説明

埃叩き出し具

【課題】自動車のシートや肘掛けのあるソファーに好適な埃叩き出し具に関し、自動車のシートのサイドサポート部やソファーの肘掛の境目の窪んだ部分の埃も容易に叩き出すことができ、また打ちつけたときに叩き面がシート面に平らに当って埃を満遍なく叩き出すことが可能な、構造が簡単で取扱いが容易な埃叩き出し具を提供する。
【解決手段】柄2と握り4と叩き面3とを備え、撓み変形可能な弾性を有する杆材で形成した柄2の先端に当該杆材を屈曲して叩き面3を形成した埃叩き出し具において、柄2と叩き面3との連接部に、杆材が下方に屈曲された下方屈曲部6と、当該杆材が握り4の下方に向く方向に屈曲された戻り屈曲部7と、当該戻り屈曲部から反握り側へ両外側に円弧状に屈曲されて叩き面の周縁に連なる反転屈曲部8とを備え、前記戻り屈曲部7が叩き面3の中央部に位置し、かつ柄2と叩き面3との間に段差が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、布団、ソファー、自動車のシート、じゅうたんなどの内部から埃を叩き出す埃叩き出し具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
藤蔓を屈曲して叩き面と柄とを一体に形成した布団叩き具は、古くから広く用いられている。この布団叩き具は、図6、7に示すように、内側にループ10を有するハート型の叩き面3と、この叩き面から直線的に伸びる柄2とを備えており、柄の基端(反叩き面側)に藤蔓を巻き付けた握り4が形成されている。この布団叩き具の柄2は、図7の側面視に示すように、叩き面3と同一平面状に直線的に伸びている。
【0003】
図6、7に示す布団叩き具に対して、平らに置かれた布団やじゅうたんの面を叩くときに、握り4を握っている手が邪魔になって、叩き面3を叩こうとする布団やじゅうたんの面(以下「叩かれ面」という)に平らに叩きつけることができないという問題点が指摘されている。
【0004】
この問題点を解決するために、下記特許文献1には、柄に対して叩き面に角度をつけた布団叩き具が示されている。また特許文献2には、杆材を屈曲して形成したものではないが、叩き面から斜め上方に伸びる柄を備えた吸塵式マット叩きが示されている。
【0005】
更に特許文献3には、柄の先端側(叩き面側)を下方に屈曲し、その先端に叩き面を角度をつけて設けることによって、叩き面と柄との間に段差を設けた布団たたきが提案されている。
【0006】
また、他の構造として、直線的に伸びる柄の先端から下方に分岐ないし屈曲された枝管ないし屈曲管を設けて、その先端に球状ないし半球状の叩き体を取り付けた布団叩き器具が特許文献4に提案されている。
【特許文献1】実開平3‐128051号公報
【特許文献2】実開平7‐12061号公報
【特許文献3】特開平9‐322877号公報
【特許文献4】実開平6‐24666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車の車内の清掃をするとき、車内のシートやじゅうたんは、一般家庭で用いられている吸引式の掃除機で埃を吸い取って掃除を行っている。しかし、吸引式の掃除機で吸い取っただけでは、清掃をした後、日光の下でシート面を叩くと細かい埃が舞い上がるのが分かるなど、シートやじゅうたんの内部に侵入している埃を吸い取ることができず、車内を十分清潔にすることができない。
【0008】
従って、車内の清潔を保持するためには、清掃の際に車内のシートやじゅうたんを前述した布団叩き具などの埃叩き出し具で叩いて、内部に侵入している埃を叩き出す必要がある。
【0009】
しかし、柄が叩き面と同一面上で伸びている図6、7の布団叩きはもちろん、柄が叩き面から斜めに伸びている埃叩き出し具では、例えば両側にサイドサポート部のある自動車のバケットシートの座面の窪みの部分や、ソファーの肘掛に近い座面の部分等に、叩き面を平らに打ち付けることができず、これらの部分の埃の叩き出しをうまく行うことができない。
【0010】
更に、柄と叩き面との間に段差をつけた従来構造の埃叩き出し具を用いても、シートの肘掛やサイドサポート部に隣接する座面の隅の部分に叩き面をうまく当てることができず、この部分の埃をうまく叩き出すことができない。
【0011】
すなわち、自動車のシートを叩く際には、ダッシュボードや前席の背もたれが邪魔になって、前方から座面を叩くことができず、側方から叩こうとすると、座面の両側にあるサイドサポート部に埃叩き出し具の柄が当り、座面の窪んだ部分、特にサイドサポート部との境目の部分に埃叩き出し具の叩き面を当てることができないのである。
【0012】
更に従来の埃叩き出し具、特に上記特許文献2や特許文献4に示された構造のものでは、叩き面をシート面に平らに当てるように叩かないと、叩き面が片当りして埃を満遍なく叩き出すことができないという問題がある。
【0013】
そこで、この発明は、自動車のシートやソファーの座面と肘掛やサイドサポート部との境目の窪んだ部分の埃も容易に叩き出すことができ、また打ちつけるときの叩き面の角度に狂いがあっても、打ちつけたときに叩き面がこれらの窪んだ部分のシート面に平らに当って埃を満遍なく叩き出すことが可能な、構造が簡単で取扱いが容易な埃叩き出し具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決したこの出願の請求項1の発明に係る埃叩き出し具は、柄2と握り4と叩き面3とを備え、撓み変形可能な弾性を有する杆材で形成した柄2の先端に当該杆材を屈曲して叩き面3の少なくとも周縁部を形成した埃叩き出し具において、柄2と叩き面3との連接部に、前記杆材が下方に円弧状に屈曲された下方屈曲部6と、当該杆材が握り4の下方に向く方向に円弧状に屈曲された戻り屈曲部7と、当該戻り屈曲部から反握り側へ両外側に円弧状に屈曲されて叩き面の周縁に連なる反転屈曲部8とを備え、前記戻り屈曲部7が叩き面3の中央部に位置し、かつ柄2と叩き面3との間に段差が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
この出願の請求項2の発明は、上記手段を備えた埃叩き出し具において、前記柄2と叩き面3との連接部が各独立に撓み変形可能に分離された左右の前記杆材で形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
ここで撓み変形可能な弾性を有する杆材は、藤蔓、竹、樹脂、金属線材、これらの複合材などの曲げ方向に弾性変形可能な直径2〜10mm程度の棒材で、例えば直径4〜6mmの太さに樹脂被覆されたアルミニウム線材などが好適である。叩き面3は、これらの杆材を屈曲して柄2と一体に形成するのが好ましい。叩き面3の周縁をこれらの杆材を屈曲して柄2と一体に形成し、その周縁の内側に紐や網を張って叩き面3を形成することもできる。
【0017】
下方屈曲部6は、柄から下方、すなわち叩き面3側へと屈曲する部分である。戻り屈曲部7は、下方屈曲部6と連続して下向きから柄2の基端側へと屈曲する部分である。反転屈曲部8は、柄の基端側へと向く方向から外側に曲げられて、更に先端側(反握り側)へと屈曲する部分である。この反転屈曲部から先端側へと伸びる杆材によって、叩き面3の周縁を形成することができる。
【0018】
そして、図4に示すように、下方屈曲部6と戻り屈曲部7により、柄2と叩き面3との間に、シートの座面12などを叩くときに、肘掛やサイドサポート部13と柄2との干渉を避けるための段差が形成される。また、戻り屈曲部7と反転屈曲部8により、叩き面3と柄2の連接部が叩き面3の中央部に位置することとなり、叩き面3がその中央部を中心にして柄2に対して前後方向に撓み揺動可能になる(図4の想像線参照)。
【0019】
請求項2に示す構造においては、上記屈曲部6、7、8を形成した柄2と叩き面3との連接部において、柄2から叩き面3の周縁へと連なる杆材が左右、すなわち叩き面3の幅方向に分離されて、各独立に撓み変形可能である。この構造によれば、図5に想像線で示すように、連接部の2本の杆材の独立した上下方向の撓みにより、叩き面3がシートの座面12の傾きに応じて柄2の捻じれ方向に変形可能である。
【0020】
すなわち、前述した請求項1の構造により、叩き面3がその中央部を中心として前後方向に撓み揺動可能で、かつ請求項2の構造により、左右方向にも撓み揺動可能となるため、叩いたときに叩かれ面12から受ける反力によって、叩き面3が叩かれ面12と平行になる方向に撓むこととなり、曲面となった、あるいは窪みとなった叩かれ面12に叩き面3を満遍なく当てることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の構造の埃叩き出し具によれば、自動車のシートやソファーの肘掛やサイドサポート部の付け根にある座面の深い窪みの部分にも、その叩かれ面に叩き面を平らにして叩くことができる。また、叩かれ面と叩き面との間に前後方向の角度差があっても、叩いたときの反力に伴う連接部の弾性撓みにより、叩き面3が柄2との連接部を中心にしてシーソのように揺動して叩かれ面に平らに打ち付けられる。
【0022】
更に請求項2の構造によれば、叩かれ面と叩き面との間に柄2に対する捻じれ方向の角度差があっても、叩き面3の左右の面に段差が付くように叩き面3が撓み変形して、叩き面3が叩かれ面に均一に打ちつけられる。
【0023】
従って、この発明の埃叩き出し具により、窪みや肘掛ないしサイドサポート部のあるソファーや自動車のシートなどの内部に侵入している埃を能率よく、かつ隅々まで叩き出すことができる。そして、この発明の埃叩き出し具と吸引式の掃除機とを併用することにより、ソファーやシートのある室内ないし車内を十分清潔に清掃することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1ないし図3は、この発明の埃叩き出し具の好ましい形態の一例を示した図で、図1は斜視図、図2は平面図、図3は側面図である。図に示した埃叩き出し具は、1本の杆材1を屈曲成形することにより、柄2と叩き面3とを形成し、別体で形成した握り4の軸方向の2個の孔に柄2を形成している2本の杆材の基端を嵌入して固定した構造である。
【0025】
柄2は、先端(叩き面側)に向けて間隔が若干広がる方向に伸びる2本の杆材で形成されており、その中間位置で下方(叩き面側)にわずかにへの字状に屈曲されている。柄2と叩き面3との連接部には、柄2の先端から円弧状に下方に曲がる下方屈曲部6と、これに連続して更に握り4の下方側へと円弧状に曲がる戻り屈曲部7とが一連の半円弧状にして設けられている。
【0026】
戻り屈曲部7から握り4の下方へと伸びた杆材は、叩き面3の手前端(握り側の端部)で両外側、かつ前方へと半円状に屈曲された反転屈曲部8を経て叩き面3の周縁3aへと繋がっている。
【0027】
図の例では、反転屈曲部8から前方に伸びた叩き面周縁の杆材は、叩き面3の前端部で内側へと半円状に屈曲された前端屈曲部9を経て、叩き面3の内側にループ部10を形成している。
【0028】
反転屈曲部8及びそれから前方に伸びる叩き面周縁3a並びに前端屈曲部9及びループ部10は、同一平面状にある。図の例では、戻り屈曲部7から反転屈曲部8に伸びる部分Aも叩き面3と同一の面上に位置しているが、この部分を斜め上方に傾斜させて設けてループ部10を叩き面後端側に伸ばした形状とすることもできる。また、ループ部10を複数個設けた構造とすることもできる。更にループ部10を設けないで周縁3aの間に紐や網を張り渡して叩き面を形成してもよいが、一般的には製造が面倒で、コスト高になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の埃叩き出し具の一例を示す斜視図
【図2】図1の埃叩き出し具の平面図
【図3】図1の埃叩き出し具の側面図
【図4】使用時のサイドサポート部と柄の関係及び叩き面の前後方向の撓み揺動を示す説明図
【図5】使用時の叩き面の左右方向の撓み揺動を示す説明図
【図6】公知の布団叩き具の平面図
【図7】図6の布団叩き具の側面図
【符号の説明】
【0030】
2 柄
3 叩き面
4 握り
7 戻り屈曲部
8 反転屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄(2)と握り(4)と叩き面(3)とを備え、撓み変形可能な弾性を有する杆材で形成した柄(2)の先端に当該杆材を屈曲して叩き面(3)の少なくとも周縁部を形成した埃叩き出し具において、
柄(2)と叩き面(3)との連接部に、前記杆材が下方に円弧状に屈曲された下方屈曲部(6)と、当該杆材が握り(4)の下方に向く方向に円弧状に屈曲された戻り屈曲部(7)と、当該戻り屈曲部から反握り側へ両外側に円弧状に屈曲されて叩き面の周縁に連なる反転屈曲部(8)とを備え、前記戻り屈曲部(7)が叩き面(3)の中央部に位置し、かつ柄(2)と叩き面(3)との間に段差が形成されていることを特徴とする、埃叩き出し具。
【請求項2】
前記柄(2)と叩き面(3)との連接部が各独立に撓み変形可能に分離された左右の前記杆材で形成されていることを特徴とする、請求項1記載の埃叩き出し具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−93110(P2008−93110A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276758(P2006−276758)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(305052001)
【Fターム(参考)】