説明

基板処理装置

【課題】保持体の回転により被処理物の全ての箇所が処理液に浸漬でき、被処理物の全領域で均一な処理が可能で、被処理物の全領域を製品として使用可能とすることができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】ウエハ5を処理するための処理液4を貯留する処理槽1と、ウエハ5の中心から最外位置までの距離より大きい半径を有する円の円周上位置においてウエハ5を把持することなく保持してウエハ5を処理液4に浸漬する保持体30と、円周の中心を回転中心として保持体30を回転させる回転手段101とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理液が入った処理槽に被処理物を浸漬処理する基板処理装置に関し、特に、被処理物の全領域で均一な処理が可能で、被処理物の全領域を製品として使用可能に係るものである。
【背景技術】
【0002】
表裏導通型の半導体素子の電極部には、はんだ付性確保のために、Al、Ni、Au等からなる多層構造の膜が形成されている。近年、電気的な性能の向上を狙って基板厚の薄肉化が進んでいるが、広く用いられている蒸着やスパッタ等の乾式法による成膜は高温でなされるため、基板と電極との線膨張係数の差によって基板が反ってしまうという問題がある。そこで、従来の乾式法に加え、基板の反りを抑制する方法として低温での成膜が可能な無電解めっきによる成膜が用いられている。
【0003】
無電解めっきにより成膜を行う場合、従来の乾式法による成膜と比べ、膜厚の均一性が低いという問題がある。無電解めっきの成膜速度は、槽内の温度分布、被めっき面でのめっき液流れの向き等の条件が支配的な要因となって変化する。このため、均一なめっき膜を得るためには、めっき槽全体において温度、流れの向きを均一化させることが肝要であるが、完全に均一化させることは困難であった。
【0004】
従来の基板処理装置では、処理槽内で基板を回転させることで、槽内の位置に依存した温度分布、流れの向き等の影響をなくし、膜厚分布を均一に形成するものが示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−57593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の基板処理装置は、基板の固定を治具の隙間に嵌入する構成により行っている。基板のズレによる保持具からの落下や、基板が動いた際に治具に衝突し割れることを防ぐためには、固定部分の保持具と基板と間の間隔は非常に狭いものとならざるを得ない。しかし、基板と保持具と間の間隔が狭い場合、水洗工程において保持具と基板と間に水が溜まり、次工程で処理液と溜まった水との置換が行われなかった場合、この領域は処理ムラとなるという問題点があった。さらに、この水が処理液中で基板表面を伝って広がった場合は、保持具近傍の領域にも処理ムラは広がり、製品として使用不可能な領域が拡大してしまうという問題点があった。また、この問題は回転機構を有しない一般的なバッチ処理方法においても基板と保持具と間の相対的な位置は変化しないため同様に存在する。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、被処理物の全領域で均一な処理が可能で、被処理物の全領域を製品として使用可能となる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、被処理物を処理するための処理液を貯留する処理槽と、
上記被処理物の中心から最外位置までの距離より大きい半径を有する円の円周上位置において上記被処理物を把持することなく保持して上記被処理物を上記処理液に浸漬する保持体と、
上記円周の中心を回転中心として上記保持体を回転させる回転手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の基板処理装置は、被処理物を処理するための処理液を貯留する処理槽と、
上記被処理物の中心から最外位置までの距離より大きい半径を有する円の円周上位置において上記被処理物を把持することなく保持して上記被処理物を上記処理液に浸漬する保持体と、
上記円周の中心を回転中心として上記保持体を回転させる回転手段とを備えるので、
保持体の回転により被処理物の全ての箇所が処理液に浸漬でき、
被処理物の全領域で均一な処理が可能で、被処理物の全領域を製品として使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1の基板処理装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示し基板処理装置のA−A’断面を示す断面図である。
【図3】図2に示した基板処理装置のB−B’断面を示す断面拡大図である。
【図4】図1に示した保持体の開閉機構を説明する図である。
【図5】図1に示した基板処理装置におけるウエハのケースに係る力の関係を説明する図である。
【図6】図1に示した基板処理装置における回転前のウエハとケースとの相対的な位置関係を示した図である。
【図7】図1に示した基板処理装置におけるケースがα回転した場合の回転後のウエハとケースとの相対的な位置関係を示した図である。
【図8】図1に示した基板処理装置の回転前の保持具とウエハとの位置関係を示した図ある。
【図9】図8に示した基板処理装置のケースが1回転した場合の回転後の保持具により挟まれた領域を示した図である。
【図10】図1に示した基板処理装置のケースの構成を示した断面図および斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態2における基板処理装置のケースの構成を示した断面図および斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態3における基板処理装置の保持具とウエハとの位置関係を示した図ある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、被処理物として円盤形状の半導体のウエハ、被処理物を保持する保持体としてケースを利用した場合で、基板処理装置として、前処理およびめっき処理装置について述べるが、本発明は、ウエハ以外の円盤状または回転可能な形状の被処理物、ケース以外の被処理物を保持しうる保持体に対しても適宜適応できるものである。
【0012】
図1は実施の形態1における基板処理装置としてのめっき処理装置の構成を示す図、図2は図1に示し基板処理装置のA−A’断面を示す断面図、図3は図2に示した基板処理装置のB−B’断面を示す断面拡大図、図4は図1に示した保持体の開閉機構を説明する図、図5は図1に示した基板処理装置におけるウエハのケースに係る力の関係を説明する図、図6は図1に示した基板処理装置における回転前のウエハとケースとの相対的な位置関係を示した図、図7は図1に示した基板処理装置におけるケースがα回転した場合の回転後のウエハとケースとの相対的な位置関係を示した図、図8は図1に示した基板処理装置の回転前の保持具とウエハとの位置関係を示した図、図9図8に示した基板処理装置のケースが1回転した場合の回転後の保持具により挟まれた領域を示した図である。
【0013】
図において、基板処理装置100は被処理物としてのウエハ5の処理を行うものであり、ウエハ5を処理する例えばめっき処理するための処理液4として例えばめっき液を貯留する処理槽1と、ウエハ5の中心から最外位置までの距離、すなわち、ウエハ5は円盤形状にて形成されているためウエハ5の半径がこれに相当する距離であり、ウエハ5の半径より大きい半径を有する円の円周上位置においてウエハ5を把持することなく保持してウエハ5を処理液4に浸漬する保持体30と、保持体30の円周の中心を回転中心の軸7として保持体30を回転速度を制御して回転させる回転手段101とを備えている。
【0014】
保持体30は、円周位置上においてウエハ5の外周面を支持する支持壁部17が内面の円周の円筒形状の容器としてのケース3にて構成されている。そして支持壁部17は、処理液4を通過可能となるように例えば図10に示したような格子形状にて形成されている。さらに、保持体30は、例えば図3に示すようにウエハ5の表面側および裏面側からウエハ5を挟持する複数の保持具6を支持壁部17に備えている。そして、この保持具6を、ウエハ5の中心に対して等角度δで配置され、等角度δは保持体30に対するウエハ5の1回転あたりの相対的な回転角度(以下、ズレ角度とする)をγとした時、δ=Nγ(Nは自然数)となる式が成り立つように設置されている。そして、保持具6はケース3の回転および液中での揺動に伴うウエハ5の移動によって、ウエハ5がケース3から外れてしまうことを防ぐ役割を担う。
【0015】
回転手段101は、ケース3を側板12にて把持し、ケース3を移動して浸漬処理を行う駆動アーム2と、ケース3の側板12に固定された軸7に形成された第1プーリ8と、回転速度が制御可能なモータ11と、モータ11に連結された第2プーリ10と、第1プーリ8と第2プーリ10とに係止されている駆動ベルト9とにて構成されている。そして、モータ11は第2プーリ10を回転させ、この第2プーリ10の回転は駆動ベルト9を介して第1プーリ8に伝わる。そして、第1プーリ8が回転することにより軸7が回転し、軸7はケース3の側板12と固定されているので、ケース3が回転する。尚、第1プーリ8、第2プーリ10、および駆動ベルト9は駆動アーム2中で密閉されており、処理槽1への浸漬時に処理液4が入り込まないように防水されている。また、これらの保持具6は図3の図2中B−B’断面拡大図に示すように、ウエハ5と接する可能性のある面の端部は滑らかに加工されており、ウエハ5の移動に伴う接触により、ウエハ5が割れてしまうことがないように配慮されている。
【0016】
そして、ケース3の側板12を除く領域は、図4に示すようにケース上部18とケース下部19との2領域からなっており、これらは蝶番20で連結されており開閉可能である。そして、ウエハ5をケース3にセットする際には、図3のようにケース3を開いた状態でケース下部19の保持具6間にウエハ5をセットし、ケース上部18を閉じる。その後、回転によりケース3が開いてしまうことがないように、ケース上部18に取り付けられた固定具21をケース下部19に固定する。
【0017】
処理槽1は温度調節機13が配設されており、さらに、循環ポンプ14を利用して導入口15から処理液4を噴出して処理槽1に導入し、導出口16から処理液4を吸入して処理槽1から導出することにより処理液4を循環させている。この循環による処理液4の流れの向きは、ウエハ5の回転が妨げとならないように設定されている。
【0018】
上記のように構成された実施の形態1の基板処理装置の動作について説明する。まず、ケース3の固定具21を開放して、蝶番20を軸として、ケース上部18とケース下部19とを離反させる。次に、ケース3の各保持具6に複数のウエハ5を保持させる。そして、複数のウエハ5が保持されたケース3を駆動アーム2により搬送し、処理槽1中に浸漬させる。この時、処理液4は温度調節機13により一定の温度に保たれており、循環ポンプ14を用いて循環されている。次に、ケース3内全体が処理液4に浸された後、モータ11が起動し、所定の速度でケース3が回転する。次に、所定時間の処理が終了した後、モータ11は停止する。次に、ケース3が駆動アーム2により処理液4内すなわち処理槽1から取り出される。この一連の処理工程を通して、ウエハ5と保持体30との位置は相対的に変化し続けているので、保持具6とウエハ5と間の液溜まりによる処理ムラの発生を防ぐことができる。
【0019】
本発明の回転による処理ムラ防止の効果は、ウエハ5が処理液4中で滑ることなく転がることにより生じる。ウエハ5が滑ることなく転がる条件は下記(6)式であらわされるので、ケース3の素材は式(6)の条件を満たす素材を選定する。また、本発明では、ウエハ5がケース3中を転がることで移動するため、ウエハ5は処理時間の全てにおいて保持具6が存在する領域は存在しない。しかしながら、保持具6に挟持されているウエハ5の保持具6間で処理される領域はその領域の狭さのため、保持具6が存在しない領域と比べると液の対流が悪く、保持具6の存在しない領域と比べると処理速度が劣る可能性がある。このため、保持具6で囲まれる領域は可能な限り狭く、保持具6で囲まれた状態で処理される時間は短い方が望ましい。また、製品の均一性のため保持具6で囲まれた領域での処理時間は均一である必要がある。
【0020】
これらの条件を満たすためには、ウエハ5とケース3の支持壁部17との半径比、保持具6の本数、幅等の様々な条件の兼ね合いを考慮する必要がある。ウエハ5とケース3との半径比により、ケース3が1回転した際のウエハ5との回転角度のズレ角度γは下記式(10)であらわされる。
γ=β−α=((a−b)/b)×2π ・・・・(10)

β:ウエハ5の回転した角度
α:ケース3の回転した角度
a:ケースの半径
b:ウエハの半径
【0021】
そして、ケース3が1回転した場合の保持具6により挟まれることになるウエハ5の領域は、1回転のズレ角度γにより、図9に示すような斜線にて囲まれた処理領域31となる。よって、ウエハ5の外周部全域を均一に処理するためには、下記式(11)が成り立つ必要がある。

δ=Nγ ・・・・(11)

δ:保持具6の設置の等角度
N:自然数
【0022】
この時、保持具6に囲まれて処理されることになる時間の全処理時間に対する割合Xは下記式(12)であらわされる。

X=(Kw/2πb) ・・・・(12)

K:保持具6の数
w:保持具6の1個が占める幅(図9参照)
【0023】
次に、ウエハ5が滑らずに回転する条件について説明する。ケース3の回転に従ってウエハ5が転がり、かつウエハ5が滑らない条件を求める。ウエハ5は回転方向に対して垂直になるように並べられており、さらに非常に薄い(100um〜650um程度)ため、本実施の形態1では処理液4からの抗力は無視できるものと考える。このため、ケース3が少しでも傾けば、ウエハ5はケース3の支持壁部17(または、保持具6)に沿って転がりだす。次に、傾けた場合にウエハ5が接触面で滑り出さない条件を考える。
【0024】
ケース3がθだけ回転した場合のウエハ5とケース3とに働く力は図5に示すようになる。この時、ウエハ5にはウエハ5自身の重力Mg(M=ウエハ5の質量)、ウエハ5とケース3との設置部分からの垂直抗力N、摩擦抵抗Fが働いている。この時のウエハ5の重心周りの運動方程式を考えると下記式(1)、式(2)が成り立つ。

M(dv/dt)=Mgsinθ−F ・・・・(1)

N=Mgcosθ ・・・・(2)
【0025】
さらに、ウエハ5の重心周りの回転運動方程式を考えると下記式(3)、式(4)が成り立つ。

(1/2)×Ma×(dω/dt)=aF ・・・・(3)

v=aω より

(dv/dt)=a(dω/dt) ・・・・(4)

v:ウエハ5の移動速度
ω:ウエハ5の回転角速度
【0026】
上記式(1)〜式(4)を用いて、Fについて解くと下記式(5)となる。

F=(1/3)Mgsinθ ・・・・(5)
【0027】
ウエハ5が滑り出さない条件は、

F≦Nμ

μ:静止摩擦係数

より、上記式(2)を式(5)に代入し、ウエハ5が滑ることなく回転する条件は下記式(6)であらわされる。

tanθ≦3μ ・・・・(6)
【0028】
次に、ケース3の回転角とウエハ5の回転角の関係について説明する。ケース3がα回転した場合について考える。図6は回転前の状態を示したものであり、この時のケース3の支持壁部17とウエハ5との接点をそれぞれTa、Tb、円の中心をOa、Ob、とおく。図7はケース3がα回転した後の状態を示したものであり、この時のケース3とウエハ5との接点をそれぞれ、Ta’、Tb’とおく。ケース3の支持壁部17をなす円の半径をa、回転した角度をα(=∠TaOaTa’)、ウエハ5の半径をb、回転した角度をβ(=∠TbObTb’)とおくと。円弧の長さTa−Ta’、Tb−Tb’は下記式(7)、下記式(8)であらわされる。
【0029】
Ta−Ta’=2aπ×(α/2π) ・・・・(7)

Tb−Tb’=2bπ×(β/2π) ・・・・(8)
【0030】
ウエハ5はケース3の回転に従って滑ることなく転がるので、その接点の移動距離である円弧Ta−Ta’と円弧Tb−Tb’の長さは等しい。よって、上記式(7)、上記式(8)より下記式(9)が成り立つ。

aα=bβ ・・・・(9)
【0031】
ケース3の支持壁部17はウエハ5より大きい半径を持つa>bであることから、β>αであり、ウエハ5はケース3に対して相対的にβ−αだけ多く回転していることとなる。ケース3が1回転した時のβ−αを1回転時のズレとしてズレ角度γで定義すると。ズレ角度γは上記式(10)であらわされる。
【0032】
次に、保持具6の位置、幅、設置間隔とその保持具6により挟まれることになるウエハ5の領域とその処理時間について説明する。図8に示すように、ケース3の支持壁部17に複数の保持具6が設置されている場合、処理中に保持具6により挟まれることになるウエハ5の領域を考える。実際はケース3の支持壁部17の半径とウエハ5の半径とが異なるため、保持具6とウエハ5との位置関係は保持具60のように設置位置が上方にあるものほど、ウエハ5を挟むことになる領域は狭く、処理時間も短くなる。しかしながら今回は簡便に説明するため、ケース3の半径とウエハ5の半径とがほぼ同じであり、保持具6の位置に依存した差は微少であり考慮に入れないものとして扱い、この場合の処理領域と処理時間とについて考える。尚、この仮定は保持具6に挟まれることになる領域、処理時間が最大である場合の仮定であり、最も処理が行われにくい状況を想定したものである。
【0033】
上記式(10)より、ケース3が1回転した場合の、ケース3とウエハ5との回転角の差はズレ角度γであらわされるから、ケース3とウエハ5との相対的な位置関係は、固定されたケース3に対して、ウエハ5がズレ角度γ(rad/回転)なる回転速度で回転しているものとして扱うことができる。よって、ケース3が1回転した場合の保持具6に挟まれて処理されたウエハ5の領域は図8の斜線部に示すウエハ5中心に対してズレ角度γの角を持った処理領域31となる。また、ケース3に対するウエハ5の回転速度は等速であるから、処理領域31は挟まれて処理される時間も等しい。保持具6がウエハ5の中心に対して等角度δで配置されている場合、ケース3の回転数をNとすると、可能な限少ない回転数でウエハ5外周部全域が均等に処理されるためには、上記式(11)が成り立つ必要がある。
【0034】
次に、上記式(11)が成り立つようなケース3の外周部全域が均等な時間だけ処理された場合の、全体の処理時間に対するウエハ5の保持具6に囲まれて処理されることになる時間の割合を求める。この割合をXとおく。保持具6に囲まれて処理されることになるケース3とウエハ5との相対的な位置関係は、固定されたケース3に対して、ウエハ5がズレ角度γ(rad/回転)なる回転速度で回転しているものとして扱うことができるので、Xは、ウエハ5の円周全域の長さに対する、保持具6が占める幅の大きさに等しい。ウエハ5の半径をb、保持具6の数をK、保持具6の1個が占める幅の大きさをwとすると上記式(12)式が成り立つ。
【0035】
以上、上記式(10)〜(12)の条件を踏まえ、本実施の形態1では、例えば8インチのウエハ5(半径=10cm)を用いる場合を想定して、[表1]に示すような各条件を設定する各実施例を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1は、ケース3の内周半径(支持壁部17の半径)=10.8[cm]、ウエハ5:ケース3の半径比=12:13、保持具6の設置間隔δ=π/3[rad]おき、保持具6の数=6個、保持具6の幅=1.75[cm](ウエハ5円周の10°に相当)となるように設計しているものである。この場合、式(10)よりγ=π/6[rad]、上記式(11)を満たす最小のN=2、上記式(12)よりX=0.17となる。
【0038】
実施例2は、ケース3の内周半径=12.5[cm]、ウエハ5:ケース3の半径比=5:4、治具設置間隔δ=π/4[rad]おき、保持具6の数=4個、保持具6の幅=1.75[cm](ウエハ5円周の10°に相当)となるように設計しているものである。この場合、上記式(10)よりγ=π/4[rad]、上記式(11)を満たす最小のN=1、式(12)よりX=0.11となる。
【0039】
実施例3は、ケース3の内周半径=10.8[cm]、ウエハ5:ケース3の半径比=13:12、治具設置間隔δ=2π/3[rad]おき、保持具6の数=3個、保持具6の幅=2.00[cm](ウエハ5円周の11°に相当)となるように設計しているものである。この場合、上記式(10)よりγ=π/6[rad]、上記式(11)を満たす最小のN=4、式(12)よりX=0.10となる。
【0040】
この各実施例のように色々な条件に設定することができる。すなわち、実施例1の場合であれば、ケース3が2回転する毎に保持具6で囲まれて処理が行われる領域はウエハ5外周部全域に均一に分布し、保持具6にて囲まれた状態で処理される時間も等しくなる。保持具6にて囲まれた状態で処理される時間の全処理時間に対する割合は、全処理時間全体の17%となりムラの低減効果が得られる。
【0041】
他の実施例2、実施例3の場合であれば、[表1]からも明らかなように、実施例1と比較すると[表2]に示すように各条件の長所と短所とが存在する。
【0042】
【表2】

【0043】
この[表2]から明らかなように、例えば、実施例2は実施例1より処理時間の短い工程を必要とする場合に対して有効なものである。また、実施例3は実施例1より保持具6の数が少なく、ウエハ5の保持具に挟まれて処理する割合が少なく、処理の均一性がより一層向上する。一方で、保持具6数が少なくなるため、ウエハ5の安定性を向上させるために、保持具6をウエハ5中心方向への高さをより高く配設する等の配慮が必要となる。それぞれの長所、短所を考慮に入れ、ウエハ5の処理条件において適当となる場合を選択することが可能である。
【0044】
例えば、前処理のような処理時間の短い工程では、一般的なバッチ処理を施した場合、最後に処理液4に浸され、最初に処理液4から取り出される、ウエハ5上部と最初に処理液4に浸され、最後に処理液4から取り出される下部で処理時間に差が生じるため、ムラ発生の可能性がある。この問題はウエハ5投入時と取り出し時の向きを反転させることにより回避可能である。N回転時のウエハ5の回転角度はNγであらわされるから、Nγ=π+2nπ(nは整数)の関係が成り立つ時に、ウエハ5の向きは反転する。このような制御を求める場合は、短い処理時間で所定の角度を回転させることが可能である方が都合よく、例えば実施例2のようなズレ角度γの大きい設計とした場合は、4回転でウエハ5を反転させることが可能となり適している。
【0045】
上記のように構成された実施の形態1の基板処理装置によれば、被処理物は保持体に把持されることなく、保持されているため、保持体の回転に従い被処理物が転がるので、処理中に被処理物の保持部分が連続的に変化する。このため、保持体により保持されたままの状態となる被処理物の領域は存在せず、処理ムラが生じない。さらに、処理中は被処理物が回転を続けているため、良好な処理(例えば膜厚均一性)が得られる。
【0046】
また、内面が略円形状の容器により形成されているため、容器の回転に従って常に被処理物は回転し続ける。そのため、被処理物が保持具に挟まれて処理されることになる時間をより一層均一化することが可能になる。また、回転に従って微小距離ずつ容器内を移動するため、容器内面に接触する際の衝撃が少なく、被処理物の破損が起こりにくい。
【0047】
また、回転手段は、保持具の回転速度を制御しているため、取り出し時の被処理物の向きを投入時の向きとを反転された状態となるように制御可能であり、処理時間の差に起因したムラの発生を抑えることが可能となる。
【0048】
また、δ=Nγの関係が成り立ち、その関係が成り立つ最小のN回の回転数で被処理物の外周全域が均等に処理することができるため、より少ない回転数で均一な処理を行うことができる。
【0049】
また、支持壁部は、処理液を通過可能な格子形状にて形成しているため、被処理物への処理液の循環を効果的に行うことを可能とし、被処理物の処理がより一層均一となる。
【0050】
実施の形態2.
上記実施の形態1に示したような基板処理装置においては、保持具6間の液溜まりに起因して処理ムラは生じる可能性がある。そこで、保持具6間の液溜まりの排出能力が、上記実施の形態1より優れたものについて説明する。上記実施の形態1では図10のように、ケース3の側面部全体を処理液4を通しうる格子構造としていたが、この実施の形態では、図11に示すような所定の領域のみに限定する。この所定領域とは、保持具6の存在する領域と対応しており、この領域からケース3内への処理液4の流入、流出が行われる。そのため、効果的に保持具6間の液溜まりを排出することができるようになる。
【0051】
上記のように構成された実施の形態2の基板処理装置によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、保持体の被処理物を保持している保持具間の液溜まりを排出させるために、保持具間の領域のみを格子形状に形成しているため、この領域への流量を増大させ、保持具間の液溜まりの排出を活発にし、被処理物の処理をより一層均一に行うことができる。
【0052】
実施の形態3.
上記各実施の形態に示したような基板処理装置においては、保持具6は、ウエハ5の同一箇所の表面側および裏面側を挟持する例を示したが、これに限られることはなく、例えば図12に示すように、保持具6はウエハ5の表面側6aおよび裏面側6bに交互に形成することも考えられる。その場合、ウエハにおける保持具に挟まれて処理される割合が少なく、処理の均一性がより一層向上する。
【0053】
また、上記各実施の形態においては、一度に複数のウエハを処理するバッチ処理に対応する例を示したが、これに限られることはなく、1回に1枚のウエハを処理する場合であってもよいことは言うまでもなく、その場合は、保持体は1枚のウエハのみを上記各実施の形態と同様に保持可能な構成とすれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 処理槽、3 ケース、4 処理液、5 ウエハ、6,60 保持具、7 軸、
17 支持壁部、30 保持体、31 処理領域、100 基板処理装置、
101 回転手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理するための処理液を貯留する処理槽と、
上記被処理物の中心から最外位置までの距離より大きい半径を有する円の円周上位置において上記被処理物を把持することなく保持して上記被処理物を上記処理液に浸漬する保持体と、
上記円周の中心を回転中心として上記保持体を回転させる回転手段とを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
上記保持体は、上記被処理物の表面側および裏面側から上記被処理物を挟持する複数の保持具を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
上記保持具は、上記被処理物の中心に対して等角度δで配置され、
上記等角度δは、上記保持体に対する上記被処理物の1回転あたりの相対的な回転角度をγとしたとき、δ=Nγ(Nは自然数)となる式が成り立つことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
上記保持体は、上記円周位置上において上記被処理物の外周面を支持する支持壁部を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
上記保持体は、上記支持壁部の内面が上記円周の円筒形状の容器にてなることを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
上記支持壁部は、上記処理液を通過可能な格子形状にてなることを特徴とした請求項4または請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
上記支持壁部は、上記被処理物の保持箇所のみ上記処理液が通過可能な格子形状にてなることを特徴とした請求項4または請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
上記回転手段は、上記保持具の回転速度を制御することを特徴とした請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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