培養容器および培養装置
【課題】 保管場所を要する点を解決すると共に、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 懸濁液を入出させるための入出口103を備え、入出口103を閉じる事によって入出口103に通じる内部空間102が外界から閉鎖され、かつ内部空間102内に複数の培養室101が少なくとも一方向に配列される培養容器100であって、内部空間102内に、複数の培養室101のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、懸濁液を受ける底面部として機能する分断部104を備える培養容器100。
【解決手段】 懸濁液を入出させるための入出口103を備え、入出口103を閉じる事によって入出口103に通じる内部空間102が外界から閉鎖され、かつ内部空間102内に複数の培養室101が少なくとも一方向に配列される培養容器100であって、内部空間102内に、複数の培養室101のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、懸濁液を受ける底面部として機能する分断部104を備える培養容器100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器および培養装置に関するものであり、特に、複数の培養容器を使用して培養する場合などに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
バイオ技術分野において、細胞を培養する事が行われている。細胞の培養とは、細胞を所定の培地においてその数を増加させたり、成長させたり、性質を変化させたりすることである。よって、細胞数の増加を伴なう細胞を培養する場合は、培養当初から大きい培養面積を確保しておかねばならない。
【0003】
大きい培養面積を確保するためには大きい培養面積のシャーレやフラスコなどの容器(以下、培養容器と総称する)を使用すればよいのであるが、培養当初から大きい培養面積の培養容器を使用するのは嵩張って邪魔でもあり非効率的である。そこで、培養した細胞が培養容器全体に増加した際に、別の培養容器を複数個使用して、培養した細胞をそれら別の培養容器に継代することで更に培養を続けることが行われている。
【0004】
しかし、複数の培養容器を使用することはそれらの保管場所を要する上、それらの管理も煩雑となる。
【0005】
保管場所を要する点については、それら複数の培養容器を垂直方向に積層して置くことで解決される。非特許文献1には、複数のチェンバーを垂直方向に有する培養容器(以下、従来容器と称す)が記載されている。当該従来容器は複数のチェンバーを垂直方向に内蔵することで、複数の培養容器を積層したのと同じ効果を奏している。
【0006】
従来容器は、細胞や培養液等をその内部に入出させるための入出口を有しており、複数のチェンバーは従来容器内部で上記の入出口に通じる空間である連通部によって互いに連通している。すなわち、従来容器内部の空間は、複数のチェンバーを内蔵することにより部分的に複数の空間に区分けされているが、連通部を内蔵することにより互いのチェンバー同士は閉鎖された空間とはなっておらず、一つの繋がった空間となっている。
【0007】
図13には、同図(a)に細胞と培地の懸濁液(符号2000)が従来容器1000内に注入された状態が、同図(b)に各チェンバー1001毎に細胞が略均一に分注され、培地も略等分化された状態が、同図(c)にはチェンバーが垂直方向に積層された形となり細胞が培養されている状態が記載されている。
【0008】
同図における従来容器1000の図(a)→(b)→(c)の間における状態の変遷について説明する。
【0009】
同図(a)では、懸濁液2000(同図中波線領域)が入出口1003を通じて従来容器1000内に注入された状態であり、細胞と培地が従来容器1000の底に溜まっている。なお、従来容器1000は、連通部1002が下方に位置し、チェンバー1001が上方に位置するように置かれている。チェンバー1001は、分断部1004によって形成された複数の部分的な空間であり、閉鎖されない小部屋となっている。
【0010】
同図(b)では、従来容器1000の同図(a)において底だった部分と天井だった部分とが入れ替わるように従来容器1000全体を180°回転させて置いた状態となっている。すなわち、連通部1002(同図中斜線領域)が上方に位置し、チェンバー1001が下方に位置するように置かれている。この結果、各分断部1004によって懸濁液2000(同図中波線領域)が略均一に各チェンバー1001毎に分けられている。なお、細胞の分注においては、播種密度の均一化は厳密なものではなく、ある程度均一化されていれば良い。
【0011】
同図(c)では、入出口1003のある面が上方に位置するように従来容器1000全体を90°回転させて置いた状態となっている。同図において、各分断部1004は各チェンバーの底面をなす板となっている。この結果、各チェンバーに略均一に分けられた懸濁液2000がチェンバー内でチェンバーの底面(分断部1004)に広がり、細胞の培養が行える状態となっている。なお、各分断部1004にリブ1005が設けられている事で、各チェンバー内において懸濁液2000は流出せずに保持する事ができている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「NUNC CATALOGUE 2006〜」ナルジェ・ヌンク・インターナショナル株式会社 2006年4月制作(50〜51ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術では、保管場所を要する点については、複数の培養容器を垂直方向に積層して置くことで解決できた。
【0014】
しかし、上述のように従来容器1000内部の空間は、部分的に複数の空間に区分けされているが、連通部が存在している事により、互いのチェンバー同士は閉鎖された空間とはなっておらず、一つの繋がった空間となっている。その結果、例えば従来容器1000を図13(c)の状態から同図(a)の状態に向けて傾けた場合に、(懸濁液がチェンバーからこぼれることで)細胞培養中に各チェンバー間の懸濁液が混入しあい、その結果、各チェンバー間での懸濁液の量や培養している細胞の数が大きく異なる事となる。
【0015】
また、各チェンバーにおいては、懸濁液2000はリブ1005の高さまでしか入れることができず、懸濁液2000をリブ1005の高さぎりぎりまで入れていた状態においては、細胞培養中に各チェンバーに薬剤を注入した場合に懸濁液が溢れる事となる。
【0016】
従来技術では、例えば、上で述べたような問題点から懸濁液がチェンバーからこぼれないように常に気を配りながら細胞培養作業を行わねばならなず、ユーザが所望の細胞の培養作業を能率的に行うことはできない。
【0017】
そこで、本発明では、保管場所を要する点を解決すると共に、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る培養容器は、液体を入出させるための入出口を備え、前記入出口を閉じる事によって前記入出口に通じる内部空間が外界から閉鎖され、かつ前記内部空間内に複数の培養室が少なくとも一方向に配列される培養容器であって、前記内部空間内に、前記複数の培養室のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、前記液体を受ける底面部として機能する分断部を備える。
【0019】
上記分断部により、前記の隣り合う培養室の間が互いに閉鎖されるので、前記の隣り合う培養室の間での液体の漏れや混入が防止され、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0020】
本発明に係る培養容器は、液体を入出させるための入出口を備え、前記入出口を閉じる事によって内部空間が外界から閉鎖される培養容器であって、前記入出口に通じる前記内部空間を、少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の培養室に分断する分断部を備え、前記分断部は、液体を受ける底面部としての機能を有し、前記分断部が前記内部空間を分断する事により、前記互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、前記分断部が前記内部空間の分断を解除する事により、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除される。
【0021】
前記入出口に通じる前記内部空間を少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の培養室に分断する分断部を備え、前記内部空間を少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の培養室に分断するので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0022】
なお、培養容器は、少なくとも伸縮性を有する素材から成り、前記分断部は前記素材が伸縮することで培養容器の内面の一部に形成され、前記内面の一部が接触し合う事で前記分断部が前記内部空間を分断して、互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、前記内面の一部の接触が解除される事で前記内部空間の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除されてもよい。
【0023】
この構成により、前記分断部が前記内部空間を分断しないときには複数の培養室が存在しないような培養容器であっても、前記分断部が前記内部空間を分断することで複数の培養室が形成されて複数の培養室が互いに閉鎖性を有するので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0024】
また、第1枠体と、前記第1枠体に対向する第2枠体と、少なくとも伸縮性を有する素材から成る伸縮部とから構成され、前記伸縮部は、前記第1枠体と前記第2枠体の間に存在して、前記第1枠体と前記第2枠体とを接合させ、前記第1枠体には、互いに閉鎖された複数の培養室を構成するための壁部が備えられ、前記第2枠体には前記壁部の各々と対応して咬合する咬合部が備えられ、前記内部空間の一部である連通部を分断する分断部は、前記壁部と前記咬合部とから構成され、前記伸縮部が伸縮して前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部が咬合する事で前記連通部を分断して、前記互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部との咬合が解除される事で前記連通部の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除されるものであってもよい。
【0025】
第1枠体、第2枠体、伸縮部、壁部、咬合部、連通部を有する上記の構成により、前記分断部が前記内部空間(連通部)を分断しないときにも複数の培養室が存在するが互いの複数の培養室は閉鎖性を有さないような培養容器であっても、前記分断部が前記連通部を分断することで複数の培養室が互いに閉鎖性を有するので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0026】
さらに、前記咬合部は開閉可能な連絡孔を有し、前記連通部が分断されて、前記互いに閉鎖された複数の培養室が形成された場合に、前記連絡孔を開くことで、隣り合う前記複数の培養室においては閉鎖された状態が解除され、前記連絡孔を閉じることで、前記複数の培養室において互いに閉鎖された状態となってもよい。
【0027】
この構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができることに加えて、培養容器を垂直に設置した状態で連絡孔を開けることで、細胞培養に使用する培養室を減らすことができる
さらに、前記分断部によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された前記複数の培養室が、鉛直方向に対して積層された状態のとき、前記複数の培養室は互いに閉鎖された状態を維持してもよい。
【0028】
これにより、鉛直方向に対して積層された状態のときでも、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0029】
本発明に係る培養装置は、温度維持装置と、請求項1〜4に記載の培養容器を備え、前記培養容器の前記入出口に接続される配管と、前記配管を通じて前記培養容器の内部への注液を行う注液部と、前記配管を通じて前記培養容器の内部からの廃液を行う廃液部と、前記入出口を開閉する開閉部とを備え、前記分断部に前記内部空間を分断させるための分断駆動部を備える。
【0030】
この構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。また、前記複数の培養室毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部を底面にして細胞の培養を行うことができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される。さらに加えて、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる。
【0031】
なお、前記培養容器を回転させる回転駆動部と、前記培養容器に振動を与える振動駆動部とを備えてもよい。
【0032】
この構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができることに加えて、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる。
【0033】
閉鎖とは、生物学的に、または化学的に、内部が外界から遮断されていることを言い、熱や湿気、微生物、化学物質、気体などが外界から内部に対して行き来をしないことをいう。さらには、物理学的に内部が外界から遮断されている、すなわち力や電磁波などが外界から内部に対して関与しない状態を含めてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図2】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図4】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図5】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図7】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図8】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図9】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図10】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図11】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図13】従来の培養容器を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
(培養容器)
まず、図1に本実施形態に係る培養容器100の構成を示す。懸濁液が培養容器100中に存在している。
【0037】
同図(a)によると、培養容器100は、入口103a、出口103b(以下、まとめて入出口103と呼ぶことがある)を有する本体106を備えている。よって、培養容器100の内部空間(すなわち、本体の内部)は入出口103に通じている。入出口103を閉じる事によって前記本体の内部が外界から閉鎖されている。すなわち、この閉鎖性により、本体106内部が、生物学的に、または化学的に、外界から遮断されており、細胞培養に影響を及ぼすような熱や湿気、微生物、化学物質、気体などが外界から本体内部に対して行き来をしない様になっている。本体106の内部全体(詳しくは入出口103周りなどを除く本体106の内部の略全体のことであるが、以下では、本体106の内部全体と見做す)は、連通部102となっている。本実施形態では、内部空間は連通部102と一致している(よって、以下、本実施形態では本体106の内部すなわち内部空間のことも連通部102と呼ぶ)。なお、本体106は一部がガラスやポリスチレン等のプラスチック、高分子材料から構成されていてもよく、培養容器100は本体106と搬送のための把持部等を備えていてもよい。
【0038】
同図(b)〜(c)を参照して、本実施形態における連通部102を分断する分断部104の形成のされ方、および分断部104が連通部102をどのように分断する事によって本体106の内部が、少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の空間(以下、培養室と称する)101に区分けされるかについて説明する。本実施形態および以降の実施形態では、一方向を水平方向であるとして説明を行う(同図(b)〜(c)等参照)。なお、一方向とは、水平方向に限るものではなく、垂直方向などでもよく、少し歪んだり、傾いたりしていても水平方向、垂直方向と見做せればよい。また、円周方向などでもよく直線方向に限らない。さらに、培養室が少なくとも一方向に配列されていればよいので、培養容器がL字状やT字状、W字状の形状をすることで、培養室が二方向、三方向と複数方向に配列されていてもよい。
【0039】
本体106は、全体が少なくとも伸縮性を有する素材から構成されており、例えばゴム材やエチレン酢酸ビニル等の高分子物質から構成されている。分断部104は素材が伸縮することで本体106の内面の一部に形成され、この内面の一部が接触し合う事で、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。
【0040】
同図(b)によると、同図(a)の状態に対して仕切り版B100を本体106に押し付けることで、本体106に節104aができる(すなわち、仕切り版B100が本体106に押し付けられることで、仕切り版B100の仕切り板に沿って本体106の一部が伸縮してできる部分が、節104aである)。さらに仕切り版B100を本体106に押し付けることで、同図(c)のように、分断部104が本体106の内面の一部106aおよび106bで構成され(すなわち、仕切り版B100が本体106に押し付けられることで、仕切り版B100の仕切り板に沿って本体106の一部が伸縮してできる部分が、本体106の内面の一部106aである)、この内面の一部106aおよび106bが接触し合う事で、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。本体106全体が上述の様に少なくとも伸縮性を有する素材から構成されているので、本体106の一部が伸縮して内面の一部106aが分断部104となり、内面の一部106aが相手方である内面の一部106bと接することで(内面の一部106bも分断部104となり)、連通部102を分断する。
【0041】
なお、本体106の一部が伸縮して内面の一部106aが分断部104となる構成であるのであれば、本体106全体が伸縮性を有する素材である必要はなく、本体の一部のみが伸縮性を有する素材であってもよい。また、仕切り版B100を本体106に押し付けることで、本体106に節104aを形成させたが、仕切り版B100を本体106に押し付けながら本体106をねじることで、または仕切り版B100を使用せずに本体106をねじることで本体106に節104bを形成させてもよい(同図(d))。この結果、分断部104が本体106の内面の一部106c(すなわち節104b)で構成され、この内面の一部106c同士が接触し合う事で、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。
【0042】
また、分断部104が連通部102の分断を解除する事により、本体106の内部の互いに閉鎖された複数の培養室101の閉鎖が解除され、複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻る。詳しくは、内面の一部106c同士の接触が解除される事で連通部102の分断を解除して、互いに閉鎖された複数の培養室101の閉鎖が解除される。
【0043】
同図(c)または(d)の状態の培養容器100を、左方向に90度回転(または右方向もしくは紙面の手前方向もしくは紙面の奥方向などに90度回転)させると、分断部104によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された培養室101が垂直方向(鉛直方向)に対して積層された状態となる。同図(e)に、同図(c)の状態の培養容器100を、左方向に90度回転させた図を示す。この時、複数の培養室101は互いに閉鎖された状態を維持する。よって、培養容器100を鉛直方向に対して積層された状態から傾けた場合に、懸濁液が各培養室101からこぼれるということがおこらない。なお、鉛直方向に積層された状態とは、同図のような複数の培養室101の間の連通分断部104が鉛直方向に対して略垂直な面となっている場合に限られない。すなわち、複数の培養室101が鉛直方向に対して積層されたと見做しうる状態であれば、鉛直方向に対して積層された状態となっていると見做してよい。
【0044】
なお、同図(b)〜(d)では培養室101が6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
【0045】
以上のように、培養容器100は、懸濁液を入出させるための入出口103を備え、入出口103を閉じる事によって入出口103に通じる内部空間102が外界から閉鎖され、かつ内部空間102内に複数の培養室101が少なくとも一方向に配列される培養容器100であって、内部空間102内に、複数の培養室101のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、懸濁液を受ける底面部として機能する分断部104を備える。
【0046】
この構成により、本体106内部の一つの空間に複数の培養室101を容易に形成させる、すなわち本体106内部の複数の培養室101を連通する連通部102を分断することで、互いに閉鎖された各培養室101を容易に得ることができる。また、試薬の投入や培地交換、培養した細胞の取り出しなどの必要な時に、複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。なお、複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すのは、一度に全ての連通部102の分断を解除してもよいし、連通部102の一部の分断を解除してから、残りの連通部102の分断を解除するような形でもよい。このように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0047】
なお、面積の広い分断部104側を懸濁液を受ける底面部にすることで、培養面積を確保しつつ、各培養室を積層した状態で細胞の培養を行うことができる。なお、同図(e)のように、懸濁液を受ける分断部104側が面積が広くない場合でも、垂直方向に立てた培養容器100に垂直方向に力を加えて、高さ方向を圧縮する一方で底面積を拡大することで、培養面積を大きく取ることができる。
【0048】
同図(e)のように、懸濁液を受ける底面部に対して懸濁液を流出させずに保持するための側壁が要るところ、この側壁の役割を本体106の内壁が果たしている。よって、従来技術では必要であったリブのような構成を、別途設ける必要はない。
(培養装置)
次に、図2に本実施形態に係る培養容器100を使用した培養装置200の構成を示す。
【0049】
培養装置200は、培養容器100と、培養容器100への懸濁液等の注液の際に培養容器100の入口103aに接続される配管P100と、当該注液の際に配管P100のバルブを開閉する開閉部SW100と、配管P100を通じて本体106の内部への注液を行う注液部M100を備えており、培養容器100からの廃液の際に培養容器100の出口103bに接続される配管P101と、当該廃液の際に配管P101のバルブを開閉する開閉部SW101と、配管P101を通じて本体106の内部からの廃液を行う廃液部M101とを備えている。入口103aと配管P100、出口103bと配管P101は、チューブなどで接続されており、後で述べるように回転駆動部R100によって培養容器が回転しても、入口103aと配管P100、出口103bと配管P101が離れないようになっている。
【0050】
注液部M100は、培養容器100へ培地や、生理食塩水(以下、PBSと書く)、酵素、サイトカイン、タンパク等の試薬の単体またはそれらの混合液、またはそれらと培養する細胞との懸濁液等の注液、さらに培養容器100に対して二酸化炭素の封入を行う機能を有する。なお、注液には、ぺリスタポンプやダイヤフラムポンプなどのポンプを用いて行う。また、二酸化炭素の封入は培地のpHを適正な値に保つことを目的に、通常5%の濃度を保つために適切なタイミングで封入される。廃液部M101は、培養容器100からの廃液を廃液タンクへ廃液する機能を有する。廃液についても同様にポンプを用いて行う。
【0051】
また、培養装置200は、図1で示した分断部104によって連通部102を分断するために、上で述べてきたような仕切り版B100の本体106への押し付け動作(および、仕切り版B100の本体106からの引き離し動作)のための分断駆動部B101を備えている。
【0052】
さらに、培養装置200は、前記培養容器を回転させる回転駆動部R100と、前記培養容器に振動を与える振動駆動部V100、ハンマーV101とを備えている。培養容器を回転させる目的は、最初は培養容器100を横にして懸濁液を注液後に複数の培養室101を形成することで懸濁液を各培養室に略等分化させて、その後90度回転させて培養容器100の長手方向を垂直方向にして立てることで(すなわち、一方向に配列された培養室101を鉛直方向に対して積層された状態とすることで)、培養室101毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部104を底面にして細胞の培養を行うことができることである(この場合分断部104が底となる)。なお、垂直方向に立てた培養容器100に垂直方向に力を加えて垂直方向の長さを若干圧縮してもよい。これにより、培養室101において、高さ方向が圧縮される一方、底面積を拡大することができ、培養面積を大きく取ることができる。
【0053】
培養容器に振動を与える目的は、培養室101の底から、培養した細胞を剥がすためである。なお、培養容器に振動を与える代わりに、または培養容器に振動を与える際に、細胞剥離剤を併用してもよい。
【0054】
また、仕切り版B100を本体106に押し付けて、本体106に節104aを形成させることにより、または本体106をねじることで本体106に節104bを形成させることにより、本体106内部の一つの空間に複数の培養室101を容易に形成させることができる。また複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。すなわち、分断部が内部空間を分断する事により、本体の内部に互いに閉鎖された複数の空間を形成することができ、また、分断部が内部空間の分断を解除する事により、本体の内部の互いに閉鎖された複数の空間の閉鎖を解除することができる。このことにより、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができる。すなわち、ユーザはこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される。
【0055】
また、培養装置200は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0056】
このように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室101毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部104を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。
【0057】
なお、制御装置PC100は、開閉部SW100、開閉部SW101、振動駆動部V100、分断駆動部B101の動作の制御や、送液、廃液動作の制御、培養装置200におけるその他の制御、培養装置200内の各所の温度、湿度の管理等を行う。制御装置PC100は、CPU、培養プログラム等が格納されているROM、各演算における作業領域となるRAM、OSや各種プログラム、および培養履歴やセンサ値の計測履歴、管理履歴等が格納されるハードディスク等のストレージなどから構成されている。なお、培養プログラムはストレージに格納されていても良い。制御装置PC100には、各種入力を行うために使用され後述の培養開始ボタン等となるキーボードやマウス、タッチパネル等の入力部、計測結果や管理情報、指示情報、警告出力等が出力されるディスプレイやスピーカ等の出力部が接続されている。
【0058】
以上の構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができることに加え、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
次に、図3に本実施形態に係る培養装置200を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0059】
ステップS100では、培養動作の事前作業として、注液部M100に、培地やPBS、試薬等の液材、二酸化炭素ボンベをセットする。また、廃液部M101に、廃液タンクをセットする。なお、入口103aには配管P100、出口103bには配管P101が接続され、配管P100のバルブを開閉するのは開閉部SW100である。
【0060】
ステップS101では、注液部M100が上記液材と細胞の懸濁液を培養容器100へ注入する。この際、懸濁液中が偏りなくまんべんなく拡散するように回転駆動部R100が培養容器100を振ってもよい。
【0061】
ステップS102では、培養容器100の内部を複数の培養室101に分割する。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100の本体106へ押し付けさせ、分断部104によって連通部102を分断させる。これにより、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。
【0062】
ステップS103では、回転駆動部R100が培養容器100を90度回転させて、複数の培養室101が積層する状態とするべく、培養容器100の長手方向を垂直方向にして立てる回転駆動を行う。
【0063】
ステップS104では、上記までにおいて複数の培養室101が積層され、細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態となっているので、細胞の培養を開始する。たとえば、制御装置PC100の入力部にある培養開始ボタンを押下するなどすることで、制御装置PC100中のROMに記憶されている培養プログラムが起動し、各培養室の温度を一定に保つヒータが始動し、培養時間を計測するタイマが始動する。
【0064】
タイマを参照することにより、試薬を投入する時間または培地を交換する時間となった場合は、次のステップS105へ至る。
【0065】
ステップS105では、回転駆動部R100が培養容器100をステップS103の時とは逆の方向に90度回転させて、複数の培養室101を横に併存する状態とするべく、培養容器100の長手方向を水平方向にして寝かせる回転駆動を行う。
【0066】
ステップS106では、培養容器100の内部を、複数の培養室101が存在する状態から一つの空間を有する状態に戻す。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100の本体106への押し付け状態を解除させ、分断部104による連通部102の分断を解除する。これにより、連通部102の分断を解除し、互いに閉鎖された複数の培養室101を統合し、本体106の内部を一つの空間に戻す。
【0067】
ステップS107では、配管P100のバルブを開閉部SW100が開閉することで、注液部M100が培養容器100に試薬を投入する。この際、試薬が懸濁液中にまんべんなく拡散するように回転駆動部R100が培養容器100を振ってもよい。
【0068】
なお、ステップS107では、配管P101のバルブを開閉部SW101が開閉することで、廃液部M101により培養容器100から培地等の廃液を廃液タンクへ廃液し、注液部M100により懸濁液を培養容器100へ再注入する工程を行うことで、培地を交換してもよい。なお、懸濁液中が偏りなくまんべんなく拡散するように回転駆動部R100が培養容器100を振ってもよい。
【0069】
ステップS108では、細胞の培養を再開すべく、ステップS102と同様に、培養容器100の内部を複数の培養室101に分割する。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100を本体106へ押し付けさせ、分断部104によって連通部102を分断させる。
【0070】
ステップS109では、ステップS103と同様に、回転駆動部R100が培養容器100を90度回転させて、複数の培養室101が積層する状態とするべく、培養容器100の長手方向を垂直方向にして立てる回転駆動を行う。
【0071】
この後、タイマを参照することにより、試薬を投入する時間または培地を交換する時間となった場合は、上のステップS105〜ステップS109の工程を繰り返す。
【0072】
タイマを参照することにより、細胞培養を終了する時間となった場合は、次からの細胞培養の終了動作に移る。
【0073】
ステップS110では、各培養室の底面に張り付いている細胞を底面から剥離させるべく、回転駆動部R100が培養容器100を回転させる。
【0074】
ステップS111では、各培養室の底面に張り付いている細胞を底面から剥離させるべく、振動駆動部V100がハンマーV101で培養容器100を打撃する。
【0075】
ステップS112では、回転駆動部R100は培養容器100を回転させて、複数の培養室101を横に併存する状態とするべく、培養容器100の長手方向を水平方向にして寝かせる回転駆動を行う。
【0076】
ステップS113では、ステップS106と同様に、培養容器100の内部を、複数の培養室101が存在する状態から一つの空間を有する状態に戻す。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100の本体106への押し付け状態を解除させ、分断部104による連通部102の分断を解除する。
【0077】
ステップS114では、配管P101のバルブを開閉部SW101が開閉することで、廃液部M101により培養容器100から培地等の廃液のみを廃液タンクへ廃液し、細胞の取り出しを行う。この廃液のみ廃液し細胞を取り出す方法は既知の任意の方法を使用することができる。例えば、手動で容器を取り外し、細胞を取り出してもよい。
【0078】
以上のように、本実施形態の培養容器100を使用すると、本体106内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の空間に区分けする即ち互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることができ、また互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。つまり、細胞を培養させるために互いに閉鎖された複数の培養室が必要な場合には容易に形成させることができる一方、試薬の投入や培地交換を行うため、または培養した細胞を取り出したりするため培養室の区分けを解消したい、すなわち複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻したい時は容易に戻すことができる。
【0079】
すなわち、本体106の内面の一部106a、106bが接触し合う事で本体106内部の複数の培養室101を連通する連通部102を分断し、本体106の内部を互いに閉鎖された複数の空間に区分けする、すなわち本体106内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態(連通部102)に戻すができる。
【0080】
以上により、本体106内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることができるので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、懸濁液や試薬の投入を各培養室毎に分注することなく一度で行え、その後に互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることで、各培養室毎の分注を容易にすることができる。この際、上で述べた分断部104による連通部102の分断により、懸濁液や試薬を略平等に分注することができる。さらに、互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、培地や細胞の回収時に各培養室毎に回収する必要がなく、一度で容易に回収を行うことができる。
【0081】
[第2実施形態]
本第2実施形態では、第1実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と異なる部分について主に説明する。本実施形態では、図における符号などが第1実施形態の場合と異なっているが、適宜、読み替えることで、ほとんど同じ部分については、容易に想到できる。なお、第1実施形態と同じ符号のものは、第1実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と同じであるので説明は省略する。
(培養容器)
まず、図4に本実施形態に係る培養容器300の構成を示す。懸濁液が培養容器300中に存在している。
【0082】
同図(a)によると、培養容器300は、入口303a、出口303b(以下、まとめて入出口303と呼ぶことがある)を有する本体306を備えている。よって、培養容器300の内部空間(すなわち、本体の内部)は入出口303に通じている。入出口303を閉じる事によって前記本体の内部が外界から閉鎖されている。すなわち、この閉鎖性により、本体306内部が、生物学的に、または化学的に、外界から遮断されており、細胞培養に影響を及ぼすような熱や湿気、微生物、化学物質、気体などが外界から本体内部に対して行き来をしない様になっている。なお、本体306はガラスやポリスチレン等のプラスチック、高分子材料から構成されていてもよく、培養容器300は本体306と搬送のための把持部等を備えていてもよい。
【0083】
本体306の内部には、入出口303に通じる1つの空間である連通部302が存在しており、本体306は、第1枠体306aと、第1枠体306aに対向する第2枠体306bと、伸縮部306cとを有している。伸縮部306cは第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在して、第1枠体306aと第2枠体306bとを接合している。伸縮部306cは、少なくとも伸縮性を有する素材から構成されており、例えばゴム材やエチレン酢酸ビニル等の高分子物質から構成されている。なお、連通部302は第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在している。
【0084】
本実施形態および以下の実施形態では、連通部は内部空間の一部であり、該連通部と各培養室内部の空間とを併せたものが内部空間となる。本実施形態および以下の実施形態では、分断部に分断されるのは内部空間の一部である連通部であるが、この内部空間の一部である連通部が分断部に分断されることで、内部空間が分断部により分断されることを意味する。
【0085】
第1枠体306aには、後述する互いに閉鎖された複数の培養室を構成するための壁部304aが、第2枠体306bには壁部304aの各々と対応して咬合する咬合部304bが備えられ、連通部302を分断する分断部304は、この壁部304aと咬合部304bとから構成されている。なお、培養容器300は、本体306以外に搬送のための把持部等を備えていてもよい。
【0086】
同図(a)は培養室301が区分けされており(なお、閉鎖はされていない)、連通部302を有しているが、同図(b)では、伸縮部306cが伸縮して壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で分断部304が連通部302を分断し、本体306の内部を、少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の空間である培養室301に区分けする。各培養室301は、第1枠体306a、第2枠体306b、壁部304a、咬合部304bで囲まれた構造となっており、両端の培養室301は、さらに伸縮部306cも含めて囲まれた構造となっている。
【0087】
同図(b)によると、伸縮部306cが収縮して第1枠体306aが第2枠体306bに近づくことで、壁部304aと咬合部304bが咬合し、第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在している連通部302が分断部304によって分断される。なお、本第2実施形態は、第1実施形態とは異なり、分断部304が当初から存在しており、本体306内部には複数の培養室301に区分けされている。本体306内部には連通部302と各培養室301が存在している。
【0088】
以上のように、培養容器300は、懸濁液を入出させるための入出口303を備え、入出口303を閉じる事によって入出口303に通じる内部空間(本実施形態では、連通部302と各培養室301内部の空間とを併せたもの)が外界から閉鎖され、かつ内部空間内に複数の培養室301が少なくとも一方向に配列される培養容器300であって、内部空間内に、複数の培養室301のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、懸濁液を受ける底面部として機能する分断部304を備える
この構成により、本体306内部の一つの空間に複数の培養室301を容易に形成させる、すなわち本体306内部の複数の培養室301を連通する連通部302を解消することで、互いに閉鎖された各培養室301を容易に得ることができる。また、試薬の投入や培地交換、培養した細胞の取り出しなどの必要な時に、複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。すなわち、分断部が内部空間を分断する事により、本体の内部に互いに閉鎖された複数の空間を形成することができ、また、分断部が内部空間の分断を解除する事により、本体の内部の互いに閉鎖された複数の空間の閉鎖を解除され、複数の空間を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができる。なお、複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すのは、一度に全ての連通部302の分断を解除してもよいし、連通部302の一部の分断を解除してから、残りの連通部302の分断を解除するような形でもよい。
【0089】
このように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0090】
なお、同図(c)に、同図(b)の状態の培養容器300を、左方向に90度回転させた図を示す。同図(c)のように、面積の広い分断部304側を懸濁液を受ける底面部にすることで、培養面積を確保しつつ、各培養室を積層した状態で細胞の培養を行うことができる。
【0091】
同図(c)の状態の培養容器300は、分断部304によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された培養室301が鉛直方向に対して積層された状態である。この時、複数の培養室301は互いに閉鎖された状態を維持する。よって、培養容器300を鉛直方向に対して積層された状態から傾けた場合に、懸濁液が各培養室301からこぼれるということがおこらない。なお、鉛直方向に積層された状態とは、同図のような複数の培養室301の間の連通分断部304が鉛直方向に対して略垂直な面となっている場合に限られない。すなわち、複数の培養室301が鉛直方向に対して積層されたと見做しうる状態であれば、鉛直方向に対して積層された状態となっていると見做してよい。
【0092】
なお、同図(c)のように、懸濁液を受ける底面部に対して懸濁液を流出させずに保持するための側壁が要るところ、この側壁の役割を本体306の内壁が果たしている。よって、従来技術では必要であったリブのような構成を、別途設ける必要はない。
【0093】
なお、同図では培養室301が6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
(培養装置)
本第2実施形態における培養装置は、第1実施形態で説明した培養装置とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。
【0094】
図5に本実施形態に係る培養容器300を使用した培養装置400の構成を示す。
【0095】
培養装置400は、分断部304によって連通部302を分断するために、図4を使用して説明した伸縮部306cを収縮させて壁部304aと咬合部304bとを咬合させる(および、伸縮部306cを伸長させて壁部304aを咬合部304bから引き離す)ための分断駆動部B200を備えている。
【0096】
培養装置400は、前記培養容器を回転させる回転駆動部R100を備えている。培養容器を回転させる目的は、次の通りである。最初は、培養容器300を連通部302を下にした状態で横にし、壁部304aを咬合部304bから離した状態で懸濁液を連通部302に注入し、その後、壁部304aと咬合部304bを咬合させて培養室301を形成させることで、懸濁液を各培養室に略等分化し、その後90度回転させて培養容器300の長手方向を垂直方向にして立てることで、培養室301毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い壁部304a(分断部304)を底面にして細胞の培養を行うことができるからである(この場合分断部304が底となる)。
【0097】
また、培養装置400は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0098】
以上のことから、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室301毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部304を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。さらに、以上の構成により、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
本第2実施形態における培養動作のフローは、第1実施形態で説明した培養動作のフローとほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。すなわち、本実施形態ではステップS102をステップS202に、ステップS106をステップS206に、ステップS108をステップS208に、ステップS113をステップS213に置き換え、その他のステップは第1実施形態の内容を培養容器300、培養装置400に合わせて適宜解釈すればよい。
【0099】
図6に本実施形態に係る培養装置400を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0100】
ステップS202では、複数の培養室101を閉鎖状態にする。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で分断部304が連通部302を分断し、本体306の内部を互いに閉鎖された複数の空間である培養室301に区分けする。
【0101】
ステップS206では、複数の培養室101間の閉鎖状態が解除される。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aを咬合部304bから離す事で連通部302の分断が解除され、互いに閉鎖された複数の空間である培養室301を統合し、本体306の内部を一つの空間に戻す。
【0102】
ステップS208では、細胞の培養を再開すべく、ステップS202と同様に、複数の培養室101を閉鎖状態にする。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で分断部304が連通部302を分断し、本体306の内部を互いに閉鎖された複数の空間である培養室301に区分けする。
【0103】
ステップS213では、ステップS206と同様に、複数の培養室101間の閉鎖状態が解除される。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aを咬合部304bから離す事で連通部302の分断が解除され、互いに閉鎖された複数の空間である培養室301を統合し、本体306の内部を一つの空間に戻す。
【0104】
以上のように、本実施形態の培養容器300を使用すると、壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在する連通部302を分断し、本体306の内部を互いに閉鎖された複数の空間に区分けする、すなわち本体306内部に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させることができ、また互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から連通部302が存在する状態に容易に戻すことができる。つまり、細胞を培養させるために互いに閉鎖された複数の培養室が必要な場合には容易に形成させることができる一方、試薬の投入や培地交換を行うため、または培養した細胞を取り出したりするため培養室の区分けを解消したい、すなわち複数の培養室301を形成させた状態から連通部302が存在する状態に戻したい時は容易に戻すことができる。
【0105】
本体306内部に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させる、すなわち本体306内部の複数の培養室301を連通する連通部302を分断することで、互いに閉鎖された各培養室301を得ることができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から連通部302が存在する状態に戻すことができる。
【0106】
以上により、本体306内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させることができるので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、懸濁液や試薬の投入を各培養室毎に分注することなく一度で行え、その後に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させることで、各培養室毎の分注を容易にすることができる。この際、上で述べた分断部304による連通部302の分断により、懸濁液や試薬を略平等に分注することができる。さらに、互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、培地や細胞の回収時に各培養室毎に回収する必要がなく、一度で容易に回収を行うことができる。
【0107】
[第3実施形態]
本第3実施形態では、第2実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。本実施形態では、図における符号などが第2実施形態の場合と異なっているが、適宜、読み替えることで、ほとんど同じ部分については、容易に想到できる。なお、第2実施形態と同じ符号のものは、第2実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と同じであるので説明は省略する。
(培養容器)
図7に本実施形態に係る培養容器500の構成を示す。
【0108】
本実施形態では、各咬合部304bに連絡孔(図示無し、符号無し)が備えられており、分断部304である壁部304aと咬合部304bが咬合して第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在している連通部302が分断部304によって分断されても、連絡孔を挟んで隣り合っている培養室501同士は連絡孔によって通じ合う(以下、連絡があるという)。各連絡孔には連絡孔封止バルブ504が各々設けられており、連絡孔封止バルブ504によって連絡孔を閉じることで、隣り合う培養室501間の連絡は分断される。すなわち、連絡孔封止バルブ504によって連絡孔における連絡を分断することで、連絡孔を挟んで隣り合っている培養室501同士は閉鎖状態になる。逆に連絡孔を開くことで、隣り合う培養室501間の閉鎖状態は解除される。
【0109】
同図(a)は、全ての連絡孔封止バルブ504が連絡孔を閉じている状態である。この状態で壁部304aと咬合部304bを咬合させた場合、各培養室501は少なくとも一方向に配列され、互いに閉鎖された状態となる。よって、壁部304aと咬合部304bを咬合させて同図(b)のように立てた場合、各培養室501に懸濁液が存在する。
【0110】
同図(c)は、両端の連絡孔が開かれておりかつ一つおきに連絡孔が開かれ、残りの連絡孔は閉じられている状態である。この状態で壁部304aと咬合部304bを咬合させた場合、隣り合う培養室401同士のみ互いに連絡がある。隣り合う培養室501以外は閉鎖状態である。よって同図(d)のように立てた場合、連絡孔を通じて懸濁液が上の培養室から下の培養室へ流れ落ちるので、一つおきの培養室501に懸濁液が存在することになる(この場合、懸濁液の存在する培養室は全体の数の1/2となる)。なお、後述のように、実際の培養動作では、培養の初期では所定の連絡孔を開けておき(後述のステップS302など参照)、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504を動かして所定の連絡孔を閉じて行き、培養面積を広げていく(後述のステップS308など参照)。同図で説明すると、培養の初期では図(d)の状態にあり(この図では、上から1,3,5番目の連絡孔封止バルブ504が、上記所定の連絡孔に対応している)、培養が進むにつれて、最終的には図(b)の状態へ移行してゆく。
【0111】
以上の構成により、培養容器を垂直に設置した状態で連絡孔を開けることで、細胞培養に使用する培養室を減らすことができる。すなわち、連絡孔を開けることで細胞培養に使用する培養面積を減らすことができ、連絡孔封止バルブ504により連絡孔を開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる。
【0112】
細胞培養においては、培養面積は懸濁液中に含まれる細胞の数に依存する場合があり、細胞面積が広すぎると細胞培養に悪影響を及ぼす場合がある。よって、最初は所定の連絡孔封止バルブ504は連絡孔を開けておき、培養面積を狭くしておき、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504で連絡孔を閉じて培養面積を広げていく必要がある。なお、開けておくべき所定の連絡孔封止バルブ504は、必要な培養面積から定めることができる。本実施形態の培養容器を使用することで、このような培養の仕方にも対応することができる。
【0113】
以上のように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0114】
なお、同図(a)〜(d)では培養室501が6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
(培養装置)
本第3実施形態における培養装置は、第2実施形態で説明した培養装置とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。。
【0115】
図8に本実施形態に係る培養容器500を使用した培養装置600の構成を示す。なお、図8では、第2実施形態で説明した回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101の図示が、説明の便宜の上から省略されているが、本実施形態の培養装置でも第2実施形態と同じ機能を有して存在している(以下、図5の回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101を参照のこと)
培養装置600は、培養容器500の各連絡孔を開閉させるために連絡孔封止バルブ504を動作させるバルブ駆動部B500を有している。
【0116】
また、培養装置600は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0117】
以上のように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室501毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部304を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。さらに、以上の構成により、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
本実施形態における培養動作のフローは、第2実施形態で説明した培養動作のフローとほとんど同じであるので、異なる部分を主に説明する。すなわち、本実施形態ではステップS202をステップS302に、ステップS208をステップS308に置き換え、その他のステップは第2実施形態の内容を培養容器500、培養装置600に合わせて適宜解釈すればよい。
【0118】
図9に本実施形態に係る培養装置400を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0119】
ステップS302では、ステップS202の動作に加え、バルブ駆動部B500が連絡孔封止バルブ504を動かして所定の連絡孔を開けておく。例えば、図7(d)のように、上から1,3,5番目の連絡孔封止バルブ504に対応する連絡孔を、所定の連絡孔としてよい。
【0120】
ステップS308では、ステップS208の動作に加え、バルブ駆動部B500が連絡孔封止バルブ504を動かして、培養が進むにつれて培養面積を広げていく。具体的には、培養容器が水平方向状態の時に連絡孔を閉じ、回転駆動部R100が培養容器を回転させて培養容器を水平方向状態から垂直方向状態にすることで各培養室に懸濁液が満たされ、培養面積が広がる。
【0121】
ステップS105〜ステップS109の工程を繰り返す中で、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504を動かして連絡孔を閉じていく。時間軸方向に対する連絡孔の閉じるタイミングは、細胞数の計数結果などの結果から定められ、細胞数が所定の上限値に達すると考えられるタイミングで連絡孔を閉じる。
【0122】
以上のように、本実施形態の培養容器500、培養装置600は、本実施形態の培養容器300、培養装置400が有する、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる効果に加え、連絡孔封止バルブ504により連絡孔を開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる効果を有する。
【0123】
[第4実施形態]
本第4実施形態における培養装置は、第3実施形態で説明した培養容器を2つ併せた形態となっている。よって、本実施形態では、培養容器、培養装置、培養動作において第3実施形態での説明と異なる部分、追加を要する部分について主に説明する。本実施形態では、図における符号などが第3実施形態の場合と異なっているが、適宜、読み替えることで、ほとんど同じ部分については、容易に想到できる。なお、第3実施形態と同じ符号のものは、第3実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と同じであるので説明は省略する。
(培養容器)
図10に本実施形態に係る培養容器700の構成を示す。
【0124】
本実施形態における培養装置700は、第3実施形態で説明した培養容器500を2つ(培養容器5001、5002と称する)について、培養容器5001、5002各々の第1枠体306a(培養容器5001の方を第1枠体306a1、培養容器5002の方を第1枠体306a2と称する)側を対応させて併せた形態となっている。
【0125】
本実施形態では、第3実施形態で説明した培養容器500でいう第2枠体306b、2つの伸縮部306c、壁部304a、咬合部304b、連通部302、入出口303、連絡孔封止バルブ504は以下のように表されている。
【0126】
培養容器5001では、第2枠体306b1、2つの伸縮部306c1、壁部304a1、咬合部304b1、連通部3021、入出口3031(入口3031a、出口3031b)、連絡孔封止バルブ5041と表されている。
【0127】
培養容器5002では、第2枠体306b2、2つの伸縮部306c2、壁部304a2、咬合部304b2、連通部3022、入出口3032(入口3032a、出口3032b)、連絡孔封止バルブ5042と表されている。
【0128】
2つの第1枠体306a1、第1枠体306a2の間にはスライド弁706eが存在し、2つの容器の培養室701(培養容器5001の方を培養室7011、培養容器5002の方を培養室7012と称する)間には各々孔706dが設けられており、スライド弁706eをスライドさせることで、各孔706dを開閉させることができる。孔706dを開くことで隣り合う培養室7011、培養室7012間を懸濁液等が行き交う事ができ(第3実施形態でいう「連絡がある」と同じ意味である)、孔706dを閉じる事で培養室7011、培養室7012間の行き来が閉じられ、孔706dを閉じる事で2つの容器の培養室7011、培養室7012の間は閉鎖された状態となる。すなわち、孔706dを開くことで2つの容器の培養室7011、培養室7012間の閉鎖状態が解除される。
【0129】
以上のように、培養装置700は、培養容器5001、培養容器5002、スライド弁706eで構成された一体型の培養容器となっている。
【0130】
同図(a)は、全ての連絡孔封止バルブ5041、5042が連絡孔を閉じ、スライド弁706eが孔706dを閉じている状態で培養装置700が横方向になっている図である。この状態で壁部304a1と咬合部304b1、壁部304a2と咬合部304b2を咬合させた場合、各培養室7011は全て、一方向に配列された、互いに閉鎖した状態となる。各培養室7012も全て、一方向に配列された、互いに閉鎖した状態となる。なお、同図(a)において、懸濁液は培養容器5002側のみに存在している。壁部304a1と咬合部304b1、壁部304a2と咬合部304b2を咬合させて同図(b)のように立てた場合、各培養室7012のみに懸濁液が存在することになる。この後、スライド弁706eをスライドさせて孔706dを開いた場合、隣り合う各培養室7011、7012間の閉鎖状態は解除されるので、各培養室7012のみに懸濁液が存在した状態から、各培養室7011、7012全てに懸濁液が存在する状態となる。
【0131】
以上の構成により、培養容器を垂直に設置した状態でスライド弁706eをスライドさせて孔706dを閉じることで、細胞培養に使用する培養室を減らすことができる。すなわち、孔を閉じることで細胞培養に使用する培養面積を減らすことができ、スライド弁706eにより孔706dを開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる。
【0132】
また、スライド弁706eにより孔706dを閉じておいて、培養室7011に試薬等を注液しておき、培養室7012に懸濁液を蓄えておいた状態で、スライド弁706eにより孔706dを開くことで、培養室7011中の試薬と培養室7012中の懸濁液を混合させることができ、その後、培養室7011と培養室7012の両方を使用して、培養面積を広げて培養を継続することができる。
【0133】
以上のことから、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0134】
なお、同図(a)〜(b)では培養室7011、7012が各々6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
(培養装置)
本第4実施形態における培養装置は、第3実施形態で説明した培養装置とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。
【0135】
図11に本実施形態に係る培養容器700を使用した培養装置800の構成を示す。なお、図11では、第2実施形態で説明した回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101の図示が、説明の便宜の上から省略されているが、本実施形態の培養装置でも第2実施形態と同じ機能を有して存在している(以下、図5の回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101を参照のこと)。
【0136】
培養装置800は、培養容器700への懸濁液等の注液の際に培養容器700の入口3031a、3032aに接続される配管P800と、当該注液の際に入出口3031a側の配管P800のバルブを開閉する開閉部SW7001と、当該注液の際に入出口3032a側の配管P800のバルブを開閉する開閉部SW7002を備えている。また、培養容器700からの廃液の際に培養容器700の入出口3031b、3032bに接続される配管P801と、当該廃液の際に入出口3031b側の配管P801のバルブを開閉する開閉部SW7011と、当該廃液の際に入出口3032b側の配管P801のバルブを開閉する開閉部SW7012を備えている。なお本実施形態では、同図に示すように、配管P800のバルブと配管P801のバルブは、各々2つ存在している。
【0137】
また、培養装置800は、分断部304a1、304a2によって連通部3021、3022を分断するために、伸縮部306c1、306c2を収縮させて壁部304a1と咬合部304b1、壁部304a2と咬合部304b2とを咬合させる(および、伸縮部306c1、306c2を伸長させて壁部304a1を咬合部304b1から、壁部304a2を咬合部304b2から引き離す)ための分断駆動部B271、B272を備えている。
【0138】
また、培養装置800は、培養容器700の各連絡孔を開閉させるために連絡孔封止バルブ5041を動作させるバルブ駆動部B571、連絡孔封止バルブ5042を動作させるバルブ駆動部B572を有し、培養容器700の各孔706dを開閉させるためにスライド弁706eをスライド動作させる弁駆動部B573を有している。
【0139】
また、培養装置800は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0140】
以上のことから、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室701毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部304を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。さらに、以上の構成により、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
本実施形態における培養動作のフローは、第3実施形態で説明した培養動作のフローとほとんど同じであるので、異なる部分を主に説明する。すなわち、本実施形態ではステップS302をステップS402に、ステップS308をステップS408に置き換え、その他のステップは第3実施形態の内容を培養容器700、培養装置800に合わせて適宜解釈すればよい。
【0141】
図12に本実施形態に係る培養装置800を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0142】
ステップS402では、ステップS302の動作に加え、バルブ駆動部B571、B572が連絡孔封止バルブ5041、5042を動かして所定の連絡孔を開けておく。
【0143】
ステップS408では、ステップS308の動作に加え、バルブ駆動部B571、B572が連絡孔封止バルブ5041、5042を動かして、培養が進むにつれて培養面積を広げていく。または、弁駆動部B573がスライド弁706eをスライドさせて、培養が進むにつれてたとえば培養室7011にある試薬と培養室7012にある懸濁液を混合させて、かつ、培養面積を広げていく。具体的には、培養容器が水平方向状態の時に連絡孔を閉じ、回転駆動部R100が培養容器を回転させて培養容器を水平方向状態から垂直方向状態にすることで各培養室に懸濁液が満たされ、培養面積が広がる。また、培養容器が垂直方向状態の時に孔706dを開くことで、たとえば培養室7011にある試薬と培養室7012にある懸濁液を混合され、かつ培養面積が広がる。
【0144】
ステップS105〜ステップS109の工程を繰り返す中で、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504を動かして連絡孔を閉じていく。また、スライド弁706eをスライドさせて孔706dを開いてゆく。時間軸方向に対する連絡孔の閉じ方、孔706dの開き方は、実験等の結果から定められる。
【0145】
以上のように、本実施形態の培養容器700、培養装置800は、本実施形態の培養容器500、培養装置600が有する、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる効果に加え、連絡孔封止バルブ504により連絡孔を開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる効果を有する。
【0146】
また、試薬の混合を培養容器内のみで行えるため容器の閉鎖性が高まり、培養作業においてコンタミネーションのリスクが低減できる。
【0147】
なお、本実施形態では、培養容器を2つ併せた形態(培養容器5001、培養容器5002)としたが、培養容器を3つ併せた形態、あるいはそれ以上の培養容器を併せた形態としてもよい。
[その他の実施形態]
本実施の形態における培養装置200、400、600、800の制御は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどで実現できる。また、ソフトウェア的には、RAMにロードされた細胞培養機能のあるプログラムなどによって実現される。例えば、図2、5、8、11中の制御装置PC100には、コンピュータなどである機能構成が示されておりこの構成により実現される。ただし、これらの機能ブロックが、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、あるいは、それらの組合せ等、いろいろな形態で実現できることは言うまでもない。
【0148】
つまり、培養装置200、400、600、800において使用される汎用コンピュータを制御装置PC100として動作させる細胞培養プログラムは、図3、6、9、12で示されている細胞培養動作の流れ図の中で適宜使用される。
【0149】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【符号の説明】
【0150】
100、200、300、400 培養容器
101、201,301、401 培養室
102,202、302、402 連通部(内部空間)
103、203、303、403 入出口
104、204、304、404 分断部、底面部
106、206、306、406 本体
504 連絡孔封止バルブ
B101、B200、B500、B571、B572 分断駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器および培養装置に関するものであり、特に、複数の培養容器を使用して培養する場合などに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
バイオ技術分野において、細胞を培養する事が行われている。細胞の培養とは、細胞を所定の培地においてその数を増加させたり、成長させたり、性質を変化させたりすることである。よって、細胞数の増加を伴なう細胞を培養する場合は、培養当初から大きい培養面積を確保しておかねばならない。
【0003】
大きい培養面積を確保するためには大きい培養面積のシャーレやフラスコなどの容器(以下、培養容器と総称する)を使用すればよいのであるが、培養当初から大きい培養面積の培養容器を使用するのは嵩張って邪魔でもあり非効率的である。そこで、培養した細胞が培養容器全体に増加した際に、別の培養容器を複数個使用して、培養した細胞をそれら別の培養容器に継代することで更に培養を続けることが行われている。
【0004】
しかし、複数の培養容器を使用することはそれらの保管場所を要する上、それらの管理も煩雑となる。
【0005】
保管場所を要する点については、それら複数の培養容器を垂直方向に積層して置くことで解決される。非特許文献1には、複数のチェンバーを垂直方向に有する培養容器(以下、従来容器と称す)が記載されている。当該従来容器は複数のチェンバーを垂直方向に内蔵することで、複数の培養容器を積層したのと同じ効果を奏している。
【0006】
従来容器は、細胞や培養液等をその内部に入出させるための入出口を有しており、複数のチェンバーは従来容器内部で上記の入出口に通じる空間である連通部によって互いに連通している。すなわち、従来容器内部の空間は、複数のチェンバーを内蔵することにより部分的に複数の空間に区分けされているが、連通部を内蔵することにより互いのチェンバー同士は閉鎖された空間とはなっておらず、一つの繋がった空間となっている。
【0007】
図13には、同図(a)に細胞と培地の懸濁液(符号2000)が従来容器1000内に注入された状態が、同図(b)に各チェンバー1001毎に細胞が略均一に分注され、培地も略等分化された状態が、同図(c)にはチェンバーが垂直方向に積層された形となり細胞が培養されている状態が記載されている。
【0008】
同図における従来容器1000の図(a)→(b)→(c)の間における状態の変遷について説明する。
【0009】
同図(a)では、懸濁液2000(同図中波線領域)が入出口1003を通じて従来容器1000内に注入された状態であり、細胞と培地が従来容器1000の底に溜まっている。なお、従来容器1000は、連通部1002が下方に位置し、チェンバー1001が上方に位置するように置かれている。チェンバー1001は、分断部1004によって形成された複数の部分的な空間であり、閉鎖されない小部屋となっている。
【0010】
同図(b)では、従来容器1000の同図(a)において底だった部分と天井だった部分とが入れ替わるように従来容器1000全体を180°回転させて置いた状態となっている。すなわち、連通部1002(同図中斜線領域)が上方に位置し、チェンバー1001が下方に位置するように置かれている。この結果、各分断部1004によって懸濁液2000(同図中波線領域)が略均一に各チェンバー1001毎に分けられている。なお、細胞の分注においては、播種密度の均一化は厳密なものではなく、ある程度均一化されていれば良い。
【0011】
同図(c)では、入出口1003のある面が上方に位置するように従来容器1000全体を90°回転させて置いた状態となっている。同図において、各分断部1004は各チェンバーの底面をなす板となっている。この結果、各チェンバーに略均一に分けられた懸濁液2000がチェンバー内でチェンバーの底面(分断部1004)に広がり、細胞の培養が行える状態となっている。なお、各分断部1004にリブ1005が設けられている事で、各チェンバー内において懸濁液2000は流出せずに保持する事ができている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「NUNC CATALOGUE 2006〜」ナルジェ・ヌンク・インターナショナル株式会社 2006年4月制作(50〜51ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術では、保管場所を要する点については、複数の培養容器を垂直方向に積層して置くことで解決できた。
【0014】
しかし、上述のように従来容器1000内部の空間は、部分的に複数の空間に区分けされているが、連通部が存在している事により、互いのチェンバー同士は閉鎖された空間とはなっておらず、一つの繋がった空間となっている。その結果、例えば従来容器1000を図13(c)の状態から同図(a)の状態に向けて傾けた場合に、(懸濁液がチェンバーからこぼれることで)細胞培養中に各チェンバー間の懸濁液が混入しあい、その結果、各チェンバー間での懸濁液の量や培養している細胞の数が大きく異なる事となる。
【0015】
また、各チェンバーにおいては、懸濁液2000はリブ1005の高さまでしか入れることができず、懸濁液2000をリブ1005の高さぎりぎりまで入れていた状態においては、細胞培養中に各チェンバーに薬剤を注入した場合に懸濁液が溢れる事となる。
【0016】
従来技術では、例えば、上で述べたような問題点から懸濁液がチェンバーからこぼれないように常に気を配りながら細胞培養作業を行わねばならなず、ユーザが所望の細胞の培養作業を能率的に行うことはできない。
【0017】
そこで、本発明では、保管場所を要する点を解決すると共に、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る培養容器は、液体を入出させるための入出口を備え、前記入出口を閉じる事によって前記入出口に通じる内部空間が外界から閉鎖され、かつ前記内部空間内に複数の培養室が少なくとも一方向に配列される培養容器であって、前記内部空間内に、前記複数の培養室のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、前記液体を受ける底面部として機能する分断部を備える。
【0019】
上記分断部により、前記の隣り合う培養室の間が互いに閉鎖されるので、前記の隣り合う培養室の間での液体の漏れや混入が防止され、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0020】
本発明に係る培養容器は、液体を入出させるための入出口を備え、前記入出口を閉じる事によって内部空間が外界から閉鎖される培養容器であって、前記入出口に通じる前記内部空間を、少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の培養室に分断する分断部を備え、前記分断部は、液体を受ける底面部としての機能を有し、前記分断部が前記内部空間を分断する事により、前記互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、前記分断部が前記内部空間の分断を解除する事により、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除される。
【0021】
前記入出口に通じる前記内部空間を少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の培養室に分断する分断部を備え、前記内部空間を少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の培養室に分断するので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0022】
なお、培養容器は、少なくとも伸縮性を有する素材から成り、前記分断部は前記素材が伸縮することで培養容器の内面の一部に形成され、前記内面の一部が接触し合う事で前記分断部が前記内部空間を分断して、互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、前記内面の一部の接触が解除される事で前記内部空間の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除されてもよい。
【0023】
この構成により、前記分断部が前記内部空間を分断しないときには複数の培養室が存在しないような培養容器であっても、前記分断部が前記内部空間を分断することで複数の培養室が形成されて複数の培養室が互いに閉鎖性を有するので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0024】
また、第1枠体と、前記第1枠体に対向する第2枠体と、少なくとも伸縮性を有する素材から成る伸縮部とから構成され、前記伸縮部は、前記第1枠体と前記第2枠体の間に存在して、前記第1枠体と前記第2枠体とを接合させ、前記第1枠体には、互いに閉鎖された複数の培養室を構成するための壁部が備えられ、前記第2枠体には前記壁部の各々と対応して咬合する咬合部が備えられ、前記内部空間の一部である連通部を分断する分断部は、前記壁部と前記咬合部とから構成され、前記伸縮部が伸縮して前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部が咬合する事で前記連通部を分断して、前記互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部との咬合が解除される事で前記連通部の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除されるものであってもよい。
【0025】
第1枠体、第2枠体、伸縮部、壁部、咬合部、連通部を有する上記の構成により、前記分断部が前記内部空間(連通部)を分断しないときにも複数の培養室が存在するが互いの複数の培養室は閉鎖性を有さないような培養容器であっても、前記分断部が前記連通部を分断することで複数の培養室が互いに閉鎖性を有するので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0026】
さらに、前記咬合部は開閉可能な連絡孔を有し、前記連通部が分断されて、前記互いに閉鎖された複数の培養室が形成された場合に、前記連絡孔を開くことで、隣り合う前記複数の培養室においては閉鎖された状態が解除され、前記連絡孔を閉じることで、前記複数の培養室において互いに閉鎖された状態となってもよい。
【0027】
この構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができることに加えて、培養容器を垂直に設置した状態で連絡孔を開けることで、細胞培養に使用する培養室を減らすことができる
さらに、前記分断部によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された前記複数の培養室が、鉛直方向に対して積層された状態のとき、前記複数の培養室は互いに閉鎖された状態を維持してもよい。
【0028】
これにより、鉛直方向に対して積層された状態のときでも、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。
【0029】
本発明に係る培養装置は、温度維持装置と、請求項1〜4に記載の培養容器を備え、前記培養容器の前記入出口に接続される配管と、前記配管を通じて前記培養容器の内部への注液を行う注液部と、前記配管を通じて前記培養容器の内部からの廃液を行う廃液部と、前記入出口を開閉する開閉部とを備え、前記分断部に前記内部空間を分断させるための分断駆動部を備える。
【0030】
この構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる。また、前記複数の培養室毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部を底面にして細胞の培養を行うことができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される。さらに加えて、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる。
【0031】
なお、前記培養容器を回転させる回転駆動部と、前記培養容器に振動を与える振動駆動部とを備えてもよい。
【0032】
この構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができることに加えて、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる。
【0033】
閉鎖とは、生物学的に、または化学的に、内部が外界から遮断されていることを言い、熱や湿気、微生物、化学物質、気体などが外界から内部に対して行き来をしないことをいう。さらには、物理学的に内部が外界から遮断されている、すなわち力や電磁波などが外界から内部に対して関与しない状態を含めてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図2】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図4】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図5】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図7】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図8】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図9】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図10】実施の形態に係る培養容器を説明する図である。
【図11】実施の形態に係る培養装置を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る培養動作を説明するフロー図である。
【図13】従来の培養容器を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
(培養容器)
まず、図1に本実施形態に係る培養容器100の構成を示す。懸濁液が培養容器100中に存在している。
【0037】
同図(a)によると、培養容器100は、入口103a、出口103b(以下、まとめて入出口103と呼ぶことがある)を有する本体106を備えている。よって、培養容器100の内部空間(すなわち、本体の内部)は入出口103に通じている。入出口103を閉じる事によって前記本体の内部が外界から閉鎖されている。すなわち、この閉鎖性により、本体106内部が、生物学的に、または化学的に、外界から遮断されており、細胞培養に影響を及ぼすような熱や湿気、微生物、化学物質、気体などが外界から本体内部に対して行き来をしない様になっている。本体106の内部全体(詳しくは入出口103周りなどを除く本体106の内部の略全体のことであるが、以下では、本体106の内部全体と見做す)は、連通部102となっている。本実施形態では、内部空間は連通部102と一致している(よって、以下、本実施形態では本体106の内部すなわち内部空間のことも連通部102と呼ぶ)。なお、本体106は一部がガラスやポリスチレン等のプラスチック、高分子材料から構成されていてもよく、培養容器100は本体106と搬送のための把持部等を備えていてもよい。
【0038】
同図(b)〜(c)を参照して、本実施形態における連通部102を分断する分断部104の形成のされ方、および分断部104が連通部102をどのように分断する事によって本体106の内部が、少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の空間(以下、培養室と称する)101に区分けされるかについて説明する。本実施形態および以降の実施形態では、一方向を水平方向であるとして説明を行う(同図(b)〜(c)等参照)。なお、一方向とは、水平方向に限るものではなく、垂直方向などでもよく、少し歪んだり、傾いたりしていても水平方向、垂直方向と見做せればよい。また、円周方向などでもよく直線方向に限らない。さらに、培養室が少なくとも一方向に配列されていればよいので、培養容器がL字状やT字状、W字状の形状をすることで、培養室が二方向、三方向と複数方向に配列されていてもよい。
【0039】
本体106は、全体が少なくとも伸縮性を有する素材から構成されており、例えばゴム材やエチレン酢酸ビニル等の高分子物質から構成されている。分断部104は素材が伸縮することで本体106の内面の一部に形成され、この内面の一部が接触し合う事で、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。
【0040】
同図(b)によると、同図(a)の状態に対して仕切り版B100を本体106に押し付けることで、本体106に節104aができる(すなわち、仕切り版B100が本体106に押し付けられることで、仕切り版B100の仕切り板に沿って本体106の一部が伸縮してできる部分が、節104aである)。さらに仕切り版B100を本体106に押し付けることで、同図(c)のように、分断部104が本体106の内面の一部106aおよび106bで構成され(すなわち、仕切り版B100が本体106に押し付けられることで、仕切り版B100の仕切り板に沿って本体106の一部が伸縮してできる部分が、本体106の内面の一部106aである)、この内面の一部106aおよび106bが接触し合う事で、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。本体106全体が上述の様に少なくとも伸縮性を有する素材から構成されているので、本体106の一部が伸縮して内面の一部106aが分断部104となり、内面の一部106aが相手方である内面の一部106bと接することで(内面の一部106bも分断部104となり)、連通部102を分断する。
【0041】
なお、本体106の一部が伸縮して内面の一部106aが分断部104となる構成であるのであれば、本体106全体が伸縮性を有する素材である必要はなく、本体の一部のみが伸縮性を有する素材であってもよい。また、仕切り版B100を本体106に押し付けることで、本体106に節104aを形成させたが、仕切り版B100を本体106に押し付けながら本体106をねじることで、または仕切り版B100を使用せずに本体106をねじることで本体106に節104bを形成させてもよい(同図(d))。この結果、分断部104が本体106の内面の一部106c(すなわち節104b)で構成され、この内面の一部106c同士が接触し合う事で、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。
【0042】
また、分断部104が連通部102の分断を解除する事により、本体106の内部の互いに閉鎖された複数の培養室101の閉鎖が解除され、複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻る。詳しくは、内面の一部106c同士の接触が解除される事で連通部102の分断を解除して、互いに閉鎖された複数の培養室101の閉鎖が解除される。
【0043】
同図(c)または(d)の状態の培養容器100を、左方向に90度回転(または右方向もしくは紙面の手前方向もしくは紙面の奥方向などに90度回転)させると、分断部104によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された培養室101が垂直方向(鉛直方向)に対して積層された状態となる。同図(e)に、同図(c)の状態の培養容器100を、左方向に90度回転させた図を示す。この時、複数の培養室101は互いに閉鎖された状態を維持する。よって、培養容器100を鉛直方向に対して積層された状態から傾けた場合に、懸濁液が各培養室101からこぼれるということがおこらない。なお、鉛直方向に積層された状態とは、同図のような複数の培養室101の間の連通分断部104が鉛直方向に対して略垂直な面となっている場合に限られない。すなわち、複数の培養室101が鉛直方向に対して積層されたと見做しうる状態であれば、鉛直方向に対して積層された状態となっていると見做してよい。
【0044】
なお、同図(b)〜(d)では培養室101が6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
【0045】
以上のように、培養容器100は、懸濁液を入出させるための入出口103を備え、入出口103を閉じる事によって入出口103に通じる内部空間102が外界から閉鎖され、かつ内部空間102内に複数の培養室101が少なくとも一方向に配列される培養容器100であって、内部空間102内に、複数の培養室101のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、懸濁液を受ける底面部として機能する分断部104を備える。
【0046】
この構成により、本体106内部の一つの空間に複数の培養室101を容易に形成させる、すなわち本体106内部の複数の培養室101を連通する連通部102を分断することで、互いに閉鎖された各培養室101を容易に得ることができる。また、試薬の投入や培地交換、培養した細胞の取り出しなどの必要な時に、複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。なお、複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すのは、一度に全ての連通部102の分断を解除してもよいし、連通部102の一部の分断を解除してから、残りの連通部102の分断を解除するような形でもよい。このように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0047】
なお、面積の広い分断部104側を懸濁液を受ける底面部にすることで、培養面積を確保しつつ、各培養室を積層した状態で細胞の培養を行うことができる。なお、同図(e)のように、懸濁液を受ける分断部104側が面積が広くない場合でも、垂直方向に立てた培養容器100に垂直方向に力を加えて、高さ方向を圧縮する一方で底面積を拡大することで、培養面積を大きく取ることができる。
【0048】
同図(e)のように、懸濁液を受ける底面部に対して懸濁液を流出させずに保持するための側壁が要るところ、この側壁の役割を本体106の内壁が果たしている。よって、従来技術では必要であったリブのような構成を、別途設ける必要はない。
(培養装置)
次に、図2に本実施形態に係る培養容器100を使用した培養装置200の構成を示す。
【0049】
培養装置200は、培養容器100と、培養容器100への懸濁液等の注液の際に培養容器100の入口103aに接続される配管P100と、当該注液の際に配管P100のバルブを開閉する開閉部SW100と、配管P100を通じて本体106の内部への注液を行う注液部M100を備えており、培養容器100からの廃液の際に培養容器100の出口103bに接続される配管P101と、当該廃液の際に配管P101のバルブを開閉する開閉部SW101と、配管P101を通じて本体106の内部からの廃液を行う廃液部M101とを備えている。入口103aと配管P100、出口103bと配管P101は、チューブなどで接続されており、後で述べるように回転駆動部R100によって培養容器が回転しても、入口103aと配管P100、出口103bと配管P101が離れないようになっている。
【0050】
注液部M100は、培養容器100へ培地や、生理食塩水(以下、PBSと書く)、酵素、サイトカイン、タンパク等の試薬の単体またはそれらの混合液、またはそれらと培養する細胞との懸濁液等の注液、さらに培養容器100に対して二酸化炭素の封入を行う機能を有する。なお、注液には、ぺリスタポンプやダイヤフラムポンプなどのポンプを用いて行う。また、二酸化炭素の封入は培地のpHを適正な値に保つことを目的に、通常5%の濃度を保つために適切なタイミングで封入される。廃液部M101は、培養容器100からの廃液を廃液タンクへ廃液する機能を有する。廃液についても同様にポンプを用いて行う。
【0051】
また、培養装置200は、図1で示した分断部104によって連通部102を分断するために、上で述べてきたような仕切り版B100の本体106への押し付け動作(および、仕切り版B100の本体106からの引き離し動作)のための分断駆動部B101を備えている。
【0052】
さらに、培養装置200は、前記培養容器を回転させる回転駆動部R100と、前記培養容器に振動を与える振動駆動部V100、ハンマーV101とを備えている。培養容器を回転させる目的は、最初は培養容器100を横にして懸濁液を注液後に複数の培養室101を形成することで懸濁液を各培養室に略等分化させて、その後90度回転させて培養容器100の長手方向を垂直方向にして立てることで(すなわち、一方向に配列された培養室101を鉛直方向に対して積層された状態とすることで)、培養室101毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部104を底面にして細胞の培養を行うことができることである(この場合分断部104が底となる)。なお、垂直方向に立てた培養容器100に垂直方向に力を加えて垂直方向の長さを若干圧縮してもよい。これにより、培養室101において、高さ方向が圧縮される一方、底面積を拡大することができ、培養面積を大きく取ることができる。
【0053】
培養容器に振動を与える目的は、培養室101の底から、培養した細胞を剥がすためである。なお、培養容器に振動を与える代わりに、または培養容器に振動を与える際に、細胞剥離剤を併用してもよい。
【0054】
また、仕切り版B100を本体106に押し付けて、本体106に節104aを形成させることにより、または本体106をねじることで本体106に節104bを形成させることにより、本体106内部の一つの空間に複数の培養室101を容易に形成させることができる。また複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。すなわち、分断部が内部空間を分断する事により、本体の内部に互いに閉鎖された複数の空間を形成することができ、また、分断部が内部空間の分断を解除する事により、本体の内部の互いに閉鎖された複数の空間の閉鎖を解除することができる。このことにより、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができる。すなわち、ユーザはこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される。
【0055】
また、培養装置200は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0056】
このように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室101毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部104を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。
【0057】
なお、制御装置PC100は、開閉部SW100、開閉部SW101、振動駆動部V100、分断駆動部B101の動作の制御や、送液、廃液動作の制御、培養装置200におけるその他の制御、培養装置200内の各所の温度、湿度の管理等を行う。制御装置PC100は、CPU、培養プログラム等が格納されているROM、各演算における作業領域となるRAM、OSや各種プログラム、および培養履歴やセンサ値の計測履歴、管理履歴等が格納されるハードディスク等のストレージなどから構成されている。なお、培養プログラムはストレージに格納されていても良い。制御装置PC100には、各種入力を行うために使用され後述の培養開始ボタン等となるキーボードやマウス、タッチパネル等の入力部、計測結果や管理情報、指示情報、警告出力等が出力されるディスプレイやスピーカ等の出力部が接続されている。
【0058】
以上の構成により、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができることに加え、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
次に、図3に本実施形態に係る培養装置200を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0059】
ステップS100では、培養動作の事前作業として、注液部M100に、培地やPBS、試薬等の液材、二酸化炭素ボンベをセットする。また、廃液部M101に、廃液タンクをセットする。なお、入口103aには配管P100、出口103bには配管P101が接続され、配管P100のバルブを開閉するのは開閉部SW100である。
【0060】
ステップS101では、注液部M100が上記液材と細胞の懸濁液を培養容器100へ注入する。この際、懸濁液中が偏りなくまんべんなく拡散するように回転駆動部R100が培養容器100を振ってもよい。
【0061】
ステップS102では、培養容器100の内部を複数の培養室101に分割する。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100の本体106へ押し付けさせ、分断部104によって連通部102を分断させる。これにより、連通部102を分断し、本体106の内部を、互いに閉鎖された複数の培養室101に区分けする。
【0062】
ステップS103では、回転駆動部R100が培養容器100を90度回転させて、複数の培養室101が積層する状態とするべく、培養容器100の長手方向を垂直方向にして立てる回転駆動を行う。
【0063】
ステップS104では、上記までにおいて複数の培養室101が積層され、細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態となっているので、細胞の培養を開始する。たとえば、制御装置PC100の入力部にある培養開始ボタンを押下するなどすることで、制御装置PC100中のROMに記憶されている培養プログラムが起動し、各培養室の温度を一定に保つヒータが始動し、培養時間を計測するタイマが始動する。
【0064】
タイマを参照することにより、試薬を投入する時間または培地を交換する時間となった場合は、次のステップS105へ至る。
【0065】
ステップS105では、回転駆動部R100が培養容器100をステップS103の時とは逆の方向に90度回転させて、複数の培養室101を横に併存する状態とするべく、培養容器100の長手方向を水平方向にして寝かせる回転駆動を行う。
【0066】
ステップS106では、培養容器100の内部を、複数の培養室101が存在する状態から一つの空間を有する状態に戻す。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100の本体106への押し付け状態を解除させ、分断部104による連通部102の分断を解除する。これにより、連通部102の分断を解除し、互いに閉鎖された複数の培養室101を統合し、本体106の内部を一つの空間に戻す。
【0067】
ステップS107では、配管P100のバルブを開閉部SW100が開閉することで、注液部M100が培養容器100に試薬を投入する。この際、試薬が懸濁液中にまんべんなく拡散するように回転駆動部R100が培養容器100を振ってもよい。
【0068】
なお、ステップS107では、配管P101のバルブを開閉部SW101が開閉することで、廃液部M101により培養容器100から培地等の廃液を廃液タンクへ廃液し、注液部M100により懸濁液を培養容器100へ再注入する工程を行うことで、培地を交換してもよい。なお、懸濁液中が偏りなくまんべんなく拡散するように回転駆動部R100が培養容器100を振ってもよい。
【0069】
ステップS108では、細胞の培養を再開すべく、ステップS102と同様に、培養容器100の内部を複数の培養室101に分割する。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100を本体106へ押し付けさせ、分断部104によって連通部102を分断させる。
【0070】
ステップS109では、ステップS103と同様に、回転駆動部R100が培養容器100を90度回転させて、複数の培養室101が積層する状態とするべく、培養容器100の長手方向を垂直方向にして立てる回転駆動を行う。
【0071】
この後、タイマを参照することにより、試薬を投入する時間または培地を交換する時間となった場合は、上のステップS105〜ステップS109の工程を繰り返す。
【0072】
タイマを参照することにより、細胞培養を終了する時間となった場合は、次からの細胞培養の終了動作に移る。
【0073】
ステップS110では、各培養室の底面に張り付いている細胞を底面から剥離させるべく、回転駆動部R100が培養容器100を回転させる。
【0074】
ステップS111では、各培養室の底面に張り付いている細胞を底面から剥離させるべく、振動駆動部V100がハンマーV101で培養容器100を打撃する。
【0075】
ステップS112では、回転駆動部R100は培養容器100を回転させて、複数の培養室101を横に併存する状態とするべく、培養容器100の長手方向を水平方向にして寝かせる回転駆動を行う。
【0076】
ステップS113では、ステップS106と同様に、培養容器100の内部を、複数の培養室101が存在する状態から一つの空間を有する状態に戻す。すなわち、分断駆動部B101を使用して仕切り版B100の本体106への押し付け状態を解除させ、分断部104による連通部102の分断を解除する。
【0077】
ステップS114では、配管P101のバルブを開閉部SW101が開閉することで、廃液部M101により培養容器100から培地等の廃液のみを廃液タンクへ廃液し、細胞の取り出しを行う。この廃液のみ廃液し細胞を取り出す方法は既知の任意の方法を使用することができる。例えば、手動で容器を取り外し、細胞を取り出してもよい。
【0078】
以上のように、本実施形態の培養容器100を使用すると、本体106内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の空間に区分けする即ち互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることができ、また互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。つまり、細胞を培養させるために互いに閉鎖された複数の培養室が必要な場合には容易に形成させることができる一方、試薬の投入や培地交換を行うため、または培養した細胞を取り出したりするため培養室の区分けを解消したい、すなわち複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻したい時は容易に戻すことができる。
【0079】
すなわち、本体106の内面の一部106a、106bが接触し合う事で本体106内部の複数の培養室101を連通する連通部102を分断し、本体106の内部を互いに閉鎖された複数の空間に区分けする、すなわち本体106内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態(連通部102)に戻すができる。
【0080】
以上により、本体106内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることができるので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、懸濁液や試薬の投入を各培養室毎に分注することなく一度で行え、その後に互いに閉鎖された複数の培養室101を容易に形成させることで、各培養室毎の分注を容易にすることができる。この際、上で述べた分断部104による連通部102の分断により、懸濁液や試薬を略平等に分注することができる。さらに、互いに閉鎖された複数の培養室101を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、培地や細胞の回収時に各培養室毎に回収する必要がなく、一度で容易に回収を行うことができる。
【0081】
[第2実施形態]
本第2実施形態では、第1実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と異なる部分について主に説明する。本実施形態では、図における符号などが第1実施形態の場合と異なっているが、適宜、読み替えることで、ほとんど同じ部分については、容易に想到できる。なお、第1実施形態と同じ符号のものは、第1実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と同じであるので説明は省略する。
(培養容器)
まず、図4に本実施形態に係る培養容器300の構成を示す。懸濁液が培養容器300中に存在している。
【0082】
同図(a)によると、培養容器300は、入口303a、出口303b(以下、まとめて入出口303と呼ぶことがある)を有する本体306を備えている。よって、培養容器300の内部空間(すなわち、本体の内部)は入出口303に通じている。入出口303を閉じる事によって前記本体の内部が外界から閉鎖されている。すなわち、この閉鎖性により、本体306内部が、生物学的に、または化学的に、外界から遮断されており、細胞培養に影響を及ぼすような熱や湿気、微生物、化学物質、気体などが外界から本体内部に対して行き来をしない様になっている。なお、本体306はガラスやポリスチレン等のプラスチック、高分子材料から構成されていてもよく、培養容器300は本体306と搬送のための把持部等を備えていてもよい。
【0083】
本体306の内部には、入出口303に通じる1つの空間である連通部302が存在しており、本体306は、第1枠体306aと、第1枠体306aに対向する第2枠体306bと、伸縮部306cとを有している。伸縮部306cは第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在して、第1枠体306aと第2枠体306bとを接合している。伸縮部306cは、少なくとも伸縮性を有する素材から構成されており、例えばゴム材やエチレン酢酸ビニル等の高分子物質から構成されている。なお、連通部302は第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在している。
【0084】
本実施形態および以下の実施形態では、連通部は内部空間の一部であり、該連通部と各培養室内部の空間とを併せたものが内部空間となる。本実施形態および以下の実施形態では、分断部に分断されるのは内部空間の一部である連通部であるが、この内部空間の一部である連通部が分断部に分断されることで、内部空間が分断部により分断されることを意味する。
【0085】
第1枠体306aには、後述する互いに閉鎖された複数の培養室を構成するための壁部304aが、第2枠体306bには壁部304aの各々と対応して咬合する咬合部304bが備えられ、連通部302を分断する分断部304は、この壁部304aと咬合部304bとから構成されている。なお、培養容器300は、本体306以外に搬送のための把持部等を備えていてもよい。
【0086】
同図(a)は培養室301が区分けされており(なお、閉鎖はされていない)、連通部302を有しているが、同図(b)では、伸縮部306cが伸縮して壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で分断部304が連通部302を分断し、本体306の内部を、少なくとも一方向に配列された互いに閉鎖された複数の空間である培養室301に区分けする。各培養室301は、第1枠体306a、第2枠体306b、壁部304a、咬合部304bで囲まれた構造となっており、両端の培養室301は、さらに伸縮部306cも含めて囲まれた構造となっている。
【0087】
同図(b)によると、伸縮部306cが収縮して第1枠体306aが第2枠体306bに近づくことで、壁部304aと咬合部304bが咬合し、第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在している連通部302が分断部304によって分断される。なお、本第2実施形態は、第1実施形態とは異なり、分断部304が当初から存在しており、本体306内部には複数の培養室301に区分けされている。本体306内部には連通部302と各培養室301が存在している。
【0088】
以上のように、培養容器300は、懸濁液を入出させるための入出口303を備え、入出口303を閉じる事によって入出口303に通じる内部空間(本実施形態では、連通部302と各培養室301内部の空間とを併せたもの)が外界から閉鎖され、かつ内部空間内に複数の培養室301が少なくとも一方向に配列される培養容器300であって、内部空間内に、複数の培養室301のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、懸濁液を受ける底面部として機能する分断部304を備える
この構成により、本体306内部の一つの空間に複数の培養室301を容易に形成させる、すなわち本体306内部の複数の培養室301を連通する連通部302を解消することで、互いに閉鎖された各培養室301を容易に得ることができる。また、試薬の投入や培地交換、培養した細胞の取り出しなどの必要な時に、複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に容易に戻すことができる。すなわち、分断部が内部空間を分断する事により、本体の内部に互いに閉鎖された複数の空間を形成することができ、また、分断部が内部空間の分断を解除する事により、本体の内部の互いに閉鎖された複数の空間の閉鎖を解除され、複数の空間を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができる。なお、複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すのは、一度に全ての連通部302の分断を解除してもよいし、連通部302の一部の分断を解除してから、残りの連通部302の分断を解除するような形でもよい。
【0089】
このように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0090】
なお、同図(c)に、同図(b)の状態の培養容器300を、左方向に90度回転させた図を示す。同図(c)のように、面積の広い分断部304側を懸濁液を受ける底面部にすることで、培養面積を確保しつつ、各培養室を積層した状態で細胞の培養を行うことができる。
【0091】
同図(c)の状態の培養容器300は、分断部304によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された培養室301が鉛直方向に対して積層された状態である。この時、複数の培養室301は互いに閉鎖された状態を維持する。よって、培養容器300を鉛直方向に対して積層された状態から傾けた場合に、懸濁液が各培養室301からこぼれるということがおこらない。なお、鉛直方向に積層された状態とは、同図のような複数の培養室301の間の連通分断部304が鉛直方向に対して略垂直な面となっている場合に限られない。すなわち、複数の培養室301が鉛直方向に対して積層されたと見做しうる状態であれば、鉛直方向に対して積層された状態となっていると見做してよい。
【0092】
なお、同図(c)のように、懸濁液を受ける底面部に対して懸濁液を流出させずに保持するための側壁が要るところ、この側壁の役割を本体306の内壁が果たしている。よって、従来技術では必要であったリブのような構成を、別途設ける必要はない。
【0093】
なお、同図では培養室301が6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
(培養装置)
本第2実施形態における培養装置は、第1実施形態で説明した培養装置とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。
【0094】
図5に本実施形態に係る培養容器300を使用した培養装置400の構成を示す。
【0095】
培養装置400は、分断部304によって連通部302を分断するために、図4を使用して説明した伸縮部306cを収縮させて壁部304aと咬合部304bとを咬合させる(および、伸縮部306cを伸長させて壁部304aを咬合部304bから引き離す)ための分断駆動部B200を備えている。
【0096】
培養装置400は、前記培養容器を回転させる回転駆動部R100を備えている。培養容器を回転させる目的は、次の通りである。最初は、培養容器300を連通部302を下にした状態で横にし、壁部304aを咬合部304bから離した状態で懸濁液を連通部302に注入し、その後、壁部304aと咬合部304bを咬合させて培養室301を形成させることで、懸濁液を各培養室に略等分化し、その後90度回転させて培養容器300の長手方向を垂直方向にして立てることで、培養室301毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い壁部304a(分断部304)を底面にして細胞の培養を行うことができるからである(この場合分断部304が底となる)。
【0097】
また、培養装置400は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0098】
以上のことから、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室301毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部304を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。さらに、以上の構成により、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
本第2実施形態における培養動作のフローは、第1実施形態で説明した培養動作のフローとほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。すなわち、本実施形態ではステップS102をステップS202に、ステップS106をステップS206に、ステップS108をステップS208に、ステップS113をステップS213に置き換え、その他のステップは第1実施形態の内容を培養容器300、培養装置400に合わせて適宜解釈すればよい。
【0099】
図6に本実施形態に係る培養装置400を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0100】
ステップS202では、複数の培養室101を閉鎖状態にする。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で分断部304が連通部302を分断し、本体306の内部を互いに閉鎖された複数の空間である培養室301に区分けする。
【0101】
ステップS206では、複数の培養室101間の閉鎖状態が解除される。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aを咬合部304bから離す事で連通部302の分断が解除され、互いに閉鎖された複数の空間である培養室301を統合し、本体306の内部を一つの空間に戻す。
【0102】
ステップS208では、細胞の培養を再開すべく、ステップS202と同様に、複数の培養室101を閉鎖状態にする。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で分断部304が連通部302を分断し、本体306の内部を互いに閉鎖された複数の空間である培養室301に区分けする。
【0103】
ステップS213では、ステップS206と同様に、複数の培養室101間の閉鎖状態が解除される。すなわち、分断駆動部B101を使用して壁部304aを咬合部304bから離す事で連通部302の分断が解除され、互いに閉鎖された複数の空間である培養室301を統合し、本体306の内部を一つの空間に戻す。
【0104】
以上のように、本実施形態の培養容器300を使用すると、壁部304aと壁部304aに対応する咬合部304bが咬合する事で第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在する連通部302を分断し、本体306の内部を互いに閉鎖された複数の空間に区分けする、すなわち本体306内部に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させることができ、また互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から連通部302が存在する状態に容易に戻すことができる。つまり、細胞を培養させるために互いに閉鎖された複数の培養室が必要な場合には容易に形成させることができる一方、試薬の投入や培地交換を行うため、または培養した細胞を取り出したりするため培養室の区分けを解消したい、すなわち複数の培養室301を形成させた状態から連通部302が存在する状態に戻したい時は容易に戻すことができる。
【0105】
本体306内部に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させる、すなわち本体306内部の複数の培養室301を連通する連通部302を分断することで、互いに閉鎖された各培養室301を得ることができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から連通部302が存在する状態に戻すことができる。
【0106】
以上により、本体306内部の一つの空間に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させることができるので、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる。また、互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、懸濁液や試薬の投入を各培養室毎に分注することなく一度で行え、その後に互いに閉鎖された複数の培養室301を容易に形成させることで、各培養室毎の分注を容易にすることができる。この際、上で述べた分断部304による連通部302の分断により、懸濁液や試薬を略平等に分注することができる。さらに、互いに閉鎖された複数の培養室301を形成させた状態から一つの空間の状態に戻すことができるので、培地や細胞の回収時に各培養室毎に回収する必要がなく、一度で容易に回収を行うことができる。
【0107】
[第3実施形態]
本第3実施形態では、第2実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。本実施形態では、図における符号などが第2実施形態の場合と異なっているが、適宜、読み替えることで、ほとんど同じ部分については、容易に想到できる。なお、第2実施形態と同じ符号のものは、第2実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と同じであるので説明は省略する。
(培養容器)
図7に本実施形態に係る培養容器500の構成を示す。
【0108】
本実施形態では、各咬合部304bに連絡孔(図示無し、符号無し)が備えられており、分断部304である壁部304aと咬合部304bが咬合して第1枠体306aと第2枠体306bの間に存在している連通部302が分断部304によって分断されても、連絡孔を挟んで隣り合っている培養室501同士は連絡孔によって通じ合う(以下、連絡があるという)。各連絡孔には連絡孔封止バルブ504が各々設けられており、連絡孔封止バルブ504によって連絡孔を閉じることで、隣り合う培養室501間の連絡は分断される。すなわち、連絡孔封止バルブ504によって連絡孔における連絡を分断することで、連絡孔を挟んで隣り合っている培養室501同士は閉鎖状態になる。逆に連絡孔を開くことで、隣り合う培養室501間の閉鎖状態は解除される。
【0109】
同図(a)は、全ての連絡孔封止バルブ504が連絡孔を閉じている状態である。この状態で壁部304aと咬合部304bを咬合させた場合、各培養室501は少なくとも一方向に配列され、互いに閉鎖された状態となる。よって、壁部304aと咬合部304bを咬合させて同図(b)のように立てた場合、各培養室501に懸濁液が存在する。
【0110】
同図(c)は、両端の連絡孔が開かれておりかつ一つおきに連絡孔が開かれ、残りの連絡孔は閉じられている状態である。この状態で壁部304aと咬合部304bを咬合させた場合、隣り合う培養室401同士のみ互いに連絡がある。隣り合う培養室501以外は閉鎖状態である。よって同図(d)のように立てた場合、連絡孔を通じて懸濁液が上の培養室から下の培養室へ流れ落ちるので、一つおきの培養室501に懸濁液が存在することになる(この場合、懸濁液の存在する培養室は全体の数の1/2となる)。なお、後述のように、実際の培養動作では、培養の初期では所定の連絡孔を開けておき(後述のステップS302など参照)、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504を動かして所定の連絡孔を閉じて行き、培養面積を広げていく(後述のステップS308など参照)。同図で説明すると、培養の初期では図(d)の状態にあり(この図では、上から1,3,5番目の連絡孔封止バルブ504が、上記所定の連絡孔に対応している)、培養が進むにつれて、最終的には図(b)の状態へ移行してゆく。
【0111】
以上の構成により、培養容器を垂直に設置した状態で連絡孔を開けることで、細胞培養に使用する培養室を減らすことができる。すなわち、連絡孔を開けることで細胞培養に使用する培養面積を減らすことができ、連絡孔封止バルブ504により連絡孔を開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる。
【0112】
細胞培養においては、培養面積は懸濁液中に含まれる細胞の数に依存する場合があり、細胞面積が広すぎると細胞培養に悪影響を及ぼす場合がある。よって、最初は所定の連絡孔封止バルブ504は連絡孔を開けておき、培養面積を狭くしておき、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504で連絡孔を閉じて培養面積を広げていく必要がある。なお、開けておくべき所定の連絡孔封止バルブ504は、必要な培養面積から定めることができる。本実施形態の培養容器を使用することで、このような培養の仕方にも対応することができる。
【0113】
以上のように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0114】
なお、同図(a)〜(d)では培養室501が6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
(培養装置)
本第3実施形態における培養装置は、第2実施形態で説明した培養装置とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。。
【0115】
図8に本実施形態に係る培養容器500を使用した培養装置600の構成を示す。なお、図8では、第2実施形態で説明した回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101の図示が、説明の便宜の上から省略されているが、本実施形態の培養装置でも第2実施形態と同じ機能を有して存在している(以下、図5の回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101を参照のこと)
培養装置600は、培養容器500の各連絡孔を開閉させるために連絡孔封止バルブ504を動作させるバルブ駆動部B500を有している。
【0116】
また、培養装置600は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0117】
以上のように、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室501毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部304を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。さらに、以上の構成により、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
本実施形態における培養動作のフローは、第2実施形態で説明した培養動作のフローとほとんど同じであるので、異なる部分を主に説明する。すなわち、本実施形態ではステップS202をステップS302に、ステップS208をステップS308に置き換え、その他のステップは第2実施形態の内容を培養容器500、培養装置600に合わせて適宜解釈すればよい。
【0118】
図9に本実施形態に係る培養装置400を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0119】
ステップS302では、ステップS202の動作に加え、バルブ駆動部B500が連絡孔封止バルブ504を動かして所定の連絡孔を開けておく。例えば、図7(d)のように、上から1,3,5番目の連絡孔封止バルブ504に対応する連絡孔を、所定の連絡孔としてよい。
【0120】
ステップS308では、ステップS208の動作に加え、バルブ駆動部B500が連絡孔封止バルブ504を動かして、培養が進むにつれて培養面積を広げていく。具体的には、培養容器が水平方向状態の時に連絡孔を閉じ、回転駆動部R100が培養容器を回転させて培養容器を水平方向状態から垂直方向状態にすることで各培養室に懸濁液が満たされ、培養面積が広がる。
【0121】
ステップS105〜ステップS109の工程を繰り返す中で、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504を動かして連絡孔を閉じていく。時間軸方向に対する連絡孔の閉じるタイミングは、細胞数の計数結果などの結果から定められ、細胞数が所定の上限値に達すると考えられるタイミングで連絡孔を閉じる。
【0122】
以上のように、本実施形態の培養容器500、培養装置600は、本実施形態の培養容器300、培養装置400が有する、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる効果に加え、連絡孔封止バルブ504により連絡孔を開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる効果を有する。
【0123】
[第4実施形態]
本第4実施形態における培養装置は、第3実施形態で説明した培養容器を2つ併せた形態となっている。よって、本実施形態では、培養容器、培養装置、培養動作において第3実施形態での説明と異なる部分、追加を要する部分について主に説明する。本実施形態では、図における符号などが第3実施形態の場合と異なっているが、適宜、読み替えることで、ほとんど同じ部分については、容易に想到できる。なお、第3実施形態と同じ符号のものは、第3実施形態で説明した培養容器、培養装置、培養動作と同じであるので説明は省略する。
(培養容器)
図10に本実施形態に係る培養容器700の構成を示す。
【0124】
本実施形態における培養装置700は、第3実施形態で説明した培養容器500を2つ(培養容器5001、5002と称する)について、培養容器5001、5002各々の第1枠体306a(培養容器5001の方を第1枠体306a1、培養容器5002の方を第1枠体306a2と称する)側を対応させて併せた形態となっている。
【0125】
本実施形態では、第3実施形態で説明した培養容器500でいう第2枠体306b、2つの伸縮部306c、壁部304a、咬合部304b、連通部302、入出口303、連絡孔封止バルブ504は以下のように表されている。
【0126】
培養容器5001では、第2枠体306b1、2つの伸縮部306c1、壁部304a1、咬合部304b1、連通部3021、入出口3031(入口3031a、出口3031b)、連絡孔封止バルブ5041と表されている。
【0127】
培養容器5002では、第2枠体306b2、2つの伸縮部306c2、壁部304a2、咬合部304b2、連通部3022、入出口3032(入口3032a、出口3032b)、連絡孔封止バルブ5042と表されている。
【0128】
2つの第1枠体306a1、第1枠体306a2の間にはスライド弁706eが存在し、2つの容器の培養室701(培養容器5001の方を培養室7011、培養容器5002の方を培養室7012と称する)間には各々孔706dが設けられており、スライド弁706eをスライドさせることで、各孔706dを開閉させることができる。孔706dを開くことで隣り合う培養室7011、培養室7012間を懸濁液等が行き交う事ができ(第3実施形態でいう「連絡がある」と同じ意味である)、孔706dを閉じる事で培養室7011、培養室7012間の行き来が閉じられ、孔706dを閉じる事で2つの容器の培養室7011、培養室7012の間は閉鎖された状態となる。すなわち、孔706dを開くことで2つの容器の培養室7011、培養室7012間の閉鎖状態が解除される。
【0129】
以上のように、培養装置700は、培養容器5001、培養容器5002、スライド弁706eで構成された一体型の培養容器となっている。
【0130】
同図(a)は、全ての連絡孔封止バルブ5041、5042が連絡孔を閉じ、スライド弁706eが孔706dを閉じている状態で培養装置700が横方向になっている図である。この状態で壁部304a1と咬合部304b1、壁部304a2と咬合部304b2を咬合させた場合、各培養室7011は全て、一方向に配列された、互いに閉鎖した状態となる。各培養室7012も全て、一方向に配列された、互いに閉鎖した状態となる。なお、同図(a)において、懸濁液は培養容器5002側のみに存在している。壁部304a1と咬合部304b1、壁部304a2と咬合部304b2を咬合させて同図(b)のように立てた場合、各培養室7012のみに懸濁液が存在することになる。この後、スライド弁706eをスライドさせて孔706dを開いた場合、隣り合う各培養室7011、7012間の閉鎖状態は解除されるので、各培養室7012のみに懸濁液が存在した状態から、各培養室7011、7012全てに懸濁液が存在する状態となる。
【0131】
以上の構成により、培養容器を垂直に設置した状態でスライド弁706eをスライドさせて孔706dを閉じることで、細胞培養に使用する培養室を減らすことができる。すなわち、孔を閉じることで細胞培養に使用する培養面積を減らすことができ、スライド弁706eにより孔706dを開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる。
【0132】
また、スライド弁706eにより孔706dを閉じておいて、培養室7011に試薬等を注液しておき、培養室7012に懸濁液を蓄えておいた状態で、スライド弁706eにより孔706dを開くことで、培養室7011中の試薬と培養室7012中の懸濁液を混合させることができ、その後、培養室7011と培養室7012の両方を使用して、培養面積を広げて培養を継続することができる。
【0133】
以上のことから、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器を提供することができる。
【0134】
なお、同図(a)〜(b)では培養室7011、7012が各々6つ備えられているが、培養室の数はこれに限られない。
(培養装置)
本第4実施形態における培養装置は、第3実施形態で説明した培養装置とほとんど同じであるので、異なる部分について主に説明する。
【0135】
図11に本実施形態に係る培養容器700を使用した培養装置800の構成を示す。なお、図11では、第2実施形態で説明した回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101の図示が、説明の便宜の上から省略されているが、本実施形態の培養装置でも第2実施形態と同じ機能を有して存在している(以下、図5の回転駆動部R100、振動駆動部V100、ハンマーV101を参照のこと)。
【0136】
培養装置800は、培養容器700への懸濁液等の注液の際に培養容器700の入口3031a、3032aに接続される配管P800と、当該注液の際に入出口3031a側の配管P800のバルブを開閉する開閉部SW7001と、当該注液の際に入出口3032a側の配管P800のバルブを開閉する開閉部SW7002を備えている。また、培養容器700からの廃液の際に培養容器700の入出口3031b、3032bに接続される配管P801と、当該廃液の際に入出口3031b側の配管P801のバルブを開閉する開閉部SW7011と、当該廃液の際に入出口3032b側の配管P801のバルブを開閉する開閉部SW7012を備えている。なお本実施形態では、同図に示すように、配管P800のバルブと配管P801のバルブは、各々2つ存在している。
【0137】
また、培養装置800は、分断部304a1、304a2によって連通部3021、3022を分断するために、伸縮部306c1、306c2を収縮させて壁部304a1と咬合部304b1、壁部304a2と咬合部304b2とを咬合させる(および、伸縮部306c1、306c2を伸長させて壁部304a1を咬合部304b1から、壁部304a2を咬合部304b2から引き離す)ための分断駆動部B271、B272を備えている。
【0138】
また、培養装置800は、培養容器700の各連絡孔を開閉させるために連絡孔封止バルブ5041を動作させるバルブ駆動部B571、連絡孔封止バルブ5042を動作させるバルブ駆動部B572を有し、培養容器700の各孔706dを開閉させるためにスライド弁706eをスライド動作させる弁駆動部B573を有している。
【0139】
また、培養装置800は、細胞培養に適した温度を維持するための温度維持装置も備えている。
【0140】
以上のことから、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養装置を提供することができる。また、培養室701毎に細胞が略均一に分注され、かつ培地も略等分化された状態で、面積の広い分断部304を底面にして細胞の培養を行うことができる培養装置を提供することができる。加えて、各培養室の廃液の処理や、剥がした培養細胞の回収をまとめて行う事ができ、ユーザがこれらの対応を各培養室の個々に対して行わねばならないと言った煩わしさなどから解放される培養装置を提供することができる。さらに、以上の構成により、全自動または半自動で細胞培養を行う事ができる細胞培養装置を提供できる。
(培養動作)
本実施形態における培養動作のフローは、第3実施形態で説明した培養動作のフローとほとんど同じであるので、異なる部分を主に説明する。すなわち、本実施形態ではステップS302をステップS402に、ステップS308をステップS408に置き換え、その他のステップは第3実施形態の内容を培養容器700、培養装置800に合わせて適宜解釈すればよい。
【0141】
図12に本実施形態に係る培養装置800を用いた培養動作のフロー図を示す。
【0142】
ステップS402では、ステップS302の動作に加え、バルブ駆動部B571、B572が連絡孔封止バルブ5041、5042を動かして所定の連絡孔を開けておく。
【0143】
ステップS408では、ステップS308の動作に加え、バルブ駆動部B571、B572が連絡孔封止バルブ5041、5042を動かして、培養が進むにつれて培養面積を広げていく。または、弁駆動部B573がスライド弁706eをスライドさせて、培養が進むにつれてたとえば培養室7011にある試薬と培養室7012にある懸濁液を混合させて、かつ、培養面積を広げていく。具体的には、培養容器が水平方向状態の時に連絡孔を閉じ、回転駆動部R100が培養容器を回転させて培養容器を水平方向状態から垂直方向状態にすることで各培養室に懸濁液が満たされ、培養面積が広がる。また、培養容器が垂直方向状態の時に孔706dを開くことで、たとえば培養室7011にある試薬と培養室7012にある懸濁液を混合され、かつ培養面積が広がる。
【0144】
ステップS105〜ステップS109の工程を繰り返す中で、培養が進むにつれて、連絡孔封止バルブ504を動かして連絡孔を閉じていく。また、スライド弁706eをスライドさせて孔706dを開いてゆく。時間軸方向に対する連絡孔の閉じ方、孔706dの開き方は、実験等の結果から定められる。
【0145】
以上のように、本実施形態の培養容器700、培養装置800は、本実施形態の培養容器500、培養装置600が有する、ユーザが能率的に細胞の培養作業を行うことができる培養容器および培養装置を提供することができる効果に加え、連絡孔封止バルブ504により連絡孔を開閉することで細胞培養の際に使用する培養面積の増減を調整できる効果を有する。
【0146】
また、試薬の混合を培養容器内のみで行えるため容器の閉鎖性が高まり、培養作業においてコンタミネーションのリスクが低減できる。
【0147】
なお、本実施形態では、培養容器を2つ併せた形態(培養容器5001、培養容器5002)としたが、培養容器を3つ併せた形態、あるいはそれ以上の培養容器を併せた形態としてもよい。
[その他の実施形態]
本実施の形態における培養装置200、400、600、800の制御は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどで実現できる。また、ソフトウェア的には、RAMにロードされた細胞培養機能のあるプログラムなどによって実現される。例えば、図2、5、8、11中の制御装置PC100には、コンピュータなどである機能構成が示されておりこの構成により実現される。ただし、これらの機能ブロックが、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、あるいは、それらの組合せ等、いろいろな形態で実現できることは言うまでもない。
【0148】
つまり、培養装置200、400、600、800において使用される汎用コンピュータを制御装置PC100として動作させる細胞培養プログラムは、図3、6、9、12で示されている細胞培養動作の流れ図の中で適宜使用される。
【0149】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【符号の説明】
【0150】
100、200、300、400 培養容器
101、201,301、401 培養室
102,202、302、402 連通部(内部空間)
103、203、303、403 入出口
104、204、304、404 分断部、底面部
106、206、306、406 本体
504 連絡孔封止バルブ
B101、B200、B500、B571、B572 分断駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入出させるための入出口を備え、前記入出口を閉じる事によって前記入出口に通じる内部空間が外界から閉鎖され、かつ前記内部空間内に複数の培養室が少なくとも一方向に配列される培養容器であって、
前記内部空間内に、前記複数の培養室のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、前記液体を受ける底面部として機能する分断部を備える
培養容器。
【請求項2】
培養容器は、少なくとも伸縮性を有する素材から成り、
前記分断部は前記素材が伸縮することで培養容器の内面の一部に形成され、
前記内面の一部が接触し合う事で前記分断部が前記内部空間を分断して、互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、
前記内面の一部の接触が解除される事で前記内部空間の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除される
請求項1に記載の培養容器。
【請求項3】
第1枠体と、前記第1枠体に対向する第2枠体と、少なくとも伸縮性を有する素材から成る伸縮部とから構成され、
前記伸縮部は、前記第1枠体と前記第2枠体の間に存在して、前記第1枠体と前記第2枠体とを接合させ、
前記第1枠体には、互いに閉鎖された複数の培養室を構成するための壁部が備えられ、
前記第2枠体には前記壁部の各々と対応して咬合する咬合部が備えられ、
前記内部空間の一部である連通部を分断する分断部は、前記壁部と前記咬合部とから構成され、
前記伸縮部が伸縮して前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部が咬合する事で前記連通部を分断して、前記互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、
前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部との咬合が解除される事で前記連通部の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除される
請求項1に記載の培養容器。
【請求項4】
前記咬合部は開閉可能な連絡孔を有し、
前記連通部が分断されて、前記互いに閉鎖された複数の培養室が形成された場合に、前記連絡孔を開くことで、隣り合う前記複数の培養室においては閉鎖された状態が解除され、前記連絡孔を閉じることで、前記複数の培養室において互いに閉鎖された状態となる
請求項3に記載の培養容器。
【請求項5】
前記分断部によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された前記複数の培養室が、鉛直方向に対して積層された状態のとき、
前記複数の培養室は互いに閉鎖された状態を維持する
請求項1から4の何れかに記載の培養容器。
【請求項6】
温度維持装置と、
請求項1から5に記載の培養容器を備え、
前記培養容器の前記入出口に接続される配管と、前記配管を通じて前記培養容器の内部への液体の注液を行う注液部と、前記配管を通じて前記培養容器の内部からの廃液を行う廃液部と、前記入出口を開閉する開閉部とを備え、
前記分断部に前記内部空間を分断させるための分断駆動部を備える
培養装置。
【請求項1】
液体を入出させるための入出口を備え、前記入出口を閉じる事によって前記入出口に通じる内部空間が外界から閉鎖され、かつ前記内部空間内に複数の培養室が少なくとも一方向に配列される培養容器であって、
前記内部空間内に、前記複数の培養室のうちの隣り合う培養室の間の閉鎖、及び閉鎖の解除を行うと共に、前記液体を受ける底面部として機能する分断部を備える
培養容器。
【請求項2】
培養容器は、少なくとも伸縮性を有する素材から成り、
前記分断部は前記素材が伸縮することで培養容器の内面の一部に形成され、
前記内面の一部が接触し合う事で前記分断部が前記内部空間を分断して、互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、
前記内面の一部の接触が解除される事で前記内部空間の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除される
請求項1に記載の培養容器。
【請求項3】
第1枠体と、前記第1枠体に対向する第2枠体と、少なくとも伸縮性を有する素材から成る伸縮部とから構成され、
前記伸縮部は、前記第1枠体と前記第2枠体の間に存在して、前記第1枠体と前記第2枠体とを接合させ、
前記第1枠体には、互いに閉鎖された複数の培養室を構成するための壁部が備えられ、
前記第2枠体には前記壁部の各々と対応して咬合する咬合部が備えられ、
前記内部空間の一部である連通部を分断する分断部は、前記壁部と前記咬合部とから構成され、
前記伸縮部が伸縮して前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部が咬合する事で前記連通部を分断して、前記互いに閉鎖された複数の培養室を形成し、
前記壁部と前記壁部に対応する前記咬合部との咬合が解除される事で前記連通部の分断を解除して、前記互いに閉鎖された複数の培養室の閉鎖が解除される
請求項1に記載の培養容器。
【請求項4】
前記咬合部は開閉可能な連絡孔を有し、
前記連通部が分断されて、前記互いに閉鎖された複数の培養室が形成された場合に、前記連絡孔を開くことで、隣り合う前記複数の培養室においては閉鎖された状態が解除され、前記連絡孔を閉じることで、前記複数の培養室において互いに閉鎖された状態となる
請求項3に記載の培養容器。
【請求項5】
前記分断部によって分断されることにより少なくとも一方向に配列された前記複数の培養室が、鉛直方向に対して積層された状態のとき、
前記複数の培養室は互いに閉鎖された状態を維持する
請求項1から4の何れかに記載の培養容器。
【請求項6】
温度維持装置と、
請求項1から5に記載の培養容器を備え、
前記培養容器の前記入出口に接続される配管と、前記配管を通じて前記培養容器の内部への液体の注液を行う注液部と、前記配管を通じて前記培養容器の内部からの廃液を行う廃液部と、前記入出口を開閉する開閉部とを備え、
前記分断部に前記内部空間を分断させるための分断駆動部を備える
培養装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−233482(P2010−233482A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83855(P2009−83855)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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