内又は付近の坑井孔領域で生成するためのいずれかのシステム又は熱源である。ヒーターは、限定されるものではないが、電気ヒーター、バーナー、地層内の材料、又はそこから生産される材料と反応する燃焼器、及び/又はそれらの組合せであってよい。
【0036】
“重質炭化水素”は粘稠な炭化水素流体である。重質炭化水素としては、重油、タール、及び/又はアスファルトのような高粘稠な炭化水素流体が含まれてよい。重質炭化水素は、炭素及び水素、並びに低濃度の硫黄、酸素及び窒素を含有してよい。重質炭化水素には別の元素が痕跡量含まれてもよい。重質炭化水素は、API比重により分類でき、一般に約20°未満のAPI比重を有する。重油のAPI比重は、例えば一般に約10〜20°であるのに対し、タールのAPI比重は約10°未満である。重質炭化水素の粘度は一般に15℃で100cPを超える。重質炭化水素は、芳香族又はその他の複合環炭化水素を含有してよい。
【0037】
重質炭化水素は、比較的浸透性の地層で発見できる。比較的浸透性の地層は、例えば砂又は炭酸塩中に混入された重質炭化水素を含有してよい。“比較的浸透性”は、地層又はその複数部分について、平均10ミリダルシー(millidarcy)以上(例えば10又は100ミリダルシー)と定義する。“比較的低い浸透度”は、地層又はその複数部分について、平均約10ミリダルシー未満と定義する。1ダルシーは約0.99μmに等しい。不浸透層の浸透度は、一般に約0.1ミリダルシー未満である。
【0038】
重質炭化水素を含む特定種類の地層としては、限定されるものではないが、天然鉱物蝋又は天然アスファルト鉱が挙げられる。“天然鉱物蝋”は、通常、幅数メートル、長さ数キロ、深さ数百メートルの可能性があるほぼ管状鉱脈に産出する。“天然アスファルト鉱”は、芳香族組成の固体炭化水素を含有し、通常、大きな鉱脈に産出する。天然鉱物蝋及び天然アスファルト鉱のような地層から炭化水素の現場回収法には、溶融による炭化水素の形成及び/又は地層からの炭化水素の溶液採鉱がある。
【0039】
“炭化水素”は、一般に主として炭素及び水素原子によって形成される分子として定義される。炭化水素には、限定されるものではないが、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、及び/又は硫黄のような他の元素が含まれてもよい。炭化水素は、限定されるものではないが、ケローゲン、ビチューメン、ピロビチューメン、油、天然鉱ワックス、及びアスファルト鉱であってもよい。炭化水素は地球の鉱物基質中、又はそれに隣接して配置されていてもよい。基質には、限定されるものではないが、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻土、及び他の多孔質媒体が含まれてもよい。“炭化水素流体”は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水、及びアンモニアのような非炭化水素流体中に含有してもよいし、或いはこれを混入しても又は混入されてもよい。
【0040】
“現場転化法”とは、炭化水素含有地層を、熱源から加熱して、地層の少なくとも一部の温度を熱分解温度を超える温度に昇温させ、こうして熱分解流体が地層内に生産される方法のことである。
【0041】
“現場熱処理法”とは、炭化水素含有地層を熱源で加熱して、層の少なくとも一部の温度を、炭化水素含有材料の流動化流体、粘度低下(visbreaking)、及び/又は熱分解が生じる温度を超える温度に上昇させ、こうして流動化流体、粘度低下流体、及び/又は熱分解流体が地層内に生産される方法のことである。
【0042】
“絶縁導電体”とは電気を導くことができ、かつ全体又は一部が、電気絶縁材料によって被覆されたいずれかの長尺材料のことである。
【0043】
“熱分解”は、熱を加えることによる化学結合の切断である。例えば、熱分解には、化合物を熱のみによって1種以上の他の材料に変換する工程が含まれてもよい。熱は地層の或る区画に移送されて、熱分解を引起こしてもよい。
【0044】
“熱分解流体”又は“熱分解生成物”とは、実質的に炭化水素の熱分解中に、生産又は生成される流体のことである。熱分解反応によって生産される流体は、地層内の他の流体と混合してもよい。混合物は熱分解流体又は熱分解生成物とみなされる。ここで使用する“熱分解帯域”とは、反応させるか、又は反応して熱分解流体を形成する或る容積の地層(例えば、タールサンド地層などの比較的浸透性の地層)のことである。
【0045】
“沈下”は、地層表面の初期の高さと比較した地層の一部の下方移動である。
【0046】
“熱の積重ね”とは、2つ以上の熱源間の少なくとも1箇所の地層の温度がこれらの熱源により影響を受けるように、これら2つ以上の熱源から地層の選択区画に熱を供給することである。
【0047】
“合成ガス”は水素及び一酸化炭素を含む混合物である。合成ガスの別の成分としては、水、二酸化炭素、窒素、メタン及びその他のガスが含まれる。合成ガスは種々の方法及び供給原料により発生させることができる。合成ガスは広範囲の化合物の合成に使用できる。
【0048】
“タール”は、15℃での粘度が約10,000cPを超える粘稠な炭化水素である。タールの比重は、一般に1.000を超える。タールのAPI比重は、10°未満であってよい。
【0049】
“タールサンド地層”は、炭化水素が大部分、重質炭化水素の形態で存在する地層である、及び/又は鉱物粒組織(framework)又はその他の宿主岩石(host lithology)(例えば砂又は炭酸塩)中に混入されたタールである。タールサンド地層の例としては、カナダ、AlbertaのAthabasca地層、Grosmont地層及びPeace River地層;及びベネズエラのOrimoco地帯にあるFaja地層が含まれる。
【0050】
“温度制限ヒーター”とは、一般に温度調節器、出力レギュレーター、整流器、又はその他の装置のような外部制御を用いずに、特定温度を超える熱出力を調整する(例えば熱出力を低下させる)ヒーターをいう。温度制限ヒーターは、AC(交流)又は変調(例えば“チョップド(chopped)”)DC(直流)で出力される電気抵抗ヒーターであってよい。
【0051】
層の“厚さ”とは、層の断面の厚さのことで、断面は、普通、層の面に対してである。
【0052】
“u形坑井孔”とは、地層の第一開口から伸びて、地層の少なくとも一部を経由し、地層の第二開口経由で出る坑井孔のことである。これに関連して坑井孔は、単に大凡“v”又は“u”の形状であって、“u”の脚が 、“u”形とみなされる坑井孔の“u”底部に対し互いに平行か、或いは垂直である必要はないと理解する。
【0053】
“品質向上”とは、炭化水素の品質を向上させることである。例えば重質炭化水素を品質向上すると、重質炭化水素のAPI比重が増大する。
【0054】
“粘度低下”とは、熱処理中の流体に分子の絡み合いを解いて、及び/又は熱処理中、大きい分子から小さい分子に破壊して、流体の粘度を低下させることである。
【0055】
“粘度”とは、特に規定しない限り、40℃での動粘度のことである。粘度はASTM法D445により測定する。
【0056】
用語“坑井孔”とは、地層中に導管を掘削又は挿入して作った地層中の孔のことである。坑井孔は、ほぼ円形の断面又は他の断面形状を有する。地層中の開口に言及した場合、ここで使用した用語“坑井”及び“開口”は、用語“坑井孔”と交換可能に使用できる。
【0057】
地層は多数の異なる製品を製造する各種方法で処理してよい。現場熱処理法中、地層を処理するため、種々の段階又は方法を使用してよい。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は、可溶鉱物を除去するため、溶液採鉱される。鉱物の溶液採鉱は、現場熱処理法の前、処理法中又は処理法の後に行ってよい。幾つかの実施態様では、溶液採鉱される1つ以上の区画の平均温度は約120℃未満に維持してよい。
【0058】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は水を除去するため、及び/又はメタン及びその他の揮発性炭化水素を除去する(取り出す)ため、加熱される。幾つかの実施態様では水及び揮発性炭化水素の除去中、平均温度は周囲温度から約220℃未満の温度に上げてよい。
【0059】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は地層中の炭化水素を移動及び/又は粘度低下させる温度に加熱される。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度はその区画の炭化水素の流動化温度(例えば100〜250℃、120〜240℃、又は150〜230℃の範囲の温度)に上げられる。
【0060】
幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画は地層中で熱分解反応させる温度に加熱される。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度はその区画の炭化水素の熱分解温度(例えば230〜900℃、240〜400℃、又は250〜350℃の範囲の温度)に上げてよい。
【0061】
炭化水素含有地層を複数の熱源で加熱すると、地層中の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度に上昇させる熱源周囲の熱勾配を定着する(establish)ことができる。所望製品の流動化温度範囲及び/又は熱分解温度範囲内での昇温速度は、炭化水素含有地層から生成する地層流体の品質及び量に影響を与える可能性がある。流動化温度範囲及び/又は熱分解温度範囲内で温度を徐々に上昇させると、地層から高品質で高API比重の炭化水素を生産することが可能である。熱分解温度範囲内で地層の温度を徐々に上昇させると、炭化水素製品として地層中に存在する炭化水素を多量に取出すことが可能である。
【0062】
幾つかの現場熱処理の実施態様では地層の一部は、或る温度範囲内で徐々に所望温度に加熱することなく、所望温度に加熱される。幾つかの実施態様では所望温度は300℃、325℃又は350℃である。所望温度として、その他の温度も選択できる。
【0063】
複数の熱源から熱を積重ねると、地層中に比較的早く、かつ効率的に所望温度を定着することができる。熱源からの地層へのエネルギー入力は、地層の温度をほぼ所望温度に維持するように調節してよい。
【0064】
流動化生成物及び/又は熱分解生成物は地層から生産坑井経由で生産できる。幾つかの実施態様では地層の1つ以上の区画の平均温度は、炭化水素の流動化温度まで上げられ、生産坑井から炭化水素が生産される。流動化により生産量が選択値未満に低下した後、1つ以上の区画の平均温度は熱分解温度まで上げてよい。幾つかの実施態様では1つ以上の区画の平均温度は、熱分解温度に達する前に量産することなく熱分解温度に上げてよい。熱分解生成物を含む地層流体は生産坑井経由で生産してよい。
【0065】
幾つかの実施態様では1つ以上の区画の平均温度は易動化及び/又は熱分解後に合成ガスを生産するのに充分な温度に上げてよい。幾つかの実施態様では炭化水素は、合成ガスを生産するのに充分な温度に達する前に量産することなく、合成ガスを生産するのに充分な温度に上げてよい。例えば合成ガスは約400〜約1200℃、約500〜約1100℃、約550〜約1000℃の範囲の温度で生産できる。合成ガス発生用流体(例えば水蒸気及び/又は水)は合成ガスを発生する区画に導入してよい。合成ガスは生産坑井から生産してよい。
【0066】
溶液採鉱、揮発性炭化水素及び水の除去、炭化水素の流動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの発生、及び/又はその他の方法は現場熱処理法中、行ってよい。幾つかの実施態様では幾つかの方法は現場熱処理法の後で行ってもよい。このような方法としては、限定されるものではないが、処理した区画から熱を回収する方法、予備処理した区画の流体(例えば水及び/又は炭化水素)を貯蔵する方法、及び/又は予備処理した区画に二酸化炭素を隔離する方法が含まれる。
【実施例】
【0067】
図1は炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の実施態様の概略図を示す。現場熱処理システムは障壁(barrier)坑井200を有する。障壁坑井は処理領域の周囲に障壁を形成するために使用される。この障壁は流体流が処理領域内及び/又は処理領域外に入るのを阻止する。障壁坑井としては、限定されるものではないが、水除去性坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、又はそれらの組合わせが含まれる。幾つかの実施態様では、障壁坑井200は水除去性坑井である。水除去性坑井は液体水を除去できる、及び/又は液体水が加熱すべき又は加熱中の地層又は地層の或る部分に入るのを阻止できる。図1に示す実施態様では障壁坑井200は熱源202の片側沿いにだけ延びているが、障壁坑井は、通常、地層の処理領域を加熱するために、使用されるか又は使用すべき熱源202を全て囲っている。
【0068】
熱源202は地層の少なくとも一部に配置される。熱源202としては、絶縁導電体、導管内導電体型(conductor-in-conduit)ヒーター、表面バーナー、無炎分配燃焼器、及び/又は自然分配燃焼器のようなヒーターが含まれてよい。熱源202は他種のヒーターを含んでもよい。熱源202は、地層中の炭化水素を加熱するため、地層の少なくとも一部に熱を供給する。供給ライン204経由で熱源202にエネルギーを供給してもよい。供給ライン204は、地層の加熱に使用する熱源の種類に従って、構造的に異なっていてもよい。熱源用供給ライン204は、電気ヒーター用の電気を伝達できるか、燃焼器用の燃料を輸送できるか、或いは地層に循環させる熱交換流体を輸送できる。幾つかの実施態様では現場熱処理法用の電気は原子力発電所により供給できる。原子力を使用すれば、現場熱処理法からの二酸化炭素排出量を低減又は無くすことができる。
【0069】
地層を加熱すると、地層の浸透度及び/又は多孔度が増大する可能性がある。浸透度及び/又は多孔度の増大は、水の気化及び除去、炭化水素の除去、及び/又は割れ目の形成により地層の質量が低下することで生じるのかも知れない。地層の高い浸透度及び/又は多孔度により、流体は地層の加熱部分で一層流れ易くなる。地層の加熱部分の流体は、高い浸透度及び/又は多孔度により、地層内を相当な距離移動できる。この相当な距離は、種々の要因、例えば地層の浸透度、流体の特性、地層の温度、及び流体を動かす圧力勾配に従って1000mを超える可能性がある。流体は地層中で相当な距離移動する能力を有するので、複数の生産坑井206は地層中で比較的遠く離すことができる。
【0070】
生産坑井206は地層から地層流体を取出すために使用される。幾つかの実施態様では生産坑井206は熱源を備える。生産坑井中の熱源は、この生産坑井での又は生産坑井近くの地層の1つ以上の部分を加熱できる。現場熱処理法の幾つかの実施態様では、生産坑井から地層に供給される生産坑井1m当たりの熱量は、地層を加熱する熱源から地層に供給される熱源1m当たりの熱量よりも少ない。生産坑井から地層に加えた熱は、生産坑井に隣接する液相流体を気化させ除去することにより、及び/又は巨大な及び/又は微小の割れ目を形成して生産坑井に隣接する地層の浸透度を高めることにより、生産坑井に隣接する地層の浸透度を高めることができる。
【0071】
幾つかの実施態様では、生産坑井206の熱源により、地層からの地層流体の気相除去が可能となる。生産坑井で、又は生産坑井を介して加熱を行うと、(1)このような生産流体が上層土近傍の生産坑井内を移動している場合には、生産流体の凝縮及び/又は逆流を防止できる、(2)地層中への熱入力を増大できる、(3)生産坑井の生産速度を、熱源を用いない生産坑井に比較して増大できる、(4)生産坑井における高炭素数化合物(C以上の炭化水素)の凝縮を防止できる、及び/又は(5)生産坑井で、又は生産坑井近傍で地層の浸透度を増大できる。
【0072】
地層内の地表下圧力は、地層内に生じた流体圧力と一致してよい。地層の加熱部分における温度が上がるのに従って、現場での流体の熱膨張、流体の生成及び水の気化が増大する結果として、加熱部分における圧力は増大してもよい。地層からの流体除去速度を制御することにより、地層内の圧力の制御が可能である。地層内の圧力は多数の異なる場所(生産坑井付近又は生産坑井、熱源付近又は熱源、又は監視坑井など)で測定してよい。
【0073】
幾つかの炭化水素含有地層では地層からの炭化水素の生産は、地層内の少なくとも若干の炭化水素が流動化及び/又は熱分解するまで抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合には、地層流体は地層から生産してもよい。幾つかの実施態様では、選択された品質には、少なくとも約20°、30°又は40°のAPI比重が含まれる。少なくとも若干の炭化水素が流動化及び/又は熱分解するまで生産を抑制すると、重質炭化水素の軽質炭化水素への転化を増大できる。初期の生産を抑制すると、地層からの重質炭化水素の生産を最小化できる。かなりの量の重質炭化水素の生産は、高価な機器を必要とする、及び/又は生産機器の寿命を低下させるかも知れない。
【0074】
幾つかの実施態様では、地層中に生産坑井206への開放路、又は他の何らかの圧力降下は未だ存在しなくてもよいが、地層中に生成した流動化流体、熱分解流体又はその他の流体の膨張により発生した圧力は増大させてもよい。流体圧力は地盤圧力まで増大させてもよい。炭化水素含有地層中の割れ目は、流体が岩盤圧力に近づくと形成できる。例えば割れ目は、地層の加熱部分において、熱源202から生産坑井206までに形成できる。加熱部分で割れ目が発生すると、加熱部分の圧力を若干緩和できる。地層の圧力は、不要の生産、上層土又は下層土の破損、及び/又は地層中の炭化水素のコークス化を防止するため、選択された圧力未満に維持する必要があるかも知れない。
【0075】
流動化温度及び/又は熱分解温度に達し、地層からの生産が可能になった後、地層内の圧力は、生産された地層流体の組成を変更及び/又は制御するため、地層流体中の非凝縮性流体に対する凝縮性流体の%割合を制御するため、及び/又は生産中の地層流体のAPI比重を制御するため、変化させてもよい。例えば、圧力の低下により、更に多くの凝縮性流体成分を生産してもよい。凝縮性流体成分はオレフィンを大きな%割合で含んでもよい。
【0076】
幾つかの現場熱処理法の実施態様では地層内の圧力は、API比重が20°を超える地層流体の生産を促進するのに十分に高く、維持してよい。地層中で高い圧力を維持すると、現場熱処理中、地層の沈下が防止できる。高い圧力を維持すると、地層流体を表面で圧縮する必要性が低下又は回避され、流体を収集導管中で処理設備(facilities)に輸送できる。
【0077】
地層の加熱部分で高い圧力を維持すると、意外にも、高品質で比較的低分子量の炭化水素を量産することが可能となる。生産された地層流体が、選択された炭素数を超える化合物を最少量有するように、圧力を維持できる。選択された炭素数は25以下、20以下、12以下、又は8以下であってよい。高炭素数の幾つかの化合物は地層内の蒸気に混入されてもよく、蒸気と共に地層から除去されてもよい。地層内で高い圧力を維持すると、高炭素数の化合物及び/又は多環炭化水素化合物の蒸気への混入が防止できる。高炭素数の化合物及び/又は多環炭化水素化合物は、かなりの時間、地層内に液相で留まっていてよい。かなりの時間は、化合物が熱分解して、低炭素数の化合物を形成するのに十分な時間であってよい。
【0078】
生産坑井206から生産された地層流体は収集配管208を通って処理設備210に輸送してよい。また地層流体は熱源202から生産してもよい。例えば流体は熱源202から生産して、熱源に隣接する地層内の圧力を制御してもよい。熱源202から生産された流体は配管を通って、収集配管208に輸送してもよいし、或いは生産された流体は、配管を通って、直接、処理設備210に輸送してもよい。処理設備210としては、分離ユニット、反応ユニット、品質高向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、及び/又はその他、生産された地層流体を処理するためのシステム又はユニットが含まれてよい。処理設備は、地層で生産された炭化水素の少なくとも一部から輸送用燃料を形成できる。幾つかの実施態様では輸送用燃料はJP−8のようなジェット燃料であってよい。
【0079】
特定の実施態様ではヒーター、ヒーターの電(power)源、生産機器、供給ライン、及び/又は他のヒーター又は生産支持機器は、地層の処理に小型のヒーター及び/又は小型の機器を使用可能にするため、トンネル内に配置される。トンネル内にこのような機器及び/又は構造を配置すると、表面基盤機器を利用する炭化水素回収法に比べて、地層処理のエネルギーコストを低下させ、該処理方法からの放出物を低減し、加熱システムの設置を容易化し、及び/又は上層土への熱の損失を低減することも可能である。トンネルは、例えばほぼ水平のトンネル及び/又は傾斜したトンネルであってよい。Watson等の米国公開特許出願第2007/0044957号及び第2008/0017416号;及びDonnelly等の米国公開特許出願第2008/0078552号には炭化水素の地下回収用シャフトから掘削する方法及び炭化水素の地下回収法が記載されている。
【0080】
特定の実施態様ではトンネル及び/又はシャフトは、現場熱処理法を用いて炭化水素含有地層を処理するために、坑井と組合わせて使用される。図2は、地下処理システム222の透視図を示す。地下処理システム222は、現場熱処理法を用いて炭化水素層216を処理するのに使用される。特定の実施態様では地下処理システム222は、シャフト224、用役(utility)シャフト226、トンネル228A、トンネル228B及び坑井孔212を有する。トンネル228A、228Bは、地層の、上層土214、下層土、非炭化水素含有層又は炭化水素低含有層に設けてよい。幾つかの実施態様ではトンネル228A、228Bは地層の岩石層中に設けてよい。例えばトンネル228A、228Bは、浸透度が約1ミリダルシー以下の地層の一部に設けてよい。
【0081】
シャフト224及び/又は用役シャフト226は、当該技術分野で公知の方法を用いて形成され、強化できる(例えば倒壊防止のため支持できる)。例えばシャフト224及び/又は用役シャフト226は、ブラインド(blind)を用いて形成され、泥水比重(mud weight)を用いると共に、シャフトを支持するため、内張りする(lining)孔掘削技術を立ち上げる(raise)ことができる。従来技術を用いてシャフト中で機器を上昇、下降でき、及び/又はシャフト経由で用役(utilities)を供給できる。
【0082】
トンネル228A、228Bは、当該技術分野で公知の方法を用いて形成され、強化できる(例えば倒壊防止のため支持できる)。例えばトンネル228A、228Bは、道路ヘッダー、掘削(drill)及び衝風(blast)、トンネルボーリング機械、及び/又はトンネルを形成するための連続的鉱脈採掘(miner)技術を用いて形成され、強化できる。トンネルの強化は、例えば尾根の支持、メッシュ(mesh)、及び/又は吹付けコンクリートにより得られる。トンネルの強化により、トンネルの崩壊が防止でき、及び/又は地層の処理中にトンネルが動くのを防止できる。
【0083】
特定の実施態様ではトンネル228A、トンネル228B、シャフト224及び/又は用役シャフト226は、トンネル又はシャフトの構造又は保全性(integrity)の変化について監視される。例えば従来の鉱脈調査技術を用いてトンネル及び/又はシャフトの構造及び保全性を監視できる。更に、システムを用いてトンネル又はシャフトの構造及び/又は保全性に影響を与える可能性がある地層の特性変化を監視できる。
【0084】
特定の実施態様ではトンネル228A、228Bは、地層中でほぼ水平か又は傾斜している。幾つかの実施態様ではトンネル228Aは、シャフト224及び用役シャフト226のラインと平行して延びている。トンネル228Bはトンネル228A間を接続してよい。幾つかの実施態様ではトンネル228Bは、トンネル228A間を交差接近させる。幾つかの実施態様ではトンネル228Bは、地層表面下のトンネル228A間で生産を交差接続するのに使用される。
【0085】
トンネル228A、228Bの横断面形状は、長方形、円形、楕円形、馬蹄形、不定形又はそれらの組合わせであってよい。トンネル228A、228Bの横断面は、人、機器及び/又は自動車がトンネルを通過するのに十分な大きさであってよい。幾つかの実施態様ではトンネル228A、228Bの横断面は、人及び/又は自動車がトンネル内に配置した機器のそばを自由に通るのに十分な大きさである。幾つかの実施態様では、以上の実施態様で説明したトンネルの平均直径は1m以上、2m以上、5m以上又は10m以上である。
【0086】
特定の実施態様ではシャフト224及び用役シャフト226は、上層土214中のトンネル228Aと接続している。幾つかの実施態様ではシャフト224及び/又は用役シャフト226は、地層の他の層中のトンネル228Aと接続している。シャフト224及び用役シャフト226は、当該技術分野に公知の方法で鉱脈シャフトを掘削するため、及び/又は埋込む(sink)ため、埋込むか、又は形成できる。特定の実施態様ではシャフト224及び/又は用役シャフト226は、上層土214及び/又は炭化水素層216中のトンネル228Aと表面218まで接触している。幾つかの実施態様ではシャフト224及び/又は用役シャフト226は、単価水素層16の中まで延びている。例えばシャフト224は、炭化水素層216からの流体を表面218に生成させるために、生産導管及び/又はその他の生産機器を備えてよい。
【0087】
特定の実施態様ではシャフト224及び/又は用役シャフト226は、ほぼ垂直か又は垂直に対し僅かな角度を有する。シャフト224及び/又は用役シャフト226の横断面は、人、機器及び/又は自動車がシャフトを通過するのに十分な大きさである。幾つかの実施態様ではシャフト224及び/又は用役シャフト226は円形の横断面を有する。シャフト及び/又は用役シャフトの平均横断面直径は0.5m以上、1m以上、2m以上、5m以上又は10m以上である。
【0088】
特定の実施態様では2つのシャフト224間の距離は500〜5000m、1000〜4000m、又は2000〜3000mである。特定の実施態様では2つの用役シャフト226間の距離は100〜1000m、250〜750m、又は400〜600mである。
【0089】
特定の実施態様ではシャフト224の横断面は用役シャフト226の横断面よりも大きい。シャフト224は、大きな換気、材料、機器、自動車及び人のために、トンネル228Aに接近させてよい。用役シャフト226は、限定されるものではないが、電力供給脚、生産立上がり管(riser)、及び/又は換気口のような機器又は構造用に、トンネル228Aに近接してサービス回廊を供与できる。幾つかの実施態様ではシャフト224及び/又は用役シャフト226は、シャフト中のガス水準を監視し、評価するため、及び/又は必要ならばシャフトを密封するため、監視システム及び/又は密封システムを備える。
【0090】
図3は地下処理システム222及びトンネル228Aの一部の拡大透視図を示す。特定の実施態様ではトンネル228Aは、ヒータートンネル230及び/又は用役トンネル232を有する。幾つかの実施態様ではトンネル228Aは、出入りトンネル及び/又はサービストンネルのような別のトンネルを有する。図4は地下処理システム222及びトンネル228Aの一部の拡大透視図を示す。図4に示すトンネル228Aはヒータートンネル230、用役トンネル232及び/又は出入りトンネル234を備えてよい。
【0091】
図3に示す特定の実施態様では坑井孔212は、ヒータートンネル230から延びている。坑井孔212としては、限定されるものではないが、ヒーター坑井、熱源坑井、生産坑井、注入坑井(例えば水蒸気注入坑井)及び/又は監視坑井が含まれてよい。坑井孔212内に配置できるヒーター及び/又は熱源としては、限定されるものではないが、電気ヒーター、酸化ヒーター(ガスバーナー)、熱伝達流体循環ヒーター、閉鎖環状溶融塩循環システム、粉砕石炭システム及び/又はジュール熱源(地層の2つの坑井孔中に導電性材料を有する熱源間を流れる電流を用いて地層を加熱するもの)が含まれてよい。ジュール熱源に使用される坑井孔は、同じトンネル(例えば坑井孔間に流れる電流を有する2つのトンネル間に延びているほぼ水平の坑井孔)から、又は異なるトンネル(例えば坑井孔間に電流を流すため、離れた2つの異なるトンネルから延びている坑井孔)から延びてよい。
【0092】
導電性材料を有する熱源で地層を加熱すると、地層内の浸透度を増大できる、及び/又は地層中の炭化水素の粘度を低下できる。導電性材料により地層を加熱すると、電流は地層内で一方の熱源から他方の熱源に流れることができる。地層内で電流又は“ジュール加熱”を用いる加熱は、地層中で離れたヒーター間に導電性加熱を用いて炭化水素層を加熱するよりも、短時間で炭化水素層の複数部分を加熱できる。
【0093】
特定の実施態様では地表下地層(例えばタールサンド又は重質炭化水素地層)は誘電媒体を含有する。誘電媒体は100℃未満の温度で導電率、比誘電率及び誘電正接を示すことができる。地層を100℃より高温に加熱すると、地層の岩石母材中の隙間に含まれる水分の損失により、導電率、比誘電率及び誘電正接の低下(loss)が起こる可能性がある。水分の損失を防止するため、水の気化を最小にする温度及び圧力で地層を加熱することができる。幾つかの実施態様では地層の電気特性を維持する助けにするため、地層に導電性溶液が添加される。地層を低温で加熱する場合、浸透性及び/又は注入性を得るためには、地層を長時間、加熱する必要があるかも知れない。
【0094】
幾つかの実施態様では地層は水及び/又は導電性溶液を気化させる温度に加熱するジュール加熱及び圧力を用いて加熱される。しかし、電流の生成に使用される材料は熱応力により損傷されるかも知れない、及び/又は導電性材料の損失により層内の熱伝達が制限されるかも知れない。更に、電流又はジュール加熱を用いると、磁場が形成される可能性がある。磁場が存在するため、非強磁性材料は上層土のケーシングを所望するかも知れない。ジュール加熱を用いて地層を加熱する方法が多数記載されているが、導電性材料を有する熱源を用いて炭化水素を加熱し生産する効率的で経済的な方法は必要である。
【0095】
幾つかの実施態様では導電性材料を含有する熱源は炭化水素層中に配置される。炭化水素層の電気抵抗部分は熱源から該層内を流れる電流により加熱できる。炭化水素層中の導電性熱源導電性溶液の損失を最小限にするのに十分深い所に位置するので、最小限の水及び/又は導電性溶液の損失を伴うが、炭化水素層を所定時間に亘って比較的高温に加熱することができる。
【0096】
熱源をヒータートンネル230経由で炭化水素層216に導入すると、上層土214への著しい熱の損失もなく、炭化水素層を加熱することができる。上層土への熱損失が少なく、主として炭化水素層216に熱を供給できるので、ヒーターの効率を高めることができる。上層土にヒーター坑井孔区画を必要とせず、炭化水素層にだけヒーター区画を供給するため、トンネルを使用すると、上層土を通過する区画を有するヒーターを用いた場合のヒーターコストに比べて、ヒーターコストは30%以上、50%以上、60%以上又は70%以上安くできる。
【0097】
幾つかの実施態様ではトンネル経由でヒーターを供給すると、炭化水素層216では一層高い熱源密度が得られる。熱源密度が高いほど、地層からの炭化水素の生産は早くなる。ヒーター間隔を近接させるほど、追加のヒーター当たりのコストが大幅に低下するため、経済的に有利かも知れない。例えば上層土経由で掘削して、タールサンド地層の炭化水素層に配置される複数のヒーターは、通常、約12m間隔で離れる。トンネルからヒーターを設置すると、炭化水素層中に約8m間隔で離すことができる。この間隔を更に近接させると、12m間隔で離れたヒーターから得られる5年間の最初の生産量に比べて、最初の生産量を約2年間促進でき、また生産の完了を約8年から約5年に促進できる。このような最初の生産量により、加熱要件は5%以上低減できる。
【0098】
特定の実施態様ではヒーター又は熱源の地表下接続は、ヒータートンネル230内で作られる。ヒータートンネル230内で作られる接続としては、限定されるものではないが、絶縁電気接続、物理的支持接続、及び計器(instrumental)/診断接続が含まれる。例えばヒータートンネル230内に配置された電気ヒーター素子と母線(bus-bar)間に電気的接続を作ることができる。母線は、ヒーター素子の末端に電気的接続を付与するのに使用できる。特定の実施態様ではヒータートンネル230内で作られる接続は、特定の安全水準で作られる。例えばこのような接続は、ヒータートンネル230に移動する可能性がある熱源又は熱源坑井孔からのガスのため、ヒータートンネル内で爆発の危険(又はその他の潜在的な危険)がないか又は殆どないように作られる。幾つかの実施態様ではヒータートンネル230はヒータートンネル内での爆発の危険性を低減するため、表面又は他の面に排気される。例えばヒータートンネル230は用役シャフト226経由で排気できる。
【0099】
特定の実施態様ではヒーター接続はヒータートンネル230と用役トンネル232間に作られる。例えばヒータートンネル230から延びる電気ヒーターの電気的接続はヒータートンネル230を通って用役トンネル232内に延びてよい。このような接続は、この接続を通るか又は接続の回りの複数のトンネル間で漏れがないか又は殆どないように、ほぼ密封できる。
【0100】
特定の実施態様では用役トンネル232は熱源及び/又は生産機器を操作するのに必要な電力機器又はその他の機器を有する。特定の実施態様では用役トンネル232内にトランス236及び電圧調整器238が配置される。地表下にトランス236及び電圧調整器238を配置すると、地層の上層土に高電圧を直接送って地層中のヒーターへの電力供給効率を向上できる。
【0101】
トランス236は、例えば東芝(東京、日本)から入手できるSFガス絶縁電力トランスのようなガス絶縁水冷式トランスであってよい。このようなトランスは高効率トランスかも知れない。トランスは地層中の多数のヒーターに電気を供給するのに使用できる。このようなトランスの高効率性により、トランスに対する水冷要件は低下する。トランスの水冷要件が低下すると、トランスの過熱を防止するための余分な冷却を必要とすることなく、トランスを小室に置くことができる。空冷式のに代えて水冷式にすると、冷却用流体の容量当たりの熱を空冷式に比べて多く表面に送ることができる。ガス絶縁トランスを使用すれば、地下機器では危険かも知れない可燃性油を使用しなくてよい。
【0102】
幾つかの実施態様では電圧調整器238は、トンネル内の熱源に分配される電圧を制御する分配型電圧調整器である。幾つかの実施態様では、電力をトンネル内の熱源に分配するか、或いは熱源の電圧を制御するために、用役トンネル232内に配置した可変電圧負荷タップ切換え式トランスが使用される。トランス236、電圧調整器232、負荷タップ切換え器、及び/又は可変電圧負荷タップ切換え式トランスは、トンネル内又は個々の熱源内の熱源群又は熱源列に分配された電圧を制御できる。熱源の一群に分配された電圧の制御により、該一群の熱源が一括(block)制御される。個々の熱源に分配された電圧の制御により、個々の熱源が制御される。
【0103】
幾つかの実施態様ではトランス236及び/又は電圧調整器238は、用役トンネル232の側(side)室に配置される。トランス236及び/又は電圧調整器238を側室内に置けば、トランス及び/又は電圧調整器は用役トンネル232内を移動する人、機器及び/又は自動車の道の外に移行される。用役シャフト226内の供給ライン(例えば図10に示す供給ライン204)は、用役トンネル232内の電圧調整器238及びトランス236に電力を供給できる。
【0104】
幾つかの実施態様では図3に示すように、電圧調整器238は電力室240内に配置される。電力室240は、用役トンネル232に接続してもよいし、或いは用役トンネルの側室であってもよい。電力は用役シャフト226経由で電力室240に送ってよい。電力室240を使用すると、地表下の熱源のために作った接続を一層容易に、一層早く、及び/又は一層効果的に維持、修理、及び/又は取替えできる。
【0105】
特定の実施態様ではヒータートンネル230及び用役トンネル232の区画は、接続用トンネル248により相互に連結される。接続用トンネル248は、ヒータートンネル230と用役トンネル232間を近接できる。接続用トンネル248は、ヒータートンネル230と用役トンネル232間を開閉できるシールとするため、エアーロック又はその他の構造を有してよい。
【0106】
幾つかの実施態様ではヒータートンネル230はパイプライン208又はその他の導管を有する。幾つかの実施態様ではパイプライン208は、ヒータートンネル230に連結した生産坑井又はヒーター坑井から流体(例えば炭化水素流体のような地層流体)を生産するのに使用される。幾つかの実施態様ではパイプライン208は、産坑井又はヒーター坑井で使用される流体(例えば流体又はガスバーナー用のガスをヒーターに循環するための熱伝達流体)を供給するのに使用される。パイプライン208用のポンプ及び関連機器252は、パイプライン室254又はトンネルの他の側室に配置してよい。幾つかの実施態様ではパイプライン室254はヒータートンネル232から単離(密封)される。流体は、用役シャフト226内に配置された立上がり管及び/又はポンプを用いてパイプライン室254に供給してよい、及び/又は該室から除去してよい。
【0107】
幾つかの実施態様では熱源は、地層から生産される地層流体の粘度を制御するため、ヒータートンネル230付近の坑井孔212中で使用される。複数の熱源は種々の長さであってよい、及び/又は地層中の異なる場所で異なる量の熱を供給してよい。幾つかの実施態様では熱源は、地層から流体を生産するために使用される坑井孔212(例えば生産坑井)内に配置してよい。
【0108】
図2に示すように、坑井孔212は炭化水素層216内の複数のトンネル228A間で延びてよい。トンネル228Aはヒータートンネル230、用役トンネル232及び/又は出入りトンネル234の1つ以上を有してよい。幾つかの実施態様では出入りトンネル234は排気トンネルとして使用される。いかなる数のトンネル及び/又はいかなる順序のトンネルも考慮又は所望に応じて使用できることを理解すべきである。
【0109】
幾つかの実施態様では加熱流体は、トンネル間に延びる坑井孔212又は熱源内を流れてよい。例えば加熱流体は第一ヒータートンネルと第二ヒータートンネル間で流れてよい。第二トンネルは加熱流体を地層から地層の表面に取出すことができる生産システムを備えてよい。幾つかの実施態様では第二トンネルは2つ以上の坑井孔から加熱流体を集める機器を有する。幾つかの実施態様では加熱流体は、昇降システムを用いて表面に移動される。昇降システムは用役シャフト226又は別の生産坑井内に配置してよい。
【0110】
生産坑井昇降システムは、地層流体を生産坑井の底部から表面に効率的に輸送するのに使用してよい。生産坑井昇降システムは、最大要求坑井引落し(最小油層生産圧)及び生産速度を与え、維持することができる。生産坑井昇降システムは広範囲の高温/多相流体(ガス/蒸気/水蒸気/水/炭化水素流体)及び一般的プロジェクトの存続期間中に予期される生産速度に対し、効率的に操作できる。生産坑井昇降システムとしては、2重同心ロッドポンプ昇降システム、部屋型昇降システム及びその他の型の昇降システムが含まれてよい。
【0111】
図5はトンネル228A間の熱源202中に加熱流体を流すための実施態様の側面図を示す。図6は図5の実施態様の上面図を示す。循環システム220は加熱流体(例えば溶融塩)を熱源202中に循環させることができる。加熱流体を熱源に供給すると共に、熱源から加熱流体を戻すためにシャフト226及びトンネル228Aを使用してよい。シャフト226及びトンネル228A内に大口径(large diameter)パイプを使用してよい。大口径パイプは、加熱流体を地層の上層土を通って輸送する際、圧力降下を最小化できる。シャフト226及びトンネル228A内のパイプは、上層土での熱損失を防止するため絶縁してよい。
【0112】
図7は、トンネル228A間に延びる坑井孔212を有する地下処理システム222の一実施態様の他の透視図を示す。ヒーター又は熱源は坑井孔212内に配置してよい。特定の実施態様では坑井孔212は坑井孔室256から延びている。坑井孔室256はトンネル228Aの側部(side)に接続してもよいし、或いはトンネルの側室であってもよい。
【0113】
図8は、坑井孔室256を有するトンネル228Aの一実施態様の上面図を示す。特定の実施態様では、電力室240は用役トンネル232に接続される。トランス236及び/又は他の電力機器は電力室240内に配置してよい。
【0114】
特定の実施態様ではトンネル228Aはヒータートンネル230及び用役トンネル232を有する。ヒータートンネル230は接続用トンネル248により用役トンネル232に接続してよい。坑井孔室256はヒータートンネル230に接続される。特定の実施態様では坑井孔室256はヒーター坑井孔室256A及び補助坑井孔室256Bを有する。熱源202(例えばヒーター)は、ヒーター坑井孔室256Aから延びてよい。熱源202はヒーター坑井孔室256Aから延びる坑井孔内に配置してよい。
【0115】
特定の実施態様ではヒーター坑井孔室256Aは、該室中に熱源を一層容易に取付けるため、ヒータートンネル230に対し傾斜した側壁を有してよい。ヒーターは限定的な曲げ能力があってもよく、また傾斜壁はヒーターを過剰に曲げることなく、室内に取付けることができる。
【0116】
特定の実施態様では障壁258はヒータートンネル230からヒーター坑井孔室256Aを密封する。障壁258は耐火性及び/又は耐衝風性障壁(例えばコンクリート壁)であってよい。幾つかの実施態様では障壁258は、入室させるため、入口(例えばアクセスドアー)を有する。幾つかの実施態様ではヒーター坑井孔室256Aは、熱源202の取付け後、ヒータートンネル230から密封される。用役シャフト226は、ヒーター坑井孔室256Aへの排気を行える。幾つかの実施態様では用役シャフト226は、火又は衝風鎮圧流体をヒーター坑井孔室256Aに供給するのに使用される。
【0117】
特定の実施態様では、補助坑井孔212Aは補助坑井孔室256Bから延びている。補助坑井孔212Aは、例えば漏れをなくすため、及び/又は坑井孔を監視するため、充填坑井孔(例えば修理坑井孔)又は干渉坑井孔として使用してよい。障壁258はヒータートンネル230から補助坑井孔室256Bを密封することができる。幾つかの実施態様ではヒーター坑井孔室256A及び/又は補助坑井孔室256Bはセメントで充填される。坑井孔室にセメントを充填すると、坑井孔室への流体の流入及び流出が密封される。
【0118】
図2及び図7に示すように、坑井孔212はトンネル228A間に形成してよい。坑井孔212は、トンネル228Aから炭化水素層212中に掘削すれば、炭化水素中にほぼ垂直、水平又は傾斜して形成できる。坑井孔212は当該技術分野で公知の掘削技術を用いて形成できる。例えば坑井孔212はPenguin Automated Systems(Naughton、オンタリオ、カナダ)から入手できるコイル型配管(coiled tubing)を用いて水圧掘削により形成できる。
【0119】
トンネル228Aから坑井孔212を掘削すると、掘削効率を向上し、掘削時間を短縮できるし、また坑井孔は上層土214経由で掘削する必要がないので、長くすることができる。トンネル228Aにより、表面ではなく、地表下に大きな表面設置(footprint)機器を置くことができる。トンネル228Aからの掘削、続いて機器の配置及び/又はトンネル内の接続は、表面基盤機器及び接続を用いる従来の表面掘削法に比べて、表面設置面積(footprint)を減少できる。
【0120】
炭化水素含有地層の処理に現場熱処理法と組み合わせてシャフト及びトンネルを用いると、坑井孔の建設、ヒーターの建設、及び/又は掘削要件から上層土部分が除かれるので、有益かも知れない。幾つかの実施態様ではシャフト及びトンネルの少なくとも一部は炭化水素含有地層内又は上の帯水層下に置かれる。シャフト及びトンネルを帯水層下に配置すると、帯水層への汚染の危険性を低減できる、及び/又は地層処理後のシャフト及びトンネルの放棄を簡素化できる。
【0121】
特定の実施態様では、地下処理システム222(図2、3、7、11及び10)は、地層圧及び地層流体からトンネル及びシャフトを密封するため、1つ以上のシールを有する。例えば地下処理システムは地層から人の作業空間を密封するため、1つ以上の不浸透性障壁を備える。幾つかの実施態様では坑井孔からトンネル及びシャフトへの流体の流入を防止するため、坑井孔はトンネル及びシャフトに対し不浸透性障壁で密封される。幾つかの実施態様では不浸透性障壁は、セメント又はその他の充填材を含有する。幾つかの実施態様ではシールはバルブ又はバルブシステム、エアーロック、又はその他、当該技術分野で公知の密封システムを有する。地下処理システムは人、自動車及び/又は機器を入れる(access)ため、表面に少なくとも1つの入口及び/又は出口を有してよい。
【0122】
図9はトンネル228Aの展開状況を示す実施態様の上面図である。ヒータートンネル230は、左から右へのトンネルの形成順序に従って、熱源部242、接続部244及び/又は掘削部246を備える。熱源部242から坑井孔212が形成され、この坑井孔に熱源が導入されている。幾つかの実施態様では熱源部242は、炭化水素ガス及び/又は硫化水素に対し不浸透性の材料を有するヒータートンネル230及び/又は用役トンネル232の他の部から隔離してよい。例えばセメント又はその他の不浸透性材料は、熱源部242をヒータートンネル230及び/又は用役トンネル232から密封するのに使用できる。幾つかの実施態様では不浸透性材料は地層流体又はその他の危険な流体が熱源部に入るのを防止するため、地層の加熱部分から熱源部242を封止するのに使用される。幾つかの実施態様では坑井孔の30m以上、40m以上又は50m以上は、熱源とヒータートンネル230間にある。幾つかの実施態様ではヒータートンネル230に近いシャフト224は、炭化水素層で加熱を開始した後、ガス又はその他の流体がシャフトに入るのを防止するため、密封される(例えばセメントで充填される)。
【0123】
幾つかの実施態様では用役トンネル232内にヒーター制御器を配置してよい。幾つかの実施態様では用役トンネル232は、ヒーター及び/又は熱伝達システムを支持するのに必要な、電気接続、燃焼器、及び/又はポンプを有する。例えば用役トンネル232にはトランス236が配置できる。
【0124】
熱源部242の後に接続部244が配置できる。接続部244は、熱源を絶縁する、及び/又は熱源を接続する (例えばヒーターへの電気接続を行う)のに必要な操作を行うための空間を有してよい。幾つかの実施態様では接続部244での機器の接続及び/又は移動は、ロボット又はその他の自動化技術を用いて自動化される。掘削部246は接続部244の後に配置できる。追加の坑井孔を掘ってよい、及び/又は掘削部246中でトンネルを延長してよい。
【0125】
特定の実施態様では熱源部242、接続部244及び/又は掘削部246での操作は互いに独立している。熱源部242、接続部244及び/又は生産部246は、専用の排気システムを有する、及び/又は用役トンネル232に接続している。接続トンネル248により、熱源部242、接続部244及び/又は掘削部246への出入りが可能である。
【0126】
幾つかの実施態様では接続トンネル248はエアーロック及び/又はその他の障壁を有する。エアーロック250は、熱源部242内の圧力が、掘削部246の空気圧よりも低い接続部244の空気圧よりも低くなるように、相対圧力を調節するのに役立つ。用役トンネル232、接続部244及び/又は掘削部246内の可燃性雰囲気の可能性を低減するため、熱源部242(最も危険な領域)に空気流が移動できる。エアーロック250は、用役トンネル232内で危険な可燃性限界(例えば可燃性限界の下限の1/2未満)が生じた場合、トランス又はその他の電気機器の電気を確実に切るため、好適なガス検知兼警報器を備えてよい。エアーロック250及び/又はその他の障壁を操作するため、自動化制御器を使用してよい。エアーロック250は、正常な操作中及び/又は危険な状況中、人が入る(access)及び/又は出る(egress)のを制御するため、操作できる。
【0127】
特定の実施態様ではトンネルから延びる坑井孔中に配置した熱源は炭化水素層の加熱に使用される。熱源からの熱は炭化水素層中の炭化水素を流動化でき、この流動化した炭化水素は生産坑井に向かって流れる。生産坑井は流動化流体を生産するための熱源の下、付近又は上の炭化水素層中に位置してよい。幾つかの実施態様では地層流体は、炭化水素層中に配置されたトンネルに重力排出してよい。製造システムはトンネル内(例えば図3に示すパイプライン208)に取り付けてよい。このトンネル製造システムは、表面設備及び/又はトンネル内の設備から操作できる。配管、保持設備及び/又は生産坑井は、トンネルから流体を生産するのに使用されるトンネルの生産部分に配置してよい。トンネルの生産部分は、不浸透性材料(例えばセメント又は鋼ライニング材)で密封してよい。地層流体は、トンネル内に配置した立上がり管及び/又は垂直生産坑井経由で表面にポンプ送りできる。幾つかの実施態様では多数の水平生産坑井からの地層流体は、トンネル内に配置した1つの垂直生産坑井中に排出できる。地層流体は垂直生産坑井経由で表面に生産できる。
【0128】
幾つかの実施態様では表面から直接、炭化水素層に延びる生産坑井孔は炭化水素層から流体を生産するのに使用される。図10は表面から炭化水素層216内に延びる生産坑井206を示す。特定の実施態様では生産坑井206は、炭化水素層216内にほぼ水平に配置されている。しかし、生産坑井206は所望のいかなる配向であってもよい。例えば生産坑井206はほぼ垂直の生産坑井206であってよい。
【0129】
幾つかの実施態様では図10に示すように、生産坑井206は地層の表面から延び、また熱源202は上層土214内又は地層の他の不浸透層内のトンネル228Aから延びている。地層中に熱源を供給するために使用されるトンネルから切り離して生産坑井を有すると、トンネル内や電気機器又はその他のヒーター機器近くにある熱地層流体(例えば熱炭化水素流体)に関連した危険性を低減できる。幾つかの実施態様では表面上の生産坑井の場所と表面下のトンネル内への流体取入れ口、排気取入れ口及び/又はその他の可能な取入れ口の場所との距離は、流体がこれらの取入れ口経由で地層中に再度入る危険を最小にするため、最大化される。
【0130】
幾つかの実施態様では坑井孔212は、地層の上層土下の用役トンネル232又はその他のトンネルと相互連結される。図11は地下処理システム222の一実施態様の側面図を示す。特定の実施態様では坑井孔212は、炭化水素層216中の用役トンネル232に向けて傾斜(directional)掘削される。坑井孔212は表面から又は上層土214中に配置したトンネルから傾斜掘削できる。炭化水素層216中の用役トンネル232を横切るための傾斜掘削は、地層中の他の坑井孔を横切るための傾斜掘削よりも容易かも知れない。限定されるものではないが、磁気伝達器、磁気感知器、音響伝達器及び音響感知器のような掘削機器は、用役トンネル232内に配置して、坑井孔212の傾斜掘削に使用できる。掘削機器は傾斜掘削後、用役トンネル232から除去してよい。幾つかの実施態様では用役トンネル232は、現場熱処理法中、地層から流体を集め、及び/又は生産するため、後で使用される。
【0131】
以上の説明から本発明の各種面での更なる改変及び代替実施態様を使用できることは当業者には明らかである。したがって、以上の説明は単に例証と解釈すべきであり、当業者に本発明を実施する一般的な方法を教示する目的のためである。ここに示し説明した本発明の形態は、現在の好ましい実施態様として受取るものと理解すべきである。構成要素及び材料は、ここで例証し、説明したものに取替え可能であり、部品及び方法は取替え可能であり、また本発明の特定の特徴は、独立に利用可能である。これらは全て本発明についての以上の説明の利益を享受した後、当業者には明らかであろう。特許請求の範囲に記載した本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、以上説明した構成要素に変化を行うことは可能である。更に、ここで独立に説明した特徴は、特定の実施態様において組合わせ可能であると理解すべきである。
【符号の説明】
【0132】
200 障壁坑井
202 熱源
204 供給ライン
206 生産坑井
208 収集配管
210 処理設備
212 坑井孔
212A 補助坑井孔
214 上層土
216 炭化水素層
218 表面
220 循環システム
222 地下処理システム
224 シャフト
226 用役シャフト
228A トンネル
228B トンネル
230 ヒータートンネル
232 用役トンネル
234 出入りトンネル
236 トランス
238 電圧調整器
240 電力室
242 熱源部
244 接続部
246 掘削部
248 接続用トンネル
250 エアーロック
252 関連機器
254 パイプライン室
256 坑井孔室
256A ヒーター坑井孔室
256B 補助坑井孔室
258 障壁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】米国特許第2,634,961号
【特許文献2】米国特許第2,732,195号
【特許文献3】米国特許第2,780,450号
【特許文献4】米国特許第2,789,805号
【特許文献5】米国特許第2,923,535号
【特許文献6】米国特許第4,886,118号
【特許文献7】米国公開特許出願第2007/0044957号
【特許文献8】米国公開特許出願第2008/0017416号
【特許文献9】米国公開特許出願第2008/0078552号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各トンネルの平均直径が1m以上で、少なくとも1つのトンネルは地表下炭化水素含有地層の表面に接続した1つ以上のトンネル;及び
該トンネルの少なくとも1つから該地表下炭化水素含有地層の少なくとも一部内に延びた2つ以上の坑井孔であって、該坑井孔の少なくとも2つは、該地表下炭化水素含有地層の少なくとも一部を加熱して、少なくとも若干の炭化水素が流動化するように構成した長尺の熱源を有する該坑井孔;
を備えた地表下炭化水素含有地層用処理システム。
【請求項2】
前記トンネルの少なくとも1つを前記表面に接続する少なくとも1つのシャフトを更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記トンネルの少なくとも1つを前記表面に接続する、ほぼ垂直に向いた少なくとも1つのシャフトを更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記流動化流体が地層から生産坑井に排出するように配置した生産坑井を更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記トンネルの少なくとも1つ内に配置された生産システムを更に備え、該生産システムは地層から流体を生産し、該トンネルに集めるように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記生産システムトンネルが、重力排出により地層中に流体を集めるために配置される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記生産システムが、生産システムトンネルに連結したほぼ垂直な生産坑井孔を備える請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つのトンネルから延びる少なくとも1つの水蒸気注入坑井孔を備え、該水蒸気注入坑井孔は1つ以上の水蒸気供給源に接続し、該水蒸気注入坑井孔の少なくとも1つは水蒸気を地表下炭化水素含有地層に供給するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記トンネルの少なくとも1つの平均直径が2m以上である請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記トンネルの少なくとも1つの横断面形状が円形、楕円形、直角又は不定形である請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記熱源の少なくとも1つが電気抵抗ヒーターであり、少なくとも1つのトンネルに配置した導電体が該ヒーターに電力を供給するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱源の少なくとも1つがガスバーナーであり、該ガスバーナー用の燃料を運ぶように構成された導管を更に備え、該導管は少なくとも1つのトンネル内に配置されている請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記熱源の少なくとも2つは、熱源間の電流の少なくとも若干の流れにより地層を加熱するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記熱源間の電流が地層を抵抗加熱するように構成されている請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記坑井孔の少なくとも2つが、加熱流体を少なくとも2つのトンネル間に流して地層を加熱するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記トンネルの少なくとも1つに連結した生産システムを更に備え、該生産システムは加熱流体を地層から地層の表面に取出すように構成されている請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記生産システムが、加熱流体を地層の表面に移動させる昇降システムを備える請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記トンネルの少なくとも1つがほぼ水平であり、前記坑井孔の少なくとも2つが該トンネルから或る角度で延びている請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記トンネルを地層流体から密封するように構成されたトンネル内に1つ以上の不浸透性障壁を更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記坑井孔の少なくとも1つが、少なくとも2つのトンネル間で傾斜掘削される請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のシステムから地表下炭化水素含有地層に熱を供給して地層中の炭化水素の少なくとも若干を流動化する工程を含む地表下炭化水素含有地層の処理方法。
【請求項22】
前記部分から地層流体を生産する工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
地層流体を前記トンネルの少なくとも1つに排出し、生産システムを用いて該排出トンネルから流体を地層の表面に産出させる工程を更に含む請求項21に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−503111(P2012−503111A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505100(P2011−505100)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040139
【国際公開番号】WO2009/146158
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP