基礎地業工法
【課題】上部建物の構造形式に左右されることなく、現場での対応が可能で施工性がよく、地盤を改良する工法や免震装置などを設置する方法に比較してコストも削減でき、建物の地震時応答を効率よく低減でき、建設排土削減など環境問題への有効な対策法も提供できる基礎地業工法を得る。
【解決手段】建物などの構造物の基礎周辺地盤として例えば基礎外縁部2を、原地盤1とは別の、大変形時に高減衰が期待できるような、あるいは残留変位を生じないような非線形材料による地盤材料で置換して置換された部分15を形成する。
【解決手段】建物などの構造物の基礎周辺地盤として例えば基礎外縁部2を、原地盤1とは別の、大変形時に高減衰が期待できるような、あるいは残留変位を生じないような非線形材料による地盤材料で置換して置換された部分15を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物(住宅、事務所、産業施設等)などの構造物の地震時応答(層間変形や部材損傷)を低減する基礎地業工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の地震時応答低減を図る手段の一つとしては、従来、例えば免震装置を建物の基礎下あるいは特定階(1階、中間階等)に設置して、建物の固有周期を長周期化することによって応答を低減している。
【0003】
他の手段としては、建物に制震装置を組み込むことにより、建物への地震入力エネルギーを吸収し、これにより応答を低減する。
【0004】
前記従来技術は、当業者間で一般的に行われているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【0005】
また、他の手段として特許文献3に示すように建物の基礎周辺に高外力減衰砂(アスファルトサンド)を敷くことにより、建物への地震入力エネルギーを吸収するとともに、建物の振動エネルギーを吸収させ、応答を低減する。
【0006】
一方、建物の基礎地盤の液状化を防止するために、基礎地盤を中央部分を除いて外周形状に沿って改良し、該改良の強度を向上させる構造物の基礎地盤改良工法において、前記改良域を少なくとも下部において、下にいくにつれて窄ませるようにした基礎地盤改良工法(例えば特許文献1参照)がある。
【0007】
さらに、特許文献2には、未改良部分を残す地盤免震構造において、地盤改良体は、上面に構造物が配置される平板部と、該平板部の下面に取付けられて平板部の各辺に垂直に設けられた脚板からなる枠組みとを有する地震免震構造が記載されている。
【特許文献1】特開2002−30649号公報
【特許文献2】特開2003−20659号公報
【特許文献3】特開平3−33527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来技術のうち、免震装置や制震装置を使用するものは、これら装置の製作にはある程度の期間(1〜2ヶ月)が必要であり、時間を要し、また、建物の規模によってはコスト削減が困難である。
【0009】
免震装置や制震装置の個数と配置、また装置の種類が複数の場合はその組合せ方などが上部建物の構造形式により決定されるため、建物の構造設計が変更される度に免震装置や制震装置の配置などの計画を見直す必要があり、手間を要して施工性がよくない。
【0010】
高外力減衰砂(アスファルトサンド)を使用する工法は、この材料を基礎全面に敷き詰めることを想定しているため、施工が大規模になり、建設コストが大きくなる。
【0011】
また、前記特開2002−30649号公報に記載の技術は薬液注入固化工法、特開2003−20659号公報に記載の技術は、締固めた砂(サンドコンパクションパイル工法等による)、ソイルセメント系(深層混合処理)改良体、発砲スチロール、土壌(ソイルパックバック)、RC床版、薬液注入固化工法などによるものであるが、基礎地盤を部分的に改良するものではあってもコストが高く、設計条件に合わない場合が多い。
【0012】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、上部建物の構造形式に左右されることなく、現場での対応が可能で施工性がよく、地盤を改良する工法に比較してコストも削減でき、建物の地震時応答を効率よく低減できる基礎地業工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、建物などの構造物の基礎周辺地盤を、原地盤とは別の非線形材料による地盤材料で置換して置換部分を形成することを要旨とするものである。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、地盤改良とは異なり非線形材料で置換する工法であるから、コスト削減が図れ、現場での対応が柔軟に行える。そして、置換する範囲を構造物の基礎周辺地盤に限定することで、構造物の回転動が発生しやすくなり、構造物の固有周期を長周期化でき、構造物への地震入力を抑えて応答を低減できる。
【0015】
そして、適用する非線形材料は、構造物の大変形時に剛性低下する材料で、
高減衰が期待できる材料や、残留変位が生じない性質を有する材料である。
【0016】
請求項2記載の発明は、置換部分は、深さ方向に対して下に凸状とすることを要旨とするものである。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、置換部分を下に凸状とすることで、地震時の応答より生じる構造物からの力を効率よく地盤に伝達できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、置換部分の上部に地盤材料の飛出しを防止し、剛性を確保するための押えを設置することを要旨とするものである。
【0019】
請求項3記載の本発明によれば、構造物の回転動により地盤材料が飛び出そうとしても押えがあることで、飛出しが防止され、剛性が確保される。
【0020】
請求項4記載の発明は、置換部分の内部に、基礎構造体を打設することを要旨とするものである。
【0021】
請求項4記載の本発明によれば、構造物の回転動に伴う杭の上下振動により基礎構造体に摩擦力が働き、この摩擦力が構造物の応答低減に寄与する。
【0022】
請求項5記載の発明は、置換部分は、基礎周辺地盤だけでなく基礎下にも形成することを要旨とするものである。
【0023】
請求項5記載の本発明によれば、基礎下にも非線形材料を適用することで地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【0024】
請求項6記載の発明は、建物などの構造物の基礎下の中心に基礎構造体を打設することを要旨とするものである。
【0025】
請求項6記載の本発明によれば、構造物の基礎下の中心に基礎構造体を打設することにより、地震時の残留変位(水平および回転)を抑制できる。
【0026】
請求項7記載の発明は、建物などの構造物の基礎周辺にはね出しを設け、このはね出しの下に置換部分を形成することを要旨とするものである。
【0027】
請求項7記載の本発明によれば、構造物の基礎下の支持地盤を原地盤のままとして通常の接地圧を確保するとともに、はね出しの下の地盤を非線形材料で置換することにより、構造物の回転動を発生し易くして大地震時の建物応答を低減できる。
【0028】
請求項8記載の発明は、建物などの構造物の基礎下に形成される置換部分は断面略縞状であることを要旨とするものである。
【0029】
請求項8記載の本発明によれば、建物などの構造物の基礎下に形成される置換部分は断面略縞状とすることで、原地盤による押えの効果で水平変形は抑制するものの、置換した地盤材料の履歴減衰により建物応答を低減できる。
【0030】
請求項9記載の発明は、置換部分は、建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤に形成することを要旨とするものである。
【0031】
請求項9記載の本発明によれば、建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤を非線形材料で置換することにより、構造物の回転動を発生し易くするとともに、回転動により生じる杭基礎の上下振動により杭周面に摩擦力を発生させて、構造物の応答低減に寄与させることができる。
【0032】
請求項10記載の発明は、置換部分は建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤と構造物の基礎下に形成することを要旨とするものである。
【0033】
請求項10記載の本発明によれば、構造物の杭基礎の周辺地盤だけでなく、基礎下全体または一部を非線形材料で置換することで、地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【発明の効果】
【0034】
以上述べたように本発明の基礎地業工法は、建物などの構造物の基礎周辺地盤を原地盤とは別の地盤材料で置換するだけでなく、置換に用いる地盤材料は大変形時に高減衰が期待できる非線形材料などとするから、上部建物の構造形式に左右されることなく、現場での対応が可能で施工性がよく、地盤を改良する工法に比較してコストも削減でき、建物の地震時応答を効率よく低減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の基礎地業工法の第1実施形態を示す縦断正面図、図2は同上平面図、図3は同上他の例の平面図、図4は同上さらに他の例の平面図で、本発明の基礎地業工法の基本となる第1実施形態の構成から説明する。
【0036】
本発明の基礎地業工法は、基礎周辺地盤を、原地盤とは別の地盤材料で置換することにより、建物などの構造物の固有周期を長周期化し、建物への地震入力を抑えて地震時応答を低減するものであり、置換に用いる地盤材料は、大変形時に高減衰が期待できる非線形材料や、大変形時に剛性低下するものの残留変位は生じない性質をもつ非線形材料などである。
【0037】
原地盤1とは別の地盤材料である非線形材料で置換される部分15である基礎周辺地盤は、第1実施形態では図1に示すように基礎外縁部2であり、これにより建物3の全体応答のうち回転動を発生し易くして、建物3の固有周期を長周期化し、建物3への地震入力を抑え、建物3の層間変位(水平変位)を低減し部材の損傷を抑えることができる。
【0038】
置換される部分15は、深さ方向に対して断面逆三角形状とすることにより、地震時の応答により生じる建物3からの力を効率よく原地盤1に伝達できる。
【0039】
さらに、置換される部分15と原地盤1との接触面が斜めになることにより、基礎の変形に対して原地盤1が押えとなって過大な変形を抑制することができる。
【0040】
また、非線形材料で置換するために原地盤1を掘削するとき、掘削の断面形状が三角形のほうが矩形(鉛直)に掘削するよりも施工性がよい。
【0041】
前記のように置換される部分15は建物3の基礎外縁部2であるが、その平面における配置箇所は、図2のように基礎隅角部4、図3のように基礎周辺の並行する2辺の部分5、また、図4のように基礎周辺全体6とすることが考えられる。
【0042】
図5は第2実施形態を示し、基礎外縁部2の上部に建物3の回転動による地盤材料(非線形材料)の飛出しを防止し、剛性を確保するために、コンクリートなどによる押え7を設置することもできる。
【0043】
図6は第3実施形態を示し、基礎外縁部2の置換した部分15の内部に、この置換した部分15よりも下方に突出しない程度の短い長さの杭8を打設する。これにより、建物3の回転動に伴う杭8の上下振動によってこの杭8の周面に摩擦力を生じさせ、建物3の応答低減に寄与させることができる。
【0044】
図7は第4実施形態を示し、置換する部分15を建物3の基礎外縁部2だけでなく、基礎下全体または一部9にも非線線形材料を適用してここに置換される部分15を設ける。この場合、基礎下全体または一部9に形成される置換される部分15の断面形状は、基礎外縁部2のような逆三角形状とする必要はなく、図7に示すような平板状でよい。
【0045】
これにより、地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【0046】
図8は第5実施形態を示し、置換する部分15を建物3の基礎外縁部2だけでなく、基礎下の中心に、基礎外縁部2に形成した置換された部分15の深さよりも多少短い長さの杭8を打設する。これにより地震後の残留変位(水平および回転)を抑制できる。
【0047】
図9は第6実施形態を示し、建物3の基礎周辺にはね出し11を設け、建物3の基礎下は原地盤のままとして通常の接地圧を確保し、はね出し下の地盤12を非線形材料で置換し、ここに置換された部分15を形成する。これにより、回転動が発生しやすくなり大地震時の建物応答を低減できる。
【0048】
図10は第7実施形態を示し、建物3の基礎外縁部2だけでなく、基礎下の支持地盤も基礎外縁部2と同様に非線形材料で置換し、全体として断面略縞状に置換部分13を形成する。これにより、原地盤による押えの効果で水平変形は抑制するものの、置換した地盤材料の履歴減衰により建物応答を低減できる。
【0049】
図11は第8実施形態を示し、建物3に杭基礎14が打設されている場合、この杭基礎14の周辺の周辺地盤である基礎外縁部2を非線形材料で置換して置換される部分15を形成する。これにより、建物3の回転動が発生し易くなり、回転動により生じる杭基礎14の上下振動により杭周面に摩擦力が発生し、建物3の応答低減に寄与できる。
【0050】
図12は第9実施形態を示し、これは前記第4実施形態と第8実施形態との構成を組合わせたもので、基礎下全体または一部9を非線形材料で置換するとともに杭基礎14の周辺地盤を非線形材料で置換する。これにより、地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【0051】
以上のようにして建物3に免震装置などの特殊な装置を組み込むことなく、地盤改良ではなく、地盤の少なくとも一部を非線形材料で置換するだけの簡単な工法で建物の地震時応答を低減でき、建物の構造計画の自由度を拡大でき、上部建物の構造形式に左右されることなく現場での柔軟な計画も可能で、施工性が向上し、設計と施工の両面においてコスト削減および品質向上を図れる。
【0052】
図13は、本発明の工法を適用することにより、建物頂部の加速度応答スペクトルが減衰して建物の固有周期の長期周期化により、建物への地震入力が低減し、建物の損傷が抑制できることを示している。
【0053】
また、本発明で使用する地盤材料としては、原地盤の利用が可能であり、建設排土を有効利用することもでき、建設排土削減など環境問題への有効な対策法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の基礎地業工法の第1実施形態を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の基礎地業工法の第1実施形態の第1例を示す平面図である。
【図3】本発明の基礎地業工法の第1実施形態の第2例を示す平面図である。
【図4】本発明の基礎地業工法の第1実施形態の第3例を示す平面図である。
【図5】本発明の基礎地業工法の第2実施形態を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の基礎地業工法の第3実施形態を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の基礎地業工法の第4実施形態を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の基礎地業工法の第5実施形態を示す縦断正面図である。
【図9】本発明の基礎地業工法の第6実施形態を示す縦断正面図である。
【図10】本発明の基礎地業工法の第7実施形態を示す縦断正面図である。
【図11】本発明の基礎地業工法の第8実施形態を示す縦断正面図である。
【図12】本発明の基礎地業工法の第9実施形態を示す縦断正面図である。
【図13】本発明の基礎地業工法による建物応答の低減を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1 原地盤 2 基礎外縁部
3 建物 4 基礎隅角部
5 2辺の部分 6 基礎周辺全体
7 押え 8 杭
9 基礎下全体または一部
11 はね出し下 12 はね出し下の地盤
13 断面略縞状の置換部分 14 杭基礎
15 置換する部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物(住宅、事務所、産業施設等)などの構造物の地震時応答(層間変形や部材損傷)を低減する基礎地業工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の地震時応答低減を図る手段の一つとしては、従来、例えば免震装置を建物の基礎下あるいは特定階(1階、中間階等)に設置して、建物の固有周期を長周期化することによって応答を低減している。
【0003】
他の手段としては、建物に制震装置を組み込むことにより、建物への地震入力エネルギーを吸収し、これにより応答を低減する。
【0004】
前記従来技術は、当業者間で一般的に行われているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【0005】
また、他の手段として特許文献3に示すように建物の基礎周辺に高外力減衰砂(アスファルトサンド)を敷くことにより、建物への地震入力エネルギーを吸収するとともに、建物の振動エネルギーを吸収させ、応答を低減する。
【0006】
一方、建物の基礎地盤の液状化を防止するために、基礎地盤を中央部分を除いて外周形状に沿って改良し、該改良の強度を向上させる構造物の基礎地盤改良工法において、前記改良域を少なくとも下部において、下にいくにつれて窄ませるようにした基礎地盤改良工法(例えば特許文献1参照)がある。
【0007】
さらに、特許文献2には、未改良部分を残す地盤免震構造において、地盤改良体は、上面に構造物が配置される平板部と、該平板部の下面に取付けられて平板部の各辺に垂直に設けられた脚板からなる枠組みとを有する地震免震構造が記載されている。
【特許文献1】特開2002−30649号公報
【特許文献2】特開2003−20659号公報
【特許文献3】特開平3−33527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来技術のうち、免震装置や制震装置を使用するものは、これら装置の製作にはある程度の期間(1〜2ヶ月)が必要であり、時間を要し、また、建物の規模によってはコスト削減が困難である。
【0009】
免震装置や制震装置の個数と配置、また装置の種類が複数の場合はその組合せ方などが上部建物の構造形式により決定されるため、建物の構造設計が変更される度に免震装置や制震装置の配置などの計画を見直す必要があり、手間を要して施工性がよくない。
【0010】
高外力減衰砂(アスファルトサンド)を使用する工法は、この材料を基礎全面に敷き詰めることを想定しているため、施工が大規模になり、建設コストが大きくなる。
【0011】
また、前記特開2002−30649号公報に記載の技術は薬液注入固化工法、特開2003−20659号公報に記載の技術は、締固めた砂(サンドコンパクションパイル工法等による)、ソイルセメント系(深層混合処理)改良体、発砲スチロール、土壌(ソイルパックバック)、RC床版、薬液注入固化工法などによるものであるが、基礎地盤を部分的に改良するものではあってもコストが高く、設計条件に合わない場合が多い。
【0012】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、上部建物の構造形式に左右されることなく、現場での対応が可能で施工性がよく、地盤を改良する工法に比較してコストも削減でき、建物の地震時応答を効率よく低減できる基礎地業工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、建物などの構造物の基礎周辺地盤を、原地盤とは別の非線形材料による地盤材料で置換して置換部分を形成することを要旨とするものである。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、地盤改良とは異なり非線形材料で置換する工法であるから、コスト削減が図れ、現場での対応が柔軟に行える。そして、置換する範囲を構造物の基礎周辺地盤に限定することで、構造物の回転動が発生しやすくなり、構造物の固有周期を長周期化でき、構造物への地震入力を抑えて応答を低減できる。
【0015】
そして、適用する非線形材料は、構造物の大変形時に剛性低下する材料で、
高減衰が期待できる材料や、残留変位が生じない性質を有する材料である。
【0016】
請求項2記載の発明は、置換部分は、深さ方向に対して下に凸状とすることを要旨とするものである。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、置換部分を下に凸状とすることで、地震時の応答より生じる構造物からの力を効率よく地盤に伝達できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、置換部分の上部に地盤材料の飛出しを防止し、剛性を確保するための押えを設置することを要旨とするものである。
【0019】
請求項3記載の本発明によれば、構造物の回転動により地盤材料が飛び出そうとしても押えがあることで、飛出しが防止され、剛性が確保される。
【0020】
請求項4記載の発明は、置換部分の内部に、基礎構造体を打設することを要旨とするものである。
【0021】
請求項4記載の本発明によれば、構造物の回転動に伴う杭の上下振動により基礎構造体に摩擦力が働き、この摩擦力が構造物の応答低減に寄与する。
【0022】
請求項5記載の発明は、置換部分は、基礎周辺地盤だけでなく基礎下にも形成することを要旨とするものである。
【0023】
請求項5記載の本発明によれば、基礎下にも非線形材料を適用することで地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【0024】
請求項6記載の発明は、建物などの構造物の基礎下の中心に基礎構造体を打設することを要旨とするものである。
【0025】
請求項6記載の本発明によれば、構造物の基礎下の中心に基礎構造体を打設することにより、地震時の残留変位(水平および回転)を抑制できる。
【0026】
請求項7記載の発明は、建物などの構造物の基礎周辺にはね出しを設け、このはね出しの下に置換部分を形成することを要旨とするものである。
【0027】
請求項7記載の本発明によれば、構造物の基礎下の支持地盤を原地盤のままとして通常の接地圧を確保するとともに、はね出しの下の地盤を非線形材料で置換することにより、構造物の回転動を発生し易くして大地震時の建物応答を低減できる。
【0028】
請求項8記載の発明は、建物などの構造物の基礎下に形成される置換部分は断面略縞状であることを要旨とするものである。
【0029】
請求項8記載の本発明によれば、建物などの構造物の基礎下に形成される置換部分は断面略縞状とすることで、原地盤による押えの効果で水平変形は抑制するものの、置換した地盤材料の履歴減衰により建物応答を低減できる。
【0030】
請求項9記載の発明は、置換部分は、建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤に形成することを要旨とするものである。
【0031】
請求項9記載の本発明によれば、建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤を非線形材料で置換することにより、構造物の回転動を発生し易くするとともに、回転動により生じる杭基礎の上下振動により杭周面に摩擦力を発生させて、構造物の応答低減に寄与させることができる。
【0032】
請求項10記載の発明は、置換部分は建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤と構造物の基礎下に形成することを要旨とするものである。
【0033】
請求項10記載の本発明によれば、構造物の杭基礎の周辺地盤だけでなく、基礎下全体または一部を非線形材料で置換することで、地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【発明の効果】
【0034】
以上述べたように本発明の基礎地業工法は、建物などの構造物の基礎周辺地盤を原地盤とは別の地盤材料で置換するだけでなく、置換に用いる地盤材料は大変形時に高減衰が期待できる非線形材料などとするから、上部建物の構造形式に左右されることなく、現場での対応が可能で施工性がよく、地盤を改良する工法に比較してコストも削減でき、建物の地震時応答を効率よく低減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の基礎地業工法の第1実施形態を示す縦断正面図、図2は同上平面図、図3は同上他の例の平面図、図4は同上さらに他の例の平面図で、本発明の基礎地業工法の基本となる第1実施形態の構成から説明する。
【0036】
本発明の基礎地業工法は、基礎周辺地盤を、原地盤とは別の地盤材料で置換することにより、建物などの構造物の固有周期を長周期化し、建物への地震入力を抑えて地震時応答を低減するものであり、置換に用いる地盤材料は、大変形時に高減衰が期待できる非線形材料や、大変形時に剛性低下するものの残留変位は生じない性質をもつ非線形材料などである。
【0037】
原地盤1とは別の地盤材料である非線形材料で置換される部分15である基礎周辺地盤は、第1実施形態では図1に示すように基礎外縁部2であり、これにより建物3の全体応答のうち回転動を発生し易くして、建物3の固有周期を長周期化し、建物3への地震入力を抑え、建物3の層間変位(水平変位)を低減し部材の損傷を抑えることができる。
【0038】
置換される部分15は、深さ方向に対して断面逆三角形状とすることにより、地震時の応答により生じる建物3からの力を効率よく原地盤1に伝達できる。
【0039】
さらに、置換される部分15と原地盤1との接触面が斜めになることにより、基礎の変形に対して原地盤1が押えとなって過大な変形を抑制することができる。
【0040】
また、非線形材料で置換するために原地盤1を掘削するとき、掘削の断面形状が三角形のほうが矩形(鉛直)に掘削するよりも施工性がよい。
【0041】
前記のように置換される部分15は建物3の基礎外縁部2であるが、その平面における配置箇所は、図2のように基礎隅角部4、図3のように基礎周辺の並行する2辺の部分5、また、図4のように基礎周辺全体6とすることが考えられる。
【0042】
図5は第2実施形態を示し、基礎外縁部2の上部に建物3の回転動による地盤材料(非線形材料)の飛出しを防止し、剛性を確保するために、コンクリートなどによる押え7を設置することもできる。
【0043】
図6は第3実施形態を示し、基礎外縁部2の置換した部分15の内部に、この置換した部分15よりも下方に突出しない程度の短い長さの杭8を打設する。これにより、建物3の回転動に伴う杭8の上下振動によってこの杭8の周面に摩擦力を生じさせ、建物3の応答低減に寄与させることができる。
【0044】
図7は第4実施形態を示し、置換する部分15を建物3の基礎外縁部2だけでなく、基礎下全体または一部9にも非線線形材料を適用してここに置換される部分15を設ける。この場合、基礎下全体または一部9に形成される置換される部分15の断面形状は、基礎外縁部2のような逆三角形状とする必要はなく、図7に示すような平板状でよい。
【0045】
これにより、地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【0046】
図8は第5実施形態を示し、置換する部分15を建物3の基礎外縁部2だけでなく、基礎下の中心に、基礎外縁部2に形成した置換された部分15の深さよりも多少短い長さの杭8を打設する。これにより地震後の残留変位(水平および回転)を抑制できる。
【0047】
図9は第6実施形態を示し、建物3の基礎周辺にはね出し11を設け、建物3の基礎下は原地盤のままとして通常の接地圧を確保し、はね出し下の地盤12を非線形材料で置換し、ここに置換された部分15を形成する。これにより、回転動が発生しやすくなり大地震時の建物応答を低減できる。
【0048】
図10は第7実施形態を示し、建物3の基礎外縁部2だけでなく、基礎下の支持地盤も基礎外縁部2と同様に非線形材料で置換し、全体として断面略縞状に置換部分13を形成する。これにより、原地盤による押えの効果で水平変形は抑制するものの、置換した地盤材料の履歴減衰により建物応答を低減できる。
【0049】
図11は第8実施形態を示し、建物3に杭基礎14が打設されている場合、この杭基礎14の周辺の周辺地盤である基礎外縁部2を非線形材料で置換して置換される部分15を形成する。これにより、建物3の回転動が発生し易くなり、回転動により生じる杭基礎14の上下振動により杭周面に摩擦力が発生し、建物3の応答低減に寄与できる。
【0050】
図12は第9実施形態を示し、これは前記第4実施形態と第8実施形態との構成を組合わせたもので、基礎下全体または一部9を非線形材料で置換するとともに杭基礎14の周辺地盤を非線形材料で置換する。これにより、地震入力の抑制と、水平動に伴って生じる振動エネルギーの履歴吸収により応答を低減できる。
【0051】
以上のようにして建物3に免震装置などの特殊な装置を組み込むことなく、地盤改良ではなく、地盤の少なくとも一部を非線形材料で置換するだけの簡単な工法で建物の地震時応答を低減でき、建物の構造計画の自由度を拡大でき、上部建物の構造形式に左右されることなく現場での柔軟な計画も可能で、施工性が向上し、設計と施工の両面においてコスト削減および品質向上を図れる。
【0052】
図13は、本発明の工法を適用することにより、建物頂部の加速度応答スペクトルが減衰して建物の固有周期の長期周期化により、建物への地震入力が低減し、建物の損傷が抑制できることを示している。
【0053】
また、本発明で使用する地盤材料としては、原地盤の利用が可能であり、建設排土を有効利用することもでき、建設排土削減など環境問題への有効な対策法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の基礎地業工法の第1実施形態を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の基礎地業工法の第1実施形態の第1例を示す平面図である。
【図3】本発明の基礎地業工法の第1実施形態の第2例を示す平面図である。
【図4】本発明の基礎地業工法の第1実施形態の第3例を示す平面図である。
【図5】本発明の基礎地業工法の第2実施形態を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の基礎地業工法の第3実施形態を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の基礎地業工法の第4実施形態を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の基礎地業工法の第5実施形態を示す縦断正面図である。
【図9】本発明の基礎地業工法の第6実施形態を示す縦断正面図である。
【図10】本発明の基礎地業工法の第7実施形態を示す縦断正面図である。
【図11】本発明の基礎地業工法の第8実施形態を示す縦断正面図である。
【図12】本発明の基礎地業工法の第9実施形態を示す縦断正面図である。
【図13】本発明の基礎地業工法による建物応答の低減を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1 原地盤 2 基礎外縁部
3 建物 4 基礎隅角部
5 2辺の部分 6 基礎周辺全体
7 押え 8 杭
9 基礎下全体または一部
11 はね出し下 12 はね出し下の地盤
13 断面略縞状の置換部分 14 杭基礎
15 置換する部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物などの構造物の基礎周辺地盤を、原地盤とは別の非線形材料による地盤材料で置換して置換部分を形成することを特徴とする基礎地業工法。
【請求項2】
置換部分は、深さ方向に対して下に凸状とする請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項3】
置換部分の上部に地盤材料の飛出し防止のための押えを設置する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項4】
置換部分の内部に、基礎構造体を打設する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項5】
置換部分は、基礎周辺地盤だけでなく基礎下にも形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項6】
建物などの構造物の基礎下の中心に基礎構造体を打設する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項7】
建物などの構造物の基礎周辺にはね出しを設け、このはね出しの下に置換部分を形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項8】
建物などの構造物の基礎下に形成される置換部分は断面略縞状である請求項1または請求項5に記載の基礎地業工法。
【請求項9】
置換部分は、建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤に形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項10】
置換部分は建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤と構造物の基礎下に形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項1】
建物などの構造物の基礎周辺地盤を、原地盤とは別の非線形材料による地盤材料で置換して置換部分を形成することを特徴とする基礎地業工法。
【請求項2】
置換部分は、深さ方向に対して下に凸状とする請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項3】
置換部分の上部に地盤材料の飛出し防止のための押えを設置する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項4】
置換部分の内部に、基礎構造体を打設する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項5】
置換部分は、基礎周辺地盤だけでなく基礎下にも形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項6】
建物などの構造物の基礎下の中心に基礎構造体を打設する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項7】
建物などの構造物の基礎周辺にはね出しを設け、このはね出しの下に置換部分を形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項8】
建物などの構造物の基礎下に形成される置換部分は断面略縞状である請求項1または請求項5に記載の基礎地業工法。
【請求項9】
置換部分は、建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤に形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【請求項10】
置換部分は建物などの構造物の杭基礎の周辺地盤と構造物の基礎下に形成する請求項1記載の基礎地業工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−215854(P2009−215854A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63580(P2008−63580)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
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