培養容器および生体試料観察システム
【課題】 微弱な光を観察できるとともに、複数種類の生体試料を観察する際にかかる手間およびコストを削減することができる培養容器および生体試料観察システムを提供する。
【解決手段】 生体試料CEを内部に密封状態に収納して培養する培養容器130であって、生体試料CEが播種される被播種部材140と、該被播種部材140を着脱可能に取り付ける培養容器本体131、150とを備える細胞培養容器130を提供する。
【解決手段】 生体試料CEを内部に密封状態に収納して培養する培養容器130であって、生体試料CEが播種される被播種部材140と、該被播種部材140を着脱可能に取り付ける培養容器本体131、150とを備える細胞培養容器130を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を培養すると同時にその細胞を観察するのに用いる培養容器および生体試料観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子解析技術の進歩に伴って、人を含む多くの生物における遺伝子配列が明らかになると共に解析されたタンパク質等の遺伝子産物と疾病との因果関係も少しずつ解明され始めている。また、今後さらに、各種タンパク質や遺伝子等を網羅的且つ統計的に解析するため、生体試料、特に細胞を用いた様々な検査方法や装置が考えられ始めている。
【0003】
通常、細胞は、プラスチック製又はガラス製のディッシュやフラスコ等に播種され、インキュベータ内で培養されている。このインキュンベータは、内部が例えば、二酸化炭素濃度5%、温度37℃、湿度100%に設定され、細胞の育成に適した環境に保たれている。
更に、インキュベータは、細胞に養分を与えると共に培養に適したpHを保つために2〜3日毎に培養液の交換がなされている。
【0004】
このような培養中の細胞を観察する方法は、いくつかの方法が知られているが、その一つとして、インキュベータから上述したディッシュやフラスコ等を取り出し、位相差顕微鏡等の倒立型顕微鏡を用いて観察を行う方法が知られている。
上記の方法では、可能な限り速やかに細胞の観察を行い、観察終了後、細胞をインキュベータ内に戻す必要がある。これは、細胞が通常環境(培養に適した環境とは異なる環境)下に長く置かれることにより、細胞の活性が損なわれるのを防止するためである。
即ち、細胞の活性が不安定であると、正確な評価を行うことが困難になるためである。また、細胞をインキュベータから取り出す際は、コンタミネーション等が起こらないように十分注意して行われている。
また、別の細胞観察方法として、各種の細胞の培養条件を設定可能な顕微鏡観察用透明恒温培養容器を使用する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−28576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1においては、温度調節器により所定温度に制御可能な一対の透明発熱プレートと、二酸化炭素濃度を調整するための二酸化炭素供給口及び排出口を有する密閉容器と、密閉された容器内に湿度を保つための蒸発皿と、を有している顕微鏡観察用透明恒温培養容器が開示されている。
この顕微鏡観察用透明恒温培養容器を用いることで、容器内部の温度、二酸化炭素濃度及び湿度の制御が可能となり、細胞培養しながら観察を行うことが可能となっていた。つまり、例えば、透明発熱プレートの下方から対物レンズで観察することにより、細胞の培養状態の経時変化を連続的に、かつ簡単に観察・記録することが可能であった。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の顕微鏡観察用透明恒温培養容器では、密閉容器に直接細胞を播種していたため、同じ透明恒温培養容器で他の細胞を観察する時には、前回の観察した細胞を取り除く必要があり、細胞の観察を行うのに手間がかかるという問題があった。
または、透明恒温培養容器を使い捨てにしていたが、スライドガラスなどと異なり、価格の高い透明恒温培養容器を使い捨てにするため、細胞観察のコストが高くなるという問題があった。
これは、例え播種された細胞が取り除かれたとしても、一度、細胞が播種された面には他の細胞は貼り付かないため起きる問題であった。
【0007】
上述の問題を回避するため、培養容器内にスライドガラスやマイクロプレート等を配置し、スライドガラス等の上に細胞を播種する方法が公知となっている。
しかしながら、この方法においては、細胞から発せられる微弱な蛍光などを検出することが困難であるという問題があった。
つまり、細胞を観察する対物レンズと細胞との距離が、細胞容器とスライドガラス等との厚さにより規制されてしまい、微弱な光を検出するのに好適な高NA対物レンズ等で観察できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、微弱な光を観察できるとともに、複数種類の生体試料を観察する際にかかる手間およびコストを削減することができる培養容器および生体試料観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器であって、生体試料が播種される被播種部材と、該被播種部材を着脱可能に取り付ける培養容器本体とを備える細胞培養容器を提供する。
【0010】
本発明によれば、培養容器のうち、生体試料が播種される被播種部材のみを交換することで、異なる種類の生体試料を観察することができる。そのため、培養容器ごと交換する場合と比較して、観察に要するコストを低減することができる。また、播種された細胞を取り除く場合と比較して、観察に要する手間を省くことができる
また、被播種部材のみを介して生体試料を観察できるため、例えば培養容器とスライドガラスとを介して観察する場合と比較して、より微弱な光を観察することができる。つまり、生体試料により接近して観察できるため、より焦点距離の短い高NA対物レンズを観察手段として用いて観察することができ、より微弱な光を観察することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記被播種部材が、接着部材を用いて前記培養容器本体に貼り付けられていることが望ましい。
本発明によれば、被播種部材を容易に培養容器本体に貼り付けることができ、培養容器を容易に密封状態にすることができる。
なお、接着部材としては、生体試料に対して毒性のない材料から形成されているものが好ましく、さらには、貼り付けた被播種部材を再び取り外すことができるものが好ましい。
【0012】
さらに、上記発明においては、前記培養容器本体内に、前記生体試料を浸す培養液を流入および流出させる流路が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、生体試料に培養溶液を供給することできるため、生体試料を培養容器内で長期間培養することができ、生体試料を長期間観察することができる。
【0013】
上記発明においては、前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材の内側に配置される中枠部材と、前記外枠部材に固定される蓋部材とを備え、前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、前記中枠部材に、前記被播種部材および前記蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および蓋部材と接触するシール部材が設けられ、前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記蓋部材とを配置し、前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材および前記蓋部材により密閉容器を構成することが望ましい。
【0014】
本発明によれば、蓋部材を外枠部材に取り付け・取り外すことにより、被播種部材のみを交換することができる。つまり、被播種部材は中枠部材を介して、外枠部材の支持部と蓋部材とにより挟まれ、保持されているため、蓋部材を取り付け・取り外すことにより、容易に交換することができる。
また、被播種部材と中枠部材との間、および中枠部材と蓋部材との間は、シール部材により密閉されているため、被播種部材と中枠部材と蓋部材とで密閉容器を形成することができる。そのため、密閉容器内に生体試料を培養する培養液を保持することができ、生体試料を長期間培養し、長期間にわたる観察を行うことができる。
なお、蓋部材の外枠部材への取り付けは、螺合部材(例えばネジ)や係止部材(例えばフック)など、取り付け・取り外しが容易な部材を用いて行われることが望ましい。
【0015】
上記発明においては、前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材に取り付けられる内蓋部材と、該内蓋部材を介して前記外枠部材に取り付けられる蓋部材と、前記外枠部材の内側に配置される中枠部材とを備え、前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、前記中枠部材に、前記被播種部材および前記内蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および前記内蓋部材と接触するシール部材が設けられ、前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記内蓋部材とを配置し、前記内蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材を保持し、前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材、前記内蓋部材および前記蓋部材により密閉容器を構成することが望ましい。
【0016】
本発明によれば、内蓋部材を外枠部材に取り付け・取り外すことにより、被播種部材のみを交換することができる。つまり、被播種部材は中枠部材を介して、外枠部材の支持部と内蓋部材とにより挟まれ、保持されているため、内蓋部材を取り付け・取り外すことにより、容易に交換することができる。
また、被播種部材と中枠部材との間、および中枠部材と内蓋部材との間は、シール部材により密閉されているため、被播種部材と中枠部材と内蓋部材とで開口部において開放された空間を形成することができる。そのため、空間内に生体試料を培養する培養液を保持するとともに開口部を介して換気を行うことができ、生体試料を長期間培養することができる。
【0017】
さらに、蓋部材を取り付けることにより、被播種部材と中枠部材と内蓋部材と蓋部材とで密閉容器を形成することができ、観察時などにおける、生体試料のへのコンタミネーションを防止することができる。
なお、蓋部材および内蓋部材の外枠部材への取り付けは、螺合部材(例えばネジ)や係止部材(例えばフック)など、取り付け・取り外しが容易な部材を用いて行われることが望ましい。
【0018】
上記発明においては、前記中枠部材には、前記密閉容器に前記培養液を流入および流出させる流路が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、密閉容器内の生体試料に培養溶液を供給することできるため、生体試料を密閉容器内で長期間培養することができ、生体試料を長期間観察することができる。
【0019】
上記発明においては、前記流路が前記中枠部材中で複数に分岐され、前記密閉容器に向けて複数の開口を有するように形成されていることが望ましい。
本発明によれば、密閉容器内に培養溶液を均一に流入させることができるため、培養溶液流れが澱む領域の発生を防止することができる。澱みの発生を防止することにより、生体試料への栄養等の供給不均一を防止することができ、生体試料を均一に培養することができる。
【0020】
上記発明においては、前記中枠部材における前記流路が形成されている流路形成部が、前記中枠部材に対して着脱自在に形成されていることが望ましい。
本発明によれば、流路形成部のみを取り替えることができるので、生体試料の観察に要する手間およびコストを低減することができる。
つまり、流路形成部内の流路の分岐には培養液を構成する成分が残留しやすい。流路形成部を取り替えることにより、この付着物の洗浄の手間を省いたり、容易に洗浄することが可能な構成としたりすることができる。また、流路形成部のみを取り替えることにより、中枠部材を取り替える場合と比較して、取替えに要するコストを低減することができる。
【0021】
上記発明においては、前記生体試料の播種が行われた前記被播種部材を用いて、前記培養容器の密閉容器が構成されることが望ましい。
本発明によれば、生体試料の播種に適した環境の下で、被播種部材への播種を行うことができるので、生体試料を被播種部材へより確実に接着させることができる。
【0022】
上記発明においては、前記培養容器の密閉容器の構成後に、前記被播種部材への前記生体試料の播種が行われることが望ましい。
本発明によれば、生体試料が播種された被播種部材を移動させる必要がないため、移動による生体試料へのダメージを防止することができる。
【0023】
上記発明においては、前記生体試料を含む前記培養液を、前記流路を介して前記培養容器内に供給し、前記被播種部材への前記生体試料の播種を行うことが望ましい。
本発明によれば、培養液とともに生体試料を培養容器内に供給するため、例えば培養容器が構成された状態でも、生体試料の播種を容易に行うことができる。
【0024】
上記発明においては、前記生体試料の播種を行った後、前記培養液をその液面が前記流路よりも下になるように供給し、前記生体試料を培養することが望ましい。
本発明によれば、供給された培養液が流路から流出することなく、生体試料の培養を容易に行うことができ、被播種部材に接着させることができる。
【0025】
上記発明においては、前記被播種部材は、前記生体試料を外部から観察するときに必要な光を透過させることが可能なスライドガラスを含んで構成されることが望ましい。
本発明によれば、生体試料を播種可能な一般的なスライドガラスをそのまま培養容器の一部として取り付けて観察できる。
【0026】
請求項13に係る発明は、被観察体となる生体試料の情報を取得する生体試料観察システムにおいて、前記生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器と、前記生体試料を観察して情報を取得する観察手段と、を有し、前記生体試料が播種される被播種部材が、前記培養容器の前記観察手段と対向する面に配置され、前記被播種部材が前記培養容器の一部を構成するとともに、前記培養容器に対して着脱自在に配置されている生体試料観察システムを提供する。
【0027】
本発明によれば、培養容器のうち、生体試料が播種される被播種部材のみを交換することで、異なる種類の生体試料を観察することができる。そのため、培養容器ごと交換する場合と比較して、観察に要するコストを低減することができる。また、播種された細胞を取り除く場合と比較して、観察に要する手間を省くことができる
また、観察手段が被播種部材のみを介して生体試料を観察するため、例えば培養容器とスライドガラスとを介して観察する場合と比較して、より微弱な光を観察することができる。つまり、観察手段と生体試料との距離がより短くなるため、より焦点距離の短い高NA対物レンズを観察手段として用いて観察することができ、より微弱な光を観察することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の生体試料観察システムによれば、生体試料が播種される被播種部材が培養容器に対して着脱自在に配置されているため、生体試料の交換が容易となり複数種類の生体試料を観察する際にかかる手間およびコストを削減することができるという効果を奏する。
また、被播種部材が培養容器における密閉容器の一部を構成するため、観察手段と生体細胞との間の距離を短くでき、微弱な光の観察に適した観察手段を用いることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態である生体試料観察システムについて図1から図13を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る生体試料観察システムの概略を示す斜視図である。図2は、同じく生体試料観察システムのシステム構成を示す概略図である。
【0030】
生体試料観察システム10は、図1および図2に示すように、検出ユニット20と培養ユニット70とから概略構成されている。これら検出ユニット20および培養ユニット70は、接近して配置されることが望ましく、より好ましくは両ユニット20、70が接して配置されることが望ましい。
【0031】
検出ユニット20は、図1および図2に示すように、生体試料を内部に収納する保温箱21と、細胞(生体試料)CEを測定する検出部40とから概略構成されている。
保温箱21には、保温箱21内を所定の温度に保温するヒータ21Hと、後述するインキュベータボックス100を保持するステージ22と、細胞CEに光を照射する透過光源23と、保温箱21内の温度を均一にするファン24と、保温箱21内を殺菌するUVランプ25と、後述する培養液循環配管77や培養ガス供給配管97などを保護するキャリア26と、インキュベータボックス100などを保温箱21から出し入れする際に用いる開閉扉27と、検出ユニット20の主電源をON・OFFする主電源スイッチ28が備えられている。
【0032】
ステージ22は、互いに直交方向に相対移動するX軸動作ステージ22Xと、Y軸動作ステージ22Yと、を有し、ステージ走査部29により走査制御されている。
ステージ走査部29は、X軸動作ステージ22XのX軸座標値を検出するX軸座標検出部30と、X軸動作ステージ22Xの動作(走査)を制御するX軸走査制御部31と、Y軸動作ステージ22YのY軸座標値を検出するY軸座標検出部32と、Y軸動作ステージ22Yの動作(走査)を制御するY軸走査制御部33と、から構成されている。
X軸座標検出部30およびY軸座標検出部32は、それぞれ検出したX軸動作ステージ22XのX座標と、Y軸動作ステージ22YのY座標と、をコンピュータPCに出力するように配置されている。X軸走査制御部31およびY軸走査制御部33は、それぞれコンピュータPCからの指示に基づきX軸動作ステージ22Xの走査と、Y軸動作ステージ22Yの走査とを制御するように配置されている。
【0033】
なお、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを駆動する機構としては、例えばモータおよびボールネジの組み合わせを挙げることができる。
コンピュータPCは、上述のように、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yの走査と、を制御するとともに、後述するように、細胞CEの検出系の制御、撮像した細胞CEの画像の解析なども行い、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yと検出系と解析系とを連動して制御している。
【0034】
透過光源23とインキュベータボックス100との間に、透過光源23から射出された光を細胞CEに集光するコンデンサレンズ34が配置されている。
なお、コンデンサレンズ34とインキュベータボックス100との間には、シャッタ35を設けなくても良いし、シャッタ35を設けても良い。
ファン24は保温箱21の壁面に配置されている。このファン24を動作させることにより、保温箱21内の空気を対流させ、保温箱21内の温度を均一かつ一定に保ちやすくすることができる。
【0035】
UVランプ25は、検出ユニット20の壁面に配置されたUVランプスイッチ36と接続され、UVランプ25とUVランプスイッチ36との間には、UVランプ25の動作を時間的に制御するタイマ37が配置されている。さらに、UVランプ25の点灯を表示する滅菌中表示ランプ(図示せず)が配置されている。
例えば、細胞CEの非測定時にUVランプスイッチ36が押されると、タイマ37のカウントが開始されるとともに、UVランプ25に電力が供給され、UV光(紫外線光)が保温箱21内に照射される。これと同時に滅菌中表示ランプも点灯する。そして、所定の時間(例えば30分)が経過して、タイマ37のカウントが終了すると、タイマ37はUVランプ25への電力供給を停止し、UV光の照射が終了される。また、滅菌中表示ランプも消灯される。
なお、UVランプ25は、主電源スイッチ28とは別個に制御されており、主電源がOFFされていても動作することができる。
なお、UVランプ25の点灯時間は、上述した30分でも良いし、保温箱21内の雑菌類を死滅させることができる時間であれば、30分未満でも良いし、30分よりも長くても良い。
【0036】
開閉扉27はアルマイト処理を施されたアルミなどの金属、または遮光性の高い半透明の樹脂により構成されている。開閉扉27の構造としては、中空の二重構造としたものや、さらには、内側が上記金属とされ外側が樹脂とされるものが考えられる。開閉扉27の外側に樹脂を用いることにより、開閉扉27から保温箱21内の熱が外部に逃げることを防止することができる。また、開閉扉27の内側をアルマイト処理された金属とすることにより、UVランプ25により開閉扉27の寿命が損なわれることを防止することができる。
なお、開閉扉27が金属または金属と樹脂との二重構造とされたときには、完全に遮光されるため、インキュベータボックス100を覗く位置に覗き窓を設けることが望ましい。覗き窓には透明樹脂またはガラスがはめ込まれ、外側には、開閉可能なカバーが配置されていることが望ましい。
【0037】
検出部40には、図1および図2に示すように、検出部40内を所定の温度に保温するヒータ40Hと、検出部40側から細胞CEを照射する落射光源41A、41Bと、落射光源41A、41Bからの光路を切り替える光路切替部42と、照射光の光量を調節する光量調整機構43と、照射光を細胞CEに向けて集光するレンズ系44と、照射光の波長および検出光の波長を制御するフィルタユニット45と、細胞CEに対して合焦動作を行うオートフォーカス(AF)ユニット46と、複数の倍率や性質の異なる対物レンズ(観察手段)48を備えたレボルバ47と、細胞CEからの検出光を検出する検出器49と、検出光の光量を測定する光量モニタ50と、検出部40内の温度を均一にするファン51と、検出部40内を冷却する冷却ファン52と、が備えられている。
【0038】
落射光源41A、41Bは、例えば水銀ランプなどからなり、検出部40の外部に配置されており、それぞれ電力を供給する電源53に接続されている。
また、通常は1つの落射光源、例えば落射光源41Aを用いるが、落射光源41Aの光量が所定の規定値以下に減少した場合には、落射光源41Bから照明光が照射され、落射光源41Aの電源はOFFされる。
【0039】
光路切替部42は、落射光源41Aまたは落射光源41Bどちらか一方の照明光を光量調整機構43に導くように形成されている。また、光路切替部42には、後述のコンピュータPCに接続され、コンピュータPCの指示に基づき光路切替部42を制御する光路制御部54が配置されている。
光路切替部42の照明光射出側にはシャッタ42Sが配置され、照明光の透過・遮断制御を行っている。
【0040】
シャッタ42Sの照明光射出側には光量調整機構43が配置され、シャッタ42Sを透過した照明光の光量を調整している。その機構としては、例えば公知の絞り機構などを用いても良いし、その他の光量を調節できる公知の機構、技術を用いても良い。
また、光量調整機構43には、後述のコンピュータPCに接続され、コンピュータPCの指示に基づき光量調整機構43を制御する光量制御部55が配置されている。
光量調整機構43の照明光射出側にはレンズ系44が配置されている。レンズ系44は、一対のレンズ44A、44Bと、レンズ44Aおよびレンズ44Bの間に配置された絞り44Cと、から構成されている。
【0041】
フィルタユニット45は、励起フィルタ56と、ダイクロイックミラー57と、吸収フィルタ58とから構成されている。励起フィルタ56は、照明光の中から細胞CEの蛍光発光に寄与する波長(励起光)を透過するフィルタであり、レンズ系44から射出された照明光が励起フィルタ56に入射するように配置されている。ダイクロイックミラー57は、励起光と蛍光とを分離する光学素子であり、励起フィルタ56を透過した励起光を、細胞CEに向けて反射するとともに、細胞CEからの蛍光を透過するように配置されている。吸収フィルタ58は、細胞CEからの蛍光とその他の不要な散乱光とを分離する光学素子であり、ダイクロイックミラー57を透過した光が入射するように配置されている。
フィルタユニット45には、後述するコンピュータPCの指示に基づき、フィルタユニット45から射出される励起光や検出光(蛍光)の波長を制御するフィルタ制御部46Cが配置されている。
なお、励起フィルタ56、ダイクロイックミラー57、吸収フィルタ58は1枚ずつ用いられてもよいし、複数枚用いられてもよい。
【0042】
AFユニット46はフィルタユニット45の励起光射出側に配置されていて、後述するコンピュータPCの指示に基づき、励起光を、対物レンズ48を介して細胞CEに集光させるように配置されている。
レボルバ47は、AFユニット46の励起光射出光側に配置されていて、倍率の異なる複数の対物レンズ48が配置されている。レボルバ47には、後述するコンピュータPCの指示に基づき、励起光が入射される対物レンズ48を選択・制御する対物レンズ制御部59が配置されている。
【0043】
なお、対物レンズ48は、検出部40からX軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yにそれぞれ設けられた孔を通して保温箱21内のインキュベータボックス内部が観察可能な構造になっている。
X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yには、ステージが動作する範囲を見込んで孔の大きさは多少余裕を見込んである。
そのため、保温箱21内において雰囲気を細胞の培養に適した湿度に保っていても、前記孔を通じて雰囲気が検出部40に対して抜けてしまい、細胞の培養に適した温度を維持できなくなり、細胞の活性低下を引き起こす可能性がある。
そこで、このような細胞培養に適した温度の雰囲気が保温箱21と検出部40との間で導通することを抑制する抑制手段99を設けてもよい。
その抑制手段99は、レボルバ47や対物レンズ48の動きを妨害しないように空気の流れを抑制できればよく、例えばフィルムや透明シートなど柔軟な材料からなるシートを保温箱21と検出部40との境目に設けられた孔の周囲に貼り付け、レボルバの周囲に垂らした状態で取り付ける幕状のものが考えられる。
【0044】
フィルタユニット45の検出光射出側には、検出光を検出器49および光量モニタ50に集光する集光レンズ60が配置されている。
集光レンズ60の検出光射出側には、検出光の一部を検出器49に向けて反射し、残りの検出光を光量モニタ50に向けて透過するハーフミラー61が配置されている。
検出器49は、ハーフミラー61から反射された検出光が入射される位置に配置されている。また、検出器49には、検出器49からの検出信号を演算して後述するコンピュータPCに出力する検出器演算部62が接続されている。
なお、検出器49はラインセンサを用いても良いし、エリアセンサを用いても良いし、ラインセンサとエリアセンサとを共用してもよく、特に限定するものではない。
光量モニタ50は、ハーフミラー61を透過した検出光を測定し、測定した値をコンピュータPCに出力するように配置されている。
なお、上述のように、光量モニタ50を用いて検出光の光量を測定しても良いし、照度計やパワーメータなどを用いて検出光の光量を測定しても良い。
【0045】
ヒータ40Hは、検出部40内を例えば30℃から37℃となるように保温制御している。ファン51は、検出部40内の空気を対流させ、検出部40内の温度を均一化するように配置されている。そのため、検出部40内の温度が保温箱21と近い温度に維持され、保温箱21の温度をより安定化させやすくなる。
冷却ファン52は、検出部40内に配置された温度センサ(図示せず)の出力に基づき、検出部40内の温度を下げるように駆動される。そのため、例えばモータなどの発熱による異常な検出部40内の温度上昇を防止することができる。
【0046】
図3は、本実施の形態に係るインキュベータボックスを示す斜視図である。
インキュベータボックス100は、図3に示すように、チャンバ(培養容器)130を格納する筐体101と、筐体101とともに密閉容器を形成するカバー102とから概略構成されている。
筐体101およびカバー102には、外界からの磁場を遮断する防磁処理や、インキュベータボックス100に発生した静電気を除去する静電除去処理が施されている。
【0047】
筐体101は、底板103と側壁104とから形成されていて、底板103の測定エリアに対応する領域は、ガラスのような透光性を有する材料で形成されている。底板103の他の領域および側壁104は、例えば、アルマイト処理されたアルミニウムやSUS316のようなステンレススチールなど防食性の高い遮光性の材料で制作するのが好ましく、より好ましくは、保温性の観点から熱伝導率の低い材料を選択するとよい。
また、底板103には、チャンバ130を保持するためのアダプタ105と、チャンバ130の温度を測定する温度センサ106と、が配置されている。なお、上述のようにアダプタ105を用いてチャンバ130を保持しても良いし、アダプタ105を用いないでチャンバ130を保持しても良い。
温度センサ106の出力は、インキュベータ温度検知部106Sを介してコンピュータPCに入力されるとともに、検出ユニット20の壁面に配置された温度表示部107にも入力されている。コンピュータPCは、図2に示すインキュベータ温度制御部106Cを介してヒータ21Hなどを制御して、インキュベータボックス100内の温度が一定に保たれるように制御するようになっている。
【0048】
カバー102は、照明光を透過するガラス板117と、ガラス板117を支持する支持部117Aと、から構成されている。ガラス板117には、測定エリアに対応する領域に反射防止膜が両面に形成されていても良い。反射防止膜を両面に形成することにより、透過観察・落射観察におけるガラス板117による反射を防止するようになっている。
なお、ガラス板117の面積は、インキュベータボックス100の底板103と略同じ面積であっても良いし、測定を問題なく行うために必要最小限の面積であっても良い。
【0049】
図4は、本実施の形態に係る培養容器を示す分解斜視図であり、図5は、本実施の形態に係る培養容器を示す断面図である。
チャンバ130は、図4および図5に示すように、チャンバ130の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部(外枠部材、培養容器本体)131と、細胞CEが播種されるスライドガラス(被播種部材)140と、外枠部131内に配置される中子(中枠部材)141と、外枠部131に取り付けられる蓋(蓋部材、培養容器本体)150と、から概略構成されている。
【0050】
外枠部131は、矩形状に配置された枠部側壁132と、底板開口部134が形成された底板133とから構成されている。外枠部131は、耐腐食性のある金属(例えばステンレススチール)などから形成されている。
枠部側壁132には、後述する継ぎ手143が配置されるU字型の溝部135が形成されているとともに、その上面(図中の上方向の面)には、ネジ穴136が形成されている。底板133には、後述するスライドガラス140より一回り小さな底板開口部134が形成されているとともに、スライドガラス140を支持する段差部(支持部)137が形成されている。段差部137は、スライドガラス140を図中の下側から支持するように形成されている。
スライドガラス140のチャンバ130内部となる面(図中の上面)には、細胞CEの接着を促すコーティング(例えばPLL(Poly−L−Lysine)コート等)が施されている。
【0051】
中子141は、矩形状の中子枠142と、中子枠142の対向する位置に配置された継ぎ手143と、中子枠142の上下面に配置されたOリング(シール部材)144とから構成されている。中子枠142および継ぎ手143は、細胞CEに対して無害な樹脂(例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂など)から形成されている。
継ぎ手143および中子枠142には、細胞CEを浸す培養液が流れる流路145が貫通して形成されている。中子枠142の上下面には、Oリング144を配置するための配置溝146が形成されている。Oリング144は、スライドガラス140と蓋150とに接触することで、スライドガラス140と中子141と蓋150とで密閉容器160を形成し、密閉容器160内に培養液を保持するように配置されている。
【0052】
蓋150は、照明光を透過する蓋ガラス151と、蓋ガラス151を支持するガラス支持部152とから形成されている。蓋ガラス151の外気と接する面(図中の上面)には、光の反射防止膜が形成されているとともに、培養液と接する面(図中の下面)には、高親水膜が形成されている。ガラス支持部152には、蓋150と外枠部131とを固定するネジ155用の貫通穴153が形成されている。
【0053】
培養ユニット70は、図1および図2に示すように、培養液を内部に収納する滅菌箱71と、培養ガスを生成する混合部90とから概略構成されている。
滅菌箱71には、滅菌箱71内を所定の温度に保温するヒータ71Hと、培養液を内部に蓄える培養液瓶72と、予備の培養液を内部に蓄える予備タンク73と、使用済みの培養液を入れる廃液タンク74と、滅菌箱71内を殺菌するUVランプ25と、培養液瓶72などを滅菌箱71から出し入れする際に用いる開閉扉75と、培養ユニット70の主電源をON・OFFする主電源スイッチ76が備えられている。
【0054】
培養液瓶72には、インキュベータボックス100との間で培養液を循環させる培養液循環配管77と、予備タンク73から予備の培養液を供給する補給配管78と、培養液瓶72から使用済みの培養液を廃液タンク74に排出する廃液配管79とが配置されている。
また、培養液循環配管77には、培養液を培養液瓶72からインキュベータボックス100に送り出し、培養液を循環させる培養液ポンプ(培養液交換手段)80が配置されている。培養液ポンプ80によりチャンバ130内の培養液を新しいものに交換することができるので、培養液を交換できないものと比較して、細胞CEの培養できる期間をより長くすることができる。
補給配管78には、予備タンク73から培養液を培養液瓶72に送る補給ポンプ81が配置され、廃液配管79には、培養液瓶72から使用済みの培養液を廃液タンク74に送る廃液ポンプ82が配置されている。
なお、上述のように、使用済みの培養液を貯める廃液タンク74を用いても良いし、廃液タンク74を用いないで、直接使用済みの培養液を外部に排出する排出ポートを設けても良い。
【0055】
培養液瓶72には、内部の培養液温度を検出する培養液温度センサ(図示せず)が配置され、培養液温度センサの出力は培養液温度検出部83を介してコンピュータPCに入力されるように配置されている。また、コンピュータPCに入力された培養液温度のデータは、テキストデータなどとしてメモリに蓄積され、細胞CEの検出結果との比較・検証などに用いることができる。
【0056】
ヒータ71Hには、コンピュータPCからの指示に基づき、滅菌箱71内の温度を介して培養液の温度を制御する培養液温度制御部84が配置されている。培養液温度制御部84により、培養液瓶72から供給される培養液の温度は、ほぼ37℃に保たれ、培養液の温度変化による細胞CEの活性低下が防がれている。また、培養ユニット70の壁面には、前述の培養液温度センサにより検出された培養液温度を表示する温度表示部85が配置されている。
培養液ポンプ80には、コンピュータPCの指示に基づき、培養液の循環を制御する培養液ポンプ制御部86が配置されている。また、補給ポンプ81および廃液ポンプ82もコンピュータPCの指示に基づき、その動作が制御されるように配置されている。
【0057】
UVランプ25は、培養ユニット70の壁面に配置されたUVランプスイッチ36と接続され、UVランプ25とUVランプスイッチ36との間には、UVランプ25の動作を時間的に制御するタイマ37が配置されている。さらに、UVランプ25の点灯を表示する滅菌中表示ランプ(図示せず)が配置されている。
なお、UVランプ25は、主電源スイッチ76とは別個に制御されており、主電源がOFFされていても動作することができるようになっている。
【0058】
混合部90には、図1および図2に示すように、混合部90内を所定の温度に保温するヒータ(図示せず)と、インキュベータボックス100に供給する培養ガス中の二酸化炭素ガス濃度を調節する培養ガス混合槽91と、培養ガス混合槽91に培養ユニット70の外部に配置されたCO2タンク92から二酸化炭素ガスを供給するCO2ポンプ93とが配置されている。
【0059】
培養ガス混合槽91には、内部の二酸化炭素ガス濃度を検出するCO2濃度検出部94が配置され、CO2濃度検出部94の出力がコンピュータPCに入力されるように配置されている。CO2ポンプ93には、コンピュータPCの指示に基づいて、培養ガス混合槽91に供給する二酸化炭素ガス量を制御するCO2濃度制御部95が配置されている。また、培養ユニット70の壁面には、CO2濃度検出部94により検出された培養ガス混合槽91内の二酸化炭素ガス濃度を表示するCO2濃度表示部96が配置されている。
さらには、培養ガス混合槽91と培養液瓶72との間に培養ガス供給配管97が配置されている。そのため、培養ガス供給配管97を介して培養液に培養ガスが供給され、培養液中に培養ガスを十分に溶け込ませることができる。このように、培養液瓶72内で二酸化炭素ガスの濃度が5%の培養ガスが溶解された培養液を生成することにより、培養気体および細胞CEの育成に必要な栄養素が含まれた培養液が、後述するチャンバ130に供給される。また、培養ガスを培養液に溶解させることにより、培養液のpHなどを調整することができる。
CO2濃度検出部94からコンピュータPCに入力された二酸化炭素ガス濃度は、メモリにデータとして蓄積されるとともに、コンピュータPCにおいてデータ処理が可能とされている。
【0060】
次に、上記の構成からなるチャンバ130における細胞CEの播種および培養について図4および図5を参照して説明する。
最初に、スライドガラス140への細胞CEの播種、接着が行われる。
具体的には、まず、スライドガラス140をディッシュなどに入れ、細胞CEをスライドガラス140に播種する。そして、細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータ(上述のインキュベータ100とは異なるものでもよい)内にて培養される。
細胞CEがスライドガラス140に接着されたら、ディッシュからスライドガラス140を引き上げ、PLLコートなどが施され、細胞CEが接着した面以外の面に付着した培養液を十分に除去する。
【0061】
次に、細胞CEが接着されたスライドガラス140を用いて、チャンバ130が形成される。
まず、細胞CEが接着された面がチャンバ130の内側になるように、スライドガラス140を段差部137の上に配置し、継ぎ手143が溝部135に配置されるように中子141を外枠部131内に配置する。そして蓋150をネジ155により外枠部131に固定し、チャンバ130が形成される。
その後、継ぎ手143に培養液循環配管77などを接続して培養液を、流路145を通じてチャンバ130に供給し、細胞CEを培養し、所定のタイミングで細胞CEの観察を行う。
【0062】
次に、上記の構成からなる生体試料観察システム10における観察方法について説明する。
まず、本実施の形態における走査方法および検出範囲の選択について図6(a)、(b)、(c)、(d)を参照して説明する。
図6(a)、(b)、(c)、(d)は、本実施の形態における走査方法および検出範囲の選択例を示す図である。
【0063】
図6(a)に示す例では、表示された画像上において測定対象範囲Mの左上の点aと右下の点bとを指定することにより、測定対象範囲M(図中の破線で囲まれた範囲)を設定している。具体的には、点a−点b間をマウスのような機器を用いてドラッグして測定対象範囲Mを設定しても良いし、点aおよび点bの座標値を入力して指示しても良い。
検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、設定された測定対象範囲M内を左右方向に走査される。つまり、図中の左から右へ走査される際には、X軸方向と平行に走査され、右から左へ走査される際には、左斜め下方向に走査される。このうち、左から右へ走査される時に細胞CEの撮像が行われる。
【0064】
図6(b)は、上述した方法で設定される測定対象範囲Mが2つの例である。まず、上述した方法で2つの測定対象範囲MA、MBが設定される。測定対象範囲MAと測定対象範囲MBとは、図中のX軸方向に所定間隔を空けて並ぶとともに、Y軸方向において、その全てが重複するように設定されている。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBを並列に測定するように走査される。つまり、図中の左から右へ走査される際に、測定対象範囲MAから測定対象範囲MBへ走査され、右から左へ走査される際には、測定対象範囲MBから測定対象範囲MAへ走査される。
【0065】
図6(c)は、上述した方法で設定される測定対象範囲が2つの例であって、2つの測定対象範囲MA、MBの配置が異なっている例である。ここでは、測定対象範囲MAと測定対象範囲MBとは、図中のX軸方向に所定間隔を空けて並ぶとともに、図中のY軸方向において、その一部分が重複するように設定されている。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBのY軸方向に重複する部分のみが連続して走査されている。つまり、まず、測定対象範囲MAの重複していない部分の走査が行われる。次に、測定対象範囲MA、MBの重複している部分の走査が連続して行われる。そして、測定対象範囲MBの重複していない部分の走査が行われる。
【0066】
図6(d)は、上述した方法で設定される測定対象範囲Mが2つの例であって、2つの測定対象範囲MA、MBの配置が図6(b)と同様であるが、走査方法が異なる例である。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBが別個に走査されている。つまり、まず測定対象範囲MAの全範囲の走査が行われた後に、測定対象範囲MBの全範囲の走査が行われる。
【0067】
また、上述した図6(a)、(b)、(c)、(d)に示す走査方法のうち、トータルの移動距離または走査時間が最短になる走査方法が、後述する設定されたパラメータおよび測定モードに基づいて、コンピュータPCにより自動的に選択される。
【0068】
なお、細胞を培養する範囲を撮像するとき、このように測定対象範囲Mを設定するなど複数の領域(検出範囲)に分けて撮像できる構成であれば、必要に応じて必要な部分だけの撮像を行うことが可能となる。
例えば、コンピュータPCの設定を変更して、走査対象となる全範囲の走査と、所定の一部の領域の走査とが交互に行われるようにしておけば、短い期間しか起こらない生体試料特有の現象を捉えることができる。一例として、走査対象となる全範囲の走査を30分ごとに行う場合、その合間に注目すべき細胞が存在する所定の測定対象範囲Mの走査が行われるようにしておけば、15分程度しか発現しない特有の現象が注目すべき細胞に起こったことを捉えることも可能となる。
また、必要なときに必要な測定対象範囲Mだけを走査するため、走査時間が短縮できるとともに、他の細胞に対する光の照射時間を短くすることができる。
【0069】
次に、細胞CEの測定にかかる手順にについて、各フローチャートを用いながら説明する。
まず、細胞CEの測定の前に、測定パラメータの設定が行われる。そこで、測定パラメータの設定の流れを、図7を参照しながら説明する。
図7は、測定パラメータの設定の流れを説明するフローチャートである。
まず、測定パラメータの設定が行われる(STEP1)。
その後、デフォルトの条件設定が行われる(STEP2)。ここで設定される条件は、例えばCO2濃度5%、温度37℃などの培養条件および測定条件であり、これらの設定条件はユーザによって所定の条件に変更することができる。
【0070】
次に、測定対象の選択を行う(STEP3)。測定対象とは、例えばマイクロプレート120や、スライドガラス116など、細胞CEの容器である。
次に、測定モードの選択を行う(STEP4)。測定モードには、エリア撮像モードや、ライン撮像モードや、自動モード等がある。自動モードとは他の測定モードの中から測定時間の短い測定モードを自動的に選択するモードである。
【0071】
次に、測定倍率を選択し(STEP5)、その後、検出波長を選択する(STEP6)。測定倍率の選択、および検出波長の選択は、それぞれ2種類以上の選択肢の中から選択することも可能である。
ここで、検出波長の選択方法としては、使用する蛍光タンパク、例えば、GFP、HC−Red等のリストをコンピュータPCに予め記憶させておき、記憶させたリストの中から選択する。コンピュータPCは、選択された蛍光タンパクに基づいて自動的に観測に最適な励起フィルタ56や吸収フィルタ58などを選択する。このようにして、細胞CEから所定の蛍光を検出することができる。
なお、測定中の励起フィルタ56や吸収フィルタ58、対物レンズ48等の変更は、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yの駆動に同期して自動的に行なわれる。
【0072】
次に、測定間隔が設定される(STEP7)。
そして、プレビュー画面が取り込まれ(STEP8)、プレビュー画像がモニタに表示される(STEP9)。ここでは、ユーザがプレビュー画像のモニタへの表示を指示するプレビューボタンなどを用いて指示を出すことにより、プレビュー画像がモニタに表示される。そして、ユーザがモニタに表示されたプレビュー画像を確認することができる。
【0073】
次に、測定範囲の選択が行われる(STEP10)。測定範囲の選択後、再度プレビュー画像をモニタに表示させて、測定範囲が所定の範囲であるか確認してもよい。
次に、設定された複数の測定間隔から所定の測定間隔を選択する(STEP11)。
そして、測定開始スイッチ(図示せず)が押されたら(STEP12)、細胞CEの測定が開始される(STEP13)。測定開始スイッチが押されない場合には、測定開始スイッチが押されるまで待機している(STEP12)。
【0074】
なお、STEP12において、測定開始スイッチが押されない場合には、各種設定を再設定できるように、種々のSTEPに戻ることが可能な設定にしてもよい。
【0075】
測定パラメータの設定が完了したら、次に、細胞CEの測定が行われる。そこで、細胞CEの測定の流れを、図8を参照しながら説明する。
図8は、測定の流れを説明するフローチャートである。
まず、測定が開始されると、測定対象範囲が読み込まれる(STEP21)。その後、倍率が読み込まれ(STEP22)、検出波長が読み込まれる(STEP23)。
次に、測定モードが読み込まれる(STEP24)。ここでは、読み込まれた測定対象範囲、倍率、検出波長(蛍光波長)などに基づき、最適なステージ走査方法が決定される。測定モードが自動モードに設定されている場合には、撮像モードもここで決定される。
【0076】
次に、決定されたステージ走査方法に応じたX軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Y等の動作方法が解析され(STEP25)、解析された動作方法のデータ(動作データ)は、コンピュータPCのテーブルに保存される(STEP26)。
その後、エリアセンサモードが選択されているか否かにより、異なる測定方法で測定が行われる(STEP27)。
【0077】
まず、エリアセンサモードが選択されている場合について説明する。
測定開始スイッチが押されると、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置へ移動させる(STEP30)。ここでは、コンピュータPCが入力された測定開始位置を読み込み、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置に移動させるとともに、細胞CEが対物レンズ48の撮影視野内に位置するように移動される。
そして、シャッタ35がOPENにされて(STEP31)、対物レンズ48が選択される(STEP32)。ここでは、コンピュータPCが設定された測定倍率に基づいて、レボルバ47を駆動して所定の倍率の対物レンズ48を選択する。
【0078】
次に、フィルタユニット45が選択される(STEP33)。ここでは、コンピュータPCが設定された蛍光タンパクに基づいて、フィルタ制御部46Cが測定に最適な励起フィルタ56、吸収フィルタ58などを選択する。
以上の測定開始スイッチが押されてからここまで(STEP30からSTEP33まで)の動作は、測定モードに併せて自動で選択され、実行される。
その後、フォーカス位置が検出され(STEP34)、画像の取り込みおよびコンピュータPCの画像メモリ部への画像データ出力が行われる(STEP35)。
【0079】
そして、必要な画像の取得が完了していなければ、再び対物レンズ48の選択(STEP32)から画像の取り込みおよびコンピュータPCの画像メモリ部への画像データ出力(STEP35)までの動作が、必要な画像の取得が完了するまで繰り返される(STEP36)。
必要な画像の取得が完了すると、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが1ステップ駆動される(STEP37)。そして、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが移動した位置が測定対象範囲内であれば、再び対物レンズ48の選択(STEP32)から1ステップステージ駆動(STEP37)までの動作が繰り返される。この繰り返し作業は、ステージ22の移動した位置が測定対象範囲外になるまで繰り返される(STEP38)。
【0080】
X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yの移動先が測定対象範囲外となると、シャッタ35がOFFされる(STEP39)。
その後、所定の測定時間間隔になると、再びシャッタ35がOPEN(STEP31)にされてからシャッタ35がCloseされる(STEP39)までの動作が、測定時間が終了するまで繰り返される(STEP40)。
【0081】
次に、エリアセンサモードが選択されていない場合について説明する。
測定開始スイッチが押されると、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置へ移動させる(STEP50)。ここでは、コンピュータPCが入力された測定開始位置を読み込み、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置に移動させるとともに、細胞CEが対物レンズ48の撮影視野内に位置するように移動される。
そして、シャッタ35がOPENにされて(STEP51)、フォーカス位置が検出される(STEP52)。
【0082】
次に、対物レンズ48が選択される(STEP53)。ここでは、コンピュータPCが設定された測定倍率に基づいて、レボルバ47を駆動して所定の倍率の対物レンズ48を選択する。
そして、フィルタユニット45が選択される(STEP54)。ここでは、コンピュータPCが設定された蛍光タンパクに基づいて、フィルタ制御部46Cが測定に最適な励起フィルタ56や吸収フィルタ58などを選択する。これら測定開始スイッチが押されてからここまで(STEP50からSTEP54まで)の動作は、測定モードに併せて自動で選択され、実行される。
【0083】
その後、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yの駆動が開始され(STEP55)、画像の取り込みおよびコンピュータPCのメモリ部への画像データ出力が行われる(STEP56)。
そして、必要な画像の取得が完了していなければ、再び対物レンズ48の選択(STEP53)から画像の取り込みおよびコンピュータPCのメモリ部への画像データ出力(STEP56)までの動作が繰り返され、必要な画像の取得が完了するまで繰り返される(STEP57)。
【0084】
必要な画像の取得が完了すると、シャッタ35がCloseされる(STEP58)。
その後、所定の測定時間間隔になると、再びシャッタ35がOPEN(STEP51)にされてからシャッタ35がCloseされる(STEP58)までの動作が、測定時間が終了するまで繰り返される(STEP59)。
【0085】
細胞CEの撮像が終了すると、次には撮像された画像の処理が行われる。そこで、撮像された画像の処理方法について、図9を参照しながら説明する。
図9は、画像の処理方法を説明するフローチャートである。
まず、コンピュータPCの画像処理部は、メモリ部に蓄積された撮像画像から、背景画像を抽出する(STEP71)と共に、撮像画像から背景画像(バックグラウンド)を除去する(STEP72)。
次に、強調できる画像の最大輝度範囲を読み込み(STEP73)、最大輝度範囲に応じて、例えば所定係数を掛けて画像を強調する(STEP74)。これらの処理により、バックグラウンドを除去した画像から1つ1つの細胞CEを粒状に認識し易いように画像が強調される。
【0086】
そして、強調された画像から、例えば所定の閾値以上の輝度を有する部分を抽出することで、細胞CEの1つ1つの輝度を明確な粒状として認識する(STEP75)。
次に、細胞CEの重心位置や面積等の幾何学的特徴量や、化学的特徴量や、蛍光輝度等の光学的特徴量をより正確に認識するとともに、細胞CEの位置情報とも関連付けて抽出する(STEP76)。これら特徴量を抽出することにより、1つ1つの細胞CEを識別することができる。
細胞CEの特徴量を抽出した後、細胞CEを認識するために行った強調作業(STEP74)の補正を行う(STEP77)。この補正により、画像の強調のために用いられた所定係数の影響が除去される。
次に、補正後の特徴量を、例えばファイルに出力するとともにそのファイルに蓄積する(STEP78)。
【0087】
そのため、コンピュータPCの画像処理部は、スライドガラス、マイクロプレートなどの全面の各位置における細胞CEの蛍光量分布等を画像化することができる。また、画像処理部は、1つ1つの細胞CEを正確に追跡可能であるので、例えば、所定の数の細胞CEだけに注目し、培養を行いながら細胞CE内部の蛍光分布を局所的に長時間測定することも可能である。更に、細胞CEを培養しながら、例えば、一定時間毎にスライドガラスや、マイクロプレートなどの全面を測定し、時間経過に対する細胞CEの蛍光量を自動測定することも可能である。
【0088】
次に、撮像画像から細胞CEの特徴量などのデータが抽出された後に行われるデータ処理について、図10を参照しながら説明する。
図10は、データ処理の流れを説明するフローチャートである。
ここでは、コンピュータPCのデータ処理部によって、ファイル内に蓄積された細胞CEのデータ(特徴量)の処理が行われる。
まず、データ処理部は、ファイル内に蓄積された細胞CEの生データ(特徴量)を読み込む(STEP81)とともに、細胞CEごとに時系列に並ぶようにデータの並べ替えが行われる(STEP82)。データが並べ替えられると、データ処理部は、細胞CEごとに輝度、すなわち発現量の経時的変化をグラフ化する(STEP83)。
グラフ化が完了すると、データ処理部は、グラフをプレビュー表示し(STEP84)、グラフ化データをファイルに出力する(STEP85)。
【0089】
この処理を行うことにより、細胞CEを長期間培養した場合における1つの細胞の経時的変化を容易に観察することができる。従って、培養中の時間経過に伴う細胞CEの発現量の変化等を正確、かつ容易に測定することができる。
【0090】
次に、細胞CEの測定時に行われる照射光量の調整について、図11を参照しながら説明する。
図11は、光量の調整の流れを説明するフローチャートである。
まず、細胞CEに照射される照射光量が測定される(STEP91)。照射光量は、光量モニタ50の出力から算出されてもよいし、照度計を設けて測定しても良いし、パワーメータを設けてパワーメータの出力から算出してもよい。
【0091】
測定された照射光量が許容範囲内であれば、再び照射光量の測定(STEP91)に戻り、照射光量が許容範囲外になるまで繰り返される(STEP92)。
照射光量が許容範囲外になると、光量調整機構43に含まれるNDフィルタ(図示せず)が交換され(STEP93)、照射光量が許容範囲内になるように調節される。その後、再び照射光量の測定(STEP91)に戻り、照射光量の調節が繰り返される。
【0092】
次に、チャンバ130への培養液の補給・交換の制御方法を、図12を参照しながら説明する。
図12は、培養液の補給・交換方法を説明するフローチャートである。
まず、撮像された画像のバックグラウンド(背景)値が解析される(STEP101)。撮像された画像のバックグラウンドには培養溶液の自家蛍光が撮像されており、この培養溶液の自家蛍光の輝度が解析される。
ここで、培養液は古くなるほど自家蛍光の輝度が高くなるため、自家蛍光の輝度を測定することにより、培養液の交換時期を検出することができる。
【0093】
そして、解析されたバックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値以内であれば、再びバックグラウンド値の解析(STEP101)に戻り、バックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値より大きくなるまで繰り返される(STEP102)。
バックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値より大きくなると、培養液の廃液ポンプ82が駆動され(STEP103)、次いで培養液の補給ポンプ81が駆動される(STEP104)。
【0094】
なお、培養液の補給・交換の時期は、上述のように、培養液の自家蛍光により決定しても良いし、連続して行ってもよいし、予めユーザが指定した時間間隔で自動的に補給・交換を行っても良いし、予め登録されているテーブルから細胞CEを選択することにより、適宜、培養液の交換時期を指定できるようにしてもよい。また、交換する量もユーザが設定しても良いし、培養液の自家蛍光により決定してもよいし、チャンバ130内の培養液を一括して全て交換してもよいし、予め登録されているテーブルから細胞CEを選択することにより、適宜、培養液の交換量を指定できるようにしてもよい。
重量などで換算して自動で設定しても良い。
なお、本実施の形態においては、撮像された画像を用いてバックグラウンドの自家蛍光の値を検出しているが、この検出は細胞CEが存在しない場所を撮像した画像から検出しても良いし、培養液瓶72近傍に例えば光学的検出器を設けて検出してもよい。
上述したような測定手順により、図13に示すような、1つ1つの細胞の経時的位置変化を表した細胞追跡画像を取得できる。
【0095】
上記の構成によれば、チャンバ130のうち、細胞CEが播種されるスライドガラス140のみを交換することで、異なる種類の細胞CEを観察することができる。そのため、チャンバ130ごと交換する場合と比較して、観察に要するコストを低減することができる。また、播種された細胞CEを取り除く場合と比較して、観察に要する手間を省くことができる。
スライドガラス140は、中子141を介して段差部137と蓋150とにより挟まれ・保持されているので、蓋150を取り付け・取り外しすることにより、スライドガラス140を容易に交換することができる。
【0096】
スライドガラス140と中子141との間、および中子141と蓋150との間は、Oリング144により密閉されているため、スライドガラス140と中子141と蓋150とで密閉容器160を形成することができる。そのため、密閉容器160内に細胞CEを培養する培養液を保持することができ、細胞CEを長期間培養し、長期間にわたる観察を行うことができる。
さらに、継ぎ手143を介して細胞CEに培養溶液を供給することできるため、細胞CEをチャンバ130内で長期間培養することができ、細胞CEを長期間観察することができる。
【0097】
また、対物レンズ48がスライドガラス140のみを介して細胞CEを観察するため、例えばチャンバの容器とスライドガラスとを介して観察する場合と比較して、より微弱な光を観察することができる。つまり、対物レンズ48と細胞CEとの距離がより短くなるため、より焦点距離の短い高NA対物レンズを用いて観察することができ、より微弱な光を観察することができる。
【0098】
また、スライドガラス140に細胞CEを播種してからチャンバ130の組み立てを行うため、スライドガラス140への細胞CEの播種を、細胞CEの播種に適した環境下で行えるので、細胞CEをスライドガラス140へより確実に接着させることができる。
【0099】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図14を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図14を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図14は、本実施の形態に係るチャンバの断面図である。
なお、同一構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0100】
チャンバ(培養容器)230は、チャンバ230の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部(外枠部材、培養容器本体)231と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部231に取り付けられる蓋150と、外枠部231の上面に配置されたOリング244とから概略構成されている。
外枠部231は、矩形状に配置された枠部側壁232と、底板開口部134が形成された底板233とから構成されている。外枠部231は、細胞CEに対して毒性のない樹脂(例えばPEEK樹脂など)から形成されている。
枠部側壁232には、継ぎ手243が形成されているとともに、その上面にはネジ穴(図示せず)が形成されている。また、枠部側壁232の上面には、Oリング244を配置するための配置溝246が、ネジ穴よりも内側に形成されている。継ぎ手243および枠部側壁232には、培養液が流れる流路245が貫通して形成されている。底板233には底板開口部134が形成されているとともに、スライドガラス140を支持する段差部137が形成されている。
【0101】
次に、上記の構成からなるチャンバ230における細胞CEの播種および培養について図14を参照しながら説明する。
最初に、細胞CEが播種されていないスライドガラス140を外枠部231に取り付ける。スライドガラス140は、PLLコートなどが施された面がチャンバ230の内側に向くように、段差部137の上に配置される。スライドガラス140と段差部137とは、例えば両面テープやシリコンなど、剥離の容易な接着部材(接着材)Gなど、細胞CEに対して毒性のない接着剤により接着されている。
【0102】
次に、スライドガラス140および外枠部231が滅菌される。そして、継ぎ手243がキャップ(図示せず)により塞がれ、スライドガラス140上に細胞CEが播種されるとともに、培養液が所定量供給される。
この状態で外枠部231の上に蓋150が乗せられ、細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータ(上述のインキュベータ100とは異なるものであってもよい)内にて培養される。
【0103】
細胞CEがスライドガラス231に接着したら、継ぎ手243のキャップをはずし、培養液循環配管77などを接続する。そして、ネジ155を用いて、蓋150を外枠部231に固定し、密閉容器160を形成する。密閉容器160が形成されたら、培養液を供給して密閉容器160内から空気を追い出し、培養液で満たし、所定のタイミングで細胞CEの観察を行う。
【0104】
上記の構成によれば、接着部材(接着材)Gを用いることにより、スライドガラス140を容易に外枠部231に貼り付けることができ、チャンバ230の密閉容器160を容易に構成することができる。
また、スライドガラス140を外枠部231に貼り付けた後に細胞CEを播種しているため、細胞CEが播種されたスライドガラス140を移動させる必要がなく、移動による細胞CEへのダメージを防止することができる。
【0105】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図15および図16を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図15および図16を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図15は、本実施の形態に係るチャンバの分解斜視図である。
なお、同一構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0106】
チャンバ(培養容器)330は、図15に示すように、チャンバ330の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部131と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部131内に配置される中子(中枠部材)341と、外枠部131に取り付けられる蓋150とから概略構成されている。
【0107】
図16(a)は中子の斜視図であり、図16(b)は中子の断面図である。
中子341は、図15および図16(a)、(b)に示すように、矩形状の中子枠142と、中子枠142の対向する位置に配置された継ぎ手143と、中子枠142の上下面に配置されたOリング144とから構成されている。中子枠142および継ぎ手143は、細胞CEに対して無害な樹脂(例えばPEEK樹脂など)から形成されている。
一対の継ぎ手143の内、培養液がチャンバ330に流入する継ぎ手143およびその継ぎ手143が配置された中子枠142には、図16(b)に示すように、培養液が流れる流路345が貫通して形成されている。流路345は、中子枠142内で外側から内側に向けて複数に分岐して形成されている。
他方の継ぎ手143および中子枠142には、第1の実施の形態と同様に、1本の流路145が形成されている。
【0108】
上記の構成によれば、複数に分岐した流路345により、密閉容器160内に培養溶液を均一に流入させることができるため、培養溶液流れが澱む領域の発生を防止することができる。澱みの発生を防止することにより、細胞CEへの栄養等の供給不均一を防止することができ、細胞CEを均一に培養することができる。
【0109】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図17および図18を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第3の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図17および図18を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図17は、本実施の形態に係るチャンバの分解斜視図である。
なお、同一構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0110】
チャンバ(培養容器)430は、図17に示すように、チャンバ430の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部131と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部131内に配置される中子(中枠部材)441と、外枠部131に取り付けられる蓋150とから概略構成されている。
【0111】
図18(a)は中子の分解斜視図であり、図18(b)は分離中子の断面図である。
中子441は、図17および図18(a)、(b)に示すように、矩形状の中子枠442と、中子枠442の対向する位置に配置された継ぎ手143と、中子枠442の上下面に配置されたOリング144とから概略構成されている。
中子枠442には、図18(a)に示すように、挿入口450が形成されるとともに、挿入口450に対して着脱可能に構成された分離中子(流路形成部)451が配置されている。
挿入口450には、後述する分離中子451のフック453と噛み合う係止部(図示せず)が形成されている。
【0112】
分離中子451には、一対の継ぎ手143の内、一方の継ぎ手143が配置されているとともに、分離中子451と中子枠442との間の水密を保つOリング452が配置されている。また、分離中子451には、分離中子451を中子枠442に着脱可能に係止する一対のフック453が備えられている。
さらに、図18(b)に示すように、分離中子451には、継ぎ手143と略直交して貫通孔454が形成されるとともに、貫通孔451を分岐流路として、流路445が分離中子451の外側から内側にむけて複数に分岐して形成されている。貫通孔454の両端には、培養液の流出を防ぐ栓455が着脱可能に配置されている。
【0113】
上記の構成によれば、分離中子451のみを取り替えることができるので、細胞CEの観察に要する手間およびコストを低減することができる。つまり、培養液などの付着物が形成されやすい流路445を分離中子451ごと取り替えることにより、この付着物の洗浄の手間を省くことができる。また、分離中子451のみを取り替えることにより、中子441全体を取り替える場合と比較して、取替えに要するコストを低減することができる。
流路445の分岐部を貫通孔451および栓455で形成することにより、分岐部を洗浄し易くすることができる。つまり、栓455を取り外すことにより、貫通孔451の洗浄性を向上させることができる。
【0114】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図19および図20を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図19および図20を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図19は、本実施の形態に係るチャンバの分解斜視図であり、図20は、本実施の形態に係るチャンバの断面図である。
【0115】
チャンバ(培養容器)530は、図19および図20に示すように、チャンバ530の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部131と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部131内に配置される中子141と、外枠部131に取り付けられる内蓋(内蓋部材)531と、外枠部131に取り付けられる蓋150とから概略構成されている。
内蓋531は、略中央に開口部532が形成された板状部材からなり、内蓋531を外枠部131に着脱可能に係止する、少なくとも一対のフック533が配置されている。また、内蓋531には、蓋150を外枠部131に固定するネジ155が挿通する貫通穴534が形成されている。
開口部532はOリング144よりも一回り小さく形成され、内蓋531がOリング144に接触するように形成されている。
【0116】
次に、上記の構成からなるチャンバ530における細胞CEの播種および培養について図19および図20を参照して説明する。
まず、PLLコートを施した面がチャンバ530の内側になるように、スライドガラス140を段差部137の上に配置し、継ぎ手143にキャップ(図示せず)をかぶせ、培養液の流出を防止する。そして、継ぎ手143が溝部135に配置されるように中子141を外枠部131内に配置し、内蓋531をフック533により外枠部131に固定する。
【0117】
次に、スライドガラス140に細胞CEを播種し、培養液をチャンバ530内に適量供給する。その後、蓋150を内蓋531の上に置き、細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータボックス内で培養する。
スライドガラス140に細胞CEが接着したら、まず、継ぎ手143のキャップを外し、培養液循環配管77などを接続する。次に、蓋150を外枠部131に固定してチャンバ530内を密閉し、培養液を供給してチャンバ530内の空気を追い出し、所定のタイミングで細胞CEの観察を行う。
【0118】
上記の構成によれば、スライドガラス140が、中子141を介して段差部137と内蓋531とにより挟まれ・保持されているため、内蓋531を外枠部131に取り付け・取り外すことにより、スライドガラス140のみを交換することができる。
また、スライドガラス140と中子141との間、および中子141と内蓋531との間は、Oリング144により密閉されているため、スライドガラス140と中子141と内蓋531とにより、開口部532において開放された空間を形成することができる。そのため、空間内に細胞CEを培養する培養液を保持するとともに開口部532を介して換気を行うことができ、細胞CEを長期間培養することができる。
さらに、蓋150を取り付けることにより、スライドガラス140と中子141と内蓋531と蓋150とで密閉容器160を形成することができ、観察時などにおける、細胞CEのへのコンタミネーションを防止することができる。
【0119】
〔第6の実施の形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図21から図24を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図21から図24を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図21は、本実施の形態に係るチャンバの斜視図であり、図22は、本実施の形態に係るチャンバの断面図である。
【0120】
チャンバ(培養容器)630は、図21および図22に示すように、チャンバ630の外側側壁を形成する枠部631と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、枠部631の上部を覆う上部ガラス板632とから概略構成されている。
枠部631には、枠部631の対向する位置に継ぎ手143が配置されるとともに、一対の継ぎ手143の内、培養液が流入する継ぎ手143側に整流子633が配置されている。継ぎ手143は、枠部631の上側(図中の上方向)にオフセットして配置されている。
【0121】
整流子633は、複数の四角柱状を平行に並べた整流部634と、複数の整流部634と繋ぐとともに整流部634を枠部631に繋ぐ連結部635とから形成されている。連結部635は、整流部634の上端を繋ぐように配置されてもよいし、整流部634の上下端を繋ぐように配置されていてもよい。
なお、整流子633は、上述のように、複数の四角柱状を平行に並べて構成してもよいし、図23に示すように、複数の四角柱状をクロス状に交差させて配置してもよい。また、四角柱状の柱から形成されてもよいし、円柱状の柱、三角柱状の柱などから形成されてもよい。
【0122】
次に、上記の構成からなるチャンバ630における細胞CEの播種および培養について説明する。
図24(a)は、本実施の形態におけるチャンバへの細胞の播種を説明する図であり、図24(b)は、本実施の形態におけるチャンバへの細胞の培養を説明する図である。
【0123】
本実施の形態においては、チャンバ630は予め形成されていて、形成されたチャンバ630内に細胞CEの播種が行われ、さらに培養が行われる。
まず、図24(a)に示すように、継ぎ手143にチューブ636を挿し、細胞浮遊液を保持した注入器(例えばシリンジやピペットなど)637をチューブ636に接続する。そして、図24(b)に示すように、細胞浮遊液をチャンバ630内に供給し、継ぎ手143からチューブを外してキャップ638を取り付ける。
【0124】
培養液の供給量は、チャンバ630内の培養液液面が継ぎ手143の流路145より下となる量であることが望ましい。
キャップ638には、二酸化炭素を透過するフィルタ639が設けられ、継ぎ手143にキャップ638を付けてもチャンバ630内に二酸化炭素が供給することができる。
その後、浮遊している細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータボックス内で培養される。
【0125】
上記の構成によれば、細胞CEを培養液とともにチャンバ630内に供給するため、例えばチャンバが構成された状態でも、細胞CEの播種を容易に行うことができる。
また、継ぎ手143にキャップ638を付けるため、供給された培養液が流路145から流出することなく、細胞CEの培養を容易に行うことができ、スライドガラス140に接着させることができる。
枠部631に整流子633を配置しているため、チャンバ630内に流入する培養液の流れを均一化することで、細胞CEへの栄養等の供給を均一にして細胞CEを均一に培養することができる。
【0126】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、蛍光強度を検出する構成に適応して説明したが、この蛍光強度を検出する構成に限られることなく、細胞の形態変化等、その他各種の指標を検出する構成に適応することができるものである。
また、細胞を観察する構成に限られることなく、細菌類や微生物、卵などの種々の生体試料を観察する構成に適応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明による第1の実施形態に係る生体試料観察システムの斜視図である。
【図2】同、生体試料観察システムのシステム構成を示す概略図である。
【図3】同、インキュベータボックスを示す斜視図である。
【図4】同、培養容器を示す分解斜視図である。
【図5】同、培養容器を示す断面図である。
【図6】同、走査方法および検出範囲の選択例を示す図である。
【図7】同、測定パラメータの設定の流れを示すフローチャートである。
【図8】同、測定の流れを示すフローチャートである。
【図9】同、画像の処理方法を示すフローチャートである。
【図10】同、データ処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】同、光量の調整の流れを示すフローチャートである。
【図12】同、培養液の補給・交換方法を示すフローチャートである。
【図13】細胞の経時変化を表した細胞追跡画像を示す図である。
【図14】本発明による第2の実施形態に係るチャンバの断面図である。
【図15】本発明による第3の実施形態に係るチャンバの分解斜視図である。
【図16】同、中子の斜視図および断面図である。
【図17】本発明による第4の実施形態に係るチャンバの分解斜視図である。
【図18】同、中子の分解斜視図および断面図である。
【図19】本発明による第5の実施形態に係るチャンバの分解斜視図である。
【図20】同、チャンバの断面図である。
【図21】本発明による第6の実施形態に係るチャンバの斜視図である。
【図22】同、チャンバの断面図である。
【図23】同、整流子の別の実施例を示す図である。
【図24】同、チャンバへの細胞の播種および培養を説明する図である。
【符号の説明】
【0128】
10 生体試料観察システム
48 対物レンズ(観察手段)
130、230、330、430、530、630 チャンバ(培養容器)
131、231 枠部(外枠部材、培養容器本体)
137 段差部(支持部)
140 スライドガラス(被播種部材)
141、341、441 中子(中枠部材)
144 Oリング(シール部材)
145、345 流路
150 蓋(蓋部材、培養容器本体)
160 密閉容器
451 分離中子(流路形成部)
531 内蓋(内蓋部材)
532 開口部
CE 細胞(生体試料)
G 接着部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を培養すると同時にその細胞を観察するのに用いる培養容器および生体試料観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子解析技術の進歩に伴って、人を含む多くの生物における遺伝子配列が明らかになると共に解析されたタンパク質等の遺伝子産物と疾病との因果関係も少しずつ解明され始めている。また、今後さらに、各種タンパク質や遺伝子等を網羅的且つ統計的に解析するため、生体試料、特に細胞を用いた様々な検査方法や装置が考えられ始めている。
【0003】
通常、細胞は、プラスチック製又はガラス製のディッシュやフラスコ等に播種され、インキュベータ内で培養されている。このインキュンベータは、内部が例えば、二酸化炭素濃度5%、温度37℃、湿度100%に設定され、細胞の育成に適した環境に保たれている。
更に、インキュベータは、細胞に養分を与えると共に培養に適したpHを保つために2〜3日毎に培養液の交換がなされている。
【0004】
このような培養中の細胞を観察する方法は、いくつかの方法が知られているが、その一つとして、インキュベータから上述したディッシュやフラスコ等を取り出し、位相差顕微鏡等の倒立型顕微鏡を用いて観察を行う方法が知られている。
上記の方法では、可能な限り速やかに細胞の観察を行い、観察終了後、細胞をインキュベータ内に戻す必要がある。これは、細胞が通常環境(培養に適した環境とは異なる環境)下に長く置かれることにより、細胞の活性が損なわれるのを防止するためである。
即ち、細胞の活性が不安定であると、正確な評価を行うことが困難になるためである。また、細胞をインキュベータから取り出す際は、コンタミネーション等が起こらないように十分注意して行われている。
また、別の細胞観察方法として、各種の細胞の培養条件を設定可能な顕微鏡観察用透明恒温培養容器を使用する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−28576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1においては、温度調節器により所定温度に制御可能な一対の透明発熱プレートと、二酸化炭素濃度を調整するための二酸化炭素供給口及び排出口を有する密閉容器と、密閉された容器内に湿度を保つための蒸発皿と、を有している顕微鏡観察用透明恒温培養容器が開示されている。
この顕微鏡観察用透明恒温培養容器を用いることで、容器内部の温度、二酸化炭素濃度及び湿度の制御が可能となり、細胞培養しながら観察を行うことが可能となっていた。つまり、例えば、透明発熱プレートの下方から対物レンズで観察することにより、細胞の培養状態の経時変化を連続的に、かつ簡単に観察・記録することが可能であった。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の顕微鏡観察用透明恒温培養容器では、密閉容器に直接細胞を播種していたため、同じ透明恒温培養容器で他の細胞を観察する時には、前回の観察した細胞を取り除く必要があり、細胞の観察を行うのに手間がかかるという問題があった。
または、透明恒温培養容器を使い捨てにしていたが、スライドガラスなどと異なり、価格の高い透明恒温培養容器を使い捨てにするため、細胞観察のコストが高くなるという問題があった。
これは、例え播種された細胞が取り除かれたとしても、一度、細胞が播種された面には他の細胞は貼り付かないため起きる問題であった。
【0007】
上述の問題を回避するため、培養容器内にスライドガラスやマイクロプレート等を配置し、スライドガラス等の上に細胞を播種する方法が公知となっている。
しかしながら、この方法においては、細胞から発せられる微弱な蛍光などを検出することが困難であるという問題があった。
つまり、細胞を観察する対物レンズと細胞との距離が、細胞容器とスライドガラス等との厚さにより規制されてしまい、微弱な光を検出するのに好適な高NA対物レンズ等で観察できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、微弱な光を観察できるとともに、複数種類の生体試料を観察する際にかかる手間およびコストを削減することができる培養容器および生体試料観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器であって、生体試料が播種される被播種部材と、該被播種部材を着脱可能に取り付ける培養容器本体とを備える細胞培養容器を提供する。
【0010】
本発明によれば、培養容器のうち、生体試料が播種される被播種部材のみを交換することで、異なる種類の生体試料を観察することができる。そのため、培養容器ごと交換する場合と比較して、観察に要するコストを低減することができる。また、播種された細胞を取り除く場合と比較して、観察に要する手間を省くことができる
また、被播種部材のみを介して生体試料を観察できるため、例えば培養容器とスライドガラスとを介して観察する場合と比較して、より微弱な光を観察することができる。つまり、生体試料により接近して観察できるため、より焦点距離の短い高NA対物レンズを観察手段として用いて観察することができ、より微弱な光を観察することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記被播種部材が、接着部材を用いて前記培養容器本体に貼り付けられていることが望ましい。
本発明によれば、被播種部材を容易に培養容器本体に貼り付けることができ、培養容器を容易に密封状態にすることができる。
なお、接着部材としては、生体試料に対して毒性のない材料から形成されているものが好ましく、さらには、貼り付けた被播種部材を再び取り外すことができるものが好ましい。
【0012】
さらに、上記発明においては、前記培養容器本体内に、前記生体試料を浸す培養液を流入および流出させる流路が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、生体試料に培養溶液を供給することできるため、生体試料を培養容器内で長期間培養することができ、生体試料を長期間観察することができる。
【0013】
上記発明においては、前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材の内側に配置される中枠部材と、前記外枠部材に固定される蓋部材とを備え、前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、前記中枠部材に、前記被播種部材および前記蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および蓋部材と接触するシール部材が設けられ、前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記蓋部材とを配置し、前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材および前記蓋部材により密閉容器を構成することが望ましい。
【0014】
本発明によれば、蓋部材を外枠部材に取り付け・取り外すことにより、被播種部材のみを交換することができる。つまり、被播種部材は中枠部材を介して、外枠部材の支持部と蓋部材とにより挟まれ、保持されているため、蓋部材を取り付け・取り外すことにより、容易に交換することができる。
また、被播種部材と中枠部材との間、および中枠部材と蓋部材との間は、シール部材により密閉されているため、被播種部材と中枠部材と蓋部材とで密閉容器を形成することができる。そのため、密閉容器内に生体試料を培養する培養液を保持することができ、生体試料を長期間培養し、長期間にわたる観察を行うことができる。
なお、蓋部材の外枠部材への取り付けは、螺合部材(例えばネジ)や係止部材(例えばフック)など、取り付け・取り外しが容易な部材を用いて行われることが望ましい。
【0015】
上記発明においては、前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材に取り付けられる内蓋部材と、該内蓋部材を介して前記外枠部材に取り付けられる蓋部材と、前記外枠部材の内側に配置される中枠部材とを備え、前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、前記中枠部材に、前記被播種部材および前記内蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および前記内蓋部材と接触するシール部材が設けられ、前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記内蓋部材とを配置し、前記内蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材を保持し、前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材、前記内蓋部材および前記蓋部材により密閉容器を構成することが望ましい。
【0016】
本発明によれば、内蓋部材を外枠部材に取り付け・取り外すことにより、被播種部材のみを交換することができる。つまり、被播種部材は中枠部材を介して、外枠部材の支持部と内蓋部材とにより挟まれ、保持されているため、内蓋部材を取り付け・取り外すことにより、容易に交換することができる。
また、被播種部材と中枠部材との間、および中枠部材と内蓋部材との間は、シール部材により密閉されているため、被播種部材と中枠部材と内蓋部材とで開口部において開放された空間を形成することができる。そのため、空間内に生体試料を培養する培養液を保持するとともに開口部を介して換気を行うことができ、生体試料を長期間培養することができる。
【0017】
さらに、蓋部材を取り付けることにより、被播種部材と中枠部材と内蓋部材と蓋部材とで密閉容器を形成することができ、観察時などにおける、生体試料のへのコンタミネーションを防止することができる。
なお、蓋部材および内蓋部材の外枠部材への取り付けは、螺合部材(例えばネジ)や係止部材(例えばフック)など、取り付け・取り外しが容易な部材を用いて行われることが望ましい。
【0018】
上記発明においては、前記中枠部材には、前記密閉容器に前記培養液を流入および流出させる流路が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、密閉容器内の生体試料に培養溶液を供給することできるため、生体試料を密閉容器内で長期間培養することができ、生体試料を長期間観察することができる。
【0019】
上記発明においては、前記流路が前記中枠部材中で複数に分岐され、前記密閉容器に向けて複数の開口を有するように形成されていることが望ましい。
本発明によれば、密閉容器内に培養溶液を均一に流入させることができるため、培養溶液流れが澱む領域の発生を防止することができる。澱みの発生を防止することにより、生体試料への栄養等の供給不均一を防止することができ、生体試料を均一に培養することができる。
【0020】
上記発明においては、前記中枠部材における前記流路が形成されている流路形成部が、前記中枠部材に対して着脱自在に形成されていることが望ましい。
本発明によれば、流路形成部のみを取り替えることができるので、生体試料の観察に要する手間およびコストを低減することができる。
つまり、流路形成部内の流路の分岐には培養液を構成する成分が残留しやすい。流路形成部を取り替えることにより、この付着物の洗浄の手間を省いたり、容易に洗浄することが可能な構成としたりすることができる。また、流路形成部のみを取り替えることにより、中枠部材を取り替える場合と比較して、取替えに要するコストを低減することができる。
【0021】
上記発明においては、前記生体試料の播種が行われた前記被播種部材を用いて、前記培養容器の密閉容器が構成されることが望ましい。
本発明によれば、生体試料の播種に適した環境の下で、被播種部材への播種を行うことができるので、生体試料を被播種部材へより確実に接着させることができる。
【0022】
上記発明においては、前記培養容器の密閉容器の構成後に、前記被播種部材への前記生体試料の播種が行われることが望ましい。
本発明によれば、生体試料が播種された被播種部材を移動させる必要がないため、移動による生体試料へのダメージを防止することができる。
【0023】
上記発明においては、前記生体試料を含む前記培養液を、前記流路を介して前記培養容器内に供給し、前記被播種部材への前記生体試料の播種を行うことが望ましい。
本発明によれば、培養液とともに生体試料を培養容器内に供給するため、例えば培養容器が構成された状態でも、生体試料の播種を容易に行うことができる。
【0024】
上記発明においては、前記生体試料の播種を行った後、前記培養液をその液面が前記流路よりも下になるように供給し、前記生体試料を培養することが望ましい。
本発明によれば、供給された培養液が流路から流出することなく、生体試料の培養を容易に行うことができ、被播種部材に接着させることができる。
【0025】
上記発明においては、前記被播種部材は、前記生体試料を外部から観察するときに必要な光を透過させることが可能なスライドガラスを含んで構成されることが望ましい。
本発明によれば、生体試料を播種可能な一般的なスライドガラスをそのまま培養容器の一部として取り付けて観察できる。
【0026】
請求項13に係る発明は、被観察体となる生体試料の情報を取得する生体試料観察システムにおいて、前記生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器と、前記生体試料を観察して情報を取得する観察手段と、を有し、前記生体試料が播種される被播種部材が、前記培養容器の前記観察手段と対向する面に配置され、前記被播種部材が前記培養容器の一部を構成するとともに、前記培養容器に対して着脱自在に配置されている生体試料観察システムを提供する。
【0027】
本発明によれば、培養容器のうち、生体試料が播種される被播種部材のみを交換することで、異なる種類の生体試料を観察することができる。そのため、培養容器ごと交換する場合と比較して、観察に要するコストを低減することができる。また、播種された細胞を取り除く場合と比較して、観察に要する手間を省くことができる
また、観察手段が被播種部材のみを介して生体試料を観察するため、例えば培養容器とスライドガラスとを介して観察する場合と比較して、より微弱な光を観察することができる。つまり、観察手段と生体試料との距離がより短くなるため、より焦点距離の短い高NA対物レンズを観察手段として用いて観察することができ、より微弱な光を観察することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の生体試料観察システムによれば、生体試料が播種される被播種部材が培養容器に対して着脱自在に配置されているため、生体試料の交換が容易となり複数種類の生体試料を観察する際にかかる手間およびコストを削減することができるという効果を奏する。
また、被播種部材が培養容器における密閉容器の一部を構成するため、観察手段と生体細胞との間の距離を短くでき、微弱な光の観察に適した観察手段を用いることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態である生体試料観察システムについて図1から図13を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る生体試料観察システムの概略を示す斜視図である。図2は、同じく生体試料観察システムのシステム構成を示す概略図である。
【0030】
生体試料観察システム10は、図1および図2に示すように、検出ユニット20と培養ユニット70とから概略構成されている。これら検出ユニット20および培養ユニット70は、接近して配置されることが望ましく、より好ましくは両ユニット20、70が接して配置されることが望ましい。
【0031】
検出ユニット20は、図1および図2に示すように、生体試料を内部に収納する保温箱21と、細胞(生体試料)CEを測定する検出部40とから概略構成されている。
保温箱21には、保温箱21内を所定の温度に保温するヒータ21Hと、後述するインキュベータボックス100を保持するステージ22と、細胞CEに光を照射する透過光源23と、保温箱21内の温度を均一にするファン24と、保温箱21内を殺菌するUVランプ25と、後述する培養液循環配管77や培養ガス供給配管97などを保護するキャリア26と、インキュベータボックス100などを保温箱21から出し入れする際に用いる開閉扉27と、検出ユニット20の主電源をON・OFFする主電源スイッチ28が備えられている。
【0032】
ステージ22は、互いに直交方向に相対移動するX軸動作ステージ22Xと、Y軸動作ステージ22Yと、を有し、ステージ走査部29により走査制御されている。
ステージ走査部29は、X軸動作ステージ22XのX軸座標値を検出するX軸座標検出部30と、X軸動作ステージ22Xの動作(走査)を制御するX軸走査制御部31と、Y軸動作ステージ22YのY軸座標値を検出するY軸座標検出部32と、Y軸動作ステージ22Yの動作(走査)を制御するY軸走査制御部33と、から構成されている。
X軸座標検出部30およびY軸座標検出部32は、それぞれ検出したX軸動作ステージ22XのX座標と、Y軸動作ステージ22YのY座標と、をコンピュータPCに出力するように配置されている。X軸走査制御部31およびY軸走査制御部33は、それぞれコンピュータPCからの指示に基づきX軸動作ステージ22Xの走査と、Y軸動作ステージ22Yの走査とを制御するように配置されている。
【0033】
なお、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを駆動する機構としては、例えばモータおよびボールネジの組み合わせを挙げることができる。
コンピュータPCは、上述のように、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yの走査と、を制御するとともに、後述するように、細胞CEの検出系の制御、撮像した細胞CEの画像の解析なども行い、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yと検出系と解析系とを連動して制御している。
【0034】
透過光源23とインキュベータボックス100との間に、透過光源23から射出された光を細胞CEに集光するコンデンサレンズ34が配置されている。
なお、コンデンサレンズ34とインキュベータボックス100との間には、シャッタ35を設けなくても良いし、シャッタ35を設けても良い。
ファン24は保温箱21の壁面に配置されている。このファン24を動作させることにより、保温箱21内の空気を対流させ、保温箱21内の温度を均一かつ一定に保ちやすくすることができる。
【0035】
UVランプ25は、検出ユニット20の壁面に配置されたUVランプスイッチ36と接続され、UVランプ25とUVランプスイッチ36との間には、UVランプ25の動作を時間的に制御するタイマ37が配置されている。さらに、UVランプ25の点灯を表示する滅菌中表示ランプ(図示せず)が配置されている。
例えば、細胞CEの非測定時にUVランプスイッチ36が押されると、タイマ37のカウントが開始されるとともに、UVランプ25に電力が供給され、UV光(紫外線光)が保温箱21内に照射される。これと同時に滅菌中表示ランプも点灯する。そして、所定の時間(例えば30分)が経過して、タイマ37のカウントが終了すると、タイマ37はUVランプ25への電力供給を停止し、UV光の照射が終了される。また、滅菌中表示ランプも消灯される。
なお、UVランプ25は、主電源スイッチ28とは別個に制御されており、主電源がOFFされていても動作することができる。
なお、UVランプ25の点灯時間は、上述した30分でも良いし、保温箱21内の雑菌類を死滅させることができる時間であれば、30分未満でも良いし、30分よりも長くても良い。
【0036】
開閉扉27はアルマイト処理を施されたアルミなどの金属、または遮光性の高い半透明の樹脂により構成されている。開閉扉27の構造としては、中空の二重構造としたものや、さらには、内側が上記金属とされ外側が樹脂とされるものが考えられる。開閉扉27の外側に樹脂を用いることにより、開閉扉27から保温箱21内の熱が外部に逃げることを防止することができる。また、開閉扉27の内側をアルマイト処理された金属とすることにより、UVランプ25により開閉扉27の寿命が損なわれることを防止することができる。
なお、開閉扉27が金属または金属と樹脂との二重構造とされたときには、完全に遮光されるため、インキュベータボックス100を覗く位置に覗き窓を設けることが望ましい。覗き窓には透明樹脂またはガラスがはめ込まれ、外側には、開閉可能なカバーが配置されていることが望ましい。
【0037】
検出部40には、図1および図2に示すように、検出部40内を所定の温度に保温するヒータ40Hと、検出部40側から細胞CEを照射する落射光源41A、41Bと、落射光源41A、41Bからの光路を切り替える光路切替部42と、照射光の光量を調節する光量調整機構43と、照射光を細胞CEに向けて集光するレンズ系44と、照射光の波長および検出光の波長を制御するフィルタユニット45と、細胞CEに対して合焦動作を行うオートフォーカス(AF)ユニット46と、複数の倍率や性質の異なる対物レンズ(観察手段)48を備えたレボルバ47と、細胞CEからの検出光を検出する検出器49と、検出光の光量を測定する光量モニタ50と、検出部40内の温度を均一にするファン51と、検出部40内を冷却する冷却ファン52と、が備えられている。
【0038】
落射光源41A、41Bは、例えば水銀ランプなどからなり、検出部40の外部に配置されており、それぞれ電力を供給する電源53に接続されている。
また、通常は1つの落射光源、例えば落射光源41Aを用いるが、落射光源41Aの光量が所定の規定値以下に減少した場合には、落射光源41Bから照明光が照射され、落射光源41Aの電源はOFFされる。
【0039】
光路切替部42は、落射光源41Aまたは落射光源41Bどちらか一方の照明光を光量調整機構43に導くように形成されている。また、光路切替部42には、後述のコンピュータPCに接続され、コンピュータPCの指示に基づき光路切替部42を制御する光路制御部54が配置されている。
光路切替部42の照明光射出側にはシャッタ42Sが配置され、照明光の透過・遮断制御を行っている。
【0040】
シャッタ42Sの照明光射出側には光量調整機構43が配置され、シャッタ42Sを透過した照明光の光量を調整している。その機構としては、例えば公知の絞り機構などを用いても良いし、その他の光量を調節できる公知の機構、技術を用いても良い。
また、光量調整機構43には、後述のコンピュータPCに接続され、コンピュータPCの指示に基づき光量調整機構43を制御する光量制御部55が配置されている。
光量調整機構43の照明光射出側にはレンズ系44が配置されている。レンズ系44は、一対のレンズ44A、44Bと、レンズ44Aおよびレンズ44Bの間に配置された絞り44Cと、から構成されている。
【0041】
フィルタユニット45は、励起フィルタ56と、ダイクロイックミラー57と、吸収フィルタ58とから構成されている。励起フィルタ56は、照明光の中から細胞CEの蛍光発光に寄与する波長(励起光)を透過するフィルタであり、レンズ系44から射出された照明光が励起フィルタ56に入射するように配置されている。ダイクロイックミラー57は、励起光と蛍光とを分離する光学素子であり、励起フィルタ56を透過した励起光を、細胞CEに向けて反射するとともに、細胞CEからの蛍光を透過するように配置されている。吸収フィルタ58は、細胞CEからの蛍光とその他の不要な散乱光とを分離する光学素子であり、ダイクロイックミラー57を透過した光が入射するように配置されている。
フィルタユニット45には、後述するコンピュータPCの指示に基づき、フィルタユニット45から射出される励起光や検出光(蛍光)の波長を制御するフィルタ制御部46Cが配置されている。
なお、励起フィルタ56、ダイクロイックミラー57、吸収フィルタ58は1枚ずつ用いられてもよいし、複数枚用いられてもよい。
【0042】
AFユニット46はフィルタユニット45の励起光射出側に配置されていて、後述するコンピュータPCの指示に基づき、励起光を、対物レンズ48を介して細胞CEに集光させるように配置されている。
レボルバ47は、AFユニット46の励起光射出光側に配置されていて、倍率の異なる複数の対物レンズ48が配置されている。レボルバ47には、後述するコンピュータPCの指示に基づき、励起光が入射される対物レンズ48を選択・制御する対物レンズ制御部59が配置されている。
【0043】
なお、対物レンズ48は、検出部40からX軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yにそれぞれ設けられた孔を通して保温箱21内のインキュベータボックス内部が観察可能な構造になっている。
X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yには、ステージが動作する範囲を見込んで孔の大きさは多少余裕を見込んである。
そのため、保温箱21内において雰囲気を細胞の培養に適した湿度に保っていても、前記孔を通じて雰囲気が検出部40に対して抜けてしまい、細胞の培養に適した温度を維持できなくなり、細胞の活性低下を引き起こす可能性がある。
そこで、このような細胞培養に適した温度の雰囲気が保温箱21と検出部40との間で導通することを抑制する抑制手段99を設けてもよい。
その抑制手段99は、レボルバ47や対物レンズ48の動きを妨害しないように空気の流れを抑制できればよく、例えばフィルムや透明シートなど柔軟な材料からなるシートを保温箱21と検出部40との境目に設けられた孔の周囲に貼り付け、レボルバの周囲に垂らした状態で取り付ける幕状のものが考えられる。
【0044】
フィルタユニット45の検出光射出側には、検出光を検出器49および光量モニタ50に集光する集光レンズ60が配置されている。
集光レンズ60の検出光射出側には、検出光の一部を検出器49に向けて反射し、残りの検出光を光量モニタ50に向けて透過するハーフミラー61が配置されている。
検出器49は、ハーフミラー61から反射された検出光が入射される位置に配置されている。また、検出器49には、検出器49からの検出信号を演算して後述するコンピュータPCに出力する検出器演算部62が接続されている。
なお、検出器49はラインセンサを用いても良いし、エリアセンサを用いても良いし、ラインセンサとエリアセンサとを共用してもよく、特に限定するものではない。
光量モニタ50は、ハーフミラー61を透過した検出光を測定し、測定した値をコンピュータPCに出力するように配置されている。
なお、上述のように、光量モニタ50を用いて検出光の光量を測定しても良いし、照度計やパワーメータなどを用いて検出光の光量を測定しても良い。
【0045】
ヒータ40Hは、検出部40内を例えば30℃から37℃となるように保温制御している。ファン51は、検出部40内の空気を対流させ、検出部40内の温度を均一化するように配置されている。そのため、検出部40内の温度が保温箱21と近い温度に維持され、保温箱21の温度をより安定化させやすくなる。
冷却ファン52は、検出部40内に配置された温度センサ(図示せず)の出力に基づき、検出部40内の温度を下げるように駆動される。そのため、例えばモータなどの発熱による異常な検出部40内の温度上昇を防止することができる。
【0046】
図3は、本実施の形態に係るインキュベータボックスを示す斜視図である。
インキュベータボックス100は、図3に示すように、チャンバ(培養容器)130を格納する筐体101と、筐体101とともに密閉容器を形成するカバー102とから概略構成されている。
筐体101およびカバー102には、外界からの磁場を遮断する防磁処理や、インキュベータボックス100に発生した静電気を除去する静電除去処理が施されている。
【0047】
筐体101は、底板103と側壁104とから形成されていて、底板103の測定エリアに対応する領域は、ガラスのような透光性を有する材料で形成されている。底板103の他の領域および側壁104は、例えば、アルマイト処理されたアルミニウムやSUS316のようなステンレススチールなど防食性の高い遮光性の材料で制作するのが好ましく、より好ましくは、保温性の観点から熱伝導率の低い材料を選択するとよい。
また、底板103には、チャンバ130を保持するためのアダプタ105と、チャンバ130の温度を測定する温度センサ106と、が配置されている。なお、上述のようにアダプタ105を用いてチャンバ130を保持しても良いし、アダプタ105を用いないでチャンバ130を保持しても良い。
温度センサ106の出力は、インキュベータ温度検知部106Sを介してコンピュータPCに入力されるとともに、検出ユニット20の壁面に配置された温度表示部107にも入力されている。コンピュータPCは、図2に示すインキュベータ温度制御部106Cを介してヒータ21Hなどを制御して、インキュベータボックス100内の温度が一定に保たれるように制御するようになっている。
【0048】
カバー102は、照明光を透過するガラス板117と、ガラス板117を支持する支持部117Aと、から構成されている。ガラス板117には、測定エリアに対応する領域に反射防止膜が両面に形成されていても良い。反射防止膜を両面に形成することにより、透過観察・落射観察におけるガラス板117による反射を防止するようになっている。
なお、ガラス板117の面積は、インキュベータボックス100の底板103と略同じ面積であっても良いし、測定を問題なく行うために必要最小限の面積であっても良い。
【0049】
図4は、本実施の形態に係る培養容器を示す分解斜視図であり、図5は、本実施の形態に係る培養容器を示す断面図である。
チャンバ130は、図4および図5に示すように、チャンバ130の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部(外枠部材、培養容器本体)131と、細胞CEが播種されるスライドガラス(被播種部材)140と、外枠部131内に配置される中子(中枠部材)141と、外枠部131に取り付けられる蓋(蓋部材、培養容器本体)150と、から概略構成されている。
【0050】
外枠部131は、矩形状に配置された枠部側壁132と、底板開口部134が形成された底板133とから構成されている。外枠部131は、耐腐食性のある金属(例えばステンレススチール)などから形成されている。
枠部側壁132には、後述する継ぎ手143が配置されるU字型の溝部135が形成されているとともに、その上面(図中の上方向の面)には、ネジ穴136が形成されている。底板133には、後述するスライドガラス140より一回り小さな底板開口部134が形成されているとともに、スライドガラス140を支持する段差部(支持部)137が形成されている。段差部137は、スライドガラス140を図中の下側から支持するように形成されている。
スライドガラス140のチャンバ130内部となる面(図中の上面)には、細胞CEの接着を促すコーティング(例えばPLL(Poly−L−Lysine)コート等)が施されている。
【0051】
中子141は、矩形状の中子枠142と、中子枠142の対向する位置に配置された継ぎ手143と、中子枠142の上下面に配置されたOリング(シール部材)144とから構成されている。中子枠142および継ぎ手143は、細胞CEに対して無害な樹脂(例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂など)から形成されている。
継ぎ手143および中子枠142には、細胞CEを浸す培養液が流れる流路145が貫通して形成されている。中子枠142の上下面には、Oリング144を配置するための配置溝146が形成されている。Oリング144は、スライドガラス140と蓋150とに接触することで、スライドガラス140と中子141と蓋150とで密閉容器160を形成し、密閉容器160内に培養液を保持するように配置されている。
【0052】
蓋150は、照明光を透過する蓋ガラス151と、蓋ガラス151を支持するガラス支持部152とから形成されている。蓋ガラス151の外気と接する面(図中の上面)には、光の反射防止膜が形成されているとともに、培養液と接する面(図中の下面)には、高親水膜が形成されている。ガラス支持部152には、蓋150と外枠部131とを固定するネジ155用の貫通穴153が形成されている。
【0053】
培養ユニット70は、図1および図2に示すように、培養液を内部に収納する滅菌箱71と、培養ガスを生成する混合部90とから概略構成されている。
滅菌箱71には、滅菌箱71内を所定の温度に保温するヒータ71Hと、培養液を内部に蓄える培養液瓶72と、予備の培養液を内部に蓄える予備タンク73と、使用済みの培養液を入れる廃液タンク74と、滅菌箱71内を殺菌するUVランプ25と、培養液瓶72などを滅菌箱71から出し入れする際に用いる開閉扉75と、培養ユニット70の主電源をON・OFFする主電源スイッチ76が備えられている。
【0054】
培養液瓶72には、インキュベータボックス100との間で培養液を循環させる培養液循環配管77と、予備タンク73から予備の培養液を供給する補給配管78と、培養液瓶72から使用済みの培養液を廃液タンク74に排出する廃液配管79とが配置されている。
また、培養液循環配管77には、培養液を培養液瓶72からインキュベータボックス100に送り出し、培養液を循環させる培養液ポンプ(培養液交換手段)80が配置されている。培養液ポンプ80によりチャンバ130内の培養液を新しいものに交換することができるので、培養液を交換できないものと比較して、細胞CEの培養できる期間をより長くすることができる。
補給配管78には、予備タンク73から培養液を培養液瓶72に送る補給ポンプ81が配置され、廃液配管79には、培養液瓶72から使用済みの培養液を廃液タンク74に送る廃液ポンプ82が配置されている。
なお、上述のように、使用済みの培養液を貯める廃液タンク74を用いても良いし、廃液タンク74を用いないで、直接使用済みの培養液を外部に排出する排出ポートを設けても良い。
【0055】
培養液瓶72には、内部の培養液温度を検出する培養液温度センサ(図示せず)が配置され、培養液温度センサの出力は培養液温度検出部83を介してコンピュータPCに入力されるように配置されている。また、コンピュータPCに入力された培養液温度のデータは、テキストデータなどとしてメモリに蓄積され、細胞CEの検出結果との比較・検証などに用いることができる。
【0056】
ヒータ71Hには、コンピュータPCからの指示に基づき、滅菌箱71内の温度を介して培養液の温度を制御する培養液温度制御部84が配置されている。培養液温度制御部84により、培養液瓶72から供給される培養液の温度は、ほぼ37℃に保たれ、培養液の温度変化による細胞CEの活性低下が防がれている。また、培養ユニット70の壁面には、前述の培養液温度センサにより検出された培養液温度を表示する温度表示部85が配置されている。
培養液ポンプ80には、コンピュータPCの指示に基づき、培養液の循環を制御する培養液ポンプ制御部86が配置されている。また、補給ポンプ81および廃液ポンプ82もコンピュータPCの指示に基づき、その動作が制御されるように配置されている。
【0057】
UVランプ25は、培養ユニット70の壁面に配置されたUVランプスイッチ36と接続され、UVランプ25とUVランプスイッチ36との間には、UVランプ25の動作を時間的に制御するタイマ37が配置されている。さらに、UVランプ25の点灯を表示する滅菌中表示ランプ(図示せず)が配置されている。
なお、UVランプ25は、主電源スイッチ76とは別個に制御されており、主電源がOFFされていても動作することができるようになっている。
【0058】
混合部90には、図1および図2に示すように、混合部90内を所定の温度に保温するヒータ(図示せず)と、インキュベータボックス100に供給する培養ガス中の二酸化炭素ガス濃度を調節する培養ガス混合槽91と、培養ガス混合槽91に培養ユニット70の外部に配置されたCO2タンク92から二酸化炭素ガスを供給するCO2ポンプ93とが配置されている。
【0059】
培養ガス混合槽91には、内部の二酸化炭素ガス濃度を検出するCO2濃度検出部94が配置され、CO2濃度検出部94の出力がコンピュータPCに入力されるように配置されている。CO2ポンプ93には、コンピュータPCの指示に基づいて、培養ガス混合槽91に供給する二酸化炭素ガス量を制御するCO2濃度制御部95が配置されている。また、培養ユニット70の壁面には、CO2濃度検出部94により検出された培養ガス混合槽91内の二酸化炭素ガス濃度を表示するCO2濃度表示部96が配置されている。
さらには、培養ガス混合槽91と培養液瓶72との間に培養ガス供給配管97が配置されている。そのため、培養ガス供給配管97を介して培養液に培養ガスが供給され、培養液中に培養ガスを十分に溶け込ませることができる。このように、培養液瓶72内で二酸化炭素ガスの濃度が5%の培養ガスが溶解された培養液を生成することにより、培養気体および細胞CEの育成に必要な栄養素が含まれた培養液が、後述するチャンバ130に供給される。また、培養ガスを培養液に溶解させることにより、培養液のpHなどを調整することができる。
CO2濃度検出部94からコンピュータPCに入力された二酸化炭素ガス濃度は、メモリにデータとして蓄積されるとともに、コンピュータPCにおいてデータ処理が可能とされている。
【0060】
次に、上記の構成からなるチャンバ130における細胞CEの播種および培養について図4および図5を参照して説明する。
最初に、スライドガラス140への細胞CEの播種、接着が行われる。
具体的には、まず、スライドガラス140をディッシュなどに入れ、細胞CEをスライドガラス140に播種する。そして、細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータ(上述のインキュベータ100とは異なるものでもよい)内にて培養される。
細胞CEがスライドガラス140に接着されたら、ディッシュからスライドガラス140を引き上げ、PLLコートなどが施され、細胞CEが接着した面以外の面に付着した培養液を十分に除去する。
【0061】
次に、細胞CEが接着されたスライドガラス140を用いて、チャンバ130が形成される。
まず、細胞CEが接着された面がチャンバ130の内側になるように、スライドガラス140を段差部137の上に配置し、継ぎ手143が溝部135に配置されるように中子141を外枠部131内に配置する。そして蓋150をネジ155により外枠部131に固定し、チャンバ130が形成される。
その後、継ぎ手143に培養液循環配管77などを接続して培養液を、流路145を通じてチャンバ130に供給し、細胞CEを培養し、所定のタイミングで細胞CEの観察を行う。
【0062】
次に、上記の構成からなる生体試料観察システム10における観察方法について説明する。
まず、本実施の形態における走査方法および検出範囲の選択について図6(a)、(b)、(c)、(d)を参照して説明する。
図6(a)、(b)、(c)、(d)は、本実施の形態における走査方法および検出範囲の選択例を示す図である。
【0063】
図6(a)に示す例では、表示された画像上において測定対象範囲Mの左上の点aと右下の点bとを指定することにより、測定対象範囲M(図中の破線で囲まれた範囲)を設定している。具体的には、点a−点b間をマウスのような機器を用いてドラッグして測定対象範囲Mを設定しても良いし、点aおよび点bの座標値を入力して指示しても良い。
検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、設定された測定対象範囲M内を左右方向に走査される。つまり、図中の左から右へ走査される際には、X軸方向と平行に走査され、右から左へ走査される際には、左斜め下方向に走査される。このうち、左から右へ走査される時に細胞CEの撮像が行われる。
【0064】
図6(b)は、上述した方法で設定される測定対象範囲Mが2つの例である。まず、上述した方法で2つの測定対象範囲MA、MBが設定される。測定対象範囲MAと測定対象範囲MBとは、図中のX軸方向に所定間隔を空けて並ぶとともに、Y軸方向において、その全てが重複するように設定されている。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBを並列に測定するように走査される。つまり、図中の左から右へ走査される際に、測定対象範囲MAから測定対象範囲MBへ走査され、右から左へ走査される際には、測定対象範囲MBから測定対象範囲MAへ走査される。
【0065】
図6(c)は、上述した方法で設定される測定対象範囲が2つの例であって、2つの測定対象範囲MA、MBの配置が異なっている例である。ここでは、測定対象範囲MAと測定対象範囲MBとは、図中のX軸方向に所定間隔を空けて並ぶとともに、図中のY軸方向において、その一部分が重複するように設定されている。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBのY軸方向に重複する部分のみが連続して走査されている。つまり、まず、測定対象範囲MAの重複していない部分の走査が行われる。次に、測定対象範囲MA、MBの重複している部分の走査が連続して行われる。そして、測定対象範囲MBの重複していない部分の走査が行われる。
【0066】
図6(d)は、上述した方法で設定される測定対象範囲Mが2つの例であって、2つの測定対象範囲MA、MBの配置が図6(b)と同様であるが、走査方法が異なる例である。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBが別個に走査されている。つまり、まず測定対象範囲MAの全範囲の走査が行われた後に、測定対象範囲MBの全範囲の走査が行われる。
【0067】
また、上述した図6(a)、(b)、(c)、(d)に示す走査方法のうち、トータルの移動距離または走査時間が最短になる走査方法が、後述する設定されたパラメータおよび測定モードに基づいて、コンピュータPCにより自動的に選択される。
【0068】
なお、細胞を培養する範囲を撮像するとき、このように測定対象範囲Mを設定するなど複数の領域(検出範囲)に分けて撮像できる構成であれば、必要に応じて必要な部分だけの撮像を行うことが可能となる。
例えば、コンピュータPCの設定を変更して、走査対象となる全範囲の走査と、所定の一部の領域の走査とが交互に行われるようにしておけば、短い期間しか起こらない生体試料特有の現象を捉えることができる。一例として、走査対象となる全範囲の走査を30分ごとに行う場合、その合間に注目すべき細胞が存在する所定の測定対象範囲Mの走査が行われるようにしておけば、15分程度しか発現しない特有の現象が注目すべき細胞に起こったことを捉えることも可能となる。
また、必要なときに必要な測定対象範囲Mだけを走査するため、走査時間が短縮できるとともに、他の細胞に対する光の照射時間を短くすることができる。
【0069】
次に、細胞CEの測定にかかる手順にについて、各フローチャートを用いながら説明する。
まず、細胞CEの測定の前に、測定パラメータの設定が行われる。そこで、測定パラメータの設定の流れを、図7を参照しながら説明する。
図7は、測定パラメータの設定の流れを説明するフローチャートである。
まず、測定パラメータの設定が行われる(STEP1)。
その後、デフォルトの条件設定が行われる(STEP2)。ここで設定される条件は、例えばCO2濃度5%、温度37℃などの培養条件および測定条件であり、これらの設定条件はユーザによって所定の条件に変更することができる。
【0070】
次に、測定対象の選択を行う(STEP3)。測定対象とは、例えばマイクロプレート120や、スライドガラス116など、細胞CEの容器である。
次に、測定モードの選択を行う(STEP4)。測定モードには、エリア撮像モードや、ライン撮像モードや、自動モード等がある。自動モードとは他の測定モードの中から測定時間の短い測定モードを自動的に選択するモードである。
【0071】
次に、測定倍率を選択し(STEP5)、その後、検出波長を選択する(STEP6)。測定倍率の選択、および検出波長の選択は、それぞれ2種類以上の選択肢の中から選択することも可能である。
ここで、検出波長の選択方法としては、使用する蛍光タンパク、例えば、GFP、HC−Red等のリストをコンピュータPCに予め記憶させておき、記憶させたリストの中から選択する。コンピュータPCは、選択された蛍光タンパクに基づいて自動的に観測に最適な励起フィルタ56や吸収フィルタ58などを選択する。このようにして、細胞CEから所定の蛍光を検出することができる。
なお、測定中の励起フィルタ56や吸収フィルタ58、対物レンズ48等の変更は、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yの駆動に同期して自動的に行なわれる。
【0072】
次に、測定間隔が設定される(STEP7)。
そして、プレビュー画面が取り込まれ(STEP8)、プレビュー画像がモニタに表示される(STEP9)。ここでは、ユーザがプレビュー画像のモニタへの表示を指示するプレビューボタンなどを用いて指示を出すことにより、プレビュー画像がモニタに表示される。そして、ユーザがモニタに表示されたプレビュー画像を確認することができる。
【0073】
次に、測定範囲の選択が行われる(STEP10)。測定範囲の選択後、再度プレビュー画像をモニタに表示させて、測定範囲が所定の範囲であるか確認してもよい。
次に、設定された複数の測定間隔から所定の測定間隔を選択する(STEP11)。
そして、測定開始スイッチ(図示せず)が押されたら(STEP12)、細胞CEの測定が開始される(STEP13)。測定開始スイッチが押されない場合には、測定開始スイッチが押されるまで待機している(STEP12)。
【0074】
なお、STEP12において、測定開始スイッチが押されない場合には、各種設定を再設定できるように、種々のSTEPに戻ることが可能な設定にしてもよい。
【0075】
測定パラメータの設定が完了したら、次に、細胞CEの測定が行われる。そこで、細胞CEの測定の流れを、図8を参照しながら説明する。
図8は、測定の流れを説明するフローチャートである。
まず、測定が開始されると、測定対象範囲が読み込まれる(STEP21)。その後、倍率が読み込まれ(STEP22)、検出波長が読み込まれる(STEP23)。
次に、測定モードが読み込まれる(STEP24)。ここでは、読み込まれた測定対象範囲、倍率、検出波長(蛍光波長)などに基づき、最適なステージ走査方法が決定される。測定モードが自動モードに設定されている場合には、撮像モードもここで決定される。
【0076】
次に、決定されたステージ走査方法に応じたX軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Y等の動作方法が解析され(STEP25)、解析された動作方法のデータ(動作データ)は、コンピュータPCのテーブルに保存される(STEP26)。
その後、エリアセンサモードが選択されているか否かにより、異なる測定方法で測定が行われる(STEP27)。
【0077】
まず、エリアセンサモードが選択されている場合について説明する。
測定開始スイッチが押されると、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置へ移動させる(STEP30)。ここでは、コンピュータPCが入力された測定開始位置を読み込み、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置に移動させるとともに、細胞CEが対物レンズ48の撮影視野内に位置するように移動される。
そして、シャッタ35がOPENにされて(STEP31)、対物レンズ48が選択される(STEP32)。ここでは、コンピュータPCが設定された測定倍率に基づいて、レボルバ47を駆動して所定の倍率の対物レンズ48を選択する。
【0078】
次に、フィルタユニット45が選択される(STEP33)。ここでは、コンピュータPCが設定された蛍光タンパクに基づいて、フィルタ制御部46Cが測定に最適な励起フィルタ56、吸収フィルタ58などを選択する。
以上の測定開始スイッチが押されてからここまで(STEP30からSTEP33まで)の動作は、測定モードに併せて自動で選択され、実行される。
その後、フォーカス位置が検出され(STEP34)、画像の取り込みおよびコンピュータPCの画像メモリ部への画像データ出力が行われる(STEP35)。
【0079】
そして、必要な画像の取得が完了していなければ、再び対物レンズ48の選択(STEP32)から画像の取り込みおよびコンピュータPCの画像メモリ部への画像データ出力(STEP35)までの動作が、必要な画像の取得が完了するまで繰り返される(STEP36)。
必要な画像の取得が完了すると、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが1ステップ駆動される(STEP37)。そして、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが移動した位置が測定対象範囲内であれば、再び対物レンズ48の選択(STEP32)から1ステップステージ駆動(STEP37)までの動作が繰り返される。この繰り返し作業は、ステージ22の移動した位置が測定対象範囲外になるまで繰り返される(STEP38)。
【0080】
X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yの移動先が測定対象範囲外となると、シャッタ35がOFFされる(STEP39)。
その後、所定の測定時間間隔になると、再びシャッタ35がOPEN(STEP31)にされてからシャッタ35がCloseされる(STEP39)までの動作が、測定時間が終了するまで繰り返される(STEP40)。
【0081】
次に、エリアセンサモードが選択されていない場合について説明する。
測定開始スイッチが押されると、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置へ移動させる(STEP50)。ここでは、コンピュータPCが入力された測定開始位置を読み込み、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置に移動させるとともに、細胞CEが対物レンズ48の撮影視野内に位置するように移動される。
そして、シャッタ35がOPENにされて(STEP51)、フォーカス位置が検出される(STEP52)。
【0082】
次に、対物レンズ48が選択される(STEP53)。ここでは、コンピュータPCが設定された測定倍率に基づいて、レボルバ47を駆動して所定の倍率の対物レンズ48を選択する。
そして、フィルタユニット45が選択される(STEP54)。ここでは、コンピュータPCが設定された蛍光タンパクに基づいて、フィルタ制御部46Cが測定に最適な励起フィルタ56や吸収フィルタ58などを選択する。これら測定開始スイッチが押されてからここまで(STEP50からSTEP54まで)の動作は、測定モードに併せて自動で選択され、実行される。
【0083】
その後、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yの駆動が開始され(STEP55)、画像の取り込みおよびコンピュータPCのメモリ部への画像データ出力が行われる(STEP56)。
そして、必要な画像の取得が完了していなければ、再び対物レンズ48の選択(STEP53)から画像の取り込みおよびコンピュータPCのメモリ部への画像データ出力(STEP56)までの動作が繰り返され、必要な画像の取得が完了するまで繰り返される(STEP57)。
【0084】
必要な画像の取得が完了すると、シャッタ35がCloseされる(STEP58)。
その後、所定の測定時間間隔になると、再びシャッタ35がOPEN(STEP51)にされてからシャッタ35がCloseされる(STEP58)までの動作が、測定時間が終了するまで繰り返される(STEP59)。
【0085】
細胞CEの撮像が終了すると、次には撮像された画像の処理が行われる。そこで、撮像された画像の処理方法について、図9を参照しながら説明する。
図9は、画像の処理方法を説明するフローチャートである。
まず、コンピュータPCの画像処理部は、メモリ部に蓄積された撮像画像から、背景画像を抽出する(STEP71)と共に、撮像画像から背景画像(バックグラウンド)を除去する(STEP72)。
次に、強調できる画像の最大輝度範囲を読み込み(STEP73)、最大輝度範囲に応じて、例えば所定係数を掛けて画像を強調する(STEP74)。これらの処理により、バックグラウンドを除去した画像から1つ1つの細胞CEを粒状に認識し易いように画像が強調される。
【0086】
そして、強調された画像から、例えば所定の閾値以上の輝度を有する部分を抽出することで、細胞CEの1つ1つの輝度を明確な粒状として認識する(STEP75)。
次に、細胞CEの重心位置や面積等の幾何学的特徴量や、化学的特徴量や、蛍光輝度等の光学的特徴量をより正確に認識するとともに、細胞CEの位置情報とも関連付けて抽出する(STEP76)。これら特徴量を抽出することにより、1つ1つの細胞CEを識別することができる。
細胞CEの特徴量を抽出した後、細胞CEを認識するために行った強調作業(STEP74)の補正を行う(STEP77)。この補正により、画像の強調のために用いられた所定係数の影響が除去される。
次に、補正後の特徴量を、例えばファイルに出力するとともにそのファイルに蓄積する(STEP78)。
【0087】
そのため、コンピュータPCの画像処理部は、スライドガラス、マイクロプレートなどの全面の各位置における細胞CEの蛍光量分布等を画像化することができる。また、画像処理部は、1つ1つの細胞CEを正確に追跡可能であるので、例えば、所定の数の細胞CEだけに注目し、培養を行いながら細胞CE内部の蛍光分布を局所的に長時間測定することも可能である。更に、細胞CEを培養しながら、例えば、一定時間毎にスライドガラスや、マイクロプレートなどの全面を測定し、時間経過に対する細胞CEの蛍光量を自動測定することも可能である。
【0088】
次に、撮像画像から細胞CEの特徴量などのデータが抽出された後に行われるデータ処理について、図10を参照しながら説明する。
図10は、データ処理の流れを説明するフローチャートである。
ここでは、コンピュータPCのデータ処理部によって、ファイル内に蓄積された細胞CEのデータ(特徴量)の処理が行われる。
まず、データ処理部は、ファイル内に蓄積された細胞CEの生データ(特徴量)を読み込む(STEP81)とともに、細胞CEごとに時系列に並ぶようにデータの並べ替えが行われる(STEP82)。データが並べ替えられると、データ処理部は、細胞CEごとに輝度、すなわち発現量の経時的変化をグラフ化する(STEP83)。
グラフ化が完了すると、データ処理部は、グラフをプレビュー表示し(STEP84)、グラフ化データをファイルに出力する(STEP85)。
【0089】
この処理を行うことにより、細胞CEを長期間培養した場合における1つの細胞の経時的変化を容易に観察することができる。従って、培養中の時間経過に伴う細胞CEの発現量の変化等を正確、かつ容易に測定することができる。
【0090】
次に、細胞CEの測定時に行われる照射光量の調整について、図11を参照しながら説明する。
図11は、光量の調整の流れを説明するフローチャートである。
まず、細胞CEに照射される照射光量が測定される(STEP91)。照射光量は、光量モニタ50の出力から算出されてもよいし、照度計を設けて測定しても良いし、パワーメータを設けてパワーメータの出力から算出してもよい。
【0091】
測定された照射光量が許容範囲内であれば、再び照射光量の測定(STEP91)に戻り、照射光量が許容範囲外になるまで繰り返される(STEP92)。
照射光量が許容範囲外になると、光量調整機構43に含まれるNDフィルタ(図示せず)が交換され(STEP93)、照射光量が許容範囲内になるように調節される。その後、再び照射光量の測定(STEP91)に戻り、照射光量の調節が繰り返される。
【0092】
次に、チャンバ130への培養液の補給・交換の制御方法を、図12を参照しながら説明する。
図12は、培養液の補給・交換方法を説明するフローチャートである。
まず、撮像された画像のバックグラウンド(背景)値が解析される(STEP101)。撮像された画像のバックグラウンドには培養溶液の自家蛍光が撮像されており、この培養溶液の自家蛍光の輝度が解析される。
ここで、培養液は古くなるほど自家蛍光の輝度が高くなるため、自家蛍光の輝度を測定することにより、培養液の交換時期を検出することができる。
【0093】
そして、解析されたバックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値以内であれば、再びバックグラウンド値の解析(STEP101)に戻り、バックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値より大きくなるまで繰り返される(STEP102)。
バックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値より大きくなると、培養液の廃液ポンプ82が駆動され(STEP103)、次いで培養液の補給ポンプ81が駆動される(STEP104)。
【0094】
なお、培養液の補給・交換の時期は、上述のように、培養液の自家蛍光により決定しても良いし、連続して行ってもよいし、予めユーザが指定した時間間隔で自動的に補給・交換を行っても良いし、予め登録されているテーブルから細胞CEを選択することにより、適宜、培養液の交換時期を指定できるようにしてもよい。また、交換する量もユーザが設定しても良いし、培養液の自家蛍光により決定してもよいし、チャンバ130内の培養液を一括して全て交換してもよいし、予め登録されているテーブルから細胞CEを選択することにより、適宜、培養液の交換量を指定できるようにしてもよい。
重量などで換算して自動で設定しても良い。
なお、本実施の形態においては、撮像された画像を用いてバックグラウンドの自家蛍光の値を検出しているが、この検出は細胞CEが存在しない場所を撮像した画像から検出しても良いし、培養液瓶72近傍に例えば光学的検出器を設けて検出してもよい。
上述したような測定手順により、図13に示すような、1つ1つの細胞の経時的位置変化を表した細胞追跡画像を取得できる。
【0095】
上記の構成によれば、チャンバ130のうち、細胞CEが播種されるスライドガラス140のみを交換することで、異なる種類の細胞CEを観察することができる。そのため、チャンバ130ごと交換する場合と比較して、観察に要するコストを低減することができる。また、播種された細胞CEを取り除く場合と比較して、観察に要する手間を省くことができる。
スライドガラス140は、中子141を介して段差部137と蓋150とにより挟まれ・保持されているので、蓋150を取り付け・取り外しすることにより、スライドガラス140を容易に交換することができる。
【0096】
スライドガラス140と中子141との間、および中子141と蓋150との間は、Oリング144により密閉されているため、スライドガラス140と中子141と蓋150とで密閉容器160を形成することができる。そのため、密閉容器160内に細胞CEを培養する培養液を保持することができ、細胞CEを長期間培養し、長期間にわたる観察を行うことができる。
さらに、継ぎ手143を介して細胞CEに培養溶液を供給することできるため、細胞CEをチャンバ130内で長期間培養することができ、細胞CEを長期間観察することができる。
【0097】
また、対物レンズ48がスライドガラス140のみを介して細胞CEを観察するため、例えばチャンバの容器とスライドガラスとを介して観察する場合と比較して、より微弱な光を観察することができる。つまり、対物レンズ48と細胞CEとの距離がより短くなるため、より焦点距離の短い高NA対物レンズを用いて観察することができ、より微弱な光を観察することができる。
【0098】
また、スライドガラス140に細胞CEを播種してからチャンバ130の組み立てを行うため、スライドガラス140への細胞CEの播種を、細胞CEの播種に適した環境下で行えるので、細胞CEをスライドガラス140へより確実に接着させることができる。
【0099】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図14を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図14を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図14は、本実施の形態に係るチャンバの断面図である。
なお、同一構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0100】
チャンバ(培養容器)230は、チャンバ230の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部(外枠部材、培養容器本体)231と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部231に取り付けられる蓋150と、外枠部231の上面に配置されたOリング244とから概略構成されている。
外枠部231は、矩形状に配置された枠部側壁232と、底板開口部134が形成された底板233とから構成されている。外枠部231は、細胞CEに対して毒性のない樹脂(例えばPEEK樹脂など)から形成されている。
枠部側壁232には、継ぎ手243が形成されているとともに、その上面にはネジ穴(図示せず)が形成されている。また、枠部側壁232の上面には、Oリング244を配置するための配置溝246が、ネジ穴よりも内側に形成されている。継ぎ手243および枠部側壁232には、培養液が流れる流路245が貫通して形成されている。底板233には底板開口部134が形成されているとともに、スライドガラス140を支持する段差部137が形成されている。
【0101】
次に、上記の構成からなるチャンバ230における細胞CEの播種および培養について図14を参照しながら説明する。
最初に、細胞CEが播種されていないスライドガラス140を外枠部231に取り付ける。スライドガラス140は、PLLコートなどが施された面がチャンバ230の内側に向くように、段差部137の上に配置される。スライドガラス140と段差部137とは、例えば両面テープやシリコンなど、剥離の容易な接着部材(接着材)Gなど、細胞CEに対して毒性のない接着剤により接着されている。
【0102】
次に、スライドガラス140および外枠部231が滅菌される。そして、継ぎ手243がキャップ(図示せず)により塞がれ、スライドガラス140上に細胞CEが播種されるとともに、培養液が所定量供給される。
この状態で外枠部231の上に蓋150が乗せられ、細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータ(上述のインキュベータ100とは異なるものであってもよい)内にて培養される。
【0103】
細胞CEがスライドガラス231に接着したら、継ぎ手243のキャップをはずし、培養液循環配管77などを接続する。そして、ネジ155を用いて、蓋150を外枠部231に固定し、密閉容器160を形成する。密閉容器160が形成されたら、培養液を供給して密閉容器160内から空気を追い出し、培養液で満たし、所定のタイミングで細胞CEの観察を行う。
【0104】
上記の構成によれば、接着部材(接着材)Gを用いることにより、スライドガラス140を容易に外枠部231に貼り付けることができ、チャンバ230の密閉容器160を容易に構成することができる。
また、スライドガラス140を外枠部231に貼り付けた後に細胞CEを播種しているため、細胞CEが播種されたスライドガラス140を移動させる必要がなく、移動による細胞CEへのダメージを防止することができる。
【0105】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図15および図16を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図15および図16を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図15は、本実施の形態に係るチャンバの分解斜視図である。
なお、同一構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0106】
チャンバ(培養容器)330は、図15に示すように、チャンバ330の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部131と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部131内に配置される中子(中枠部材)341と、外枠部131に取り付けられる蓋150とから概略構成されている。
【0107】
図16(a)は中子の斜視図であり、図16(b)は中子の断面図である。
中子341は、図15および図16(a)、(b)に示すように、矩形状の中子枠142と、中子枠142の対向する位置に配置された継ぎ手143と、中子枠142の上下面に配置されたOリング144とから構成されている。中子枠142および継ぎ手143は、細胞CEに対して無害な樹脂(例えばPEEK樹脂など)から形成されている。
一対の継ぎ手143の内、培養液がチャンバ330に流入する継ぎ手143およびその継ぎ手143が配置された中子枠142には、図16(b)に示すように、培養液が流れる流路345が貫通して形成されている。流路345は、中子枠142内で外側から内側に向けて複数に分岐して形成されている。
他方の継ぎ手143および中子枠142には、第1の実施の形態と同様に、1本の流路145が形成されている。
【0108】
上記の構成によれば、複数に分岐した流路345により、密閉容器160内に培養溶液を均一に流入させることができるため、培養溶液流れが澱む領域の発生を防止することができる。澱みの発生を防止することにより、細胞CEへの栄養等の供給不均一を防止することができ、細胞CEを均一に培養することができる。
【0109】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図17および図18を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第3の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図17および図18を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図17は、本実施の形態に係るチャンバの分解斜視図である。
なお、同一構成要素については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0110】
チャンバ(培養容器)430は、図17に示すように、チャンバ430の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部131と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部131内に配置される中子(中枠部材)441と、外枠部131に取り付けられる蓋150とから概略構成されている。
【0111】
図18(a)は中子の分解斜視図であり、図18(b)は分離中子の断面図である。
中子441は、図17および図18(a)、(b)に示すように、矩形状の中子枠442と、中子枠442の対向する位置に配置された継ぎ手143と、中子枠442の上下面に配置されたOリング144とから概略構成されている。
中子枠442には、図18(a)に示すように、挿入口450が形成されるとともに、挿入口450に対して着脱可能に構成された分離中子(流路形成部)451が配置されている。
挿入口450には、後述する分離中子451のフック453と噛み合う係止部(図示せず)が形成されている。
【0112】
分離中子451には、一対の継ぎ手143の内、一方の継ぎ手143が配置されているとともに、分離中子451と中子枠442との間の水密を保つOリング452が配置されている。また、分離中子451には、分離中子451を中子枠442に着脱可能に係止する一対のフック453が備えられている。
さらに、図18(b)に示すように、分離中子451には、継ぎ手143と略直交して貫通孔454が形成されるとともに、貫通孔451を分岐流路として、流路445が分離中子451の外側から内側にむけて複数に分岐して形成されている。貫通孔454の両端には、培養液の流出を防ぐ栓455が着脱可能に配置されている。
【0113】
上記の構成によれば、分離中子451のみを取り替えることができるので、細胞CEの観察に要する手間およびコストを低減することができる。つまり、培養液などの付着物が形成されやすい流路445を分離中子451ごと取り替えることにより、この付着物の洗浄の手間を省くことができる。また、分離中子451のみを取り替えることにより、中子441全体を取り替える場合と比較して、取替えに要するコストを低減することができる。
流路445の分岐部を貫通孔451および栓455で形成することにより、分岐部を洗浄し易くすることができる。つまり、栓455を取り外すことにより、貫通孔451の洗浄性を向上させることができる。
【0114】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図19および図20を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図19および図20を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図19は、本実施の形態に係るチャンバの分解斜視図であり、図20は、本実施の形態に係るチャンバの断面図である。
【0115】
チャンバ(培養容器)530は、図19および図20に示すように、チャンバ530の外側側壁および底面の一部を形成する外枠部131と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、外枠部131内に配置される中子141と、外枠部131に取り付けられる内蓋(内蓋部材)531と、外枠部131に取り付けられる蓋150とから概略構成されている。
内蓋531は、略中央に開口部532が形成された板状部材からなり、内蓋531を外枠部131に着脱可能に係止する、少なくとも一対のフック533が配置されている。また、内蓋531には、蓋150を外枠部131に固定するネジ155が挿通する貫通穴534が形成されている。
開口部532はOリング144よりも一回り小さく形成され、内蓋531がOリング144に接触するように形成されている。
【0116】
次に、上記の構成からなるチャンバ530における細胞CEの播種および培養について図19および図20を参照して説明する。
まず、PLLコートを施した面がチャンバ530の内側になるように、スライドガラス140を段差部137の上に配置し、継ぎ手143にキャップ(図示せず)をかぶせ、培養液の流出を防止する。そして、継ぎ手143が溝部135に配置されるように中子141を外枠部131内に配置し、内蓋531をフック533により外枠部131に固定する。
【0117】
次に、スライドガラス140に細胞CEを播種し、培養液をチャンバ530内に適量供給する。その後、蓋150を内蓋531の上に置き、細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータボックス内で培養する。
スライドガラス140に細胞CEが接着したら、まず、継ぎ手143のキャップを外し、培養液循環配管77などを接続する。次に、蓋150を外枠部131に固定してチャンバ530内を密閉し、培養液を供給してチャンバ530内の空気を追い出し、所定のタイミングで細胞CEの観察を行う。
【0118】
上記の構成によれば、スライドガラス140が、中子141を介して段差部137と内蓋531とにより挟まれ・保持されているため、内蓋531を外枠部131に取り付け・取り外すことにより、スライドガラス140のみを交換することができる。
また、スライドガラス140と中子141との間、および中子141と内蓋531との間は、Oリング144により密閉されているため、スライドガラス140と中子141と内蓋531とにより、開口部532において開放された空間を形成することができる。そのため、空間内に細胞CEを培養する培養液を保持するとともに開口部532を介して換気を行うことができ、細胞CEを長期間培養することができる。
さらに、蓋150を取り付けることにより、スライドガラス140と中子141と内蓋531と蓋150とで密閉容器160を形成することができ、観察時などにおける、細胞CEのへのコンタミネーションを防止することができる。
【0119】
〔第6の実施の形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図21から図24を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、チャンバの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図21から図24を用いてチャンバ周辺のみを説明し、培養ユニット等の説明を省略する。
図21は、本実施の形態に係るチャンバの斜視図であり、図22は、本実施の形態に係るチャンバの断面図である。
【0120】
チャンバ(培養容器)630は、図21および図22に示すように、チャンバ630の外側側壁を形成する枠部631と、細胞CEが播種されるスライドガラス140と、枠部631の上部を覆う上部ガラス板632とから概略構成されている。
枠部631には、枠部631の対向する位置に継ぎ手143が配置されるとともに、一対の継ぎ手143の内、培養液が流入する継ぎ手143側に整流子633が配置されている。継ぎ手143は、枠部631の上側(図中の上方向)にオフセットして配置されている。
【0121】
整流子633は、複数の四角柱状を平行に並べた整流部634と、複数の整流部634と繋ぐとともに整流部634を枠部631に繋ぐ連結部635とから形成されている。連結部635は、整流部634の上端を繋ぐように配置されてもよいし、整流部634の上下端を繋ぐように配置されていてもよい。
なお、整流子633は、上述のように、複数の四角柱状を平行に並べて構成してもよいし、図23に示すように、複数の四角柱状をクロス状に交差させて配置してもよい。また、四角柱状の柱から形成されてもよいし、円柱状の柱、三角柱状の柱などから形成されてもよい。
【0122】
次に、上記の構成からなるチャンバ630における細胞CEの播種および培養について説明する。
図24(a)は、本実施の形態におけるチャンバへの細胞の播種を説明する図であり、図24(b)は、本実施の形態におけるチャンバへの細胞の培養を説明する図である。
【0123】
本実施の形態においては、チャンバ630は予め形成されていて、形成されたチャンバ630内に細胞CEの播種が行われ、さらに培養が行われる。
まず、図24(a)に示すように、継ぎ手143にチューブ636を挿し、細胞浮遊液を保持した注入器(例えばシリンジやピペットなど)637をチューブ636に接続する。そして、図24(b)に示すように、細胞浮遊液をチャンバ630内に供給し、継ぎ手143からチューブを外してキャップ638を取り付ける。
【0124】
培養液の供給量は、チャンバ630内の培養液液面が継ぎ手143の流路145より下となる量であることが望ましい。
キャップ638には、二酸化炭素を透過するフィルタ639が設けられ、継ぎ手143にキャップ638を付けてもチャンバ630内に二酸化炭素が供給することができる。
その後、浮遊している細胞CEがスライドガラス140に接着するまでインキュベータボックス内で培養される。
【0125】
上記の構成によれば、細胞CEを培養液とともにチャンバ630内に供給するため、例えばチャンバが構成された状態でも、細胞CEの播種を容易に行うことができる。
また、継ぎ手143にキャップ638を付けるため、供給された培養液が流路145から流出することなく、細胞CEの培養を容易に行うことができ、スライドガラス140に接着させることができる。
枠部631に整流子633を配置しているため、チャンバ630内に流入する培養液の流れを均一化することで、細胞CEへの栄養等の供給を均一にして細胞CEを均一に培養することができる。
【0126】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、蛍光強度を検出する構成に適応して説明したが、この蛍光強度を検出する構成に限られることなく、細胞の形態変化等、その他各種の指標を検出する構成に適応することができるものである。
また、細胞を観察する構成に限られることなく、細菌類や微生物、卵などの種々の生体試料を観察する構成に適応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明による第1の実施形態に係る生体試料観察システムの斜視図である。
【図2】同、生体試料観察システムのシステム構成を示す概略図である。
【図3】同、インキュベータボックスを示す斜視図である。
【図4】同、培養容器を示す分解斜視図である。
【図5】同、培養容器を示す断面図である。
【図6】同、走査方法および検出範囲の選択例を示す図である。
【図7】同、測定パラメータの設定の流れを示すフローチャートである。
【図8】同、測定の流れを示すフローチャートである。
【図9】同、画像の処理方法を示すフローチャートである。
【図10】同、データ処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】同、光量の調整の流れを示すフローチャートである。
【図12】同、培養液の補給・交換方法を示すフローチャートである。
【図13】細胞の経時変化を表した細胞追跡画像を示す図である。
【図14】本発明による第2の実施形態に係るチャンバの断面図である。
【図15】本発明による第3の実施形態に係るチャンバの分解斜視図である。
【図16】同、中子の斜視図および断面図である。
【図17】本発明による第4の実施形態に係るチャンバの分解斜視図である。
【図18】同、中子の分解斜視図および断面図である。
【図19】本発明による第5の実施形態に係るチャンバの分解斜視図である。
【図20】同、チャンバの断面図である。
【図21】本発明による第6の実施形態に係るチャンバの斜視図である。
【図22】同、チャンバの断面図である。
【図23】同、整流子の別の実施例を示す図である。
【図24】同、チャンバへの細胞の播種および培養を説明する図である。
【符号の説明】
【0128】
10 生体試料観察システム
48 対物レンズ(観察手段)
130、230、330、430、530、630 チャンバ(培養容器)
131、231 枠部(外枠部材、培養容器本体)
137 段差部(支持部)
140 スライドガラス(被播種部材)
141、341、441 中子(中枠部材)
144 Oリング(シール部材)
145、345 流路
150 蓋(蓋部材、培養容器本体)
160 密閉容器
451 分離中子(流路形成部)
531 内蓋(内蓋部材)
532 開口部
CE 細胞(生体試料)
G 接着部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器であって、
生体試料が播種される被播種部材と、該被播種部材を着脱可能に取り付ける培養容器本体とを備える細胞培養容器。
【請求項2】
前記被播種部材が接着部材を用いて前記培養容器本体に貼り付けられている請求項1記載の細胞培養容器。
【請求項3】
前記培養容器本体内に、前記生体試料を浸す培養液を流入および流出させる流路が設けられている請求項1または請求項2に記載の細胞培養容器。
【請求項4】
前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材の内側に配置される中枠部材と、前記外枠部材に固定される蓋部材とを備え、
前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、
前記中枠部材に、前記被播種部材および前記蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および蓋部材と接触するシール部材が設けられ、
前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記蓋部材とを配置し、前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材および前記蓋部材により密閉容器を構成する請求項1に記載の培養容器。
【請求項5】
前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材に取り付けられる内蓋部材と、該内蓋部材を介して前記外枠部材に取り付けられる蓋部材と、前記外枠部材の内側に配置される中枠部材とを備え、
前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、
前記中枠部材に、前記被播種部材および前記内蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および前記内蓋部材と接触するシール部材が設けられ、
前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記内蓋部材とを配置し、前記内蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材を保持し、
前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材、前記内蓋部材および前記蓋部材により密閉容器を構成する請求項1に記載の培養容器。
【請求項6】
前記中枠部材には、前記密閉容器に前記培養液を流入および流出させる流路が設けられている請求項4または5に記載の培養容器。
【請求項7】
前記流路が前記中枠部材中で複数に分岐され、前記密閉容器に向けて複数の開口を有するように形成されている請求項6記載の培養容器。
【請求項8】
前記中枠部材における前記流路が形成されている流路形成部が、前記中枠部材に対して着脱自在に形成されている請求項6または7に記載の培養容器。
【請求項9】
前記生体試料の播種が行われた前記被播種部材を用いて、前記培養容器の密閉容器が構成される請求項1から8のいずれかに記載の培養容器。
【請求項10】
前記培養容器の密閉容器の構成後に、前記被播種部材への前記生体試料の播種が行われる請求項1から8のいずれかに記載の培養容器。
【請求項11】
前記生体試料を含む前記培養液を、前記流路を介して前記培養容器内に供給し、前記被播種部材への前記生体試料の播種を行う請求項3、6、7、8のいずれかに記載の培養容器。
【請求項12】
前記生体試料の播種を行った後、前記培養液をその液面が前記流路よりも下になるように供給し、前記生体試料を培養する請求項3、6、7、8、11のいずれかに記載の培養容器。
【請求項13】
前記被播種部材は、前記生体試料を外部から観察するときに必要な光を透過させることが可能なスライドガラスを含んで構成される請求項1、9、10のいずれかに記載の培養容器。
【請求項14】
被観察体となる生体試料の情報を取得する生体試料観察システムにおいて、
前記生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器と、
前記生体試料を観察して情報を取得する観察手段と、を有し、
前記生体試料が播種される被播種部材が、前記培養容器の前記観察手段と対向する面に配置され、
前記被播種部材が前記培養容器の一部を構成するとともに、前記培養容器に対して着脱自在に配置されている生体試料観察システム。
【請求項1】
生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器であって、
生体試料が播種される被播種部材と、該被播種部材を着脱可能に取り付ける培養容器本体とを備える細胞培養容器。
【請求項2】
前記被播種部材が接着部材を用いて前記培養容器本体に貼り付けられている請求項1記載の細胞培養容器。
【請求項3】
前記培養容器本体内に、前記生体試料を浸す培養液を流入および流出させる流路が設けられている請求項1または請求項2に記載の細胞培養容器。
【請求項4】
前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材の内側に配置される中枠部材と、前記外枠部材に固定される蓋部材とを備え、
前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、
前記中枠部材に、前記被播種部材および前記蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および蓋部材と接触するシール部材が設けられ、
前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記蓋部材とを配置し、前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材および前記蓋部材により密閉容器を構成する請求項1に記載の培養容器。
【請求項5】
前記培養容器本体が、側壁を形成する外枠部材と、該外枠部材に取り付けられる内蓋部材と、該内蓋部材を介して前記外枠部材に取り付けられる蓋部材と、前記外枠部材の内側に配置される中枠部材とを備え、
前記外枠部材に、前記被播種部材を支持する支持部が設けられ、
前記中枠部材に、前記被播種部材および前記内蓋部材と対向する面に配置され、前記被播種部材および前記内蓋部材と接触するシール部材が設けられ、
前記支持部に前記被播種部材を支持させた状態で、前記中枠部材を挟んで前記被播種部材と前記内蓋部材とを配置し、前記内蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材を保持し、
前記蓋部材を前記外枠部材に固定することで、前記被播種部材、前記中枠部材、前記内蓋部材および前記蓋部材により密閉容器を構成する請求項1に記載の培養容器。
【請求項6】
前記中枠部材には、前記密閉容器に前記培養液を流入および流出させる流路が設けられている請求項4または5に記載の培養容器。
【請求項7】
前記流路が前記中枠部材中で複数に分岐され、前記密閉容器に向けて複数の開口を有するように形成されている請求項6記載の培養容器。
【請求項8】
前記中枠部材における前記流路が形成されている流路形成部が、前記中枠部材に対して着脱自在に形成されている請求項6または7に記載の培養容器。
【請求項9】
前記生体試料の播種が行われた前記被播種部材を用いて、前記培養容器の密閉容器が構成される請求項1から8のいずれかに記載の培養容器。
【請求項10】
前記培養容器の密閉容器の構成後に、前記被播種部材への前記生体試料の播種が行われる請求項1から8のいずれかに記載の培養容器。
【請求項11】
前記生体試料を含む前記培養液を、前記流路を介して前記培養容器内に供給し、前記被播種部材への前記生体試料の播種を行う請求項3、6、7、8のいずれかに記載の培養容器。
【請求項12】
前記生体試料の播種を行った後、前記培養液をその液面が前記流路よりも下になるように供給し、前記生体試料を培養する請求項3、6、7、8、11のいずれかに記載の培養容器。
【請求項13】
前記被播種部材は、前記生体試料を外部から観察するときに必要な光を透過させることが可能なスライドガラスを含んで構成される請求項1、9、10のいずれかに記載の培養容器。
【請求項14】
被観察体となる生体試料の情報を取得する生体試料観察システムにおいて、
前記生体試料を内部に密封状態に収納して培養する培養容器と、
前記生体試料を観察して情報を取得する観察手段と、を有し、
前記生体試料が播種される被播種部材が、前記培養容器の前記観察手段と対向する面に配置され、
前記被播種部材が前記培養容器の一部を構成するとともに、前記培養容器に対して着脱自在に配置されている生体試料観察システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−57(P2006−57A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180149(P2004−180149)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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