説明

基板の塗装方法

【課題】表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部の表面に微小凹凸を形成し、且つ方形状の凸部の表面をそれぞれ異なる色調に仕上がるように塗装する方法を提供すること。
【解決手段】表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板の全表面に着色塗料(a)を塗装し、着色塗料(a)とは色調が異なる着色塗料(b)を凸部表面のみに塗装し、着色塗料(b)の塗膜が未乾燥の間に塗膜に骨材を散布して凸部表面に骨材を固着させ、次いでその得られた基板をコンベアによって搬送しつつ、コンピューターからの制御信号によって個々のエアレススプレーノズルからの着色塗料(c)の吐出、停止を制御して所定の凸部表面を塗装することにより、微小凹凸を形成した各々の凸部表面をそれぞれ異なる色調に塗装する塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部の表面に微小凹凸を形成し、且つ該方形状の凸部の表面をそれぞれ異なる色調に仕上がるように塗装してレンガ柄、タイル柄、石積柄等の自然感のある立体柄に仕上げる塗装方法に関する。
【0002】
【従来技術】近年、外装に用いる板材等として、基板表面に切削加工やエンボス成形等で溝部を形成し、該溝部と、該溝部を介して区画された多数の方形状の凸部とをそれぞれ異なる色調に仕上がるように塗装して得られる、レンガを積み上げたり、タイルを貼り並べた様な外観を有する塗装板が増加している。
【0003】この様な外観を有する塗装板を得るための塗装方法として、溝部の仕上り色に相当する塗料を例えばプライマー層を介して基板の全面にスプレー塗装し、次いで凸部のみをロールコーター等で塗装して、溝部と凸部とを異なる色調に塗り分ける塗装方法が採用されているが、この様な塗装方法によって得られる塗装板においては各々の凸部は同じ色調であり、本物のレンガやタイルのように1枚、1枚の微妙な色の変化や、又1枚のレンガやタイル内での微妙な色の変化に及ぶべきもなく、意匠性に乏しいものである。
【0004】この様な問題を解決する手段として、特開平6−155729号公報、特開平7−62828号公報等に開示されているように、ジェットプリンターによってタイルやレンガに相当する部分である凸部のみを凸部相互間で異なる色調に塗装したり、あるいは1凸部内で部分的に異なる色調に塗装したりする技法が提案されているが、ジェットプリンターがライン方式であるため、ノズル口径0.1〜0.4mm、ノズルピッチ0.5〜4mmとして基板の塗装に対応しようとすれば、幅方向全体を塗装するためにはノズル数が膨大な数となり、個々のノズルの保守、点検等に多大の労力を要するという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な諸問題を解決するものであり、表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板の溝部及び凸部にそれぞれ色調が異なる塗膜を形成し、且つ骨材を固着させて微小凹凸を形成した凸部表面に、個々のノズルの保守、点検が容易で簡便なエアレススプレー装置を用いて、個々の凸部表面の色調及び質感が異なり且つ耐久性に優れている塗装板となるように塗装する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を達成する為に鋭意検討の結果、基板の方形状の凸部表面に骨材を固着させて微小凹凸を形成し、且つ塗料吐出幅が基板の方形状の凸部の表面幅に概ね合致するエアレススプレーノズルと該スプレーノズルからの塗料の吐出、停止を制御するコンピューターからの制御信号とを組合せて用いることによって、上記の目的が達成されること、並びに基板の方形状の凸部の表面幅に概ね合致する塗料吐出幅を有するエアレススプレーノズルを用い、加圧状態にある複数の色調の異なる塗料の供給系を、それらの供給系のうちの特定の供給系に適宜選択しながら切り替えることのできる個々の切り替え装置を介して、個々のエアレススプレーガンに接続して用いることにより、好ましくは、該切り替え装置をタイマー又はコンピューターからの制御信号によって制御することにより上記目的が達成されることを見い出し、本発明に到達した。
【0007】即ち、本発明の基板の塗装方法の第一の態様は、表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板であって、該凸部が該基板の幅方向に複数列配列されている基板の全表面に着色塗料(a)を塗装する第1工程、着色塗料(a)とは色調が異なる着色塗料(b)を該凸部表面のみに塗装する第2工程、着色塗料(b)の塗膜が未乾燥の間に該塗膜に骨材を散布して該凸部表面に骨材を固着させる第3工程、及び上記第1〜3工程で得られた基板をコンベアによって搬送しつつ、該基板の上方に、塗料吐出幅が該凸部の表面幅に概ね合致するエアレススプレーノズルを該コンベアの幅方向に複数個配列し、コンピューターからの制御信号によって個々のエアレススプレーノズルからの着色塗料(c)〔但し、着色塗料(c)は着色塗料(a)、着色塗料(b)とは色調が異なる塗料である。〕の吐出、停止を制御して所定の凸部表面に着色塗料(c)を塗装する第4工程を含み、該諸工程により、微小凹凸を形成した各々の凸部表面の色調が2種以上であり且つ各々の色調が異なる凸部表面が基板内にランダムに存在する塗装板を得ることを特徴とする。
【0008】また、本発明の基板の塗装方法の第二の態様は、表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板であって、該凸部が該基板の幅方向に複数列配列されている基板の全表面に着色塗料(a)を塗装する第1工程、着色塗料(a)とは色調が異なる着色塗料(b)を該凸部表面のみに塗装する第2工程、着色塗料(b)の塗膜が未乾燥の間に該塗膜に骨材を散布して該凸部表面に骨材を固着させる第3工程、及び上記第1〜3工程で得られた基板をコンベアによって搬送しつつ、該基板の上方に、塗料吐出幅が該凸部の表面幅に概ね合致するエアレススプレーノズルを該コンベアの幅方向に複数個配列し、加圧状態にある複数の色調の異なる着色塗料(c)の各々の供給系の全てを、それらの供給系のうちの特定の供給系に適宜選択しながら切り替えることのできる個々の切り替え装置を介して、個々のエアレススプレーガンに接続し、該個々の切り替え装置をそれぞれ独立に制御してエアレススプレーガンに供給される着色塗料(c)を変化させてエアレススプレーノズルから着色塗料(c)を吐出し、所定の凸部表面に着色塗料(c)を塗装する第4工程を含み、該諸工程により、微小凹凸を形成した各々の凸部表面をそれぞれ異なる色調に塗装することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の塗装方法について詳細に説明する。本発明でいう、「表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板であって、該凸部が該基板の幅方向に複数列配列されている基板」とは、基板が外壁材や内装材に使用されているスレート板、木片セメント板、パルプセメント板、石綿セメント板、軽量骨材混入セメント板、発泡コンクリート板、ガラス繊維強化セメント板、珪酸カルシウム板、炭酸マグネシウム板、又はその他の水硬性板材等の無機系基板、及び冷延鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板等の他に、亜鉛、亜鉛系合金、アルミニウム、クロム、ニッケルあるいはこれらの合金をめっきしためっき鋼板等の各種の金属板であり、エンボス成形や溝の切削加工により表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部(1個のタイルやレンガあるいは石に相当する)を有し且つ該凸部が該基板の幅方向に複数列配列されてレンガ調やタイル調あるいは石積調の様な方形状の凸部柄が設けられている基板である。また、本発明において、「色調が異なる」とは、色相、明暗、濃淡、艶の有無等に差異があり、外観的に差異があることを意味する。
【0010】本発明においては、第1工程として、上記基板の全表面に例えばエアレススプレー等の手段で溝部の仕上り色となる着色塗料(a)を塗装する。なお、本発明においては、着色塗料(a)を塗装する前に基板を補強し、あるいは基板への雨水等の浸入を防止し、あるいは着色塗料(a)や後述する着色塗料(b)の塗膜の密着性を良くする目的でプライマーを塗装してもよい。次いで第2工程として、全面に着色塗料(a)の塗膜を形成させた基板の凸部表面のみを、凸部の仕上り色の1色となる着色塗料(b)を例えばロールコータ等の手段で塗装する。なお、溝部と凸部とを色調が異なる仕上げとするため、着色塗料(b)は着色塗料(a)とは色調が異なる塗料である。
【0011】次いで第3工程として、着色塗料(b)の塗膜が未乾燥の間に骨材を該塗膜全体に、もしくは部分的に散布して該塗膜に付着させる。付着した骨材は着色塗料(b)の塗膜が硬化すると共に強固に固着し、凸部表面に骨材からなる微小凹凸を形成する。なお、骨材としては光透過性骨材、光不透過性骨材、更には着色させた骨材あるいはこれらの混合物からなる骨材等公知の各種骨材が使用できる。また、骨材の形状については球状、不定形状あるいは偏平状等特に制限はない。また、骨材の粒径は、微小凹凸の視認性、固着強度等の観点から20〜2000μm、好ましくは50〜500μmが適当である。具体的には、珪砂、陶磁器粉、マイカ粉、金属粉、樹脂粉、炭酸カルシウム粉、タルク粉、クレー粉、ガラス粉等が代表的な骨材として挙げられる。このようにして凸部表面に骨材を固着させ、また溝部等に存在する固着しなかった骨材を吸引除去あるいは加圧気体吹付除去等により除去する。
【0012】次いで第4工程で、上記第1〜3工程で得られた基板をコンベアによって搬送しつつ、以下の方法により所定の凸部表面に着色塗料(c)を塗装する。第4工程においては、コンベアの搬送速度としては一般的には1〜80m/分の速度が使用可能であるが、生産性や確実な塗装の観点から10〜60m/分の範囲が好ましい。第4工程で用いるエアレススプレー法自体は公知のものである。通常のエアレススプレー法では、塗料吐出幅(一般にスプレーパターン幅と称する)が7.5〜60cmであるものが一般的に用いられており、特に17〜48cmのものの使用頻度が高い。
【0013】これに対して、本発明の特徴は、ノズル口径、ノズル形状、ノズル先端と基板との間の距離、塗料粘度、吐出圧力等の諸条件を適宜に選択して塗料吐出幅を基板の方形状の凸部の表面幅に概ね合致する幅、好ましくは3〜20cmの幅にすることにある。意匠表現の面を考慮すると、基板の方形状の凸部の表面幅及び塗料吐出幅を3.5〜15cmの間で同一とすることが一層好ましい。ノードソン社製ノズル、エアレスポンプ(1:20)を用いた場合のそれらの諸条件と塗料吐出幅との関係を下記の表に例示する。
【0014】
【表1】


【0015】本発明においては、加圧状態にある塗料の供給系の圧力、即ち、塗料の圧送圧力としては2〜100Kg/cm2 の範囲が使用可能であるが、圧力が低いと吐出安定性に欠ける傾向があり、また、圧力が高いと噴霧塗料滴の飛散等が起り、塗装周辺部の境界が不明暸になるきらいがある。従って、塗料の圧送圧力は3〜40Kg/cm2 の範囲であることが好ましい。
【0016】本発明の第一の態様の第4工程の特徴は、基板の表面に溝部を介して区画された所定の凸部表面を制御して塗装する際に、制御塗装する為のデーターを予めコンピューターに記憶させ、該コンピューターからの制御信号を塗料圧送経路内にある開閉弁の開閉を行う駆動信号に変換し、開閉弁を作動させ、開閉弁に直結する個々のエアレススプレーノズルからの塗料の吐出、停止を制御することにある。
【0017】本発明の第一の態様の第4工程の塗装方法においては、エアレススプレーノズルをコンベアの幅方向に複数個配列するか、又はコンベアの幅方向に配列したエアレススプレーノズル列をコンベアの移動方向の前後に複数列配置して実施する。コンベアの幅方向に配列したエアレススプレーノズル列をコンベアの移動方向の前後に複数列配置して実施した場合には次のような利点が得られる。
【0018】(i)塗料の吐出・停止・再吐出までの間の停止時間として、最短でも、機械的な制約から0.2秒位必要である。しかし、表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有している基板の搬送スピードが速くなると、その程度の塗料吐出停止時間では移動している溝部の通過時間に同調させることは不可能となり、凸部の塗り残しが発生することになる。しかし、コンベアの幅方向に配列したエアレススプレーノズル列をコンベアの移動方向の前後に複数列、例えば2列配置して実施することにより、1個のエアレススプレーノズルが1個置きの方形状の凸部表面を塗装すればよいことになり、従って基板の搬送スピードを速くすることが可能となる。
(ii)一群のエアレススプレーノズル列から1色の塗料を、又他の一群のエアレススプレーノズル列から他色の塗料を塗布することにより凸部を多色仕上げすることができる。
【0019】本発明の第二の態様の第4工程の塗装方法においては、エアレススプレーノズルをコンベアの幅方向に複数個配列する。この配列個数は基板の短辺幅方向に出現する、溝部で区画された凸部表面の列の最大数であることが好ましい。個々のノズルにあっては、基板先端がノズルによる塗装領域に入った時点で塗装を開始し、基板の後端がそのノズルによる塗装領域から出る直前に塗装を中断する。この間、制御信号によって、色調の異なる塗料の供給系のうちの特定の供給系に周期的に又は連続的に切り替えることにより、方形状の凸部を、隣接する凸部とは色調が異なり、外観が異なるように任意に塗装することが可能である。
【0020】本発明の第二の態様の第4工程の特徴は、加圧状態にある複数の色調の異なる塗料の各々の供給系の全てを、それらの供給系のうちの特定の供給系に適宜選択しながら切り替えることのできる個々の切り替え装置を介して、個々のエアレススプレーガンに接続することである。このような切り替え装置としては、例えば実用新案登録公報第2510411号公報に記載されているような、加圧状態にある複数の色調の異なる塗料の供給系の各々を、塗料の供給を制御するバルブを介して、塗料の供給を受ける1つの塗料混合部に接続し、該混合部から塗装ガンに塗料を供給する供給装置などが知られているが、本発明にあっては、必ずしもこのような装置に限定されるものではない。例えば、加圧状態にある塗料供給系の複数の開放弁を介してエアレススプレーガンに接続し、複数の供給弁の1弁を開き、他を閉じる。次に開いている弁を閉じ、閉じている弁を開くような動作を繰り返すような塗料供給系の切り替え装置であっても良い。本発明においては、個々の切り替え装置をそれぞれ独立に周期的に制御してエアレススプレーガンに供給される塗料を切り替えることにより、例えば、1個の方形状の凸部がノズルの下を通過する時間に相当する時間毎に切り替えることにより、a)各々の凸部表面をそれぞれ異なる色調及び質感に塗装すること、又はb)表面の色調及び質感が異なる2種以上の凸部表面を持ち且つそれらが塗装板内にランダムに存在するように各々の凸部表面を塗装することができ、更には、個々の切り替え装置をそれぞれ独立に、1個の方形状の凸部がノズルの下を通過する時間に相当する時間よりも短い時間毎に又は連続的に制御してエアレススプレーガンに供給される塗料を変化させることにより、c)各々の凸部表面をそれぞれ異なる色調及び質感に塗装し且つ個々の凸部表面においても部分的に色調及び質感が異なるように各々の凸部表面を塗装することができる。
【0021】又、本発明の第二の態様の第4工程の他の特徴は、基板の表面に溝部を介して区画された各々の凸部表面に異った色調の塗料を塗装するために、切り替え装置をタイマー又はコンピュータからの制御信号によって制御することである。即ち、制御塗装する為のデーターを予めコンピューターに記憶させ、あるいは、タイマーに時間設定を行い、該コンピューターからの制御信号あるいはタイマーからの制御信号を塗料圧送路内にあるバルブの開閉を行う駆動信号に変換し、バルブを作動させて、加圧状態にある複数の色調の異なる塗料の各々の供給系のうちの特定の供給系に適宜選択しながら切り替えて特定の塗料を個々のエアレススプレーガンに供給し、個々のエアレススプレーノズルから吐き出される塗料の種類、塗料の吐出、停止を制御することにある。
【0022】一般的には、エアレススプレーノズルの塗料の吐出停止から再吐出までの間の停止時間としては機械的な制約から最短でも0.2秒位必要である。しかし、表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板の搬送スピードが速くなると、その程度の塗料吐出停止時間では移動している溝部の通過時間に同調させることは不可能となり、凸部の塗り残しが発生することになる。しかし、前記の通り、本発明の塗装方法では、基板の先端から、後端までノズルからの塗料の吐出は連続して行なわれ、供給される塗料が周期的に変動するため、方形状の凸部区画に追随することが可能である。但し、塗料の切り替えを瞬間的に実施することができないが、切り替えの際に塗料の混合が生じて切り替わりの境界部分では徐々に色調が変化するので、1つの方形状の凸部内で、例えば1つのタイル内で微妙な色調の変化を表現できる特徴が生ずる。
【0023】次に本発明を図1〜図7に基づいて説明する。図1は本発明の塗装方法によって得られる塗装板の平面図であり、図2は図1の塗装板の一部の斜視図である。図1及び図2に示されているように、塗装板1は長方形状基板2の表面に設けられた溝部3、溝部3を介してレンガ調に区画された多数の方形状の凸部4を有し、各々の凸部4の表面は骨材による微小な凹凸(図示せず)を形成し、それぞれ異なる数種の色調及び質感に塗装されており、例えば濃色色調凸部5、やや濃色色調凸部6、やや淡色色調凸部7、淡色色調凸部8を有しており、これらの色調の凸部はランダムに存在している。このような色調及び質感を有する塗装板1は、建物に施工した状態では本物のレンガ等を積み重ねた様な外観に近似しており、意匠性に優れた塗装板である。
【0024】上記のような塗装板1得るための本発明の第一の態様の塗装方法の一例を図3〜図4によって説明する。図3は本発明の第一の態様の第4工程の実施の形態の一例を説明するための一部欠載概略正面図であり、図4はその一部分の右側概略側面である。12は基板11を前方に搬送するコンベアであり、コンベア12の上方には、コンベア12の幅方向全体に亘って、先端にノズルを有するエアレススプレーガン14が配置されている。エアレススプレーガン14には、塗料の吐出・停止を行う制御弁13を介して塗料タンク15内の塗料16を送り込むポンプ17が接続されている。図5はこのようなエアレススプレー装置の1系統の詳細を例示したものであるが、本発明の実施はそのような装置に限定されるものでない。
【0025】19はエアレススプレーガン14からの塗料の吐出・停止を実行するための制御弁13を個別に制御するバルブ制御装置である。又21は塗装すべき色調に対応する色調パターンを記録したパターンデーターであり、22はインプットされたパターンデーター21に基づき、バルブ制御装置19に制御信号を発するコンピューターであり、23は投光器24及び受光器25をコンベア12上の基板搬送路の両側の所定位置に設けてなる光電管式センサーであり、検出信号をコンピューター22に送信する。26はコンベア12の駆動ロール27に連結したエンコーダーであり、極小回転角、例えば2000分の360度の極小回転角毎に、コンピューター22にパルスを送信する。
【0026】図3及び図4に示す装置を用いて本発明の第一の態様の第4工程の塗装方法を実施する際に、表面に凸部4を有し且つ骨材を固着させた下層塗膜が予め形成されている基板11がコンベア12上を搬送されてくると、基板11の前端部が所定位置に到来したことをセンサー23が検出して検出信号をコンピューター22に送信する。一方、コンベア12の動作に併い、駆動ロール27に設けたエンコーダー26からパルスがコンピューター22に発信されている。コンピューター22はセンサー23からの信号により上記パルスを計数し始め、該パルス数が予め記憶させた設定領域に至ると、パルス数に応じて前記色調パターンのパターンデーター21に基づく制御信号を遂次バルブ制御装置19に送信指令し、これによりバルブ制御装置19が塗料開閉制御弁13を個別に開閉制御し、塗料16が制御弁13の開放時にエアレススプレーガン14のノズルから搬送中の基板11の表面の所定位置に吐出されて前記パターンデーター21に基づく色調5〜8を凸部4に塗装して所期の基板が得られる。
【0027】基板に多様の色彩を塗装して異なる色調及び質感を与える場合には、図6に示すように、コンベア31の幅方向にそれぞれ配列した上記と同様のエアレススプレーガン群32、33、34をコンベアの移動方向の前後に複数列配置し、それぞれのエアレススプレーガン群32、33、34にそれぞれ色調の異なる塗料を上記と同様に供給し、エアレススプレーガン群32、33、34からそれぞれ色調が異なる塗料を吐出させて、コンベア31上を前送される基板11表面の凸部4に多色の塗装を行ない、所期の凸部色調5、6、7、8を有する塗装板1を得ることができる。
【0028】上記のような塗装板1を得るための本発明の第二の態様の塗装方法の一例を図7によって説明する。図7は、本発明の第二の態様の第4工程の実施の形態を説明する為の全体配置を示す、一部欠載概略正面図である。図7に示されているように、基板11はコンベア12により前方に搬送され、コンベア12の上方には、コンベア12の幅方向全体に亘って、先端にノズルを有するエアレススプレーガン14が配置されている。エアレススプレーガン14には、塗料の吐出・停止を行う制御弁13と複数の塗料タンク15A、15B、15C内の複数塗料16A、16B、16Cを圧送するポンプ群17A、17B、17Cが塗料切り替え装置18を介して接続されている。この塗料切り替え装置18としては、実用新案登録公報第2510411号公報に記載されている形式のものを利用することができる。
【0029】19はエアレススプレーガン14からの塗料の吐出・停止を実行するための制御弁13と、塗料切り替え装置18とを個別に制御するための制御装置である。又21は塗装すべき色調に対応する色調パターンを記録したパターンデーターであり、22はインプットされたパターンデーター21に基づき、制御装置19に制御信号を発するコンピューターであり、23は投光器24及び受光器25をコンベア12上の基板搬送路の両側の所定位置に設けてなる光電管式センサーであり、検出信号をコンピューター22に送信する。26はコンベア12の駆動ロール27に連結したエンコーダーであり、極小回転角、例えば2000分の360度の極小回転角毎に、コンピューター22にパルスを送信する。
【0030】図7に示す装置を用いて本発明の第4工程の塗装方法を実施する際には、第1〜第3工程で着色塗料(a)の塗膜、着色塗料(b)の塗膜を形成し、且つ骨材を固着させた基板11がコンベア12上を搬送されてくると、基板11の前端部が所定位置に到来したことをセンサー23が検出して検出信号をコンピューター22に送信する。一方、コンベア12の動作に併い、駆動ロール27に設けたエンコーダー26からパルスがコンピューター22に発信されている。コンピューター22はセンサー23からの信号により上記パルスを計数し始め、該パルス数が予め記憶させた設定領域に至ると、パルス数に応じて前記色調パターンのパターンデーター21に基づく制御信号を遂次制御装置19に送信指令し、これにより制御装置19が個々の塗料開閉制御弁13及び個々の塗料切り替え装置18を個別に開閉制御し、個々の塗料16A、16B又は16Cが個々の制御弁13の開放時に個々のエアレススプレーガン14から搬送中の基板11の表面の所定位置に吐出されて前記パターンデーター21に1づく色調5〜8を凸部4に塗装して所期の塗装板が得られる。
【0031】このようにして得られた塗装板は更に必要に応じて仕上がり外観の調整や耐久性の確保を目的として全表面に(カラー)クリヤー塗料を塗装して仕上げることも可能である。なお、本発明で使用するプライマー、着色塗料(a)、着色塗料(b)、着色塗料(c)及びクリヤー塗料は、焼付硬化型、常温硬化型、活性エネルギー線硬化型等で有機溶剤系、水系、無溶剤系等の従来から公知の各種塗料の何れのタイプの塗料であってもよい。又、これらの塗料はそれぞれの目的を逸脱しない範囲で塗料中に着色粒状物や金属粉、マイカ粉等を配合して多彩色としたり、光輝感や干渉感のある塗膜を形成させることも可能である。
【0032】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の第一の態様の塗装方法においては、第4工程において塗料吐出幅が基板の方形状の凸部の表面幅に概ね合致するエアレススプレーノズルと該スプレーノズルからの塗料の吐出、停止を制御するコンピューターからの制御信号とを組合せて用いるので、溝部及び凸部にそれぞれ色調が異なる下層塗膜が予め形成され、また凸部表面に骨材による微小凹凸が形成されている基板の凸部表面の色調及び質感が2種以上であり且つ各々の色調が異なる凸部表面が基板内にランダムに存在し、しかも耐久性に優れた塗装板を個々のノズルの保守、点検が容易で簡便な装置で塗装することができる。
【0033】また、本発明の第二の態様の塗装方法においては、第4工程において基板の方形状の凸部の表面幅に概ね合致する塗料吐出幅を有するエアレススプレーノズルを用い、加圧状態にある複数の色調の異なる塗料の供給系を、それらの供給系のうちの特定の供給系に適宜選択しながら切り替えることのできる個々の切り替え装置を介して、個々のエアレススプレーガンに接続して用いているので、表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板の溝部及び凸部にそれぞれ色調が異なる下層塗膜が予め形成され、また凸部表面に骨材による微小凹凸が形成されている基板の凸部表面を、個々のノズルの保守、点検が容易で簡便なエアレススプレー装置を用いて、個々の凸部表面の色調及び質感が異なり且つ耐久性に優れている立体感のある塗装板となるように塗装することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の塗装方法で得られる基板の平面図である。
【図2】 図1の基板の一部の斜視図である。
【図3】 本発明の第4工程の実施の形態の一例を説明するための一部欠載概略正面図である。
【図4】 図3に示す実施の形態のその一部分の右側概略側面である。
【図5】 エアレススプレー装置の1系統の詳細を例示する概略説明図である。
【図6】 本発明の第4工程の実施の形態の、他の例を説明するための一部分の右側概略側面図である。
【図7】 本発明の第4工程の実施の形態の一例を説明するための一部欠載概略正面図である。
【符号の説明】
1 塗装板
2 基板
3 溝部
4 方形状の凸部
5〜8 種々の色調に塗装された凸部
11 基板
12 コンベア
13 制御弁
14 エアレススプレーガン
15、15A、15B、15C 塗料タンク
16、16A、16B、16C 塗料
17、17A、17B、17C ポンプ
18 塗料切り替え装置
19 制御装置
21 パターンデーター
22 コンピューター
23 光電管式センサー
24 投光器
25 受光器
26 エンコーダー
27 駆動ロール
31 コンベア
32 エアレススプレーガン
33 エアレススプレーガン
34 エアレススプレーガン

【特許請求の範囲】
【請求項1】表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板であって、該凸部が該基板の幅方向に複数列配列されている基板の全表面に着色塗料(a)を塗装する第1工程、着色塗料(a)とは色調が異なる着色塗料(b)を該凸部表面のみに塗装する第2工程、着色塗料(b)の塗膜が未乾燥の間に該塗膜に骨材を散布して該凸部表面に骨材を固着させる第3工程、及び上記第1〜3工程で得られた基板をコンベアによって搬送しつつ、該基板の上方に、塗料吐出幅が該凸部の表面幅に概ね合致するエアレススプレーノズルを該コンベアの幅方向に複数個配列し、コンピューターからの制御信号によって個々のエアレススプレーノズルからの着色塗料(c)〔但し、着色塗料(c)は着色塗料(a)、着色塗料(b)とは色調が異なる塗料である。〕の吐出、停止を制御して所定の凸部表面に着色塗料(c)を塗装する第4工程を含み、該諸工程により、微小凹凸を形成した各々の凸部表面の色調が2種以上であり且つ各々の色調が異なる凸部表面が基板内にランダムに存在する塗装板を得ることを特徴とする基板の塗装方法。
【請求項2】コンベアの幅方向に配列したエアレススプレーノズル列をコンベアの移動方向の前後に複数列配置し、それぞれのエアレススプレーノズル列から着色塗料(c)を吐出させて塗装することを特徴とする請求項1記載の基板の塗装方法。
【請求項3】コンベアの幅方向に配列したエアレススプレーノズル列をコンベアの移動方向の前後に複数列配置し、それぞれのエアレススプレーノズル列から色調が異なる着色塗料(c)を吐出させて多色塗装することを特徴とする請求項1又は2記載の基板の塗装方法。
【請求項4】表面に溝部を介して区画された多数の方形状の凸部を有する基板であって、該凸部が該基板の幅方向に複数列配列されている基板の全表面に着色塗料(a)を塗装する第1工程、着色塗料(a)とは色調が異なる着色塗料(b)を該凸部表面のみに塗装する第2工程、着色塗料(b)の塗膜が未乾燥の間に該塗膜に骨材を散布して該凸部表面に骨材を固着させる第3工程、及び上記第1〜3工程で得られた基板をコンベアによって搬送しつつ、該基板の上方に、塗料吐出幅が該凸部の表面幅に概ね合致するエアレススプレーノズルを該コンベアの幅方向に複数個配列し、加圧状態にある複数の色調の異なる着色塗料(c)の各々の供給系の全てを、それらの供給系のうちの特定の供給系に適宜選択しながら切り替えることのできる個々の切り替え装置を介して、個々のエアレススプレーガンに接続し、該個々の切り替え装置をそれぞれ独立に制御してエアレススプレーガンに供給される着色塗料(c)を変化させてエアレススプレーノズルから着色塗料(c)を吐出し、所定の凸部表面に着色塗料(c)を塗装する第4工程を含み、該諸工程により、微小凹凸を形成した各々の凸部表面をそれぞれ異なる色調に塗装することを特徴とする基板の塗装方法。
【請求項5】個々の切り替え装置をそれぞれ独立に制御してエアレススプレーガンに供給される着色塗料(c)を変化させることにより、表面の色調が異なる2種以上の凸部表面を持ち且つそれらが塗装板内にランダムに存在するように該各々の凸部表面を塗装することを特徴とする請求項4記載の基板の塗装方法。
【請求項6】個々の切り替え装置をそれぞれ独立に、1個の方形状の凸部がノズルの下を通過する時間に相当する時間よりも短い時間毎に又は連続的に制御してエアレススプレーガンに供給される着色塗料(c)を連続的に変化させることにより、該各々の凸部表面をそれぞれ異なる色調に塗装し且つ個々の凸部表面においても部分的に色調が異なるように該各々の凸部表面を塗装することを特徴とする請求項4又は5記載の基板の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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