説明

地震警報装置及び地震対策システム

【課題】地震発生時において、より回線の繋がりやすい緊急連絡手段を備えた地震警報装置及び地震対策システムを提供することを目的とする。
【解決手段】地震に関する情報が伝達される回線11に接続されており、処理部21と、個別又は複数の端末装置13と接続される電話装置インターフェース部22とを有し、少なくとも一つの緊急連絡先及び地震の強度に関するしきい値が予め設定されており、処理部は、地震に関する情報を受信して、緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える場合に、電話装置インターフェース部を介して、端末装置を制御し、予め設定された緊急連絡先に端末装置から発呼させ、緊急連絡用の回線を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震を観測して得られた地震に関する情報に基づき、到来する地震波を予め予測して、地震波が到達する前に緊急連絡用の回線を確保するための地震警報装置及び地震対策システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震の予測強度、予測到達時刻(時間)を知らせ、地震に対する咄嗟の備えを行なうことを支援し、災害の防止を図るシステムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
このシステムは、全国に配置した地震観測網と、地震情報を統括する統括機関とで構成し、各地震観測網で観測した実時間情報を、前記統括機関の受信部に送信する。観測網から送信される実時間情報は、原データと防災に使用可能な強度、到達時間などの地震パラメータ情報(地震の3要素:場所、時間、大きさ)などで、受信部で受信した地震の3要素を解析部で求める。
【0004】
そして、特定地において気象庁震度階が例えば5以上を与えるマグニチュードか否か、当該特定地における震央距離がマグニチュードから求められる有感半径以内か否かを判定する。また、予測演算部において、震央距離とマグニチュードと深さから当該特定地での標準強度を求めると共に、地震動の場所の地質状況、建物の構造の違いなどによる当該特定地における増幅係数を求め、それら標準強度と増幅係数を用いて地震波(S波)の予測強度、あるいは最大速度、最大加速度、最大変位、到達予測時刻などの地震強度の地震パラメータを求める。
【0005】
求めた予測強度が予め設定した下限強度を超える場合には、地震波(P波、S波)の伝播速度を基に、到達予測時刻と予測強度を報知(表示)する。
【0006】
また、より簡易な構成で警報を発することができる地震警報装置として、地震計の設置場所(自局)において、計測した独自のデータからP波の観測後、S波の到来までに自局周辺の被害程度(震度等)を推定して警報を発する地震警報装置も提案されている(特許文献2)。
【0007】
ところで、地震等の災害発生時、被災地域には、通常よりも電話の発信及び着信が集中するため、交換機の処理能力を超えて輻輳状態となってしまうことがある。従来の固定電話交換機において、交換機内の呼処理プロセッサの使用率が一定時間以上しきい値を超えると輻輳対策として、発信規制を行うことが提案されている(特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−66152号公報
【特許文献2】特開2006−112999号公報
【特許文献3】特開2000−36866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、地震発生時には、通常よりも電話の発信及び着信が集中するため、交換機が輻輳状態となり、電話網自体に障害が発生し、全体的な通信の不具合が生じていた。
【0010】
特に、携帯電話端末は、可搬性が高いため、端末が移動して特定エリア内に集中してしまうと無線上の回線数で制限されつながりにくくなる特性がある。さらに、携帯電話の交換機によってエリア内への着信を規制するためには、携帯端末毎にどのエリアにいるかをサービス制御局に確認して判断する必要があったため、制御局への確認処理も増加し、その影響が他の電話網に波及して、すべての電話網の総量規制が行われることもあった。
【0011】
特許文献3においては、電話網全体への影響を避けるために、交換機に発信規制を行っていたが、輻輳対策として一つの交換機が発信規制処理を行うと、ほかの交換機に呼が集中し、輻輳状態が波及するという問題があった。また、発信規制されれば、結局一定量の通信しか接続できないため、通信が困難な状況となり、連絡を取ることが難しかった。
【0012】
しかしながら、地震が発生した場合、家族、親族、友人、知人、職員、従業者等の安否を確認するため、連絡を取りたいという要求は強かった。
【0013】
そこで、本発明は、地震発生時において、より回線の繋がりやすい緊急連絡手段を備えた地震警報装置及び地震対策システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の地震警報装置は、地震に関する情報が伝達される回線に接続されており、処理部と、個別又は複数の端末装置と接続される電話装置インターフェース部とを有し、少なくとも一つの緊急連絡先及び地震の強度に関するしきい値が予め設定されており、前記処理部は、前記地震に関する情報を受信して、前記緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える場合に、前記電話装置インターフェース部を介して、前記端末装置を制御し、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先に前記端末装置から発呼させ、緊急連絡用の回線を確保することを特徴とする。
【0015】
上記地震警報装置において、前記処理部は、前記地震に関する情報に基づいて、前記緊急連絡先の所在地における地震の強度又は予測強度を求め、求めた地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超えるか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めてもよいし、前記地震に関する情報に基づいて、地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える地域を求め、求めた地域に前記緊急連絡先の所在する地域が該当するか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めてもよい。
【0016】
また、本発明の地震対策システムは、地震に関する情報が伝達される回線と、前記回線に接続された地震警報装置と、前記地震警報装置の電話装置インターフェース部と接続された個別又は複数の端末装置とを有し、前記地震警報装置は、少なくとも一つの緊急連絡先及び地震の強度に関するしきい値が予め設定されており、前記回線から伝達された地震に関する情報を受信して、前記緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える場合に、前記電話装置インターフェース部を介して、前記端末装置を制御し、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先に前記端末装置から発呼させ、緊急連絡用の回線を確保することを特徴とする。
【0017】
ここで、上記地震対策システムにおいて、前記地震警報装置は、前記地震に関する情報に基づいて、前記緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度を求め、求めた地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超えるか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めてもよいし、前記地震に関する情報に基づいて、地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える地域を求め、求めた地域に前記緊急連絡先の所在する地域が該当するか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めてもよい。
【0018】
さらに、上記地震対策システムにおいて、前記端末装置は複数の回線を有し、前記地震警報装置は、複数の緊急連絡先が予め設定されており、前記複数の回線の一つを使用して、予め設定された緊急連絡先の一つに前記端末装置から発呼させ、前記複数の回線の他の一つを使用して、予め設定された他の緊急連絡先に前記端末装置から発呼させてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、地震警報装置又はその処理部が、地震に関する情報を受信して、緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度がしきい値を超える場合に、電話装置インターフェース部を介して、端末装置を制御し、しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先に端末装置から発呼させ、緊急連絡用の回線を確保することができるので、しきい値以上の強度の地域における緊急連絡先の安否を問い合わせることができる。また、予測強度の場合は、震源地では地震が発生しているが、未だ緊急連絡先の所在する地域においては地震波が到達していない時点においても、緊急連絡用の回線を確保することが可能であり、緊急連絡先が電話網を介して接続されている場合には、輻輳や通信規制の影響を受ける前に回線を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の地震対策システム10の構成を概念的に示したブロック図である。
【0021】
図1において、地震対策システム10は、地震に関する情報が伝達される回線11と、回線11に接続された地震警報装置12と、地震警報装置12の電話装置インターフェース部22と接続された個別又は複数の端末装置13とを有している。さらに、端末装置13は電話網14に接続されている。
【0022】
回線11は、地震警報装置12と直接又は間接的に接続されており、図示しない配信元から地震に関する情報を地震警報装置12に伝達するためのものである。回線11としては、専用線、公衆電話網、ISDN(Integrated Service Digital Networkの略。デジタル総合サービス網とも呼ばれる。)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、CATV(Community Antenna TeleVision)網、光ファイバー、無線LAN(Local Area Network)、CS(Communication Satellite)放送、携帯電話等の回線を利用することができる。回線11は、端末装置13と電話網14とを接続する回線15を兼用させることもできる(図1においては別々の回線の例を記載している)。この場合、外部と接続された回線をルータ等によって回線11と回線15とに分岐すればよい。
【0023】
回線11を通じて伝達される地震に関する情報は、各地に設置されたセンサ等によって観測された観測結果又は観測結果を基に演算された演算結果であり、気象庁や、気象庁から送出された情報を入手して回線を通じて配信する配信業者等の配信元から配信される。地震に関する情報として、例えば地震の3要素である場所、時間、大きさに関する情報や、地震警報装置12の設置地域における地震の予測強度、最大速度、最大加速度、最大変位、到達予測時刻又は到達予測時刻までの残り時間に関する情報等が挙げられる。なお、回線11を通じて地震以外の災害情報等が通知されてもよい。
【0024】
地震警報装置12は、処理部21と、電話装置インターフェース部22とを有し、さらにメモリ23を有しており、回線11が接続され、電話装置インターフェース部22を介して端末装置13に接続されており、少なくとも一つの緊急連絡先及び地震の強度に関するしきい値が予め設定されている。
【0025】
更に、地震警報装置12は、それ自体にスピーカ、表示器、ランプ等の報知手段を具備していてもよい。また、防災用に種々の機器と地震警報装置12を接続させて、地震の到達前に危険を回避するよう制御してもよい。例えば、エレベータ、工場の装置、ガスや燃料の供給装置、病院の生命維持装置等と接続されて、防災処理を行なうように制御することは好ましい。
【0026】
処理部21は、地震警報装置12の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)であり、少なくとも回線11から伝達された地震に関する情報を受信して、電話装置インターフェース部22を介して端末装置13を制御し、予め設定された緊急連絡先に端末装置13から呼出信号を送出させ、緊急連絡用の回線を確保する。更に、処理部21は、地震に関する情報に基づいて報知情報を生成してもよい。また、処理部21は、地震に関する情報に基づいて、地震警報装置の設置地域又はその他の地域における地震の強度又は予測強度を求めることができ、求めた強度又は予測強度がしきい値を超えるか否かを判定することができる。なお、地震警報装置12を端末装置13に組み込んで、端末装置13の処理部で地震警報装置12の処理部21を兼用させることもできる。
【0027】
予め設定された緊急連絡先とは、例えば家族、親族、友人、知人、職員、従業者等の個人の端末装置や警察、消防署、病院、官公庁、会社等の団体の端末装置であり、地震警報装置12又は端末装置13のメモリ等に記録されている。緊急連絡先の端末装置としては、固定電話機、ファクシミリ、携帯電話、PHS(personal handyphone system)等の通信端末及び通信機能を有するコンピュータ等を利用することができる。緊急連絡先が外線の通信端末であれば電話番号、内線であれば内線番号がメモリ等に記録されている。
【0028】
緊急連絡先は、一箇所だけでもよいし、複数箇所であってもよい。後述するように、被災地に所在する端末装置を緊急連絡先とすることもできる。この場合、端末装置に記録されている電話番号全てが緊急連絡先となる。複数の緊急連絡先を設定する場合は、連絡する際の優先順位が設定されていてもよい。例えば、緊急連絡先の重要度に合わせて優先順位を設定してもよいし、地震の震源地から近い順に優先順位を高く設定してもよいし、所在する地域の地震の強度が大きい順に優先順位を高く設定してもよい。
【0029】
また、緊急連絡先の所在する地域を特定できるようにしておくことが好ましい。この場合、メモリ等に緊急連絡先の電話番号又は内線番号と共に住所等の地域情報を記録してもよいし、固定電話であれば、その市外局番から大体の地域を特定することができる。移動通信端末の場合、緊急連絡先の所在する地域として、その通信端末が使用される可能性の高い地域を予め記録しておけばよい。
【0030】
地震の強度に関するしきい値は、当該設定者にとって問題とする地震の強度であり、例えば震度3以上の場合に地震対策処理を実行するようにする場合は、しきい値を震度3に設定すればよい。
【0031】
電話装置インターフェース部22は、端末装置13と接続するためのものであり、端末装置13を制御するための制御信号や報知情報等を端末装置13に対応した形式で送出する。端末装置13がボタン電話対応型の入力部を有する場合、電話装置インターフェース部22としては、制御信号線と音声信号線を有する伝送回路を端末装置13の入力部と接続すればよい。端末装置13が単独電話対応型の入力部を有する場合、電話装置インターフェース部22としては、端末装置13とループを形成させる回路とデジタルの報知情報等をアナログに変換する回路が必要となる。なお、地震警報装置12を端末装置13に組み込んで、端末装置13の処理部で地震警報装置12の処理部21を兼用させる場合、物理的な電話装置インターフェース部22は存在しないが、処理部内において、地震警報装置12の機能と端末装置13の機能とを接続する電子的な電話装置インターフェース部が存在することになる。
【0032】
メモリ23は、報知情報として送出される音声情報や処理部21が計算する際の情報等が記録されており、処理部21が報知情報を生成する際等に使用される。また、メモリ23には、緊急連絡先、緊急連絡先の設置地域又はしきい値が記録されていてもよい。なお、地震警報装置12を端末装置13に一体的に組み込んで、端末装置13のメモリで地震警報装置12のメモリ23を兼用させることもできる。
【0033】
端末装置13は、電話網14と回線15によって接続されており、構内端末制御装置、固定電話機、ファクシミリ、携帯電話、PHS(personal handyphone system)等の通信端末及び通信機能を有するコンピュータを利用することができる。
【0034】
構内端末制御装置は、構内に配置されている個別又は複数の端末装置を収容し、少なくとも個別又は複数の構内端末装置を制御する装置である。構内端末制御装置として、例えば、ボタン電話主装置、コードレス電話主装置、PHS主装置、構内交換機(PBX)、IP−PBX等が挙げられる。各主装置は、数台〜数十台程度の中小規模の構内端末装置を制御するものであり、複数の構内端末装置の回線を収容し、さらに外部の電話網等に接続されており、代表電話や内線転送といった機能を制御する機器である。構内交換機は、PBX(Private Branch eXchange)とも呼ばれ、一般に企業や店舗などに設置され、内線通話・転送等の各機能や、外部の公衆電話網等への接続を制御する機器である。IP−PBXは、IP(Internet Protocol)に対応したPBXであり、IPネットワーク上に構築されたIP電話網に、内線電話や外部の公衆電話網への接続や制御を行う機能を提供する装置、又はシステムである。
【0035】
図1において、端末装置13は1台であるが、地震警報装置12は、複数の端末装置13に接続され、複数の回線15を有していてもよい。また、構内端末制御装置等のように、1台の端末装置13が複数の回線15を有していてもよい。
【0036】
電話網14は、既存の電話網であり、電話網としては、公衆電話網、ISDN(Integrated Service Digital Networkの略。デジタル総合サービス網とも呼ばれる。)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、CATV(Community Antenna TeleVision)網、光ファイバー網、無線LAN(Local Area Network)、CS(Communication Satellite)放送、移動電話網等を利用することができる。
【0037】
次に、図2及び図3を参照して、本発明の地震警報装置を用いた地震対策システムの地震対策処理の一つを説明する。図2は、地震対策システムによる被災地に設置された緊急連絡先に連絡処理を行う地震対策処理のフローチャートであり、図3は地震対策処理時の接続シーケンスを示す図である。なお、図3の一番左側の列は、地震に関する情報の配信元41であり、一番右側の列は緊急連絡先42である。
【0038】
まず、ステップ11(S1)において、配信元41から回線11を通じて地震に関する情報43が地震警報装置12に伝達され、地震対策処理が開始される。
【0039】
ステップ12(S12)では、地震警報装置12の処理部21は、予め設定された緊急連絡先42の所在する地域を特定する。緊急連絡先42の所在する地域は、メモリ等に記録されている地域情報や、緊急連絡先の電話番号の市外局番等から特定することができる。ここで、複数の緊急連絡先が設定されている場合は、優先順位の高い緊急連絡先から行うことが好ましい。
【0040】
そして、ステップ13(S13)では、地震に関する情報43に基づいて、緊急連絡先42の所在する地域における地震の強度又は予測強度を計算する。ただし、地震に関する情報に既に緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度の情報が含まれている場合には、ステップ13は必要ない。
【0041】
さらにステップ14(S14)では、緊急連絡先42の所在する地域における地震の強度又は予測強度が予め設定したしきい値よりも小さいか大きいかを判定する。大きい場合は、ステップ15に進み、小さい場合は、その緊急連絡先には連絡しない。複数の緊急連絡先が設定されており、別の緊急連絡先がある場合は、次の緊急連絡先についてステップ12〜14の処理を行う。全ての緊急連絡先について、所在する地域がしきい値よりも地震の強度又は予測強度が小さい場合は処理を終了する。
【0042】
ステップ15(S15)では、地震警報装置12から端末装置13に地震対策起動信号44が送出される。地震対策起動信号44は、端末装置13に対し、地震対策処理を実行させるものであり、地震警報装置12の電話装置インターフェース部22を介して端末装置13に送出される。
【0043】
ステップ16(S16)では、地震対策起動信号44を受信した端末装置13が、緊急連絡先42に発呼信号45を送出する。端末装置13は、地震警報装置12又は端末装置13のメモリ等に記録された緊急連絡先42の電話番号や内線番号を読み出し、端末装置13から緊急連絡先42の電話番号又は内線番号に発呼信号45を送出する。
【0044】
ステップ17(S17)では、緊急連絡先42からの応答46の有無を判定し、応答46がない場合は再度呼出し、応答46があった場合は、ステップ18(S18)において、回線を確保して、ステップ19(S19)で動作は終了する。
【0045】
なお、確保された回線は、通常、端末装置13又は緊急連絡先の端末装置が電話を切らない限り接続されているので、緊急連絡や安否が確認できるまで回線を維持していてもよいし、緊急連絡先と回線を確保した後、端末装置13から緊急時のメッセージ47を緊急連絡先に送出してもよい。
【0046】
緊急時のメッセージ47としては、地震警報装置12又は端末装置13のメモリに記録されている応答メッセージでもよいし、地震警報装置15が地震に関する情報43から生成した報知情報を含むメッセージでもよい。例えば、前者の場合であれば、単純に「地震が発生すると予測されます。しばらく回線を保持して下さい」という応答メッセージをメモリから再生する。
【0047】
後者の場合、報知情報として、地震の震源地、発生時間、大きさに関する情報や、緊急連絡先12の所在する地域における地震の予測強度、最大速度、最大加速度、最大変位、到達予測時刻又は到達予測時刻までの残り時間に関する情報(以下「予測強度情報等」という)をメッセージに含めてもよい。緊急連絡先42における予測強度情報等は、ステップ13において求めた情報を利用することができる。例えば、「後○○秒で震度○○の地震が発生すると予測されます」というメッセージや「○月○日○時○分、○○地域で震度○○の地震が発生しました」というメッセージ47を送出することができる。
【0048】
なお、報知情報を含むメッセージは、地震警報装置12のメモリ23に記録されている報知情報に対応するメッセージを電話装置インターフェース部22を介して、端末装置13に送出し、端末装置13から緊急連絡先42に送出してもよいし、地震警報装置12から端末装置13に報知情報を送出し、端末装置13が、そのメモリ中の報知情報に対応するメッセージを再生して緊急連絡先42に送出してもよい。
【0049】
このように、本発明の地震警報装置12を用いた地震対策システム10によれば、地震警報装置12が地震に関する情報43を受信した時点において、予め登録しておいた緊急連絡先に呼出信号を送出できるため、より早い段階で緊急連絡用の回線を確保することができる。場合によっては、震源地では地震が発生しているが、未だ緊急連絡先42の所在する地域においては地震波が到達していない時点においても、緊急連絡用の回線を確保することが可能である。緊急連絡先42の端末装置として、電話網14を介して接続された固定電話機、ファクシミリ、携帯電話、PHS(personal handyphone system)等の通信端末及び通信機能を有するコンピュータ等であれば、輻輳や通信規制の影響を受ける前に回線を確保することができる。
【0050】
また、緊急連絡先から応答があった場合は、緊急連絡先に対して、端末装置を通じて地震に関する情報に基づいて生成した報知情報を含むメッセージを送出させることにより、地震に対する心構えができ、またより適当な地震に対する防災対策を講じることができるので好ましい。
【0051】
さらに、地震警報装置12に接続された端末装置13が複数の回線15を有する場合、地震警報装置12は、複数の回線15の一つを使用して、端末装置13から緊急連絡先42に発呼させ、複数の回線15の他の一つを使用して、予め設定した他の緊急連絡先に発呼させてもよい。この場合、地震警報装置12又は端末装置13のメモリには、複数の緊急連絡先が記録されている。さらに複数の緊急連絡先に加えて、連絡する際の優先順位が設定されていてもよい。
【0052】
端末装置13が複数の回線15を有する場合とは、地震警報装置12に複数の端末装置13が接続されることにより複数の回線15を有していてもよいし、一つの端末装置13に複数の回線15を有していてもよい。複数の端末装置13が接続されていれば、地震警報装置12は、一台の端末装置13を制御して、回線の一つから緊急連絡先に呼出信号を送出させるのとほぼ同時に、他の端末装置13を制御して、他の回線から他の緊急連絡先に呼出信号を送出させることができる。一つの端末装置13に複数の回線15を有している場合は、例えば端末装置13からある緊急連絡先に呼出信号を送出させた後、回線を保留して、他の回線を使用して他の緊急連絡先に呼出信号を送出させればよい。
【0053】
上記図2及び図3の地震対策処理は、ステップ12乃至14において、緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度がしきい値を超える場合に、端末装置を制御し、緊急連絡先に前記端末装置から発呼させているので、被災地に設置された緊急連絡先に対して連絡処理を行うことができる。
【0054】
図4は、被災地に設置された緊急連絡先に連絡処理を行う地震対策処理のフローチャートの他の一実施形態である。なお、図4においても、図1の地震対策システム10を使用する。
【0055】
まず、ステップ21(S21)において、配信元から回線11を通じて地震に関する情報が地震警報装置12に伝達され、地震対策処理が開始される。
【0056】
ステップ22(S22)では、地震警報装置12の処理部21は、地震に関する情報に基づいて、各地域における地震の強度又は予測強度を計算する。ただし、地震に関する情報に既に各地域における地震の強度又は予測強度の情報が含まれている場合には、ステップ22は必要ない。ここで地震の強度又は予測強度を求める各地域としては、予め設定してあってもよいし、全国的なものであってもよい。予め地域を設定しておく場合は、少なくとも緊急連絡先が所在する地域を含める。複数の緊急連絡先が設定されている場合は、各緊急連絡先が所在する地域をそれぞれ登録しておけばよい。また、全国的な地震の強度又は予測強度は、震源地における地震の強度と震源地からの距離によって、概略の強度分布を予測することが可能である。
【0057】
ステップ23(S23)では、各地域について地震の強度又は予測強度が予め設定したしきい値よりも小さいか大きいかを判定し、大きい場合は、ステップ24に進み、小さい場合は、別の地域における地震の強度又は予測強度を判定する。
【0058】
ステップ24(S24)では、しきい値以上の地域に所在する緊急連絡先の有無を確認し、緊急連絡先が有る場合にはステップ25に進み、無い場合には、再び別の地域についてステップ22〜24(S22〜S24)の処理を行う。ステップ22〜24(S22〜S24)の処理は、しきい値以上の被災地域が存在するか否かを確認し、しきい値よりも大きい被災地域が存在する場合に、被災地域に所在する緊急連絡先に連絡するため処理である。
【0059】
ステップ25〜29(S25〜S29)については、図2のステップ15〜19と基本的に同じである。なお、しきい値以上の地域に複数の緊急連絡先が所在する場合、ステップ28で回線を確保した後、他の回線を利用して、他の緊急連絡先に対し、ステップ25以降の処理を実行することが好ましい。また、他の地域に設置された緊急連絡先が存在する場合には、ステップ22以降の処理を実行してもよい。
【0060】
図4のような緊急連絡処理を使用する場合、例えば、全国の地震の強度又は予測強度の分布を確認し、端末装置に記録されている全ての電話番号について、しきい値以上の地域に設置されているか否かを確認し、しきい値以上の地域に設置されている電話番号に対し、呼出信号を送出させることもできる。この場合は、端末装置に記録されている電話番号の全てが緊急連絡先に該当することになる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。例えば、緊急連絡先の全部ではなく、一部についてのみ地域を記録しておき、その一部の地域を記録した緊急連絡先については本発明の緊急連絡処理を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の地震対策システムの構成を概念的に示すブロック図
【図2】地震対策処理を行なう場合のフローチャート
【図3】地震対策処理時の接続シーケンスを示す図
【図4】他の地震対策処理を行なう場合のフローチャート
【符号の説明】
【0063】
10 地震対策システム
11、15 回線
12 地震警報装置
13 端末装置
14 電話網
21 地震警報装置の処理部
22 電話装置インターフェース部
23 地震警報装置のメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震に関する情報が伝達される回線に接続されており、処理部と、個別又は複数の端末装置と接続される電話装置インターフェース部とを有し、少なくとも一つの緊急連絡先及び地震の強度に関するしきい値が予め設定されており、
前記処理部は、前記地震に関する情報を受信して、前記緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える場合に、前記電話装置インターフェース部を介して、前記端末装置を制御し、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先に前記端末装置から発呼させ、緊急連絡用の回線を確保することを特徴とする地震警報装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記地震に関する情報に基づいて、前記緊急連絡先の所在地における地震の強度又は予測強度を求め、求めた地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超えるか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めることを特徴とする請求項1に記載の地震警報装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記地震に関する情報に基づいて、地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える地域を求め、求めた地域に前記緊急連絡先の所在する地域が該当するか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めることを特徴とする請求項1に記載の地震警報装置。
【請求項4】
地震に関する情報が伝達される回線と、前記回線に接続された地震警報装置と、前記地震警報装置の電話装置インターフェース部と接続された個別又は複数の端末装置とを有し、
前記地震警報装置は、少なくとも一つの緊急連絡先及び地震の強度に関するしきい値が予め設定されており、前記回線から伝達された地震に関する情報を受信して、前記緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える場合に、前記電話装置インターフェース部を介して、前記端末装置を制御し、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先に前記端末装置から発呼させ、緊急連絡用の回線を確保することを特徴とする地震対策システム。
【請求項5】
前記地震警報装置は、前記地震に関する情報に基づいて、前記緊急連絡先の所在する地域における地震の強度又は予測強度を求め、求めた地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超えるか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めることを特徴とする請求項4に記載の地震対策システム。
【請求項6】
前記地震警報装置は、前記地震に関する情報に基づいて、地震の強度又は予測強度が前記しきい値を超える地域を求め、求めた地域に前記緊急連絡先の所在する地域が該当するか否かを判定して、前記しきい値を超える地域に所在する緊急連絡先を求めることを特徴とする請求項4に記載の地震対策システム。
【請求項7】
前記端末装置は複数の回線を有し、前記地震警報装置は、複数の緊急連絡先が予め設定されており、前記複数の回線の一つを使用して、予め設定された緊急連絡先の一つに前記端末装置から発呼させ、前記複数の回線の他の一つを使用して、予め設定された他の緊急連絡先に前記端末装置から発呼させることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の地震対策システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−185342(P2008−185342A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16465(P2007−16465)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000244110)明星電気株式会社 (22)