説明

埋込型器具及び埋込型器具の取り付け方法

【課題】部品点数を少なく抑え、より低コストで、ボード(501)の裏側の空間高さが低くても取り付けが可能な埋込型器具(50)を提供する。
【解決手段】孔(502)が形成されたボード(501)の第1の面(501b)側から孔(502)に挿入されて、第1の面(501b)の裏面である第2の面(501a)側に設置される。その設置された状態で第2の面(501a)と対向する第3の面(101bt)と、第3の面(101bt)の裏面である第4の面(101a)とを有する略矩形形状のベース(101)と、ベース(101)の第4の面(101a)側に取り付けられた電気部品または電子部品(102)と、を備える。ベース(101)は、一対の対向辺(101ta,101tb)の中間部における互いに対向する位置に、それぞれ第3の面(101bt)側から抉られてなる薄肉部(301a,301b)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込型器具及び埋込型器具の取り付け方法に係り、特に、天井や壁などのボードの裏側の空間の高さが低い場合でもそのボードへの取り付けが可能となる埋込型器具及び埋込型器具の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホール、イベント会場、スーパーマーケット等、所定の広さを有する屋内空間には、館内放送システムが設置される。
館内放送システムは、音声送出装置と天井のボードに取り付けられた複数のスピーカとを備え、音声送出装置からのBGM、各種の一般アナウンス等の通常放送、災害時の非常用放送などの音声信号を、スピーカから音声として出力する。
【0003】
館内放送システムで使用されるスピーカの一例として、天井埋込型スピーカが知られている。
天井埋込型スピーカは、スピーカユニットと回路等とを有し、天井のボードの下面側である屋内空間側から、スピーカユニットの外形形状に対応した形状でボードに形成された孔を通して、ボードの上面側である天井裏に取り付けられるようになっている。
【0004】
また、照明ユニットと回路等とを有し、天井埋込型スピーカと同様に、天井ボードの下面側である屋内空間側から、照明ユニットの外形形状に対応した形状で天井ボードに形成された孔を通して、ボードの上面側である天井裏に取り付けられるようになっている天井埋込型照明器具も知られている。
【0005】
以下、このような、天井などのボードに形成された孔を通過させてボードの裏側に設置され、屋内空間側に対し、孔を介して音声出力や照明などの作用をする器具を、埋込型器具と称することとする。
この埋込型器具の一例として、特許文献1に記載された埋込型照明器具が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−158465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された埋込型照明器具は、天井などのボードの裏側空間の高さが低い場合にも取り付けができるようにするために、光源を有する器具本体に対して、安定器などを収納した点灯装置部が軸部を介して首振り可能とされた埋込型器具である。
【0008】
しかしながら、この特許文献1に記載された埋込型器具は、器具本体と点灯装置部とを相対的に回動させる機構を有することから部品点数が多くなっており、部品点数が少なくすることが望まれるものである。
また、この埋込型器具は、器具本体を支持した際に、点灯装置部の重量を自由に回動できる状態で軸部のみで支えなければならないので、軸部には回動方向に対する高い強度を付与しなければならない。
従って、強度向上のためにコストアップになる可能性が高く、より低コストとなることが望まれるものである。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、部品点数を少なく抑え、より低コストで、ボードの裏側の空間の高さが小さい場合にも取り付けが可能な埋込型器具及び埋込型器具の取り付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本願発明は手段として次の1)〜4)の構成と5)及び6)の手順とを有する。
1) 孔(502)が形成されたボード(501)の第1の面側(501b)から前記孔(502)に挿入されて、前記第1の面(501b)の裏面である第2の面(501a)側に設置される埋込型器具において、
前記第2の面(501a)側に設置された状態で前記第2の面(501a)と対向する第3の面(101bt)と、前記第3の面(101bt)の裏面である第4の面(101a)とを有する略矩形形状のベース(101)と、
前記ベース(101)の前記第4の面(101a)側に取り付けられた電気部品または電子部品(102)と、を備え、
前記ベース(101)は、一対の対向辺(101ta,101tb)の中間部における互いに対向する位置に、それぞれ前記第3の面(101bt)側から抉られてなる薄肉部(301a,301b)を有することを特徴とする埋込型器具(50)である。
2) 孔(502)が形成されたボード(501)の第1の面(501b)側から前記孔(502)に挿入されて、前記第1の面(501b)の裏面である第2の面(501a)側に設置される埋込型器具において、
前記第2の面(501a)側に設置された状態で前記第2の面(501a)と対向する第3の面(101bt)と、前記第3の面(101bt)の裏面である第4の面(101a)とを有する略矩形形状のベース(101)と、
前記ベース(101)の前記第4の面(101a)側に取り付けられた電気部品または電子部品(102)と、を備え、
前記ベース(101)は、前記埋込型器具を前記孔(502)に挿入する際の先頭側の辺(101s2)と対向する辺(101s)側の一対の隅部が、それぞれ前記第4の面(101a)側から抉られてなる鍔部(403a,403b)とされていることを特徴とする埋込型器具(50)である。
3) 孔が形成されたボード(501)の第1の面(501b)側から前記孔(502)に挿入されて、前記第1の面(501b)の裏面である第2の面(501a)側に設置される埋込型器具において、
前記第2の面(501a)側に設置された状態で前記第2の面(501a)と対向する第3の面(101bt)と、前記第3の面(101bt)の裏面である第4の面(101a)とを有する略矩形形状のベース(101)と、
前記ベース(101)の前記第4の面(101a)側に取り付けられた電気部品または電子部品(102)と、を備え、
前記ベース(101)は、前記埋込型器具を前記孔(502)に挿入する際の先頭側の辺(101s2)と対向する辺(101s)側の一対の隅部が、それぞれ前記第4の面(101a)側から抉られてなる鍔部(403a,403b)とされると共に、前記先頭側の辺(101s2)を含まない一対の対向辺(101ta,101tb)の中間部における互いに対向する位置に、それぞれ前記第3の面(101bt)側から抉られてなる薄肉部(301a,301b)を有していることを特徴とする埋込型器具(50)である。
4) 前記電気部品または電子部品は、スピーカ(102)であることを特徴とする1)乃至3)のいずれかに記載の埋込型器具(50)である。
5) 孔(502)が形成されたボード(501)の第1の面(501b)側から前記孔(502)に挿入されて、前記第1の面(501b)の裏面である第2の面(501a)側に設置される埋込型器具であり、
前記第2の面(501a)側に設置された状態で前記第2の面(501a)と対向する第3の面(101bt)と、前記第3の面(101bt)の裏面である第4の面とを有する略矩形形状のベース(101)と、前記ベース(101)の前記第4の面(101a)側に取り付けられた電気部品または電子部品(102)と、を備え、前記ベース(101)は、前記埋込型器具を前記孔(502)に挿入する際の先頭側の辺(101s2)と対向する辺(101s)側の一対の隅部が、それぞれ前記第4の面(101a)側から抉られてなる鍔部(403a,403b)とされると共に、前記先頭側の辺(101s2)を含まない一対の対向辺(101ta,101tb)の中間部における互いに対向する位置に、それぞれ前記第3の面(101bt)側から抉られてなる薄肉部(301a,301b)を有している埋込型器具(50)を前記第2の面(501a)に設置する埋込型器具の取り付け方法であって、
前記埋込型器具(50)を前記第1の面(501b)に対して傾斜させた状態で前記先頭側の辺(101s2)を前記孔(502)に挿入する第1のステップと、
前記第1のステップの後、前記埋込型器具(50)の前記孔(502)への挿入を進めて、前記薄肉部(301a,301b)に対応する抉られた空間内に、前記孔(502)の縁部である前記第2の面(501a)の一部を進入させる第2のステップと、
前記第1のステップの後、前記埋込型器具(50)の前記孔(502)への挿入を進めて、前記隅部に対応する抉られた空間内に、前記孔(502)の縁部である前記第1の面の一部を進入させる第3のステップと、を含むことを特徴とする埋込型器具の取り付け方法である。
6) 前記第2のステップと前記第3のステップとが同時に行われることを特徴とする5)に記載の埋込型器具の取り付け方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、埋込型器具について、部品点数を少なく抑え、より低コストで、ボードの裏側の空間の高さが小さい場合にも取り付けが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図11を用いて説明する。
【0013】
実施例の埋込型器具は、ベース部材の一面側に電気部品または電子部品が設けられたもので、具体的には本体が天井裏へ配設されるよう天井ボード(以下、単にボードと称する)へ埋め込まれる天井埋込型スピーカ装置50である。以下、天井埋込型スピーカ装置50を単にスピーカ装置50と称する。また、ボードに対して天井裏とは反対側を、便宜的に屋内空間側とも称する。
【0014】
図1及び図2は、スピーカ装置50の側面図及び平面図であり、図2は、図1のスピーカ装置50を図の上方より見た図である。
【0015】
図1において、スピーカ装置50は、ベース部材101と、ベース部材101の一面側に取り付けられた略円錐台形状のスピーカユニット102と、を有する。
また、ベース部材101には、取り付けられたスピーカユニット102と同じ側に突出する降圧トランス回路収納部103が形成されている。
降圧トランス回路収納部103は、その内部空間に、電子部品を搭載した回路基板103a,降圧トランス103b,及び端子台103cなどの電気部品を収納している。
ベース部材101は、略矩形に形成されている。詳しくは、樹脂材により所定の厚さt1を有して扁平の略直方体に形成されている。
この厚さt1は、ベース部材101が比較的重量のある降圧トランス103bを安全に支持できる強度を有するように設定される。
【0016】
図2において、ベース部材101の4隅には、貫通孔201〜204が設けあれている。
この貫通孔201〜204は、スピーカ装置50をねじで固定する際などに利用できるように設けられた孔である。
【0017】
図1及び図2から明らかなように、スピーカユニット102と降圧トランス回路収納部とは、ベース部材101において、その長手方向に沿う中心線CL1上に並べて配設されている。
また、図2において、スピーカユニット102は、概ね円形であってその中心CLspがベース部材101の一方の短辺101sから距離Lspに位置するよう配設されている。
【0018】
ベース部材101は、その短辺101s側の両隅部に、肉厚がt1より薄い鍔部403a,403bを有している。
具体的には、短辺101s側の両隅部に、短辺101sに対して所定の角度αとなる段差部1a,1bが設けられており、この段差部1a,1bの外側がそれぞれ肉厚t2の鍔部403a,403bとなっている。
この実施例では、α=45°とされているので、鍔部403a,403bは、平面図である図2において概ね直角三角形の領域となっている。
段差部1a,1bと鍔部403a,403bとの間には、三角形状のリブ22が複数(実施例では各3つ)形成されており、鍔部403a,403bの曲げ強度を確保している。
【0019】
図3は、スピーカ装置50を図2における左手斜め上方から見た場合におけるベース部材101のみを示した斜視図である。
図3では、理解容易のため、鍔部403a,403bにハッチングを付して示している。
【0020】
この図3からわかるように、ベース部材101は、スピーカユニット102から出力された音声を外部に放出するために、放音孔部2とその周囲の複数の開口部101pとが、両者全体で概ね円形の開口となるように設けられている。
開口部101pの周囲には、4つのボス401a〜401dが立設されており、このボス401a〜401dにスピーカユニット102がねじ止めされる。
【0021】
図4は、スピーカ装置50を、図2における紙面反対側の左斜め下方から見た場合のベース部材101のみを示す斜視図である。
【0022】
図4から明らかなように、ベース部材101は、その長辺101ta,101tbに沿う一部分に肉厚がt1よりも薄い薄肉部301a,301bを有している。換言するならば、長辺101ta,101tbの中間部において互いに対向するように薄肉部301a,301bが形成されている。
さらに具体的には、薄肉部301a,301bは、放音孔部2と降圧トランス回路収納部103との間における長辺101側の領域において形成され、ベース部材101におけるスピーカユニット102が取り付けられる面とは反対側の面が凹となるように抉られて厚さt3(図1参照)で形成されている。ここで、t3<t1である。
図4では、理解容易のため、薄肉部301a,301bにハッチングを付して示している。
薄肉部301a,301bには、ベース部材の長手方向の曲げ剛性を確保するために、リブ23がそれぞれに形成されている。
【0023】
上述したスピーカ装置50は、例えば館内放送システムの音声送出装置(図示せず)に対して伝送ケーブル(図示せず)を介して接続され、音声送出装置から送られるBGM、各種の一般アナウンス等の通常放送、災害時の非常用放送などの音声信号を音声に変換して出力する。
この音声信号は、伝送ケーブルにおける伝送ロスを抑制するため、ハイインピーダンス方式で伝送される。従って、音声信号は降圧トランス103bを介してスピーカユニット102に入力される。
降圧トランス103bは回路基板103a上に実装されており、端子台103cにはスピーカユニット102と回路基板103aとを繋ぐスピーカケーブルと伝送ケーブルとが接続される。
【0024】
次に、上述したスピーカ装置50が天井裏に取り付けられた状態について図5を用いて説明する。
図5(a)は、天井裏から下方を見た平面図であり、図5(b)は側方から見た側面図である。図5(b)においては、スピーカ装置50は断面とせず、ボード501のみを図5(a)におけるS1−S1断面として示している。
【0025】
図5(a)及び図5(b)において、天井のボード501には、スピーカ装置50の取り付け孔502が形成されている。この実施例では取り付け孔502は円形である。
また、取り付け孔502の直径φ1は、スピーカ装置50の幅D1より大きく設定される。
そして、取り付け孔502はスピーカユニット102からの出力音声を通過させる放音孔としても機能する。
【0026】
図5(b)において、ボード501の上側の空間SPがいわゆる天井裏の空間であり、その上方に障害物503が存在する。
障害物503は、エアコン等の住宅設備のダクト若しくは配管、又は根太等の建築構造材などが相当する。
実施例では、便宜的にボード501の上面501aと障害物503の下面503aとが平行な面であるように示している。そして、ボード501の上面501aと障害物503の下面503aとの距離をH0としてある。
この距離H0が天井裏の空間の高さとなる。
【0027】
次にスピーカ装置50のボード501への取り付け(埋込)工程について説明する。
【0028】
埋込型スピーカ装置の取り付け作業においては、予め、音声送出装置からスピーカ取り付け位置近傍まで天井裏に伝送ケーブルを敷設する一方、天井のボード501の所定の位置に、所定の形状の取り付け孔502を穿設しておく。
【0029】
取り付け作業の準備段階については図示していないが、まず、ボード501に設けられた取り付け穴502から、伝送ケーブルを引き出す。
次に、端子台103cに伝送ケーブルを接続する。
この準備段階を終えたら、次に、スピーカ装置50を、長手方向の内の降圧トランス回路収納部103の側を先頭に、取り付け孔502から天井裏側へ斜めに挿入していく。
【0030】
図6にこの挿入途中の状態を示す。スピーカ装置50は、スピーカユニット102などを備えたベース部材101の上面101aをボード501側とする姿勢で傾斜させられて、短辺101s2側から取り付け孔502に挿入される。以下、この状態を第1段階と称することとする。
図6(a)は、側面図であり、この図における矢視Y1の模式図が図6(b)である。図6(b)においてボード501は取り付け孔502の直径位置での断面で示されている。
【0031】
図6(a)において、スピーカ装置50は矢印DR1方向に挿入されるが、挿入方向の先頭側においては、ベース部材101の長辺101ta,101tbにおける下面側の2箇所が、ボード501の取り付け孔102の上面501a側の縁部と接するようになる。両者の2つの接触点をP1とする。また、2つの接触点P1間の距離をDh1とする。
また、挿入方向後尾側においては、天井裏側に向けてスピーカユニット102が略円錐台形状で突出しているので、スピーカユニット102の外面における2箇所がボード501の取り付け孔502の下面501bの縁部と接するようになる。両者の2つの接触点をP2とする。また、2つの接触点P2間の距離をDh2とする。
【0032】
また、スピーカ装置50の挿入角度をボード501の上面501aを基準にθとし、スピーカ装置50の、ボード501の上面501aからの最大高さをHとすると、最大高さHは挿入の程度に応じて変化する。
具体的には、接触点P1間の距離Dh1は、円形の取り付け孔502に対して挿入される矩形のベース部材101の幅D1により決まり、挿入の程度によらず一定である。
一方、接触点P2間の距離Dh2は、挿入の程度でスピーカユニット102の突出形状に応じて変化する。
【0033】
このスピーカ装置50において、スピーカユニット102は、上述のように概ね円錐台形状に突出しているので、距離Dh2は、挿入の程度が進むに伴い増加し、スピーカユニット102の最大径に相当するところで最大となり、以降は減少する。
また、取り付け孔502において接触点間の距離Dh2は、孔の開口形状を円とみなした際の弦Phの長さに相当し、挿入の程度に伴い接触する位置が移動する。
一方、挿入に伴い、挿入角度θは、距離Dh1が一定であるから距離Dh2が最大のときに最大となる。
【0034】
スピーカ装置50は、少なくとも距離Dh2が最大となる挿入位置で、ベース部材101の接触点P1が、上述した薄肉部301a,301bが形成された領域に位置するようになっている。
従って、ベース部材101における接触点P1で接触する部位は、薄肉部301a,301bが形成されていない肉厚t1が一定の場合に比べてスピーカユニット102が設けられている上面101a側(天井裏側)に寄ることになる。
そのため、ボード501に対する挿入角度θは、薄肉部301a,301bで薄肉にした分だけ小さくなり、スピーカ装置50の埋込のために必要となるボード501の上面501a側空間の高さH0を小さくすることができる。
すなわち、空間の高さH0が小さい(低い)天井裏にも取り付けが可能となる。
また、ベース部材101とボード501とが接触しなくても、ボード501の取り付け孔502における上面501a側の縁部を、薄肉部301a,301bを形成するよう抉られた空間に進入させることで、進入させた分だけ挿入角度θが小さくなり、空間の高さH0が小さい(低い)天井裏にも取り付けが可能となる。
【0035】
図7は、この挿入角度θを小さくできることを説明する模式図である。
薄肉部301a,301bを有するスピーカ装置50を実線で示し、薄肉部301a,301bを有していないスピーカ装置150を破線で示している。
またボード501は、取り付け孔502の直径における断面として示している。
【0036】
この図7に示されるように、薄肉部301a,301bを設けたことで、スピーカ装置50における挿入角度θはθ1となり、スピーカ装置150における挿入角度θ11よりも小さくなることがわかる。
従って、スピーカ装置50におけるボード501の上面501aからの最大突出高さHはH1となり、スピーカ装置150における最大突出高さH11よりも小さくなる。
【0037】
ここでスピーカ装置50の挿入をよりスムーズにするために、薄肉部301a,301bにおいて取り付け孔502に接触点P1で接触する部位の壁面301a1,301b1を、図7(図4も参照)のように傾斜面とすることは好ましい。
【0038】
埋込作業における第1段階の後の、スピーカ装置50全体を天井裏に入れ込む作業を第2段階と称する。
第2段階は、スピーカ装置50において、スピーカ装置50側の接触点P2がスピーカユニット102からベース部材101へ移動した状態を示す。
【0039】
図8は、第2段階のスピーカ装置50を天井裏側から斜視的に見た図である。
【0040】
また、図9は、この挿入角度θを小さくできることを説明する模式図である。
図9では鍔部403a,403bを有するスピーカ装置50を実線で示し、鍔部403a,403bを有していないスピーカ装置150を破線で示している。またボード501は、取り付け孔502の直径における断面として示している。
【0041】
接触点P2は、長辺101ta,101tbにおける鍔部403a,403bの上面側に位置する。
従って、ベース部材101における接触点P2で接触する部位は、鍔部403a,403bが形成されていない肉厚t1が一定の場合に比べてスピーカユニット102が形成されていない下面101bt側(屋内空間側)に寄ることになる。
そのため、ボード501に対する挿入角度θは、鍔部403a,403bで薄肉にした分だけ小さくなり、スピーカ装置50の埋込のために必要となるボード501の上面501a側空間の高さH0を小さくすることができる。
すなわち、空間の高さH0が小さい(低い)天井裏にも取り付けが可能となる。
また、ベース部材101とボード501とが接触しなくても、ボード501の取り付け孔502における下面501b側の縁部を、鍔部403a,403bを形成するよう抉られた空間に進入させ、ボード501の取り付け孔502における上面501a側の縁部を、薄肉部301a,301bを形成するよう抉られた空間に進入させることで、それぞれが進入した分の加算分だけ挿入角度θが小さくなり、空間の高さH0がより小さい(低い)天井裏にも取り付けが可能となる。
【0042】
この図9に示されるように、鍔部403a,403bを設けたことで、スピーカ装置50における挿入角度θはθ2となりスピーカ装置150における挿入角度θ12よりも小さくなることがわかる。
従って、スピーカ装置50におけるボード501の上面501aからの最大突出高さHはH2となり、スピーカ装置150における最大突出高さH12よりも小さくなる。
鍔部403a,403bは、ベース部材101が長い程、突出高さを抑える効果が顕著に発揮される。
【0043】
また、変形例として、第1段階において接触点P1が薄肉部301a,301bに位置した後、この第2段階で接触点P2が鍔部403a,403bに位置するまで、接触点P1は継続して薄肉部301a,301bに位置するように形状を設定することは望ましい。
【0044】
この変形例について図10を用いて説明する。
【0045】
図10は、第1段階の後に、接触点P2がスピーカユニット102からベース部材101に移動して第2段階に移行するときについてボード501の下方(屋内空間側)から見上げたスピーカ装置50等の斜視図である。
【0046】
図10において、ベース部材101の後端部が矢印DR2方向に接触点P1を軸として回動すると、鍔部403a,403bの天井裏側の面が取り付け孔502の縁部に接触する。
これにより、接触点P1が薄肉部301a,301bに位置することで抑制できる天井裏空間の高さの抑制量と、接触点P2が鍔部403a,403bに位置することで抑制できる天井裏空間の抑制量とが加算されるので、最も望ましい。
【0047】
図11は、この挿入角度θを薄肉部301a,301b及び鍔部403a,403bを有することでより小さくできることを説明する模式図である。
薄肉部301a,301b及び鍔部403a,403bを有するスピーカ装置50を実線で示し、薄肉部301a,301b及び鍔部403a,403bを有していないスピーカ装置150を破線で示している。またボード501は、取り付け孔502の直径における断面として示している。
【0048】
この図11に示されるように、薄肉部301a,301b及び鍔部403a,403bを設けたことで、スピーカ装置50における挿入角度θ3の方がスピーカ装置150における挿入角度θ13よりもより小さくなることがわかる。
従って、スピーカ装置50におけるボード501の上面501aからの最大突出高さH3は、スピーカ装置150における最大突出高さH13よりもより小さくなる。
【0049】
そして、図11に示す位置から更にDR1方向にスピーカ装置50を挿入すると、ベース部材101の鍔部403a,403bが取り付け孔502内に入り込んで接触点P2が消滅する。
これにより、ベース部材101は完全に天井裏側へ収められ、その後ボード501上を挿入とは逆の方向に戻すように移動してスピーカユニット102が取り付け孔501と対向する所定の位置にて固定する。この状態が上述した図5(b)に示される。
【0050】
スピーカ装置50のボード501の固定は、図示しないスプリング部材を用い、その一端側をスピーカグリル(図示せず)に係止し、また他端側をスピーカ装置50に係止させ、スプリング部材のバネ力によりスピーカ装置50とスピーカグリルとでボード501を挟むようにして行われる。
【0051】
以上のように、スピーカ装置50は、ベース部材において、取り付け孔の天井裏側縁部と接触する部位に、天井裏側へ向かって抉って肉厚を薄くした薄肉部301a,301bを設けたので、スピーカ装置50を天井裏へ傾斜挿入する際の、天井裏側への突出高さを低くすることができる。
【0052】
また、ベース部材において、取り付け孔の屋内空間側縁部と接触する部位を屋内空間側に向けて抉って肉厚を薄くした鍔部403a,403bを設けたので、スピーカ装置50を天井裏へ傾斜挿入する際の、天井裏側への突出高さを低くすることができる。
従って、スピーカ装置50は、天井裏の空間高さが低くても、天井裏への取り付けが可能である。
ここで、ベース部材101とボード501とが接触しなくても、ボード501の取り付け孔502における下面501b側の縁部が、鍔部403a,403bを形成するよう抉られた空間に進入させることで、進入させた分だけ挿入角度θが小さくなり、空間の高さH0が小さい(低い)天井裏にも取り付けが可能となる。
【0053】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0054】
本発明の埋込型器具は、上述した実施例のスピーカ装置に限るものではない。
照明器具、カメラ装置、各種センサなど、いわゆる天井に埋め込んで使用する器具や装置に適用できるものである。
【0055】
また、被埋込部材として実施例では天井のボードを説明したが、これに限るものではない。
部屋や建物の壁面であってもよく、床面であってもよい。いずれにしても、本発明によれば、埋込作業で必要な、被埋込部材の裏側の空間の被埋込部材からの距離が小さくても、埋込ができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の埋込型器具の実施例を示す側面部である。
【図2】本発明の埋込型器具の実施例を示す平面図である。
【図3】本発明の埋込型器具の実施例におけるベース部材を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の埋込型器具の実施例におけるベース部材を説明するための他の斜視図である。
【図5】本発明の埋込型器具の実施例を埋め込んだ状態を説明するための図である。
【図6】本発明の埋込型器具の実施例を埋め込む作業における第1の状態を説明するための図である。
【図7】本発明の埋込型器具の実施例を埋め込む作業における第1の状態を説明するための模式図である。
【図8】本発明の埋込型器具の実施例を埋め込む作業における第2の状態を説明するための図である。
【図9】本発明の埋込型器具の実施例を埋め込む作業における第2の状態を説明するための模式図である。
【図10】本発明の埋込型器具の実施例を埋め込む作業における第2の状態の変形例を説明するための他の斜視図である。
【図11】本発明の埋込型器具の実施例を埋め込む作業における第2の状態の変形例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1a,1b 段差部
2 放音孔部
22,23 リブ
50 天井埋込型スピーカ装置(スピーカ装置)
101 ベース部材
101a 上面
101bt 下面
101p 開口部
101s 短辺
101ta,101tb 長辺
102 スピーカユニット
102p 接触点
103 降圧トランス回路収納部
103a 回路基板
103b 降圧トランス
103c 端子台
201〜204 貫通孔
301a,301b 薄肉部
401a〜401d ボス
403a,403b 鍔部
501 ボード
501a 上面
501b 下面
502 取り付け孔
503 障害物
503a (障害物の)下面
CLsp 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔が形成されたボードの第1の面側から前記孔に挿入されて、前記第1の面の裏面である第2の面側に設置される埋込型器具において、
前記第2の面側に設置された状態で前記第2の面と対向する第3の面と、前記第3の面の裏面である第4の面とを有する略矩形形状のベースと、
前記ベースの前記第4の面側に取り付けられた電気部品または電子部品と、を備え、
前記ベースは、一対の対向辺の中間部における互いに対向する位置に、それぞれ前記第3の面側から抉られてなる薄肉部を有することを特徴とする埋込型器具。
【請求項2】
孔が形成されたボードの第1の面側から前記孔に挿入されて、前記第1の面の裏面である第2の面側に設置される埋込型器具において、
前記第2の面側に設置された状態で前記第2の面と対向する第3の面と、前記第3の面の裏面である第4の面とを有する略矩形形状のベースと、
前記ベースの前記第4の面側に取り付けられた電気部品または電子部品と、を備え、
前記ベースは、前記埋込型器具を前記孔に挿入する際の先頭側の辺と対向する辺側の一対の隅部が、それぞれ前記第4の面側から抉られてなる鍔部とされていることを特徴とする埋込型器具。
【請求項3】
孔が形成されたボードの第1の面側から前記孔に挿入されて、前記第1の面の裏面である第2の面側に設置される埋込型器具において、
前記第2の面側に設置された状態で前記第2の面と対向する第3の面と、前記第3の面の裏面である第4の面とを有する略矩形形状のベースと、
前記ベースの前記第4の面側に取り付けられた電気部品または電子部品と、を備え、
前記ベースは、前記埋込型器具を前記孔に挿入する際の先頭側の辺と対向する辺側の一対の隅部が、それぞれ前記第4の面側から抉られてなる鍔部とされると共に、前記先頭側の辺を含まない一対の対向辺の中間部における互いに対向する位置に、それぞれ前記第3の面側から抉られてなる薄肉部を有していることを特徴とする埋込型器具。
【請求項4】
前記電気部品または電子部品は、スピーカであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の埋込型器具。
【請求項5】
孔が形成されたボードの第1の面側から前記孔に挿入されて、前記第1の面の裏面である第2の面側に設置される埋込型器具であり、
前記第2の面側に設置された状態で前記第2の面と対向する第3の面と、前記第3の面の裏面である第4の面とを有する略矩形形状のベースと、前記ベースの前記第4の面側に取り付けられた電気部品または電子部品と、を備え、前記ベースは、前記埋込型器具を前記孔に挿入する際の先頭側の辺と対向する辺側の一対の隅部が、それぞれ前記第4の面側から抉られてなる鍔部とされると共に、前記先頭側の辺を含まない一対の対向辺の中間部における互いに対向する位置に、それぞれ前記第3の面側から抉られてなる薄肉部を有している埋込型器具を前記第2の面に設置する埋込型器具の取り付け方法であって、
前記埋込型器具を前記第1の面に対して傾斜させた状態で前記先頭側の辺を前記孔に挿入する第1のステップと、
前記第1のステップの後、前記埋込型器具の前記孔への挿入を進めて、前記薄肉部に対応する抉られた空間内に、前記孔の縁部である前記第2の面の一部を進入させる第2のステップと、
前記第1のステップの後、前記埋込型器具の前記孔への挿入を進めて、前記隅部に対応する抉られた空間内に、前記孔の縁部である前記第1の面の一部を進入させる第3のステップと、
を含むことを特徴とする埋込型器具の取り付け方法。
【請求項6】
前記第2のステップと前記第3のステップとが同時に行われることを特徴とする請求項5記載の埋込型器具の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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