垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器
垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器(MLPS)は、平面が長い長方形の箱形態を有するハウジングと、上記ハウジング内の底面に取り付けられ、入力信号の分配及び分配された信号の位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分及び複数の信号分配パターンを形成する伝送線路が印刷される固定基板と、上記ハウジング内で上記固定基板の一面と接触する位置で長さ方向に沿って移動可能であるように設置され、上記複数の位相可変パターンの一部とのカップリングを介して可変線路を形成することにより位相可変のために上記複数の位相可変パターンの残りの部分を形成する伝送線路が印刷される移動基板とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムに使用されるアンテナに関し、特に、アンテナの垂直ビームチルト調節のために使用される核心部品であるマルチライン移相器(Multi-Line Phase Shifter:以下、“MLPS”と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいて、最初に固定型アンテナが基地局(Base Station:BS)に使用されたが、最近では、垂直及び/又は水平ビームチルティング(beam tilting)が可能な垂直ビームチルト制御アンテナが多い長所により普及している。このような垂直ビームチルト制御アンテナの場合に、機構的なビームチルト方式と電気的なビームチルト方式とが使用可能である。
【0003】
通常、アンテナにおいて、機構的なビームチルト方式は、サポートポールと結合する部位に備えられる手動又は動力作動ブラケット構造に基づく方式である。このようなブラケット構造の作動に従ってアンテナの設置傾きが可変され、これにより、アンテナの垂直ビームチルトが可能となる。一方、電気的なビームチルト方式は、マルチライン移相器(MLPS)に基づく。垂直に配列されたアンテナ放射素子に供給される信号間の位相差を可変させることにより垂直ビームチルティングを電気的に可能であるようにする。このような垂直ビームチルティング技術の一例は、“EMS Technologies,Inc.”で出願した米国特許第6,864,837号(発明の名称:Vertical Electrical Downtilt Antenna、発明者:Donald L.Runyonなど、及び特許日:2005年3月8日)に開示されている。
【0004】
このような電気的垂直ビームチルティングのためには、MLPSが必須的に備えられる。通常、MLPSは、位相配列アンテナ(Phase Array Antenna)のビーム制御だけではなく、位相変調機能を行うために無線周波数(RF)アナログ信号処理端の様々な分野で使用される。MLPSは、位相差が入力信号を適切に遅延させることにより入力信号と出力信号間で発生する原理に基づいて動作する。この位相差は、簡単に伝送線路の物理的な長さを異ならせるか、又は様々な方式で伝送線路に沿う信号伝搬速度を異ならせることにより得られることができる。通常、MLPSは、例えば、伝送線路の長さを可変させることにより位相遷移を変更するように構成される。
【0005】
特に、最近では、移動通信システムは、基地局内の位相配列アンテナの垂直ビーム角の調節を通して基地局のカバレッジを調整するために位相配列アンテナの各放射素子の位相を調和して可変させる技術を要求しており、このような要求を満足させるために、様々な構造の複数のMLPSが開発され幅広く普及している。特に、MLPSは、入力信号を複数の出力信号に分配し、各出力信号の位相差を適切に調節するための構造を有し得る。例えば、このような垂直ビームチルティングのためのMLPSに関する技術は、“Etenna Corporation”で出願した米国特許第6,831,692号(発明の名称:Low Cost Trombone Line Beamformer、発明者:William E. McKinzie, IIIなど、及び特許日:2004年12月14日)に開示されている。
【0006】
しかしながら、このようなマルチライン移相器は、対応するマルチライン移相器自体の構造又は処理信号の位相を可変させる性能向上のための方向に主に開発されただけで、位相配列アンテナのように対応するマルチライン移相器が設けられるアンテナの構造の観点では、その研究が多少不十分な点がある。したがって、向上した性能及び構造を有するマルチライン移相器に対する研究及び開発の必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも上述した問題点及び/又は不都合に取り組み、少なくとも以下の便宜を提供することにある。すなわち、本発明の目的は、最適の構造及び安定した機構的構造を有することができるようにするための垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、信号損失を減少させることができるようにするための垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器を提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる他の目的は、位相配列アンテナで電力供給ケーブルのツイストを防止するための垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明の実施形態の一態様によれば、垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器(MLPS)は、平面が長い長方形の箱形態を有するハウジングと、上記ハウジング内の底面に取り付けられ、入力信号の分配及び分配された信号の位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分及び複数の信号分配パターンを形成する伝送線路が印刷される固定基板と、上記ハウジング内で上記固定基板の一面と接触する位置で長さ方向に沿って移動可能であるように設置され、上記複数の位相可変パターンの一部とのカップリングを介して可変線路を形成することにより位相可変のために上記複数の位相可変パターンの残りの部分を形成する伝送線路が印刷される移動基板とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器は、最適の構造及び安定した機構的構造を有することができる。また、マルチライン移相器は、電力供給ケーブルがツイストされなかったために処理信号の損失を減少させることができる。
【0012】
本発明の実施形態の上述した及び他の様相、特徴、及び利点は、以下の添付図面が併用された後述の詳細な説明から、より一層明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器の主要部の外観斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1に示すハウジング及び固定基板の斜視図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】図1に示す移動基板の斜視図である。
【図6】図5に示す移動基板の底面斜視図である。
【図7】図1に示す固定基板及び移動基板の配線図である。
【図8】図7の等価回路図である。
【図9】本発明の一実施形態によるマルチライン移相器がアンテナに適用された構造を示す概略図である。
【図10】本発明の他の実施形態によるマルチライン移相器の構造を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態によるマルチライン移相器の駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。下記の説明では、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものの範囲内で定められるような本発明の実施形態の包括的な理解を助けるために提供するものであり、この理解を助けるために具体的な回路の構成素子などのような様々な特定の詳細を含むが、単に例示に過ぎない。従って、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、ここに説明する実施形態の様々な変更及び修正が可能であるということは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。また、明瞭性と簡潔性の観点から、当業者に良く知られている機能や構成に関する具体的な説明は、省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器の主要部の外観斜視図であり、図2は、図1の正面図である。
【0016】
図1及び図2を参照すると、本発明によるMLPSは、長い長方形のボックス(すなわち、垂直に長い長方形の六面体)の形態を有するハウジング10を備える。通常、垂直に伸張された位相アレイアンテナの放射素子は、垂直に配列される。また、このようなMLPSのハウジング10の形態は、垂直に伸張される垂直ビームチルト制御アンテナ、例えば、反射板の底面及び側面への設置を容易にする。
【0017】
MLPSは、ハウジング10の底面に固定的に取り付けられる。1つの入力ポート(図示せず)を対応する入力ポートの入力信号が分配されることにより出力される複数の出力ポート(図示せず)に接続するためのパターンは、ハウジング10の長さ方向に対してハウジング10の上端及び下端に印刷される。また、MLPSは、この入力ポートと複数の出力ポートとの間で入力信号の分配及び分配された信号の位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分及び複数の信号分配パターンを形成する伝送線路が印刷される固定基板14をさらに含む。
【0018】
また、MLPSは、固定基板14の一面と接触する位置で長さ方向に沿って移動可能であるように設置される移動基板12を含む。固定基板14の複数の位相可変パターンの一部とのカップリングを介して可変線路を形成することにより位相を可変させるための複数の位相可変パターンの残りの部分を形成する伝送線路は、固定基板14の面と接触する移動基板12の一面上に形成される。
【0019】
固定基板14上に印刷される複数の位相可変パターンの一部は、移動基板12上に印刷される複数の位相可変パターンの残りの部分にカップリングされることにより、MLPSの機能を実現させる。移動基板12が移動するに従って、可変線路構造をそれぞれ有する複数の位相可変パターンは、比例して又は反比例して位相を可変させる。移動基板12は、移動体ハウジングに薄い基板を取り付けることにより形成される。この際に、可変線路構造を有する複数の位相可変パターンは、移動基板12の移動方向に沿って1つの基準軸に一列に形成されるように印刷される。したがって、全体的な基板構造は、長さ方向に沿って長く形成されることができる。また、2個の基板12及び14がハウジング10内に積層されるので、MLPSは、スリムな形態で実現される。
【0020】
通常、MLPSは、例えば、5ウェイ(way)分配器を実現するために追加の1つの入力分配器に接続される。このような設計は、MLPSのサイズを減少させるが、給電線路(ケーブル)の増加された長さによる信号損失を増加させる。他方、本発明のMLPSは、5ウェイ分配器及び位相可変回路を1つの基板に統合することにより設計され、アンテナの長さ方向に沿ってレイアウトされる。したがって、長さ損失は、ケーブルのツイストなしに軽減されることができるだけでなく、MLPSのサイズも減少されることができる。
【0021】
このように構成されるMLPSにおいて、固定基板14及び移動基板12上に印刷される複数の伝送線路は、マイクロストリップライン又はストリップラインに実現され得る。また、固定基板14及び移動基板12は、空気基板又は誘電体基板で構成され得る。この際に、絶縁膜は、固定基板14と移動基板12とが接触する面の中の少なくとも一面に適切な材質で形成されることにより、移動基板12が固定基板14上に円滑にスライドされ得るようにし、向かい合うマイクロストリップラインが摩擦による破損に対して保護され得るようにする。
【0022】
また、開口部は、ハウジング10の一面、例えば、図1及び図2に示すように、ハウジング10の上面に形成されることにより、移動基板12の一部分を露出させる。したがって、受動又は動力作動駆動装置は、この開口部を介して移動基板12に接続されることにより、移動基板12がハウジング10の長さに沿って移動し得る。駆動装置は、2つのMLPSを同時に制御するだけではなく個別に制御するように構成され得る。
【0023】
図3は、図1に示したハウジング及び固定基板の斜視図であり、図4は、図3の正面図である。
【0024】
図3及び図4を参照すると、固定基板14は、ハウジング10の内部底面に装着される。この際に、固定基板14は、固定基板14とハウジング10との接触面ができるだけ密着する方式で、ハウジング10へのハンダ付け又はボンディング作業が施される。これに従って、屈曲(flexure)又は歪み(distortion)を減少させることにより移動基板12が固定基板14の上面、すなわち、伝送線路が印刷された面で円滑にスライディングすることができるようにする。受動相互変調歪み(Passive Inter-Modulation Distortion:PIMD)を改善させるために、固定基板14は、ハンダ付けによりハウジング10と電気的に完全に密着し得る。
【0025】
図5は、図1に示した移動基板12の斜視図であり、図6は、図5の底面斜視図である。
【0026】
図5及び図6を参照すると、複数のボールプランジャ122は、移動基板12の上面、すなわち、ハウジング10の内部の上面と向かい合う移動基板12の一面に設置される。複数のボールプランジャ122は、移動基板12がハウジング10内に装着される場合に、移動基板12を押すように機能する。したがって、移動基板12は、固定基板14と密着し得、ハウジング10の内部の上面に対してさらに円滑にスライディングし得る。
【0027】
一方、図6を参照すると、固定基板14の複数の位相可変パターンの一部とカップリングするための複数の位相可変パターンは、移動基板12の底面に形成される。この複数の位相可変パターンは、移動基板12の底面に一括的に印刷されるのではなく、移動基板12の底面に個別的に挿入され突出されることができるように設けられる複数のサブ基板124上に個別に印刷される。
【0028】
複数のサブ基板124は、移動基板12の底面の適切な位置で形成される複数の装着溝126に挿入され得る。この際に、バネ125は、複数のサブ基板124と装着溝126間に介在され、したがって、サブ基板124を押し出す弾性力を加える。そこで、各サブ基板124は、対応する固定基板14と密着し、サブ基板124の位相可変パターンと固定基板14の位相可変パターン間で安定したカップリングがなされる。
【0029】
移動基板12が上述したような構成を有することができ、移動基板12上に形成される複数の位相可変パターンが1つの基板上に一括的に印刷されるのではなく、個別に複数のサブ基板124上に形成されるため、移動基板12は、固定基板14上にあり得る屈曲又は歪みの大きな影響なしに円滑にスライディングすることができる。
【0030】
図7は、図1に示す固定基板及び移動基板の配線図であり、図8は、図7の等価回路図である。
【0031】
図7及び図8を参照すると、ハウジング10の長さ方向に対して固定基板14の上端及び下端に形成される1つの信号入力ポートを対応する入力ポートに入力される信号から分配された信号が出力される複数の出力ポートに接続するためのパターンIN及びP1乃至P5が固定基板14上に形成される。
【0032】
図7に示す例において、1つの入力ポートに入力される信号は、5個の信号に分配され、この分配された信号は、5個の出力ポートに送信される。例えば、パターンIN、P5及びP4は、入力ポート、第5の出力ポート、及び第4の出力ポートに接続するために、ハウジング10の長さ方向に対して下端の左側から右側に順次に形成される。また、パターンP1、P2、及びP3は、第1、第2、及び第3の出力ポートとそれぞれ接続するためにハウジング10の長さ方向に対して上端の左側から右側に順次に形成される。
【0033】
一方、入力信号の分配及びこの分配された信号のそれぞれの位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分i1−i2、f1−f2、l1−l2及びq1−q2と複数の信号分配パターンc−f1−l1−d、h−i1−j、及びn−q1−oとは、この入力ポートのためのパターンIN及び第1乃至第5の出力ポートのためのパターンP1乃至P5間に位置する。この際に、この入力ポートの接続パターンINは、パターンa、b、及びcに伸張された後に、パターンcでパターンf、l、及びdに分配される。パターンdは、パターンeに伸張され、第3の出力ポートの接続パターンP3に接続される。パターンfは、パターンg及びhに接続された後に、パターンi及びjに分配される。パターンjは、パターンkに伸張され、第2の出力ポートの接続パターンP2に接続され、パターンiは、第1の出力ポートの接続パターンP1に接続される。パターンlは、パターンm及びnに接続された後に、パターンo及びqに分配される。パターンoは、パターンpを介して第4の出力ポートの接続パターンP4に接続され、パターンqは、第5の出力ポートの接続パターンP5に接続される。
【0034】
パターンf、i、l、及びqは、位相可変のための可変線路を形成するためのパターンであり、それぞれは、所定の長さに対して相互に平行である2つのパターンf1及びf2、i1及びi2、又はq1及びq2に分離されるように設計される。移動基板12の位相可変パターン124a乃至124dは、このような平行部分に対応する位置で“U”字状で形成され、U字状の伝送線路の各端部は、パターンf、i、l、及びqの平行部分に対応して配置される。したがって、キャパシタンスカップリングは、パターンf、i、l、及びqの平行部分とU字状の伝送線路間で発生する。移動基板12が移動するに従って、パターンf1及びf2、i1及びi2、l1及びl2、q1及びq2間の伝送線路の物理的な長さは、このカップリングにより変わる。その結果、伝達される信号の位相が可変される。
【0035】
上述した構成において、この入力ポートの接続パターンINに入力される信号は、パターンc−f−l−dで一次的に分配され、パターンdで分配される信号は、パターンeを介して第3の出力ポートに出力される。この際に、パターンfで分配される信号は、一次的に位相が可変され、パターンg及びhに沿って転送された後に、パターンh−i−jで二次的に分配される。パターンjで分配される信号は、パターンkを介して第2の出力ポートに出力され、パターンiで分配される信号は、二次的に位相が可変された後に第1の出力ポートに出力される。
【0036】
一方、パターンc−f−l−dで一次的に分配される際に、パターンlで分配された信号は、一次的に位相が可変され、パターンm及びnに沿って送信された後に、パターンn−g−oで二次的に分配される。パターンoで分配された信号は、パターンpを介して第4の出力ポートに出力され、パターンgで分配される信号は、二次的に位相が可変された後に第5の出力ポートに出力される。
【0037】
各伝送線路の回路図である図8を参照すると、パターンa乃至qは、隣接するパターンとのインピーダンスマッチングのために異なる抵抗値を有するように設計され、全体的に各出力ポートに対する分配比を最適に設定することができるように設計される。また、各パターンは、対応する周波数帯域に対してλ/4の特性を有する長さを有するように設計される。
【0038】
より詳細に説明すると、第1乃至第5の出力ポートは、アンテナで垂直方向に配列される5個の放射素子に順次に接続される。この際に、入力信号の適切な分配比は、それぞれの出力ポートに対して同一に設定されず予め定められる。すなわち、各放射素子に提供される出力信号の分配比は、アンテナビームパターンのサイドローブ(sidelobe)特性を改善するように適切に設定され得る。
【0039】
また、移動基板12上の位相可変パターン124a乃至124dによる位相変化量は、相互に比例して又は反比例して設定される。例えば、位相可変パターン124a乃至124dは、下側の2つの位相可変パターン124c及び124dの可変線路の長さが増加する場合に、上側の2つの位相可変パターン124a及び124bの可変線路の長さが減少するように設計される。したがって、第1乃至第5の出力ポートは、それぞれ位相変化量4X、2X、0X、−2X、及び−4Xを有し得る。ここで、Xは、位相変化量を意味する。0Xは、位相変化量がないことを意味し、2X/4Xは、位相変化量4Xが位相変化量2Xより2倍大きいことを意味する。このような方式で、第1乃至第5の出力ポートに順次に接続される第1乃至第5の放射素子は、異なる位相変化量を有することにより垂直ビームチルティングが可能となる。
【0040】
ここで、入力ポート、第5の出力ポート、及び第4の出力ポートの接続パターンIN、P5、及びP4と第1、第2、及び第3の出力ポートの接続パターンP1、P2、及びP3とが最適の順序で形成されることを留意すべきである。すなわち、本発明に従って、この位相可変パターンは、基準軸に沿って一列に形成される。これらのパターンは、例えば、1つの位相可変パターンを経験する信号が第2の出力ポートに出力され、 2つの位相可変パターンを経験する信号が第1の出力ポートに出力される方式で設計されることにより、位相変化量が2倍の差が出る。
【0041】
通常、放射素子は、位相アレイアンテナのような垂直ビームチルティングが可能なアンテナで長さ方向に配列される。従って、本発明は、アンテナの配列方向と同一の方向、すなわち、長さ方向に沿って長い構造を有する。また、この出力ポートは、第1乃至第5の放射素子への接続のために適切に配置されることにより、この出力ポートをこの放射素子に接続するのに必要とされる給電線の長さが減少され、これによる位相アレイアンテナの電力損失が減少されることにより利得が向上することができる。
【0042】
図9は、本発明の一実施形態によるMLPSがアンテナに適用された構造を示す概略図である。図9を参照すると、線形直交偏波を発生するために複数のダイポールの組み合せで構成される放射素子、例えば、第1乃至第5の放射素子20−1乃至20−5は、アンテナで長さ方向に順次に配置される。本発明によるMLPSは、+45°及び−45°の偏波を発生するためにアンテナで2個の位置にそれぞれ設置され得る。
【0043】
この際に、接続ケーブルは、MLPS10の出力ポートと放射素子20−1乃至20−5間で相互にツイストされることなく効率的に接続される。
【0044】
図10A及び図10Bは、本発明の他の実施形態によるMLPSの構造を示す図である。特に、図10Aは、本発明の他の実施形態よるMLPSの固定基板及び移動基板のパターンを示す図であり、図10Bは、MLPSの出力ポートから出力される信号の位相変化量を示す図である。
【0045】
図10A及び図10Bを参照すると、本発明の他の実施形態によるMLPSは、1つの入力ポートと4個の出力ポートとを有する。すなわち、MLPSは、偶数、すなわち、4個の放射素子を有するアンテナに適用されるように設計される。このようなMLPSは、図1乃至図9に示すMLPSの構造に比べて、1つの出力ポート(例えば、図1乃至図9での第1の出力ポートの接続パターンP1)のためのパターンを有しない。
【0046】
MLPSにおいて、第1及び第2の出力ポートに接続するためのパターンP1及びP2は、ハウジング10の長さ方向に対して上端の左側から右側に順次に形成され、この入力ポート、第4の出力ポート、及び第3の出力ポートに接続するためのパターンIN、P4、及びP3は、ハウジング10の長さ方向に対して下端の左側から右側に順次に形成される。また、MLPSは、第1乃至第4の出力ポートに対する位相変化量がそれぞれ1X、0X、−1X、及び−2Xであるように設計され得る。
【0047】
図11は、本発明の一実施形態によるMLPSの駆動装置を示す図である。図11を参照すると、MLPSは、移動基板12の一部が露出するようにハウジング10の上面に開口部を有する。動力作動駆動装置は、このような開口部を介して移動基板12に接続されることにより移動基板12がハウジング10の長さ方向に沿って移動する。
【0048】
より詳細に、この駆動装置は、外部駆動制御信号に従って動作する駆動モータ30を含み得る。駆動モータ30は、ピニオンギア302に接続され得る。また、移動基板12は、駆動転送軸310の一側に接続され得、ラックギア312は、駆動転送軸310の他側に形成される。ラックギア312は、駆動モータ30のピニオンギア302に接続され得る。したがって、駆動装置30の駆動に従って、ラックギア302がピニオンギア312と連動し、駆動転送軸310が移動する。その結果、移動基板12が移動する。
【0049】
以上、本発明を具体的な実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく様々な変更が可能であるということは、当業者には明らかであり、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものの範囲内で定められるべきである。
【符号の説明】
【0050】
10 ハウジング
12 移動基板
14 固定基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムに使用されるアンテナに関し、特に、アンテナの垂直ビームチルト調節のために使用される核心部品であるマルチライン移相器(Multi-Line Phase Shifter:以下、“MLPS”と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいて、最初に固定型アンテナが基地局(Base Station:BS)に使用されたが、最近では、垂直及び/又は水平ビームチルティング(beam tilting)が可能な垂直ビームチルト制御アンテナが多い長所により普及している。このような垂直ビームチルト制御アンテナの場合に、機構的なビームチルト方式と電気的なビームチルト方式とが使用可能である。
【0003】
通常、アンテナにおいて、機構的なビームチルト方式は、サポートポールと結合する部位に備えられる手動又は動力作動ブラケット構造に基づく方式である。このようなブラケット構造の作動に従ってアンテナの設置傾きが可変され、これにより、アンテナの垂直ビームチルトが可能となる。一方、電気的なビームチルト方式は、マルチライン移相器(MLPS)に基づく。垂直に配列されたアンテナ放射素子に供給される信号間の位相差を可変させることにより垂直ビームチルティングを電気的に可能であるようにする。このような垂直ビームチルティング技術の一例は、“EMS Technologies,Inc.”で出願した米国特許第6,864,837号(発明の名称:Vertical Electrical Downtilt Antenna、発明者:Donald L.Runyonなど、及び特許日:2005年3月8日)に開示されている。
【0004】
このような電気的垂直ビームチルティングのためには、MLPSが必須的に備えられる。通常、MLPSは、位相配列アンテナ(Phase Array Antenna)のビーム制御だけではなく、位相変調機能を行うために無線周波数(RF)アナログ信号処理端の様々な分野で使用される。MLPSは、位相差が入力信号を適切に遅延させることにより入力信号と出力信号間で発生する原理に基づいて動作する。この位相差は、簡単に伝送線路の物理的な長さを異ならせるか、又は様々な方式で伝送線路に沿う信号伝搬速度を異ならせることにより得られることができる。通常、MLPSは、例えば、伝送線路の長さを可変させることにより位相遷移を変更するように構成される。
【0005】
特に、最近では、移動通信システムは、基地局内の位相配列アンテナの垂直ビーム角の調節を通して基地局のカバレッジを調整するために位相配列アンテナの各放射素子の位相を調和して可変させる技術を要求しており、このような要求を満足させるために、様々な構造の複数のMLPSが開発され幅広く普及している。特に、MLPSは、入力信号を複数の出力信号に分配し、各出力信号の位相差を適切に調節するための構造を有し得る。例えば、このような垂直ビームチルティングのためのMLPSに関する技術は、“Etenna Corporation”で出願した米国特許第6,831,692号(発明の名称:Low Cost Trombone Line Beamformer、発明者:William E. McKinzie, IIIなど、及び特許日:2004年12月14日)に開示されている。
【0006】
しかしながら、このようなマルチライン移相器は、対応するマルチライン移相器自体の構造又は処理信号の位相を可変させる性能向上のための方向に主に開発されただけで、位相配列アンテナのように対応するマルチライン移相器が設けられるアンテナの構造の観点では、その研究が多少不十分な点がある。したがって、向上した性能及び構造を有するマルチライン移相器に対する研究及び開発の必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも上述した問題点及び/又は不都合に取り組み、少なくとも以下の便宜を提供することにある。すなわち、本発明の目的は、最適の構造及び安定した機構的構造を有することができるようにするための垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、信号損失を減少させることができるようにするための垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器を提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる他の目的は、位相配列アンテナで電力供給ケーブルのツイストを防止するための垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明の実施形態の一態様によれば、垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器(MLPS)は、平面が長い長方形の箱形態を有するハウジングと、上記ハウジング内の底面に取り付けられ、入力信号の分配及び分配された信号の位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分及び複数の信号分配パターンを形成する伝送線路が印刷される固定基板と、上記ハウジング内で上記固定基板の一面と接触する位置で長さ方向に沿って移動可能であるように設置され、上記複数の位相可変パターンの一部とのカップリングを介して可変線路を形成することにより位相可変のために上記複数の位相可変パターンの残りの部分を形成する伝送線路が印刷される移動基板とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器は、最適の構造及び安定した機構的構造を有することができる。また、マルチライン移相器は、電力供給ケーブルがツイストされなかったために処理信号の損失を減少させることができる。
【0012】
本発明の実施形態の上述した及び他の様相、特徴、及び利点は、以下の添付図面が併用された後述の詳細な説明から、より一層明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器の主要部の外観斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1に示すハウジング及び固定基板の斜視図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】図1に示す移動基板の斜視図である。
【図6】図5に示す移動基板の底面斜視図である。
【図7】図1に示す固定基板及び移動基板の配線図である。
【図8】図7の等価回路図である。
【図9】本発明の一実施形態によるマルチライン移相器がアンテナに適用された構造を示す概略図である。
【図10】本発明の他の実施形態によるマルチライン移相器の構造を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態によるマルチライン移相器の駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。下記の説明では、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものの範囲内で定められるような本発明の実施形態の包括的な理解を助けるために提供するものであり、この理解を助けるために具体的な回路の構成素子などのような様々な特定の詳細を含むが、単に例示に過ぎない。従って、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、ここに説明する実施形態の様々な変更及び修正が可能であるということは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。また、明瞭性と簡潔性の観点から、当業者に良く知られている機能や構成に関する具体的な説明は、省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器の主要部の外観斜視図であり、図2は、図1の正面図である。
【0016】
図1及び図2を参照すると、本発明によるMLPSは、長い長方形のボックス(すなわち、垂直に長い長方形の六面体)の形態を有するハウジング10を備える。通常、垂直に伸張された位相アレイアンテナの放射素子は、垂直に配列される。また、このようなMLPSのハウジング10の形態は、垂直に伸張される垂直ビームチルト制御アンテナ、例えば、反射板の底面及び側面への設置を容易にする。
【0017】
MLPSは、ハウジング10の底面に固定的に取り付けられる。1つの入力ポート(図示せず)を対応する入力ポートの入力信号が分配されることにより出力される複数の出力ポート(図示せず)に接続するためのパターンは、ハウジング10の長さ方向に対してハウジング10の上端及び下端に印刷される。また、MLPSは、この入力ポートと複数の出力ポートとの間で入力信号の分配及び分配された信号の位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分及び複数の信号分配パターンを形成する伝送線路が印刷される固定基板14をさらに含む。
【0018】
また、MLPSは、固定基板14の一面と接触する位置で長さ方向に沿って移動可能であるように設置される移動基板12を含む。固定基板14の複数の位相可変パターンの一部とのカップリングを介して可変線路を形成することにより位相を可変させるための複数の位相可変パターンの残りの部分を形成する伝送線路は、固定基板14の面と接触する移動基板12の一面上に形成される。
【0019】
固定基板14上に印刷される複数の位相可変パターンの一部は、移動基板12上に印刷される複数の位相可変パターンの残りの部分にカップリングされることにより、MLPSの機能を実現させる。移動基板12が移動するに従って、可変線路構造をそれぞれ有する複数の位相可変パターンは、比例して又は反比例して位相を可変させる。移動基板12は、移動体ハウジングに薄い基板を取り付けることにより形成される。この際に、可変線路構造を有する複数の位相可変パターンは、移動基板12の移動方向に沿って1つの基準軸に一列に形成されるように印刷される。したがって、全体的な基板構造は、長さ方向に沿って長く形成されることができる。また、2個の基板12及び14がハウジング10内に積層されるので、MLPSは、スリムな形態で実現される。
【0020】
通常、MLPSは、例えば、5ウェイ(way)分配器を実現するために追加の1つの入力分配器に接続される。このような設計は、MLPSのサイズを減少させるが、給電線路(ケーブル)の増加された長さによる信号損失を増加させる。他方、本発明のMLPSは、5ウェイ分配器及び位相可変回路を1つの基板に統合することにより設計され、アンテナの長さ方向に沿ってレイアウトされる。したがって、長さ損失は、ケーブルのツイストなしに軽減されることができるだけでなく、MLPSのサイズも減少されることができる。
【0021】
このように構成されるMLPSにおいて、固定基板14及び移動基板12上に印刷される複数の伝送線路は、マイクロストリップライン又はストリップラインに実現され得る。また、固定基板14及び移動基板12は、空気基板又は誘電体基板で構成され得る。この際に、絶縁膜は、固定基板14と移動基板12とが接触する面の中の少なくとも一面に適切な材質で形成されることにより、移動基板12が固定基板14上に円滑にスライドされ得るようにし、向かい合うマイクロストリップラインが摩擦による破損に対して保護され得るようにする。
【0022】
また、開口部は、ハウジング10の一面、例えば、図1及び図2に示すように、ハウジング10の上面に形成されることにより、移動基板12の一部分を露出させる。したがって、受動又は動力作動駆動装置は、この開口部を介して移動基板12に接続されることにより、移動基板12がハウジング10の長さに沿って移動し得る。駆動装置は、2つのMLPSを同時に制御するだけではなく個別に制御するように構成され得る。
【0023】
図3は、図1に示したハウジング及び固定基板の斜視図であり、図4は、図3の正面図である。
【0024】
図3及び図4を参照すると、固定基板14は、ハウジング10の内部底面に装着される。この際に、固定基板14は、固定基板14とハウジング10との接触面ができるだけ密着する方式で、ハウジング10へのハンダ付け又はボンディング作業が施される。これに従って、屈曲(flexure)又は歪み(distortion)を減少させることにより移動基板12が固定基板14の上面、すなわち、伝送線路が印刷された面で円滑にスライディングすることができるようにする。受動相互変調歪み(Passive Inter-Modulation Distortion:PIMD)を改善させるために、固定基板14は、ハンダ付けによりハウジング10と電気的に完全に密着し得る。
【0025】
図5は、図1に示した移動基板12の斜視図であり、図6は、図5の底面斜視図である。
【0026】
図5及び図6を参照すると、複数のボールプランジャ122は、移動基板12の上面、すなわち、ハウジング10の内部の上面と向かい合う移動基板12の一面に設置される。複数のボールプランジャ122は、移動基板12がハウジング10内に装着される場合に、移動基板12を押すように機能する。したがって、移動基板12は、固定基板14と密着し得、ハウジング10の内部の上面に対してさらに円滑にスライディングし得る。
【0027】
一方、図6を参照すると、固定基板14の複数の位相可変パターンの一部とカップリングするための複数の位相可変パターンは、移動基板12の底面に形成される。この複数の位相可変パターンは、移動基板12の底面に一括的に印刷されるのではなく、移動基板12の底面に個別的に挿入され突出されることができるように設けられる複数のサブ基板124上に個別に印刷される。
【0028】
複数のサブ基板124は、移動基板12の底面の適切な位置で形成される複数の装着溝126に挿入され得る。この際に、バネ125は、複数のサブ基板124と装着溝126間に介在され、したがって、サブ基板124を押し出す弾性力を加える。そこで、各サブ基板124は、対応する固定基板14と密着し、サブ基板124の位相可変パターンと固定基板14の位相可変パターン間で安定したカップリングがなされる。
【0029】
移動基板12が上述したような構成を有することができ、移動基板12上に形成される複数の位相可変パターンが1つの基板上に一括的に印刷されるのではなく、個別に複数のサブ基板124上に形成されるため、移動基板12は、固定基板14上にあり得る屈曲又は歪みの大きな影響なしに円滑にスライディングすることができる。
【0030】
図7は、図1に示す固定基板及び移動基板の配線図であり、図8は、図7の等価回路図である。
【0031】
図7及び図8を参照すると、ハウジング10の長さ方向に対して固定基板14の上端及び下端に形成される1つの信号入力ポートを対応する入力ポートに入力される信号から分配された信号が出力される複数の出力ポートに接続するためのパターンIN及びP1乃至P5が固定基板14上に形成される。
【0032】
図7に示す例において、1つの入力ポートに入力される信号は、5個の信号に分配され、この分配された信号は、5個の出力ポートに送信される。例えば、パターンIN、P5及びP4は、入力ポート、第5の出力ポート、及び第4の出力ポートに接続するために、ハウジング10の長さ方向に対して下端の左側から右側に順次に形成される。また、パターンP1、P2、及びP3は、第1、第2、及び第3の出力ポートとそれぞれ接続するためにハウジング10の長さ方向に対して上端の左側から右側に順次に形成される。
【0033】
一方、入力信号の分配及びこの分配された信号のそれぞれの位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分i1−i2、f1−f2、l1−l2及びq1−q2と複数の信号分配パターンc−f1−l1−d、h−i1−j、及びn−q1−oとは、この入力ポートのためのパターンIN及び第1乃至第5の出力ポートのためのパターンP1乃至P5間に位置する。この際に、この入力ポートの接続パターンINは、パターンa、b、及びcに伸張された後に、パターンcでパターンf、l、及びdに分配される。パターンdは、パターンeに伸張され、第3の出力ポートの接続パターンP3に接続される。パターンfは、パターンg及びhに接続された後に、パターンi及びjに分配される。パターンjは、パターンkに伸張され、第2の出力ポートの接続パターンP2に接続され、パターンiは、第1の出力ポートの接続パターンP1に接続される。パターンlは、パターンm及びnに接続された後に、パターンo及びqに分配される。パターンoは、パターンpを介して第4の出力ポートの接続パターンP4に接続され、パターンqは、第5の出力ポートの接続パターンP5に接続される。
【0034】
パターンf、i、l、及びqは、位相可変のための可変線路を形成するためのパターンであり、それぞれは、所定の長さに対して相互に平行である2つのパターンf1及びf2、i1及びi2、又はq1及びq2に分離されるように設計される。移動基板12の位相可変パターン124a乃至124dは、このような平行部分に対応する位置で“U”字状で形成され、U字状の伝送線路の各端部は、パターンf、i、l、及びqの平行部分に対応して配置される。したがって、キャパシタンスカップリングは、パターンf、i、l、及びqの平行部分とU字状の伝送線路間で発生する。移動基板12が移動するに従って、パターンf1及びf2、i1及びi2、l1及びl2、q1及びq2間の伝送線路の物理的な長さは、このカップリングにより変わる。その結果、伝達される信号の位相が可変される。
【0035】
上述した構成において、この入力ポートの接続パターンINに入力される信号は、パターンc−f−l−dで一次的に分配され、パターンdで分配される信号は、パターンeを介して第3の出力ポートに出力される。この際に、パターンfで分配される信号は、一次的に位相が可変され、パターンg及びhに沿って転送された後に、パターンh−i−jで二次的に分配される。パターンjで分配される信号は、パターンkを介して第2の出力ポートに出力され、パターンiで分配される信号は、二次的に位相が可変された後に第1の出力ポートに出力される。
【0036】
一方、パターンc−f−l−dで一次的に分配される際に、パターンlで分配された信号は、一次的に位相が可変され、パターンm及びnに沿って送信された後に、パターンn−g−oで二次的に分配される。パターンoで分配された信号は、パターンpを介して第4の出力ポートに出力され、パターンgで分配される信号は、二次的に位相が可変された後に第5の出力ポートに出力される。
【0037】
各伝送線路の回路図である図8を参照すると、パターンa乃至qは、隣接するパターンとのインピーダンスマッチングのために異なる抵抗値を有するように設計され、全体的に各出力ポートに対する分配比を最適に設定することができるように設計される。また、各パターンは、対応する周波数帯域に対してλ/4の特性を有する長さを有するように設計される。
【0038】
より詳細に説明すると、第1乃至第5の出力ポートは、アンテナで垂直方向に配列される5個の放射素子に順次に接続される。この際に、入力信号の適切な分配比は、それぞれの出力ポートに対して同一に設定されず予め定められる。すなわち、各放射素子に提供される出力信号の分配比は、アンテナビームパターンのサイドローブ(sidelobe)特性を改善するように適切に設定され得る。
【0039】
また、移動基板12上の位相可変パターン124a乃至124dによる位相変化量は、相互に比例して又は反比例して設定される。例えば、位相可変パターン124a乃至124dは、下側の2つの位相可変パターン124c及び124dの可変線路の長さが増加する場合に、上側の2つの位相可変パターン124a及び124bの可変線路の長さが減少するように設計される。したがって、第1乃至第5の出力ポートは、それぞれ位相変化量4X、2X、0X、−2X、及び−4Xを有し得る。ここで、Xは、位相変化量を意味する。0Xは、位相変化量がないことを意味し、2X/4Xは、位相変化量4Xが位相変化量2Xより2倍大きいことを意味する。このような方式で、第1乃至第5の出力ポートに順次に接続される第1乃至第5の放射素子は、異なる位相変化量を有することにより垂直ビームチルティングが可能となる。
【0040】
ここで、入力ポート、第5の出力ポート、及び第4の出力ポートの接続パターンIN、P5、及びP4と第1、第2、及び第3の出力ポートの接続パターンP1、P2、及びP3とが最適の順序で形成されることを留意すべきである。すなわち、本発明に従って、この位相可変パターンは、基準軸に沿って一列に形成される。これらのパターンは、例えば、1つの位相可変パターンを経験する信号が第2の出力ポートに出力され、 2つの位相可変パターンを経験する信号が第1の出力ポートに出力される方式で設計されることにより、位相変化量が2倍の差が出る。
【0041】
通常、放射素子は、位相アレイアンテナのような垂直ビームチルティングが可能なアンテナで長さ方向に配列される。従って、本発明は、アンテナの配列方向と同一の方向、すなわち、長さ方向に沿って長い構造を有する。また、この出力ポートは、第1乃至第5の放射素子への接続のために適切に配置されることにより、この出力ポートをこの放射素子に接続するのに必要とされる給電線の長さが減少され、これによる位相アレイアンテナの電力損失が減少されることにより利得が向上することができる。
【0042】
図9は、本発明の一実施形態によるMLPSがアンテナに適用された構造を示す概略図である。図9を参照すると、線形直交偏波を発生するために複数のダイポールの組み合せで構成される放射素子、例えば、第1乃至第5の放射素子20−1乃至20−5は、アンテナで長さ方向に順次に配置される。本発明によるMLPSは、+45°及び−45°の偏波を発生するためにアンテナで2個の位置にそれぞれ設置され得る。
【0043】
この際に、接続ケーブルは、MLPS10の出力ポートと放射素子20−1乃至20−5間で相互にツイストされることなく効率的に接続される。
【0044】
図10A及び図10Bは、本発明の他の実施形態によるMLPSの構造を示す図である。特に、図10Aは、本発明の他の実施形態よるMLPSの固定基板及び移動基板のパターンを示す図であり、図10Bは、MLPSの出力ポートから出力される信号の位相変化量を示す図である。
【0045】
図10A及び図10Bを参照すると、本発明の他の実施形態によるMLPSは、1つの入力ポートと4個の出力ポートとを有する。すなわち、MLPSは、偶数、すなわち、4個の放射素子を有するアンテナに適用されるように設計される。このようなMLPSは、図1乃至図9に示すMLPSの構造に比べて、1つの出力ポート(例えば、図1乃至図9での第1の出力ポートの接続パターンP1)のためのパターンを有しない。
【0046】
MLPSにおいて、第1及び第2の出力ポートに接続するためのパターンP1及びP2は、ハウジング10の長さ方向に対して上端の左側から右側に順次に形成され、この入力ポート、第4の出力ポート、及び第3の出力ポートに接続するためのパターンIN、P4、及びP3は、ハウジング10の長さ方向に対して下端の左側から右側に順次に形成される。また、MLPSは、第1乃至第4の出力ポートに対する位相変化量がそれぞれ1X、0X、−1X、及び−2Xであるように設計され得る。
【0047】
図11は、本発明の一実施形態によるMLPSの駆動装置を示す図である。図11を参照すると、MLPSは、移動基板12の一部が露出するようにハウジング10の上面に開口部を有する。動力作動駆動装置は、このような開口部を介して移動基板12に接続されることにより移動基板12がハウジング10の長さ方向に沿って移動する。
【0048】
より詳細に、この駆動装置は、外部駆動制御信号に従って動作する駆動モータ30を含み得る。駆動モータ30は、ピニオンギア302に接続され得る。また、移動基板12は、駆動転送軸310の一側に接続され得、ラックギア312は、駆動転送軸310の他側に形成される。ラックギア312は、駆動モータ30のピニオンギア302に接続され得る。したがって、駆動装置30の駆動に従って、ラックギア302がピニオンギア312と連動し、駆動転送軸310が移動する。その結果、移動基板12が移動する。
【0049】
以上、本発明を具体的な実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく様々な変更が可能であるということは、当業者には明らかであり、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものの範囲内で定められるべきである。
【符号の説明】
【0050】
10 ハウジング
12 移動基板
14 固定基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器(MLPS)であって、
平面が長い長方形の箱形態を有するハウジングと、
前記ハウジング内の底面に取り付けられ、入力信号の分配及び分配された信号の位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分及び複数の信号分配パターンを形成する伝送線路が印刷される固定基板と、
前記ハウジング内で前記固定基板の一面と接触する位置で長さ方向に沿って移動可能であるように設置され、前記複数の位相可変パターンの一部とのカップリングを介して可変線路を形成することにより位相可変のために前記複数の位相可変パターンの残りの部分を形成する伝送線路が印刷される移動基板と
を有することを特徴とするマルチライン移相器。
【請求項2】
前記固定基板は、1つの入力ポートを対応する入力ポートに入力される信号が分配されることにより出力される複数の出力ポートに接続するためのパターンが前記ハウジングの長さ方向に対して上下端に印刷され、前記入力ポートと前記複数の出力ポート間で前記伝送線路が形成されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項3】
前記固定基板及び前記移動基板上に形成される前記複数の位相可変パターンは、相互に比例して又は反比例して位相を可変させ、前記移動基板の移動方向に沿って1つの基準軸に一列に形成されるように印刷されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項4】
複数のボールプランジャは、前記ハウジング内部の上面と向かい合う移動基板の一面上に設置されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項5】
前記移動基板上に印刷される前記複数の位相可変パターンの残りの部分は、
前記移動基板の下面上に形成される複数の装着溝に挿入される複数のサブ基板上に個別に印刷され、
前記複数のサブ基板と前記複数の装着溝間に前記複数のサブ基板を押し出す弾性力を加えるためのバネが介在されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項6】
前記固定基板は、1つの入力ポートが対応する入力ポートの入力信号が分配されることにより出力される5個の出力ポートに接続される構造を有し、前記入力ポート、第5の出力ポート、及び第4の出力ポートに接続するためのパターンは、前記ハウジングの長さ方向に対して下端の左側から右側に順次に形成され、第1、第2、及び第3の出力ポートに接続するためのパターンは、前記ハウジングの長さ方向に対して上端の左側から右側に順次に形成され、前記第1乃至第5の出力ポートは、垂直方向に配列される5個の放射素子に順次にマッピングされることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項7】
前記固定基板及び前記移動基板上に印刷される複数の伝送線路は、マイクロストリップラインを用いて形成され、前記固定基板及び前記移動基板は、誘電体基板を用いて形成され、絶縁膜は、前記固定基板と前記移動基板とが接触する面の中の少なくとも一面に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6の中のいずれか1項に記載のマルチライン移相器。
【請求項8】
前記固定基板は、半田づけにより前記ハウジングに取り付けられることを特徴とする請求項1乃至請求項6の中のいずれか1項に記載のマルチライン移相器。
【請求項1】
垂直ビームチルト制御アンテナのためのマルチライン移相器(MLPS)であって、
平面が長い長方形の箱形態を有するハウジングと、
前記ハウジング内の底面に取り付けられ、入力信号の分配及び分配された信号の位相可変のための複数の位相可変パターンの一部分及び複数の信号分配パターンを形成する伝送線路が印刷される固定基板と、
前記ハウジング内で前記固定基板の一面と接触する位置で長さ方向に沿って移動可能であるように設置され、前記複数の位相可変パターンの一部とのカップリングを介して可変線路を形成することにより位相可変のために前記複数の位相可変パターンの残りの部分を形成する伝送線路が印刷される移動基板と
を有することを特徴とするマルチライン移相器。
【請求項2】
前記固定基板は、1つの入力ポートを対応する入力ポートに入力される信号が分配されることにより出力される複数の出力ポートに接続するためのパターンが前記ハウジングの長さ方向に対して上下端に印刷され、前記入力ポートと前記複数の出力ポート間で前記伝送線路が形成されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項3】
前記固定基板及び前記移動基板上に形成される前記複数の位相可変パターンは、相互に比例して又は反比例して位相を可変させ、前記移動基板の移動方向に沿って1つの基準軸に一列に形成されるように印刷されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項4】
複数のボールプランジャは、前記ハウジング内部の上面と向かい合う移動基板の一面上に設置されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項5】
前記移動基板上に印刷される前記複数の位相可変パターンの残りの部分は、
前記移動基板の下面上に形成される複数の装着溝に挿入される複数のサブ基板上に個別に印刷され、
前記複数のサブ基板と前記複数の装着溝間に前記複数のサブ基板を押し出す弾性力を加えるためのバネが介在されることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項6】
前記固定基板は、1つの入力ポートが対応する入力ポートの入力信号が分配されることにより出力される5個の出力ポートに接続される構造を有し、前記入力ポート、第5の出力ポート、及び第4の出力ポートに接続するためのパターンは、前記ハウジングの長さ方向に対して下端の左側から右側に順次に形成され、第1、第2、及び第3の出力ポートに接続するためのパターンは、前記ハウジングの長さ方向に対して上端の左側から右側に順次に形成され、前記第1乃至第5の出力ポートは、垂直方向に配列される5個の放射素子に順次にマッピングされることを特徴とする請求項1に記載のマルチライン移相器。
【請求項7】
前記固定基板及び前記移動基板上に印刷される複数の伝送線路は、マイクロストリップラインを用いて形成され、前記固定基板及び前記移動基板は、誘電体基板を用いて形成され、絶縁膜は、前記固定基板と前記移動基板とが接触する面の中の少なくとも一面に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6の中のいずれか1項に記載のマルチライン移相器。
【請求項8】
前記固定基板は、半田づけにより前記ハウジングに取り付けられることを特徴とする請求項1乃至請求項6の中のいずれか1項に記載のマルチライン移相器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11】
【公表番号】特表2012−526447(P2012−526447A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509744(P2012−509744)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002993
【国際公開番号】WO2010/131895
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(508112782)ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002993
【国際公開番号】WO2010/131895
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(508112782)ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]