説明

型枠パネル、及びコンクリート壁体の構築構造

【課題】コンクリート打設後の仕上げを必要とすることなく、そのまま外装材として用いることができ、しかも隣り合うパネル同士の接続部分からのノロの漏れ出しをも防止できる型枠パネル、及びコンクリート壁体の構築構造を提供する。
【解決手段】本発明の型枠パネル1は、化粧材2I,2IIと、該化粧材2I,2IIの内側に添設する断熱材3とからなり、化粧材2I,2IIは、仕上げ面となる面板部21と、面板部21の両端に形成した接続部22A〜22Dと、面板部21の裏面側に形成した螺子部を有する定着部23とを有し、隣接する化粧材2I,2II同士は係合又は嵌合によって接続可能であって、コンクリート打設空間内に配設される棒状部材5Aを、断熱材3の裏面側から定着部23の螺子部に螺合して連結することができることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設後の仕上げを必要とすることなく、そのまま外装材として用いることができ、しかも隣り合うパネル同士の接続部分からのノロの漏れ出しをも防止できる型枠パネル、及びコンクリート壁体の構築構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物を構築するにあたり、外装材や下地材(断熱材)を型枠として用いる兼用型枠が提案され、その多くは、断熱材を型枠として用い、コンクリート硬化後に断熱材表面に仕上げ処理(化粧材の貼付、外装材の敷設)を行っている。
【0003】
特許文献1には、断熱材6に複合補強材7を一体化した構成の兼用断熱材パネルAを用いてコンクリートを打設する方法が開示されている。
しかし、この特許文献1では、型枠締め付け用金具であるフォームタイ(登録商標)3・セパレータ5等が断熱材6、補強材7を貫通し、補強材7の表面(外側)まで突出しているため、貫通孔からノロ(セメント水)が漏れるという問題があった。また、このノロは、強アルカリであって補強材7の外面を汚損するため、硬化後にノロを拭き取ったり、補強材7の外面を仕上げ材(内装ボード11)で覆う必要があった。さらに、補強材7で兼用型枠を押さえるため、作業を兼用断熱材パネルAの外側から行う必要があり、足場を組むスペースが必要となり、狭小地(隣家との間に十分なスペースが無い等)での構築は難しかった。また、硬化後の化粧仕上げも、狭小地の場合、作業が困難になるという問題もあった。
【0004】
また、特許文献2は、断熱材2に、仕上げ材となるタイル3が一体化されたセメント系硬質材4を接合した建築物外断熱壁が開示されている。
しかし、この特許文献2では、図示されるように、アンカー部材5のボルトやナット、セパレータの端部などが仕上げ材3の表面に表れるため、意匠的に好ましくなかった。それを解消するためには、前記特許文献1と同様の処理が必要であった、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−6244号公報
【特許文献2】特開平11−315601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、前記特許文献1,2に記載される型枠パネルは、コンクリートの打設後に面倒な処理や仕上げ作業を必要とするものであって、そのまま外装材や内装材等として用いることができないものであった。
また、隣り合うパネル同士の接続構造について、十分に記載されていないので、大面積のコンクリート構造物に適用できるか否かも不明であるが、さらに、その接続部分、断面材の突き合わせ部分から、ノロが漏れ出し、前述のように硬化後にノロを拭き取ったり、表層材の外面を仕上げ材で覆う必要があることは、容易に想定されるものであった。
【0007】
そこで、本発明は、コンクリート打設後の仕上げを必要とすることなく、そのまま外装材として用いることができ、しかも隣り合うパネル同士の接続部分からのノロの漏れ出しをも防止できる型枠パネル、及びコンクリート壁体の構築構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、化粧材と、該化粧材の内側に添設する断熱材とからなる型枠パネルであって、前記化粧材は、仕上げ面となる面板部と、該面板部の両端に形成した接続部と、前記面板部の裏面側に形成した螺子部を有する定着部とを有し、隣接する化粧材同士は係合又は嵌合によって接続可能であって、コンクリート打設空間内に配設される棒状部材を、断熱材の裏面側から前記定着部内の螺子部に螺合して連結することができることを特徴とする型枠パネルに関するものである。
【0009】
また、本発明は、前記型枠パネルにおいて、化粧材は押出型材からなることを特徴とする型枠パネルをも提案する。
【0010】
また、本発明は、前記型枠パネルにおいて、面板部の裏面側に空間部を設け、該空間部内に螺子部を有する定着材を取り付けて定着部を形成したことを特徴とする型枠パネルをも提案する。
【0011】
また、本発明は、前記型枠パネルにおいて、断熱材の内側は、棒状部材に係止する押さえ部材によって規制されている、即ち棒状部材に鍔状材等の押さえ部材を取り付けて断熱材を挟着状に押さえていることを特徴とする型枠パネルをも提案する。
【0012】
さらに、本発明は、前記型枠パネルをコンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として用いたことを特徴とするコンクリート壁体の構築構造をも提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の型枠パネルは、断熱材を内側に沿わせる化粧材が、仕上げ面となる面板部の両端に形成した接続部と、前記面板部の裏面側に形成した螺子部を有する定着部とを有する構成であって、隣接する化粧材同士を係合又は嵌合によって接続することができ、しかも定着部の螺子部に、コンクリート打設空間内に配設される棒状部材を、断熱材の裏面側から螺合させて連結することができる。また、面板部の裏面側に定着部を形成したので、コンクリートの打設空間から棒状部材を伝ってノロが定着部に浸入しても、この定着部にて、面板部の表面への漏れ出しが防止される。さらに、前記接続部と前記定着部とは別々に設けることができるので、成形に制限が少なく、どのような態様にも適用できる。
したがって、化粧材として十分な強度を得られ、コンクリートの打設圧等で歪み等を生ずることがなく、更には成形の精度を得られることで係合等の接続手段が確実に行えるものとなる。
このように本発明の型枠パネルは、隣接する型枠パネルを容易に接続することができ、しかも型枠パネル同士の接続部分からのノロの漏れ出しをも防止できるので、化粧材を別途仕上げ処理(拭き取り等)する必要が無く、そのまま用いることができる。さらに、定着材としてナット等を取り付けた状態で搬送すればよく、平坦状のボートとして取り扱うことができ、積み重ねも可能であり、搬送コストの削減にも繋がる。
【0014】
また、化粧材は押出型材からなる場合、簡易な形状構成にて接続部や定着部を形成することができ、型枠として使用し得る型枠パネルを成形できる。
【0015】
また、断熱材の内側は、棒状部材に係止する押さえ部材によって規制されている、即ち棒状部材に鍔状材等の押さえ部材を取り付けて断熱材を挟着状に押さえている場合、コンクリートが打設されるまでの期間において型枠パネルの一体化が果たされる。
【0016】
また、面板部の裏面側に空間部を設け、該空間部内に螺子部を有する定着材を取り付けて定着部を形成した場合、定着部を容易に形成できる。
【0017】
さらに、本発明のコンクリート壁の構築構造は、前記構成の型枠パネルを、コンクリート型枠工法の型枠として用いるものであり、前述のように適宜に断熱材や化粧材を選定して様々な仕様のコンクリート壁を容易に且つ安価に構築することができる。
例えば化粧材として高強度の金属面材を用いることにより、コンクリートの打設圧力に抗する強度を備え、広い面積を備える壁体にも適用することができる。また、化粧材を兼ねる金属面材を用いてもよいため、表面に別途化粧材を配設する必要がなく、足場等を組めない敷地(施工場所)においても外壁の施工(工事)を行うことができ、型枠パネルをそのまま外装化粧として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本発明の型枠パネルの一実施例(第1実施例)を示す斜視図、(b)それに用いた化粧材を示す斜視図、(c)それに用いた断熱材を示す斜視図である。
【図2】(a)第1実施例の型枠パネルを並列した状態を示す斜視図、(b)その断面図、(c)接続された型枠を示す斜視図、(d)その断面図である。
【図3】(a)第1実施例の型枠パネルを用いた型枠構造を示す断面図、(b)用いた化粧材(定着部を備える)を示す断面図、(c)用いた化粧材(定着部を備えない)を示す断面図、(d)接続部A,Dの接続構造を示す拡大断面図、(e)接続部B,Cの接続構造を示す拡大断面図である。
【図4】(a)本発明の型枠パネルの他の一実施例(第2実施例)の化粧材のみを示す断面図、(b)本発明の型枠パネルの他の一実施例(第3実施例)の化粧材のみを示す断面図、(c)本発明の型枠パネルの他の一実施例(第4実施例)の化粧材のみを示す断面図、(d)本発明の型枠パネルの他の一実施例(第5実施例)の化粧材のみを示す断面図、(e)本発明の型枠パネルの他の一実施例(第6実施例)の化粧材のみを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の型枠パネルは、断熱材の表面に化粧材が配設されてなり、前記化粧材の裏面側には、螺子部を有する定着部を形成し、該定着部へ断熱材の裏面側から棒状部材を螺合させて連結することができる。
【0020】
前記型枠パネルを構成する断熱材、化粧材は、それぞれ別々に成形されるものであって、適宜に選択して所望の構成とすることができる。例えば型枠パネル全体の強度やその他の特性を所望のレベルに設定しようとすれば、これらの断熱材、化粧材を適宜に選択して所望の特性を得ることができる。
以下に、断熱材、化粧材について、それぞれ説明する。
【0021】
前記断熱材としては、各種素材の断熱材を適用することができ、例えば合成樹脂製ボートに限らず木製ボードでもよく、また単層でも複層でもよく、異なる材質の複層構成でもよい。そのため、難燃性、不燃性等の機能性ボード材を用いてもよく、また厚み等についても何等制限がなく、どのような断熱材を用いてもよい。
【0022】
この断熱材には、表裏面に貫通する貫通孔が所定間隔で開孔され、該貫通孔に棒状部材が挿通可能であることが望ましい。この場合、貫通孔に棒状部材を突き立てた状態で型枠パネルを敷設することができ、所定位置に敷設した後に、棒状部材を締め付ければよく、連結作業を極めて簡易に実施できる。また、この断熱材の表面又は裏面側に、コンクリートの打設圧を補強するための補強板を適宜に設けてもよい。
【0023】
前記化粧材としては、特に素材や成形法を限定するものではないが、例えばアルミ等の押出型材を用いることが望ましく、特にその厚みを限定するものではないが、おおよそ厚みは1.2〜1.6mm以上であって、コンクリート打設圧等の多少の応力が作用しても面が歪んだり変形することがない強度を有するものがより望ましい。但し成形上の問題からこの押出型材からなる化粧材は、幅200mm程度までの成型品となるため、通常1m近い幅に成形される前記断熱材に対して複数枚の化粧材を添設するものとなる。
また、この化粧材としては、一種の化粧材を用いてもよいし、二種(以上)の化粧材を用いてもよく、二種(以上)の場合には、その幅が異なるものでもよい。但し、製造や管理の観点から三種以上の化粧材を用いる仕様は極めて特殊であるため、以降は一種又は二種の化粧材を用いるものとして説明する。二種の化粧材を用いるとしても、各化粧材に空間部を設ける必要はなく、少なくとも一方のみに設ければよい。即ち二種の化粧材を用いる場合には、一方の化粧材には空間部を設け、他方の化粧材には空間部を設けない仕様が多い。
そして、この化粧材は、一体の断熱材に対して一枚の化粧材を添設してもよいが、押出型材からなる場合には前述の成形幅の問題から、一体の断熱材に対して複数枚の化粧材を添設するので、一体の断熱材に対し、一種の化粧材を複数枚添設するか、一体の断熱材に対し、二種の化粧材を一枚ずつ、或いは複数枚添設するものとなる。
【0024】
また、化粧材は、仕上げ面となる面板部の両端、即ち少なくとも対向する一対の端縁(例えば上下、左右)に接続可能な接続部を備え、該接続部は、係合又は嵌合によって接続する。化粧材が押出型材からなる場合には、この接続部にも高い強度及び弾性が付与されるため、係合又は嵌合等の組付状態が弾性的に安定に維持され、容易に接続することができる。
二種の化粧材を用いる場合にも、それぞれの化粧材に設ける接続部は同一でもよいし、異なる構成でもよい。
なお、前記面板部は、仕上げ面となるので、略平坦状でもよいし、適宜に意匠性(化粧性)を付したものでもよく、特にその形状を限定するものではない。
【0025】
次に、前記面板部の裏面側に設ける定着部について説明する。
この定着部は、棒状部材を螺合させる螺子部を備えるものであればよく、雌螺子部でも雄螺子部でもよい。
・定着部が雌螺子部を有し、棒状部材が雄螺子部を有する場合;
定着部は、後述する図示実施例のように六角ナット、四角ナットなどの角ナットや複数の雌螺子部を螺設した板状材を定着材として配置したもの、或いは被重合片を厚肉にしてタップ加工(雌ねじ加工)を施したものでもよい。その場合の棒状部材は、棒状のボルト材等を用いる。なお、前述のように化粧材を押出型材にて成形する場合には、厚肉の被重合片を成形する態様にも容易に対応できる。
・定着部が雄螺子部を有し、棒状部材が雌螺子部を有する場合;
定着部は、空間部の外側(=断熱材側)にボルトを立設されるもの(溶接等による固着)、孔からボルトを立設したものでもよい。その場合の棒状部材は、少なくともその先端に雌ねじ加工を施したもの、或いは筒状の部材等が用いられる。
特に好ましくは、後述する図示実施例のように面板部の裏面側に、側方が開放する空間部を設け、該空間部内に定着部として、汎用のナットを用いた構成、即ち雌螺子部を備える構成であり、その場合、棒状部材としてボルト材を用いることができ、更に汎用のナットの頭部は角形であるため、棒状部材(ボルト材)の取付に際して供回り(自転)が防止されるものとなる。
また、後述する図示実施例のように面板部の裏面側に、側方又は裏面側が開放する略矩形状の空間部を設け、該空間部内に螺子部を有する定着材を取り付けて定着部を形成してもよい。この場合の定着材としては、雌螺子部を備える定着材として、前述の六角ナット、四角ナットなどの角ナットや複数の雌螺子部を螺設した板状材が挙げられ、雄螺子部を備える定着材として、前述のボルト等が挙げられる。なお、前述のように化粧材を押出型材にて成形する場合には、定着材の保持(包持)強度も高いものとなる。
【0026】
続いて、前記断熱材の裏面側から前記定着部の螺子部に螺合させて連結する棒状部材について説明する。
この棒状部材は、前記定着部の螺子部に螺合する螺合受部を有する構成であり、定着部がナット等のように雌螺子部を有する場合には、この棒状部材として雄螺子部を備えるボルト材等を用いればよく、後述する図示実施例のように間隔保持部材(セパレータ)の一部を兼ねるものであってもよい。また、定着部がボルトを立設した雄螺子部を有する場合には、この棒状部材として雌螺子部を備える筒状部材等を用いればよい。
また、後述する図示実施例では、鍔状材(押さえ部材)を備える構成であるが、この鍔状材の有無、形状等は特に限定するものではない。また、鍔状材を用いる場合であっても、必ずしも全ての棒状部材に用いる必要はなく、所定の列や隅部等の任意の位置に用いるものでもよい。即ち化粧材と断熱材の一体化手段の仕様や強度、或いは全体の強度等に応じて適宜に設ければよい。
【0027】
また、これらの各部材をそれぞれ配設してなる本発明の型枠パネルは、以下の成形工程、一体化工程、接続工程により製造される。なお、一体の断熱材に一種の化粧材を複数取り付ける場合には、接続構造は一種であるが、ここでは一体の断熱材にそれぞれ異なる接続部を備える二種の化粧材を各2枚ずつ、合計4枚を取り付ける例を示す。
【0028】
・成形工程
まず、化粧材については、定着部を備える化粧材(便宜的に第1化粧材とする)と備えない化粧材(便宜的に第2化粧材とする)との二種の化粧材を用い、各化粧材の両端に、隣接する端縁の接続部と接続するように成形する。即ち第1化粧材の一方側の接続部Aは、第2化粧材の他方側の接続部Dと接続可能とし、第1化粧材の他方側の接続部Bは、第2化粧材の一方側の接続部Cと接続可能とする。これらの接続部A,D、接続部B,Cが、係合又は嵌合にて接続される場合、弾性係合部又は弾性嵌合が形成される。
また、第1化粧材の裏面側には定着部が設けられているので、該定着部にナット等の定着材を収容して定着部とする。なお、定着材のズレや分離が懸念される際には、適宜接着剤などを用いて接着しておくようにしてもよい。
一方、断熱材については、後述する図示実施例のように単層の場合には、化粧材の空間部を断熱材側へ設け、該空間部(を形成する外郭部分)を嵌め込む凹部を設けることにより、化粧材のズレ等を生ずることがなく配設できる。
【0029】
・一体化工程
前記断熱材の表面に、前記二種の化粧材を並列状に敷設するが、二種の化粧材の各接続部の態様により、適宜に組み合わせて接続すればよい。
なお、断熱材と化粧材とは、型枠パネルの使用に際して分離したりズレたりしない程度に一体化するが、その手段を限定するものではなく、例えば面板部裏面を断熱材表面と接着してもよいし、爪等によるものでもよい。或いは後述する図示実施例では、棒状部材に鍔状材を取り付けて断熱材を押さえる(挟着する)役割を果たすので、それまでの仮止めであってもよい。また、接着して一体化する場合には、使用する接着剤や接着面(全面接着に限らず部分接着でもよい)について何等限定するものではない。
【0030】
・接続工程
前記接続部A,D、接続部B,Cの接続構造については、係合又は嵌合によって接続されるものとすると、前述のように特に化粧材が押出型材からなる場合には、組付状態が弾性的に安定に維持され、弾性係合部又は弾性嵌合部を形成する。そして、一体の断熱材上には、二種の化粧材を各2枚ずつ、合計4枚を取り付けるので、一体の断熱材上には、一つの接続部A,Dの接続構造と二つの接続部B,Cの接続構造とが形成されるものとなる。
【0031】
これらの工程より製造される本発明の型枠パネルは、断熱材の表面に金属面材等の二種の化粧材を合計4枚配設してなる構成であり、隣接する型枠パネルを接続する際には、断熱材上の第1化粧材の一方側の接続部Aと、隣接する断熱材上の第2化粧材の他方側の接続部Dとを、接続すればよい。この接続は、前述の断熱材表面での第1化粧材及び第2化粧材の接続と全く同様である。
【0032】
さらに、本発明のコンクリート壁の構築構造は、前記構成の型枠パネルを、コンクリート型枠工法の型枠として用いるものであり、前述のように適宜に断熱材や化粧材を選定して様々な仕様のコンクリート壁を容易に且つ安価に構築することができる。そして、型枠パネルの裏面側からノロが漏れ出そうとしても、面板部の裏面側に設けた定着部がその漏れ出しを防止できるので、コンクリートの打設後に面倒な処理や仕上げ作業を必要とすることがなく、そのまま外装材として用いることができる。
【実施例1】
【0033】
本発明の型枠パネル1は、二種の化粧材2I,2II、断熱材3からなり、図1〜図3に示す第1実施例では一体の断熱材3の表面にそれぞれ二枚ずつの化粧材2I,2IIが合計4枚添設(接着)されて一体化されてなる構成であり、化粧材2Iの裏面側に設けた定着部は、略コ状の空間部23に六角ナット4Aを取り付けて形成している。なお、図1、図2(a),(c)、及び図3では、下面側が表面側で、上面側が裏面側であり、図2(b),(d)では、上面側が表面側で、下面側が裏面側である。
【0034】
前記化粧材2I,2IIのうち、図3(b)に示す化粧材2Iは、仕上げ面となる面板部21の裏面側に空間部23を備える構成である。
前記化粧材2Iは、図3(b)に示すように面板部21の略中央に略T字状に表面側へ突出する突条211が設けられ、対向する端縁には接続部22A,22Bが設けられる形状構成を有するアルミの押出型材である。そして、その一方側(図面左側)の接続部22Aに隣接して側方(図面左側)が開放する空間部23が形成されている。なお、詳しくは前記空間部23は、面板部21から延在する部分と、裏面側へ突出するように形成された略L字状片とで囲まれる略コ字状の空間を指す。また、前記接続部22Aは、表面側へ突出する略π字状部分の内側に形成される係合溝221と、前記空間部23の裏面側を構成する略L字状片から更に裏面側へ突出する突出片222とを備える構成である。他方側(図面右側)の接続部22Bは、表面側へ隆起する段部(段差)を介して略逆T字状に成形され、詳しくは、表面側へ突出する先端が屈曲されている係止片223と、外側へ向かう横片224とを備える構成である。
前記化粧材2IIは、図3(c)に示すように面板部21の構成は前記化粧材2Iとほぼ同様であり、同一符号を付して説明を省略するが、対向する端縁には接続部22C,22Dが設けられる形状構成を有するアルミの押出型材である。そして、その一方側(図面左側)の接続部22Cは、表面側へ隆起する段部(段差)を介して設けられ、詳しくは、表面側へ突出する略π字状部分の内側に形成される係合溝225と、略受皿状の受片226とを備える構成である。他方側(図面右側)の接続部22Dは、略逆J字状に成形され、詳しくは、表面側へ突出する係止片227と、裏面側へ突出する部分(突出部分229)の内側に形成される係合溝228とを備える構成である。
【0035】
前記断熱材3は、図1(c)に示すように単層の硬質ポリウレタンフォームである合成樹脂発泡面材を用い、その表面には、化粧材2Iの空間部23(を形成する外郭部分)及び化粧材2IIの突出部分229を嵌合(遊嵌)する凹部31,31',31"が形成された構成である。この第1実施例では、前述のように一体の断熱材3に二種の化粧材2I,2IIを二枚ずつ取り付けるので、略中央に空間部23及び突出部分229を嵌合する窪み状の凹部31が、一方側(図面左側)の端縁に空間部23を嵌合する隅部状の凹部31'が、他方側(図面左側)の端縁に突出部分229を嵌合する隅部状の凹部31"が設けられている。なお、図示しないが、これらの凹部31,31'を表裏に貫通する貫通孔が設けられている。
【0036】
そして、前記断熱材3の表面に、前記二種の化粧材2I,2IIを並列状に敷設して接続するには、化粧材2I,2IIの各面板部21を断熱材3の表面に接着すると共に、化粧材2Iの一方側の接続部22Aを、化粧材2IIの他方側の接続部22Dと係合させ、化粧材2Iの他方側の接続部22Bは、化粧材2IIの一方側の接続部22Cと係合させる。
詳しくは前記接続部22A,22Dの接続は、図3(d)に示すように接続部22Aの係合溝221に接続部22Dの係合片227を上方から係合させると共に接続部22Aの突出片222を接続部22Dの係合溝228に上方から係合させて接続する。
また、前記接続部22B,22Cの接続は、図3(e)に示すように接続部22Bの係止片223を、接続部22Cの係合溝225へ上方からねじり込むように係合させて接続し、接続部22Bの横片224を、接続部22Cの受片226上に沿わせる。なお、係合溝225を形成する外側片には楔状の係止片が設けられ、係止片223の先端を係止する状態で安定な係合状態が得られる。
このように前記化粧材2I,2IIの接続は、何れも二点係合によるものであって、各面板部21を断熱材3の表面に接着する構成と相俟って弾性的に係合するものとなる。
こうして断熱材3の表面に二種の化粧材2I,2IIを合計4枚配設してなる構成の型枠パネル1が形成される。
【0037】
前記型枠パネル1には、空間部23が二箇所に設けられ、該空間部23には、螺子部を備える六角ナット4Aである定着材が取り付けられて定着部を形成している。
そのため、図2及び図3(a)に示すように、棒状のボルト材である棒状部材5Aを前記定着部4Aへ断熱材3の裏面側から螺合させて連結することができる。この棒状部材5Aとしては、セパレータと称される間隔保持用部材を用いた。
この間隔保持部材は、先端が前記空間部223内の角ナット4Aの図示しない螺子部に螺合する棒状部材雄5Aに、鍔状材5bを介して合成樹脂製の筒状部材5cが連結された構成であり、更に前記筒状部材5cより大径の中間連結部5dを介して内部に図示しない棒状部材が配された筒状部材(図示せず)が連結され、他方側の型枠に至る構成である。そして、この間隔保持部材は、前記中間連結部5dにて分割可能であり、コンクリートの打設後には、他方側の棒状部材(図示せず)を抜き取って再利用することができ、熱橋の形成を防止することができる。
【0038】
このように一体化される第1実施例の型枠パネル1は、棒状部材5Aを空間部23内の定着材4Aの螺子部41に取り付けて連結することができ、コンクリート打設工法における型枠として用いることができる。
しかもコンクリートの打設空間から棒状部材5Aを伝ってノロが空間部23に浸入しても、この空間部23は面板部21の裏面側に設けたので、ノロの漏れ出しを防止でき、面板部21を汚すことがなく美麗に保持することができるため、面倒な処理や仕上げ作業を必要とすることがなく、そのまま外装材として用いることができる。
【0039】
また、この第1実施例では、角ナットである六角ナット4Aを定着材として空間部23に取り付けて定着部として用いたので、定着材として汎用のナットを用いることができ、しかも頭部が角形であるため、棒状部材5Aの取付に際して供回り(自転)が防止される。
【0040】
また、この第1実施例では、断熱材3に、表裏面に貫通する貫通孔が所定間隔で開孔され、該貫通孔に棒状部材5Aが挿通可能であるので、貫通孔に棒状部材5Aを突き立てた状態で型枠パネル1を敷設することができ、所定位置に敷設した後に、棒状部材5Aを締め付ければよく、連結作業を極めて簡易に実施できる。
【0041】
また、この第1実施例では、面板部21から略T字状に突出する突条211が設けられた,縦縞状の仕上げ面が得られるので、この突条211を機能的又は意匠的に利用するようにしてもよい。
【0042】
図4(a)に示す第2実施例では、押出型材からなる二種の化粧材を用いる点では、前記第1実施例と同様であるが、それぞれ左右対称形に成形された化粧材2III,2IVを用い、一方の化粧材2IIIに設けられる空間部23iiiは、面板部21iiiの略中央から表面側へ突出する矩形状部の裏面側に形成され、裏面側が開放する形状を有する。
前記化粧材2IIIは、対向する端縁に接続部22E,22Eが設けられている。この接続部22Eは、楔片の位置は異なるものの、前記第1実施例の接続部22Cの係合溝225とほぼ同様である。
前記化粧材2IVは、面板部21ivの略中央に略T字状に表面側へ突出する比較的広幅状の突条212が設けられ、対向する端縁に接続部22F,22Fが設けられている。この接続部22Fは、先端の屈曲方向は異なるものの、前記第1実施例の接続部22Bの係止片223とほぼ同様である。
したがって、前記二種の化粧材2III,2IVを並列状に敷設して接続するには、化粧材2III,2IVの各面板部21iii,21ivを断熱材3の表面に接着すると共に、化粧材2IIIの接続部22Eを、化粧材2IVの接続部22Fと係合させればよく、前記第1実施例における接続部22B,22Cの係合と全く同様に行うことができる。
【0043】
この第2実施例からも明らかなように、本発明における空間部23iiiの形成位置は、端縁に限定されるものではなく、面板部21iiiの略中央に設けてもよく、端縁の接続部22E,22Eとは全く独立して形成することができる。
また、この第実施例では、突条212の幅と空間部23iiiの幅とを略同一としたので、表面側から見て同一幅の縦縞が等間隔で形成された意匠の化粧面となる。
【0044】
図4(b)に示す第3実施例では、押出型材からなる一種の化粧材2Vをのみを用いる例であり、この化粧材2Vに設けられる空間部23vは、図面右側の端縁に形成される接続部22Hに隣接して設けられ、表面側へ突出する矩形状部の裏面側に形成され、裏面側が開放する形状を有する。
前記化粧材2Vは、面板部21vの略中央に略T字状に表面側へ突出する比較的細幅状の突条213が設けられ、対向する端縁に接続部22G,22Hが設けられている。そして、接続部22Gは、前記第2実施例の接続部22Fとほぼ同様であり、接続部22Hは、前記第2実施例の接続部22Eとほぼ同様である。
したがって、前記一種の化粧材2Vのみを並列状に敷設して接続するには、化粧材2Vの面板部21vを断熱材3の表面に接着すると共に、接続部22Gを、隣接する化粧材2Vの接続部22Fと係合させればよく、前記第2実施例における接続部22E,22Fの係合と全く同様に行うことができる。
【0045】
この第3実施例からも明らかなように、一種のみの化粧材2Vを用いてもよく、その種類を限定するものではない。
また、この第3実施例では、突条213の幅と空間部23の幅とでコントラストを付けたので、表面側から見て異なる二種の縦縞が等間隔で形成された意匠の化粧面となる。
【0046】
図4(c)に示す第4実施例では、押出型材からなる二種の化粧材2VI,2VIIを用いる点では、前記第1,第2実施例と同様であり、化粧材2VIIに設けられる空間部23viiは、図面右側の端縁に形成される接続部22Lに隣接して設けられ、表面側へ突出する矩形状部の裏面側に形成され、裏面側が開放する形状を有する。
前記化粧材2VIは、面板部21viの略中央に略T字状に表面側へ突出する比較的細幅状の突条213が設けられ、対向する端縁に接続部22I,22Jが設けられている。そして、接続部22Iは、第2実施例の接続部22Fや第3実施例の接続部22G等とほぼ同様であり、接続部22Jは、第2実施例の接続部22Eとほぼ同様である。
前記化粧材2VIIは、面板部21viiの略中央に略T字状に表面側へ突出する比較的細幅状の突条213が設けられ、対向する端縁に接続部22K,22Lが設けられている。そして、接続部22Kは、第2実施例の接続部22Fや第3実施例の接続部22G、更には前記接続部22Iとほぼ同様であり、接続部22Kは、前記第3実施例の接続部22Hとほぼ同様である。なお、この化粧材2VIIは、前記第3実施例の化粧材2Vと基本構成は同一であるが、面板部21vii等の長さが異なる。
したがって、前記二種の化粧材2VI,2VIIを並列状に敷設して接続するには、化粧材2VI,2VIIの各面板部21を断熱材3の表面に接着すると共に、接続部22K,22Iを、接続部22J,22Lと係合させればよく、前記第2実施例における接続部22E,22Fの係合や第3実施例における接続部22G,22Hの係合などと全く同様に行うことができる。
【0047】
この第4実施例では、二種の化粧材2VI,2VIIを使用するものの、これらの化粧材2VI,2VIIの形状は、空間部23viiを備えるか否かで相違するに過ぎないので、押出型材を成形するための金型を作成する費用を安価に抑えることができるという利点がある。
【0048】
図4(d)に示す第5実施例では、押出型材からなる二種の化粧材2VIII,2IXが、前記第1実施例における化粧材2I,2IIと形状構成がほぼ同様である。
前記化粧材2VIIIは、前記第1実施例における化粧材2Iとほぼ同様の形状構成を有し、同様に面板部21viiiの一方側(図面左側)の端縁に接続部22Aが設けられ、他方側(図面右側)の端縁に横片224が設けられない接続部22B'が設けられ、面板部21viiiの裏面側に空間部23が設けられ、面板部21viiiが幅狭である点が異なり、それ以外は図面に同一符号を付して説明を省略する。
前記化粧材2IXは、前記第1実施例における化粧材2IIとほぼ同様の形状構成を有し、同様に面板部21ixの端縁に他方側(図面右側)の端縁に接続部22Dが設けられ、一方側(図面左側)の端縁に受片226が設けれない接続部22C'が設けられ、面板部21ixがかなり幅広であり、表面側へ突出する突条211が二箇所に設けられる点が異なり、それ以外は図面に同一符号を付して説明を省略する。
したがって、前記二種の化粧材2VIII,2IXを並列状に敷設して接続するには、前記第1実施例と全く同様に化粧材2VIII,2IXの面板部21viii,21ixを断熱材3の表面に接着すると共に、接続部22A,22D並びに接続部22B',22C'とをそれぞれ弾性的に係合させればよい。
【0049】
この第5実施例では、二種の化粧材2VIII,2IXを使用するものの、これらの化粧材2VIII,2IXの形状は、前記第1実施例における化粧材2I,2IIと面板部21viii,21ixの寸法、及び接続部22B',22C'の一部構成が異なるに過ぎないので、前記第1実施例とほぼ同様の効果を奏し、しかも押出型材を成形するための金型を作成する費用を安価に抑えることができるという利点がある。
【0050】
図4(e)に示す第6実施例では、押出型材からなる二種の化粧材2X,2XIが、前記第1実施例における化粧材2I,2IIと比較的形状構成が相似しているが、空間部23xは第1実施例の空間部23より面板部21xの内側に設けられる構成である。
前記化粧材2Xは、面板部21xの略中央に略T字状に表面側へ突出する突条211が設けられ、対向する端縁に接続部22M,22Nが設けられている。接続部22Mは、第1実施例の接続部22Aとほぼ同様であり、表面側へ突出する略π字状部分の内側に形成される係合溝221と、前記空間部23xの裏面側を構成する略L字状片から更に裏面側へ突出する突出片222とを備える構成である。接続部22Nは、横片224が設けられない以外は第1実施例の接続部22Bとほぼ同様である。
前記化粧材2XIは、面板部21xiの略中央に略T字状に表面側へ突出する突条211が設けられ、対向する端縁に接続部22O,22Pが設けられている。そして、接続部22Oは、受片226が設けられない以外は第1実施例の接続部22Cとほぼ同様であり、接続部22Pは、第1実施例の接続部22Dとほぼ同様であり、略逆J字状に成形され、詳しくは表面側へ突出する係止片227と、裏面側へ突出する部分(突出部分229)の内側に形成される係合溝228とを備える構成である。
【0051】
この第6実施例では、空間部23xが面板部21xと接しておらず、断熱材3の内部側に位置しているため、その内部に配置させる定着材(六角ナット)4Aがコンクリート打設空間側から押圧されても面板部21xに痕を残すことがない。
【符号の説明】
【0052】
1 型枠パネル
2I,2II 化粧材
21 面板部
22A〜22D 接続部
23 空間部
3 断熱材
31,31',31" 凹部
4A 定着材
5A 棒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧材と、該化粧材の内側に添設する断熱材とからなる型枠パネルであって、
前記化粧材は、仕上げ面となる面板部と、該面板部の両端に形成した接続部と、前記面板部の裏面側に形成した螺子部を有する定着部とを有し、
隣接する化粧材同士は係合又は嵌合によって接続可能であって、コンクリート打設空間内に配設される棒状部材を、断熱材の裏面側から前記定着部の螺子部に螺合して連結することができることを特徴とする型枠パネル。
【請求項2】
化粧材は押出型材からなることを特徴とする請求項1に記載の型枠パネル。
【請求項3】
面板部の裏面側に空間部を設け、該空間部内に螺子部を有する定着材を取り付けて定着部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の型枠パネル。
【請求項4】
断熱材の内側は、棒状部材に係止する押さえ部材によって規制されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の型枠パネル。
【請求項5】
少なくとも一方の型枠として、請求項1〜4の何れか一項に記載の型枠パネルを用いたことを特徴とするコンクリート壁体の構築構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19243(P2013−19243A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155625(P2011−155625)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000253400)舩木商事有限会社 (16)