説明

培養槽

【課題】光合成生物の光合成反応を妨げることなく、太陽光発電装置により太陽光および培養槽の設置面積の更なる有効活用を図ることが可能な培養槽を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる培養槽100の構成は、屋外に設置され、光合成生物を含有する水を貯水し光合成生物を培養する培養槽であって、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電を行う太陽光発電パネル132と、太陽光発電パネルを水面に浮かせるフロート134と、を有し、当該培養槽の水面上に設置されるフロート型の太陽光発電装置130を備え、太陽光発電パネルは、透明であり、光合成生物が光合成に用いる波長の光を透過させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置され、光合成生物を含有する水を貯水し光合成生物を培養する培養槽に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の使用量削減および二酸化炭素の排出抑制(低炭素化社会の実現)の観点から、再生可能エネルギーが積極的に活用されている。再生可能エネルギーとは自然現象によって発生するエネルギー源またはエネルギーのことであり、使用しても自然現象によって繰り返し再生され再度使用可能であることから、このように呼ばれている。再生可能エネルギーの例としては、自然界に存在する太陽、風、水、波、地熱、バイオマスなどが挙げられる。
【0003】
バイオマスとは、植物、動物、微生物などの生物に由来する有機物であり、太陽光を利用した光合成反応が根源となっている。バイオマスは、それ自体を加工せずに燃料として利用されたり、必要に応じて固体、液体、または気体燃料に転換されて利用されたりする。
【0004】
バイオマスを燃焼させると、それに含有される炭素に酸素が結合して二酸化炭素が排出されるが、かかる炭素は、光合成により大気中から吸収した二酸化炭素に由来する。このため、バイオマスを燃焼させることにより二酸化炭素が発生しても、全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないと考えられる(カーボンニュートラル)。
【0005】
上述したバイオマスの中でも、例えば光合成生物である微細藻は二酸化炭素を固定化する能力が特に高く、短時間で燃料を大量に生産できる可能性がある。光合成生物である微細藻の培養は、それを含有する水を貯水する培養槽において行われる。その一例としては、特許文献1に、光合成生物および液体培地を保持する培養槽と、培養槽に炭酸イオンを含有する培養液を供給する培養液供給手段と、培養槽に光合成生物の培養に必要な補助栄養素を供給する補助栄養素供給手段と、培養層から液体培地を排出する排出手段を具備するバイオマス培養槽が開示されている。特許文献1によれば、炭酸イオンを含有する培養液を培養槽に供給することにより、光合成生物による二酸化炭素の固定を効率的に行えるだけでなく、廃棄物の焼却時に生じる二酸化炭素に加えて焼却灰や石炭灰をも処理することができ、廃棄物量の削減および資源の有効活用が可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微細藻等の光合成生物の培養槽は、内部まで日光が届くように広く浅いものになる。実用レベルの生産性を考慮すれば相応の面積になり、例えば直径100m、深さ30〜50cmといった大きさになる。このように広い面積の培養槽を設置するとき、単に微細藻を培養するのみではなく、さらなる有効活用が望まれる。
【0008】
ここで、上記の光合成生物は、いうまでもなく太陽光のエネルギーを利用して生産活動を行う。一方、光合成反応とは若干趣(おもむき)が異なるが、同様に太陽光を利用するものとして、太陽光発電装置が知られている。ところで、光合成生物が行う光合成反応では、太陽光の全ての波長帯の光を使っているわけではなく、所定の波長帯の光のみを使用している。また太陽光発電装置も、所定の波長帯(光合成反応における所定の波長帯と同じ範囲を意味するものではない。)の光のみを使用している。したがって、光合成生物が用いない波長の光を使って太陽光発電を行えば、太陽光を更に有効活用することができるため、従来の培養槽においてはこの点において更なる改善の余地があった。
【0009】
そこで発明者らは、培養槽に太陽光発電装置を設置することを検討した。太陽光発電装置によって光合成生物が光合成反応に用いない波長帯の光を利用して発電を行うことができれば、太陽光の更なる有効活用が可能になると考えられた。しかし、培養槽に一般的な不透明の太陽光発電装置を設置すると、それによって太陽光が遮られてしまい、光合成生物が光合成反応を行えなくなってしまうという根本的な問題がある。云うまでもなく、微細藻の光合成反応を阻害することは本来の趣旨を滅却するものである。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、光合成生物の光合成反応を妨げることなく、太陽光発電装置により太陽光および培養槽の設置面積の更なる有効活用を図ることが可能な培養槽を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる培養槽の代表的な構成は、屋外に設置され、光合成生物を含有する水を貯水し光合成生物を培養する培養槽であって、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電を行う太陽光発電パネルと、太陽光発電パネルを水面に浮かせるフロートと、を有し、当該培養槽の水面上に設置されるフロート型の太陽光発電装置を備え、太陽光発電パネルは、透明であり、光合成生物が光合成に用いる波長の光を透過させることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、光合成生物が光合成に用いる波長の光が太陽光発電パネルを透過するため、かかる光が培養槽内に届き、光合成生物の光合成反応が好適に行われる。そして、光合成生物が光合成に用いない波長の光は、太陽光発電パネルにおいて発電に使用される。したがって、光合成生物の光合成反応を妨げることなく、太陽光発電装置により太陽光の更なる有効活用を図ることが可能となる。また太陽光発電装置を水面上に設置されるフロート型にしたことにより、太陽光発電パネルの裏面が水面に接触することとなる。これにより、太陽光の照射による太陽光発電パネルの温度上昇、ひいては発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0013】
上記の光合成生物は微細藻であり、太陽光発電パネルが透過させる光の波長は400nm〜700nmであるとよい。上述したように、微細藻は、数ある光合成生物のなかでも二酸化炭素を固定化する能力が極めて高く、効率的な燃料生産が可能であるため、光合成生物としては微細藻が最も好適である。また微細藻をはじめとする光合成生物は、主に400nm〜700nm(おおむね可視光領域)の波長の光を光合成反応に使用するため、太陽光発電パネルがこの波長帯の光を透過させれば光合成生物の光合成反応を妨げることがない。
【0014】
上記のフロートには、水中と水上を連通し、水中の気体を水上に導通する通気孔が設けられているとよい。上述したように、太陽光発電パネルは光合成生物を含有する水の水面上に浮いているため、光合成反応により生成された酸素の気泡が滞留する可能性がある。気泡が長時間滞留すると太陽光発電パネルの裏面が乾燥し、その部分に光合成生物が乾燥して固着する。すると、太陽光発電パネルに汚れが付着した状態と同じような状態となり、透明であった太陽光発電装置の光透過率が低下して、光合成反応が低下してしまう。また、光合成生物により生成された酸素が蓄積し、光合成生物の増殖そのものが阻害されてしまうことも想定される。
【0015】
そこで、上記構成のように通気孔を設けることにより、光合成反応によって生成された酸素をかかる通気孔を通じて水上に放出可能となる。したがって、太陽光発電パネルの裏面に光合成生物が乾燥して固着することを防止し、且つ酸素蓄積による増殖阻害を回避することができ、光合成生物の生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【0016】
上記の太陽光発電装置は複数設けられていて、複数の太陽光発電装置は、隣接する太陽光発電装置との間に間隙を有するとよい。これによっても、光合成によって生成された酸素を水上に放出することができ、上述した通気孔を設けた場合と同様の利点を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光合成生物の光合成反応を妨げることなく、太陽光発電装置により太陽光および培養槽の設置面積の更なる有効活用を図ることが可能な培養槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態にかかる培養槽の構成を説明する図である。
【図2】第1実施形態にかかる太陽光発電ユニットの構成を説明する図である。
【図3】第2実施形態にかかる太陽光発電ユニットの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる培養槽の構成を説明する図である。なお、理解を容易にするために、図1中、太陽光を白抜き矢印で、二酸化炭素を黒矢印で、後述する太陽光発電装置によって生成された電気の流れを一点鎖線の矢印で示す。
【0021】
図1に示す培養槽100は、屋外に設置されて光合成生物(不図示)を含有する水を貯水し、かかる光合成生物を培養する。培養槽100の大きさは一例として直径100m、深さ30〜50cm程度であって、本実施形態では露天の水槽を想定している。光合成生物は、所定の波長帯の太陽光および二酸化炭素を利用して光合成反応を行う。これにより、二酸化炭素が炭素に変わって光合成生物の個体内に固定化され、固定化された炭素により固体、液体、または気体燃料(バイオ燃料)が作り出される。またその副生成物として酸素が生成される。光合成生物としては、二酸化炭素を固定化する能力が極めて高く、効率的な燃料生産が可能である微細藻が好適である。以下、光合成生物として微細藻を例示して説明する。
【0022】
培養槽100の下部には二酸化炭素供給手段110が配置されていて、二酸化炭素供給手段110には、これに二酸化炭素を圧送する動力である送気ポンプ112が設けられている。送気ポンプ112によって二酸化炭素供給手段110に圧送された二酸化炭素は、二酸化炭素供給手段110の供給孔110aを通じて培養槽100に貯水された水に放出される。これにより、水に含まれる微細藻への二酸化炭素の供給が効率的に行われる。
【0023】
また培養槽100には水循環経路120が接続されていて、水循環経路120には、これに水を循環させる動力である循環ポンプ122が設けられている。循環ポンプ122によって、培養槽100に貯水される水が、吸水口120aから水循環経路120に吸い込まれ、送水口120bから培養槽100に送り出されてその内部を循環する。これにより、培養槽100内に水流を発生させることができ、培養槽100の下方へ沈殿しがちな微細藻をその上方に浮上させることができる。したがって、培養槽100の上方に差し込んだ太陽光を微細藻が受光しやすくなり、光合成反応の促進を図ることが可能となる。
【0024】
なお、本実施形態においては、培養槽100内に水流を発生させる手段として水循環経路120および循環ポンプ122を設けたが、これに限定するものではない。かかる手段としては、例えば培養槽100内にプロペラを設置して、それを回転させることにより培養槽100内の水に水流を発生させてもいいし、他の構成を用いることも可能である。
【0025】
更に、培養槽100の水面上には、本実施形態の特徴である太陽光発電装置を備えた太陽光発電ユニット130(以下、発電ユニット130と称する)が設置されている。図2は第1実施形態にかかる太陽光発電ユニット130の構成を説明する図であり、図2(a)は、かかる太陽光発電ユニット130の上面斜視図、図2(b)は図2(a)の太陽光発電ユニット130のA−A断面図である。
【0026】
図2(a)に示すように、本実施形態の発電ユニット130は、隣接する4つの発電装置130a、130b、130cおよび130dから構成される(実際には、数十の発電装置が配列される。)。なお、これらの発電装置130a〜130dは、いずれも同一の構成および機能を有するため、以下、発電装置130aを例示して説明する。かかる発電装置130aは、主に、太陽光発電パネル(以下、発電パネル132と称する)と、フロート134とから構成される。
【0027】
本実施形態では、発電パネル132は、直列に接続された複数のセル132aにより構成される。セル132aは、半導体の太陽電池の光電効果を利用し、再生可能エネルギーである太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換して発電を行う。なお、発電パネル132はセル132aを4行6列接続して構成されているが、この数は一例であり限定するものではない。
【0028】
発電パネル132(発電装置130a)は、上述した送気ポンプ112や循環ポンプ122に接続されている。これにより、発電パネル132によって発電された電力をそれらのポンプに供給することができる。したがって、送気ポンプ112や循環ポンプ122を動作させるための電力消費量を削減することができ、省エネルギーに寄与することが可能となる。また発電装置130aは、送気ポンプ112や循環ポンプ122だけでなく送電系統(不図示)に接続されていてもよい。これにより、それらのポンプを動作させない場合等に、発電パネル132によって発電された電力を、培養槽100以外の施設において使用したり、系統に連系(逆潮流)させて売電したりすることが可能となる。
【0029】
ここで、上述したように本実施形態の発電装置130aは、光合成生物を含有する水の水面上に設置される。このため、発電装置130a(発電パネル132)によって太陽光が遮られると、水中の光合成生物は太陽光の照射が受けられず光合成反応を行えなくなってしまい、培養槽100の本来の目的である微細藻の培養に支障が生じる。
【0030】
そこで、本実施形態では、発電装置130aにおいて、光合成生物が光合成に用いる波長の光を透過させる透明な発電パネル132(厳密にはセル132a)を使用する。これにより、光合成生物が光合成に用いる波長の光が発電パネル132を透過して培養槽100内に届くため、光合成反応が阻害されることがない。そして、光合成生物が光合成に用いない波長の光は、上述したように発電パネル132において発電に使用されるため、太陽光の有効活用を図れる。
【0031】
透明な発電パネル132(セル132a)を構成する材料としては、例えば特開2009−60051号公報に記載されているように、赤外光領域に光の吸収ピークを有する有機物半導体であるタフタロシアニン、ナフタロシアニン誘導体等を例示することができる。特開2009−60051号公報によれば、可視光領域の波長の光を透過しつつ、赤外光領域の波長の光を吸収して太陽光発電が可能とされている。なお、詳細な製造方法については特開2009−60051号公報に述べられているためここでは説明を省略する。
【0032】
発電パネル132(セル132a)が透過させる光の波長は400nm〜700nmであるとよい。これは、微細藻をはじめとする光合成生物は主に400nm〜700nmの波長帯の光を光合成反応に使用するため、この波長帯の光を透過させれば光合成生物の光合成反応を妨げることがないからである。
【0033】
上記の発電パネル132は、フロート134に支持される。フロート134は、発電パネル132を水面に浮かせる部材すなわち浮きである。フロート134には、発泡ウレタンや発泡スチロール等、内部に空気を保持できるような空孔を有する発泡プラスチックや、中空のプラスチック製タンク、あるいは木材などを好適に用いることができる。
【0034】
本実施形態のフロート134は枠体形状であり、その中央に設けられた空洞部134aに発電パネル132が嵌め込まれることにより、発電パネル132がフロート134に支持される。このような構成により、フロート134の浮力を利用して発電装置130aを水面に浮かせて設置することができる。
【0035】
発電装置130aは、太陽光を利用して発電を行うため当然にして相当量の太陽光の照射を受ける。すると、その要である発電パネル132(後に詳述)の温度が上昇して発電効率が低下し、出力が減少してしまう(出力低下)。すなわち、発電パネル132の発電効率は温度に依存するため、発電装置130aでは発電パネル132の温度上昇を防ぐ必要があった。
【0036】
そこで、本実施形態のように、発電装置130aを、フロート134の浮力を利用して培養槽100の水面上に設置されるフロート型とすることにより、発電パネル132の裏面が水面に接触するため、発電パネル132に蓄熱された熱が水に放熱され、効果的に冷却される。したがって、太陽光の照射による発電パネル132の温度上昇、ひいては発電効率の低下を抑制することができる。
【0037】
なお、発電パネル132は絶縁性のあるガラスまたは樹脂の表面にパターンを形成することによって製造されるが、ガラスや樹脂の熱伝導率は小さいために、放熱しにくい。そのため、発電パネル132の裏面に、透明性を損なわない程度に金属を添加して熱伝導性を高めたガラスを放熱板として取り付けてもよい。
【0038】
また、上記説明したフロート134の形状はあくまでも一例であり、必ずしもその形状である必要がない。例えば、発電パネル132の周囲の全てを囲うのではなく、発電パネル132の周囲のいずれか1以上の辺のみに取り付けられる構成としてもよいし、発電パネル132の角部に取り付けられる構成としてもよい。すなわち、フロート134は、発電パネル132を水面に浮かせることができるのであれば如何なる形状であってもよい。
【0039】
ところで、微細藻は光合成によって酸素を生成し、太陽が沈むと二酸化炭素を排出する。また、二酸化炭素供給手段110から供給した二酸化炭素も完全に消費できるわけではなく、半分以上が水に溶解せずに水面に達する。すなわち、培養槽100の水中には多量の気体(気泡)が存在し、発電パネル132の裏面に滞留する可能性がある(酸素蓄積)。気泡が長時間滞留すると発電パネル132の裏面が乾燥し、その部分に光合成生物が乾燥して固着する。すると、発電パネル132に汚れが付着した状態と同じような状態となり、透明であった発電装置130aの光透過率が低下して、光合成反応の効率が低下してしまう。また酸素蓄積により、光合成生物の増殖そのものが阻害されてしまうおそれもある。
【0040】
そこで、フロート134には、水中と水上を連通し、水中の気体を水上に導通する通気孔134bが設けられている。これにより、酸素や二酸化炭素の気泡を、通気孔134bを通じて水上に放出することができる。したがって、発電パネル132の裏面に光合成生物が乾燥して固着することを防止し、光合成生物の生産効率の低下を抑制することが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態においては、通気孔134bを、フロート134を上面から見た際の長手に4つ、短手に3つ設けたが、この数は例示でありこれに限定するものではない。したがって、通気孔134bの数は任意に増減可能である。
【0042】
上記説明したように、第1実施形態の培養槽100によれば、光合成生物が光合成に用いる波長の光が発電パネル132を透過するため、発電装置130aを設置した場合であっても光合成生物の光合成反応が好適に行われる。そして、光合成生物が光合成に用いない波長の光は発電パネル132において発電に使用されるため、太陽光および培養槽の設置面積の更なる有効活用を図ることが可能となる。また発電装置130aがフロート型であることにより発電パネル132の熱が水に放熱されるため、太陽光の照射による発電パネル132の温度上昇、ひいては発電効率の低下を抑制することができる。更に、フロート134に通気孔134bが設けられているため、水中の気体や光合成反応によって生成された酸素を水上に放出することができ、気泡の付着に起因する発電パネル132の裏面の乾燥、ひいてはそこに付着していた光合成生物の乾燥を防ぎ、発電装置130aの発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態にかかる太陽光発電ユニットの構成を説明する図である。なお、第1実施形態の発電ユニット130の構成要素と実質的に同一の機能や構成を有する要素については、同一の符号を付することにより説明を省略する。
【0044】
第1実施形態の発電ユニット130は、それを構成する複数の発電装置130a〜130dの隣接する側面同士が密接するように配置されていた。これに対し、図3に示す第2実施形態の発電ユニット230は、複数の発電装置130a〜130dが隣接する発電装置との間に間隙232を有するように配置される。そして、間隙232には接続部234が設けられ、かかる接続部234によって複数の発電装置130a〜130dが隣接する発電装置と接続される。
【0045】
上記構成によれば、光合成によって生成された酸素や水中の気体が間隙232を通過して水上に放出される。したがって、第1実施形態の通気孔134bを設けた場合と同様の利点を得ることが可能となる。なお、本実施形態においては、間隙232によって酸素(気体)を放出できるためフロート134に通気孔134bを設けていないが、間隙232と通気孔134bを併せ持つ構成としてもよい。また複数の発電装置130a〜130dは2つの接続部234によって隣接する発電装置と接続されているが、接続部234の数は例示であり適宜変更可能である。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、1つの発電パネル132に1つのフロート134を設けるように説明した。しかし本発明はこれに限定するものではなく、複数の発電パネル132を1つの大きなフロート134によって支持してもよい。また、フロート134を備えた架台(枠体)に、複数の発電パネル132を配列してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、屋外に設置され、光合成生物を含有する水を貯水し光合成生物を培養する培養槽として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100…培養槽、110…二酸化炭素供給手段、110a…供給孔、112…供給ポンプ、120…水循環経路、120a…吸水口、120b…送水口、122…循環ポンプ、130…発電装置、130a…発電装置、130b…発電装置、130c…発電装置、130d…発電装置、132…発電パネル、132a…セル、134…フロート、134b…通気孔、230…発電装置、232…間隙、234…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置され、光合成生物を含有する水を貯水し該光合成生物を培養する培養槽であって、
太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電を行う太陽光発電パネルと、
前記太陽光発電パネルを水面に浮かせるフロートと、
を有し、当該培養槽の水面上に設置されるフロート型の太陽光発電装置を備え、
前記太陽光発電パネルは、透明であり、前記光合成生物が光合成に用いる波長の光を透過させることを特徴とする培養槽。
【請求項2】
前記光合成生物は微細藻であり、前記太陽光発電パネルが透過させる光の波長は400nm〜700nmであることを特徴とする請求項1に記載の培養槽。
【請求項3】
前記フロートには、水中と水上を連通し、水中の気体を水上に導通する通気孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の培養槽。
【請求項4】
前記太陽光発電装置は複数設けられていて、該複数の太陽光発電装置は、隣接する太陽光発電装置との間に間隙を有することを特徴とする請求項1に記載の培養槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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