説明

地震時ロック装置の取付ゲージと同装置の取付方法並びに同装置を有する家具の製造方法

【課題】 ロック装置本体をフレームの内面に簡便かつ正確に取り付けられるようにするとともに、被掛止部材をウィングの内面に簡便かつ正確に取り付けられるようにする。
【解決手段】 本発明の取付ゲージ20は、フレーム2の開口縁Eに当接する当接部29と、フレーム2の内面S1に取り付けられるロック装置本体3を当接部29から当該フレーム2の奥行き方向所定深さ位置Pにおいて支持する支持部21と、を備えている。そして、この取付ゲージ20の支持部21にロック装置本体3を装着した後、同取付ゲージ20の当接部29をフレーム2の開口縁Eに当接させた状態でロック装置本体3をフレーム2の内面に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時ロック装置の取付ゲージと同装置の取付方法並びに同装置を有する家具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食器棚、本棚、タンス、化粧ケース、天袋等の家具に代表されるウィング付きの収納ボックスでは、前面が開放されたボックス本体の開口部に扉(ウィング)が観音開き状に枢着されている。
上記家具に代表されるウィング付きの収納ボックスでは、収納物品の出し入れを頻繁に行うため、一般に施錠装置を設ける場合が少なく、また、施錠装置を設けたとしてもユーザーがこれを余り利用しないことが多い。
【0003】
このため、先の阪神大震災の経験からも判るように、大震度の地震等のため収納ボックスが大きく揺らされると、その揺れによって閉鎖されている扉が開いて食器等の収納物品が外に飛び出し、これによって収納物品が破損したり居住者に当たって負傷することがある。
【0004】
そこで、本願出願人は、地震の揺れを検出して突出するロック部材を有するロック装置本体をフレームの内面に取り付け、かつ、ロック部材に掛止される被掛止部材をフレームに枢着されたウィングの内面に取り付けてなる地震時ロック装置を既に出願している(特願平8−336067号、特願平8−282654号、特願平7−335323号、特願平7−134376号参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記地震時ロック装置が有効に作動するには、地震の揺れを検出して突出したロック部材がウィング側の被掛止部材を適切に掛止せねばならない。
従って、ロック装置本体は被掛止部材のウィングからの突出長さに対応してフレームの奥行き方向の適切な深さ位置に取り付けられ、かつ、被掛止部材はロック部材の突出位置(ロック位置)に対応して適切な高さ位置に取り付けられる必要がある。
【0006】
そこで、従来では、ロック装置本体については、フレームの開口縁から所定の奥行き寸法を定規で測定してその取付位置に筆記具等で印を付け、この印に合わせてロック装置本体を取り付けるようにしている。
他方、被掛止部材については、ウィングの上端縁から所定の高さ寸法を定規で測定してその取付位置に筆記具等で印を付け、この印に合わせて被掛止部材を取り付けるようにしている。
【0007】
しかるに、上記従来のロック装置本体の取付方法では、フレームの天板内面に定規を沿わせて同内面に印を付ける作業が面倒でその印がずれることが多く、このため、ロック部材が被掛止部材を掛止するための適切な奥行き位置にロック装置本体を取り付けられないことがある。
他方、上記従来の被掛止部材の取付方法では、ウィングの上端縁を基準に被掛止部材の取付高さを測定しているため、蝶番の取付誤差やがたつき等によってウィングのフレームに対する取付高さが当初からずれている場合には、被掛止部材がロック部材に掛止されるための適切な高さ位置に同被掛止部材を取り付けられないことがある。
【0008】
そこで、本発明は、ロック装置本体をフレームの内面に簡便かつ正確に取り付けられるようにするとともに、被掛止部材をウィングの内面に簡便かつ正確に取り付けられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は次のような技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る地震時ロック装置の取付ゲージは、フレームの開口縁に当接する当接部と、前記フレームの内面に取り付けられるロック装置本体を前記当接部から当該フレームの奥行き方向所定深さ位置において支持する支持部と、を備えたものである(第一の取付ゲージ)。
【0010】
この場合、上記取付ゲージの支持部にロック装置本体を装着した後、同取付ゲージの当接部をフレームの開口縁に当接させた状態でロック装置本体をフレームの内面に直接固定するようにすれば、わざわざフレームの内面に筆記具等で印を付けなくても、ロック装置本体を所定の奥行き位置に正確に取り付けることができる。
【0011】
上記ロック装置本体はフレームの内面に固定されるものであり、しかも、上記第一の取付ゲージによる取付方法(第一の取付方法)ではフレームの開口縁を基準にしてロック装置本体の奥行き位置を規定しているので、当該取付方法はフレームにウィングが枢着されているか否かに拘らず採用することができる。
【0012】
すなわち、地震時ロック装置を有する家具の製造工程において、第一の取付方法によってロック装置本体をフレームに取り付けてから、ウィングをそのフレームに枢着するようにしてもよく、逆に、既にウィングが枢着されているフレームに第一の取付方法によってロック装置本体を取り付けるようにしてもよい。
また、第一の取付方法は、当該ロック装置本体を既設の家具に後付けする場合にも採用することができる。
【0013】
本発明の地震時ロック装置の取付ゲージは、フレームの内面又は外面に当接する当接部と、この当接部に垂直に交差する縦長部材と、この縦長部材に設けられかつ前記フレームに枢着されたウィングに取り付けられる被掛止部材の所定高さ位置の基準となる目印部と、を備えたものである(第二の取付ゲージ)。
【0014】
この場合、上記取付ゲージの当接部をフレームの内面又は外面に当接させた状態で、ウィングを取付ゲージの目印部に当接するまで閉鎖方向に回動させて同ウィングの内面に被掛止部材の取付高さの基準となる目印を取ることにより、ウィングの上端縁を基準とせずに被掛止部材の取付高さを導出することができる。
その後は、この目印と同じ高さ位置又はその位置から所定高さだけ離れた位置に被掛止部材を固定すればよい。
【0015】
従って、蝶番の取付誤差やがたつき等によってウィングのフレームに対する取付高さが当初からずれていても、ロック部材が被掛止部材に掛止しうる適切な高さに被掛止部材を簡単に取り付けることができる。
【0016】
上記被掛止部材はウィングの内面に固定されるものであり、しかも、上記第二の取付ゲージによる取付方法(第二の取付方法)ではフレームの内面又は外面を基準にして被掛止部材の高さ位置を規定しているので、当該取付方法はフレームにウィングが枢着されている場合に限り採用することができる。
【0017】
すなわち、地震時ロック装置を有する家具の製造工程において、既にウィングが枢着されているフレームに第二の取付方法によって被掛止部材を取り付けるようにすればよい。
また、第二の取付方法は、当該被掛止部材を既設の家具に後付けする場合にも採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1〜図4は本発明の第一の実施形態を示している。
図1に示すように、本実施形態の地震時ロック装置1は、タンス、食器ケース、化粧ケース、キッチンの天袋その他の回動式の扉を有する家具に使用されるものであり、その家具を構成するボックス本体(フレーム)2の開口部の内面S1に取り付けられるロック装置本体3と、そのボックス本体2の開口部に開閉自在に枢着された開閉扉(ウィング)4の内面S2に取り付けられる被掛止部材5と、を備えている。
【0019】
このうち、ロック装置本体1は、本願出願人が既に出願している特願平7−335323号、特願平7−134376号及び特願平8−282654号と基本的原理が同じものである。
すなわち、このロック装置本体1は、ボックス本体2の天板6の下面(内面S1)に固定される合成樹脂製のケーシング7と、このケーシング7内に出退自在に挿通された合成樹脂製のラッチボルトよりなるロック部材8と、このロック部材8を常時上方へ付勢する第一コイルバネ9と、ロック部材8を予めケーシング7内に保持しておく金属板製の保持部材10と、この保持部材10を常時ロック部材8側へ付勢する第二コイルバネ11と、地震によるボックス本体2の揺れに伴って移動して保持部材10をロック部材8から解除する金属製のボールよりなる慣性部材12と、を備えている。
【0020】
ロック部材8は、その上端部だけがケーシング7の上面から突出するよう同ケーシング7の前端部(図1の右端部)に上下方向に出退自在に挿通されている。第一コイルバネ9は、ロック部材8の下部に当接するようケーシング7内に収納され、同ロック部材8を常時上方へ付勢している。なお、ロック部材8は上方突出したときのケーシング7に対する抜け止め部材(図示せず)を一体に備えている。
【0021】
保持部材10は、側面視コ字枠状に形成された金属板材よりなり、ケーシング7内に前後方向(図1の左右方向)移動自在に収納されている。保持部材10は、その後方側に配置された第二コイルバネ11によってロック部材8側に付勢されており、その前端に形成された掛止爪によって同ロック部材8の側面を掛止する。また、慣性部材12は、ケーシング7内における保持部材10の枠内に位置するように配置されている。
【0022】
従って、地震その他の振動によりボックス本体2が揺れると、慣性部材12が前後に転がって保持部材10に衝突し、この衝突で保持部材10のロック部材8に対する掛止状態が解除され、ロック部材8が第一コイルバネ9により上方のロック位置に突出するようになっている。
ケーシング7の後端部にはほぼ直方体状の取付台座部13が一体に突設され、この取付台座部13を天板6の下面S1に当接させて、同台座部13に形成したねじ孔13Aに下方から挿通した取付ねじ14を天板6側へねじ込むことにより、ケーシング7が天板6に固定される。従って、ケーシング7を天板6に固定した状態では、取付台座部13よりも前方の部分において、ケーシング7と天板6との間に被掛止部材5の挿通空間15が形成される。
【0023】
被掛止部材5は取付板部16と突出板部17とから側面視ほぼL字状に屈曲形成され、突出板部17はその後端を下方に屈曲してなる爪部18を備えている。被掛止部材5は、その取付板部16を開閉扉4の内面S2に取付ねじ19でねじ止めすることにより、突出板部17が開閉扉4の内面S2から前記挿通空間15に向かって後方へ突出するように取り付けられる。
【0024】
すなわち、被掛止部材5の取付位置は、開閉扉5の閉鎖状態において突出板部17がロック部材8の上下出退位置と重なる平面位置となり、かつ、前記挿通空間15に丁度入り込む高さ位置とされている。
上記地震時ロック装置1によれば、地震等のない通常時はロック部材8はケーシング7内に没入していてアンロック位置に保持されているので、被掛止部材5は挿通空間15を自由に行き来でき、このため開閉扉4は自由に開閉できる。
他方、地震の発生によりロック部材8が上方へ突出してロック位置になると、同ロック部材8の突出端部が被掛止部材5の爪部18を掛止して、開閉扉4の開放が阻止され、これによってボックス本体2内の物品が外に飛び出るのが未然に防止される。
【0025】
次に、上記地震時ロック装置1を構成するロック装置本体3及び被掛止部材5をそれぞれ適切な位置に取り付けるための取付ゲージ20について説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態の取付ゲージ20は、一端が開放されかつ他端が閉塞されたプラスチック製の中空部材よりなり、前記ケーシング7を外嵌して支持する横長筒状の支持部材(支持部)21と、この支持部材21の前端開口部を閉鎖するように固定された板状の縦長部材22と、を備えている。
【0026】
このうち、支持部材21は、ケーシング7の外周断面にほぼ適合する内周断面を有する筒材よりなり、ケーシング7を摺動自在に受け入れるための挿通開口部23を一端側に有する(図2参照)。この支持部材21は、上壁部24と左右一対の側壁部25と下壁部26とから一体に形成されており、下壁部26は、ケーシング7の下面の湾曲形状に適合するように湾曲されている。
【0027】
また、側壁部25は、ケーシング7の側面の平面形状に適合するように平板状に形成され、同側壁部25の内面側でかつ上下方向中央部には、ケーシング7の左右両コーナー部に適合した段差形状の断面を有する案内レール27が前後方向に延びて一体に形成されている。
従って、図2に示すように、ロック装置本体3をそのロック部材8側から挿通開口部23に向かって挿通すると、ケーシング7が支持部材21に対して前後スライド自在に嵌合し、ケーシング7が支持部材21に対して上下かつ左右に移動できないように支持されるようになっている。
【0028】
また、支持部材21の上壁部24は上面が平らな平板状に形成されており、この上板部24の上面は、ケーシング7を支持部材21に挿通した場合における同ケーシング7の取付台座部13の取付面と同じ高さになる。従って、ケーシング7は取付台座部13が上壁部24及び案内レール27の後縁部に当たるまで支持部材21に対してスライドさせることができ、このとき、取付台座部13の取付面は上壁部24の上面に対して面一になる(図1(a)参照)。
【0029】
前記縦長部材22は、支持部材21の他端開口部をすべて閉鎖する大きさの板状に形成されているとともに、この支持部材21の前記上壁部24の上面から上方に張り出した張出部28を備えている。この張出部28の裏面側にはゴム製の当接板29が張り付けられており、この当接板29はボックス本体2の開口縁Eに当接する第一当接部として機能する。
【0030】
そして、図1(a)に示すように、ケーシング7を支持部材21に対して最も奥まで嵌め込んだ場合における当接板29の裏面から前記ねじ孔13Aまでの水平距離Lは、ロック部材8が被掛止部材5を適切に掛止するためのケーシング7の取付ねじ14の打ち込み位置をPとしたとき、この打ち込み位置Pからボックス本体2の開口縁Eまでの奥行き深さに相当する長さに設定されている。
【0031】
従って、ケーシング7が最も奥まで嵌め込まれた取付ゲージ20をその当接板29が天板6の縁面(ボックス本体2の開口縁E)に当接するようボックス本体2の開口部に押し当てると、ケーシング7のねじ孔13Aが被掛止部材5の突出長さに対応した適切な奥行き位置Pに自動的に位置決めされることになる。
図3に示すように、縦長部材22の中央部には左右一対の鋼製の目印ピン(目印部)30が打ち込まれている。この目印ピン30は、縦長部材22の表面から突出する円錐状の頭部を備え、後述のように開閉扉4を当該ピン30の頭部に押し付けることにより、同開閉扉4の内面S2にノッチ(目印)31を形成できるようになっている。
【0032】
この左右一対の目印ピン30は、被掛止部材5の取付ねじ19の高さ位置Qに対応する位置に設けられている。すなわち、図1(a)に示すように、上壁部24の上面から目印ピン30までの垂直距離Hは、被掛止部材5がロック部材8に適切に掛止されるためのケーシング7の取付ねじ14の高さ位置をQとしたとき、この高さ位置Qから天板6の下面S1までの高さ寸法に相当する長さに設定されている。
【0033】
従って、上壁部24の上面が天板6の下面S1に当接するように支持部材21をセットすると、目印ピン30の頭部先端が被掛止部材5の取付ねじ19の打ち込み高さ位置Qそのものを指し示すことになる。なお、この場合、当該取付ゲージ20の上壁部24は、ボックス本体2の内面S1に当接する第二当接部として機能する。
【0034】
次に、上記取付ゲージ20を用いた地震時ロック装置1の取付方法について説明する。
まず、図2に示すように、ロック装置本体3を取付ゲージ20の挿通開口部23に嵌め込み、取付台座部13が上壁部24及び案内レール27に当接するまで同本体3を取付ゲージ20の支持部材21の奥へスライドさせてセットする。
【0035】
その後、図1(a)に示すように、当接板29が天板6の開口縁Eに当接しかつ上壁部24が同天板6の下面に当接するように取付ゲージ20をボックス本体2に押し当てるようにする。
この場合、当接板29が天板6の開口縁Eに当接している限り既にねじ孔13Aが適切な奥行き位置Pにセットされているので、この当接状態を保つようにして取付ゲージ20を保持しながら、ケーシング7のねじ孔13Aに取付ねじ14を挿通して天板6にねじ込めば、当該ロック装置本体3を所定の奥行き位置Pに正確に取り付けることができる。
【0036】
次に、上記のように取付ゲージ20を天板6の下面S1に押し当てた状態を維持したまま、開閉扉4を閉鎖方向に回動させて取付ゲージ20の目印ピン30に押し付け、開閉扉4の内面S2に被掛止部材5の取付高さの基準となるノッチ31を形成する。
そして、本実施形態では、目印ピン30の頭部先端が被掛止部材5の取付ねじ19の打ち込み高さ位置Qそのものを指し示しているから、上記のようにして形成されたノッチ31に被掛止部材5のねじ孔(図示せず)を直接位置合わせしたあと、そのノッチ31に向かって取付ねじ19を打ち込めばよい。
【0037】
このように、本実施形態に係る取付ゲージ20によれば、ロック装置本体3の奥行き位置Pを決定する奥行きゲージ機能と、被掛止部材5の高さ位置Qを決定する高さゲージ機能を併せ持っているので、一つの取付ゲージ20だけで、ロック装置本体3と被掛止部材5の双方の取り付け作業を極めて簡便かつ正確に行える。
【0038】
また、この場合、ロック装置本体3の固定が完了したあと、取付ゲージ20を同本体3に装着したまま目印ピン30でノッチ31を形成すれば、そのノッチ31は被掛止部材5の高さ位置Qだけでなく適切な平面位置(開閉扉4の左右方向位置)も指し示していることになる。
このように、本実施形態によれば、目印ピン30により被掛止部材5の正確な高さ位置Qと平面位置を同時に決定できるので、被掛止部材5の位置決め作業が極めて簡便になる。
【0039】
図4は、上記ロック装置本体3の取付構造の変形例を示している。
この場合、天板6の開口縁部に戸当たり桟33が形成されているため、ケーシング7の取付台座部13を天板6に直接ねじ止めすることはできない。
そこで、この変形例では、前後方向に長い鋼板製の取付プレート34の後端部に取付台座部13を前記取付ねじ14を介して固定し、この取付プレート34の前端部を戸当たり桟33の下面にねじ止めすることにより、ロック装置本体3を天板6側に取り付けるようにしている。
【0040】
なお、取付ゲージ20の側壁部25には、戸当たり桟33に螺合する取付ねじ33Aをねじ込むためのドライバーが同側壁部25と干渉しないよう、逃げ溝25Aが形成されている(図2及び図3参照)。
【0041】
そして、かかる取付プレート34を介在させてロック装置本体3を固定する場合においても、上記実施形態と同じ取付ゲージ20を用いた地震時ロック装置1の取付方法を採用できる。すなわち、戸当たり桟33の前面をボックス本体2の開口縁Eとしてここに取付ゲージ20の当接板29を当接すれば、ロック装置本体3を適切な奥行き位置に位置決めできる。
【0042】
また、戸当たり桟33の下面をボックス本体2の内面S1としてこの取付ゲージ20の上壁部24を当接すれば、目印ピン30は適切な被掛止部材5の高さ位置Qを指向することになる。
図5は、本発明の第二の実施形態を示している。
この実施形態では、第一実施形態の場合よりも構造が単純な地震時ロック装置1が採用されている。
【0043】
すなわち、ロック部材8はケーシング7の前部に横軸36を介して上下揺動自在に枢着された掛止アーム37よりなり、この掛止アーム37は前端に被掛止部材5への掛止爪38を備え、かつ、後端にボールよりなる慣性部材12の衝突部39を有する。
慣性部材12はケーシング7の内部に転動自在に設けられ、地震の揺れに伴って開閉扉4側に移動して衝突部39に衝突し、掛止アーム37を上方へ揺動させて同アーム37をロック位置にする。
【0044】
図6は、本発明の第三の実施形態を示している。
この実施形態では、第二実施形態の場合よりも更に構造が単純な地震時ロック装置1が採用されている。
すなわち、この場合の地震時ロック装置1は、ケーシング7の底面が凹湾曲面41とされており、ロック部材8は鋼製のボール42よりなる。被掛止部材5は、内部に係合孔43が形成された幅広の板材よりなり、ケーシング7の前部に形成したスリット44に挿脱自在となるように開閉扉4にねじ止めされる。
【0045】
ボール42よりなるロック部材8は、常時は凹湾曲面41の中央部に位置して被掛止部材5の移動を許容するが、同ロック部材8が地震の揺れによって凹湾曲面41の外周の高台部分45に乗り上げると、被掛止部材5の係合孔43に入り込んで同部材5の開放方向への移動を規制する。
これら図5及び図6の地震時ロック装置1は、ロック装置本体3の内部機構や被掛止部材5の形状が異なるだけであって、それらがいずれも適切な奥行き位置P及び高さ位置Qに取り付けられねばならない点においては、第一実施形態の地震時ロック装置1と同様である。
【0046】
従って、本発明の取付ゲージ20及びそれによる取付方法はこれらの地震時ロック装置1にも同様に使用できることは明らかであるから、図5及び図6に第一実施形態の場合と同様の符号を付して、取付ゲージ20の構造及び機能の説明は省略する。
なお、上記第一〜第三の実施形態において、取付ゲージ20は、奥行きゲージ機能だけを有するもの又は高さゲージ機能だけを有するものに変更することができる。また、目印ピン30の代わりに、その高さ位置に筆記具を着脱自在に取り付けられるようにして、この筆記具を目印部とすることができる。
【0047】
更に、支持部材21は、ケーシング7を着脱自在に支持できる機能を有すれば足り、例えば枠状の部材等のような筒状以外の部材によっても構成できる。同様に、第一当接部及び第二当接部は、当接板29や上壁部24のような平板状のものに限定されるものではない。なお、図5及び図6に示すように、取付ゲージ20の張出部28にゴム板を設けない場合は、当該張出部28の裏面によって直接に第一当接部29が構成されることになる。
【0048】
更に、ボックス本体2の開口縁面にシールゴムが張り付けられている場合は、このシールゴムが、第一当接部29が当接されるボックス本体2の開口縁Eを構成する。
また、被掛止部材5の高さ決定の基準となる面としては、ボックス本体2の内面S1だけでなく、同本体2の外面(すなわち、天板6の上面)を利用することもできる。もっとも、天袋の場合には、天板6の上面が外部に露出していないので、天板6の下面S1を利用せさるを得ない。
【0049】
図7は、本発明の第四の実施形態を示している。
この場合の地震時ロック装置1は、ケーシング7の底面が後ろ傾斜状の傾斜面47とされ、この傾斜面47上に下方鉤状のロック部材8が載置されている。ケーシング7の前下部にはロック部材8の鉤部48を下方へ突出させるための開口孔49が形成されている。
【0050】
しかして、地震等によりボックス本体2が振動すると、ロック部材8の鉤部48が開口孔49から下方に飛び出し、これによって被掛止部材5に形成された係合凹部50に入り込んで同部材5をロックし、開閉扉4の開放を阻止する。
本実施形態の地震時ロック装置1においても、第一〜第三実施形態の場合と同様の取付ゲージ20を採用できる。
【0051】
しかるに、この第四の実施形態では、第一〜第三実施形態の場合と異なり、取付ゲージ20として従前の差し金51が採用され、この差し金51を用いて被掛止部材5をだけを簡単かつ正確に取り付けるようにしている。
すなわち、本実施形態では、差し金51の一方の定規辺52を天板6の下面S1に当接させ、この定規辺52に直交する他方の定規辺53に開閉扉4を当接させて、被掛止部材5の適切な高さ位置Qを示す当該定規辺53の目盛りのところに筆記具で目印31Aをとり、この目印31Aに合わせて被掛止部材5を固定するようにしている。
【0052】
この場合においても、一方の定規辺52が天板6の下面S1に当接しており、同下面S1を基準にして被掛止部材5の高さ位置Qを決定するようにしているので、開閉扉4に取付誤差があっても被掛止部材20を適切な高さ位置Qに取り付けることができる。
なお、この場合、差し金51の角部を利用して天板6の下面S1と同レベルのところに目印31Bをとり、この目印31Bから一定寸法だけ下がった所に更に目印31Aを付けて被掛止部材5の適切な高さ位置Qとすることもできる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、ロック装置本体をフレームの内面に簡便かつ正確に取り付けることができる。また、被掛止部材をウィングの内面に簡便かつ正確に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】 (a)は第一の実施形態に係る取付ゲージの使用状態を示す側面断面図であり、(b)は取付後の地震時ロック装置の側面図である。
【図2】 地震時ロック装置の取付ゲージへの装着状態を示す斜視図である。
【図3】 図2の取付ゲージを反対側から見た場合の斜視図である。
【図4】 取付ゲージの使用状態を示す側面断面図である。
【図5】 第二の実施形態に係る取付ゲージの使用状態を示す側面断面図である。
【図6】 第三の実施形態に係る取付ゲージの使用状態を示す側面断面図である。
【図7】 第四の実施形態に係る取付ゲージの使用状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 地震時ロック装置
2 ボックス本体(フレーム)
3 ロック装置本体
4 開閉扉(ウィング)
5 被掛止部材
20 取付ゲージ
21 支持部材(支持部)
22 縦長部材
24 上壁部(第二の当接部)
29 当接板(第一の当接部)
30 目印ピン(目印部)
31 ノッチ(目印)
E 開口縁
S1 フレームの内面
S2 ウィングの内面
P 奥行き位置
Q 高さ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(2)の開口縁(E)に当接する当接部(29)と、前記フレーム(2)の内面(S1)に取り付けられるロック装置本体(3)を前記当接部(29)から当該フレーム(2)の奥行き方向所定深さ位置(P)において支持する支持部(21)と、を備えている地震時ロック装置の取付ゲージ。
【請求項2】
請求項1に記載の取付ゲージ(20)の支持部(21)にロック装置本体(3)を装着した後、同取付ゲージ(20)の当接部(29)をフレーム(2)の開口縁(E)に当接させた状態で前記ロック装置本体(3)を前記フレーム(2)の内面(S1)に固定する地震時ロック装置の取付方法。
【請求項3】
請求項2に記載の取付方法によってロック装置本体(3)をフレーム(2)に取り付けた後、ウィング(4)をそのフレーム(2)に枢着するようにした地震時ロック装置を有する家具の製造方法。
【請求項4】
既にウィング(4)が枢着されているフレーム(2)に請求項2に記載の取付方法によってロック装置本体(3)を取り付けるようにした地震時ロック装置を有する家具の製造方法。
【請求項5】
フレーム(2)の内面(S1)又は外面に当接する当接部(24)と、この当接部(24)に垂直に交差する縦長部材(22)と、この縦長部材(22)に設けられかつ前記フレーム(2)に枢着されたウィング(4)に取り付けられる被掛止部材(5)の所定高さ位置(Q)の基準となる目印部(30)と、を備えている地震時ロック装置の取付ゲージ。
【請求項6】
請求項5に記載の取付ゲージ(20)の当接部(24)をフレーム(2)の内面(S1)又は外面に当接させた状態で、ウィング(4)を前記取付ゲージ(20)の目印部(30)に当接するまで閉鎖方向に回動させて同ウィング(4)の内面に被掛止部材(5)の取付高さの基準となる目印(31)を取り、この目印(31)の高さ位置又はその位置から所定高さだけ離れた位置に前記被掛止部材(5)を固定する地震時ロック装置の取付方法。
【請求項7】
既にフレーム(2)に枢着されているウィング(4)に請求項6に記載の取付方法によって被掛止部材(5)を取り付けるようにした地震時ロック装置を有する家具の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−52642(P2006−52642A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270948(P2005−270948)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【分割の表示】特願平10−44424の分割
【原出願日】平成10年2月10日(1998.2.10)
【出願人】(000140306)株式会社奥田製作所 (50)