説明

垂直磁気記録媒体

【課題】磁気特性及び熱安定性を劣化させずに、電磁変換特性を向上させ、よりいっそうの高記録密度化に対応可能な垂直磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明は、垂直磁気記録方式での情報記録に用いる垂直磁気記録媒体であって、基板上に、少なくとも軟磁性層と下地層と磁性層とを備える垂直磁気記録媒体である。前記磁性層は、複数の磁性層を含む多層構成からなり、そのうちの少なくとも一層の磁性層は、酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含む。また、この酸化物は、SiO2、TiO2、Cr23、Ta25、WO3、CoO、Co34から選ばれる少なくとも一つの材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は垂直磁気記録方式のHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気ディスク装置に搭載される垂直磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDD(ハードディスクドライブ)の面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスクにして、1枚当り250Gバイトを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような所要に応えるためには1平方インチ当り400Gビットを超える情報記録密度を実現することが求められる。HDD等に用いられる磁気ディスクにおいて高記録密度を達成するためには、情報信号の記録を担う磁気記録層を構成する磁性結晶粒子を微細化すると共に、その層厚を低減していく必要があった。ところが、従来より商業化されている面内磁気記録方式(長手磁気記録方式、水平磁気記録方式とも呼称される)の磁気ディスクの場合、磁性結晶粒子の微細化が進展した結果、超常磁性現象により記録信号の熱的安定性が損なわれ、記録信号が消失してしまう、熱揺らぎ現象が発生するようになり、磁気ディスクの高記録密度化への阻害要因となっていた。
【0003】
この阻害要因を解決するために、近年、垂直磁気記録方式の磁気ディスクが提案された。垂直磁気記録方式の場合、面内磁気記録方式とは異なり、主記録層の磁化容易軸を基板面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は面内記録方式に比べて、記録層の膜厚が厚くできるため、熱揺らぎの現象を抑制することができる。また、垂直磁気記録媒体では、軟磁性層が設けられ、軟磁性層により、記録ヘッドからの磁束を収束させ、また鏡像効果により、長手記録媒体に比べ急峻で大きな磁界を発生させることが可能になるので、高記録密度化に対して好適である。
【0004】
垂直磁気記録方式において磁気記録層がhcp構造(六方細密充構造)である場合には磁化容易軸はc軸であり、c軸を基板の法線方向に配向させる必要がある。このc軸の配向性を向上させるためには、磁気記録層の下にhcp構造の非磁性下地層を設けることが有効である。下地層にはCoCr合金、Ti、V、Zr、Hfなどが知られているが、特にRu(ルテニウム)が磁気記録層の結晶配向性を効果的に向上させ、保磁力Hcを高めることができることが知られている。
【0005】
垂直磁気記録方式では、S/N比(シグナル/ノイズ比)を向上させるためには、磁気記録層の磁性粒(磁性グレイン)の間に非磁性物質(例えば、クロム)または酸化物を偏析させて粒界部を形成したグラニュラー構造とし、磁性粒を孤立微細化することにより行なわれている(例えば、特許文献1)。また粒界部への非磁性物質または酸化物の偏析の促進及び磁性粒の微細化の促進のために、磁性層の多層化が行われている。(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−36525号公報
【特許文献2】特開2006−286106号公報
【特許文献3】特開2006−351055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近では、磁気ディスクの情報記録密度のさらなる高記録密度化が要求されており、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスクとして、1枚あたり250GBを越える情報記録容量が求められるようになってきている。このような要請に応えるためには1平方インチあたり400Gビットを超える情報記録密度を実現する必要がある。このような高記録密度を可能にするためにはさらに磁性粒の微細化し、S/N比を向上させる必要がある。従来構成の垂直磁気記録媒体では磁性層を多層化しながら、沢山の非磁性物質(例えばクロム)を添加し、飽和磁化(Ms)を低減したところでノイズを抑制している(例えば、上記特許文献3)。この方法では、磁性層の結晶磁気異方性(Ku)が低下し、磁性層の磁気的なエネルギーが反磁界及び熱のエネルギーに打ち勝てなくなり、熱揺らぎの現象が問題になってくる。また、この構成では、信号を出すために、磁性層の膜厚を厚くする必要があり、媒体を製造するとき余分な材料を使用する必要があり、材料コストが上がってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、磁性層のMs及びKuを低下せずに、電磁変換特性の信号出力および磁気特性を向上する垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者が鋭意検討したところ、現行の磁気記録媒体における記録層の一部である磁性層(例えば2層の磁性層を含む場合には上方の第二磁性層または下方の第一磁性層)に着眼した。従来はこの磁性層に非磁性物質として添加されたクロム成分を無くし、粒界部への偏析には酸化物のみ用いることを考えた。そのため、現行の磁性層に様々なMsおよびKuの材料を用い、その磁気特性および電磁変換特性を調べた結果、酸化物を含有するCoPt磁性粒子が最適であることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有するものである。
【0010】
(構成1)
垂直磁気記録方式での情報記録に用いる垂直磁気記録媒体であって、基板上に、少なくとも軟磁性層と下地層と磁性層とを備える垂直磁気記録媒体において、前記磁性層は、複数の磁性層を含む多層構成からなり、そのうちの少なくとも一層の磁性層は、酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【0011】
(構成2)
前記酸化物は、SiO2、TiO2、Cr23、Ta25、WO3、CoO、Co34から選ばれる少なくとも一つの材料であることを特徴とする構成1に記載の垂直磁気記録媒体。
【0012】
(構成3)
前記最上の磁性層に含まれるCoPt磁性粒子中の酸化物含有量は、8〜15原子%の範囲であることを特徴とする構成1又は2に記載の垂直磁気記録媒体。
【0013】
(構成4)
前記磁性層は2層の磁性層を含み、そのうちの下方または上方の磁性層は、酸化物を含有するCoCrPt磁性粒子を含むことを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
【0014】
(構成5)
前記下地層は、Ru又はその合金を主成分とする材料からなることを特徴とする構成1乃至4のいずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、垂直磁気記録媒体の磁性層中に、酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含むことにより、Cr成分を無くし、酸化物を増やすことで、記録層全体のKuが向上でき熱揺らぎの現象が抑制できる。また、この材料を用いると磁性層の膜厚が低減でき、記録再生特性の改善及びコストの削減ができる。その結果、低コストで垂直磁気記録媒体の記録再生特性の改善及び熱揺らぎ現象の抑制をすることができる。
したがって、磁気特性及び熱安定性を劣化させずに、電磁変換特性を向上させ、よりいっそうの高記録密度化に対応可能な垂直磁気記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る垂直磁気記録媒体の層構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る垂直磁気記録媒体100の層構造を示した断面図である。かかる垂直磁気記録媒体100は、基体(ディスク基体)110、付着層112、軟磁性層114、配向制御層116、下地層118、オンセット層120、第一磁性層122、第二磁性層124、層間結合層125、連続層126、媒体保護層128、潤滑層130で構成することができる。
【0018】
まず、アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円盤状に成型し、ガラスディスクを作成する。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性の基体(以下、「ディスク基体」という。)110を得る。アルミノシリケートガラスは、平滑かつ高剛性が得られるので、磁気的スペーシング、特に、磁気ヘッドの浮上量をより安定して低減できる。また、アルミノシリケートガラスは化学強化により、高い剛性強度を得ることができる。このときディスク直径は例えば2.5インチディスクの場合、65mmである。このディスク基体110の主表面の表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で測定した場合、Rmaxが3nm以下、Raが0.2nm以下という平滑な表面形状であることが好適である。なお、RmaxおよびRaは、日本工業規格(JIS)に従う。
【0019】
このようにして得られるディスク基体110上に、真空引きを行った成膜装置を用い、Arガス雰囲気中でDCマグネトロンスパッタリング法にて、付着層112から連続層126まで順次成膜を行い、媒体保護層128は好適にはCVD法により成膜する。この後、潤滑層130を例えばディップコート法により形成する。なお、均一な成膜が可能であるという点で、枚様型成膜方法を用いることも好ましい。以下、各層の構成および製造方法について説明する。また、以下の各層の材料は特に断りのない限り、あくまでも一例であって、本発明ではこれらの材料に限定する趣旨ではない。
【0020】
上記付着層112は、10nmのTi合金層となるように、Ti合金ターゲットを用いて成膜する。付着層112を形成することにより、ディスク基体110と軟磁性層114との間の付着性を向上させることができるので、軟磁性層114の剥離を防止することができる。付着層112の材料としては、例えばTi含有材料を用いてもよい。実用上の観点からは付着層の膜厚は、1nm〜50nmとするのが好ましい。
【0021】
上記軟磁性層114は、第一軟磁性層114a、非磁性スペーサ層114b、第二軟磁性層114cから構成されている。第一軟磁性層114aと第二軟磁性層114cの間に非磁性のスペーサ層114bを介在させることによって、AFC(Antiferro-magnetic exchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成した。これにより軟磁性層114の磁化方向を高い精度で磁路(磁気回路)に沿って整列させることができ、磁化の垂直成分が極めて少なくなることで軟磁性層114から生じるノイズを低減することができる。具体的には、例えば第一軟磁性層114a、第二軟磁性層114cの組成はFeCoTaZrとし、非磁性スペーサ層114bの組成は非磁性材料の組成はRu(ルテニウム)とすることができる。
【0022】
上記配向制御層116は、軟磁性層114を防護する作用と、下地層118の結晶粒の配向の整列を促進する作用及び結晶粒を微細化する作用を備える。配向制御層116は、fcc構造を有するNiWを用いて成膜することができる。
【0023】
上記下地層118は、例えばRuからなる2層構造となっている。上層側の第二下地層118bを形成する際に、下層側の第一下地層118aを形成するときよりもArのガス圧を低くすることにより、結晶配向性を改善することができる。
【0024】
上記オンセット層120は第一磁性層122の磁性結晶粒を微細化する作用を備える。オンセット層120には、hcp構造の有するCoCrRu-TiO2を用いて成膜することができる。
【0025】
上記第一磁性層122は、第二磁性層124の初期層を形成するため磁性のグラニュラー層である。第一磁性層122には、例えばhcp結晶構造の(Co−12Cr−18Pt)−5TiO2、(Co-12Cr-18Pt)-3.5Cr2O3−3.5SiO2、(Co-12Cr-18Pt)-4.5TiO2−4.5SiO2−1Co3O4などを用いるのが好適である。
【0026】
上記第二磁性層124は、本実施の形態においては、酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含有する。本発明者は、第二磁性層に様々なMsおよびKuの材料を用い、その磁気特性および電磁変換特性を調べた結果、酸化物を含有するCoPt磁性粒子が最適であることを見い出した。非磁性物質の例としての酸化珪素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化タングステン(WO3)、酸化コバルト(CoO)、酸化コバルト(Co3O4)、酸化タンタル(Ta2O5)のいずれか或いはこれらの酸化物の任意の複数の材料を含有するCoPtからなる硬磁性体のターゲットを用いて、hcp結晶構造を形成する。これら酸化物は磁性物質の周囲に偏析して粒界を形成し、磁性粒(磁性グレイン)は柱状のグラニュラー構造を形成する。この磁性粒は、オンセット層120及び第一磁性層122のグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長する。
【0027】
本発明者は、酸化物を含有するCoPt磁性粒子において、Ptの添加量及び酸化物の種類、添加量を変化させた材料についても検討した結果、第二磁性層124としては、とりわけ、(Co−xPt)−13TiO2(x=20,22,25)、(Co−22Pt)−yTiO2(y=9,10、11,12,13,14)、(Co−22Pt)-12酸化物(酸化物=TiO2,SiO2,Cr2O3、Ta2O5、WO3、CoO、Co3O4から選ばれる少なくとも一つの材料)合金で構成される化合物群から選択される少なくとも一つの化合物から形成されることが好適である。なお、CoPt磁性粒子中の酸化物含有量は、8〜15原子%の範囲が好ましく、さらに好ましくは9〜14原子%の範囲である。
【0028】
第二磁性層124の膜厚としては、1nm以上、好ましくは3nm以上である。第二磁性層124が1nm未満になると、初期層のみが存在し、磁気特性が劣化してしまうことがある。したがって、第二磁性層124の膜厚は例えば3nm〜10nmの範囲で適宜設定しうる。
【0029】
なお、本実施の形態では、上層の第二磁性層中に酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含むが、これに限らず、第一磁性層中に酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含むようにしてもよい。また、例えば3層以上の多層構成の磁性層の場合、少なくとも一つの磁性層は酸化物を含有するCoPt磁性粒子から構成されており、その他の磁性層は酸化物を含有するCoCrPtまたは酸化物を含有するCoCr磁性粒子から構成されることが好ましい。
【0030】
上記層間結合層125は、例えば(Co−30Cr)−12TiOまたは(Co−30Cr)−12SiOを用いて、第二磁性層124と連続層126との層間の磁気的な結合を制御する。
【0031】
上記連続層126は、例えばCoCrPtB膜からなり、低Arガスで形成され、当該連続層126の面方向に磁性が連続している。かかる連続層126の膜厚は10nm以下であることが好ましく、望ましくは5nm以下である。
【0032】
上記媒体保護層128は、真空を保ったままカーボンをCVD法により成膜して形成することが好ましい。媒体保護層128は、磁気ヘッドの衝撃から第二磁性層126を防護するための保護層である。一般にCVD法によって成膜されたカーボンはスパッタ法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に第二磁性層126を防護することができる。
【0033】
上記潤滑層130は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜して形成することができる。潤滑層130の膜厚は約1nmである。このパーフロロポリエーテルは、直鎖構造を備え、磁気ディスク用に適度な潤滑性能を発揮するとともに、末端基に水酸基(OH)を備えることで、炭素系媒体保護層に対して高い密着性能を発揮することができる。
【実施例】
【0034】
以下実施例、比較例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円盤状に成型し、ガラスディスクを作製した。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性ディスク基体を得た。ガラス基板の直径は、65mm、内径は20mm、ディスク厚は0.635mmの2.5インチ型磁気ディスク用基板であった。ここで、得られたガラス基板の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で観察したところ、Rmaxが2.18nm、Raが0.18nmの平滑な表面であることを確認した。なお、Rmax及びRaは、日本工業規格(JIS)に従う。
【0035】
次に、キヤノンアネルバ社製C3040スパッタ成膜装置を用いて、ディスク基体110上に、DCマグネトロンスパッタリングで順次、付着層112、軟磁性層114、配向制御層116、下地層118、オンセット層120、第一磁性層122、第二磁性層124、層間結合層125、連続層126の成膜を行なった。
【0036】
まず、付着層112は、10nmのCrTi(Cr:55at%、Ti:45at%)層となるように、CrTiターゲットを用いて成膜した。
次に、軟磁性層114a、114cは、20nmのアモルファスFeCoTaZr(Fe:37at%、Co:55at%、Ta:3at%、Zr:5at%)層となるように、FeCoTaZrターゲットを用いて成膜した。非磁性スペーサ層114bとしてはRuターゲットを用いて0.5nmのRu層を成膜した。
【0037】
そして、軟磁性層114の上に6nmのNiW(Ni:95at%、W:5at%)からなる配向制御層116、それぞれの膜厚10nmのRuからなる下地層118aと118b(下地層118aのRu層の成膜ガス圧:1.5Pa、下地層118bのRu層の成膜ガス圧:6.0Pa)、1.5nmのCoCrRu−TiO2(Co:52at%、Cr:27at%、Ru:9at%、TiO2:12at%)からなるオンセット層120、および5nmのCoCrPt-SiO2-Cr2O3(Co:65at%、Cr:11at%、Pt:17at%、SiO2:3.5at.%、Cr2O3:3.5at%)からなる第一磁性層122、CoPt−TiO2の第二磁性層124,層間結合層125、連続層126を順次成膜した。
【0038】
第二磁性層124は、hcp結晶構造のCoPt−TiO2(Co:69at%、Pt:19at%、TiO2:12at%)からなる硬磁性体のターゲットを用いて5nm成膜した。層間結合層125には、hcp結晶構造のCo−27Cr−12TiOのターゲットを用いて0.6nm成膜した。さらに、連続層126は、CoCrPtB(Co:66at%、Cr:18at%、Pt:11at%、B:5at%)のターゲットを用いて7.0nm成膜した。
【0039】
次に、連続層126の上には、CVD法で水素化カーボンからなる媒体保護層128を形成した。水素化炭素とすることで、膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対して垂直主記録層を防護することができる。
この後、PFPE(パーフロロポリエーテル)からなる潤滑層130をディップコート法により形成した。潤滑層130の膜厚は1nmである。
以上のようにして、実施例1の垂直磁気記録媒体を得た。
【0040】
(比較例1)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoCrPt−TiO(Co:62at%、Cr:7at%、Pt:19at%、TiO:12at%)とした。
(比較例2)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoCrPt−TiO(Co:66at%、Cr:3at%、Pt:19at%、TiO:12at%)とした。
【0041】
(実施例2)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO(Co:72at%、Pt:19at%、TiO:9at%)とした。
(実施例3)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO(Co:71at%、Pt:19at%、TiO:10at%)とした。
【0042】
(実施例4)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO(Co:70at%、Pt:19at%、TiO:11at%)とした。
(実施例5)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO(Co:68at%、Pt:19at%、TiO:13at%)とした。
【0043】
(実施例6)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO(Co:67at%、Pt:19at%、TiO:14at%)とした。
(実施例7)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoPt−TiO(Co:69at%、Pt:19at%、TiO:12at%)とし、第二磁性層124としては、CoCrPt−TiO−SiO−Co(Co:64at%、Cr:9at%、Pt:16at%、TiO:5at%、SiO:5at%、Co:1at%)とした。
【0044】
(実施例8)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoPt−TiO−SiO(Co:69at%、Pt:19at%、TiO:9at%、SiO:3at%)とし、第二磁性層124としては、CoCrPt−TiO−SiO−Co(Co:64at%、Cr:9at%、Pt:16at%、TiO:5at%、SiO:5at%、Co:1at%)とした。
(実施例9)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoPt−TiO−SiO−Co(Co:69at%、Pt:19at%、TiO:8at%、SiO:3at%、Co:1at%)とし、第二磁性層124としては、CoCrPt−TiO−SiO−Co(Co:64at%、Cr:9at%、Pt:16at%、TiO:5at%、SiO:5at%、Co:1at%)とした。
【0045】
(実施例10)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO(Co:70at%、Pt:17at%、TiO:13at%)とした。
(実施例11)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO(Co:65at%、Pt:22at%、TiO:13at%)とした。
【0046】
(実施例12)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−SiO(Co:69at%、Pt:19at%、SiO:12at%)とした。
(実施例13)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−Cr(Co:74at%、Pt:19at%、Cr:7at%)とした。
【0047】
(実施例14)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−Ta(Co:76at%、Pt:19at%、Ta:5at%)とした。
(実施例15)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−WO(Co:76at%、Pt:19at%、WO:5at%)とした。
【0048】
(実施例16)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−CoO(Co:75at%、Pt:19at%、CoO:6at%)とした。
(実施例17)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−Co(Co:75at%、Pt:19at%、Co:6at%)とした。
【0049】
(実施例18)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoCrPt−Cr(Co:65at%、Cr:11at%、Pt:17at%、Cr:7at%)とした。
(実施例19)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoCrPt−Cr(Co:67at%、Cr:11at%、Pt:17at%、Cr:5at%)とした。
【0050】
(実施例20)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoCrPt−Cr−SiO(Co:67at%、Cr:11at%、Pt:17at%、Cr:2.5at%、SiO:2.5at%)とした。
(実施例21)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoCrPt−TiO−SiO−Co(Co:69at%、Cr:7at%、Pt:14at%、TiO:4.5at%、SiO:4.5at%、Co:1at%)とした。
【0051】
(実施例22)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoCrPt−TiO−SiO−Co(Co:63at%、Cr:13at%、Pt:14at%、TiO:4.5at%、SiO:4.5at%、Co:1at%)とした。
【0052】
(実施例23)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO−SiO(Co:69at%、Pt:19at%、TiO:8at%、SiO:4at%)とした。
(実施例24)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第二磁性層124としては、CoPt−TiO−SiO−Co(Co:69at%、Pt:19at%、TiO:8at%、SiO:3at%、Co:1at%)とした。
【0053】
(実施例25)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoPt−TiO(Co:69at%、Pt:19at%、TiO:12at%)とした。
(実施例26)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一磁性層122としては、CoPt−TiO−SiO(Co:69at%、Pt:19at%、TiO:9at%、SiO:3at%)とした。
【0054】
(評価)
上記で得られた実施例及び比較例の各垂直磁気記録媒体の評価を次のようにして行った。
磁気特性の飽和磁化(Ms)の評価には最大印加磁場が15kOeの振動試料型磁力計(VSM)を用いた。VSM測定用のサンプルには、基体(ディスク基体)110、付着層112、配向制御層116、下地層118、オンセット層120、媒体保護層128の構成で作製した。結晶磁気異方性Kuの評価には印加磁場25kOeトルク磁力計を用いた。なお、下記表3中のMsおよびKuは、第二磁性層に関する測定結果である。
また、保磁力Hc及び熱揺らぎの指標vKu/kTの評価には、最大印加磁場が20kOe極Kerr効果測定装置を用いた。さらに、記録再生特性の評価には、R/Wアナライザーと、記録側がSPT素子、再生側がGMR素子を備える垂直磁気記録方式用磁気ヘッドとを用いて、記録密度を1550kfciとして測定した。このとき、磁気ヘッドの浮上量は10nmであった。
【0055】
実施例及び比較例の各垂直磁気記録媒体における第一磁性層および第二磁性層の材料は纏めて下記表1および表2に示すとともに、上記の評価結果については纏めて下記表3に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
表3の結果からわかるように、本発明実施例の垂直磁気記録媒体によれば、第二磁性層または第一磁性層として、酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含み、Cr成分を無くし、酸化物を増やすことにより、記録層全体のKuが向上でき熱揺らぎの現象が抑制できる。また、第二磁性層または第一磁性層にこの酸化物を含有するCoPt磁性粒子を用いると磁性層の膜厚が低減でき、記録再生特性の改善及びコストの削減ができる。その結果、低コストで垂直記録媒体の記録再生特性の改善及び熱揺らぎ現象の抑制をすることができる。
すなわち、本発明によれば、磁気特性及び熱安定性を劣化させずに、電磁変換特性を向上させ、よりいっそうの高記録密度化に対応可能な垂直磁気記録媒体を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 垂直磁気記録媒体
110 ディスク基体
112 付着層
114 軟磁性層
116 配向制御層
118 下地層
120 オンセット層
122 第一磁性層
124 第二磁性層
125 層間結合層
126 連続層
128 媒体保護層
130 潤滑層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直磁気記録方式での情報記録に用いる垂直磁気記録媒体であって、
基板上に、少なくとも軟磁性層と下地層と磁性層とを備える垂直磁気記録媒体において、
前記磁性層は、複数の磁性層を含む多層構成からなり、そのうちの少なくとも一層の磁性層は、酸化物を含有するCoPt磁性粒子を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記酸化物は、SiO2、TiO2、Cr23、Ta25、WO3、CoO、Co34から選ばれる少なくとも一つの材料であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記の磁性層に含まれるCoPt磁性粒子中の酸化物含有量は、8〜15原子%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記磁性層は2層の磁性層を含み、そのうちの下方もしくは上方の磁性層は、酸化物を含有するCoCrPt磁性粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
前記下地層は、Ru又はその合金を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の垂直磁気記録媒体。


【図1】
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