説明

培地殺菌システム

【課題】ボイラー運転時のような騒音もなく、取扱いも容易で、燃料補充することなく高温水を得て、培地(土壌)を加熱殺菌することができる培地殺菌システムを提供する。
【解決手段】ハウス栽培施設に設けた高設栽培用の栽培ベッド5a,5b内の培地6中に埋設される循環配管3と、循環配管3の一端側が給湯口2a側に接続されると共に循環配管3の他端側が給水口2b側に接続され、ヒータへの通電により水を沸かして高温水を得る電気温水器2と、循環配管3の途中に設けた循環ポンプ4とを備え、循環ポンプ4の運転により電気温水器2で得られた高温水を循環配管3内で循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウス栽培施設に設けた高設栽培用の栽培ベッド内の培地を加熱殺菌する培地殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウス栽培施設で作物を連作すると、年々土壌(培地)に病原菌や病害虫が蓄積されて、いわゆる連作障害が起きる。このため、このような連作障害を防ぐために、従来は臭化メチルなどの薬剤を散布して土壌の殺菌(消毒)を行っていた。しかしながら、臭化メチルはオゾン層破壊物質の一つとして挙げられており、今後土壌を殺菌する際に臭化メチルなどが使用できなくなるため、近年、熱によって土壌(培地)を加熱殺菌する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1には、ハウス内の土壌中に埋設したパイプ内に温水または温液(エチレングリコール)を流し、土壌を温めることで加熱殺菌(消毒)を行う地中暖房装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−184828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1の発明では、石油またはガスを熱源とするボイラーによってパイプ内に流す温水または温液を得ている。
【0005】
しかしながら、ボイラーは運転時の騒音(ボイラーの点火音や燃焼音)が大きく、また、燃料(A重油や灯油)を補充する必要があり、取扱いが不便である。更に、ボイラーの燃料であるA重油や灯油も近年高騰しており、燃料代がかさんでコストが高いものとなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ボイラー運転時のような騒音もなく、取扱いも容易で、燃料補充することなく高温水を得て、培地(土壌)を加熱殺菌することができる培地殺菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明に係る培地殺菌システムは、ハウス栽培施設に設けた高設栽培用の栽培ベッド内の培地中に埋設される循環配管と、前記循環配管の一端側が給湯口側に接続されると共に前記循環配管の他端側が給水口側に接続され、発熱手段への通電により水を沸かして高温水を得る電気温水器と、前記循環配管の途中に設けた循環ポンプとを備え、前記循環ポンプの駆動により前記電気温水器で得られた高温水を前記循環配管内で循環させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る培地殺菌システムによれば、電気エネルギーのみを使用する電気温水器で培地を加熱殺菌するための高温水を得ることにより、従来用いられているボイラーのように運転時の騒音(ボイラーの点火音や燃焼音)が発生することはなく、また、燃料補充する必要がないので、取扱い性と安全性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る培地殺菌システムを示す概略図、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る培地殺菌システム1は、電気エネルギーによって高温水を得る周知の電気温水器2と、電気温水器2で得られた高温水が循環する循環配管3と、高温水を循環配管3内で循環させるための循環ポンプ4とを主要な構成部材として備えている。
【0011】
電気温水器2は、貯湯タンク(不図示)に供給された水を発熱手段としてのヒータ(不図示)への通電により沸かして、所定温度(例えば85℃程度)の高温水を貯えることができる。電気温水器2の給湯口2a側には循環配管3の一端側が接続され、電気温水器2の給水口2b側には循環配管3の他端側が接続されており、循環配管3の途中に設置した循環ポンプ4の運転によって、電気温水器2で得られた高温水が循環配管3を循環するように構成されている。
【0012】
循環配管3の途中部分は、高設栽培用の栽培ベッド(栽培槽)5a,5bに入れた培地6中に埋設されている。循環配管3としては、耐熱性と可撓性を有する例えばポリブテンパイプを用いることができる。なお、循環配管3の途中には、循環する高温水の流量を適切に調整する流量調整バルブ(不図示)や、循環する高温水の逆流を防止する逆止弁(不図示)などが設けられている。
【0013】
栽培ベッド5a,5bは、図2に示すように、ハウス栽培施設(不図示)内に設置したパイプ材からなる架台7によって地面8より高い位置に架設された高設栽培用のものであり、本実施形態では発泡スチロールによって成形されている。栽培ベッド5a,5bの底部側は中央部に向けて傾斜しており、底部には排出口9が設けられている。栽培ベッド5a,5bの内側表面には不織布(不図示)が取り付けられている。なお、本実施形態では、2つの栽培ベッド5a,5bを設置しているが、栽培ベッドの数はハウス栽培施設の大きさ等によって適宜設定され、それに応じて電気温水器2の能力等も変更するようにする。
【0014】
循環配管3は、栽培ベッド5a,5bの培地6中の深さ方向に対して略中央部に所定間隔を設けて並ぶようにして埋設されている。なお、前記した電気温水器2および循環ポンプ4は、栽培ベッド5a,5bと共にハウス栽培施設(不図示)内に設置されている。
【0015】
本実施形態に係る培地殺菌システム1は上記のように構成されており、先ず電気温水器2のスイッチ(不図示)をONしてヒータ(不図示)に通電し、貯湯タンク(不図示)に供給された水を加熱して所定温度(例えば85℃程度)の高温水を貯える。この際、割安な夜間電力を利用することにより、電気料金を抑えることができる。
【0016】
その後、循環配管3に設けた開閉バルブ(不図示)を開くと共に、循環ポンプ4を運転することにより、電気温水器2で得られた高温水が循環配管3を循環する。循環配管3は栽培ベッド5a,5bの培地6中に埋設されているので、循環配管3を循環する高温水H(図2参照)による熱によって培地6が加熱される。なお、循環配管3を通して電気温水器2に戻った高温水は少し温度が低下しているが、電気温水器2のヒータ(不図示)への通電によって再度加熱され、常に略一定温度(例えば85℃程度)の高温水が循環配管3を循環する。これにより、培地6の温度が上昇する。
【0017】
また、図3に示すように、この時に栽培ベッド5a,5bの上に保温用シート10を被せて培地6を覆っておくことにより、培地6の表面から熱が逃げることが防止され、循環配管3を循環する高温水Hによって培地6の全域をより効果的に加熱することができる。
【0018】
電気温水器2で得られた高温水の温度が85℃程度の場合、20時間程この高温水を循環配管3内で連続して循環させたところ、培地6は65〜75℃程度の温度に数時間保持された。これにより、栽培ベッド5a,5bに入れられている培地6が加熱殺菌され、連作障害を引き起こす青枯れ病原菌などの各種病原菌を死滅させることができる。
【0019】
このように、本発明の実施形態に係る培地殺菌システム1によれば、電気エネルギーのみを使用する電気温水器2で培地6を加熱殺菌するための高温水を得ることにより、従来用いられているボイラのように運転時の騒音(ボイラーの点火音や燃焼音)が発生することはなく、また、燃料補充する必要がないので、取扱い性と安全性が大幅に向上する。
【0020】
また、割安な夜間電力を利用して電気温水器2で予め所定温度(例えば85℃程度)の高温水を貯えて、この高温水を循環配管3内で循環させることにより、高温水の循環時における電気温水器2の消費電力を大幅に抑えることができる。更に、電気温水器2は、電気エネルギーのみを使用し、ボイラーで使用するような燃料(A重油や灯油)は一切使用しないので、燃料費が掛からずコストの低減を図ることができる。
【0021】
また、高温水を循環させる循環配管3は、ハウス栽培施設内に設置される高設栽培用の栽培ベッド5a,5bの培地6中に埋設されるので、循環配管3の埋設作業を作業性よく容易に行うことができる。更に、電気温水器2は、取扱いが簡単で、かつ安全性も高く、しかも設置スペースも小さくて済むので、この電気温水器2および循環ポンプ4を含む培地殺菌システム1全体をハウス栽培施設内に容易に設置することが可能となる。
【0022】
また、前記した実施形態に係る培地殺菌システム1の循環配管3の途中に混合三方弁や温度調整部材を設けることにより、循環配管3に温水(例えば30〜40℃程度)を循環させることも可能となるので、冬期における栽培ベッド5a,5bの培地6の加温、または、ぬるま湯灌水を行うこともできる。
【0023】
なお、前記した実施形態に係る培地殺菌システム1は、高温水を循環させる循環配管により高設栽培用の栽培ベッドの培地を加熱殺菌する例であったが、高設栽培用の栽培ベッドの培地以外においても、同様に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る培地殺菌システムを示す概略図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】高設栽培用の栽培ベッドの上に保温用シートを被せて培地を覆った状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0025】
1 培地殺菌システム
2 電気温水器
2a 給湯口
2b 給水口
3 循環配管
4 循環ポンプ
5a,5b 栽培ベッド
6 培地
7 架台
8 地面
9 排出口
10 保温用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウス栽培施設に設けた高設栽培用の栽培ベッド内の培地中に埋設される循環配管と、前記循環配管の一端側が給湯口側に接続されると共に前記循環配管の他端側が給水口側に接続され、発熱手段への通電により水を沸かして高温水を得る電気温水器と、前記循環配管の途中に設けた循環ポンプとを備え、
前記循環ポンプの駆動により前記電気温水器で得られた高温水を前記循環配管内で循環させる、
ことを特徴とする培地殺菌システム。
【請求項2】
前記栽培ベッドの上に前記培地を覆うようにして保温用シートを被せる、
ことを特徴とする請求項1に記載の培地殺菌システム。
【請求項3】
前記電気温水器および前記循環ポンプは、前記ハウス栽培施設内に設置される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の培地殺菌システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−300815(P2007−300815A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129976(P2006−129976)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(594073314)四電エナジーサービス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】