説明

基 板

【目的】 基板による実効的な放熱面積を拡大することにより、表面実装された半導体素子等の十分な冷却を実現できる基板を提供すること。
【構成】 半導体素子1が、リード3によりガラスエポキシやセラミック製の基板2上のパッド4と電気的に接続されるとともに、結合材5により基板2上のパッド6aと熱的に接続され、このパッド6aは、基板2の内部に設けられた熱伝導層7とサーマルビア8により接続されており、さらに、半導体素子1が接続されていないパッド6bと熱伝導層7とをサーマルビア8により接続することにより構成される基板。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面実装された半導体素子等を冷却するための手段を有する基板に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来の基板の概略を示す部分断面図である。
【0003】ここでは、半導体素子101が、基板102上にCOB(Chip on Board)法によって取り付けられており、リード103により基板102上のパッド104と電気的に接続されている。ベアチップ等の半導体素子101においては、放熱フィン等の冷却手段を素子に直接取り付けることが機械的強度や絶縁性の問題等から困難であるため、従来は、半導体素子101において発生した熱を直接雰囲気中に発散したり、リード103を介して基板102へ伝えた後、雰囲気中に発散したりしていた。また、半導体素子101と基板102との間の熱的な抵抗を低減するために、両者間に樹脂や熱伝導ペースト等を充填することもあった。
【0004】ところが、基板102を構成する絶縁性の主構造体として、ガラスエポキシ等の熱伝導性の低い材料が使用された場合、基板102内での熱の拡散に対する抵抗が大きくなるため、基板102による実効的な放熱面積の拡大があまり期待できないという欠点があった。
【0005】これに対して、基板102内部での面方向の熱伝導特性を改善するために、基板102の面積とほぼ同等の面積を占める金属などの良熱伝導体で構成される熱伝導層105を基板102の内部に設けることも試みられているが、この熱伝導層105と半導体素子101の間及び熱伝導層105と外部雰囲気との間の熱的な抵抗が大きいという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、従来の基板においては、基板内部に設けられた熱伝導層と、表面実装された半導体素子等及び外部雰囲気との間の熱的な抵抗が大きいため、基板による実効的な放熱面積の拡大があまり期待できず、表面実装された半導体素子等の十分な冷却が困難であった。
【0007】そこで、本発明では、上記問題を解決し、基板内部の熱伝導層と、表面実装された半導体素子等及び外部雰囲気との熱的な接続を良好にすることが可能で、基板による実効的な放熱面積を拡大することにより、表面実装された半導体素子等の十分な冷却を実現できる基板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、内部に良熱伝導材で形成された熱伝導層を有する基板において、この基板の表面に露出したパッドと、このパッドと前記熱伝導層とを接続するサーマルビアとを具備することを特徴とする基板を提供する。
【0009】また、この基板において、前記熱伝導層と、前記サーマルビアとが電気伝導性のある材料で構成され、電源あるいは電気信号の伝播に用いられることを特徴とする基板、前記サーマルビアの前記基板の厚み方向の両端部のうち少なくとも一方の端部が他の部分よりも太く形成されていることを特徴とする基板、前記熱伝導層の表面あるいは内部に流体を流すための流路が設けられていることを特徴とする基板、前記パッドが複数設けられており、そのうちの少なくともひとつに放熱促進手段が接続されていることを特徴とする基板をも併せて提供する。
【0010】
【作用】上記した構成を有する本発明によれば、基板内部に設けられた熱伝導層と、表面実装された半導体素子等及び外部雰囲気とを基板表面に露出したパッド及びサーマルビア介して接続することにより、両者間の熱的な接続を良好にすることができる。これにより、基板による実効的な放熱面積を拡大することができ、半導体素子等で発生した熱を基板内部の熱伝導層を介して外部雰囲気に効率よく輸送することができ、半導体素子等を十分に冷却することが可能となる。
【0011】また、熱伝導層及びサーマルビアを電気伝導性のある材料で構成することにより、これらを電源あるいは電気信号を伝播する回路の一部として用いることも可能となる。
【0012】さらに、サーマルビアの端部を太くすることにより、パッドあるいは熱伝導層との接触面積を拡大することができ、半導体素子等の面内を伝導する熱の一部をより効率よく吸収し、熱伝導層に輸送することが可能となる。
【0013】加えて、熱伝導層の表面あるいは内部に冷却用流路を設けたり、一部のパッドに放熱促進手段を設けることにより、半導体素子等で発生した熱をより効果的に除去することが可能となる。
【0014】
【実施例】本発明の実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明に係る基板の一実施例を示す部分断面図である。
【0015】ここでは、半導体素子1が、ガラスエポキシやセラミック製の基板2上に、COB法により実装されている。この半導体素子1はリード3により基板2上のパッド4と電気的に接続されるとともに、結合材5により基板2上のパッド6aと熱的に接続される。なお、接合材5としては、例えば金属粉を含有する熱伝導率の高い接着剤や熱伝導ペーストなどが用いられる。
【0016】上記したパッド6aは、基板2の内部に設けられた熱伝導層7とサーマルビア8により接続される。ここで、熱伝導層7及びサーマルビア8は、例えば金、銅、アルミニウム等の純金属やAl23、AlN、SiC等の熱伝導率の高い良熱伝導材で構成される。サーマルビア8は、通常、基板2の内部の配線(図示省略)に干渉しないように設けられる。ただし、熱伝導層7及びサーマルビア8を電気伝導性のある材料で構成することにより、これらを電源あるいは電気信号を伝播する回路の一部として用いても良い。
【0017】このような構成によれば、基板2がガラスエポキシ等の熱伝導性の低い材料により構成されている場合でも、半導体素子1において発生した熱を基板2内部の熱伝導層7に効率よく輸送することが可能であり、半導体素子1と熱伝導層7との間の熱的な接続を良好にすることができる。
【0018】図2は、上記したサーマルビア7の部分を拡大して示した部分断面図である。ここで、図1に示した部分と同一部分に関しては同一番号を付すことにより重複説明を省略することとする。また、パッド6aに接続されている半導体素子1等の図示は省略する。
【0019】サーマルビア7の形状は、図2(a)に示すように、柱状のものが一般的である。これに対して、図2(b)に示すように、サーマルビア8a,8bがパッド6a及び熱伝導層7と当接する部分(サーマルビア8a,8bの両端部)を他の部分よりも太く形成しても良い。
【0020】このような構成によれば、パッド6a及び熱伝導層7とサーマルビア8a,8bとの接触面積が拡大されるため、半導体素子1の面内を伝導する熱の一部をより効率よく吸収し、熱伝導層7に輸送することが可能となる。
【0021】なお、サーマルビアの形状は、図2(a),(b)に示した場合に限られず、同等の機能を有するものであれば、どのような形状であっても良い。また、図2(b)に示すように、サーマルビアの両端部を太くせずに、発熱する半導体素子1が接続されるパッド6a側の端部のみを太くした形状にしても良い。
【0022】再び、図1に戻って説明を続ける。基板2の表面には、半導体素子1等が接続されていないパッド6bが複数個接続されていることがある。このような場合、これらのパッド6bと熱伝導層7とをサーマルビア8により接続することにより、熱伝導層7内の熱をパッド6bを通じて外部雰囲気に放出する役割をさせることができる。また、この放熱をより効率よく行わせるために、パッド6bに図示したような放熱フィン9等の放熱促進手段を接続しても良い。なお、この放熱フィン9の形状は本実施例のものに限られず、放熱促進手段としての機能を有するものであればどのようなものでも良い。
【0023】このような構成によれば、基板2がガラスエポキシ等の熱伝導性の低い材料により構成されている場合でも、基板2内部の熱伝導層7内の熱を外部雰囲気に効率よく輸送することが可能であり、熱伝導層7と外部雰囲気との間の熱的な接続を良好にすることができる。
【0024】以上説明したような基板2によれば、基板2内部の熱伝導層7と半導体素子1及び外部雰囲気との熱的な接続を良好にすることが可能となる。その結果、熱伝導層7の有効な利用により、基板2における実効的な放熱面積の拡大が可能となり、半導体素子1の十分な冷却が実現できる。さらに、基板2の熱伝導特性が向上することによる付帯的な効果として、ソルダリングにリフロー加熱を行う際の基板2内部の温度分布が小さくなることから、ソルダリング不良を減少させることが可能となる。
【0025】図3は、本発明に係る基板の他の実施例を示した部分断面図である。ここで、図1に示した部分と同一部分に関しては、同一番号を付すことにより、重複説明を省略することとする。
【0026】本実施例においては、サーマルビア8を介して、半導体素子1が接続されたパッド6aに接続されている熱伝導層7の表面と対向する同熱伝導層7の表面に、冷却用流路10が設けられている。この冷却用流路10に、空気、水、フロン、フロロカーボン等の冷媒を流すことにより、半導体素子1で発生した熱をより効果的に除去することが可能となる。これにより、高発熱の半導体素子1であっても、十分な冷却を行うことができる。
【0027】なお、本実施例で示した冷却用流路10は、熱伝導層7の内部に設けても同様の効果がえられる。また、冷却用流路10の形状は、本実施例のものに限られず、種々変形が可能である。
【0028】以上説明した本発明に係る基板においては、上記した放熱フィン等の放熱促進手段や冷却用流路を任意に選択して用いることができ、性能や用途に応じて種々の冷却手段を有する基板とすることができる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、基板内部の熱伝導層と、表面実装された半導体素子等及び外部雰囲気との熱的な接続を良好にすることが可能で、基板による実効的な放熱面積を拡大することにより、表面実装された半導体素子等の十分な冷却を実現できる基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基板の一実施例を示す部分断面図。
【図2】サーマルビアの部分を拡大して示した部分断面図
【図3】本発明に係る基板の他の実施例を示す部分断面図。
【図4】従来の基板を示す部分断面図。
【符号の説明】
1 半導体素子
2 基板
3 リード
4,6a,6b パッド
5 結合材
7 熱伝導層
8 サーマルビア
9 放熱フィン
10 冷却用流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に良熱伝導材で形成された熱伝導層を有する基板において、この基板の表面に露出したパッドと、このパッドと前記熱伝導層とを接続するサーマルビアとを具備することを特徴とする基板。
【請求項2】 前記熱伝導層と、前記サーマルビアとが電気伝導性のある材料で構成され、電源あるいは電気信号の伝播に用いられることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】 前記サーマルビアの前記基板の厚み方向の両端部のうち少なくとも一方の端部が他の部分よりも太く形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項4】 前記熱伝導層の表面あるいは内部に流体を流すための流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項5】 前記パッドが複数設けられており、そのうちの少なくともひとつに放熱促進手段が接続されていることを特徴とする請求項1記載の基板。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−77347
【公開日】平成6年(1994)3月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−229785
【出願日】平成4年(1992)8月28日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)