説明

培養装置

【課題】別途の装置を利用せずとも、簡易な構成で培養液を効率よく循環させることができ、藻類が沈殿することによる、光合成効率の低下や培養液の消費効率の低下を抑制する。
【解決手段】培養装置100は、培養液が満たされる槽本体110と、槽本体に設けられ、培養液中に被培養体が消費する消費ガスを導入するガス導入部120とを備え、槽本体は、受光した光を槽本体内に透過させる受光面部112と、受光面部より、受光面部から透過される光の透過方向前方に位置し、受光面部と対向する位置に配置される背面部114と、背面部の下端と受光面部の下端とを連続するとともに、当該連続過程の一部または全部が、背面部側から受光面部側に向かうに従って鉛直下方に傾斜することで、背面部の下端側から受光面部の下端側に培養液を流動させる底面部118とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類等を培養する培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオ燃料(炭化水素やバイオディーゼル)や、アスタキサンチン等の生理活性物質を産生することができる藻類(特に、微細藻類)が注目されており、このような藻類を大量に培養し、石油に換わるエネルギーとして利用したり、薬や化粧品、食品等に利用したりすることが検討されている。
【0003】
藻類等の大量培養用の培養装置の例として、水面が開放されている培養装置であるオープンポンド(屋外池)型が挙げられる(例えば、非特許文献1)。藻類等の植物は、光合成を行って、増殖したり、炭化水素等を産生したりするため、培養槽内部まで光を到達させることが望ましいが、オープンポンド型は、水面からしか光が入射しないため、藻類の増殖に伴って、藻類自体が光を遮ってしまい、光の到達距離が短くなり、藻類の光合成の効率が低下してしまう。また、水面から他の微生物が混入してしまい藻類の培養効率が低下してしまうこともある。
【0004】
そこで、チューブ形状の培養槽で構成されるチューブ型の培養装置(例えば、非特許文献1)や、直方体形状の培養槽で構成されるパネル型の培養装置(例えば、特許文献1)が検討されている。なお、チューブ型やパネル型の培養装置を構成する培養槽は、光合成効率を向上させるために、光を透過する、例えば、ガラス、プラスチック等の部材で構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Elsevier, Bioresource Technology 101, 2010:1406-1413
【特許文献1】特開2000−139444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、藻類を培養する際に、藻類が含まれる培養液を培養槽内で循環させなければ、培養液中で藻類が沈殿して藻類自体がクラスタを形成し、光合成効率や培養液の消費効率が低下して全体的な培養効率が低下するといった問題が生じ得る。
【0007】
ここで、チューブ型の培養装置は、培養槽の一方の端部から他方の端部への培養液の移動によって発生する乱流を利用して培養液の循環を行っているものの、この乱流のみでは十分な循環が困難である。また、パネル型の培養装置は、培養槽の下部からの曝気によって培養液の循環を行っているが、培養槽の四隅まで十分に培養液を循環させることができず、培養槽の四隅で藻類が沈殿してしまう。したがって、チューブ型やパネル型の培養装置を利用して藻類を培養する場合、培養液を循環させるための専用の装置を用いて、培養液を循環させる必要があり、コスト高となったり、培養装置全体の占有体積が大きくなってしまったりしていた。
【0008】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、培養液を循環させるための専用装置を利用せずとも、簡易な構成で培養液を効率よく循環させることができ、藻類が沈殿することによる、光合成効率の低下や培養液の消費効率の低下を抑制することが可能な培養装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の培養装置は、培養液が満たされる槽本体と、槽本体に設けられ、培養液中に被培養体が消費する消費ガスを導入するガス導入部と、を備えた培養装置であって、槽本体は、受光した光を槽本体内に透過させる受光面部と、受光面部より、当該受光面部から透過される光の透過方向前方に位置し、受光面部と対向する位置に配置される背面部と、背面部の下端と受光面部の下端とを連続するとともに、当該連続過程の一部または全部が、背面部側から受光面部側に向かうに従って鉛直下方に傾斜する底面部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
受光面部と背面部との距離は、受光面部と背面部との最上端側の距離が最下端側よりも短くなってもよい。
【0011】
受光面部と背面部との距離は、鉛直上方に向かうに従って漸減してもよい。
【0012】
ガス導入部は、受光面部と底面部との連続部に設けられていてもよい。
【0013】
背面部および底面部のうちいずれか一方または両方は、受光面部よりも熱伝導度または放熱効率が高くてもよい。
【0014】
背面部および底面部のうちいずれか一方または両方を冷却する冷却手段をさらに備えてもよい。
【0015】
槽本体内の培養液が所定水位となったときに、槽本体内の培養液を槽本体外に越流させるとともに、当該越流した培養液を背面部の外面に沿って流下させる越流部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記槽本体における越流部の下方位置には、新たな培養液を供給する培養液供給部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、培養液を循環させるための専用装置を利用せずとも、簡易な構成で培養液を効率よく循環させることができ、藻類が沈殿することによる、光合成効率の低下や培養液の消費効率の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】培養装置の外観斜視図である。
【図2】図1におけるX−Y断面図である。
【図3】槽本体内の培養液Mの循環過程を説明するための説明図である。
【図4】越流部を越流する培養液Mの流動過程を説明するための説明図である。
【図5】培養装置の変形例を説明するための説明図である。
【図6】培養装置の変形例を説明するための説明図である。
【図7】培養装置の変形例を説明するための説明図である。
【図8】培養装置の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
(培養装置100)
図1は、培養装置100の外観斜視図であり、図2は、図1におけるX−Y断面図である。図1および図2に示すように、培養装置100は、槽本体110と、培養液回収部150とを備えて構成されている。
【0021】
(槽本体110の構成)
槽本体110は、図1中X方向に対向配置された受光面部112および背面部114と、図1中Z方向に対面配置された右側面部116aおよび左側面部116bと、背面部114の下端と受光面部112の下端とを連続する底面部118とを備えている。
【0022】
受光面部112は、ガラスや樹脂(例えば、アクリル、ポリエチレンテレフタレート等)等の光を透過させる部材で構成され、主に、太陽や照明から照射される直接光(直射光)Lを受光し、受光した光を槽本体110内に透過させる。
【0023】
背面部114は、受光面部112よりも熱伝導度または放熱効率が高い部材(例えば、金属等)で構成され、受光面部112よりも透過方向T(図2参照)の前方に位置し、受光面部112と対向する位置に配置される。ここで、透過方向Tは、受光面部112から透過される光の方向である。
【0024】
右側面部116aおよび左側面部116bは、受光面部112と同様に、光を透過させる部材で構成され、主に散乱光や反射光を受光して、受光した光を槽本体110内に透過させる。
【0025】
底面部118は、受光面部112よりも熱伝導度または放熱効率が高い部材(例えば、金属等)で構成され、図2に示すように、背面部114の下端と受光面部112の下端とを連続するとともに、背面部114側から受光面部112側に向かうに従って連続的に鉛直下方に傾斜している。
【0026】
このように、受光面部112、背面部114、右側面部116a、左側面部116b、底面部118で囲まれた槽本体110の内部空間は、図2に示すように、鉛直断面(図1におけるX−Y断面)の形状が三角形であり、この内部空間には藻類が分散された培養液Mが満たされることになる。
【0027】
また、図1および図2に示すように、槽本体110には、ガス導入部120と、越流部130と、培養液供給部140と、ガス取出部142とが設けられている。
【0028】
ガス導入部120は、例えば、受光面部112と底面部116との連続部122に設けられており、培養液M中に被培養体(藻類等)が消費する消費ガス(例えば、光合成時には二酸化炭素、呼吸時には酸素)を導入する。
【0029】
越流部130は、背面部114に設けられ、槽本体110内の培養液Mが所定水位となったときに、槽本体110内の培養液Mを槽本体110外に越流させる。なお、本実施形態において越流部130は、背面部114および底面部118を冷却する冷却手段に該当する。越流部130による冷却処理については後に詳述する。
【0030】
培養液供給部140は、越流部130の下方位置に設けられ、新たな培養液Mを供給する。
【0031】
ガス取出部142は、例えば、背面部114における喫水面よりも上方位置に設けられ、藻類が光合成を行うことによって生じる酸素や、藻類が呼吸を行うことによって生じる二酸化炭素を取り出す。これにより、藻類が光合成を行う際に培養液Mに酸素が供給されてしまい光合成効率が低下したり、藻類が呼吸を行う際に培養液Mに二酸化炭素が供給されてしまい呼吸効率が低下したりする事態を回避することが可能となる。
【0032】
以下に、培養液Mの循環過程について説明する。
【0033】
(槽本体110における培養液Mの循環過程)
図3は、槽本体110内の培養液Mの循環過程を説明するための説明図である。上述したように受光面部112は、主に直接光Lを受光し、受光した光を槽本体110内に透過させる。ここで、槽本体110は、藻類が分散された培養液Mで満たされているため、培養液M中の藻類によって、受光した光が受光面部112から槽本体110の内部に向かうに従って徐々に減衰する。その結果、槽本体110内の領域ごとに、受光によって生じる培養液Mの温度上昇に差が生じる。
【0034】
具体的に説明すると、図3に示す、受光面部112の近傍の領域Aに位置する培養液Mは、受光した光によって、背面部114の近傍の領域Bや、底面部118の近傍の領域Cに位置する培養液Mと比較して高温になる。
【0035】
そうすると、領域Aに位置する培養液Mは、図3に示すように、受光面部112に沿って鉛直上方に上昇し(図3中、矢印aで示す)、喫水面に到達する。喫水面に到達した培養液Mは、背面部114に沿って、鉛直下方に下降し(図3中、矢印bで示す)、領域Bに位置していた培養液Mは押し出されて底面部118に到達する。ここで、上述したように、底面部118は、背面部114側から受光面部112側に向かうに従って鉛直下方に傾斜しているため、底面部118に到達した培養液Mは、底面部118に沿って(図3中矢印cで示す)、受光面部112に向かって流動する。そうすると、領域Cに位置していた培養液Mは、押し出されて、受光面部112の下端に到達する。
【0036】
したがって、培養装置100は、図3中、矢印a、b、cで示す順で、培養液Mを循環させることができ、培養液M中で、藻類が沈殿する事態を回避することが可能となる。これにより、藻類の光合成効率の低下や培養液Mの消費効率の低下を抑制することができる。
【0037】
また、ガス導入部120が連続部122に設けられる構成により、培養液Mに満遍なく消費ガスを供給するとともに、領域Aにおける培養液Mの上昇を補助することができる。
【0038】
さらに、上述したように、本実施形態にかかる背面部114および底面部118は、受光面部112よりも熱伝導度または放熱効率が高い部材で構成されるため、背面部114の近傍の領域Bおよび底面部118の近傍の領域Cに位置する培養液Mをより低温にすることができる。したがって、領域Bおよび領域Cに位置する培養液Mを、効率よく受光面部112の近傍(領域A)に流動させることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態において、槽本体110は、受光面部112と背面部114との距離が、鉛直上方に向かうに従って漸減するように形成される。このように、喫水面において、受光面部112側から背面部114側への培養液Mの流動距離を短くすることにより、光によって加温され喫水面に到達した培養液Mが背面部114に到達する途中で下降してしまい、循環の流れを乱してしまう事態を回避することが可能となる。したがって、培養液Mの循環効率を向上させることができる。
【0040】
また、受光面部112を傾斜させることにより、受光面積を大きくすることが可能となり、藻類の光合成効率を向上させることが可能となる。
【0041】
ここで、藻類の循環について説明すると、藻類は、培養液Mに分散されているため、上述した培養液Mの循環に伴って、図3中、矢印a、b、cで示す順で循環する。このような培養液Mの循環に加えて、上述したように、底面部118が、背面部114側から受光面部112側に向かうに従って鉛直下方に傾斜しているため、重力によって、背面部114の端側に位置する藻類を受光面部112の下端側に流動させることができる。そして、受光面部112の下端側に移動した藻類は、ガス導入部120による消費ガスの供給に伴って、喫水面まで到達し、その後、重力によって底面部118に向かって下降する。
【0042】
ところで、藻類には、光が当たる期間と当たらない期間とが交互になるように培養することで、光合成効率が向上するという特徴がある(ライトダークエフェクト)。しかし、上述したように、チューブ型や、パネル型の培養装置は、培養槽内部まで光を到達させるために、光を透過する部材で構成されているため、太陽光の照射量が多い日中等は、培養槽全体に光が当たり、培養槽内の明るさが均一になってしまい、ライトダークエフェクトが得られず、却って光合成効率が抑制されたり、強光阻害が引き起こされたりするという問題があった。
【0043】
本実施形態にかかる培養装置100は、受光面部112と背面部114との距離が鉛直上方に向かうに従って短くなる構成、すなわち、受光面部112と背面部114との距離が鉛直下方に向かうに従って長くなる構成により、受光面部112から透過される光の透過方向に、培養液Mが厚い領域Dを形成することができる(図2参照)。ここで、培養装置100は、槽本体110内部において培養液Mを連続して循環させることができるため、藻類を培養液Mに均一に分散させることが可能となる。これにより、領域Dにおいて、光の透過率が低い藻類の層が形成されることになり、受光面部112から背面部114に向かうに従って、光を徐々に減衰させることができる。したがって、太陽光の照射量が多い日中等であっても、槽本体110の内部に明るい領域Aと暗い領域Dとを並行して形成することができ、藻類の光合成効率を向上させるとともに、藻類に対する強光阻害を抑制することが可能となる。
【0044】
(越流部130による冷却処理)
図4は、越流部130を越流する培養液Mの流動過程を説明するための説明図である。図4に示すように、槽本体110内の培養液Mが所定水位となったときに、槽本体110内の培養液Mは、越流部130を越流して槽本体110外に流動する。すなわち、槽本体110内で培養された藻類は、培養液Mとともに、越流部130を越流して外部に排出されることになる。
【0045】
そして、図4中矢印で示すように、越流部130は、越流した培養液Mを背面部114の外面に沿って流下させる。ここで、背面部114の外面は大気に曝されているため、越流部130を越流した培養液Mは、背面部114の外面に沿って流下している間に気化することになる。そうすると、背面部114は、培養液Mの気化熱によって冷却される。また、本実施形態において、背面部114の外面に沿って流下した培養液Mの少なくとも一部は、続いて底面部118の外面に沿って流下する。そうすると、培養液Mは、底面部118の外面に沿って流下している間でも気化することになるため、底面部118は、培養液Mの気化熱によって冷却される。
【0046】
ここで、上述したように背面部114および底面部118は、受光面部112よりも熱伝導度または放熱効率が高い部材で構成されることによる、領域Bおよび領域Cに位置する培養液Mの冷却効果に加えて、越流部130を備えることによって、領域Bおよび領域Cに位置する培養液Mの温度をさらに低くすることができ、槽本体110内の培養液Mの循環効率を向上させることが可能となる。
【0047】
ところで、藻類には培養に適した温度範囲があり、この温度範囲を大きく逸脱すると、藻類の培養効率が低下してしまう。例えば、培養液の温度が高すぎると、藻類を構成するタンパク質等が変性してしまうといった問題が生じる。しかし、上述したように、チューブ型や、パネル型の培養装置は、培養槽内部まで光を到達させるために、光を透過する部材で構成されているため、太陽光の照射量が多い日中等は、培養槽全体に光が当たり、培養槽内の培養液の温度が上昇してしまい、藻類を構成するタンパク質や核酸等が変性してしまうといった問題があった。
【0048】
本実施形態にかかる培養装置100は、越流部130を設けるだけといった簡易な構成で、背面部114および底面部118を冷却することができ、領域Bおよび領域Cの温度をさらに低くすることが可能となる。したがって、太陽光の照射量が多い日中等であっても、冷却装置を利用せずに培養液Mの温度を藻類の培養に適した温度範囲内に維持することができ、藻類の光合成効率を向上させ、藻類を構成するタンパク質や核酸等が変性して増殖が困難になる事態を回避することが可能となる。
【0049】
また、背面部114の外面および底面部118の外面を流下する間に、培養液Mの一部が気化することにより、培養液Mに含まれる藻類の濃度を向上させることができる。
【0050】
さらに、越流部130を越流した培養液Mは、重力によって、越流部130と案内部132との間を流下することになる。すなわち、越流部130から外部に越流した培養液Mが、槽本体110内部に逆流するという事態は発生しないため、外部から槽本体110内へのコンタミネーションを防止することもできる。
【0051】
また、上述したように、本実施形態では越流部130の下方位置に培養液供給部140を設けているため、藻類の濃度が低い(0に等しい)新たな培養液Mが越流部130から排出されてしまうことを防止することができ、また、藻類の濃度が高い培養液Mを越流部130から排出することが可能となる。
【0052】
図1および図2に戻って説明すると、培養液回収部150は、越流部130を越流し、背面部114の外面を流下した培養液Mを回収する。培養液回収部150で回収された、藻類を含む培養液Mは培養回収口152を通じて、後段のバイオ燃料生成工程等に利用される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にかかる培養装置100によれば、培養液を循環させるための専用装置を利用せずとも、簡易な構成で培養液Mおよび藻類を効率よく循環させることができ、藻類が沈殿することによる、光合成効率の低下や培養液の消費効率の低下を抑制することが可能となる。したがって、全体的な藻類の培養効率を向上させることができる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
例えば、上述した実施形態において、受光面部112と背面部114との距離が、鉛直上方に向かうに従って漸減するように槽本体110が形成される例について説明したが、例えば、図5(a)に示すように、受光面部112が槽本体110の外部に向かって凸形状であっても、受光面部112と背面部114との距離が、鉛直上方に向かうに従って短くなるように、すなわち、受光面部112と背面部114との最上端側の距離が最下端側の距離より短くなるように槽本体110が形成されてもよい。また、図5(b)に示すように、受光面部112の下端から所定の高さまでは受光面部112と背面部114との距離が一定であり、所定の高さ以上から鉛直上方に向かうに従って漸減する形状であっても、図5(c)に示すように、受光面部112と背面部114との距離が鉛直上方に向かうに従って段階的に短くなる形状であってもよい。さらに、受光面部112の近傍の領域で培養液Mおよび藻類が上昇できる構成であれば、図5(d)に示すように、受光面部112と背面部114との距離が所定(一定)の距離(受光面部112と背面部114が平行に配される構成)であってもよい。
【0056】
さらに、上述した実施形態では、底面部118全体が背面部114側から受光面部112側に向かうに従って連続的に鉛直下方に傾斜している構成について説明したが、例えば、図6(a)に示すように、底面部118が槽本体110の内部に向かって凸形状であってもよい。また、図6(b)に示すように、底面部118の一部が鉛直下方に傾斜する形状であっても、図6(c)に示すように、底面部118が段階的に鉛直下方に傾斜する形状であってもよい。
【0057】
なお、図6(d)に示すように、受光面部112と背面部114との距離が、鉛直上方に向かうに従って短くなるように形成すれば、受光面部112の近傍の領域において培養液および藻類を鉛直上方に上昇させることができるため、底面部118を水平に形成しても、図6中、矢印a、b、cで示す順で、培養液および藻類を循環させることが可能となる。
【0058】
また、上述した実施形態においてガス導入部120は、連続部122に設けられているが、藻類に消費ガスを供給できれば、槽本体110のどの位置に配されてもよい。
【0059】
さらに、上述した実施形態において、越流部130を設けることで、越流部130を越流した培養液M自体を背面部114および底面部118を冷却する冷却手段としているが、背面部114または底面部118を別途の冷却水で冷却してもよい。
【0060】
例えば、図7に示すように、培養液回収部150とは別に、底面部118、底部160、背面部114で形成される冷却水循環路162を設けておき、冷却水循環路162に冷却水Nを循環させることもできる。この場合、背面部114は越流部130から越流した培養液Mによって冷却され、底面部118は、冷却水循環路162を循環する冷却水Nによって冷却される。
【0061】
このように冷却水循環路162を設け、この冷却水循環路162に冷却水Nを循環させることで、気温の高い地域や太陽光が強い時期であっても、底面部118を効率的に冷却することが可能となる。また、冷却水循環路162は、冷却水Nを供給する供給部および冷却水Nを取り出す取出部以外は、閉鎖された空間となっているため、冷却水循環路162を循環させた冷却水Nを回収することができる。これにより、少ない水で効率よく底面部118を冷却することが可能となる。
【0062】
また、上述した実施形態では、受光面部112、背面部114、底面部118、右側面部116a、左側面部116bを板状の部材で形成する例を挙げて説明したが、図8に示すような、受光面部112、背面部114、底面部118、右側面部116a、左側面部116bを軟質な樹脂で形成し、受光面部112と背面部114との境界と、背面部114と底面部118の境界と、受光面部112と底面部118との境界をケーブル(図8中、170a、b、cで示す)等で帳架して槽本体110を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、藻類等を培養する培養装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 …培養装置
110 …槽本体
112 …受光面部
114 …背面部
118 …底面部
120 …ガス導入部
130 …越流部(冷却手段)
140 …培養液供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液が満たされる槽本体と、
前記槽本体に設けられ、前記培養液中に被培養体が消費する消費ガスを導入するガス導入部と、を備えた培養装置であって、
前記槽本体は、
受光した光を槽本体内に透過させる受光面部と、
前記受光面部より、当該受光面部から透過される光の透過方向前方に位置し、前記受光面部と対向する位置に配置される背面部と、
前記背面部の下端と前記受光面部の下端とを連続するとともに、当該連続過程の一部または全部が、前記背面部側から前記受光面部側に向かうに従って鉛直下方に傾斜する底面部と、
を備えたことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記受光面部と前記背面部との距離は、該受光面部と該背面部との最上端側の距離が最下端側よりも短くなることを特徴とする請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記受光面部と前記背面部との距離は、鉛直上方に向かうに従って漸減することを特徴とする請求項1または2に記載の培養装置。
【請求項4】
前記ガス導入部は、前記受光面部と前記底面部との連続部に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項5】
前記背面部および前記底面部のうちいずれか一方または両方は、前記受光面部よりも熱伝導度または放熱効率が高いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項6】
前記背面部および前記底面部のうちいずれか一方または両方を冷却する冷却手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項7】
前記槽本体内の培養液が所定水位となったときに、該槽本体内の該培養液を該槽本体外に越流させるとともに、当該越流した培養液を前記背面部の外面に沿って流下させる越流部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の培養装置。
【請求項8】
前記槽本体における前記越流部の下方位置には、新たな培養液を供給する培養液供給部をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の培養装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−191894(P2012−191894A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58729(P2011−58729)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】