説明

地這虫侵入防止装置

【課題】建物の入口前において、通行の妨げにならずメンテナンスが容易な地這虫の侵入を防止する装置を、安価に提供すること。
【解決手段】建物の入口3前のグラウンド6に、前記入口3を囲うように、地這虫1の侵入を妨げる地這虫侵入防止溝10が設けられている。前記地這虫侵入防止溝10は、幅の寸法は地這虫1が渡れず落ちてしまう値であって、深さ及び摩擦係数は該地這虫侵入防止溝10に落ちた地這虫1が再び這い上がってくることができない値に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の入口前において、地這虫が這って入口まで到達し、建物内に侵入できないような地這虫侵入防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物入口にシャッターを用いている場合、シャッターの構造上生じるわずかな隙間から、虫が侵入してしまう。特に倉庫等においては、保管している品への異物混入防止のため、このような虫の侵入に対して対策が必要とされている。図10は建物入口からの虫の侵入経路を示した模式図である。ここで、問題となる虫の侵入方法は大きく分けて二通りある。ハエ、ガ、ハチ等の羽を有している飛翔虫7が飛来して、シャッター上部の隙間8から侵入する場合と、アリ、ムカデ、ダンゴムシ等の地這虫1が地面を這って、シャッターと床面の隙間5から侵入する場合である。
【0003】
飛翔虫7等に対しては、入口3上部に捕虫器・捕虫灯9を設置する方法が一般的である。一方、地這虫1等に対しては、粘着補虫シートを用いる、害虫防除剤を用いる、又は、室内外の気圧差を用いるなどの方法が採られている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−272345号公報
【特許文献2】特開2003−246707号公報
【特許文献3】特開平6−90649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粘着補虫シートによる捕虫法では、粘着補虫シートが人やフォークリフトや台車などの通行の妨げになり、また、シート等を頻繁に交換しなければならず、取り扱いが煩雑である問題があった。また、害虫防除剤を用いた防虫法では薬剤の人体への毒性や殺虫効果の持続性の点が問題となる。室内外の気圧差を用いた方法では、薬剤による人体への影響はないが、特別な装置を必要とし、装置の導入や維持にコストがかかってしまう。
【0006】
そこで、本発明の課題は、建物の入口前において、通行の妨げにならずメンテナンスが容易な地這虫の侵入を防止する装置を、安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る地這虫侵入防止装置は、建物の入口前のグラウンドに、前記入口を囲うように、地這虫の侵入を妨げる地這虫侵入防止溝が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、地這虫は入口に到達するために、必ず地這虫侵入防止溝を渡らなくてはならず、前記地這虫が溝に達した際、進行方向を変えるため入口への侵入が防止される。また、そのまま該地這虫が進行しても地這虫侵入防止溝に落ちてしまい、該地這虫侵入防止溝を上ることができないため、入口へ到達することはできない。本発明では、薬剤を用いないため、人体および環境へ全く影響を及ぼさずに地這虫の侵入を防ぐことができる。
即ち、構造が単純で施工が容易なため、低コストで導入が可能であり、メンテナンスは溝内を掃除するだけなので、薬剤を追加したり、シートを交換したりといった継続的なメンテナンス費用を必要としない。
【0009】
また、地這虫の侵入を防止するためには、凸状の地這虫侵入防止壁を設けることも可能であるが、凸状の壁は人、台車及びフォークリフト等の通行の妨げにもなる。本発明では溝によって地這虫の侵入を妨げるため、人、台車及びフォークリフト等の通行の妨げになるような段差は生じない。
【0010】
本発明の第2の態様に係る地這虫侵入防止装置は、第1の態様において、前記地這虫侵入防止溝は、幅の寸法は地這虫が渡れず落ちてしまう値であって、深さ及び摩擦係数は、該地這虫侵入防止溝に落ちた地這虫が再び這い上がってくることができない値に設定されていることを特徴とする。本発明によれば、第1の態様による作用効果を構造簡単にして実現できる。溝は地這虫が落ちる程度の幅に設定するため、人や台車、フォークリフトが通過する際の妨げとならない。
【0011】
本発明の第3の態様に係る地這虫侵入防止装置は、第1または第2の態様において、前記地這虫侵入防止溝が、前記入口前のグラウンドに設けられたスロープ又はステップ等に設けられていることを特徴とする。本発明によれば、入口前にスロープやステップ等がある場合でも、グラウンドに設置する場合と同様に施工し、入口直前で効率良く地這虫の侵入を阻止することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る地這虫侵入防止装置は、第3の態様において、前記地這虫侵入防止溝には、スロープ又はステップの側辺にまで到達する連通溝が設けられていることを特徴とする。本発明によれば、溝に落ちた虫や溝に溜まった塵埃等の溝内の異物を、溝の両端の側辺開口部からほうき等で掻き出し、容易にメンテナンスを行うことができる。また、雨が降った際や、水で該地這虫侵入防止溝を清掃した際に連通溝から水が排出され、溝に水が溜まることがない。
【0013】
本発明の第5の態様に係る地這虫侵入防止装置は、第3の態様において、前記地這虫侵入防止溝は、前記スロープ又はステップ等の全幅に渡って設けられていることを特徴とする。本発明によれば、前記地這虫侵入防止溝が前記スロープ又はステップ等の全幅に渡っているため、連通溝がスロープ又はステップの両側辺に設けられていることとなり、該スロープ又はステップ等の幅が大きくても、溝内の異物の掃き出し口となる連通溝までの距離が短くなるため、溝内の清掃が容易である。また、雨が降った際等に水が速やかに排出され易い。
【0014】
本発明の第6の態様に係る地這虫侵入防止装置は、第1から第5のいずれかの態様において、前記地這虫侵入防止溝は、溝断面の形状がU字型であることを特徴とする。本発明によれば、構造単純にして効果的に虫の侵入を防ぐことができる。また、U字型の溝の形状は一般的で、成型が容易であるため、コストが抑えられる。更に、U字型の溝は、溝内の視認性が良く、溝内に異物があれば直ぐに気づき、メンテナンスを行うことができる。
【0015】
本発明の第7の態様に係る地這虫侵入防止装置は、第6の態様において、前記地這虫侵入防止溝は、溝断面の開口部の幅が底面の幅よりも狭まっていることを特徴とする。本発明によれば、溝に落ちた虫が這い上がるためには、オーバーハングしている面を上らなければならないので、一度溝に落ちた虫が再び溝を上ってくることが困難となる。また、U字型の溝と同様に形が単純なので、溝の成型も容易である。更に、溝下部より溝上部が狭まっているため、コンクリート等に該地這虫侵入防止溝をユニット化して埋設固定した際には、その底面部がアンカーとなって外れにくい。
【0016】
本発明の第8の態様に係る地這虫侵入防止装置は、第1から第7のいずれかの態様において、前記地這虫侵入防止溝は、ステンレス材でできていることを特徴とする。本発明によれば、地這虫侵入防止装置は主に屋外に設置されるため、風雨にさらされるが、ステンレス材を用いれば腐食に強く錆にくいため、長期間使用が可能である。また、一般的にステンレスの表面は平滑であるため、特別な加工を施さずとも地這虫が滑り易い摩擦係数を有する溝として利用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建物の入口前に地這虫侵入防止溝を有する地這虫侵入防止装置を設けることによって、構造単純にして安価で効果的に地這虫の侵入を防止できる。また、薬剤を使わないため人体や自然界にも影響を与えず、交換が必要な器具も使わないため、溝内の清掃など、簡単なメンテナンスだけで長期間効果が継続し、維持費がほとんどかからない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態の斜視図であり、図2は本発明の第1実施形態に係る地這虫侵入防止溝の断面図であり、図3は平面における地這虫侵入防止装置の施工法の断面図であり、図4は地這虫が地這虫侵入防止溝によって進行を妨げられる様子を示した作用説明図である。
【0019】
本発明の第1実施形態の地這虫侵入防止装置2は、建物の入口3前において、図1に示すように入口3前のグラウンド6に入口3を囲うように、地這虫1の侵入を妨げる地這虫侵入防止溝10が設けられているものである。
【0020】
本実施の形態では、前記地這虫侵入防止溝10にはステンレス材が使用され、該地這虫侵入防止溝10は入口3を一連に囲うよう溶接固定されたU字の溝体11として成型され、前記溝体11がグラウンド6に埋設固定されて地這虫侵入防止装置2が構成される。
【0021】
前記地這虫侵入防止溝10の幅は、地這虫1が渡れず落ちてしまう値に設定される。また、深さ及び摩擦係数は、該地這虫侵入防止溝10に落ちた地這虫1が、再び這い上がってくることができない値に設定される。即ち、該地這虫侵入防止溝10の深さDと上部開口部の幅W1はほぼ同じ長さでよい。これらの値は設置場所に分布する虫の種類によって変えることができる。多くの地這虫1は体長15mm程度、或いはそれ以下であるので、幅W1及び深さDは通常20mm以上であれば足りるが、溝の上を通過する台車やフォークリフトの通行の妨げにならないよう、即ち、車輪が溝にはまったり通行時に段差が生じたりしないよう、上部開口部の幅W1は20〜30mmであることが好ましい。
【0022】
次に、本実施形態における地這虫侵入防止装置2の設置方法を、図3を用いて説明する。
建物入口3前において、コンクリート等のグラウンド6を施工する場合、まず、前記グラウンド6の施工予定位置を掘削して均し、該グラウンド6の型枠(図示せず)を設置し、掘削して均された底面に捨てコンクリート12を打設する。
次に、前記捨てコンクリート12上に、地這虫侵入防止溝10が配置される位置に鉄筋棒のアンカー13を打ち、アンカー13に仮固定用鉄筋棒14を溶接する。符号15は溶接箇所を示す。地這虫侵入防止溝10の溝体11は、前記コンクリート等を打設した際に、該地這虫侵入防止溝10の上部開口部がグラウンド6面に平らに位置するように、前記仮固定用鉄筋棒14に溶接して仮固定される。
続いて、コンクリート16等を打設し、地這虫侵入防止溝10がグラウンド6と一体となって、地這虫侵入防止装置2を構成する。
【0023】
次に本発明の第1実施形態の作用効果を説明する。本発明によって、図1に示すように、地這虫1が地這虫侵入防止溝10に到達した際には、前記地這虫1は入口3方向への進行を止めて方向を変えるため、該地這虫1の入口3への侵入が防止される。また、図4に示すように、地這虫1がそのまま地這虫侵入防止溝10内に入った場合、地這虫1は該溝10を上れなくなってしまうため、入口3には到達できない。
【0024】
地這虫侵入防止溝10の溝断面の形状が、図2のようなU字型であるものは、単純な形であるため成型し易く、低コストで準備できる。また、上部開口部の幅W1と底面の幅W2が同じであるため、上部から溝内部の視認性が良く、該溝10内に異物があれば直ぐに気づきメンテナンスを行うことができる。
【0025】
また、本発明の地這虫侵入防止装置2は主に屋外に設置されるため、風雨にさらされることになる。ステンレスは腐食に強く、錆び難いため、長期間の使用が可能である。また、ステンレス材を用いれば、一般的にその表面は平滑であるため、特別な加工を施さずとも地這虫1が滑り易い摩擦係数を有する溝として利用でき、安価に施工が可能である。ステンレスの表面は、地這虫1がより滑り易いよう、ヘアライン加工等を施していないものが好ましい。
【0026】
図5及び図6は、本発明の第2実施形態の斜視図及び平面図である。第2実施形態において、第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付し、その説明は省略する。グラウンド6と入口3に段差がある場合、入口3前にはスロープ17等が設けられるが、本発明の第2実施形態では、地這虫侵入防止溝10が前記スロープ17に設けられ、入口3直前で効果的に地這虫1の侵入を防止することができる。
【0027】
本実施の形態では、前記地這虫侵入防止溝10は前記スロープ17の全幅に渡って設けられ、該スロープ17の側辺に到る連通溝19を有している。該地這虫侵入防止溝10には連通溝19が溶接され、連通溝19を含めて一連の溝体11として構成されている。
【0028】
また入口3から地這虫侵入防止溝10までの距離L1及びL2(図6参照)は特に規定はしないが、L1は施工したスロープ17の中程であって、入口から50〜100cmの位置であることが好ましい。L2は入口際近傍であって、10〜30cmであることが好ましい。
【0029】
コンクリート等のスロープ17に地這虫侵入防止装置2を設置する場合も、第1実施形態と同様に施工することができる。スロープ17を設置する場合、グラウンド6と入口3との間には段差があるため、スロープ17の施工予定位置の掘削は前記段差に応じて省くことができる。また、地這虫侵入防止溝10をスロープ17の斜面に設ける場合には、図7のように地這虫侵入防止溝10の溝体11も傾斜させ、コンクリート等を打設した際に、該地這虫侵入防止溝10の上部開口部がグラウンド6面に平らに位置するように仮固定する。続いて、コンクリート16等を打設し、地這虫侵入防止溝10がスロープ17と一体となって、地這虫侵入防止装置2を形成する。
【0030】
本実施の形態によって、前記地這虫侵入防止溝10に落ちた虫や該溝10に溜まった塵埃を、スロープ17の両側辺18に到る連通溝19からほうき等で掻き出し、容易にメンテナンスを行うことができる。また、雨が降っても連通溝19から水が速やかに排出され、溝に水が溜まることがない。
【0031】
地這虫侵入防止溝10は、図6のように直線の溝で入口を囲ったものであれば施工が容易であるが、図8のように曲線や円弧を含む形状にも形成することができる。
【0032】
地這虫侵入防止溝10の溝断面の形状が、図9のようなU字型で、上部開口部の幅W1が溝底面部の幅W2よりも狭まっているもの、即ちW1<W2であるものは、該溝10に地這虫1が落ちた場合、地這虫1が這い上がるためにオーバーハングしている面を上らなければならないので、落ちた地這虫1が再び上ってくることがより困難となる。また、溝の形はU字型と同様単純なので、溝体11の成型も容易である。更に、上部開口部の幅W1が溝底面部の幅W2より狭まっているため、溝体11をコンクリート16に埋設した際に開口部より幅広な底面部がアンカーとなって、コンクリートから外れにくい。
また、上部開口部の幅W1は20〜30mmであることが好ましく、溝底面部の幅W2はW1+10〜15mmであることが好ましい。
【0033】
地這虫侵入防止溝10の溝断面の形状は、地這虫1が渡れず、且つ溝に落ちた場合に上れない形であれば他の形状でも良いが、コスト、施工及びメンテナンスのし易さ等を考慮すると図2及び図9のような形状が適している。
【0034】
また、本実施形態ではスロープ17に地這虫侵入防止溝10が設けられた例を示したが、入口3前のステップ等にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る地這虫侵入防止装置の斜視図である。
【図2】本発明の同地這虫侵入防止溝の断面図である。
【図3】平面における地這虫侵入防止装置の施工法の断面図である。
【図4】地這虫が地這虫侵入防止溝によって進行を妨げられる様子を示した作用説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る地這虫侵入防止装置の斜視図である。
【図6】本発明の同地這虫侵入防止装置の平面図である。
【図7】斜面における地這虫侵入防止装置の施工法の断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る地這虫侵入防止装置の一例の平面図である。
【図9】本発明の地這虫侵入防止溝の他の例を示す断面図である。
【図10】建物入口からの虫の侵入経路を示した従来の入口を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 地這虫、2 地這虫侵入防止装置、3 入口、4 シャッター、5 下部隙間
6 グラウンド、7 飛翔虫、8 上部隙間、9 捕虫器・捕虫灯
10 地這虫侵入防止溝、11 溝体、12 捨てコンクリート、13 アンカー
14 仮固定用鉄筋棒、15 溶接部、16 コンクリート、17 スロープ
18 側辺、19 連通溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の入口前のグラウンドに、前記入口を囲うように、地這虫の侵入を妨げる地這虫侵入防止溝が設けられていることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。
【請求項2】
請求項1において、前記地這虫侵入防止溝は、幅の寸法は地這虫が渡れず落ちてしまう値であって、深さ及び摩擦係数は該地這虫侵入防止溝に落ちた地這虫が再び這い上がってくることができない値に設定されていることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記地這虫侵入防止溝が、前記入口前のグラウンドに設けられたスロープ又はステップ等に設けられていることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。
【請求項4】
請求項3において、前記地這虫侵入防止溝には、スロープ又はステップの側辺にまで到達する連通溝が設けられていることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。
【請求項5】
請求項3において、前記地這虫侵入防止溝は、前記スロープ又はステップ等の全幅に渡って設けられていることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前地這記虫侵入防止溝は、溝断面の形状がU字型であることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。
【請求項7】
請求項6において、前記地這虫侵入防止溝は、溝断面の開口部の幅が底面の幅よりも狭まっていることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、前記地這虫侵入防止溝は、ステンレス材でできていることを特徴とする、地這虫侵入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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