説明

培地添加剤

【課題】タンパク質の生産量を飛躍的に向上させ、実用化の観点で十分満足することを可能にする材料及び方法を提供することが課題である。
【解決手段】細胞内で合成された有用物質を抽出する工程で使用する界面活性剤(A)を含有する培地添加剤であって、(A)の有用物質抽出指標が20〜100%であり、かつ細胞活動指標が50〜100%である培地添加剤。細胞がグラム陰性菌であることが好ましい。有用物質がタンパク質であることが好ましい。界面活性剤(A)が両性界面活性剤であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地添加剤に関する。詳しくは、細胞内で合成された有用物質を抽出する際に使用する培地添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物は、アミノ酸、タンパク質等の生理活性物質を生産するための宿主として広く利用されている。特に近年は、遺伝子工学技術を活用して、産業上有用なタンパク質の遺伝子を導入した形質転換された微生物を使用し、生理活性物質を効率的に製造する技術が知られるようになっている。
生理活性物質を生産する好ましい微生物の例として、大腸菌やシュードモナス属菌等のグラム陰性菌、バチルス属菌や乳酸菌等のグラム陽性菌、サッカロマイセス属やキャンディダ属等の酵母、アスペルギウス属やペニシリウム属等の糸状菌、ストレプトマイセス属やロドコッカス属等の放線菌を挙げることができる。
タンパク質を抽出する方法としては、超音波、高圧ホモジナイザー、フレンチプレス及びダイノミル等の物理的破砕法が挙げられ、広く実用化されている。これらの物理的破砕法は有用物質を取り出す際、同時に細胞を死滅させる。
ところで、BSE等の問題から近年、動物由来タンパク質の使用が制限されてきている。そのため、従来、動物から抽出することで生産されていた一部のタンパク質が、需要に対して十分な供給ができなくなってきている。この供給不足は今後ますます深刻になることが予想されるため、遺伝子組み換え技術で組み換えた微生物にタンパク質を従来よりもさらに大量に発現させる技術が注目されている。例えば、発現対象である有用タンパク質をコードする遺伝子について、コドン置換/挿入部位に選択した高頻度出現コドンを組み込むように置換又は挿入した発現ベクターが提案されている。(例えば特許文献1)また、チオレドキシンをコードする第一の核酸配列及びヘモグロビンをコードする第二の核酸配列を宿主細胞にクローニングし、目的タンパク質を過剰発現させる核酸コンストラクト及び発現ベクターが提案されている。(例えば特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−335971号公報
【特許文献2】特開2006−006312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのベクターでは得られるタンパク量は増加するものの、タンパク質生産がバッチ式であるため一連のタンパク製造工程において微生物がタンパクを生産する時間が短く、生産効率が十分に向上するとは言えない。
そのため、タンパク質の生産量を飛躍的に向上させ、実用化の観点で十分満足することを可能にする材料及び方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、細胞内で合成された有用物質を抽出する工程で、生体膜の透過性を高め、かつ細胞活動に影響を与えず、タンパク質を連続的に生産することを可能にする培地添加剤を見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、細胞内で合成された有用物質を抽出する工程で使用する界面活性剤(A)を含有する培地添加剤であって、(A)の下記有用物質抽出指標が20〜100%であり、かつ下記細胞活動指標が50〜100%であることを要旨とする。
有用物質抽出指標:1重量%の(A)を含む培地に細胞を添加し、37℃、1時間振とうし抽出した有用物質濃度(Y1)及び(A)を含まない培地に4℃で10分超音波破砕し抽出した有用物質濃度(Y2)から、下記式(1)により算出し求めた指標
有用物質抽出指標=(Y1)/(Y2)×100 (1)
細胞活動指標:1重量%の(A)を含む寒天培地中で細胞を37℃、24時間培養した後の生菌数(S1)及び(A)を含まない寒天培地中で培養した後の生菌数(S2)から、下記式(2)により算出し求めた指標
細胞活動指標=(S1)/(S2)×100 (2)
【発明の効果】
【0006】
本発明の培地添加剤は、下記の効果を奏する。
(1)細胞内で合成された有用物質の生体膜に対する透過性を高めることができる。
(2)細胞活動に影響を与えない。
(3)有用物質を連続的に生産することができ、生産量を飛躍的に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の培地添加剤は、細胞内で合成された有用物質を抽出する工程で使用され、界面活性剤(A)を含有する。
【0008】
本発明における細胞として、以下の細菌細胞及び動物細胞が挙げられる。
細菌細胞としては、エシェリヒア属菌(Escherichia)等のグラム陰性菌細胞、連鎖球菌属(streptococci)、ブドウ球菌属(staphylococci)、ストレプトミセス属菌(streptomyces)及びバチルス属菌(Bacillus)細胞、酵母細胞及びアスペルギルス属(Aspergillus)細胞等のグラム陽性菌細胞、昆虫細胞:例えばドロソフィラS2(DrosophilaS2)、スポドプテラSf9(SpodopteraSf9)細胞、動物細胞(CHO細胞、COS細胞、HEK293細胞)等が挙げられる。
【0009】
エシェリヒア属菌(Escherichia)の具体例としては、大腸菌(E.coli)K12DH1〔プロシージング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)60巻、160頁(1968年)を参照〕、JM103〔ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)9巻、309頁(1981年)を参照〕、JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)120巻、517頁(1978年)を参照〕、HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)41巻、459頁(1969年)を参照〕、C600〔ジェネティックス(Genetics)39巻、440頁(1954年)を参照〕、MM294〔ネイチャー(Nature)217巻、1110頁(1968年)を参照〕等が挙げられる。
【0010】
バチルス属菌(Bacillus)の具体例としては、枯草菌(Bacillussubtilis)MI114〔ジーン、24巻、255頁(1983年)を参照〕、207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry)95巻、87頁(1984年)を参照〕等が挙げられる。
【0011】
これらのうち有用物質の生産性の観点から好ましくは、細菌細胞であり、さらに好ましくはグラム陽性菌であり、最も好ましくはエシェリヒア属菌である。その中でも入手しやすさの観点から大腸菌が好ましい。
【0012】
本発明における有用物質は、特に限定されないが、タンパク質(酵素、組み換えタンパク質、抗体及びペプチド等)、オリゴ糖及び核酸等が含まれる。
【0013】
酵素としては、酸化還元酵素(コレステロールオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ及びペルオキシダーゼ等)、加水分解酵素(リゾチーム、プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ及びグルコアミラーゼ等)、異性化酵素(グルコースイソメラーゼ等)、転移酵素(アシルトランスフェラーゼ及びスルホトランスフェラーゼ等)、合成酵素(脂肪酸シンターゼ、リン酸シンターゼ及びクエン酸シンターゼ等)及び脱離酵素(ペクチンリアーゼ等)等が挙げられる。
【0014】
組み換えタンパク質としては、上記酵素の遺伝子組み換え酵素、タンパク製剤{骨形成因子(BMP)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン1〜12、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、顆粒状コロニー刺激因子(G−CSF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ナトリウム利尿ペプチド、血液凝固第VIII因子、ソマトメジン、グルカゴン、成長ホルモン放出因子、血清アルブミン及びカルシトニン等}、ワクチン(A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン及びC型肝炎ワクチン等)、蛍光タンパク質(GFP等)等が挙げられる。
【0015】
抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体等が挙げられる。
【0016】
ペプチドとしては、特にアミノ酸組成を限定するものではなく、ジペプチド及びトリペプチド等が挙げられる。
【0017】
オリゴ糖としては、スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ラフィノース、パノース、シクロデキストリン、ガラクトオリゴ糖及びフラクトオリゴ糖等が挙げられる。
【0018】
核酸としては、イノシン一リン酸、アデノシン一リン酸及びグアノシン一リン酸等が挙げられる。
【0019】
これらの生理活性物質のうち、活性維持の観点から、タンパク質(酵素、組み換えタンパク質、抗体及びペプチドからなる群より選ばれる少なくとも1種)が好ましく、さらに好ましくは酵素及び組み換えタンパク質である。
【0020】
本発明の培地添加剤中に含まれる界面活性剤(A)としては両性界面活性剤(A1)、非イオン性界面活性剤(A2)、アニオン性界面活性剤(A3)及びカチオン性界面活性剤(A4)が含まれる。
【0021】
両性界面活性剤(A1)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤(A1−1)、硫酸エステル塩型両性界面活性剤(A1−2)、スルホン酸塩型両性界面活性剤(A1−3)及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤(A1−4)等が含まれる。
【0022】
カルボン酸塩型両性界面活性剤(A1−1)は、アミノ酸型両性界面活性剤(A1−1−1)、ベタイン型両性界面活性剤(A1−1−2)及びイミダゾリン型両性界面活性剤(A1−1−3)等が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤(A1−1−1)は、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する両性界面活性剤であり、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
[R−NH−(CH2n−COO]mM (1)
一般式(1)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。nは1又は2の整数である。mは1又は2の整数である。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(アミン及びアルカノールアミン等由来のカチオンを含む)及び第4級アンモニウム等の1価又は2価のカチオンである。
(A1−1−1)は、具体的には、アルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤(ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム及びラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等);アルキルアミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0023】
ベタイン型両性界面活性剤(A1−1−2)は、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤であり、下記一般式(2)で示されるアルキルジメチルベタイン(ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、アミドベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等)、アルキルジヒドロキシアルキルベタイン(ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等)等が挙げられる。
R−N+(CH32−CH2COO- (2)
一般式(2)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。
【0024】
イミダゾリン型両性界面活性剤(A1−1−3)としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0025】
その他の両性界面活性剤としては、ナトリウムラウロイルグリシン、ナトリウムラウリルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシン塩酸塩及びジオクチルジアミノエチルグリシン塩酸塩等のグリシン型両性界面活性剤;ペンタデシルスルホタウリン等のスルホベタイン型両性界面活性剤;コールアミドプロピルジメチルアンモニオプロパンスルホン酸(CHAPS)、コールアミドプロピルジメチルアンモニオ2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CHAPSO);ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド型両性界面活性剤等が含まれる。
【0026】
非イオン性界面活性剤(A2)としては、高級アルコールアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物(A2−1)、アルキルフェノールAO付加物(A2−2)、脂肪酸AO付加物(A2−3)及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤(A2−4)が含まれる。
【0027】
高級アルコールAO付加物(A2−1)としては、炭素数8〜24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)1〜20モル及び/又はプロピレンオキサイド(以下、POと略記)1〜20モル付加物(ブロック付加物及び/又はランダム付加物を含む。以下同様)[例えば、デシルアルコールのEO8モル/PO7モルブロック付加物]のうち、HLBが9〜13.5のものが含まれ、ラウリルアルコールEO7モル付加物(HLB=12.4)、オレイルアルコールEO5モル付加物(HLB=9.0)、オレイルアルコールEO6モル付加物(HLB=10.2)、オレイルアルコールEO7モル付加物(HLB=11.0)及びオレイルアルコールEO10モル付加物(HLB=12.4)等が挙げられる。
【0028】
HLBとは界面活性剤の親水性及び疎水性を示す尺度として用いられており、HLBの値が高いほど親水性が高いことを意味する。本発明におけるHLBとは下記式(1)で計算される数値である(界面活性剤入門、142頁、藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行)。
HLB=20×{親水基の分子量/界面活性剤の分子量} (1)
【0029】
アルキルフェノールAO付加物(A2−2)としては、炭素数6〜24のアルキル基を有するアルキルフェノールAO付加物のHLBが9〜13.5のものが含まれ、オクチルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物並びにノニルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物等が挙げられる。また、TRITON(登録商標)X−100(HLB=13.5)、TRITON(登録商標)X−114(HLB=12.4)、igepal(登録商標)CA−520(HLB=10.0)及びigepal(登録商標)CA−630(HLB=13.0)、等が市場から容易に入手できる。
【0030】
脂肪酸AO付加物(A2−3)としては、炭素数8〜24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)のEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物のうち、HLBが9〜13.5のものが含まれ、オレイン酸EO9モル付加物(HLB=11.8)、ジオレイン酸EO12モル付加物(HLB=10.4)、ジオレイン酸EO20モル付加物(HLB=12.9)及びステアリン酸EO9モル付加物(HLB=11.9)等が挙げられる。
【0031】
多価アルコール型非イオン性界面活性剤(A2−4)としては、炭素数3〜36の2〜8価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット及びソルビタン等)のEO及び/又はPO付加物;前記多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのEO付加物、並びに、砂糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド及びこれらのAO付加物が含まれ、ソルビタンテトラオレイン酸エステルEO付加物(HLB=11.4)及びソルビタンヘキサオレイン酸エステルEO付加物(HLB=10.2)等が挙げられる。
【0032】
アニオン性界面活性剤としては(A3)、エーテルカルボン酸(A3−1)又はその塩、硫酸エステル(A3−2)もしくはエーテル硫酸エステル(A3−3)及びそれらの塩、スルホン酸塩(A3−4)、スルホコハク酸塩(A3−5)、リン酸エステル(A3−6)もしくはエーテルリン酸エステル(A3−7)及びそれらの塩、脂肪酸塩(A3−8)、アシル化アミノ酸塩、並びに天然由来のカルボン酸及びその塩(ケノデオキシコール酸、コール酸及びデオキシコール酸等)が挙げられる。
【0033】
エーテルカルボン酸(A3−1)又はその塩としては炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸及びその塩が含まれ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテル酢酸ナトリウム塩及びラウリルグリコール酢酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0034】
硫酸エステル(A3−2)及びその塩としては、炭素数8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル及びその塩が含まれ、ラウリル硫酸ナトリウム塩及びラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0035】
エーテル硫酸エステル(A3−3)及びその塩としては、炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテル硫酸エステル及びその塩が含まれ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0036】
スルホン酸塩(A3−4)としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及びナフタレンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0037】
スルホコハク酸塩(A3−5)としては、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸二ナトリウム塩、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム塩及びスルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0038】
リン酸エステル(A3−6)としては、オクチルリン酸二ナトリウム塩及びラウリルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0039】
エーテルリン酸エステル(A3−7)としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸二ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0040】
脂肪酸塩(A3−8)としては、オクチル酸ナトリウム塩、ラウリル酸ナトリウム塩及びステアリン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤(A4)としては、第4級アンモニウムカチオン性界面活性剤(A4−1)及びアミン塩型カチオン性界面活性剤(A4−2)が含まれる。
【0042】
第4級アンモニウムカチオン性界面活性剤(A4−1)としては、炭素数8〜22のアルキル基を1つ含むカチオン性界面活性剤(A4−1−1)及び2つ含むカチオン性界面活性剤(A4−1−2)が含まれる。
(A4−1−1)としては、セチルトリメチルアンモニウム塩化物塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩化物塩、セチルトリメチルアンモニウム臭化物塩、ステアリルトリメチルアンモニウム臭化物塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩化物塩ベンザルコニウム塩化物塩及びラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムエチル硫酸塩等が挙げられる。
(A4−1−2)としては、ジデシルジメチルアンモニウム塩化物塩、ジデシルジメチルアンモニウムアジピン酸塩、ジデシルジメチルアンモニウムブタンテトラカルボン酸塩及びジステアリルジメチルアンモニウム塩化物塩等が挙げられる。
【0043】
アミン塩型カチオン性界面活性剤(A4−2)としては、オクチルアミン塩酸塩、ラウリルアミン塩酸塩及びステアリルアミン塩酸塩等が挙げられる。
【0044】
これらのうち、有用物質抽出及び細胞活動維持の観点から、両性界面活性剤(A1)及びアニオン性界面活性剤(A3)が好ましく、さらに好ましくは両性界面活性剤(A1)及び(A3−1)である。
【0045】
本発明の培地添加剤において界面活性剤(A)は、使用に当たっては、界面活性剤(A)をそのまま使用してもよいし、必要により水と混合して、水性希釈液(水溶液状又は水分散液状)として用いることができる。
水性希釈液における、界面活性剤(A)の合計濃度は、対象となる微生物、生理活性物質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、溶菌性及びハンドリング性の観点から、水性希釈液の重量を基準として、1〜99重量%が好ましく、好ましくは2〜50重量%である。
【0046】
本発明の培地添加剤における(A)は、有用物質抽出指標が20〜100%である。生産性の観点から、30〜100%が好ましい。
有用物質抽出指標が20%未満の場合、目的タンパク質の収率が低く、生産性の観点で実使用に耐えない。
【0047】
ここで有用物質抽出指標とは1重量%の(A)を含む培地に細胞を添加し、37℃、1時間振とうし抽出した有用物質濃度(Y1)及び(A)を含まない培地に4℃で10分超音波破砕し抽出した有用物質濃度(Y2)から、下記式(1)により算出し求めた指標を指す。
有用物質抽出指標=(Y1)/(Y2)×100 (1)
【0048】
有用物質抽出指標を小さくするには、(A)として炭素数の小さいものを使用する等の方法で行うことができる。
有用物質抽出指標を大きくするには、(A)として炭素数の大きいものを使用する等の方法でおこなうことができる。
【0049】
本発明の培地添加剤における(A)は、細胞活動指標が50〜100%である。生産性の観点から、60〜100%が好ましい。
細胞活動指標が50%未満の場合、目的タンパク質の収率が低く、生産性の観点で実使用に耐えない。
【0050】
ここで細胞活動指標とは1重量%の(A)を含む寒天培地中で細胞を37℃、24時間培養した後の生菌数(S1)及び(A)を含まない寒天培地中で培養した後の生菌数(S2)から、下記式(2)により算出し求めた指標を指す。
細胞活動指標=(S1)/(S2)×100 (2)
【0051】
細胞活動指標を小さくするには、(A)として炭素数の大きいものを使用する等の方法でおこなうことができる。
細胞活動指標を大きくするには、(A)として炭素数の小さいものを使用する等の方法でおこなうことができる。
【0052】
本願発明の培地添加剤における(A)の含有量(重量%)は、ハンドリング性の観点から、培地添加剤の重量を基準として、1〜80が好ましく、さらに好ましくは10〜50である。
【0053】
有用物質を抽出する工程における培地添加剤に含まれる界面活性剤(A)の使用量(重量%)は、対象となる微生物、生産される有用物質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、培地の重量を基準として、0.001〜10が好ましく、溶菌性及びタンパク質の変性のさせにくさの観点から、さらに好ましくは0.05〜10、次にさらに好ましくは0.1〜5である。
【0054】
界面活性剤(A)を含有する培地添加剤はあらかじめ培地と混合して使用する以外に、微生物を懸濁させた培地に後から添加しても良い。培地との混合は、20℃〜40℃で培地に界面活性剤(A)を含有する培地添加剤を添加し、撹拌羽根又はスターラー等で撹拌することで行うことができる。後から混合する際は、撹拌羽根等で撹拌しながら添加することで行うことができる。
【0055】
培地添加剤には上記界面活性剤(A)以外に、キレート剤、無機塩、有機酸及びその塩並びに多価アルコール等のタンパク質安定化剤を加えても良い。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、ポリリン酸及びその塩並びにメタリン酸及びその塩が挙げられる。
無機塩としては、塩化ナトリウム及び塩化カリウム等の1価金属塩、塩化マグネシウム及び塩化カルシウム等の2価金属塩等が挙げられる。
有機酸及びその塩としては、アミノ酸及びその塩、乳酸及びその塩並びにヒアルロン酸及びその塩等が挙げられる。塩としてはアルカリ金属塩が挙げられ、入手のしやすさの観点でナトリウム塩が好ましい。
多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
【0056】
タンパク質安定化剤を使用する場合その含有量(重量%)は、生産性の観点から、界面活性剤(A)の重量に対し、1〜100が好ましく、さらに好ましくは2〜30である。
【0057】
本発明の培地添加剤は、界面活性剤(A)又は(A)の水性希釈液をそのまま培地添加剤とすることができる。タンパク質安定化剤を使用する場合は、(A)又は(A)の水性希釈液とタンパク質安定化剤を公知の方法で混合することで本発明の培地添加剤を製造することができる。
【0058】
本発明の培地添加剤の使用の方法であり、本発明の別の実施態様でもある有用物質の製造方法は、上記に記載の培地添加剤を使用して細胞を培養する工程を含む有用物質の製造方法である。
【0059】
以下に本発明の培地添加剤を使用して細胞を培養する工程を含む有用物質の製造方法の一例を示す。
(i)遺伝子組み換え
(i−1)目的タンパク産生細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、該mRNAから単鎖のcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、該相補DNAをファージ又はプラスミドに組み込む。
(i−2)得られた組み換えファージ又はプラスミドで宿主を形質転換し、培養後、目的タンパクの一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーション、あるいは抗体を用いたイムノアッセイ法により目的とするDNAを含有するファージあるいはプラスミドを単離する。
(i−3)その組み換えDNAから目的とするクローン化DNAを切りだし、該クローン化DNA又はその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって製造することができる。細胞膜を貫通させるタグを同時に連結することもできる。
(ii)培養
(ii−1)宿主を発現ベクターで形質転換し培養する。培養は寒天培地上で通常15〜43℃で3〜24時間行う。
(ii−2)培養に用いる培地を120℃、20分間オートクレーブ滅菌を行い、ここに寒天培地で培養した組み換えした宿主を本培養する。通常15〜43℃で24〜72時間行う。なお、培養の際から、本願発明の培地添加剤を使用する場合は、本発明の培地添加剤と培地を混合し均一化したものを、培地として用いて同様の操作を行う。
(iii)精製
(iii−1)本工程で本発明の培地添加剤を添加する。なお、工程(ii−2)において既に本発明の培地添加剤を使用している場合は、その培地添加剤を含んだ培地が本工程に供されるので、本工程での培地添加剤の添加は必要に応じて行えばよい。
本工程で本発明の培地添加剤を添加する場合は、15℃〜37℃に温調した培地添加剤を無菌的に添加し、15〜37℃で30分〜2時間程度撹拌する。
培地中に抽出されたタンパク質は、遠心分離、中空糸分離、限外ろ過等で微生物及び微生物残さと分離される。
(iii−2)タンパク質を含む培地水溶液は、イオン交換カラム、ゲルろ過カラム、疎水カラム、アフィニティカラム及び限外カラム等のカラム処理を繰り返し、エタノール沈殿、硫酸アンモニウム沈殿及びポリエチレングリコール沈殿等の沈殿処理を必要に応じ適宜おこなうにことよって分離精製される。
【0060】
上記の工程において、本発明の培地添加剤は、有用物質の生産性の観点から、工程(ii−2)で使用することが好ましい
【0061】
(iii−1)で分離された宿主細胞は、その後、培養釜に戻し、新たに培地を供給することにより、さらに培養することができる。その培地等をさらに(iii)の工程に供し精製、培養を繰り返すことにより、有用物質の連続生産を行うことができる。
本願発明の培地添加剤は、宿主細胞を破壊することが無いので、この様な連続生産における宿主細胞の生存率が高まる。したがって、有用物質を連続的に生産することができ、生産量を飛躍的に向上することができる。
【0062】
上記の(iii)のタンパク質の分離・取り出し工程におけるカラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としては、シリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド及びビニルポリマー等が挙げられ、市販品ではSephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio−Gelシリーズ(Bio−Rad社)等があり入手可能である。
【0063】
目的生産物質が不溶体を形成した場合は、(ii)工程と(iii)工程の間に以下の2工程を加えることで有用物質の抽出をおこなうことができる。
(α)アンフォールディング工程:
不溶体となった目的生産物質に0.5モル/L以上のアンフォールディング剤及び20ミリモル/L以下の還元剤を加え軽くかきまぜ室温で数時間放置する。
(β)リフォールディング工程:
アンフォールディングされたタンパク質懸濁液に、0.2〜6モル/Lの濃度になるようにリフォールディング剤を加えて軽くかき混ぜ、室温で1晩放置する。又はリフォールディングバッファーで大希釈することによりリフォールディングを行う。
【0064】
上記の(α)のアンフォールディング工程において使用されるアンフォールディング剤としては、塩酸グアニジン、尿素及びこれらの併用等が挙げられる。
なお、タンパク質が、分子内にS−S結合を含むタンパク質である場合には、還元剤として塩酸グアニジン及び/又は尿素以外に、さらに2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、シスチン又はチオフェノール等を加えてもよい。
【0065】
上記の(β)のリフォールディング工程におけるタンパク質のリフォールディング方法は、希釈法、透析法、界面活性剤利用法、人工シャペロン利用法及び特開2007−145801号公報記載の方法いずれの方法でもリフォールディングすることができる。特に特開2007−145801号公報記載の方法は生産性・汎用性の観点から好ましい。
【0066】
本発明の製造方法で得られる有用物質は、上記の方法で得られるため、従来よりも活性が高い。また生産性に優れているので短時間で高い収量を得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下の実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0068】
実施例1<培地添加剤(M−1)の作製>
塩酸ラウリルジアミノエチルグリシン(三洋化成工業(株)製、商品名「レボンLAG−40」)及びイオン交換水を表1の部数添加し、25℃で撹拌混合して溶解させ培地添加剤(M−1)を作製した。
塩酸ラウリルジアミノエチルグリシンが界面活性剤(A)に相当し、その有用物質抽出指標は80%、細胞活動指標は80%であった。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例2<培地添加剤(M−2)の作製>
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(三洋化成工業(株)製、商品名「レボン2000」)及びイオン交換水を表1の部数添加し、25℃で撹拌混合して溶解させ培地添加剤(M−2)を作製した。
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが界面活性剤(A)に相当し、その有用物質抽出指標は100%、細胞活動指標は80%であった。
【0071】
実施例3<培地添加剤(M−3)の作製>
ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(三洋化成工業(株)製、商品名「ビューライトECA」)及びイオン交換水を表1の部数添加し、25℃で撹拌混合して溶解させ培地添加剤(M−3)を作製した。
ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムが界面活性剤(A)に相当し、その有用物質抽出指標は20%、細胞活動指標は80%であった。
【0072】
実施例4<培地添加剤(M−4)の作製>
オクチルフェノールエチレンオキサイド10モル付加物(和光純薬(株)製)及びイオン交換水を表1の部数添加し、25℃で撹拌混合して溶解させ培地添加剤(M−4)を作製した。
オクチルフェノールエチレンオキサイド10モル付加物が界面活性剤(A)に相当し、その有用物質抽出指標は60%、細胞活動指標は100%であった。
【0073】
実施例5<培地添加剤(M−5)の作製>
ジデシルジメチルアンモニウム・アジピン酸塩(三洋化成工業(株)製、商品名「オスモリンDA−50」)及びイオン交換水を表1の部数添加し、25℃で撹拌混合して溶解させ培地添加剤(M−5)を作製した。
ジデシルジメチルアンモニウム・アジピン酸塩が界面活性剤(A)に相当し、その有用物質抽出指標は40%、細胞活動指標は50%であった。
【0074】
実施例6<培地添加剤(M−1)を用いたタンパク質生産>
膜貫通するシグナルを持ち、かつGFP(緑色蛍光タンパク質)をコードするDNAをプラスミドに構築する。このプラスミドと大腸菌BL−21株をヒートショック法(80℃、30秒)で形質転換し、寒天培地が入ったシャーレに播き37℃、1晩培養した。
オートクレーブ滅菌(121℃、20分)したLB培地10mLにシャーレから白金耳で掻き取った大腸菌コロニーを添加し、37℃で振とう培養器を用いて1晩振とうした。オートクレーブ滅菌したLB培地1000mLに1晩培養した大腸菌懸濁液10mLを加え、37℃で振とうした。OD600が0.6になったときにIPTGを終濃度0.1mMとなるように添加し、1時間振とうした。その後、実施例1で作製した培地添加剤(M−1)を50mL添加し、37℃、3時間振とうした。
振とう後、遠心分離(3000rpm、15分、4℃)し、上清を回収した。
上清中のGFP量は抗GFP抗体を用い蛍光定量した。蛍光定量した結果を用いて、生産性を下記の指標で評価した。
【0075】
生産性 5:GFP濃度 0.1mg/mL以上
4: 0.05mg/mL以上〜0.1mg/mL未満
3: 0.01mg/mL以上〜0.05mg/mL未満
2: 0.005mg/mL以上〜0.01mg/mL未満
1: 0.005mg/mL未満
【0076】
実施例7<培地添加剤(M−2)を用いたタンパク質生産>
実施例6において、培地添加剤(M−1)を(M−2)に変更する以外は実施例6と同様におこない蛍光定量し、生産性を評価した。
【0077】
実施例8<培地添加剤(M−3)を用いたタンパク質生産>
実施例6において、培地添加剤(M−1)を(M−3)に変更する以外は実施例6と同様におこない蛍光定量し、生産性を評価した。
【0078】
実施例9<培地添加剤(M−4)を用いたタンパク質生産>
実施例6において、培地添加剤(M−1)を(M−4)に変更する以外は実施例6と同様におこない蛍光定量し、生産性を評価した。
【0079】
実施例10<培地添加剤(M−5)を用いたタンパク質生産>
実施例6において、培地添加剤(M−1)を(M−5)に変更する以外は実施例6と同様におこない蛍光定量し、生産性を評価した。
【0080】
実施例11<培地添加剤(M−1)を用いたタンパク質生産>
実施例6において、培地添加剤(M−1)50mLを(M−1)0.05mLに変更する以外は実施例6と同様におこない蛍光定量し、生産性を評価した。
【0081】
実施例12<培地添加剤(M−1)を用いたタンパク質生産>
実施例6において、培地添加剤(M−1)50mLを(M−1)500mLに変更する以外は実施例6と同様におこない蛍光定量し、生産性を評価した。
【0082】
実施例13<培地添加剤(M−1)を用いたタンパク質生産>
実施例6において、IPTGを添加後の振とうする時間を1時間から3時間に変更する以外は実施例6と同様におこない蛍光定量し、生産性を評価した。
【0083】
実施例14<培地添加剤(M−1)を用いたタンパク質の連続生産>
実施例6において、遠心分離後に1度目の上清を回収した後の遠心分離後の残さの大腸菌を、オートクレーブ滅菌したLB培地1000mLに加え、37℃で3時間振とうした。振とう後、再度遠心分離(3000rpm、15分、4℃)し、上清を回収し、1度目の遠心分離の際の上清と混合し、実施例6と同様に蛍光定量し、生産性を評価した。
【0084】
比較例1<超音波>
膜貫通するシグナルを持ち、かつGFP(緑色蛍光タンパク質)をコードするDNAをプラスミドに構築する。このプラスミドと大腸菌BL−21株をヒートショック法(80℃、30秒)で形質転換し、寒天培地が入ったシャーレに播き37℃、1晩培養した。
オートクレーブ滅菌(121℃、20分)したLB培地10mLにシャーレから白金耳で掻き取った大腸菌コロニーを添加し、37℃で振とう培養器で1晩振とうした。オートクレーブ滅菌したLB培地1000mLに1晩培養した大腸菌懸濁液10mLを加え、37℃で振とうした。OD600が0.6になったときにIPTGを終濃度0.1mMとなるように添加し、1時間振とうした。その後、超音波ホモジナイザー(130W、10分)で大腸菌を破砕後、遠心分離(3000rpm、15分、4℃)し、上清を回収した。
上清中のGFP量は抗GFP抗体を用い蛍光定量した。
【0085】
比較例2<フレンチプレス>
比較例1において、超音波ホモジナイザー(130W、10分)での大腸菌の破砕を、フレンチプレス(3000psi、1パス)での大腸菌の破砕に変更する以外は比較例1と同様におこなった。
【0086】
比較例3<リゾチーム>
比較例1において、超音波ホモジナイザー(130W、10分)での大腸菌の破砕を、「終濃度0.5mg/mLとなるようにリゾチーム水溶液(和光純薬工業製)を加え、25℃、3時間振とうする」処理に変更する以外は比較例1と同様におこなった。
【0087】
実施例6〜14及び比較例1〜3の結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
表2の結果から、従来の物理的破砕法では生産性(タンパク抽出効率)が悪いことがわかる。一方、本発明の培地添加剤を用いる実施例6〜14はタンパク抽出効率が高く、特に実施例6〜8及び実施例14は特に効率がよいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の培地添加剤は、タンパク質などの有用物質を生産菌から抽出する際に使用できる。タンパク質としては酵素、組換えタンパク質及びペプチドが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内で合成された有用物質を抽出する工程で使用する界面活性剤(A)を含有する培地添加剤であって、(A)の下記有用物質抽出指標が20〜100%であり、かつ下記細胞活動指標が50〜100%である培地添加剤。
有用物質抽出指標:1重量%の(A)を含む培地に細胞を添加し、37℃、1時間振とうし抽出した有用物質濃度(Y1)及び(A)を含まない培地に4℃で10分超音波破砕し抽出した有用物質濃度(Y2)から、下記式(1)により算出し求めた指標
有用物質抽出指標=(Y1)/(Y2)×100 (1)
細胞活動指標:1重量%の(A)を含む寒天培地中で細胞を37℃、24時間培養した後の生菌数(S1)及び(A)を含まない寒天培地中で培養した後の生菌数(S2)から、下記式(2)により算出し求めた指標
細胞活動指標=(S1)/(S2)×100 (2)
【請求項2】
細胞がグラム陰性菌である請求項1に記載の培地添加剤。
【請求項3】
有用物質がタンパク質である請求項1又は2に記載の培地添加剤。
【請求項4】
界面活性剤(A)が両性界面活性剤である請求項1〜3のいずれかに記載の培地添加剤。
【請求項5】
有用物質を抽出する工程において、界面活性剤(A)の使用量が培地に対して0.001〜10重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の培地添加剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の培地添加剤を使用して細胞を培養する工程を含む有用物質の製造方法。

【公開番号】特開2010−233513(P2010−233513A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85632(P2009−85632)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】