説明

培土及びこれを用いた緑化工法

【課題】 散水した水に含まれて流出するのを抑え、これによって設置箇所の汚れを少なくすることができる培土を提供すること。
【解決手段】 植物を植えるための植生基材と、植生基材の硬度を高める固化材とを含有する培土。この培土は、固化材としてリグニン系固化材及び石灰系固化材を含んでおり、リグニン系固化材については、植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれ、石灰系固化材については、植生機材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれている。このリグニン系固化材は、リグニン、その変性物などであり、石灰系固化材は石膏、消石灰、炭酸カルシウム、生石灰、製紙スラッジ、焼却灰、フライアッシュ類などである。この培土には、有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤を含有させて固化作用を更に高めことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の屋上などにおいて植栽物を植生するために用いる培土及びこれを用いた緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の屋上などで植栽物を植生するために用いる植生基材として、平板状のトレイ(例えば、合成樹脂から構成される)と、このトレイ内に収容された培土とから構成され、培土が団粒土及び粗骨材を主体として構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この植生基材においては、トレイ内に防根シートが配設され、この防根シートの上側に保持手段としての網体(例えば、合成樹脂から形成される)が配設され、防根シート及び網体を介してトレイ内に培土が収容され、この培土に植栽物が植生される。
【0003】
建造物の屋上などにおいて植栽物を植生するときには、植栽物を植生させた植生基材を建造物の屋上の施工場所まで運搬し、この屋上の設置箇所に支持具を所要の通りに設置し、これら支持具の上に植生基材を浮いた状態で設置固定し、このように施工して植生基材を屋上などに設置することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−325038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した植生基材を用いた施工では、次の通りの解決すべき問題が存在する。第1に、植栽物を植生させるためのトレイ、またこのトレイを支持するための支持具を必要とするために、建造物の屋上などに植栽物を植生する場合、支持具の上に多数のトレイを設置しなければならず、施工コストが高くなる。
【0006】
第2に、屋上などに植栽物を植生するには、予め別の場所にトレイを設置し、このトレイ内に防根シート及び網体を介して培土を収容して植栽物を栽培養生し、このように栽培養生した植栽物(換言すると、トレイ)を施工場所まで運搬しなければならず、それ故に、植栽物を栽培養生させるための栽培作業が煩雑となり、また一度に多くのトレイを運搬することができず、その運搬作業も煩雑で、運搬コストも高くなる。
【0007】
第3に、植栽物を植生するために培土に散水すると、散水した水が培土を含んで泥水としてトレイの底から流出し、この泥水によって屋上などの表面が汚れる。
本発明の目的は、散水した水に含まれて流出するのを抑え、これによって設置箇所の汚れを少なくすることができる培土を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、施工現場にて簡単に且つ容易に施工することができる緑化工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の培土は、植物を植えるための植生基材と、前記植生基材の硬度を高める固化材とを含有する培土であって、
前記固化材はリグニン系固化材及び石灰系固化材を含み、前記リグニン系固化材は、前記植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれ、前記石灰系固化材は、前記植生機材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の培土では、前記リグニン系固化材は、リグニン及びその変性物から選ばれる少なくとも一つであり、前記石灰系固化材は石膏、消石灰、炭酸カルシウム、生石灰、製紙スラッジ、焼却灰及びフライアッシュ類から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の培土では、有機高分子凝集剤を含有しており、前記有機高分子凝集剤は、前記植生基材100重量部に対して0.1〜0.8重量部含まれていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の培土では、天然高分子凝集剤を更に含有しており、前記天然高分子凝集剤は、前記植生基材100重量部に対して0.1〜0.5重量部含まれていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載の緑化工法は、請求項1〜4のいずれかに記載の培土を用い、この培土を所定領域に敷いて整地し、その後水を撒いて整地した培土を固化させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項6に記載の緑化工法は、請求項1〜4のいずれかに記載の培土を敷いて下層を整地し、この下層の上に苦土系固化材及びリグニン系固化材を含有する上層培土を敷いて整地し、前記苦土系固化材は、前記植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれ、また前記リグニン系固化材は、前記植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれていることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の請求項7に記載の緑化工法では、請求項5又は6の緑化工法において、整地した培土の上に更に表面層を形成し、前記表面層は、アルギン酸ソーダの水溶液にアルミニウム塩及びカルシウム塩から選ばれる少なくとも一つの金属塩の水溶液を散布することによって形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の培土によれば、固化材としてリグニン系固化材及び石灰系固化材を含んでいるので、リグニン系固化材及び石灰系固化材の相乗作用によって培土の固化作用が増大し、建造物の屋上などにおいて植栽物を好都合に植生することができる。また、リグニン系固化材については、植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部を含み、石灰系固化材については、植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部を含んでいるので、2種類の固化材の相乗効果によって固化作用が高められ、培土の充分な固化効果を得ることができる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の培土によれば、リグニン系固化材として、リグニン及びその変性物から選ばれる少なくとも一つを好都合に用いることができ、また石灰系固化材として石膏、消石灰、炭酸カルシウム、生石灰、製紙スラッジ、焼却灰及びフライアッシュ類から選ばれる少なくとも一つを好都合に用いることができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の培土によれば、有機高分子凝集剤を含有し、その含有割合が植生基材100重量部に対して0.1〜0.8重量部であるので、灌水時に水を吸収し易く、培土の固化を増強することができる。また、従来、施工初時の灌水時に濁水が流れやすかったが、この有機高分子凝集剤による凝集作用によって、濁水の流出を抑えることができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の培土によれば、天然高分子凝集剤を更に含有し、その含有割合が植生基材100重量部に対して0.1〜0.5重量部であるので、灌水時の吸水性及び施工後の初期における濁水流出抑制効果を一層高めることができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の緑化工法によれば、請求項1〜4のいずれかに記載の培土を用い、この培土を所定領域に敷いて整地し、その後水を撒いて培土を固化させることによって、屋上などの緑化施工を行うことができ、その施工作業が非常に簡単に且つ容易であり、またトレイなどを運搬するに比して容易に運搬することができ、その運搬作業なども容易である。
【0021】
また、本発明の請求項6に記載の緑化工法によれば、培土として下層及び上層の二層構造とし、下層として請求項1〜4のいずれかに記載の培土を用いるので、植栽物を植生させるための培土としての働きをこの下層に持たせることができる。また、上層として、苦土系固化材及びリグニン系固化材を含有する培土を用いているので、この上層培土においても2種類の固化材の相乗効果によって培土の固化作用が高められ、充分な固化効果を得ることができる。また、苦土系固化材については、植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれ、またリグニン系固化材については、植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれているので、充分な固化効果を得ることができる。更に、上層培土については、苦土系固化材を含んでいるので、この苦土系固化材による雑草抑制効果が得られ、施工後の培土の表面に雑草が生えにくなり、植栽物の管理が容易となる。
【0022】
更に、本発明の請求項7に記載の緑化工法によれば、培土の表面にアルギン酸ソーダの水溶液を散布した後にアルミニウム塩及びカルシウム塩から選ばれる少なくとも一つの金属塩の水溶液を散布するので、培土の表面に耐水被膜の表面層が形成され、この表面層によって耐浸食性を確保し、培土の流出を長期にわたって抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う培土及びこれを用いた緑化工法について説明する。図1は、本発明に従う緑化工法の一実施例により施工した状態の一部を示す断面図であり、図2は、本発明に従う緑化工法の他の実施例により施工した状態の一部を示す断面図である。
【0024】
図1において、図示の緑化基材1は、建造物の屋上のシンダーコンクリート2の上に施工されている。この緑化基材1は、保護シート4、見切りブロック6及び培土8を有している。建造物の屋上のシンダーコンクリート2の所定箇所に保護シート4が敷設され、この保護シート4の上に後述するように施工される。保護シート4は屋上の表面を保護するためのものであり、防水性を有する合成樹脂シートなどから構成される。
【0025】
この保護シート4の上面に見切りブロック6を所要の通りに設置し、これら見切りブロック6を設置することによって、その内側に植生空間Sを設ける。この植生空間Sは、保護シート4及び見切りブロック6により規定され、かかる植生空間Sに後述する培土8が収容されて植栽物10が植え付けられる。見切りブロック6は、例えばコンクリートブロック、レンガなどから構成される。
【0026】
植生空間S内の底部(即ち、保護シート4の上側)には、排水材12が配設される。排水材12は植生空間Sの培土8を通して底部まで流れてきた水を外部に排出するためのものであり、この排水材12を通して外部に導かれる。この排水材12は、例えば合成樹脂製の成形品、不織布マット、鉱物質の軽量骨材などから構成することができる。
【0027】
排水材12の上側に、防根シート14が配設される。この防根シート14は、植生した植栽物10の根が周囲に伸びないようにするためのものであり、排水材12の上面及び見切りブロック6の内面を覆うように設けられる。この防根シート14は、例えば、合成繊維などの網目の細かいシートなどから構成される。
【0028】
培土8は、排水材12及び防根シート14を介して植生空間Sに収容され、この培土8の表面に耐浸食性の表面層16が設けられる。これら培土8及び表面層16については、後述する。
【0029】
このよう施工された植生基材1の培土8に植栽物10が植え付けられる。植栽物10としては各種のもの、例えばキリンソウ、メキシコマンネングサ、タイトゴメ、ツルマンネングサ、タイム類、ローズマリー、コウライシバ、ノシバ、センチピードグラス、マツバギクなどであり、これらのなかでもキリンソウ、特に常緑キリンソウが望ましい。
【0030】
次に、この緑化基材1に用いる培土8について説明する。培土8は、植栽物10を植えるための植生基材と、この植生基材を固化させるための2種類の固化材、即ちリグニン系固化材及び石灰系固化材とを含有している。植生基材としては、例えば、火山灰土、真砂土、鹿沼土、赤玉土、ゼオライト、バーミュキュライト、堆肥類、ビートモスなどを用いることができ、これらを適当に混合して形成することができる。また、リグニン系固化材としては、リグニン及びその変性物(例えば、リグニンスルホン酸塩)から選ばれる少なくとも一つを用いることができ、石灰系固化材としては、石膏、消石灰、炭酸カルシウム、生石灰、製紙スラッジ、焼却灰及びフライアッシュ類から選ばれる少なくとも一つを用いることができる。植生基材1にリグニン系固化材及び石灰系固化材を含有させることによって、これら固化材による固化作用が高められ、培土12の固化が増大し、施工後の培土8の流出を抑えることができる。
【0031】
リグニン系固化材及び石灰系固化材は、それらの相乗効果によって固化作用の増大をえるために、それらをほぼ同量混合するのが望ましく、これら固化材(リグニン系固化材及び石灰系固化材)は、それぞれ、植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含有される。これら固化材のそれぞれの含有量が0.5重量部よりも少なくなると、植生基材に含まれる固化材が少なくなり過ぎ、それらの固化作用が低下して植生基材を充分に固化させることができず、またこれら固化材のそれぞれの含有量が3.0重量部を超えると、植生基材に含まれる固化材が多くなり過ぎ、培土8自体の成分が植栽物10を植生させるのに適さなくなる。
【0032】
この培土8には、有機高分子凝集剤を含有させるのが好ましい。有機高分子凝集剤としては、例えばポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系のものを用いることができ、このような有機高分子凝集剤を含有させることによって、灌水時に水を吸収して培土8に吸水性を持たせることができるとともに、施工後の初期における灌水時の濁水流出を抑えることができ、更には培土8の固化作用を高めることができる。この有機高分子凝集剤は植生基材に予め混合され、このように混合することによって、施工現場における施工作業が簡単に且つ容易となる。
【0033】
この有機高分子凝集剤は、植生基材100重量部に対して0.1〜0.8重量部含有させるのが好ましい。有機高分子凝集剤の含有量が0.1重量部より少なくなると、上述した吸水効果、濁水流出防止効果などが充分に得られなくなり、またその含有量が0.8重量部を超えると、多く混合したにもかかわらず吸水効果、濁水流出防止効果の向上の度合いが少なくなる。
【0034】
この培土8には、更に、天然高分子凝集剤を含有させるのが好ましい。天然高分子凝集剤としては、例えばアルギン酸、キトサンなどであり、このような天然高分子凝集剤を含有させることによって、灌水時の吸水性、施工後の初期における濁水流出抑制効果を高めることができる。この天然高分子凝集剤についても植生基材に予め混合され、このように混合することによって、施工現場における施工作業が簡単に且つ容易となる。
【0035】
この天然高分子凝集剤は、植生基材100重量部に対して0.1〜0.5重量部含有させるのが好ましい。天然高分子凝集剤の含有量が0.1重量部より少なくなると、上述した吸水効果、濁水流出防止効果などの向上がほとんど認められず、またその含有量が0.5重量部を超えると、多く混合したにもかかわらず吸水効果、濁水流出防止効果の向上の度合いが少なくなる。
【0036】
また、表面層16は、アルギン酸ソーダの水溶液を散布した後にアルミニウム塩及びカルシウム塩から選ばれる少なくとも一つの金属塩の使用液を散布することによって形成される。アルギン酸ソーダの水溶液に上述の金属塩の水溶液を散布すると、カルボキシル基と金属イオンによって物性が変化し、しっかりとしたゲル構造となり、このゲル構造によって表面層16が形成され、施工後においてはこのゲル構造が固化して耐水性の保護皮膜として機能する。
【0037】
表面層16の形成は、1〜4%のアルギン酸水溶液を生成し、このアルギン酸水溶液を1m当たり0.3〜0.5リットル散布するのが好ましく、この散布量が1m当たり0.3リットルより少ないと、表面層16の厚さが薄くなり、充分な耐水性の保護皮膜を形成するのができず、またこの散布量が1m当たり0.5リットルを超えると、表面層16の厚さが厚くなり過ぎる。またこの表面層16の形成は、0.5〜2.0%の特定金属塩(即ち、アルミニウム塩及びカルシウム塩から選ばれる少なくとも一つの金属塩)の水溶液を形成し、上述したアルギン酸水溶液の散布後にこの特定金属塩水溶液を1m当たり0.1〜0.3リットル散布するのが好ましく、この散布量が0.1リットルより少ないと、表面層16として所望のゲル構造の保護皮膜を形成することができず、またこの散布量が0.3リットルを超えると、特定金属塩水溶液を無駄に散布することになる。尚、この金属塩の水溶液に尿素、リン酸加里、キレート鉄などの葉面吸収性肥料を加えることにより、植栽物の生育や葉色を維持することができる。
【0038】
このような構造の緑化基材1は、例えば、次のようにして施工することができる。まず、建造物の屋上などのシンダーコンクリート2の上に保護シート4を敷設し(保護シート敷設作業)、敷設した保護シート4の上に見切りブロック6を所要の通りに設置し(ブロック設置作業)、このようにして保護シート4及び見切りブロック6によって、所望の植生空間Sを規定する。
【0039】
次いで、植生空間Sの底部に排水材12を敷設し(排水材敷設作業)、この排水材12の上に防根シート14を配設し(防根シート配設作業)、かかる防根シート14の上側(具体的には、防根シート14に囲まれた空間)に培土8を敷いて整地する(培土敷設整地作業)。この培土8には、上述したように、リグニン系固化材、石灰系固化材、有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤が含有されており、それ故に、施工現場においてかかる培土8を敷いて整地すればよく、その敷設整地を容易に行うことができる。
【0040】
その後、整地した培土8に水を散布する(水散布作業)。かくすると、散布した水がリグニン系固化材及び石灰系固化材に作用してこれら固化材が固化し、これら固化材による固化作用によって培土8が固化され、このようにして緑化基材1が形成される。また、このように水を散布すると、培土8中に含まれる有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤の働きによって、濁水の流出が抑制され、現場周囲が濁水により汚れるのを少なくすることができる。
【0041】
しかる後、このように形成された緑化基材1の培土8に植栽物10、例えば常緑キリンソウを植え付け、このようにして図1に示す通りに緑化施工することができる。このように施工した緑化基材1においては、培土8中の有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤の作用により、培土8の一部が濁水となって流れることがほとんどない。
【0042】
培土8の耐浸食性を高める場合には、更にその後、培土8の表面にアルギン酸ソーダ水溶液を散布し(アルギン酸ソーダ散布作業)、更に特定金属塩水溶液を散布する(金属塩散布作業)。かくすると、アルギン酸ソーダのカルボキシル基と特定金属イオンによって物性が変化し、培土8の表面にゲル構造層が形成され、施工後にこのゲル構造層が固化して表面層16が形成される。
【0043】
次に、図2を参照して、緑化工法の他実施例について説明する。この他の実施例では、培土が二層構造に構成されている。尚、図2において、図1と実質上同一のものには同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図2において、この実施例では、緑化基材1Aの培土8Aが、下側に敷かれる下層培土22と、この下層培土22の上側に敷かれる上層培土24とから構成されている。下層培土22としては、上述した培土と同様の成分のものを好都合に用いることができ、このような成分のものを下層培土22として用いることによって、下層培土22の固化効果とともに、保水性、濁水流出防止効果なども得ることができる。
【0045】
また、上層培土24としては、植栽物10を植えるための植生基材と、この植生基材を固化させるための2種類の固化材、即ちリグニン系固化材及び苦土系固化材とを含有している。植生基材としては、上述した培土と同様に、例えば、火山灰土、真砂土、鹿沼土、赤玉土、ゼオライト、バーミュキュライト、堆肥類、ビートモスなどを用いることができ、また、リグニン系固化材としては、リグニン及びその変性物(例えば、リグニンスルホン酸塩)から選ばれる少なくとも一つのものを用いることができる。また、苦土系固化材としては、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムなどを用いることができる。上層培土24に苦土系固化材、特に酸化マグネシウムを用いることによって、培土8Aの表面部における雑草の生育を抑制することができ、雑草の生え難い緑化基材1Aとして提供することができる。また、固化材として酸化マグネシウムを単独で用いた場合、上層培土24が脆くなるが、このように酸化マグネシウムとともにリグニン系固化材を併用することによって、上層培土24が脆くなるのが解消されるとともに、これら固化材の相乗効果によって固化作用が高められ、上層培土24の固化が増大される。
【0046】
リグニン系固化材及び苦土系固化材は、それらの相乗効果によって固化作用の増大を得るために、それらをほぼ同量混合するのが望ましく、これら固化材(リグニン系固化材及び苦土系固化材)は、それぞれ、植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含有される。これら固化材のそれぞれの含有量が0.5重量部よりも少なくなると、植生基材に含まれる固化材が少なくなり過ぎ、それらの固化作用が低下して植生基材を充分に固化させることができず、またこれら固化材のそれぞれの含有量が3.0重量部を超えると、植生基材に含まれる固化材が多くなり過ぎ、培土8自体の成分が植栽物10を植生させるのに適さなくなる。
【0047】
この上層培土22には、上述した実施例の培土と同様の培土を用いる下層培土22と同様に、有機高分子凝集剤を含有させるのが好ましく、更には天然高分子凝集剤を含有させるのが好ましい。有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤としては上述したと同様のものを上述したと同量含有させることができる。この実施例のその他の構成は、上述した実施例と実質上同一である。
【0048】
このような構造の緑化基材1Aは、例えば、次のようにして施工することができる。上述した実施例と同様に、建造物の屋上などのシンダーコンクリート2の上に保護シート4を敷設し(保護シート敷設作業)、敷設した保護シート4の上に見切りブロック6を所要の通りに設置し(ブロック設置作業)、更に植生空間Sの底部に排水材12を敷設し(排水材敷設作業)、排水材12の上に防根シート14を配設する(防根シート配設作業)。 次いで、防根シート14の上側に下層培土22を敷いて整地し(下層培土敷設整地作業)、この下層培土22の上側に上層培土24を敷いて整地する(上層培土敷設整地作業)。下層培土22(又は下層培土24)には、上述したように、リグニン系固化材、石灰系固化材、有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤(又はリグニン系固化材、苦土系固化材、有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤)が含有されており、それ故に、施工現場においてかかる下層培土22(又は上層培土24)を敷いて整地すればよく、その敷設整地を容易に行うことができ、かく整地した後に培土8Aの表面に水を散布する(水散布作業)。
【0049】
その後、上述したと同様に、培土8Aに強い耐浸食性を持たせたい場合には、植栽物10を植えた後に、培土8Aの表面にアルギン酸ソーダ水溶液を散布し(アルギン酸ソーダ散布作業)、更に特定金属塩水溶液を散布し(金属塩散布作業)、このようにして図2に示す通りの緑化基剤1Aを施工することができる。
【0050】
以上、本発明に従う培土及びこれを用いた緑化工法の実施例について説明したが、本発明はこれら実施例に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0051】
〔実施例及び比較例〕
図1の緑化基材における培土の固化程度を確認するために、次の通りの実験を行った。実施例1として、植生基材100重量部(火山灰土40重量部、バーク堆肥35重量部、ビートモス10重量部、鹿沼土15重量部)に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸カルシウム1.5重量部と、石灰系固化材として半水石膏1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例2として、実施例1と同様の成分の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸カルシウム1.5重量部と、石灰系固化材として消石灰1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例3として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、石灰系固化材として半水石膏1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例4として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、石灰系固化材として消石灰1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例5として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、石灰系固化材として半水石膏1.5重量部と、有機高分子凝集剤としてポリアクリルアミド系凝集剤(商品名:ラサフロック RA−51)0.15重量部を含有させて培土をつくった。また、実施例6として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、石灰系固化材として半水石灰1.5重量部と、天然高分子凝集剤としてアルギン酸ナトリウム0.15重量部とを含有させて培土をつくった。更に、実施例7として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、石灰系固化材として半水石膏1.5重量部と、有機高分子凝集剤として実施例5で用いたと同じポリアクリルアミド系凝集剤0.15重量部と、天然高分子凝集剤としてアルギン酸ナトリウム0.15重量部とを含有させて培土をつくった。
【0052】
これら実施例1〜7の培土20kgに水10リットルを均一に散水した後48時間経過したときに、これら培土のpHと土壌硬度を調べた。土壌pHについては、pH測定器(株式会社佐藤計量器製作所製、型番SK−620PH)を用いて調べ、また土壌硬度については硬度計(株式会社藤原製作所製、山中式普及型土壌硬度計)を用いて調べ、これらの測定結果は、表1に示す通りであった。
【0053】
【表1】

比較例1として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸カルシウム3.0重量部を含有させた培土をつくった。また、比較例2として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸ナトリウム3.0重量部を含有させた培土を、比較例3として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対して石灰系固化材として半水石膏3.0重量部を含有させた培土を、比較例4として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対して石灰系固化材として消石灰3.0重量部を含有させた培土を、比較例5として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対して有機高分子凝集剤として実施例5で用いたと同じポリアクリルアミド系凝集剤0.3重量部を含有させた培土を、更に比較例6として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対して有機高分子凝集剤として上述したポリアクリルアミド系凝集剤0.6重量部を含有させた培土を、更にまた実施例1と同様の植生基材のみからなる培土をつくった。
【0054】
これら比較例1〜7の培土についても、実施例1〜7と同様に、比較例1〜7の培土20kgに水10リットルを均一に散水した後48時間経過したときに、これら培土のpHと土壌硬度を上述したと同様にして調べ、これらの測定結果は、表1に示す通りであった。
【0055】
これらの実験結果から明らかなように、リグニン系固化材と石灰系固化材とを併用した実施例1〜7の場合、培土の土壌硬度が13.3以上となり、リグニン系固化材を単独で用いた比較例1及び2、また石灰系固化材を単独で用いた比較例3及び4よりも大きい値となり、従って、これらの固化材を併用することにより培土の硬度が増大することが確認できた。尚、石灰系固化材として消石灰を用いてリグニン系固化材と併用した場合、培土が強いアルカリ性を呈するが、石灰系固化材としての半水石膏を用いてリグニン系固化材と併用した場合、培土がほぼ中性を呈し、環境に優しい培土となった。
【0056】
また、有機高分子凝集剤のみを含有した実施例5並びに比較例5及び6においては、散水したときに濁水の発生がやや少なく、このことから有機高分子凝集剤を含有させることにより、濁水の発生を少なく抑えられることが確認できた。更に、有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤の双方を含有した実施例7においては、散水時の濁水の発生が少なく抑えられており、このことから有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤を含有させることにより、濁水の発生を更に少なく抑えることができ、また土壌硬度についても増大され最も高くなることが確認できた。
【0057】
また、図2の緑化基材における上層培土の固化程度を確認するために、次の通りの実験を行った。実施例8として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸カルシウム1.5重量部と、苦土系固化材として軽質の酸化マグネシウム1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例9として、実施例1と同様の成分の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸カルシウム1.5重量部と、苦土系固化材として重質の酸化マグネシウム1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例10として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、苦土系固化材として軽質の酸化マグネシウム1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例11として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、苦土系固化材として重質の酸化マグネシウム1.5重量部を含有させて培土をつくった。実施例12として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、苦土系固化材として軽質の酸化マグネシウム1.5重量部と、有機高分子凝集剤として実施例5で用いたと同じポリアクリルアミド系凝集剤0.15重量部を含有させて培土をつくった。また、実施例13として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、苦土系固化材として軽質の酸化マグネシウム1.5重量部と、天然高分子凝集剤としてアルギン酸ナトリウム0.15重量部とを含有させて培土をつくった。更に、実施例14として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対してリグニン系固化材としてリグニンスルホン酸マグネシウム1.5重量部と、苦土系固化材として軽質の酸化マグネシウム1.5重量部と、有機高分子凝集剤として上述したポリアクリルアミド系凝集剤0.15重量部と、天然高分子凝集剤としてアルギン酸ナトリウム0.15重量部とを含有させて培土をつくった。
【0058】
これら実施例8〜14の培土について、実施例1〜7と同様に、培土20kgに水10リットルを均一に散水した後48時間経過したときに、これら培土のpHと土壌硬度を上述したと同様に調べ、これらの測定結果は、表2に示す通りであった。
【0059】
【表2】

比較例8として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対して苦土系固化材として軟質の酸化マグネシウム3.0重量部を含有させた培土をつくった。また、比較例9として、実施例1と同様の植生基材100重量部に対して苦土系固化材として硬質の酸化マグネシウム3.0重量部を含有させた培土をつくった。
【0060】
これら比較例8及び9の培土についても、実施例1〜7と同様に、比較例8及び9の培土20kgに水10リットルを均一に散水した後48時間経過したときに、これら培土のpHと土壌硬度を上述したと同様にして調べ、これらの測定結果は、表2に示す通りであった。
【0061】
これらの実験結果を示す表2から明らかなように、リグニン系固化材と苦土系固化材とを併用した実施例7〜14の場合、培土の土壌硬度が12.0以上(最も低い一つを除くと、12.9以上)となり、リグニン系固化材を単独で用いた比較例1及び2、また苦土系固化材を単独で用いた比較例8及び9よりも大きい値となり、従って、これらの固化材を併用することにより培土の硬度が増大することが確認できた。尚、苦土系固化材として酸化マグネシウムを用いてリグニン系固化材と併用した場合、培土が弱アルカリ性を呈し、消石灰を用いた場合よりも環境に優しい培土となった。
【0062】
また、有機高分子凝集剤のみを含有した実施例12においては、散水したときに濁水の発生がやや少なく、このことから有機高分子凝集剤を含有させることにより、濁水の発生を少なく抑えられることが確認できた。更に、有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤の双方を含有した実施例14においては、散水時の濁水の発生が少なく抑えられており、このことから有機高分子凝集剤及び天然高分子凝集剤を含有させることにより、濁水の発生を更に少なく抑えることができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】緑化工法の一実施例により施工した状態の一部を示す断面図。
【図2】緑化工法の他の実施例により施工した状態の一部を示す断面図。
【符号の説明】
【0064】
1,1A 緑化基材
2 シンダーコンクリート
4 保護シート
6 見切りブロック
8,8A 培土
10 植栽物
12 排水材
14 防根シート
16 表面層
22 下層培土
24 上層培土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を植えるための植生基材と、前記植生基材の硬度を高める固化材とを含有する培土であって、
前記固化材はリグニン系固化材及び石灰系固化材を含み、前記リグニン系固化材は、前記植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれ、前記石灰系固化材は、前記植生機材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれていることを特徴とする培土。
【請求項2】
前記リグニン系固化材は、リグニン及びその変性物から選ばれる少なくとも一つであり、前記石灰系固化材は石膏、消石灰、炭酸カルシウム、生石灰、製紙スラッジ、焼却灰及びフライアッシュ類から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の培土。
【請求項3】
有機高分子凝集剤を含有しており、前記有機高分子凝集剤は、前記植生基材100重量部に対して0.1〜0.8重量部含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の培土。
【請求項4】
天然高分子凝集剤を更に含有しており、前記天然高分子凝集剤は、前記植生基材100重量部に対して0.1〜0.5重量部含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の培土。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の培土を用い、この培土を所定領域に敷いて整地し、その後水を撒いて整地した培土を固化させることを特徴とする緑化工法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の培土を敷いて下層を整地し、この下層の上に苦土系固化材及びリグニン系固化材を含有する上層培土を敷いて整地し、前記苦土系固化材は、前記植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれ、また前記リグニン系固化材は、前記植生基材100重量部に対して0.5〜3.0重量部含まれていることを特徴とする緑化工法。
【請求項7】
請求項5又は6の緑化工法において、整地した培土の上に更に表面層を形成し、前記表面層は、アルギン酸ソーダの水溶液にアルミニウム塩及びカルシウム塩から選ばれる少なくとも一つの金属塩の水溶液を散布することによって形成されることを特徴とする請求項5又は6に記載の緑化工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−291126(P2009−291126A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147665(P2008−147665)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508169487)株式会社北河技建工業 (1)
【Fターム(参考)】