説明

培養においてタンパク質生成を増大させるための方法

対象の遺伝子発現のための新しい組換えタンパク質製造方法が見いだされた。これは、低いまたは乏しい発現遺伝子、およびこのようなハイレベルが細胞にとって有害またはストレスとなる場合のハイレベルのタンパク質の細胞産生において有用と考えられる。スプライスされた形態XBP−1、ATF6、およびeIF2αS51Aをコードする単離されたポリヌクレオチドが開示される。これらのポリヌクレオチドを有する発現ベクターは、細胞内における折り畳みのないタンパク反応の増大により、対象のポリペプチドを発現する細胞内の特異的細胞生産性を増加させるのに有用である。最終的に、上述のポリヌクレオチドを使用して、哺乳動物細胞中で特異的細胞生産性を増加させる方法もさらに開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、転写因子XBP−1および選択可能マーカーのスプライス形態をコードする単離されたポリヌクレオチド、1つ以上の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター、および所定の細胞の特異的細胞生産性を増加させるためにこのベクターを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
機能的分泌タンパク質の産生は、細胞内の小胞体(ER)−ゴルジ分泌経路を効率的でかつ非攪乱的に機能させることがを必要である(Cudna and Dickson,Biotechnol.&Bioeng.81:56−65(2002)。大量の組換えタンパク質を産生する間に、この分泌経路に折り畳まれていない、あるいは折り畳まれていないタンパク質で充満する可能性がある。
【0003】
細胞性ストレスを克服する必要性により、細胞における種々の機序が活性化される。このような経路の1つでは、多数の関連したタンパク質リン酸化酵素により、ポリペプチド鎖開始因子eIF2のアルファサブユニットがリン酸化される。(Clemens MJ,Prog.Mol.Subcell.Biol.27:57−89(2001))。リン酸化eIF2αは、グアニンヌクレオチド交換因子eIF2βの優性の阻害薬として作用し、連続するタンパク質合成中でeIF2βがくりかえし再利用されるのを阻害する。eIF2αの広範なリン酸化およびeIF2β活性の強い抑制により、タンパク質合成の全般的な速度が下方制御される結果を生じる可能性がある。これらの機序により、真核細胞性ストレス応答に結合する信号伝達経路が提供され、翻訳レベルで遺伝子発現の制御が変化する。
【0004】
さらに、ERは情報伝達区画として細胞性ストレスのセンサーとしてさらに重要な役割を果たす。ERは、膜貫通型タンパク質、分泌タンパク質、およびER内在性タンパク質の折りたたみおよび成熟のための主要な部位である(Liu and Kaufman,J.Cell Sci.116:1861−1862(2003))。BR恒常性を変化させる内因および外因は、折り畳みのないタンパクの蓄積に結びつけることができ、これは全ての生細胞に対する脅威である。ストレスに応じて、真核細胞は折り畳まれていないタンパク質に対する反応(UPR)として知られる細胞内シグナル伝達経路を活性化する。細胞性ストレスには実質的に物理的および化学的ストレスの両方が可能であり、熱ショック、栄養分欠乏、細胞内カルシウムの変化、pH値の変化、溶存Oの変化、折り畳みのないまたは変性タンパク質の蓄積、アポトーシスの導入、およびUPRを上方制御するその他の任意のストレスなどが含まれる。
【0005】
UPRは、糖鎖形成の阻害、Ca+2欠乏、およびER中での蛋白質折り畳みを妨害するその他のストレス条件によりトリガーされる多面的細胞内シグナル伝達経路により媒介されている(Gass et al.,J.Biol.Chem.277:49047−49054(2002))。折り畳みのないタンパク質が蓄積されるにつれて、UPRは、蛋白質の折り畳みおよび分泌を促進するER内在性分子シャペロンを含む多様な遺伝子産物の発現の増加をともなうタンパク質合成の広範な下方制御と連携する。UPRは、UPR遺伝子の転写レベルでの誘導、全般的なタンパク質合成の翻訳抑制、および生体沈殿を介したER関連分解(ERAD)により、この細胞内シグナル伝達経路と連携する(Liu and Kaufman,J.Cell Sci.116:1861−1862(2003))。これらの回避経路は、生存のための適応応答を提供する。タンパク質蓄積欠陥が修正されなければ、細胞はアポトーシスに至るであろう。
【0006】
哺乳類ERがストレスに曝されると、一連のER膜内外タンパク質はUPRを開始する。これらのうちの1つにATF6αがある。これは90kDaのII型膜貫通型タンパク質で、ERストレス誘発性タンパク分解を受けると、その50kDa細胞質ゾルドメイン(p50ATF6α)を遊離する。これが、塩基性ロイシンジッパー転写因子である。p50ATF6αは、核へ移行し、BiPおよびGRF94、2つのERレジデント分子シャペロン、XBP−1(X−ボックス結合蛋白質1)、塩基性ロイシンジッパー転写因子、およびCHOP(/EBP omologous rotein(C/EBP相同蛋白質)、GADD153としても知られ、転写因子AAT/nhancer−inding rotein(のCAAT/エンハンサー結合タンパク質)ファミリーのメンバーである(Gass et al.,J.Biol.Chem.2 77:49047−49054(2002);Ma and Hendershot,Cell 107:827−830(2001))などの遺伝子の転写導入に関与する。
【0007】
ATF6と平行して、ERストレス誘発薬剤はIRE1α/βタンパク質を活性化する。IRE1αは、その細胞質ゾル領域にセリン/スレオニンリン酸化酵素モジュールおよびエンドリボヌクレアーゼドメインの両者を含む、広く発現したERI型膜貫通型タンパク質である。UPRが活性化されると、IRE1αはXBP−1 mRNAの部位特異的切断を実行し、26−ヌクレオチドイントロンを除去する。5’および3’フラグメントの再連結によって、スプライスされたXBP−1mRNAが産生される。これは、54kDa塩基性ロイシンジッパー転写因子をコードし、変化した読み取り枠を有する。p54XBP−1は、転写活性化因子としてはより強力で、かつ未処理のXBP−1 mRNAから翻訳された30kDaタンパク質よりもさらに安定であるようである(Gass et al.,J.Biol.Chem.277:49047−49054(2002);Reimold et al.,Nature 412:300−307(2001))。したがって、ATF6およびIRE1αが共に作用してXBP−1の発現を制御し、究極的にUPRを増幅する転写活性化因子を産生することが分かる。
【0008】
ERストレスは、アポトーシス性機能をコードする遺伝子の転写レベルでの活性化による死亡情報伝達経路をさらに媒介する。UPRセンサーIRE1、PERK、あるいはATF6の活性化により、アポトーシスを促進するbZIP転写因子であるCHOP/GADD153の転写レベルでの活性化を引き起す。
【0009】
当業界では、真核システムにおいて組み換え的に生成されたタンパク質の収量を増加させる方法が求められている。本発明は対象のポリペプチドの収量を増加させることにより、この求めに応えるものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概要
対象の遺伝子発現のための新しい組換えタンパク質製造方法が見いだされた。これは、低いまたは乏しい発現遺伝子、およびこのようなハイレベルが細胞にとって有害またはストレスとなる場合のハイレベルのタンパク質の細胞産生においてなどこれらに限定されないが、多くの種々の用途に有用と考えられる。本発明の結果、真核細胞からのタンパク質の産生量の増加が得られる。
【0011】
本発明の一実施態様では、対象のポリペプチドの発現を含み、細胞膜あるいは分泌された対象のポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる方法に関し、この細胞はXBP−1の外因性のスプライスされた形態をさらに発現する。別の実施態様において、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、XBP−1の外因性のスプライスされた形態を発現する細胞内に導入される。さらに別の実施態様では、対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが外因性である。
【0012】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載された工程より「本質的になる」ものでもよい。
【0013】
さらなる実施態様では、XBP−1なしで対象のポリペプチドを形質移入させた対照細胞群と比較して、本手法により対象のポリペプチドの特異的細胞生産性の少なくとも約5%の増加を生じる。
【0014】
本発明の多様な実施態様において、XBP−1なしであらかじめ対象のポリペプチドに形質移入された対照群細胞と比較して、本方法はポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させ、その増加は、約5%〜約10%、約11%〜約20%、約21%〜約30%、約31%〜約40%、約41%〜約50%、約51%〜約60%、約61%〜約70%、約71%〜約80%、約81%〜約90%、あるいは約91%〜約100%である。
【0015】
本発明の別の実施態様において、本方法の細胞は選択可能なマーカーをさらに有する。選択可能なマーカーは、対象のポリペプチドを有する細胞を検出するために使用してもよい。一実施態様において、対象のポリペプチドを有する細胞は、選択可能なマーカーの安定な統合について選択されることにより検出される。
【0016】
一実施態様において、本発明は少なくともの5pg/細胞/日のレベルで対象のポリペプチドが産生される。別の実施態様では、対象のポリペプチドがHu24−31.1である。
【0017】
本発明の別の実施態様において、XBP−1のスプライスされた形態は、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより、または配列番号1のポリヌクレオチドによりコードされる。さらに別の実施態様では、XBP−1のスプライスされた形態は、XBP−1活性を有するXBP−1スプライスバリアントの誘導体である。
【0018】
本発明は、上述のベクターが追加のポリヌクレオチドをさらに含む対象のポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる方法にさらに関する。本発明の一実施態様では、追加のポリヌクレオチドが転写因子または翻訳エンハンサーをコードする。本発明の別の実施態様では、さらにコードされた転写因子がATF6あるいはその活性化ドメインである。さらなる実施態様では、ATF6は配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる。さらに別の実施態様では、ATF6は配列番号4の誘導体によってコードされ、それによりこのポリペプチドはATF6活性を保持する。本発明の別の実施態様では、翻訳エンハンサーがeIF2αS51Aである。別の実施態様では、eIF2αS51Aは、配列番号6のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。さらに別の実施態様では、eIF2αS51Aは配列番号6の誘導体によってコードされ、それによりこのポリペプチドはeIF2αS51A活性を保持する。
【0019】
対象のポリペプチドは多量に産生されることが望まれる任意のポリペプチドが可能である。本発明の一実施態様では、対象のポリペプチドが抗体または抗体フラグメントである。抗体としては単クローン、多クローン、哺乳類、マウス、キメラ、ヒト化、霊長類、あるいは霊長類化抗体などが可能である。一実施形態において、抗体は単クローン抗体である。さらなる実施態様では、抗体はキメラのである。抗体フラグメントは、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン重鎖および軽鎖、Fab、F(ab’)、Fc、Fc−Fc融合タンパク質、Fv、単鎖Fv、四価単鎖Fv、ジスルフィド結合Fvフラグメント、消去されたドメイン、ミニボディ、二重特性抗体などが一般に含まれる。本発明の別の実施態様において、対象のポリペプチドは抗体が除去されたC2ドメインである。
【0020】
一実施態様において、抗体または抗体フラグメントを作成するために本発明を使用することができる。さらなる実施態様では、抗体は抗CD154抗体Hu24−31.1である。
【0021】
特異的細胞生産性は多様な細胞中で増加させることができる。したがって、本発明は、真核、昆虫、および哺乳動物細胞中において特異的細胞性産生を増加させる方法に関する。本発明の一実施態様において、哺乳動物細胞は、サル腎臓CV1、サル腎臓COS、ヒトレンズ上皮PER.C6(登録商標)、ヒトの胚性腎臓、ハムスター新生仔の腎臓、アフリカミドリザル腎臓、ヒト子宮頚癌、イヌ腎臓、バッファローラット肝臓、ヒト肺、ヒト肝臓、マウス乳腺腫瘍細胞、および骨髄細胞でもよい。一実施態様において、骨髄細胞はNS0、Sp2/0、あるいはAg8653でもよい。本発明のさらなる実施態様では、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
【0022】
本発明はポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる方法に関し、この方法は2つのポリヌクレオチドを有するベクターを細胞内に導入する工程を含み、第1のポリヌクレオチドは転写因子XBP−1のスプライスされた形態をコードし、第2のポリヌクレオチドは対象のポリペプチドをコードし、対象のポリペプチドを発現する。
【0023】
本発明は、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドを有する細胞膜または対象の分泌されたポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させるための発現ベクターにさらに関し、第1のポリヌクレオチドは、転写因子XBP−1のスプライスされた形態をコードするポリヌクレオチドを有し、第2のポリヌクレオチドは、選択可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドを有する。本発明の一実施態様では、XBP−1ポリペプチドは配列番号1のポリヌクレオチドによってコードされる。本発明のさらなる実施態様では、XBP−1ポリペプチドは配列番号1と95%同一のポリヌクレオチドによってコードされ、対象のポリペプチドを発現する細胞内に導入された場合、この95%同一のポリヌクレオチドは特異的細胞生産性を増加させる。
【0024】
本発明は、特異的細胞生産性を増加させるポリヌクレオチドは配列番号1のヌクレオチド195〜356を有する発現ベクターにさらに関連し、対象のポリペプチドを発現する細胞内に導入された場合、このヌクレオチド195〜356は特異的細胞生産性を増加させる。
【0025】
一実施態様において、発現ベクターの第1のポリヌクレオチドは配列番号2のポリペプチドをコードする。
【0026】
本発明は、上記発現ベクターにさらに関し、このベクターがさらに追加のポリヌクレオチドを有する。本発明の1つの実施態様では、追加のポリヌクレオチドは第2の転写因子あるいは翻訳エンハンサーのいずれかをコードする。別の実施態様では、この第2の転写因子はATF6あるいはその活性化ドメインである。本発明のさらなる実施態様では、ATF6は、配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。本発明の別の実施態様では、翻訳エンハンサーはeIF2αS51Aである。さらなる実施態様では、eIF2αS51Aは、配列番号6のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる。
【0027】
本発明は、上記発現ベクターを有する細胞にさらに関する。特定の実施態様では、細胞は動物細胞である。一実施形態において、細胞は真核細胞である。別の実施態様では、細胞は昆虫細胞である。さらに別の実施態様では、細胞は哺乳動物細胞である。さらなる実施態様では、哺乳動物細胞は、サル腎臓CV1、サル腎臓COS、ヒトレンズ上皮PER.C6(登録商標)、ヒトの胚性腎臓、ハムスター新生仔の腎臓、アフリカミドリザル腎臓、ヒト子宮頚癌、イヌ腎臓、バッファローラット肝臓、ヒト肺、ヒト肝臓、マウス乳腺腫瘍細胞、および骨髄細胞系でもよい。一実施態様において、この骨髄細胞はNS0、Sp2/0、あるいはAg8653でもよい。本発明のさらに別の実施態様では、細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
【0028】
本発明は、細胞内の折り畳みのないタンパク反応を上方制御するポリヌクレオチドを有する発現ベクターにさらに関する。
【0029】
本発明は、スプライスされた形態のXBP−1をコードする第1の成分、および選択可能なマーカーをコードする第2の成分を有する単離されたポリヌクレオチドにさらに関連し、対象のポリペプチドを発現する細胞内に導入された場合、この単離されたポリヌクレオチドは、対象のポリペプチドの特異的細胞生産性を細胞内で少なくとも5pg/細胞/日増加させる。
【0030】
本発明の別の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する。
【0031】
一実施態様において、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされたXBP−1のスプライスされた形態を有する。
【0032】
本発明の別の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは1つ以上の追加のポリヌクレオチドをさらに有する。一実施態様において、追加のポリヌクレオチドは転写因子あるいは翻訳エンハンサーをコードする。別の実施態様では、転写因子はATF6あるいはその活性化ドメインである。さらなる実施態様では、ATF6は配列番号3のポリヌクレオチドによって、あるいは配列番号4のポリペプチドをコードすることによりコードされる。別の実施態様では、この翻訳エンハンサーはeIF2αS51Aである。さらなる実施態様では、eIF2αS51Aは配列番号5のポリヌクレオチドによって、あるいは配列番号6のポリペプチドをコードすることによりコードされる。
【0033】
本発明は細胞内の対象の細胞膜あるいは分泌されたポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる方法にさらに関し、この方法は対象のポリペプチドを発現する細胞内へ導入する工程を含み、単離されたポリヌクレオチドはスプライスされた形態のXBP−1をコードする第1の成分、および選択可能なマーカーをコードする第2の成分を有し、この単離されたポリヌクレオチドは、対象のポリペプチドの特異的細胞生産性を細胞内で少なくとも5pg/細胞/日増加させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の詳細な説明
本発明は、目的とする特別のポリペプチドの特異的な細胞生産性を増加させる。機序は不明であるが、特異的な細胞生産性の増加は、多くの哺乳動物細胞に認められるよりも大きなレベルまでスプライス形態のXBP−lタンパク質が発現することに由来する細胞の折り畳みのないタンパク質反応のアップレギュレーションに起因すると考えられている。この情報を利用してポリペプチド、特に発現が困難なもの生産水準を増加させることができる。
【0035】
「外因性」は、細胞、身体あるいは器官の外に由来、または外で産生されることを意味する。
【0036】
「特異的な細胞生産性」は、特定の期間に所定の数の細胞から分泌されたタンパク質合成のレベルあるいはポリペプチドの量を意味する。特異的な細胞生産性に関する値は、pgタンパク質/細胞/日として一般に記録される。
【0037】
本明細書で使用される「転写因子」は、真核遺伝子中の特異的修飾配列のRNAポリメラーゼにより認識を変化させる(例えば、配列を刺激あるいはダウンレギュレートする)ために必要なポリペプチドを意味する。転写因子の共通する構造的特徴は、Znフィンガーとして知られた金属−結合ドメイン、およびロイシンジッパーを含む塩基性残基を有することである。
【0038】
「約」は、問題となる値のプラス・マイナス5%を意味する。したがって、例えば、「約20%」は19%から21%を意味する。
【0039】
「1つの」、「1つの」およびその類似型は、他に指示のない限り、複数形を含む。さらに、単数形も複数形と等しいことを示す。したがって、例えば、ポリヌクレオチドは複数のポリヌクレオチドがさらに含まれる。
【0040】
XBP−1
XBP−1遺伝子は、ポリペプチドのスプライスされていないおよびスプライスされたバージョンの両方をコードする2つの読取枠(ORF)を有する。用語「遺伝子」は、そのヌクレオチド配列がRNAまたはポリペプチドをコードする核酸を指す。遺伝子はRNAまたはDNAのいずれかが可能である。遺伝子は、翻訳領域(リーダーとトレーラー)あるいは個々のコード化セグメント(エキソン)の間の介在配列(イントロン)に先行または後続する領域を含む。
【0041】
XBP−1 mRNAは、ERストレスに応じてスプライスされる。ERストレスは、ERの管腔内で折り畳まれない/誤って折り畳まれたタンパク質が蓄積されるなどの様々な機序によって引き起こされる。ストレスのない哺乳動物細胞中の低レベルで発現されたスプライスされていないXBP−1 mRNAが翻訳されるが、一包ERストレス状態下では、XBP−1イントロンが切除される。XBP−1遺伝子生成物は、その開始コドンが図1A(配列番号1)に示されるヌクレオチド配列の位置1−3にある約54kDaの推定分子量の約370のアミノ酸残基のアミノ酸配列を有する。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来のスプライスされたXBP−1タンパク質のアミノ酸配列を図1B(配列番号2)に示す。成熟XBP−1タンパク質は2つの主要な構造ドメインを有する。第1の主要な構造領域は、DNA結合ドメインを含む塩基性ロイシンジッパー領域であり、図1B中の約65〜約118までのアミノ酸残基に相当すると予想される。別の主要な構造領域は、図1Bの約160〜約370までのアミノ酸残基に相当すると予想されるトランス活性化ドメインである。上述のXBP−1タンパク質ドメインの正確な「アドレス」に関して、使用される判定基準よると同業者とは意見が一致しないと考えられる。したがって、例えば、図1B(配列番号2)におけるXBP−1タンパク質DNA結合およびトランス活性化ドメインは、ドメインを限定するために使用される判定基準に依存して、わずかに異なる(例えば、図1Bに示すものと比較して、正確な「アドレス」は約1〜5残基異なる)可能性がある。これは、結合またはトランス活性化の結果、目的のポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させるような結合またはトランス活性化する領域と一般に定義される。
【0042】
一実施形態において、本発明はXBP−1活性を保持するXBP−1のスプライスされた変異体の任意の誘導体に関する。このような誘導体は、1つ以上のヌクレオチドを有するヌクレオチド置換、欠失、あるいは付加によって産生されたものを含む。XBP−1翻訳領域の変化は、保守的または非保存的アミノ酸の置換、欠失、あるいは付加体を産生する。一実施形態において、この変化はサイレントな置換、付加、および欠失であり、これはXBP−1タンパク質あるいはその一部の特性および活性を変化させない。別の実施形態では、この変化は保存的置換である。
【0043】
本明細書で区別なく使用されるように「ポリヌクレオチド」あるいは「核酸分子」は、2つ以上の任意の長さのヌクレオチドポリマーを指し、DNAおよびRNAの両方を含んでいる。ヌクレオチドとしては、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド類似体(修飾されたリン酸塩成分、塩基、あるいは糖を含む)、あるいはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼなどの適切な酵素によってポリマー内に取り込むことのできる任意の基質が可能である。したがって、ポリヌクレオチドはメチル化ヌクレオチドなどの修飾されたヌクレオチドおよびそれらの類似体を有する。さらに、ヌクレオチドの五炭糖(すなわち、リボースまたはデオキシリボース)環上に通常存在する任意のヒドロキシル基が、ホスホン酸塩またはリン酸基と置換され、標準の保護基により保護され、活性化され追加のヌクレオチドへの追加結合が調製され、固体支持体と接合される。五炭糖環上の5’および3’末端OH基ヌクレオチドは、約1個から約50個の炭素原子までのアミンあるいは有機キャップ形成基成分によりリン酸化され、あるいは置換される可能性がある。リボースまたはデオキシリボース環上の他のヒドロキシル基も標準保護基に誘導体化される。ポリヌクレオチドは、例えば、2’−O−メチル−2’−O−アリル、2’−フルオロ−あるいは−2’−アジド−リボース、炭素環式糖類似体、アノマー糖、アラビノース、キシロースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、およびメチルリボシドなどの非塩基性ヌクレオシド類似体などの一般に当業者において公知のリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態をさらに含むことができる。1つ以上のホスホジエステル結合が代わりの結合基と入れ替わってもよい。これらの代わりの結合基としては、リン酸塩がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、「(O)NR(「アミド化」)、P(O)R、P(O)OR’、COあるいはCH(「ホルムアセタール」)と置換した実施形態などがあるが、これに限定されない。ここで各RあるいはR’は、個別のH、またはエーテル(−−0−−)結合、アリール、アルケニル、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、あるいはアラルジルを任意に含む置換または非置換のアルキル(1−20C)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。前述の記載は、RNAとDNAを含む本明細書に引用された全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0044】
「ヌクレオチド」あるいは「NTP」は塩基−糖−燐酸化合物を指す。「塩基」は、五炭糖糖およびリン酸基と結合した場合に、ヌクレオチドを形成する窒素含有環状分子を指す。塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)などの単環状ピリミジン、およびアデニン(A)およびグアニン(G)などの二環状プリンがある。「糖」あるいは「五炭糖糖」は、リボース環またはデオキシリボース環などの五炭糖環を一般に指す。ヌクレオチドは、両タイプの核酸ポリマー、すなわちRNA、DNAのモノマーサブユニットである。「ヌクレオチド」あるいは「NTP」は、任意のヌクレオシド’5リン酸塩、すなわち、リボヌクレオシド5’リン酸塩(すなわちモノ−、ジ−、また三リン酸)、およびデオキシリボヌクレオシド5’リン酸塩(すなわち、モノ−、ジ−、また三リン酸)を指し、また「ヌクレオシドリン酸類似体」、「ヌクレオチド類似体」、および「NTP類似体」を含む。「ヌクレオシドリン酸類似体」、「ヌクレオチド類似体」、および「NTP類似体」は、未変性ヌクレオチドと類似するが、相当する未変性ヌクレオチドと比較すると1つ以上の化学修飾を含む任意のヌクレオシド5’リン酸塩(すなわち、モノ−、ジ−、あるいは三リン酸)を指す。ヌクレオチド類似体は、塩基−修飾類似体(例、5−メルカプトピリミジン、8−メルカプトプリン)、リン酸塩−修飾類似体(例、チオ三リン酸)、および糖−修飾類似体(3’OMe、3’デオキシ)を含み、デオキシリボヌクレオチドならびにリボヌクレオチドの修飾された形態を有する。
【0045】
他に指示のない限り、本明細書に記載された「ポリヌクレオチド配列」はそれぞれ、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。しかしながら、RNA分子またはポリヌクレオチドにおける「ポリヌクレオチド配列」により、リボヌクレオチド(A、G、C、およびU)の相当する配列が、特定のデオキシヌクレオチド配列中の各チミジンデオキシヌクレオチド(T)で、リボヌクレオチドウリジン(U)と置換される場合がある。例えば、デオキシリボヌクレオチド略号を使用して記載される配列番号1の配列を有するRNA分子に関して、配列番号1の各デオキシヌクレオチドA、G、あるいはCが対応するリボヌクレオチドA、G、あるいはCと置換され、各デオキシヌクレオチドTはリボヌクレオチドUと置換された配列を有するRNA分子を示すことを意味する。
【0046】
したがって1つの態様において、本明細書にさらに記載されるように、XBP−1タンパク質、またはそのスプライスバリアントをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。優性であるか、または優性ではない選択可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドがさらに提供される。本明細書で使用される「選択可能なマーカー」は、遺伝子配列によってコードされた遺伝子配列またはタンパク質であり、選択可能なマーカーによってコードされたタンパク質の発現は、選択可能なマーカーを含む単離されたポリヌクレオチドで形質移入された宿主細胞が、それ以外のタンパク質を含まない宿主細胞を死滅させる選別プロセスに生き残ることを保証する。
【0047】
「単離された」ポリヌクレオチドによりは、その在来の環境から除去された核酸分子、すなわちDNAまたはRNAを意味する。例えば、この用語が本明細書に使用されるように、生きている動物中にそのまま存在するポリヌクレオチドあるいはポリペプチドは「単離されて」いないが、その自然状態の共存する材料から分離された同じポリヌクレオチドあるいはポリペプチドは「単離されて」いる。したがって、ベクター中に含まれる組換えDNA分子は、本発明の目的において単離されたと考えられる。「単離されたポリペプチド」あるいは「単離されたポリヌクレオチド」は、組換え宿主細胞から、あるいは天然源から部分的または実質的に精製されたポリペプチドあるいはポリヌクレオチドであることをさらに意味する。例えば、化合物の組み換え的に生成されたバージョンは、Smith and Johnson,Gene 67:31−40(1988)に記載された1工程法によって実質的に精製することができる。
【0048】
「単離された」により、(もし有する場合)本発明のDNAが誘導される生物体の在来のゲノムにおいて、本発明のDNAをコードする遺伝子を直ちにフランクする遺伝子のコード配列をこのDNAは含まないことを意味する。単離されたDNAは単鎖または二重鎖でもよく、ゲノムDNA、cDNA、組換え型雑種DNA、あるいは合成DNAでもよい。在来DNA配列と同一でもよく、あるいは欠失、付加、あるいは置換により、このような配列あるいは1つ以上のヌクレオチドとは異なっていてもよい。
【0049】
生物学的細胞あるいは宿主から調製された配合物を指す「単離された」あるいは「精製された」は、対象のポリヌクレオチドあるいはポリペプチドの粗抽出液などの指示された核酸またはタンパク質を含む任意の細胞抽出液を意味すると理解すべきである。更に、「純粋な」あるいは「単離された」核酸あるいはタンパク質の調製は、このような核酸あるいはタンパク質は未変性と通常関係するが、未変性の材料を含まない配合物を意味すると理解すべきである。
【0050】
単離されたDNA分子のさらなる事例としては、溶液中の異種性宿主細胞、または精製(部分的あるいは本質的に)DNA分子内に維持された組換えDNA分子などがある。単離されたRNA分子としては、本発明のDNA分子のインビトロRNA転写物などがある。本発明による単離された核酸分子は、合成的に生成されたそのような分子をさらに含む。
【0051】
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、開始コドンが図1A(配列番号1)に示すヌクレオチド配列の位置1〜3にあるORFを有するDNA分子を含み、開始コドンが図1A(配列番号1)に示すヌクレオチド配列の位置1〜3にあるORFの全てまたは一部が本質的に異なる配列を有するが、遺伝暗号の縮重度によりスプライスされたXBP−1タンパク質あるいはそれらの機能的フラグメントを依然としてコードするDNA分子をさらに含む。「機能的フラグメント」によりは、細胞内で発現する場合に、対象とするポリペプチドの特異的細胞生産性の増加を招くXBP−1のフラグメントを意味する。さらに、単離されたポリヌクレオチドは、対象とするポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。当然のことながら、その遺伝暗号は当業者において十分公知である。したがって、当業者が上述の変性した変異体を産生することは通常のことであろう。
【0052】
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、XBP−1タンパク質DNA結合ドメイン(配列番号2における約65から約118までのアミノ酸残基)を有するポリペプチド、XBP−1タンパク質トランス活性化ドメイン(配列番号2における約160から約370までのアミノ酸残基)を有するポリペプチド、およびXBP−1タンパク質DNA結合およびトランス活性化ドメイン(配列番号2における約65から約370までのアミノ酸残基)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0053】
本発明のさらなる実施形態では、(a)配列番号2にアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(b)XBP−1DNA結合ドメインをコードするヌクレオチド配列、および(c)(a)および(b)におけるヌクレオチド配列の任意の配列に相補的なヌクレオチド配列に対して、少なくとも95%同一、および少なくとも96%、97%、98%、あるいは99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を含む。
【0054】
XBP−1ポリペプチドをコードする基準ヌクレオチド配列に対して、少なくとも、例えば95%「同一の」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによっては、ポリヌクレオチド配列がXBP−1ポリペプチドをコードする基準ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチド当たり5ポイントまでの変異を含んでいることを除いて、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が基準ヌクレオチド配列と同一であることを意味する。言い換えると、基準ヌクレオチド配列に対して、少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、基準配列内のヌクレオチドの5%までが除去され、または別のヌクレオチドで置換され、あるいは基準配列内の総ヌクレオチドの5%までのいくつかのヌクレオチドが基準配列に挿入される。この基準配列のこれらの変異は、基準ヌクレオチド配列の5’末端または3’末端位置で、あるいはこれらの末端位置の間の任意の場所で生じ、ヌクレオチド間の基準配列中、あるいは基準配列内の1つ以上の隣接する基中のいずれかに別々に点在する。95%同一の配列は、細胞中で発現した場合に対象のポリペプチドの少なくとも5%の特異的細胞生産性の増加を引き起こす能力により定義されるようなXBP−1活性を有する。
【0055】
「同一性」それ自体は、同業者に認識された意義を有し、出版された技術を使用して計算することができる。(例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;and Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991参照)。
【0056】
実際問題として、任意の特定の核酸分子が少なくとも95%、96%、97%、98%、あるいは99%同一のヌクレオチド配列を有する場合、例えば、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)などの従来の既知のコンピュータプログラムを使用して、図1Aに示すヌクレオチド配列を決定することができる。Bestfitは、2つの配列間の相同性の最適セグメントを見いだすために、SmithおよびWatermanの局所性相同性アルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981))を使用する。特定の配列が本発明による基準配列に対して例えば95%同一であるかどうかを判定するために、Bestfitまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用する場合は、当然のことながら、パラメータは基準ヌクレオチド配列の完全長にわたり同一性の割合が計算されるように、基準配列中のヌクレオチド総数の5%までの相同性の相違が許容されるようにセットされる。
【0057】
2つの配列間の同一性および類似性を判定するための他のコンピュータプログラム法としては、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984)),BLASTP,BLASTN,FASTA(Atschul,S.F.et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990))などがあるがこれに限定されない。
【0058】
本発明の実施形態は、XBP−1タンパク質活性を有するポリペプチドをコードする図1Aに示す核酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、あるいは99%同一の核酸分子を含む。「XBP−1タンパク質活性を有するポリペプチド」によっては、特定の生物検定で測定した場合、XBP−1タンパク質と比較すると類似するが必ずしも同一ではない活性を示すポリペプチドを意味する。
【0059】
遺伝暗号の縮重のため、図1A(配列番号1)に示す核酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%同一の多数のポリヌクレオチドが「XBP−1タンパク質活性を有する」ポリペプチドをコードするであろうと当業者は判断すると予想される。実際、変性した変異体は全て同じポリペプチドをコードするので、上述の比較分析を行わずとも同業者にはこれは明白であろう。変性した変異体ではないポリヌクレオチドのような場合も、かなりの数がXBP−1タンパク質活性を有するポリペプチドをさらにコードすると予想されることが同業者にさらに認識されるであろう。これは、同業者はタンパク質機能に有意に影響を及ぼす可能性があるか、またはその可能性の全くないアミノ酸置換(例えば、1つの脂肪族アミノ酸を第2の脂肪族アミノ酸に置換すること)を十分把握しているからである。本明細書で使用される「置換」は、それぞれポリペプチドまたは核酸中の1つ以上のアミノ酸あるいはヌクレオチドの置き換えにより生じる。
【0060】
例えば、表現型的にサイレントなアミノ酸置換を行う方法に関する解説は、Bowie,J.U.,et al.,“Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions,” Science 247:1306−13 10(1990)に提供され、この著者は変更すべきアミノ酸配列に対する耐性を試験するための主要なアプローチが2つあることを示している。第1の方法は、変異は自然選択によって許容されるかまたは拒絶されるかのいずれかの進化のプロセスを基礎とする。第2のアプローチは遺伝子工学を使用してクローン化遺伝子の特定位置でアミノ酸変化を導入し、機能を維持する配列を選択またはスクリーニングする。この著者らが述べているように、これらの研究により、タンパク質はアミノ酸置換に関して驚くほど耐容性であることが分かった。著者らは、アミノ酸変化はタンパク質のある特定の位置で許容されるらしいことをさらに示している。例えば、最も埋没したアミノ酸残基は無極性の側鎖を必要とするが、一方表面側鎖の特徴は一般にほとんど保存さない。表現型的にサイレントな置換のような他の方法については、上記Bowieら、および本明細書に引用された参考文献に記載されている。
【0061】
示されるように、変化は一般にタンパク質の折りたたみ構造または活性に有意な影響を及ぼさないような保存的アミノ酸置換などのマイナーな性質を有する(表1参照)。
【0062】
【表1】

本発明のさらなる実施形態では、単離されたXBP−1ポリヌクレオチドはその他のポリヌクレオチドをさらに有する。これらのその他のポリヌクレオチドは、折り畳みのないタンパク反応経路のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがさらに可能である。本発明の一実施形態では、その他のポリヌクレオチドは、折り畳みのないタンパク反応経路の第2の転写因子をコードする。本発明の別の実施形態では、XBP−1ポリヌクレオチドは、ATF6ポリペプチドあるいはその活性化ドメイン(図2A−2B)(配列番号3−4)をコードするポリヌクレオチド、あるいはこれらの機能的フラグメントをさらに有する。「機能的フラグメント」によっては、XBP−1を発現する細胞中で発現した場合に、対象のポリペプチドの特異的細胞生産性の増加を引き起こすATF6フラグメントを意味する。本発明の別の実施形態では、その他のポリヌクレオチドは翻訳エンハンサーをコードする。本発明のさらなる実施形態では、翻訳エンハンサーは、eIF2α S51A(図3A〜3B)(配列番号5〜6)、あるいはこれらの機能的フラグメントである。「機能的フラグメント」によっては、XBP−1を発現する細胞中で発現した場合、対象のポリペプチドの特異的細胞生産性の増加を引き起こすeIF2α S51Aフラグメントを意味する。
【0063】
対象のポリペプチド
本明細書で使用されるように、「対象のポリペプチド」は、約10個をこえるアミノ酸を有するペプチドおよびタンパク質を一般に指す。このポリペプチドは宿主細胞に対して内因性でも外因性でもよく、それらがCHO細胞によって産生されたヒトタンパク質、あるいは哺乳動物細胞によって産生された酵母ポリペプチドなどの異種、すなわち利用されている宿主細胞に対して外来性であることを意味する。一実施形態において、媒体中へ直接分泌されるか、または分泌されるように作るか、あるいは同業者において公知の手段により分泌されるように設計されるような哺乳類ポリペプチド(哺乳類生物体に本来由来したポリペプチド)が使用される。
【0064】
哺乳類ポリペプチドの実例としては、レニンなどの分子、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、リポタンパク質、α1−アンチトリプシン、インシュリンA鎖、インシュリンB鎖、プロインシュリン、濾胞刺激ホルモン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、グルカゴンなどの成長ホルモン、因子VIIIC、第IX因子、組織因子、およびフォンウィルブランド因子などの凝固因子、プロテインCなどの抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺表面活性剤、ウロキナーゼ、またはヒト尿、あるいはヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、造血性成長因子、腫瘍壊死因子−αおよび−β、エンケファリナーゼ、ランテス(一般に発現し、分泌されたT細胞の活性化を制御する)、ヒトマクロファージ炎症蛋白(MIP−1−α)、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン、ミューラー阻害物質、リラキシンA鎖、リラキシン軽鎖、プロリラキシン、マウス性腺刺激ホルモン−関連ペプチド、β‐ラクタマーゼなどの微生物タンパク質、DNA分解酵素、インヒビン、アクチビン、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、ホルモンまたは成長因子のための受容体、インテグリン、プロテインAまたはD、リウマチ因子、骨−由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、−6(NT−3、NT−4、NT−5、あるいはNT−6)などの神経栄養因子、またはNGF−βなどの神経成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、aFGFおよびbFGFなどの繊維芽細胞成長因子、上皮細胞成長因子(EGF)、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5を含むTGF−αおよびTGF−βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF)、インシュリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II)、des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質、CD2、CD3、CD4、CD8、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD32、CD45、CD80、CD86、CDw128、CD154、CD183、CD184、およびCD195などのCDタンパク質、エリスロポエチン、骨誘導因子、免疫毒素、骨形態形成タンパク質(BMP)、インターフェロン−α、−β、および−γなどのインターフェロン、コロニー刺激因子、例えばM−CSF、GM−CSF、G−CSF(CSF)、インターロイキン、例えばIL−1からIL−12(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜タンパク質、解離促進因子、AIDS外被部分などのウイルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節タンパク質、抗体、および上にリストされたポリペプチドのうちの任意のフラグメントなどがあるがこれに限定されない。
【0065】
本発明の一実施形態では、対象のポリペプチドは抗体または抗体フラグメントである。
【0066】
本明細書に使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分を指す。このような抗体としては、多クローン、単クローン、多クローン、哺乳類、マウス、ヒト、霊長類、霊長類化、ヒト化、キメラ、単鎖、Fab、Fab’、およびFab’フラグメント、Fc、Fc−Fc融合タンパク質、Fv、単鎖Fv、四価Fv、消去されたドメイン、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖および軽鎖、ミニボディ、二重特性抗体およびFab発現ライブラリ、または当業者において知られるその他の形態の抗体などがあるがこれに限定されない。事例は、Fundamental Immunology,Paul,W.E.ed.,Raven Press,New York,NY(1993)で見出すことができる。一般に、ヒト抗体分子は、分子の中に存在するH鎖の性質によって互いに異なる任意のIgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDクラスと関連する。あるクラスは同様に、IgG、IgG、およびその他のサブクラスを有する。更に、ヒトでは、L鎖はκ鎖またはλ鎖でもよい。抗体に関する本明細書の参考文献としては、すべてのクラス、サブクラス、およびタイプの抗体種に対する参照を含む。
【0067】
抗体フラグメントは抗原と結合する能力を保持する必要はないが、抗体フラグメントが結合抗原の機能を実行することができることが示されている。本明細書で使用されるように「抗体フラグメント」は、(1)V、V、C、およびC1ドメインからなるFabフラグメント、(2)VおよびC1ドメインからなるFdフラグメント、(3)単一抗体のVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(4)VドメインからなるdAbフラグメント(Ward,E.S.et al.,Nature 341:544−546(1989))、(5)単離されたCDR領域、(6)F(ab’)フラグメント、(7)単鎖Fv分子(scFv)であって、VドメインおよびVドメインは、この2つのドメインが抗原結合部位を形成するために会合できるペプチドリンカーによって結合されているもの(Bird,et al.,Science 242.423−426(1988);Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883(1988))、(8)四価単鎖Fv、(9)両特異性単鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)、(10)抗体を除去したドメイン、(11)除去されたCHドメイン、(12)ミニボディ、(13)二重特性抗体、遺伝子融合によって構築された多価あるいは多重特異性フラグメント(WO 94/13804;P.Holliger et al.,Proc.Nati.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)、(14)Fc断片、(15)Fc−Fc融合蛋白質(国際公開第02/088317号パンフレット)、(16)抗体L鎖、(17)抗体H鎖、(18)抗体H鎖およびL鎖の組み合わせ、などがあるがこれに限定されない。
【0068】
抗体のパパイン消化により、一つの抗原結合性部位、残留「Fc」フラグメント、容易に結晶化させる能力を反映する呼称を各々有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントが産生される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、架橋結合抗原がまだ可能なF(ab)フラグメントが産出される。
【0069】
「Fc−Fc融合タンパク質」は、同じまたは異なる抗体サブクラスの抗体Fcフラグメントを有する2つ以上のポリペプチドの融合体である。Fcフラグメントは任意の配向方向に配列し、スペーサ分子と結合し、あるいは直接結合する。Fc−Fc融合タンパク質は、2つの細胞表面レセプタ同時に架橋するのに有用である。Fc−Fc融合タンパク質の例は、参照によって本明細書に引用されている国際公開第02/088317号パンフレットに記載されている。
【0070】
「Fv」は完全抗原認識および抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、タイトな非共有結合性会合による1つのH鎖、および1つのL鎖可変ドメインの二量体からなる。これは、各可変ドメインの3つのCDRがV−V二量体表面上の抗原結合性部位を限定するために相互作用するこの構造内にある。一括すると、6つのCDRが抗体に対する抗原結合性特異性を与える。しかしながら、全結合部位より親和性は低いが、単一の可変ドメイン(あるいは抗原に特異的な3つのCDRのみを有するFvの半分)でさえ抗原を認識し結合する能力を有する。
【0071】
Fabフラグメントは、L鎖の定常ドメイン、およびH鎖の第1の定常ドメイン(C1)をさらに含む。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むH鎖C1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基が付加することによりFab’フラグメントとは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有するFab’についての本明細書の呼称である。F(ab’)抗体フラグメントは、対の間にヒンジシステインを有するFab’フラグメント対として元来産生された。抗体フラグメントのその他の化学的組み合わせも知られている。
【0072】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「L鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κとλと呼ばれる2つのあきらかに別個の型に割り当てることができる。
【0073】
本明細書で使用される用語「ドメイン削除抗体」は、定常領域ドメインの少なくとも1つ以上の分画が削除され、あるいはそれ以外にほぼ同じ結合特異性を有する全体の未変性の抗体と比較して、腫瘍局在化を増加させあるいは血清半減期を減少させるなどの所望の生化学的特徴を提供するように変化させた任意の抗体、あるいは抗原結合フラグメントまたはその組換え型を意味するものとする。本発明の実施形態では、修飾された抗体の定常領域の1つの全ドメインが削除され、さらに別の実施形態では、C2ドメイン全体が削除されるものとする。
【0074】
「単鎖Fv」あるいは「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVおよびVドメインを有し、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖の中に存在する。このFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVおよびVドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに有する。sFvの解説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照。四価単鎖Fvは複数の抗原結合特異性を有するポリペプチドである。
【0075】
「ミニボディ」は、ヒンジ領域、および免疫グロブリン分子のCH3ドメインと融合した在来抗体のVおよびVドメインを含む設計された抗体構成物である。ミニボディは、したがって抗原結合領域、二価分子への組み立てを可能にするCH3ドメイン、ジスルフィド結合による二量体化に適応する抗体ヒンジを保持する単一タンパク質鎖中でコードされた完全抗体の小型バージョンである。対照的に、在来の抗体は4つの鎖、2つのH鎖およびL鎖で構成される。
【0076】
用語「二重特性抗体」は、2つの抗原結合性部位を備えた小型の抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(V−V)中でL鎖可変ドメイン(V)と結合したH鎖可変ドメイン(V)を有する。同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成することを可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、このドメインは別の鎖の相補的なドメインと強制的に対が形成され、2つの抗原結合性部位を生成する。二重特性抗体は、例えば欧州特許出願公開第404,097号明細書、国際公開第93/11161号パンフレット、およびHollinger et al.,Proc.Nati.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)にてより詳細に記載されている。
【0077】
ベクターおよび宿主細胞
本発明は対象のポリペプチドに加えて、組換え技術によって本発明の単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターを含む宿主細胞、XBP−1ポリペプチドまたはそのフラグメントの製造にさらに関する。
【0078】
本明細書に記載されたXBP−1をコードするポリヌクレオチドおよびスプライスバリアントポリペプチドは、宿主において同定および/または繁殖のための選択可能なマーカーを含むベクター内に組み込まれてもよい。以下に詳細を考察するように、一般にプラスミドベクトルは、リン酸カルシウム沈殿物などの沈殿物として、電気穿孔法などの電流を使用して、あるいは電荷を帯びた脂質および類似物との錯体中などの任意の適切な方法により宿主細胞内に導入される。ベクターがウイルスである場合、適切な包装細胞系を使用してインビトロで包装され、宿主細胞へ伝達してもよい。
【0079】
本発明の実施で使用される一実施形態は、対象のポリヌクレオチドに効果的に結合したシス作動性制御域を有するベクターである。シス作動性制御域はオペレータおよびエンハンサー配列を含む。
【0080】
本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のより高度な真核生物による転写は、ベクター内にエンハンサー配列を挿入することにより増強される場合がある。エンハンサーは、与えられた宿主細胞型においてプロモーターの転写活性が増加するように作用する通常約10〜300bpのシス作動性エレメントである。エンハンサーの事例としては、bp100〜270の複製開始点の後側、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後側上のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサー上に位置するSV40エンハンサーなどがある。
【0081】
適切なトランス作動性因子は、宿主により供給され、補助ベクターにより供給され、あるいは宿主中へ導入され次第、ベクター自体によって供給されてもよい。
【0082】
本発明におけるある実施形態において、このベクターは誘致可能なおよび/または細胞型に特異的な場合がある特異的発現を提供する。いくつかの実施形態では、温度および栄養添加物などの操作することが容易な環境因子により誘導性を示すベクターを含む。
【0083】
本発明に有用なその他の発現ベクターとしては、染色体−、エピソーム−、およびウイルス−由来のベクター、例えば細菌性プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント、バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびレトロウイルスなどのウイルス類に由来したベクター、およびコスミドおよびファージミドなどのこれらの組み合わせに由来したベクターなどがある。
【0084】
種々の手順によって適当な核酸配列をベクターに挿入することができる。当業者において公知の手法によって、核酸配列は適当な(複数の)制限酵素部位に一般に挿入される。このような手法およびその他は当業者の範囲内であると考えられる。
【0085】
それらの発現が可能となるように、適当なポリヌクレオチドはベクター中で配向すると予想される。本明細書では対象のポリペプチドに先立ち、XBP−1中での配向を考察するが、対象のポリペプチドの発現を引き起こす任意の配向について考察する。
【0086】
核酸挿入は、CMVプロモーター、SV40初期、後期プロモーター、およびレトロウイルスLTRプロモーター、および真核細胞またはこれらのウイルス中の遺伝子発現をコントロールすることが知られたその他のプロモーターなどの適当なプロモーターと容易に結合する必要がある。その他の適当なプロモーターは同業者に公知であろう。本明細書で使用されるように、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼ作用のための結合部位または開始部位を提供する最小のヌクレオチド配列、あるいはヌクレオチド配列群を指す。この発現構成物は、転写開始、終結、および転写された領域における翻訳のためリボソーム結合部位をさらに含む。この構成物により発現された成熟転写物のコード部分は、開始部分で翻訳を開始すること、翻訳されるポリペプチド終端に適切に位置する終止コドン(UAA、UGAあるいはUAG)を含む。このベクターは、発現を増幅するのために適切な配列をさらに含むことができる。
【0087】
本明細書で使用されるように、「効果的に接合された」という語句は、配列(または複数の配列)の機能を変化させることができるような方法で、ヌクレオチド配列が別のヌクレオチド配列(あるいは複数の配列)と接続される際の結合を指す。例えば、プロモーターと容易に結合されるタンパク質コード配列は、この配列の影響下または管理下でタンパク質コード配列が発現される。2つのヌクレオチド配列(配列をコードするタンパク質、およびコード配列の5’末端に結合されたプロモーター領域配列など)が、プロモーター機能の誘導により配列mRNAをコードするタンパク質の転写引き起こす場合、およびこの2つのヌクレオチド配列間の結合特性が、(1)フレーム‐シフト突然変異の導入を引き起こさず、(2)mRNAまたはタンパク質の発現を割り当てるための制御配列の発現を妨害しない場合に、効果的に結合されると呼ばれる。したがって、このプロモーターがそのヌクレオチド配列の転写を達成することができる場合、プロモーター領域はヌクレオチド配列と効果的に結合されるであろう。効果的に結合される2つのヌクレオチド配列も、スペーサ分子の使用、すなわちそれらは一時的に互いに隣接している必要がない状態により結合することができる。
【0088】
本明細書で使用されるように、語句「クローニングベクター」は、宿主細胞内で自律的に複製することができ、ベクターの必須の生物学的機能の損失なしにこのような核酸配列が確定的な様式で切断され、また核酸がその複製およびクローニングを引き起こすためにスプライスされる場合がある1つまたは少数のエンドヌクレアーゼ認識部位により特徴づけられるプラスミドまたはファージ核酸あるいはその他の核酸配列を指す。クローニングベクターは、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定に使用するのに適する選択可能なマーカーをさらに含んでもよい。マーカーは、例えば、ピューロマイシン、ジヒドロ葉酸還元酵素、エリスロマイシン、アンピシリン、およびカナマイシン抵抗性である。用語「賦形剤」は、「ベクター」に使用される場合がある。
【0089】
本明細書で使用されるように、語句「発現ベクター」は、宿主内への発現ベクターの形質転換後に、発現ベクター内にクローン化された1つ以上の構造遺伝子を発現することができるクローニングベクターに類似するベクターを指す。発現ベクターでは、クローン化された構造遺伝子(対象の任意のコード配列)は、このような遺伝子が特定の宿主中で発現することを可能とするある特定の配列のコントロール下に置かれる(すなわち効果的に結合される)。発現調節配列は異なり、終止配列および/または開始と終止部位などの翻訳エレメントなどの転写エレメントをさらに含む場合がある。
【0090】
上に示されるように、発現ベクターは、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含む。このようなマーカーは、真核細胞培養株において、ピューロマイシン、ジヒドロ葉酸還元酵素、あるいはネオマイシン抵抗性を有する。適切な宿主の代表的例としては、Drosophila S2およびSpodoptera Sf9細胞などの昆虫細胞、CHO、COS、293、およびBowes黒色腫細胞などの動物細胞、および植物細胞などがあるがこれに限定されない。上記の宿主細胞のための適切な培地および条件は、当業者において公知である。
【0091】
哺乳類発現ベクターは、以下のものの1つ以上を含場合があることは当業者において認識されるであろう。すなわち、複製オリジン、適切なプロモーターおよびエンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよび受容部位、転写終止配列、および5’隣接未転写配列である。SV40スプライスに由来した核酸配列、およびポリアデニル化部位を使用して、必要な未転写の遺伝因子を提供することができる。
【0092】
真核生物中で本発明のポリペプチドの発現に使用される発現ベクターとしては、米国特許第5,648,267号明細書、第5,733,779号明細書、第6,017,733号明細書、および第6,159,730号明細書、ならびにその他の登録商標のある発現ベクターで記載されるように、インビトロゲン社より入手できるpIND/hygro、ストラタジーン社から入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、およびpSG、ファルマシア社より入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL、およびNEOSPLAベクターおよびその類似物などがある。
【0093】
さらなる実施形態では、本発明は上記構成物を含む宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳動物細胞などのより高度な真核細胞あるいはより低い真核細胞が可能である。宿主細胞中への構成物の導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン媒介形質移入、陽イオン脂質媒介形質移入、伝達、感染、あるいはその他の方法により達成することができる。このような方法は、Davis et al.,BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLoGY(1986)などの多くの標準的実験手引き書に記載されている。
【0094】
組換え体構成物は、感染、伝達、形質移入、トランスベクション、電気穿孔法、および形質転換などの公知の技術を使用して宿主細胞中に導入される。ベクターは、例えばファージ、プラスミド、ウイルスあるいはレトロウイルスベクターなどがある。レトロウイルスベクターは複製形質転換受容性または複製欠損でもよい。後者の場合、ウイルスの増殖は補完宿主細胞にのみ生じる。
【0095】
宿主細胞は、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターが可能な本発明のベクターにより遺伝子的に操作され(伝達され、形質転換され、または形質移入される)。宿主細胞は、以前に目的のポリペプチドを発現するように遺伝子的に操作され、第2の発現ベクターまたは本発明のベクターにより遺伝子的に操作される細胞をさらに指す。ベクターは例えばプラスミド、ウイルス粒子などの形態をとることができる。設計された宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、あるいは目的のXBP−1および/またはポリペプチドを増幅するために適するように改質された従来の培養媒体中で培養できる。温度、pH値、電流などの培養条件は、発現に選択された宿主細胞と共に以前に使用されたものであり、当業者においては明白であろう。
【0096】
組換え技術によって、目的のXBP−1およびポリペプチドを産生するために本発明のポリヌクレオチドを使用することができる。したがって、例えば、種々の発現媒体のうちの任意の1つ、特にポリペプチドを発現するためのベクターあるいはプラスミドにポリヌクレオチド配列を含めることができる。このようなベクターとしては、染色体性、非染色体製、および合成の核酸配列、例えばSV40誘導体、プラスミドの組み合わせに由来したベクター、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、アルファウイルス、およびオーエスキー病などのウイルス性核酸などがある。しかしながら、宿主中で生存可能である限り、その他のプラスミドまたはベクターも使用することができる。
【0097】
上述のように、宿主のタンパク質を発現を可能にする適当な宿主を形質転換するために、XBP−1をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、および任意にその他のポリペプチド、および選択可能なマーカー、ならびに適切なプロモーターまたは対照配列を使用することができる。
【0098】
適切な宿主の代表例としては、DrosophilaおよびSf9などの昆虫細胞、CHO、COSあるいはBowes黒色腫などの動物細胞、植物細胞などが挙げられる。適切な宿主の選択は、本明細書に開示された当業者に公知の範囲内であると考えられる。
【0099】
本発明は、広く上述された配列の1つ以上を有する組換え構成物をさらに含む。この構成物は、順方向または逆方向に配向した本発明の配列が挿入されたプラスミドまたはウイルスベクターなどのベクターを有する。この実施形態の態様では、構成物は、この配列に効果的に結合された例えばプロモーターなどの制御配列をさらに有する。多くの適切なベクターおよびプロモーターは、当業者に知られていおり、市販されている。例として以下のベクターが提供されている。Eukaryotic、pIND/hygro(インビトロゲン社)、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(ストラタジーン社)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(ファルマシア社)。しかしながら、宿主内で複製可能で、生存可能である限り、その他のプラスミドまたはベクターも使用することができる。
【0100】
成熟タンパク質は、適切なプロモーターの管理下で、哺乳類あるいはその他の細胞中で発現することができる。真核宿主とともに使用のための適切なクローニングおよび発現ベクターは、内容の開示は参照によって本明細書に引用されたSambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989)に記載されている。
【0101】
組換えタンパク質を発現するために、多様な哺乳動物細胞培養系を使用することができる。哺乳動物発現系の事例としては、Gluzman,Cell 23:175(1981)により記載されたサル腎臓線維芽細胞のCOS−7系、および適合するベクターを発現することができるその他の細胞系、例えば、C127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞系などがある。「細胞系」あるいは「細胞培養」は、インビトロで成長または維持された真核細胞を意味する。細胞の子孫は親細胞と完全には同一(形態学的に、遺伝子型に、あるいは表現型的のいずれか)ではなともよいことが分かる。
【0102】
本明細書に記載したベクター構成物を有する宿主細胞を含むことに加えて、本発明は、内因性遺伝物質(例えばXBP−1コード配列)を発現するため、および/または本発明のXBP−1ポリヌクレオチドに効果的に関係している遺伝物質(例えば異種性ポリヌクレオチド配列)を含むように設計され、内因性XBP−1ポリヌクレオチドを活性化させ、変化させ、および/または増幅させる脊椎動物起源、特に哺乳類起源の一次、二次、および不死化された宿主細胞をさらに含む。例えば、当業者において公知の技術を使用して、相同的組換えにより異種性制御域(例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー)、および内因性XBP−1ポリヌクレオチド配列を会合させてもよい。(例えば、その内容全体を参照により引用された各々の開示である1997年6月24日に出願の米国特許第5,641,670号明細書、1996年9月26日に出願の国際公開第96/29411号パンフレット、1994年8月4日に出願の国際公開第94/1265号パンフレット、Koller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);and Zijlstra et al.,Nature 342:435−438(1989)参照)。
【0103】
小胞体の管腔内、あるいは細胞外環境内への対象の翻訳されたポリペプチドの分泌では、適切な分泌シグナルが対象の発現されたポリペプチド内に取り込まれる。この信号はポリペプチドに対して内因性でもよく、異種信号でもよい。
【0104】
対象のポリペプチドは、融合タンパク質などの修飾形態で発現させてもよく、分泌シグナルだけでなくその他の異種の機能領域を含んでいてもよい。したがって、例えば、精製またはその後の取扱いおよび貯蔵において、宿主細胞内での安定性および持続性を改善するために、その他のアミノ酸領域、特には帯電したアミノ酸をポリペプチドのN末端に付加させてもよい。さらに、精製を促進するためにポリペプチドにペプチド成分を加えてもよい。
【0105】
対象のポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンあるいは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーなどの公知の方法により組換え細胞培養株から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製のために使用することができる。
【0106】
本発明の対象のポリペプチドは、自然に精製された生成物、および真核宿主、例えば、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物細胞から組換え技術により産生された生成物を含んでいる。組換え生成手順における使用された宿主に依存して、本発明のポリペプチドはグリコシル化、あるいは非グリコシル化される場合がある。さらに、宿主−媒介プロセスの結果としていくつかのケースで、本発明のポリペプチドは初期修飾メチオニン残基をさらに含む。
【0107】
本発明の一実施形態において、ポリペプチドを発現する対象の宿主細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞の実例としては、SV40(COS−7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1系、ヒトレンズ上皮PERC6(登録商標)系、ヒトの胚性腎臓系(懸濁培養中で成長させるためのサブクローン化293あるいは293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ハムスター新生仔の腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Nati.Acad.Sci.USA,77:4216(1980))、サル腎培養細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587)、ヒト子宮頚癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2)、イヌの腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、JIB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44−68(1982))、MI(C5細胞、FS4細胞、およびヒト肝細胞腫系(Hep G2)などがある。CHO細胞は、本発明を実施するために好ましい細胞系である。
【0108】
大規模タンパク質発現
使用するために大量の対象とするポリペプチドを産生するためには、効率的な組換え発現系を使用することが望ましい。骨髄細胞が抗体産生および分泌に特化された自然宿主を示すので、これらに由来した細胞系が組換え型抗体の発現に使用されている。時に、免疫グロブリン遺伝子調節エレメントに基づいた複合体ベクターデザインは必要とされ、また、高度に変異した最終発現レベルが報告されている(Winter et al.,Nature 332:323−327(1988);Weidle et al,Gene 60:205−216(1987);Nakatani et al,BiolTechnology 7:805−10(1989);and Gillies et al,BiolTechnology 7:799−804(1989))。
【0109】
代替哺乳類発現系はCHO細胞の使用によって提示された。これらの細胞の使用は、研究および臨床使用のためのいくつかの治療のタンパク質の大量生産を可能にした(Kaufman et al,Mol.Cell.Biol.5:1750−1759(1985);and Zettlmeissl et al,Bio/Technology 5:720−725(1985))。
【0110】
本発明のある実施形態では、抗体を発現するCHO細胞の特異的細胞生産性は、一般に20−100pg/細胞/日の間のレベルにあるが、この範囲は限定することが目的ではない。大規模製造条件下などのいくつかの事例では、この範囲が大幅に減少する場合がある。本発明のその他の実施形態では、5pg/細胞/日以下の本発明の方法により生産されるタンパク質を提供する特異的細胞生産性を示す場合がある。本発明の多様な実施形態において、約5%〜約10%、約11%〜約20%、約21%〜約30%、約31%〜約40%、約41%〜約50%、約51%〜約60%、約61%〜約70%、約71%〜約80%、約81%〜約90%、あるいは約91%〜約100%のXBP−1なしであらかじめ対象のポリペプチドに形質移入された対照群細胞と比較して、本方法はポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる。したがって、この培養プロセスにより、例えば病理学的障害の免疫療法で使用するために得るべき機能的抗体の量を増加させることが可能となる。
【0111】
本発明の対象のポリペプチドは、種々の細胞培養条件下で所望のポリペプチドを発現する細胞を成長させることにより生産してもよい。例えば、ポリペプチドの大規模あるいは小規模生産のための細胞培養手法が本発明の趣旨の範囲内で有用である可能性がある。手法は、流動床バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、回転瓶培養、あるいはタンクバイオリアクターシステムを使用するなどがありこれに限定されないが、後者2つのシステムでは、マイクロキャリアありまたはなしで、回分、流加、あるいは連続モードで交互に操作してもよい。
【0112】
一実施形態において、撹拌されたタンクバイオリアクターシステム中で本発明の細胞培養が行なわれ、流加培養手法が使用される。流加培養法では、哺乳動物宿主細胞および培地がはじめに培養容器に供給され、追加の培養株栄養分が連続的あるいは離散的な間隔で、培養中の培養株に、培養の終了前の周期的な細胞および/または生成物の回収のありまたはなしに流加される。流加培養は、例えば周期的に全培養(細胞と培地を含む)を除去し、新しい培地と交換される半連続的流加培養を含むことができる。流加培養は、培養プロセスの開始時に細胞培養のための全ての成分(細胞および全て培養栄養分を含む)が培養容器に供給される単純回分培養と区別される。流加培養は、プロセス中に上清液が培養容器から除去されない限り、灌流培養とさらに区別できる(灌流培養では、例えば濾過、カプセル化、マイクロキャリアなどへの固着化などにより、細胞は培養中に拘束され、連続的または間欠的に培地が導入され、培養容器から除去される)。
【0113】
さらに、培養株の細胞は、考慮された特定の宿主細胞および特定の生産計画に適した方法またはルーチンに従って増殖させてもよい。したがって、本発明はシングル工程あるいは複数工程の培養手法が考慮される。シングル工程培養では、宿主細胞は培養環境中に接種され、細胞培養のシングル生産相中で本願発明のプロセスが使用される。一方、多段培養が構想される。多段培養では、細胞が多数の工程または相で培養される。例えば、細胞は、最初の工程または増殖相培養において成長し、この段階から除去され、成長および高い生存度を促進するのに適した培地中に接種される。宿主細胞培養への新鮮な培地の追加により、細胞は適切な時間の増殖相に維持される。
【0114】
本発明の1つの態様によれば、細胞培養の増殖相における哺乳動物細胞の成長を増強するために流加培養または連続的細胞培養条件が考案される。別の態様では、バルク細胞培養方法が細胞増殖のために考案される。流加あるいは連続的細胞培養条件では、成長のために最大化される条件および時間下で増殖相細胞を成長させる。温度、pH値、溶存酸素(DO2)、および類似条件などの培養条件は、特定の宿主とともに使用されるもので、当業者において明白であろう。pH値は酸(例、CO)または塩基(例、NaCOまたはNaOH)のいずれかを使用して、一般に約6.5および7.5の間の適切なレベルに調整される。CHO細胞などの哺乳動物細胞の培養に適した温度領域は、約30℃から40℃までの間で、一般に約37℃であり、適切なDOは空気飽和の5〜90%の間である。しかしながら、これらの条件の任意において、細胞型に依存してより高いまたはより低い範囲が必要な場合がある。
【0115】
特定の段階において、細胞培養の生産フェーズあるいは工程に細胞を使用し接種してもよい。あるいは、上述のように接種または増殖相あるいは工程とともに、生産フェーズまたは工程が連続的でもよい。
【0116】
本発明によれば、細胞培養の生産フェーズにおける細胞培養環境はコントロールされる。一態様において、細胞培養の生産フェーズのためのパラメータが連動する細胞培養の過渡期が、細胞培養プロセスの生産フェーズに優先する。
【0117】
哺乳動物における抗体産生、例えばCHOでは、細胞が様々な期間における「種子トレイン」中で培養され、接種物発酵槽に周期的に転送され、対象のポリペプチドのより大規模な生産ルートとなる細胞増殖プロセスが開始される半連続的プロセスが使用される。したがって、抗体産生に使用された細胞はあらかじめ規定された最大細胞齢までの多様な期間の培養株中に存在する。種子密度、pH値、培養中のDOおよび温度、生産培養の時間、回収の操作条件などの細胞培養プロセスのパラメータは、使用された特定の細胞系および培地の機能であり、過剰な実験なしに経験的に決定できる。
【実施例1】
【0118】
促進された分泌細胞系
生成物の供給材料の制約を軽減し、さらに製造原価を下げるために、製造細胞系の抗体収量を改善するいくつかの手法を評価した。1つの戦略は、産生細胞系の遺伝構成内へ分泌促進遺伝子を取り込むことである。
【0119】
個々のシャペロンおよびフォルダーゼの過剰発現が分泌されたポリペプチドの適切な折りたたみおよび組み立てを促進することができることがすでに実証されている。しかしながら、これらのケースのほとんどで、シャペロンまたはフォルダーゼの過剰発現の効果はポリペプチドに特異的なものとなっている。産生されるタンパク質に関係なく組換え宿主の分泌を改善する可能性のある1つの方法は、UPRの活性化を通して、分泌プロセスに関与する多くの遺伝子の発現を上方制御することである。
【0120】
一言で要約して言えば、UPRは真核細胞のER中での折り畳みのないポリペプチドの蓄積に対する反応である。一度刺激されると、UPRは、以下の1つ以上の方法で折り畳まれていない/異常折り畳みのポリペプチドの蓄積を管理することができる。すなわち(1)分泌器官の複数成分を上方制御する、(2)ポリペプチド翻訳を減衰させる、および(3)その後の分解のためポリペプチドを移動させる方法、である。
【0121】
抗体分泌を促進する試みでは、単細胞分離株、すなわち抗CD154抗体を発現する500nMのG418増幅細胞系中でいくつかの遺伝子が過剰発現され、分泌器官の成分が上方制御され、翻訳抑制が克服されている。これらの遺伝子は、XBP−1、核ATF6、およびeIF2αS51A変異体のスプライス形態である。
【0122】
分泌成分の上方制御に対処するため、XBP−1(配列番号2)およびATF6(配列番号4)と共にXBP−1が発現された。
【0123】
翻訳抑制に対処するため、XBP−1および核ATF6と協奏するelF2α S51A変異体(配列番号6)を発現させた。UPR中は、翻訳開始因子eIF2αのリン酸化を生じる事象のためポリペプチド合成は減少する場合がある。eIF2α中の変異は、翻訳抑制においてその役割と関連のあるタンパク質中の重要な残基のリン酸化を防止する。
【0124】
細胞系構成物
500E9は、ヒト化組換え抗CD154単クローン抗体を産生する産生細胞系である。500E9は説明の目的に使用され、制限するためのものと解釈すべきではない。対象のポリペプチドを発現するすでに述べた任意の細胞系を使用してもよい。500E9細胞系は、初期G418選択の後に、メトトレキセート増幅の3つの連続的なラウンド(5nM、50nM、および500nM)に従って得られる。500E9細胞は、抗CD154発現配列、およびG418クローンを生成するためのG418選択可能マーカーを含むプラスミドDNA発現ベクターを有する初期に形質移入されるCHO DG44細胞より産生された。続いて500E9細胞は、eIF2α変異体、核ATF6、およびXBP−1遺伝子、ならびにピューロマイシン耐性遺伝子を含むS8プラスミドDNAで電気穿孔され、S8−7E4細胞系が産生された。電気穿孔法に続いて、S8−7E4はピューロマイシン抵抗性について96ウェルプレートから選択され拡張された。SX11(eIF2α変異体およびXBP−1)およびNSX7(XBP−1)プラスミドDNAが500E9細胞を電気穿孔するためにさらに使用された。SX11−9E8およびNSX7−1C9細胞系の両者は96ウェルプレートからピューロマイシン抵抗性について選択された。修飾された安定な細胞系を産生するために使用した500E9細胞は、電気穿孔前の8週間以内に得た。
【0125】
分泌亢進遺伝子を組み込まれたプラスミドは、pIND/hygroベクター(インビトロゲン社)から改質された。この新しいベクターは、ピューロマイシン耐性遺伝子、複数発現カセット、転写停止剤、マウスβ‐グロビンプロモータ、およびウニ転写絶縁体(SNS)を含む。
【0126】
結果
細胞系は、スピナーフラスコあるいはT型培養瓶のいずれかにより、可能性のある候補としてはじめにスクリーニングされた。スピナーフラスコでは、3日および4日培養における倍加時間(DT)および比生産性(SPr)について細胞系を評価した(図4)。最低3つのこのようなスピナーからSPrおよび成長速度を平均した。T型培養瓶では、1回の5日間培養よりSPrおよび成長速度が測定された(図5)。T型培養瓶は、スピナーフラスコを使用する場合よりも短期間により多くの細胞系を検討するために使用された。合計16S8、22SX11、および25NSX7細胞系がスクリーニングされた。より高い比生産性を有し、500E9に対して同等の倍加時間を示した細胞系は、より詳細な試験のために保存された。その他は除去された。
【0127】
最初のスクリーニング後、最低1つの複製、および1つの3重複製スピナーフラスコ試験において、5S8、6SX11、および6NSX7細胞系を評価した。スピナーフラスコ培養では、ゼロ日に新鮮な培地中に2eまたは3e細胞/mlで接種された。試料を毎日回収し、カウントし、(ELISAにより定量することで)抗体値を分析した。DTとSPrが培養期間の2日から4日までのそれらの値の平均から判定された。全てのデータを検討し、コンパイルしたところ、細胞系S8−7E4、SX11−9E8、およびNSX7−1C9で、各々の細胞系構成物から最良の結果が得られた。500E9と比較した場合、最終スピナーフラスコ評価から得られた結果では、細胞系S8−7E4、SX11−9E8およびNSX7−lC9におけるSPrで、それぞれ35%、43%、および39%の増加が認められた(図6)。したがって、個別に、あるいは組み合わせのいずれかにおけるXBP−1、核ATF6、およびeIF2αS51Aの発現レベルが増加することによるUPRの修飾により、抗CD154ヒト化抗体の特異的細胞生産性が増加する結果を示した。
【0128】
宿主ゲノム中の単一組み込み部位における分泌亢進構成物を含む細胞系の選択により、任意の新規産生細胞系の単細胞分離株を得ることができる。分泌亢進構成物を使用する単細胞分離株の選択は、現行の単細胞単離プロセスよりも多くの時間を必要とせずに生産を改善することができる。
【0129】
特定の実施形態および実施例を含む上記明細書は、本発明の説明のためになされるものであり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。多くのその他の変形および修飾は、本発明の真の精神および範囲から逸脱せずに達成することができる。本明細書に引用された全ての出版物、特許、および特許出願は、その内容全体を本明細書に参照により引用される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1A(配列番号1)および1B(配列番号2)は、それぞれチャイニーズハムスター卵巣細胞由来のヌクレオチドおよびXBP−1のスプライスされた蛋白質配列である。図1Bは、予想されたDNA結合ドメインを下線で示し、予想されたトランス活性化ドメインを大文字で示す。
【図2】図2A(配列番号3)および2B(配列番号4)は、それぞれヒトATF6のヌクレオチドおよび蛋白質配列である。図2Aおよび2BではATF6を太字で示す。図2Bでは予想されたトランス活性化ドメインを大文字で、予想されたDNA結合ドメインは下線で、予想された膜貫通領域はボックスで、ERドメインは点線で表示される。
【図3】図3A(配列番号5)および3B(配列番号6)は、それぞれCHO細胞由来のeIF2αS51A変異体のヌクレオチドおよび蛋白質配列である。図3Aは、グアニン残基に対するチミンの置換(太い下線)を示し、その結果、図3Bのアミノ酸位置51(太い下線)でセリンからアラニンへの変異を生じる。
【図4】図4はスピナーフラスコ中で成長させた細胞を使用した細胞系スクリーニングを示す。500E9と比較した場合のいくつかのS8細胞系の比生産性(PCD)および倍加時間を示す。データは3〜4日間培養された最低3つのスピナーフラスコより収集される。倍加時間におけるY軸上の値は時間で記録され、またPCDの値はpgタンパク質/細胞/日として記録される。
【図5】図5はT型培養瓶中で成長させた細胞を使用した細胞系スクリーニングを示す。単一のT−75組織培養フラスコ中の5日間の滞留後、500E9と比較した場合のいくつかの細胞系の比生産性(PCD)および倍加時間を示す。倍加時間におけるY軸上の値は時間で記録され、またPCDの値はpgタンパク質/細胞/日として記録される。
【図6】図6は、最終の候補細胞系の評価を示す。500E9と比較した場合のいくつかの細胞系候補の比生産性(PCD)および倍加時間を示す。スピナーフラスコは三通りセットアップされた。PCDと倍加時間の値は2日〜4日までの培養を平均した。倍加時間におけるY軸上の値は時間で記録され、またPCDの値はpgタンパク質/細胞/日として記録される。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内で対象の膜あるいは分泌ポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる方法であって、前記方法は対象のポリペプチドを発現する工程を含み、前記細胞は外因性のXBP−1のスプライス形態をさらに発現する方法。
【請求項2】
前記対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが外因性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、XBP−1なしであらかじめ前記対象のポリペプチドに形質移入させた対照細胞群と比較して、前記対象のポリペプチドの特異的な細胞生産性を増加させ、前記増加が約5%〜約10%、約11%〜約20%、約21%〜約30%、約31%〜約40%、約41%〜約50%、約51%〜約60%、約61%〜約70%、約71%〜約80%、約81%〜約90%、および約91%〜約100%からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞は選択可能なマーカーをさらに発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
選択可能なマーカーの組込みを検出することにより、前記対象のポリペプチドを発現する細胞を検出する工程をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも約5pg/細胞/日のレベルで対象のポリペプチドの産生を生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記XBP−1が配列番号1のポリヌクレオチドによりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記XBP−1が配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が追加のポリヌクレオチドをさらに発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記追加のポリヌクレオチドが第2の転写因子あるいは翻訳エンハンサーであるポリペプチドをコードする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の転写因子がATF6あるいはその活性化ドメインである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ATF6が配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記翻訳エンハンサーがeIF2αS51Aである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記eIF2αS51Aが配列番号6のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象のポリペプチドが抗体または抗体フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が単クローン、多クローン、哺乳類、マウス、キメラ、ヒト化、霊長類化、霊長類、およびヒトの抗体からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が単クローン抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が抗CD154抗体Hu24−31.1である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体フラグメントが、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン重鎖および軽鎖、Fab、F(ab’)2、Fc、Fc−Fc融合タンパク質、Fv、単鎖Fv、四価単鎖Fv、ジスルフィド結合Fv、ドメイン欠失フラグメント、ミニボディ、二重特性抗体断片、前記フラグメントのうちの1つと別のポリペプチドとの融合ポリペプチドからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ドメイン欠失抗体フラグメントはC2ドメインが除去された抗体フラグメントである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が真核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が昆虫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物細胞が、サル腎臓CV1、サル腎臓COS、ヒトレンズ上皮PER.C6TM、ヒトの胚性腎臓、ハムスター新生仔の腎臓、アフリカミドリザル腎臓、ヒト子宮頚癌、イヌ腎臓、バッファローラット肝臓、ヒト肺、ヒト肝臓、マウス乳腺腫瘍細胞、および骨髄細胞系からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記骨髄細胞系がNS0、Sp2/0、およびAg8653からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
細胞内で対象の膜あるいは分泌ポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる方法であって、該方法は、
細胞内へ2つのポリヌクレオチドを有するベクターを導入する工程であって、前記第1のポリヌクレオチドが転写因子XBP−1のスプライス形態をコードし、前記第2のポリヌクレオチドが対象のポリペプチドをコードする、工程、および
前記対象のポリペプチドを発現する工程
をさらに包含する方法。
【請求項29】
第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドを有する発現ベクターであって、前記第1のポリヌクレオチドが転写因子XBP−1のスプライスされた形態をコードするポリヌクレオチドを有し、前記第2のポリヌクレオチドが選択可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドを有するベクター。
【請求項30】
前記XBP−1のスプライスされた形態が配列番号1のポリヌクレオチドによってコードされる、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項31】
前記XBP−1のスプライスされた形態が配列番号1と95%同一であり、前記ベクターが対象のポリペプチドを発現する細胞に導入されると、前記ベクターが対象の膜あるいは分泌ポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項32】
前記第1のポリヌクレオチドが配列番号1のヌクレオチド195〜356を有し、前記ヌクレオチド195〜356は、細胞内へ導入されると、対象の膜あるいは分泌ポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項33】
前記第1のポリヌクレオチドが配列番号2のポリペプチドをコードする、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項34】
前記発現ベクターが追加ポリヌクレオチドをさらに有する、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項35】
前記追加ポリヌクレオチドが第2の転写因子あるいは翻訳エンハンサーであるポリペプチドをコードする、請求項34に記載の発現ベクター。
【請求項36】
前記第2の転写因子はATF6あるいはその活性化ドメインである、請求項35に記載の発現ベクター。
【請求項37】
前記ATF6が配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項36に記載の発現ベクター。
【請求項38】
前記翻訳エンハンサーがeIF2αS51Aである、請求項35に記載の発現ベクター。
【請求項39】
前記eIF2αS51Aが配列番号6のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる、請求項38に記載の発現ベクター。
【請求項40】
請求項29に記載の発現ベクターを有する細胞。
【請求項41】
前記細胞が動物細胞である、請求項40に記載の細胞。
【請求項42】
前記細胞が真核細胞である、請求項40に記載の細胞。
【請求項43】
前記細胞が昆虫細胞である、請求項40に記載の細胞。
【請求項44】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項40に記載の細胞。
【請求項45】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項44に記載の細胞。
【請求項46】
前記哺乳動物細胞が、サル腎臓CV1、サル腎臓COS、ヒトレンズ上皮PER.C6TM、ヒトの胚性腎臓、ハムスター新生仔の腎臓、アフリカミドリザル腎臓、ヒト子宮頚癌、イヌ腎臓、バッファローラット肝臓、ヒト肺、ヒト肝臓、マウス乳腺腫瘍細胞、および骨髄細胞系からなる群から選択される、請求項44に記載の細胞。
【請求項47】
前記骨髄細胞系がNS0、Sp2/0、およびAg8653からなる群から選択される、請求項46に記載の細胞。
【請求項48】
前記第1のポリヌクレオチドが、細胞内の折り畳まれていないタンパク質の反応を上方制御する、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項49】
XBP−1のスプライスされた形態をコードする第1の成分と、選択可能なマーカーをコードする第2の成分とを有する単離されたポリヌクレオチドであって、前記単離されたポリヌクレオチドは、対象のポリペプチドを発現する細胞へ導入されると、前記細胞内で対象のポリペプチドの特異的細胞生産性を少なくとも5pg/細胞/日増加させる単離されたポリヌクレオチド。
【請求項50】
前記単離されたポリヌクレオチドが、対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに有する、請求項49に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項51】
前記XBP−1のスプライスされた形態が、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項49に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項52】
前記第1の成分が追加ポリヌクレオチドをさらに有する、請求項49記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項53】
前記追加ポリヌクレオチドが第2の転写因子または翻訳エンハンサーであるポリペプチドをコードする、請求項52に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項54】
前記第2の転写因子がATF6あるいはその活性化ドメインである、請求項53に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項55】
前記ATF6が配列番号3のポリヌクレオチドによってコードされる、請求項54に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項56】
前記翻訳エンハンサーがeIF2αS51Aである、請求項53に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項57】
前記eIF2αS51Aが配列番号5のポリヌクレオチドによってコードされる、請求項56に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項58】
請求項1に記載の方法により作製された抗体または抗体フラグメント。
【請求項59】
細胞内で対象の膜あるいは分泌ポリペプチドの特異的細胞生産性を増加させる方法であって、前記方法は対象のポリペプチドを発現する細胞内へ、スプライスされた形態のXBP−1をコードする第1の成分、および選択可能なマーカーをコードする第2の成分を有する単離されたポリヌクレオチドを導入する工程を含み、前記単離されたポリヌクレオチドは、前記対象のポリペプチドの特異的細胞生産性を前記細胞内で少なくとも5pg/細胞/日増加させる方法。
【請求項60】
前記細胞が1つ以上の追加のポリヌクレオチドをさらに発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
前記1つ以上の追加のポリヌクレオチドが第2の転写因子および翻訳エンハンサーであるポリペプチドをコードする、請求項60に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−500016(P2007−500016A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533615(P2006−533615)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018185
【国際公開番号】WO2004/111194
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】