説明

地震計及び地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法

【課題】ヒューマンエラーが発生する恐れがなく、テストコイルの感度設定作業を効率よく行える地震計を提供する。
【解決手段】可動部の駆動により生成される検出信号を出力する検出コイル6、及び可動部に模擬的な振動を与えるテストコイル7を備えた振動検出器10と、テストコイル7に、当該テストコイル7の感度を取得するための所定の加速度に対応するテスト信号を入力し、入力されたテスト信号に応じて検出コイル6から出力された検出信号から加速度を算出し、算出した加速度及びテストコイル7に入力したテスト信号に対応する加速度の比よりテストコイル7の感度を取得し、取得したテストコイル7の感度を記憶する演算処理部35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震計及び当該地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震計などに内蔵されて振動を検出する振動検出器が知られている。
振動検出器においては、外乱振動による加速度を常時検出している検出コイルとは別に、当該振動検出器の検定用のテストコイルが装備された構成が知られている。
テストコイルは、振動検出器の可動部に模擬的な振動を与え、あたかも実際に加速度が生じたかのように検出コイルに加速度信号(検出信号)を出力させることで、振動検出器が地震等の発生時とほぼ同じように動作することを確認するために用いられるものである。
例えば、一日に一回程度、テストコイルにより検出コイルに所定の加速度に対応する振動を与え、検出コイルから検出された加速度と与えた加速度とを検証し、検証の結果、検出コイルから検出された加速度がある閾値内であれば正常と判断され、閾値外であれば検出コイルに異常(故障等)があると判断される。
このようなテストコイルを用いた振動検出器の検定方法としては多くの手法が提案されており、例えば、特許文献1には、複数台の地震計を備えた多チャンネルの地震観測系を備えた地震観測装置において、ある特定のチャンネルを除いた残りのチャンネルについて校正を行い、その後、前回校正しなかったチャンネルについて校正を行う手法が記載されている。
【0003】
ところで、上記した振動検出器の検定は、予め地震計に設定されたテストコイルの感度を用いて行われる。
テストコイルの感度は、一般に、地震計の工場出荷前や設置現場で検出コイルを交換した際などに作業者により外部機器を用いて計測され、計測された感度の値が地震計に記憶されることで、設定されている。
具体的には、作業者は、外部機器を用いてテストコイルに所定の正弦波電流を印加し、加速度信号をデジタルボルトメータにて目視確認して、確認した数値を記録する。次いで、作業者は、確認した数値に基づきテストコイルの感度を算出し、算出したテストコイルの感度を地震計に入力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−304933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したテストコイルの感度設定方法では、作業者の読み取り及び書き取りによるヒューマンエラーや、算出したテストコイルの感度を地震計に入力する際のヒューマンエラーなどが生じる恐れがあるという問題があった。
また、テストコイルの感度の設定を行う際には外部機器を接続しなければならず、作業が煩雑であって作業効率が悪いという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、ヒューマンエラーが発生する恐れがなく、テストコイルの感度設定作業を効率よく行える地震計及びこの地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地震計において、
磁界が形成された磁界空間内に配置され、外乱振動により変位可能な可動部の振動により起電力を発生して検出信号を出力する検出コイル、及び前記可動部に模擬的な振動を与えるテストコイルを備えた振動検出器と、
前記テストコイルに、当該テストコイルの感度を取得するための所定の加速度に対応するテスト信号を入力するテスト信号入力手段と、
前記テスト信号入力手段により入力されたテスト信号に応じて前記検出コイルから出力された検出信号から加速度を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した加速度と、前記テストコイルに入力したテスト信号に対応する加速度との比より、前記テストコイルの感度を取得する感度取得手段と、
前記感度取得手段により取得した前記テストコイルの感度を記憶する記憶手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地震計において、
前記算出手段により算出した加速度が所定の範囲内であるか否かを判断する判断手段を備え、
前記感度取得手段は、前記判断手段によって、前記算出手段により算出した加速度が所定の範囲内であると判断された場合に、前記テストコイルの感度を取得することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の地震計において、
前記判断手段によって、前記算出手段により算出した加速度が所定の範囲内でないと判断された場合に、エラー表示及び/又はエラー信号出力を行う警報手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の地震計において、
前記テスト信号入力手段は、前記テスト信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定となるように前記テスト信号を入力することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の地震計において、
前記テストコイルに、前記検出コイルを校正するための所定の校正信号を入力する校正信号入力手段と、
前記校正信号入力手段により入力された校正信号に応じて前記検出コイルから出力された検出信号の出力値を、前記記憶手段に記憶された前記テストコイルの感度を用いて補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の地震計において、
前記校正信号入力手段は、前記校正信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定となるように前記校正信号を入力することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6の何れか一項に記載の地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法であって、
前記テストコイルに、当該テストコイルの感度を取得するための所定の加速度に対応するテスト信号を入力するテスト信号入力工程と、
前記テスト信号入力工程により入力されたテスト信号に応じて前記検出コイルから出力された検出信号から加速度を算出する算出工程と、
前記算出工程により算出した加速度と、前記テストコイルに入力したテスト信号に対応する加速度との比より、前記テストコイルの感度を取得する感度取得工程と、
前記感度取得工程により取得した前記テストコイルの感度を前記記憶手段に記憶する記憶工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テストコイルに、当該テストコイルの感度を取得するための所定の加速度に対応するテスト信号が入力され、このテスト信号に応じて検出コイルから出力された検出信号から加速度が算出され、算出された加速度と、テスト信号に対応する加速度との比より、テストコイルの感度が取得されて記憶される。
このため、外部機器が無くとも、テストコイルの感度を取得し記憶することができるので、テストコイルの感度設定にあたって作業者の手が介在しないので、ヒューマンエラーが発生するのを防止することができ、機械の信頼性を向上させることができる。
また、外部機器を接続する必要がないため、テストコイルの感度設定作業が簡単になり、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る地震計の機能ブロック図である。
【図2】図1の地震計に内蔵された振動検出器としての過減衰型加速度計を示す概略模式図である。
【図3】テストコイルに印加するテスト信号及び校正信号の印加方法のイメージ図である。
【図4】本発明の実施形態に係る地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る地震計の校正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して、本発明に係る地震計及び当該地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る地震計100は、例えば、図1に示すように、振動検出器10と、制御部30と、表示部50と、音出力部70と、等を備えて構成されている。
【0018】
振動検出器10は、例えば、図2に示すような、過減衰型加速度計により構成されている。
この過減衰型加速度計とは、「磁界中を導体が運動(振動)すると、導体には運動速度に比例した起電力が発生する」という原理を利用した動電型検出器に、電磁的にダンピング(減衰)をかけることで、加速度に比例した領域を広げ、検出器としたものである。
【0019】
具体的に、振動検出器10は、ケース1と、ケース1内に固定された2つのマグネット2A、2Bと、マグネット2Aの上部に配される上磁性部材3Aと、マグネット2Bの下部に配される下磁性部材3Bと、2つのマグネット2A、2Bの間に配置される中央磁性部材4と、2つのマグネット2A、2Bの中心部に位置するボビン(可動部)5と、ボビン5の上部に保持される検出コイル6と、ボビン5の下部に保持されるテストコイル7と、ボビン5をケース1内の上部において振動可能に支持する一対の支持バネ8A,8Aと、ボビン5をケース1内の下部において振動可能に支持する一対の支持バネ8B,8Bと等を備えている。
【0020】
ケース1は、振動検出器10の筐体部分である。
【0021】
マグネット2A、2Bは、互いに同一な平面視リング状の永久磁石で形成され、ケース1の内部の上下に所定の間隔を有して配置されてケース1内に磁界を形成している。
また、マグネット2Aは上磁性部材3Aと中央磁性部材4とで挟持され、マグネット2Bは下磁性部材3Bと中央磁性部材4とで挟持されるようにして、ケース1の内部に固定されている。
【0022】
上磁性部材3Aと下磁性部材3Bとは、どちらも磁性材料で形成され、平面視においてマグネット2A、2Bと略同一のリング状である。上磁性部材3Aと下磁性部材3Bとは、それぞれマグネット2A,2Bの上面及び下面に配設され、その内側部分には、外側磁極3a、3aが形成されている。
【0023】
中央磁性部材4は、磁性材料で形成され、平面視リング状であってマグネット2A、2Bが当接する当接部41と、当接部41の内側部分から上下に起立する起立部42とからなり、起立部42の上端部及び下端部には、外側磁極3a、3aと対向して内側磁極4a,4aが形成されている。
また、上下の外側磁極3aと内側磁極4aとの間には、平面視でリング状の空隙(磁界空間)9が形成されている。
【0024】
ボビン5は、銅やアルミ合金等の非磁性材で形成されており、特定の振動方向(A方向)に沿って振動できるように、支持バネ8A,8Aと、支持バネ8B,8Bと、によりケース1内に支持されている。
ボビン5の上下には、空隙9内に配設されて検出コイル6を巻回するための肉厚な保持部5aが備えられており、当該保持部5aを備えることでボビン5にダンピング(減衰)をかけることができる(過減衰にすることができる)ようになっている。
このボビン5においては、ボビン5が磁界中で運動することで発生する起電力が検出コイル6に流れ、逆起電力を発生し、その力が減衰となる。
【0025】
検出コイル6は、ボビン5の上側の保持部5aに巻回されたコイルであり、磁極3a,4aにより形成されたリング状の空隙9に位置するようになっている。
検出コイル6の出力電圧は、加速度信号(検出信号)としてADC34に出力される。
【0026】
テストコイル7は、ボビン5の下側の保持部5aに巻回されたコイルであり、磁極3a,4aにより形成されたリング状の空隙9に位置するようになっている。
テストコイル7には、後述する地震計100に内蔵された振動検出器10の感度設定処理が実行される際に、DAC31によりテスト信号として正弦波電流が印加される。
また、テストコイル7には、後述する地震計100の校正処理が実行される際に、DAC31により校正信号として正弦波電流が印加される。
【0027】
一対の支持バネ8A,8Aは、例えば、一端がケース1の壁面に固定され、他端がボビン5に接続され、ボビン5を図2のA方向に振動可能に支持する板バネ等である。
支持バネ8A,8Aは、ボビン5の振動に応じて、所定のバネ定数と変位より導出される復元力をボビン5に付与する。
【0028】
同様に、一対の支持バネ8B,8Bは、例えば、一端がケース1の壁面に固定され、他端がボビン5に接続され、ボビン5をA方向に振動可能に支持する板バネ等である。
支持バネ8B,8Bは、ボビン5の振動に応じて、所定のバネ定数と変位より導出される復元力をボビン5に付与する。
【0029】
制御部30は、DAC(digital to analog converter)31、アナログ信号出力部32、アナログ信号入力部33、ADC(analog to digital converter)34、演算処理部35、記憶部36等を備えている。
【0030】
DAC31は、D/A変換回路であり、演算処理部35からのテストコイル感度取得命令に基づいて、所定の加速度に対応するテスト信号をアナログ信号出力部32に出力する。
また、DAC31は、校正処理実施命令に基づいて、所定の加速度に対応する校正信号をアナログ信号出力部32に出力する。
【0031】
アナログ信号出力部32は、DAC31から供給されたテスト信号や校正信号をテストコイル7に出力する。具体的には、テストコイル7に正弦波電流を印加する。
これにより、検出コイル6から加速度信号(検出信号)が検出される。
【0032】
アナログ信号入力部33は、検出コイル6からの加速度信号(検出信号)を取り込み、ADC34に出力する。
【0033】
ADC34は、A/D変換回路であり、アナログ信号入力部33より供給された検出信号(アナログ信号)をデジタル信号へ変換し、演算処理部35に出力する。
【0034】
演算処理部35は、図示は省略するがCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備えるコンピュータ部として構成され、地震計100に内蔵された振動検出器10のテストコイル7の感度を設定する感度設定処理や、検出コイル6の校正処理(キャリブレーション処理)などを実行するものである。
【0035】
感度設定処理とは、個々のテストコイル7固有の入出力性能を設定する処理である。感度設定処理の結果、記憶部36に記憶されたテストコイル7の感度に関するデータ(感度情報)を用いて、後述の校正処理が行われることとなる。
【0036】
具体的に、演算処理部35は、テストコイル7の感度を取得するテストコイル感度取得命令をDAC31に送信する。なお、演算処理部35は、テストコイル感度取得命令を、地震計100の出荷時などに行われる作業者の指示に応じて送信する。
テストコイル感度取得命令が送信されると、DAC31及びアナログ信号出力部32を介して所定の加速度に対応するテスト信号(正弦波電流)がテストコイル7に所定の時間印加される。
ここで、テストコイル7に最初から所定の値の加速度に対応するテスト信号を印加すると、振動検出器10の出力が安定するまで時間を要する。このため、演算処理部35は、図3に示すように、テスト信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定値とし、その一定値での電流を所定の時間印加するように制御している。
【0037】
テストコイル7にテスト信号が印加されると、これに応じて検出コイル6から検出信号(電圧値)が出力され、この検出信号は、アナログ信号入力部33及びADC34を介してデジタル信号となって演算処理部35に入力される。
すると、演算処理部35は、ADC34から供給された検出信号(電圧値)から所定の時間分の加速度(gal値)を算出する。
次に、演算処理部35は、算出した所定の時間分の加速度値を平均化する。
次に、演算処理部35は、平均化した加速度値が、予め決められた所定の範囲内であるか否かを判断し、所定の範囲内であると判断した場合に、この平均化した加速度と、テストコイル7に入力したテスト信号に対応する加速度との比より、テストコイル7の感度を取得し、感度情報として記憶部36に記憶させる。一方、算出した加速度値が所定の範囲内でないと判断した場合には、演算処理部35は、表示部50にエラー表示として所定のメッセージを表示させる。
演算処理部35は、かかる感度設定処理を実行することでテスト信号入力手段、算出手段、判断手段、感度取得手段、及び記憶手段として機能している。
【0038】
また、校正処理とは、テストコイル7によりボビン5に模擬的な振動を与えて検出コイル6に加速度信号(検出信号)を出力させ、この検出信号を検証することで、地震計100が正常に稼動するか否かをテストする処理である。
【0039】
具体的に、演算処理部35は、校正処理を実行する校正処理実施命令をDAC31に送信する。なお、校正処理実施命令は、作業者の指示に応じて送信されることとしてもよいし、予め決められた時刻毎に当該時刻になったことを演算処理部35が判断して送信することとしても良い。
校正処理実施命令が送信されると、DAC31及びアナログ信号出力部32を介して所定の加速度に対応する校正信号(正弦波電流)がテストコイル7に所定の時間印加される。
ここで、テストコイル7に最初から所定の値の加速度に対応する校正信号を印加すると、振動検出器10の出力が安定するまで時間を要する。このため、演算処理部35は、図3に示すように、校正信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定値とし、その一定値での電流を所定の時間印加するように制御している。
【0040】
テストコイル7に校正信号が印加されると、これに応じて検出コイル6から検出信号(電圧値)が出力され、この検出信号は、アナログ信号入力部33及びADC34を介してデジタル信号となって演算処理部35に入力される。
すると、演算処理部35は、ADC34から供給された検出信号(電圧値)から所定の時間分の加速度(gal値)を算出する。
次に、演算処理部35は、算出した所定の時間分の加速度値を平均化する。
次に、演算処理部35は、平均化した加速度値を、記憶部36に記憶された感度情報に基づいて補正する。
次に、演算処理部35は、補正した加速度とテストコイル7与えた加速度とを比較して、その差が所定の閾値以内であれば地震計100が正常に稼動すると判断する。一方、補正した加速度とテストコイル7に与えた加速度との差が所定の閾値以内でないと判断した場合には、演算処理部35は、表示部50にエラー表示として所定のメッセージを表示させるとともに、音出力部70にエラー信号として所定の警報音を出力させる。
演算処理部35は、かかる校正処理を実行することで校正信号入力手段及び補正手段として機能している。
【0041】
記憶部36は、演算処理部35に接続されており、上記感度設定処理の結果取得されたテストコイル7の感度に関するデータ(感度情報)を記憶する。
また、上述したが、記憶部36は、校正処理時に演算処理部35により参照される。即ち、記憶部36に記憶された感度情報に基づいて、地震計100の校正処理が行われる。
【0042】
表示部50は、図示しないモニタを備え、例えば、感度設定処理時及び校正処理時に、演算処理部35の制御によりエラー表示として所定のメッセージを表示する。
【0043】
音出力部70は、図示しないスピーカーを備え、例えば、校正処理時に、演算処理部35の制御により表示部50によるエラー表示と合せてエラー信号として所定の警報音を出力する。
【0044】
作業者は、例えば、感度設定処理時においては、表示部50に表示されたエラー表示に応じて、所定の点検を実施することができる。
また、作業者は、例えば、校正処理時においては、表示部50に表示されたエラー表示に応じて、所定の点検を実施することができるとともに、音出力部70により出力されたエラー信号により、所定の点検を実施する必要性を遠隔地でも確認することが可能である。
なお、感度設定処理時においても、音出力部70によりエラー信号出力を行うこととしても良いのは勿論である。
表示部50及び音出力部70は、エラー表示及びエラー信号出力を行うことで警報手段として機能している。
【0045】
次に、図4のフローチャートに基づいて、地震計100に内蔵された振動検出器10の感度設定方法について、説明する。
【0046】
先ず、ステップS11において、演算処理部35は、テストコイル7の感度を取得するテストコイル感度取得命令をDAC31に送信する。
次いで、ステップS12において、DAC31より、所定の加速度に対応したテスト信号(正弦波電流)がテストコイル7に印加される(テスト信号入力工程)。これにより、検出コイル6から、検出信号(加速度信号:電圧値)が出力される。
次いで、ステップS13において、ADC34は、検出コイル6から出力された検出信号をA/D処理する。
【0047】
次いで、ステップS14において、演算処理部35は、検出信号の電圧値を加速度値(Gal値)に換算する(算出工程)。
次いで、ステップS15において、演算処理部35は、所定時間の加速度値を平均化する(算出工程)。
【0048】
次いで、ステップS16において、演算処理部35は、平均化した加速度値が所定範囲内であるか否かを判断し、所定範囲内でない場合(ステップS16:NO)、続くステップS17において、表示部50によりエラー表示を行い、本処理を終了する。
一方、所定範囲内の場合(ステップS16:YES)、続くステップS18において、DAC31より印加した加速度と、ADC34より求めた加速度の比よりテストコイル感度を取得する(感度取得工程)。
次いで、ステップS19において、算出したテストコイル感度を記憶部36に記憶し(記憶工程)、本処理を終了する。
【0049】
次に、図5のフローチャートに基づいて、地震計100の校正方法について、説明する。
【0050】
先ず、ステップS21において、演算処理部35は、校正処理を実行する校正処理実施命令をDAC31に送信する。
次いで、ステップS22において、DAC31より、所定の加速度に対応した校正信号(正弦波電流)がテストコイル7に印加される。これにより、検出コイル6から、検出信号(加速度信号:電圧値)が出力される。
次いで、ステップS23において、ADC34は、検出コイル6から出力された検出信号をA/D処理する。
【0051】
次いで、ステップS24において、演算処理部35は、検出信号の電圧値を加速度値(Gal値)に換算する。
次いで、ステップS25において、演算処理部35は、所定時間の加速度値を平均化する。
次いで、ステップS26において、演算処理部35は、平均化した加速度値を、記憶部36に記憶された感度情報に基づいて補正する。
【0052】
次いで、ステップS27において、演算処理部35は、平均化した加速度値とテストコイル7与えた加速度との差が所定の閾値以内であるか否かを判断し、所定の閾値以内でない場合(ステップS27:NO)、続くステップS28において、地震計100は正常に稼動しないと判断し、表示部50によりエラー表示を行い、合わせて音出力部70よりエラー信号を出力し、本処理を終了する。
一方、所定の閾値以内である場合(ステップS27:YES)、続くステップS29において、地震計100は正常に稼動すると判断し、本処理を終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、テストコイル7に当該テストコイル7の感度を取得するための所定の加速度に対応するテスト信号を入力し、テスト信号に応じて検出コイル6から出力された検出信号から加速度を算出し、算出した加速度及びテストコイル7に入力したテスト信号に対応する加速度の比より、テストコイル7の感度を取得して記憶することとなる。
このため、外部機器が無くとも、テストコイル7の感度を設定することができるので、テストコイル7の感度設定にあたって作業者の手が介在しないので、ヒューマンエラーが発生するのを防止することができ、機械の信頼性を向上させることができる。
また、外部機器を接続する必要がないため、テストコイル7の感度設定作業が簡単になり、作業効率が向上する。
【0054】
また、本実施形態によれば、算出した加速度が所定の範囲内であるか否かを判断し、所定の範囲内であると判断された場合にテストコイル7の感度を取得し、所定の範囲内でないと判断された場合にエラー表示及び/又はエラー信号出力を行う。
このため、作業者に適切なエラーメッセージが通知されることになる。
【0055】
また、本実施形態によれば、テスト信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定となるように、テスト信号を入力する。
このため、感度設定処理時にテストコイル7に電流を印加する際、出力を安定させることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、テストコイル7に、検出コイル6を校正するための所定の校正信号を入力し、入力された校正信号に応じて検出コイル6から出力された検出信号の出力値を、記憶部36に記憶された感度情報を用いて補正する。
このため、検出コイル6の校正を適切に行うことができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、校正信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定となるように、校正信号を入力する。
このため、校正処理時にテストコイル7に電流を印加する際、出力を安定させることができる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行うことが可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、振動検出器10として過減衰型加速度計を例示して説明したが、動電型検出器やサーボ型振動検出器であっても良い。
【0060】
また、上記実施形態においては、演算処理部35は、テストコイル感度取得命令を、地震計100の出荷時などに行われる作業者の指示に応じて送信することとしたが、演算処理部35は、予め決められた時刻毎などの所定のタイミングとなったことを判断し、テストコイル感度取得命令を送信する構成としても良い。
【符号の説明】
【0061】
100 地震計
10 振動検出器
1 ケース
2A,2B マグネット
3A 上磁性部材
3B 下磁性部材
3a 外側磁極
4 中央磁性部材
41 当接部
42 起立部
4a 内側磁極
5 ボビン(可動部)
5a 保持部
6 検出コイル
7 テストコイル
8A,8A 支持バネ
8B,8B 支持バネ
9 空隙(磁界空間)
30 制御部
31 DAC
32 アナログ信号出力部
33 アナログ信号入力部
34 ADC
35 演算処理部(テスト信号入力手段、算出手段、感度取得手段、記憶手段、判断手段、校正信号入力手段、補正手段)
36 記憶部
50 表示部(警報手段)
70 音出力部(警報手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界が形成された磁界空間内に配置され、外乱振動により変位可能な可動部の振動により起電力を発生して検出信号を出力する検出コイル、及び前記可動部に模擬的な振動を与えるテストコイルを備えた振動検出器と、
前記テストコイルに、当該テストコイルの感度を取得するための所定の加速度に対応するテスト信号を入力するテスト信号入力手段と、
前記テスト信号入力手段により入力されたテスト信号に応じて前記検出コイルから出力された検出信号から加速度を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した加速度と、前記テストコイルに入力したテスト信号に対応する加速度との比より、前記テストコイルの感度を取得する感度取得手段と、
前記感度取得手段により取得した前記テストコイルの感度を記憶する記憶手段と、
を備えることを特徴とする地震計。
【請求項2】
前記算出手段により算出した加速度が所定の範囲内であるか否かを判断する判断手段を備え、
前記感度取得手段は、前記判断手段によって、前記算出手段により算出した加速度が所定の範囲内であると判断された場合に、前記テストコイルの感度を取得することを特徴とする請求項1に記載の地震計。
【請求項3】
前記判断手段によって、前記算出手段により算出した加速度が所定の範囲内でないと判断された場合に、エラー表示及び/又はエラー信号出力を行う警報手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の地震計。
【請求項4】
前記テスト信号入力手段は、前記テスト信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定となるように前記テスト信号を入力することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の地震計。
【請求項5】
前記テストコイルに、前記検出コイルを校正するための所定の校正信号を入力する校正信号入力手段と、
前記校正信号入力手段により入力された校正信号に応じて前記検出コイルから出力された検出信号の出力値を、前記記憶手段に記憶された前記テストコイルの感度を用いて補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の地震計。
【請求項6】
前記校正信号入力手段は、前記校正信号の値を徐々に上げ、所定の加速度に対応する値に達した時点で一定となるように前記校正信号を入力することを特徴とする請求項5に記載の地震計。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法であって、
前記テストコイルに、当該テストコイルの感度を取得するための所定の加速度に対応するテスト信号を入力するテスト信号入力工程と、
前記テスト信号入力工程により入力されたテスト信号に応じて前記検出コイルから出力された検出信号から加速度を算出する算出工程と、
前記算出工程により算出した加速度と、前記テストコイルに入力したテスト信号に対応する加速度との比より、前記テストコイルの感度を取得する感度取得工程と、
前記感度取得工程により取得した前記テストコイルの感度を前記記憶手段に記憶する記憶工程と、
を有することを特徴とする地震計に内蔵された振動検出器の感度設定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−113729(P2013−113729A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260510(P2011−260510)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)