説明

基礎下免震の周辺部構造

【課題】建物本体を支持する基礎と地盤面の間を摺動面とする基礎下免震において、基礎外周部の基礎下免震稼動範囲内の周辺部構造を提供する。
【解決手段】建物本体2を支持する基礎1と地盤面7の間を摺動面とする基礎下免震において、基礎1の外周部の基礎下免震稼動範囲内に、基礎下免震の稼動によって圧縮される圧縮部4と、基礎下免震の稼動によって外部へ掃き出される掃き出し部5とを有する基礎下免震の周辺部構造からなり、基礎1の外周部の基礎下免震稼動範囲内において、圧縮部4は下方に、掃き出し部5は上方にあり、圧縮部4と掃き出し部5の境界面は、基礎の外周側下端部より外方に向けて斜め上方に傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎下免震の周辺部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震対策として、建物本体を支承材で受けて地盤面と分離させ、地震時の揺れを吸収する免震装置は様々提案されている。
【0003】
しかし、基礎と建物本体との間に免震支承材を設けた従来の免震装置では、建物本体を支持する構造架台を設けなければならず、架台にかかるコストが大きくなるといった問題があった。
【0004】
そこで、建物の躯体を支持する基礎と地盤面の間を摺動面とする基礎下免震が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−147783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、基礎下免震構造では、地震時に基礎を含む建物全体が地盤面に対して動いて地震の揺れを伝えない構造のため、基礎の施工後に基礎の周囲に埋め戻した埋め戻し土は、基礎下免震稼動時に排出されることなく、基礎を含む建物全体の変位にともなって押しつぶされてしまう。そのため、埋め戻し土の固さによって抵抗力にばらつきがでるため、基礎下免震の建物の設計をすることが難しく、十分な免震効果を発揮させることが難しかった。
【0007】
また、土の抵抗力の不明確さを排除するために、基礎周辺にクリアランスを設ける構造では、平常時にクリアランスが無駄な空間となり敷地を有効に活用する妨げとなる。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、建物本体を支持する基礎と地盤面の間を摺動面とする基礎下免震において、免震効果を十分に発揮できる基礎外周部の基礎下免震稼動範囲内の周辺部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、建物本体を支持する基礎と地盤面の間を摺動面とする基礎下免震において、該基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲内に、基礎下免震の稼動によって圧縮される圧縮部と基礎下免震の稼動によって外部へ掃き出される掃き出し部を有する基礎下免震の周辺部構造により解決される。
【0010】
基礎外周部の基礎下免震稼動範囲内に、基礎下免震の稼動によって圧縮される圧縮部と基礎下免震の稼動によって外部へ掃き出される、例えば土からなる掃き出し部を有するので、掃き出し部は基礎下免震稼動時に、基礎下免震周辺の地盤面と基礎下免震基礎部間で圧縮されることなく基礎周辺部に掃き出され、建物が逆方向に揺れ戻る時にも抵抗とならないので、掃き出し部が免震稼動時に建物に与える抵抗力を定量的に把握でき、免震の設計を正確に行うことができる。特に、圧縮部と掃き出し部との間の摩擦係数を管理することで、少ない力で掃き出し部を基礎周辺部に掃き出すことができ、基礎下免震の建物の設計をより正確に行うことができる。
【0011】
また、前記基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲内において、前記圧縮部は下方に、前記掃き出し部は上方にあり、圧縮部と掃き出し部の境界面は、基礎の外周側下端部より外方に向けて斜め上方に傾斜しているとよい。
【0012】
基礎下免震稼動範囲内の下方にある圧縮部と上方にある掃き出し部との境界面が、基礎の外周側下端部より外方に向けて斜め上方に傾斜しているので、基礎下免震稼動時に境界面に沿って掃き出し部を建物周辺の地盤面に効率よく掃き出すことができる。また、圧縮部の基礎の外周側に対する面が基礎の外周側下端部より外方に向けて斜め上方に傾斜しているので、圧縮部の圧縮に必要な力が少なくてすみ、圧縮部が基礎下免震の性能に与える影響を少なくすることができる。
【0013】
さらに、基礎下免震稼動範囲内に圧縮可能な部材からなる圧縮部を設けることで、基礎下免震稼動範囲内における周辺部の納まりをコンパクトにまとめることができ、基礎下免震実現のために平常時に不要なスペースを小さくすることができるので、基礎下免震を採用する建物において敷地を有効に活用することができる。
【0014】
また、前記圧縮部がビーズ法ポリスチレンフォームからなっているとよい。
【0015】
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)は、発泡倍率を選択することにより、圧縮強さを調整することができ、さらに一旦圧縮され始めると安定して変形する特色を有するので、圧縮部を圧縮するのに必要な力を定量的に把握することができ、免震の設計を正確に行うことができる。
【0016】
また、前記基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲内において、前記圧縮部は基礎の外周側より間隔をあけて設けられ、前記掃き出し部は前記圧縮部と基礎の外周側との間に設けられ、前記圧縮部と前期掃き出し部の境界面が基礎側より外方に向けて斜め上方に傾斜しており、前記圧縮部及び前記掃き出し部がビーズ法ポリスチレンフォームからなっているとよい。
【0017】
基礎外周部の基礎下免震稼動範囲内に、基礎下免震の稼動によって圧縮される圧縮部と、基礎下免震の稼動によって圧縮及び/又は外部へ掃き出される掃き出し部を有するので、掃き出し部は基礎下免震稼動時に、基礎下免震の変位量により、基礎下免震周辺の地盤面と基礎下免震基礎部間で圧縮されたり、建物周辺の地盤面に掃き出され、建物が逆方向に揺れ戻る時にも抵抗とならない。さらに圧縮部と掃き出し部がビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)よりなっているので、圧縮部及び掃き出し部が免震稼動時に建物に与える抵抗力を定量的に把握でき、免震の設計を正確に行うことができる。特に、圧縮部と掃き出し部との間の摩擦係数を管理することで、少ない力で掃き出し部を基礎周辺部に掃き出すことができ、基礎下免震の建物の設計をより詳細に行うことができる。
【0018】
さらに、前記圧縮部と前期掃き出し部の境界面が基礎側より外方に向けて斜め上方に傾斜しているので、基礎下免震稼動時に境界面に沿って掃き出し部を建物周辺の地盤面に効率よく掃き出すことができる。また、圧縮部の圧縮に必要な力が少なくてすみ、圧縮部が基礎下免震の性能に与える影響を少なくすることができ、基礎下免震の建物の設計をより正確に行うことができる。
【0019】
また、前記圧縮部と前記掃き出し部との間に境界部材が介設されているとよい。
【0020】
圧縮部と掃き出し部との間に境界部材が介設されていることで、特に境界部材が、圧縮部と境界部材及び境界部材と掃き出し部の両境界面、または圧縮部と境界部材若しくは境界部材と掃き出し部のいずれかの境界面を密着させない部材であれば、平常時に圧縮部と掃き出し部が一体となることがなく、地震時の建物上部構造の移動時に、抵抗なく掃き出し部を基礎周辺部へ掃き出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以上のとおりであるから、建物本体を支持する基礎と地盤面の間を摺動面とする基礎下免震において、免震効果を十分に発揮できる基礎外周部の基礎下免震稼動範囲内の周辺部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示す断面正面図である。
【図2】ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)の三軸圧縮試験結果を示すグラフである。
【図3】図(イ)乃至(ハ)は、地震時に掃き出し部の埋め戻し土が掃き出される状況を順に示す断面正面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す断面正面図である
【図5】図(イ)乃至(ハ)は、地震時に掃き出し部が掃き出される状況を順に示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に示す基礎下免震において、3は建物本体を支持する上部基礎1と建物本体2とからなる上部構造、4,5はそれぞれ上部基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲内に設けられる圧縮部と掃き出し部であり、圧縮部4は下方に、掃き出し部5は上方にあり、圧縮部4と掃き出し部5の境界面は、上部基礎1の外周側下端部より外方の地盤面に向けて斜め上方に断面視直線上に傾斜している。6は、圧縮部4と掃き出し部5との境界面に境界部材として介設される境界面シートである。
【0025】
7は基礎下免震が設置される地盤面、8は地盤面7上に設置され上部構造3を支持する地盤基礎、9は上部基礎1と地盤基礎8との間に介設され、上部構造3が地盤基礎8上の横滑りを円滑に行うための基礎下すべり材、10は、基礎下免震の上部基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲外の地盤面である。
【0026】
圧縮部4は、基礎下免震稼動時に基礎下免震の移動の抵抗とならないように、少ない力で大きな圧縮ができる部材が選定されればよく、ここでは、例えばビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)が用いられる。ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)は、発泡倍率を選択することにより、圧縮強さを調整することができる。さらに図2に示すように一旦圧縮され始めると安定して変形する特色を有するため、免震稼動時に免震の性能に影響を与えることがなく、また、圧縮部を圧縮するのに必要な力を定量的に把握することができ、免震の設計を定量的に行うことができる。なお、圧縮部4は、配置される上部基礎1の外周周りにおいて、それぞれ所定の間隔ごとに分割されている。
【0027】
掃き出し部5は、基礎下免震稼動時に基礎下免震の移動により、基礎下免震周辺の地盤面と基礎下免震基礎部間で圧縮されることなく、圧縮部4の上方を含む基礎の外周部の地盤面に掃き出される。掃き出し部5は、免震稼動時に免震の性能に影響を与えることがなく、基礎の移動により漸次基礎周辺部へ掃き出されるために、不定形で、かつ適度な重量を有するものが選択され、例えば、土や砂、ここでは、基礎を施工するときに掘り起こした土が利用される。
【0028】
境界面シート6は、圧縮部4と掃き出し部5とが時間の経過とともに一体化しないことを目的として設置され、圧縮部と境界面シート及び境界面シートと掃き出し部の両境界面、または圧縮部と境界面シート若しくは境界面シートと掃き出し部のいずれかの境界面を密着させない部材が用いられ、例えば、ポリエチレンシート等が用いられる。境界面シート6により、平常時に圧縮部と掃き出し部が一体となることがなく、基礎下免震稼動時に建物上部構造の移動時に、抵抗なく掃き出し部を基礎周辺部へ掃き出すことができる。
【0029】
本基礎下免震構造では、地盤面7上に地盤基礎8を設置した後、基礎下すべり材9を介して、地盤基礎8上に上部基礎1を設置し、その上に建物本体2を施工する。上部構造3が地盤基礎8上を基礎下すべり材9を介して水平方向に相対移動可能に配置されているため、地震時に揺れが発生した場合に、上部構造3は、地盤基礎8上を水平方向に移動することによって、地震の揺れを吸収し、地震による建物の損傷を防止する。
【0030】
境界面シート6は、一方の端部を上部基礎1の下端面外周側に貼り付けられる。上部基礎1と基礎下すべり材9との間に土などの異物が侵入するのを防止するため、上部基礎1の下端面と土すべり境界シート6との境界部にはコーキング等がなされているとよい。
【0031】
境界面シート6の上部基礎1の下端面に貼り付けられる端部と反対側の端部は、上部基礎1の外周部の地盤面10へ敷き広げられ、その上から掃き出し部としての埋め戻し土が埋め戻される。圧縮部4と掃き出し部5の境界面は、上部基礎1の外周側下端部より外方の地盤面10に向けて斜め上方に断面視直線上に傾斜しているため、上部構造3の移動によって後述する掃き出し部5としての埋め戻し土が、少ない抵抗でしなやかに地盤面へ掃き出される。
【0032】
境界面シート6の上部基礎1の下端面に貼り付けられる端部と反対側の端部は、地震のない通常時に邪魔にならないように折り返されて、掃き出し部5の中に埋め込まれてもよいし、地上面から突出しない寸法に端部を切り落とされてもよい。
【0033】
なお、図示しないが免震構造では、地盤基礎8と上部構造3間によるすべり機構の他に、地震による揺れによる振動を減衰する減衰装置や、地震の揺れが終わった後に、上部構造3を原点位置に復帰する原点復帰装置、平常時に風による建物の揺れを防止する風揺れ防止装置などの装置により構成されている。
【0034】
地震時には基礎下免震の周辺部は次のように機能する。
【0035】
図3に順次示すように、図(イ)の平常時から地震が発生し、上部構造3が地盤基礎8上で水平方向に揺れると、図(ロ)に示すように上部構造3は水平方向(左方向)に移動する。上部構造3の移動によって、圧縮部4が圧縮されるとともに、掃き出し部5としての埋め戻し土が側方へと掃き出される。境界面シート6の一方の端部は上部基礎1の下端面に貼り付けられており、上部基礎1の移動によって、上部基礎1の下端面に貼り付けられている境界面シート6も周辺側に押しつけられる。埋め戻し土は、上部基礎1に押されることにより、境界面シート6上をすべり、地盤面上に掃き出されるが、埋め戻し土は境界面シート6上をすべるため、埋め戻し土が上部基礎1により掃き出させるときの摩擦抵抗は定量的に把握することができる。
【0036】
図(ハ)に示すように、地震の揺れにより、上部構造3が逆方向(右方向)に移動したとき、上部構造3は地盤基礎8上を水平方向に移動し、掃き出された埋め戻し土は、地盤10上に残るか一部は境界シート6上に崩れ落ちるが、掃き出されたあと元の位置に復元しない。そのため、再び最初の方向(左方向)に移動したときでも上部構造3が移動するときに埋め戻し土が抵抗となることはない。
【0037】
また、上部構造3が逆方向(右方向)に移動したときは、上部基礎1の周辺にある埋め戻し土は上記と同様に掃き出される。
【0038】
埋め戻し土が土すべり境界面にそって基礎の外周部へ掃き出され、また、土すべり境界面と埋め戻し土との摩擦係数を管理することで、埋め戻し土の掃き出し時の摩擦抵抗を定量的に把握でき、基礎下免震構造を正確に設計することができる。
【0039】
また、基礎下免震稼動範囲内の下方にある圧縮部と上方にある掃き出し部との境界面が、基礎の外周側下端部より外方に向けて斜め上方に傾斜しているので、基礎下免震稼動時に境界面に沿って掃き出し部を建物周辺の地盤面に効率よく掃き出すことができる。また、圧縮部の圧縮に必要な力が少なくてすみ、圧縮部が基礎下免震の性能に与える影響を少なくすることができ、基礎下免震の建物の設計をより正確に行うことができる。
【0040】
さらに、基礎下免震稼動範囲内に圧縮可能な部材からなる圧縮部を設けることで、基礎下免震稼動範囲内における周辺部の納まりをコンパクトにまとめることができ、基礎下免震実現のために平常時に不要なスペースを小さくすることができるので、基礎下免震を採用する建物において敷地を有効に活用することができる。
【0041】
特に、埋め戻し土と地盤面との間に境界部材として境界面シートを用いることで、埋め戻し土と地盤面との境界からなる土すべり境界面より一層、効果的に埋め戻し土が基礎の外周部に掃き出される。
【0042】
図4に示す本発明の第2実施形態において、3は建物本体を支持する上部基礎1と建物本体2とからなる上部構造、4,5はそれぞれ上部基礎1の外周部の基礎下免震稼動範囲内に設けられる圧縮部と掃き出し部であり、圧縮部4は、上部基礎1の外周部の基礎下免震稼動範囲内に、上部基礎1の外周側より間隔を空けて設けられ、一方掃き出し部5は、圧縮部4と上部基礎1の外周側との間に設けられており、圧縮部4と掃き出し部5との境界面が基礎側より外方に向けて斜め上方に傾斜している。そして、圧縮部4と掃き出し部5は、基礎下免震稼動時に基礎下免震の移動の抵抗とならないように少ない力で大きな圧縮ができる、それぞれ別体のビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)からなっている。また、圧縮部4と掃き出し部5は、配置される上部基礎1の外周周りにおいて、それぞれ所定の間隔ごとに分割されている。なお、表層部には、化粧のために土11が敷き詰められている。
【0043】
掃き出し部5は、基礎下免震稼動時に基礎下免震の上部構造3が移動した場合、移動量が小さい時は、基礎下免震周辺の地盤面10又は/及び圧縮部4と基礎下免震基礎部間で圧縮され、移動量が大きい時は、基礎下免震周辺の地盤面10又は/及び圧縮部4と基礎下免震基礎部間から、圧縮部4の上方を含む基礎の外周部に掃き出される。掃き出し部5はビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)からなり、図2に示すように一旦圧縮され始めると安定して変形する特色を有するため、上部構造3の移動量が大きく圧縮部4の上方を含む基礎の外周部に掃き出される場合だけでなく、上部構造3の移動量が小さく圧縮される場合でも、免震稼動時に免震の性能に影響を与えることがなく、圧縮部を圧縮するのに必要な力を定量的に把握することができ、免震の設計を正確に行うことができる。また、掃き出し部5が定型のビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)からなっているので、バラバラになり基礎下免震の性能に悪影響を与えることもない。さらに、基礎下免震の復帰時には、元の状態に容易に戻すことができる。
【0044】
本基礎下免震構造では、地盤面7上に地盤基礎8を設置した後、基礎下すべり材9を介して、地盤基礎8上に上部基礎1を設置し、その上に建物本体2を施工する。上部構造3が地盤基礎8上を基礎下すべり材9を介して水平方向に相対移動可能に配置されているため、地震時に揺れが発生した場合に、上部構造3は、地盤基礎8上を水平方向に移動することによって、地震の揺れを吸収し、地震による建物の損傷を防止する。
【0045】
そして、上部基礎1を設置後に、基礎下免震稼動範囲内の外周に圧縮部4を、上部基礎1の外周部の基礎下免震稼動範囲内に、上部基礎1の外周側より間隔を空けて上部基礎1の外周周りに設置する。そして、掃き出し部5を、圧縮部4と上部基礎1の外周側との間に、圧縮部4と掃き出し部5との境界面が基礎側より外方に向けて斜め上方に傾斜している面をあわせながら設置する。なお、圧縮部4と掃き出し部5は、配置される基礎構造3の外周周りにおいて、それぞれ所定の間隔ごとに分割されている場合は、ピース状の圧縮部4及び掃き出し部5をそれぞれを順次設置していく。最後に、表層部に化粧のために土11を引き詰めるとよい。
【0046】
図5に順次示すように、図(イ)の平常時から地震が発生し、上部構造3が地盤基礎8上で水平方向に揺れると、上部構造3は水平方向(左方向)に移動する。上部構造3の移動量が小さい場合は、圧縮部4が圧縮されるとともに、掃き出し部5も圧縮される。しかし、図(ロ)に示すように、上部基礎1の移動量が大きい場合には、圧縮部4が圧縮される一方で、掃き出し部5は圧縮するとともに、掃き出し部5には、外方へ押し出す力が上部構造3より加えられるため、圧縮部4と掃き出し部5の境界である基礎側より外方に向けて斜め上方に傾斜している面に沿って外方へと掃き出される。掃き出し部5が掃き出される場合も、その抵抗となるのは、圧縮部4と掃き出し部5の境界面の摩擦抵抗であるため定量的に把握することができる。
【0047】
図(ハ)に示すように、地震の揺れにより、上部構造3が逆方向(右方向)に移動したとき、上部構造3は地盤基礎4上を水平方向に移動し、掃き出し部5は、周辺の地盤面10上に残ったままか、若しくは上部基礎1の外周側と圧縮部4との間に崩れ落ちるが、崩れ落ちた場合であっても、掃き出し部5は圧縮性の高いポリスチレンフォーム(EPS)からなっているため、再び最初の方向(左方向)に移動したときに上部基礎1が移動するときの抵抗となることはない。
【0048】
また、上部構造3が逆方向(右方向)に移動したときは、上部基礎1の周辺にある掃き出し部5は上記と同様に掃き出される。
【0049】
本実施形態では、掃き出し部が基礎の外周部へ掃き出され、また、掃き出し部と圧縮部との境界面の摩擦係数を管理することで、掃き出し部の掃き出し時の摩擦抵抗を定量的に把握でき、基礎下免震構造を正確に設計することができる。
【0050】
さらに、掃き出し部が圧縮可能な部材からなり、また外周部へ掃き出し可能な一体の部材からなっているので、基礎下免震稼動時の上部構造の変異が小さいときは、圧縮されることにより、周辺部の変化を伴わないで対応することができる。また、基礎下免震稼動時の上部構造の変異が大きいときは掃き出されるが、掃き出し部が一体の部材からなっているので、地盤面に定型のまま掃き出されるため、修復時に元の位置に戻すだけでよく、復旧作業を容易に実施することができる。さらに、圧縮部の圧縮に必要な力が少なくてすみ、圧縮部が基礎下免震の性能に与える影響を少なくすることができ、基礎下免震の建物の設計をより詳細に行うことができる。
【0051】
さらに、基礎下免震稼動範囲内に圧縮可能な部材からなる圧縮部と圧縮可能な部材かつ外周部へ掃き出し可能な掃き出し部を設けることで、基礎下免震稼動範囲内における周辺部の納まりをコンパクトにまとめることができ、基礎下免震実現のために平常時に不要なスペースを小さくすることができるので、基礎下免震を採用する建物において敷地を有効に活用することができる。
【0052】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、圧縮部と掃き出し部の境界面が断面視直線状に傾斜している場合について示したが、境界面の形状は断面視直線状に傾斜している場合に限定される必要はなく、境界面の形状は下に凸の円弧状であってもよいし、上に凸の円弧状であってもよいし、他の形状をしていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、上部基礎の形状について、ベース部が立ち上がり部より側方に突出していない場合や側方に突出している場合について示したが、基上部基礎の形状に制限がないのはいうまでもない。
【0054】
また、上記実施形態では、境界部材としての境界面シートのある場合について示したが、境界部材はなくてもよく、さらに、境界部材の材質も境界面シートに限定されず、板状であってもよいし、吹き付けられた塗料であってもよく、圧縮部と掃き出し部の摩擦係数が管理されるものであれば何でもよい。
【符号の説明】
【0055】
1・・・上部基礎
2・・・建物本体
3・・・上部構造
4・・・圧縮部
5・・・掃き出し部
6・・・境界面シート
7・・・地盤面
8・・・地盤基礎
9・・・基礎下すべり材
10・・・地盤面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体を支持する基礎と地盤面の間を摺動面とする基礎下免震において、
該基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲内に、
基礎下免震の稼動によって圧縮される圧縮部と、
基礎下免震の稼動によって外部へ掃き出される掃き出し部とを有する基礎下免震の周辺部構造。
【請求項2】
前記基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲内において、
前記圧縮部は下方に、前記掃き出し部は上方にあり、
圧縮部と掃き出し部の境界面は、基礎の外周側下端部より外方に向けて斜め上方に傾斜している請求項1に記載の基礎下免震の周辺部構造。
【請求項3】
前記圧縮部がビーズ法ポリスチレンフォームからなる請求項1乃至2に記載の基礎下免震の周辺部構造。
【請求項4】
前記基礎の外周部の基礎下免震稼動範囲内において、
前記圧縮部は基礎の外周側より間隔を空けて設けられ、
前記掃き出し部は前記圧縮部と基礎の外周側との間に設けられ、
前記圧縮部と前記掃き出し部の境界面が基礎側より外方に向けて斜め上方に傾斜しており、
前記圧縮部及び前記掃き出し部がビーズ法ポリスチレンフォームからなる請求項1に記載の基礎下免震の周辺部構造。
【請求項5】
前記圧縮部と前記掃き出し部との間に境界部材が介設されている請求項1乃至4に記載の基礎下免震の周辺部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−111789(P2011−111789A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268317(P2009−268317)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】