説明

基板搭載型トランス及びそれ用の台座

【課題】トランスと実装基板間を接続するリード端子に衝撃が伝達されることを防止する。
【解決手段】巻線3を巻回したボビン5に複数のリード端子11が一体に突設され、前記巻線から引出される複数のリード線3aは前記各リード端子に接続され、前記各リード端子が実装基板17に形成された孔部19に挿入されて前記実装基板の裏面にある導電部21に半田付されて成る構造の基板搭載型トランスであって、前記各リード端子が挿通される挿通孔13を有し、前記トランスと前記実装基板の間に介在されて前記トランスの荷重を受ける絶縁素材からなる台座15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に搭載されるトランスの実装構造、すなわち基板搭載型トランス及びそれ用の台座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源回路部品としてプリント基板上に搭載される小形トランスにおいて、ボビンのフランジ部にインサート成形により複数のリード端子を予め一体に突設し、ボビンに巻回された巻線から引出されるリード線を前記リード端子に絡げて、機械的及び電気的に接続し、各リード端子を実装基板に形成された孔部に挿入し、基板の裏面に形成された導電部に突出させ、この突出部を導電部に半田付することでトランスの実装を完成させるものが知られている。
【0003】
ところで、トランスそのものはボビンと、前記ボビンに巻回した一次側巻線と二次側巻線及び磁性コアを組合せて構成されているため、他の電子部品に比べて重量が重く、発熱量も高い。そのため、トランスの全体を実装基板上に直接接触した状態で設置することはせず、複数のリード端子を介して基板から離した状態に設置することが通常行われている。
【0004】
このため、上記構造のトランスを実装した基板を含む機器をその搬送途中で落下したりぶつけたりと言った不適切な取扱いをした場合、或いはACアダプタに基板ごと組込んだ場合において電源コードを引っ掛けて該ACアダプタを机等の上から落した場合、トランスに過度な衝撃荷重が集中してリード端子を切断したり、実装基板の前記孔部廻りの銅箔ランドと称される導電部ごと基板から剥離してしまい、断線などの導電不良の原因となる。
【0005】
このような衝撃荷重による導電不良を防止するための対策として、下記特許文献1に示す技術が開示されている。この技術は、リード端子の途中部位において外力で変形する形状部、具体的には湾曲部を形成したものであり、振動や落下などによりトランス−実装基板部分に一時的に大きな荷重が加わった場合には、この湾曲部が変位することで衝撃を吸収するものである。
【0006】
【特許文献1】特開平11−273941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この構造においては、リード端子そのものの耐衝撃性に依存し、この耐衝撃性を越えた衝撃荷重が加わった場合には、やはり前述の不具合が生ずることになる。また、繰返し衝撃荷重が加わることで、リード端子の湾曲部と直線部分との接合位置が金属疲労により切断するおそれもある。
【0008】
本発明の目的は、トランス−実装基板部分に落下等に起因して大きな衝撃が作用しても、その衝撃荷重がリード端子に直接加わることがないようにして、リード端子の衝撃に基づく断線等の問題を未然に防止できるようにした基板搭載型トランスおよびそれ用の台座を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、巻線を巻回したボビンに複数のリード端子が一体に突設され、前記巻線から引出される複数のリード線は前記各リード端子に接続され、前記各リード端子が実装基板に形成された孔部に挿入されて前記実装基板の裏面にある導電部に半田付されて成る構造の基板搭載型トランスであって、前記各リード端子が挿通される挿通孔を有し、前記トランスと前記実装基板の間に介在されて前記トランスの荷重を受ける絶縁素材からなる台座が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、台座がトランスの荷重を直接支えているので、トランスは絶縁状態を維持したまま基板上に安定状態に支持されており、トランスに衝撃荷重が加わった場合には、その衝撃は台座に加わり、リード端子には加わらない。従って、リード端子に変形力は加わらないので、全体としての耐衝撃性を当該台座を介在させるだけで容易に向上することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様の基板搭載型トランスにおいて、前記台座の前記挿通孔は、前記リード端子の基部側が大径に形成されていることを特徴とするものである。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の作用効果に加え、当該挿通孔の前記大径の部分によって、前記リード線を前記リード端子に絡めて接続したその接続部分に対して、衝撃荷重が加わらない。従って、リード端子とリード線との接続部廻りに対する保護も行うことが出来、リード線−リード端子間の断線などの問題も防止できる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様の基板搭載型トランスにおいて、前記台座は、前記ボビン側の接触面には、前記台座の端縁と前記挿通孔とを結んで前記巻線から引出されたリード線を納める導入溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様または第2の態様の作用効果に加え、前記導入溝によって、前記リード線を前記リード端子に絡めて接続したその接続部分に連なるように引かれたリード線部分に対して、衝撃荷重が加わらない。従って、リード端子とリード線との接続部廻りに対する保護も行うことが出来、リード線−リード端子間の断線などの問題も防止できる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1の態様または第2の態様の基板搭載型トランスにおいて、前記台座は、前記ボビン側の接触面が段差形状に形成され、高段面部が前記ボビン側との接触面となり、低段面部が前記巻線から引出されたリード線を納める部分として形成されていることを特徴とするものである。
本発明の第4の態様によれば、前記高段面部がトランスの荷重を直接支え、低段面部が前記巻線から引出されたリード線を納めるので、第1の態様または第2の態様の作用効果に加え、リード端子とリード線との接続部廻りに対する保護も行うことが出来、リード線−リード端子間の断線などの問題も防止できる。
【0015】
本発明の第5態様は、第1の態様から第4の態様のいずれかの基板搭載型トランスにおいて、前記台座は、トランスに要求される絶縁種別に応じた素材で形成されていることを特徴とするものである。
本発明の第5の態様によれば、第1から第4の態様のいずれかの作用効果に加え、トランスに要求される絶縁種別に応じた素材で台座が形成されるので、トランスとして要求される性能を安定して長期間発現させることができる。
【0016】
本発明の第6の態様は、前記第2の態様または第5の態様に記載されている基板搭載型トランス用の台座である。すなわち、前記挿通孔は前記リード端子の基部側が大径に形成されている。更に前記ボビン側の接触面にはその端縁と前記挿通孔とを結んで前記巻線から引出されたリード線を納める導入溝または低段面部が設けられている台座である。或いは更に、トランスに要求される絶縁種別に応じた素材で形成されている台座である。
【0017】
本発明の第6の態様によれば、トランス−実装基板部分に大きな衝撃が作用しても、その衝撃荷重がリード端子に直接加わらないようにしてリード端子の衝撃に基づく断線等の問題を未然に防止できる基板搭載型トランスを容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図4は本発明の第1実施形態を示し、図1(a)は実装前のトランスを底面側から見た斜視図、図1(b)は同トランスと台座との取付関係を示す分解斜視図、図2(a)は同トランスと台座との取付関係を示す上面側からの分解斜視図および一部拡大図、図2(b)は同取付状態を示す底面側からの斜視図、図3は同トランスと実装基板との取付関係を示す上面側からの分解斜視図、図4は同実装状態を示す一部断面で示した側面図である。
【0019】
各図において、トランス1は、外周に巻線3を巻回したボビン5と、ボビン5の外周部に組合わされた磁性材コア7とからなっている。ボビン5の両端に形成されたフランジ5aの下部側にはリードマウント9が一体に形成され、この各リードマウント9には、複数のリード端子11がインサート成形により一体に突出している。また、リードマウント9には、巻線3から引出される複数のリード線3aを最寄のリード端子11に導くための導入溝9aが形成されている。各導入溝9aを伝って各リード端子11に導かれたリード線3aは、各リード端子11の基部(先端ではなく根元部)の外周に絡げられ、その絡げられた接続部分が、半田付などによって機械的及び電気的な接続が確保されている。
【0020】
なお、本実施形態では、各リードマウント9に対しそれぞれ5本のリード端子11を突設し、これに見合う数のリード線3aを接続しているが、例えば一方のリードマウント9を一次、すなわち電源接続側として2本のリード端子11を突設し、他方のリードマウント9には二次側のリード線であって、その変圧比の数に応じた本数のリード端子11を突設しても良い。
【0021】
以上のトランス1には、図1(b)及び図2(a)(b)に示すように、予め各リードマウント9の形状に対応して長尺な直方体に成形され、かつ前記リード端子11の挿通孔13を形成した絶縁材料からなる基板設置用の台座15が取付けられる。
【0022】
この台座15の構成材料としては、JEM規格に規定される絶縁種別に従って、次の天然または人工材料から選択される。
A種:綿、紙、ポリエチレン、塩化ビニル、天然ゴム等
E種:ポリエステル、エポキシ、メラミン、フェノール、ポリウレタン等
B種:マイカ、石綿、ガラス繊維、フェノールなど
F種:B種と同じ
【0023】
台座15の成形は公知の製法で行われる。なお、言うまでもなく、綿、紙などのそれ単体では造形が出来ないものや、成形が困難な材料に関しては、公知のベース材料や他の前記材料を組合せた複合材料とすることにより、図示の形状、寸法に成形することができる。
【0024】
前記挿通孔13は、特に図2(a)の一部に拡大して示すように、下部側に向けて縮径するテーパ状の大径部13aと、この大径部13aの下部に連続して開口され、かつリード端子11の幅寸法より少し大きい小径部13bとからなる。更に、大径部13aと、台座15の端縁とを結んで前記リード線3aの導入溝13cが形成され、図2(b)に示すように前記台座15がリードマウント9の底面に接合した状態で、リード線3aの引出し端やリード端子11の基部に対する前記接続部分との干渉を防止し、断線などの問題を未然に防止している。
【0025】
台座15の組付け後のトランス1は、その各リード端子11を、図4に示すように実装基板17の上下を貫通して形成された取付用の孔部19に挿通することで、前記台座15はトランス1と実装基板17との間に介在するように設けられる。
【0026】
実装基板17の裏面側には、図4に示すように、前記孔部19の周囲に銅箔ランドと称する接続用の導電部21が設けられており、トランス1を実装基板17上に搭載した状態で、実装基板17の裏面を半田ディップ槽などに浸漬することで、孔部19を貫通したリード端子11の先端周囲に半田層23が形成され、リード端子11を半田層23を介して導電部21に機械的・電気的に接続される。
【0027】
以上において、トランス1と実装基板17間に、図4中符号F,F’で示した衝撃的な荷重が加わっても、この力F,F’は台座15を介して相手側に伝達するのみで、直接的な力はリード端子には作用しない。
【0028】
なお、説明は省略したが、前記台座15とリードマウント9及び台座15と実装基板17の間は単なる接触だけでなく、その間にエポキシ樹脂系や、シリコン樹脂系などの接着剤を介在することで強固な結合が可能となり、圧縮荷重だけでなく、引張り荷重に対しても大きな耐久性を得ることができる。
【0029】
図5は同台座の第2実施形態を示す要部拡大斜視図である。第1実施形態における導入溝13cに代えて低段面部13eが形成されている。すなわち、第2実施形態に係る台座15は、ボビン5側の接触面が段差形状に形成され、高段面部13dが前記ボビン5側との接触面となり、低段面部13eが前記巻線3から引出されたリード線3aを納める部分として形成されている。この例でも、大径部13aが高段面部13d部分に設けられているが、該大径部13aは低段面部13eまで一様な径で形成されていてもよい。或いは当該段差形状にしたことで大径部は設けなくすることも可能である。
【0030】
これにより、前記高段面部13dがトランス1の荷重を直接支え、低段面部13eが前記巻線3から引出されたリード線3aを納めるので、リード端子11とリード線3aとの接続部廻りに対する保護を行うことができ、リード線3a−リード端子11間の断線などの問題を防止できる。
【0031】
尚、挿通孔13およびリード線3eを納める部分(上記導入溝13cや低段差部13e)の構造は、台座15がトランス1と実装基板17との間に介在されてトランス1の荷重を受ける役割を担える条件で種々の変形が可能である。
【0032】
図6(a),(b)は本発明の第3実施形態を示す。なお、前記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明は省略し、異なる部分及び新たに付加された箇所のみに異なる符号を付して説明する。図5において、台座31は矩形枠状をなし、その両端に前記リードマウント9の底面に接するとともに、複数のリード端子挿通孔33を貫通形成したマウント接触部35と、中央部の前後にマウント接触部35より一段高く形成され、前記コア7の底面に接触するコア接触部37とからなり、当該台座31によりトランス1の全体を支持するようになっている。なお、コア接触部37の下部側にはトランス1の内外を連通する切欠き37aが形成され、台座31で囲われた内側に熱がこもることを防止している。該切欠き37aは、図のように一部に設けるのに代えて全体にわたって設けてもよい。これにより、熱が一層こもりにくくなる。
【0033】
本実施形態では、台座31のトランス1に対する支持面積が増加するため、支持強度がさらに高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は実装前のトランスを底面側から見た斜視図、(b)は同トランスと台座との取付関係を示す分解斜視図。
【図2】(a)は同トランスと台座との取付関係を示す上面側からの分解斜視図および一部拡大図、(b)は同取付状態を示す底面側からの斜視図。
【図3】同トランスと実装基板との取付関係を示す上面側からの分解斜視図。
【図4】同実装状態を示す一部断面で示した側面図。
【図5】同台座の第2実施形態を示す要部拡大斜視図。
【図6】(a)は本発明の第3実施形態に係るトランスと台座との取付関係を記す分解斜視図、(b)は組立状態の斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1 トランス、 3 巻線、3a リード線、5 ボビン、5a フランジ部、7 磁性コア、 9 リードマウント、11 リード端子、13、33 リード端子の挿通孔、 13a 大径部、13b 小径部、13c リード線の導入溝、13d 高段面部、13e 低段面部、15,31 台座、 17 実装基板、19 孔部、21 導電部、23 半田層、34 マウント接触部、 37 コア接触部、37a 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を巻回したボビンに複数のリード端子が一体に突設され、前記巻線から引出される複数のリード線は前記各リード端子に接続され、前記各リード端子が実装基板に形成された孔部に挿入されて前記実装基板の裏面にある導電部に半田付されて成る構造の基板搭載型トランスであって、
前記各リード端子が挿通される挿通孔を有し、前記トランスと前記実装基板の間に介在されて前記トランスの荷重を受ける絶縁素材からなる台座が設けられていることを特徴とする基板搭載型トランス。
【請求項2】
請求項1記載の基板搭載型トランスにおいて、前記台座の前記挿通孔は、前記リード端子の基部側が大径に形成されていることを特徴とする基板搭載型トランス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板搭載型トランスにおいて、前記台座は、前記ボビン側の接触面には、前記台座の端縁と前記挿通孔とを結んで前記巻線から引出されたリード線を納める導入溝が形成されていることを特徴とする基板搭載型トランス。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板搭載型トランスにおいて、前記台座は、前記ボビン側の接触面が段差形状に形成され、高段面部が前記ボビン側との接触面となり、低段面部が前記巻線から引出されたリード線を納める部分として形成されていることを特徴とする基板搭載型トランス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板搭載型トランスにおいて、前記台座は、トランスに要求される絶縁種別に応じた素材で形成されていることを特徴とする基板搭載型トランス。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載された基板搭載型トランス用の台座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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