説明

基礎構造体、及び、基礎構造体の振動伝播低減方法

【課題】建設後においてスラブの固有振動数を容易に変化させることができるようにした基礎構造体、及び、スラブに設置される振動発生源の振動特性が変わる場合の基礎構造体の振動伝播低減方法を提供する。
【解決手段】基礎構造体1は、複数の杭2と、複数の杭の杭頭部3と接合されたスラブ4とを備え、複数の杭のうちの少なくとも1つがスラブと切り離し可能なようにスラブと接合された。また、振動伝播低減方法は、基礎構造体のスラブ上に設置された振動発生源の振動特性が変わった場合において、スラブと切り離し可能なようにスラブと接合されていた杭(調整杭2A)とスラブとの接合構造を変更してスラブの固有振動数を変更することにより、接合構造の変更後のスラブの最大加速度を、接合構造の変更前のスラブの最大加速度よりも小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭とスラブとが接合されて構成された基礎構造体において、スラブの固有振動数を変更可能とした基礎構造体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭の杭頭部とマットスラブと呼ばれるスラブとが接合されて構成された基礎構造体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−152757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スラブに機械等の振動発生源を設置することが予定されている、例えば、工場、クリーンルーム等の建物を建設する場合、スラブに設置される振動発生源より生じる振動数と共振しない固有振動数を持つようなスラブを設計することで、振動発生源からスラブを介して他部への振動伝播を低減させることが考えられる。
しかしながら、従来は、例えば、杭と杭の上方に配置された基礎フーチングとがスラブを挟んで接合されているため、建設後においては、杭とスラブとを切り離すことはできないので、スラブの固有振動数を変化させることができない。
従って、スラブに設置される振動発生源の振動特性が変わって当該振動発生源により発生する振動数とスラブの固有振動数とが一致した場合には、共振により振動が大きくなって振動発生源から他部に伝播されてしまう。
本発明は、建設後においてスラブの固有振動数を容易に変化させることができるようにした基礎構造体、及び、スラブに設置される振動発生源の振動特性が変わった場合の基礎構造体の振動伝播低減方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る基礎構造体は、複数の杭と、前記複数の杭の杭頭部と接合されたスラブとを備え、前記複数の杭のうちの少なくとも1つが前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されたので、杭とスラブとを切り離すことにより、スラブの固有振動数を容易に変化させることができる。
前記杭と前記スラブとを切り離し可能に接合するための接合構造は、前記スラブに上下に貫通するように形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入された前記杭と前記スラブとを接合する接合手段とを備え、前記杭の外周面と前記貫通孔の内周面とが縁切りされた状態で、前記杭と前記スラブとが前記接合手段によって接合された構造であるので、杭の杭頭部を貫通孔より上方に突出させることができるようになって、杭とスラブとの接合構造を簡単にでき、杭とスラブとの接合作業及び杭とスラブとを切り離す切り離し作業を容易に行うことができるようになる。
本発明に係る基礎構造体の振動伝播低減方法によれば、杭頭部がスラブに接合された複数の杭のうちの少なくとも1つを前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合して構成された基礎構造体の前記スラブ上に設置された振動発生源の振動特性が変わった場合において、前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されていた前記杭と前記スラブとの接合構造を変更して前記スラブの固有振動数を変更することにより、前記接合構造の変更後の前記スラブの最大加速度を、前記接合構造の変更前の前記スラブの最大加速度よりも小さくしたので、振動発生源から他部への振動伝播を低減させることができる。
前記杭と前記スラブとの接合構造の変更は、前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されていた前記杭と前記スラブとを切り離すことにより行うので、振動伝播低減方法を簡単に実現できる。
前記杭と前記スラブとの接合構造の変更は、前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されていた前記杭と前記スラブとを間挿部材を介して接合することにより行うので、スラブの固有振動数を微調整することが可能となる。
前記間挿部材として弾性体を用いたので、スラブの固有振動数を容易に下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】(a)は基礎構造体を示す平面図、(b)は基礎構造体を示す断面図(実施形態1)。
【図2】基礎構造体の杭とスラブとの接合構造を示す断面図(実施形態1)。
【図3】基礎構造体の杭とスラブとの接合構造を示す断面図(実施形態1)。
【図4】(a)は振動発生源の振動データの一例を示し、(b)はスラブの振動データの一例を示し、(c)は目標のスラブの振動データの一例を示す(実施形態2)。
【図5】基礎構造体の杭とスラブとの接合構造を示す断面図(本発明の変形例)。
【図6】基礎構造体の杭とスラブとの接合構造を示す断面図(本発明の変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1の基礎構造体1は、複数の杭2と、複数の杭2の杭頭部3と接合されたスラブ4とを備え、複数の杭2のうちの少なくとも1つが、スラブ4と切り離し可能にスラブ4と接合された調整杭2Aとされ、この調整杭2Aとスラブ4とを切り離し可能に接合するための接合構造を備えた構成である。
スラブ4は例えばマットスラブと呼ばれるスラブ厚=1m以上のスラブである。
杭2は、場所打ち杭又は既製杭である。
【0008】
例えば、図1(a)に示すように、9本の杭2とスラブ4とが接合され、9本の杭2のうちの3本の杭2が調整杭2Aとしてスラブ4と切り離し可能にスラブ4と接合され、調整杭2A以外の6本の杭2Bがスラブ4と切り離し不能にスラブ4と接合された構成である。
図1(b)に示すように、杭2Bの杭頭部3とスラブ4との接合構造は、例えば、杭2Bの杭主筋2aを杭頭面3tより突出するように設けておき、杭頭部3の周囲に生コンクリートを打設することによって、杭2Bの杭頭部3とスラブ4とが接合された構造である。
【0009】
図1(a);図2に示すように、調整杭2Aとスラブ4とを切り離し可能に接合するための接合構造は、スラブ4の上面4tより窪むように形成された有底孔5と、有底孔5の底面6とスラブ4の下面7とに貫通する貫通孔8と、貫通孔8を貫通して有底孔5の底面6よりも上方に突出する調整杭2Aの杭頭部3とスラブ4とを接合する接合手段10とを備え、調整杭2Aの外周面2fと貫通孔8の内周面8aとが縁切りされた状態で、調整杭2Aの杭頭部3とスラブ4とが接合手段10によって接合された構造である。
有底孔5及び貫通孔8は、調整杭2Aの杭頭部の回りに有底孔5及び貫通孔8を形成するための区画となる図外の型枠を設置し、この型枠の周囲に生コンクリートを打設してスラブ4を構築した後に当該型枠を撤去することにより形成される。
また、図1(b)に示すように、有底孔5の上部開口は蓋材9により塞がれる。蓋材9は、調整杭2Aの杭頭面3t及び有底孔5の底面6に接触するように形成された下面9aを備え、下面9aが調整杭2Aの杭頭面3t及び有底孔5の底面6に接触した状態で上面9tがスラブ4の上面4tと同一平面上に位置するように形成される。当該蓋材9を設けたことにより、凹凸のないスラブ4の上面4tを形成できる。
【0010】
尚、縁切りとは、調整杭2Aの外周面2fと貫通孔8の内周面8aとが接触していないことを意味する。この調整杭2Aの外周面2fと貫通孔8の内周面8aとの隙間hは、例えば、数cm程度に形成される。
このように、調整杭2Aの外周面2fと貫通孔8の内周面8aとが縁切りされた状態で、調整杭2Aとスラブ4とが接合手段10によって接合された構造であるので、調整杭2Aとスラブ4との接合及び切り離しを確実に行える。
【0011】
図2に示すように、接合手段10は、接合板と固定材とを備える。
接合板は、例えば、金属製、コンクリート製等の板により構成され、固定材によって調整杭2Aの外周面2fに固定される杭側接合板21と、固定材によってスラブ4に固定されるスラブ側接合板22とにより構成される。
固定材は、例えば、貫通孔8を貫通して有底孔5の底面6より上方に突出する調整杭2Aの杭頭部3の外周面2fに当該外周面2fより突出するように設けられた杭側インサートボルト23と、有底孔5の底面6より上方に突出するように設けられたスラブ側インサートボルト24と、これらインサートボルト23;24にそれぞれ締結されるナット25;25と、調整杭2Aに固定された杭側接合板21とスラブ4に固定された杭側接合板22とを固定するための図外の固定手段(ボルト及びナット、溶接等)とにより構成される。
従って、例えば、杭側接合板21に形成されたボルト貫通孔に杭側インサートボルト23を貫通させて杭側インサートボルト23にナット25を締結することによって調整杭2Aの外周面2fに杭側接合板21を固定するとともに、スラブ側接合板22に形成されたボルト貫通孔にスラブ側インサートボルト24を貫通させてスラブ側インサートボルト24にナット25を締結することによってスラブ4の有底孔5の底面6にスラブ側接合板22を固定する。そして、調整杭2Aに固定された杭側接合板21とスラブ4に固定された杭側接合板22とを図外の固定手段により固定する。以上のように、接合手段10によって調整杭2Aの杭頭部3とスラブ4とが剛接合状態に接合される。尚、接合手段10の構成は上述した構成に限らず、例えば、外周が金属である鋼管杭、CFT杭等の調整杭2Aであれば、調整杭2Aと杭側接合板21とを溶接により接合してもよい。また、杭側接合板21とスラブ側接合板22とに分離された接合板でなく、一体の接合板を用いて接合手段10を構成してもよい。
【0012】
また、接合手段10を取り外すことによって、調整杭2Aとスラブ4とが切り離された状態となる。
尚、接合手段10を取り外すことによって、調整杭2Aとスラブ4とが完全に切り離された状態となることから、調整杭2A以外の杭2Bにより建物荷重を支持する設計としておく。
【0013】
実施形態1の基礎構造体1によれば、調整杭2Aとスラブ4とが切り離し可能なように接合手段10によってスラブ4と接合された構成としたので、調整杭2Aとスラブ4とを切り離すことにより、スラブ4の固有振動数を容易に変化させることができる。
また、調整杭2Aの杭頭部3を貫通孔8より上方に突出させたので、調整杭2Aの杭頭部3とスラブ4との接合構造を簡単にでき、調整杭2Aの杭頭部3とスラブ4との接合作業及び調整杭2Aの杭頭部3とスラブ4とを切り離す切り離し作業を容易に行うことができる。
【0014】
次に実施形態1による基礎構造体の振動伝播低減方法について説明する。
まず、例えば、調整杭2Aとスラブ4とが接合手段10で接合された場合のスラブ4の固有振動数が、スラブ4に設置される振動発生源15(図1参照)の振動特性データにおける加振力の大きい振動数のうちの加振力の一番大きい振動数と異なるようにしておく。
その後、例えば、スラブ4に設置される振動発生源15が別の振動発生源に変更されて振動発生源の振動特性データが変わった場合に、別の振動発生源の振動特性データにおける加振力の一番大きい振動数とスラブ4の固有振動数とが一致した場合(共振した場合)には、調整杭2Aとスラブ4との接合構造を変更することによってスラブ4の固有振動数を変えることにより、接合構造変更後のスラブ(以下、目標のスラブという)4の最大加速度を、接合構造変更前のスラブ4の最大加速度よりも小さくし、別の振動発生源から他部への振動伝播を低減させるようにした。例えば、接合手段10を取り外して調整杭2Aとスラブ4とを切り離すことによりスラブ4の固有振動数が変わるので、別の振動発生源の振動特性データにおける加振力の一番大きい振動数とスラブ4の固有振動数との共振を防止でき、目標のスラブ4の最大加速度を、接合構造変更前のスラブ4の最大加速度よりも小さくすることが可能となる。
【0015】
スラブ4に設置される振動発生源15が別の振動発生源に変更されて振動発生源の振動特性データが変わった場合において、調整杭2Aとスラブ4とを切り離すことによりスラブ4の固有振動数を変えたとしても、別の振動発生源の振動特性データにおける加振力の一番大きい振動数とは異なる振動数と当該スラブ4の固有振動数とが一致する場合には、調整杭2Aとスラブ4との接合構造を変更することによってスラブ4の固有振動数を変えることにより、別の振動発生源の振動数とスラブ4の固有振動数との共振を防止でき、目標のスラブ4の最大加速度を、接合構造変更前のスラブ4の最大加速度よりも小さくすることが可能となる。
この場合、調整杭2Aとスラブ4との間に例えば鋼製の接合手段10とは異なる材質の間挿部材20を介在させて接合することによって、スラブ4の固有振動数を、調整杭2Aとスラブ4とが鋼製の接合手段10により剛接合状態に接合された場合よりも低くでき、かつ、調整杭2Aとスラブ4とを切り離した場合よりも高くできる。
間挿部材20は、スラブ4の固有振動数を、調整杭2Aとスラブ4とが接合手段10により剛接合状態に接合された場合のスラブ4の固有振動数と異なる値にできるものであれば良く、例えば、弾性体、アルミ、コンクリート等を用いることができる。
例えば、図3に示すように、杭側接合板21と調整杭2Aとの間に間挿部材20としてばねやゴムのような弾性体30を介在させた状態で調整杭2Aとスラブ4とを接合手段10によって接合したり、図示しないが、スラブ側接合板22とスラブ4との間に弾性体30を介在させた状態で調整杭2Aとスラブ4とを接合手段10によって接合することにより、調整杭2Aとスラブ4との接合構造を変更する。
弾性体30を介在させて調整杭2Aとスラブ4とを接合した場合、調整杭2Aとスラブ4とが例えば鋼製の接合手段10により剛接合状態に接合された場合と比べて、スラブ4の固有振動数を低くできる。従って、調整杭2Aとスラブ4とを切り離した場合にスラブ4の固有振動数が低くなりすぎる場合には、調整杭2Aとスラブ4との間に弾性体30を介在させて調整杭2Aとスラブ4とを接合する接合構造を採用してスラブ4の固有振動数の値を調整すればよい。
【0016】
上述した基礎構造体の振動伝播低減方法によれば、例えば、スラブ4に設置された振動発生源15が別の振動発生源に変更されて振動発生源の振動特性が変わった場合において、調整杭2Aとスラブ4とが接合手段10によって剛接合状態に接合された接合構造を変更して、スラブ4の固有振動数を変更することにより、接合構造の変更後の目標のスラブ4の最大加速度を、接合構造の変更前のスラブ4(調整杭2Aとスラブ4とが接合手段10によって剛接合状態に接合された場合のスラブ4)に別の振動発生源が設置された場合のスラブ4の最大加速度よりも小さくしたので、別の振動発生源から他部への振動伝播を低減させることができるスラブ4を提供できる。即ち、調整杭2Aとスラブ4とが接合手段10によって剛接合状態に接合された場合と比べてスラブ4の最大加速度を小さくすることができ、別の振動発生源から他部への振動伝播を低減させることができるスラブ4を提供できる。
また、調整杭2Aとスラブ4とを切り離すことにより接合構造を変更できるので、上述した振動伝播低減方法を簡単に実現できる。
また、調整杭2Aとスラブ4とを間挿部材20を介して接合することにより接合構造を変更することで、スラブの固有振動数を微調整することが可能となる。
また、間挿部材20として弾性体30を用いたので、スラブ4の固有振動数を容易に下げることができる。
【0017】
実施形態2
予め、別の振動発生源の振動特性データ(例えば機械を作動させた場合の機械の振動特性データ、以下、第1のデータという)を実験などで取得しておくとともに、調整杭2Aと剛接合状態に接合された状態のスラブ4の上に別の振動発生源を設置して当該別の振動発生源を作動させた場合のスラブ4の振動特性データ(以下、第2のデータという)を実験して取得しておき、スラブ4に設置される振動発生源の振動特性データが変わった場合の目標のスラブ4の固有振動数の値の選定をこれらデータに基づいて決めるようにすれば、目標のスラブ4の固有振動数の値の選定を容易にできる。
【0018】
例えば、第1のデータとして図4(a)に示すようなデータが得られ、第2のデータとして図4(b)に示すようなデータが得られたとする。図4(a);(b)のデータを見ると、第1のデータにおいて加振力が顕著に大きい振動数は振動数f及び振動数fであるのに対して、第2のデータにおいて加速度が顕著に大きい振動数は振動数f12及び振動数f34であるので、第2のデータが得られたスラブ4の卓越する固有振動数は少なくとも振動数f12及び振動数f34の2つであることが想定される。ここで、第2のデータにおける振動数f12及び振動数f34での加速度の値は、スラブ設計において許容できない値であるとする。
この場合、目標のスラブ4の最大加速度を、第2のデータにおける最大加速度(振動数f12での加速度)よりも小さくするには、目標のスラブ4の固有振動数の値を、振動数f、f12、f以外の値にすればよいことを想定できる。さらに、目標のスラブ4の最大加速度を、第2のデータにおける2番目に大きい加速度(振動数f34での加速度)よりも小さくするには、目標のスラブ4の固有振動数の値を、振動数f、f12、f、f、f34、f以外の値にすればよいことを想定できる。
即ち、第1のデータ及び第2のデータを参照し、目標のスラブ4の固有振動数の値を、第2のデータにおける振動数f12、f34及び第1のデータにおける振動数f、f、f、fを避けた値(即ち、振動数f12、f34、f、f、f、f以外の値)に選定することによって、目標のスラブ4の加速度を第2のデータよりも抑えることができると想定できる。
例えば、目標のスラブ4の固有振動数を、第1のデータにおける振動数f12の加振力4Nより小さい加振力0.5Nの振動数であって振動数f12よりも低い振動数f、及び、第1のデータにおける振動数f34の加振力2.5Nより小さい加振力0.7Nの振動数であって振動数f34よりも低い振動数fxxに設定する。このように目標のスラブ4の固有振動数を設定することによって、例えば、図4(c)に示すようなデータが得られる目標のスラブ4を形成する。即ち、図4(c)に示すデータが得られる目標のスラブ4では、固有振動数をf、fxxに設定したことにより、振動数f12、f34での加速度が第2のデータよりも小さくなって、振動数fでの加速度が最大値0.07m/sとなっており、当該最大の加速度の値が第2のデータにおける最大加速度(振動数f12での加速度)の値0.105m/sよりも小さくなっている。
このように、第1のデータ及び第2のデータを参照することで、目標のスラブ4の最大加速度を第2のデータにおける顕著に大きい値よりも小さくするための目標のスラブ4の固有振動数の値の選定を容易にでき、最大加速度の値をスラブ設計において許容できる値に抑えることができるスラブ4を形成することが可能となる。
尚、スラブ4の固有振動数を低くするためには、調整杭2Aとスラブ4とを切り離せばよいが、調整杭2Aとスラブ4とを切り離した場合においてスラブ4の固有振動数が目標の値(例えば、上述した振動数f、fxx)よりも低くなって当該振動数での加速度が第2のデータにより想定されるスラブ4の固有振動数での加速度よりも大きくなってしまう場合には、間挿部材20を介在させて調整杭2Aとスラブ4とを接合してスラブ4の固有振動数の値を高くするようにして、スラブ4の固有振動数を目標の値に設定すればよい。
【0019】
尚、上記接合構造では、調整杭2Aの杭頭部3を貫通孔8より上方に突出させたが、突出させないようにしてもよい。
例えば、図5;6に示すように、調整杭2Aの杭頭面3tを貫通孔8内に位置させ、調整杭2Aの杭頭面3tより突出させたインサートボルト31(図5参照)の上端、あるいは、調整杭2Aの杭頭面3tに連結手段35で連結されたボルト36(図6参照)の上端を貫通孔8より上方に突出させ、貫通孔8を跨いで有底孔5の底面6に設置される連結板32に形成された貫通孔37にインサートボルト31やボルト36の上端部を通し、当該インサートボルト31やボルト36の上端部にナット33を締結することにより、調整杭2Aの杭頭部3と有底孔5の底面6とを、連結板32、ボルト31;36及びナット33によって連結した接合構造としてもよい。
また、図5;6の連結板32と有底孔5の底面6との間に弾性体を介在させて調整杭2Aとスラブ4とを接合したり、インサートボルト31やボルト36の代りに、調整杭2Aの杭頭部3と連結板32とを弾性体で連結してもよい。
また、調整杭2Aの杭頭面3tと連結板32の下面とを接触させてもよい。この場合、調整杭2Aの杭頭面3tと連結板32とをインサートボルト及びナット等で接合してもよい。
【0020】
尚、本発明においては、貫通孔8は、前記スラブ4に上下に貫通するように形成された貫通孔、即ち、前記スラブ4の上面とスラブ4の下面7とに貫通する貫通孔であればよい。ここで、スラブ4の上面とは、前述した有底孔5の底面6、又は、前述したスラブ4の上面4t、又は、前述したスラブ4の上面4tより盛り上がるように形成された面を言う。
【0021】
また、上記では、振動発生源の振動特性が変わる場合として、スラブ4に設置される振動発生源15が別の振動発生源に変更される場合を例にして説明したが、スラブ4に設置される振動発生源15の数が変更されたり、振動発生源15の使用方法が変更されたりして振動発生源の振動特性が変わる場合においても、本発明の振動伝播低減方法を適用することで、振動発生源から他部への振動伝播を低減させることができるスラブ4を提供できる。
【符号の説明】
【0022】
1 基礎構造体、2 杭、2A 調整杭、3 杭頭部、4 スラブ、5 有底孔、
6 底面、7 スラブの下面、8 貫通孔、10 接合手段、15 振動発生源、
20 間挿部材、30 弾性体(間挿部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の杭と、前記複数の杭の杭頭部と接合されたスラブとを備え、前記複数の杭のうちの少なくとも1つが前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されたことを特徴とする基礎構造体。
【請求項2】
前記杭と前記スラブとを切り離し可能に接合するための接合構造は、前記スラブに上下に貫通するように形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入された前記杭と前記スラブとを接合する接合手段とを備え、
前記杭の外周面と前記貫通孔の内周面とが縁切りされた状態で、前記杭と前記スラブとが前記接合手段によって接合された構造であることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造体。
【請求項3】
杭頭部がスラブに接合された複数の杭のうちの少なくとも1つを前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合して構成された基礎構造体の前記スラブ上に設置された振動発生源の振動特性が変わった場合において、
前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されていた前記杭と前記スラブとの接合構造を変更して前記スラブの固有振動数を変更することにより、前記接合構造の変更後の前記スラブの最大加速度を、前記接合構造の変更前の前記スラブの最大加速度よりも小さくしたことを特徴とする基礎構造体の振動伝播低減方法。
【請求項4】
前記杭と前記スラブとの接合構造の変更は、前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されていた前記杭と前記スラブとを切り離すことにより行うことを特徴とする請求項3に記載の基礎構造体の振動伝播低減方法。
【請求項5】
前記杭と前記スラブとの接合構造の変更は、前記スラブと切り離し可能なように前記スラブと接合されていた前記杭と前記スラブとを間挿部材を介して接合することにより行うことを特徴とする請求項3に記載の基礎構造体の振動伝播低減方法。
【請求項6】
前記間挿部材として弾性体を用いたことを特徴とする請求項5に記載の基礎構造体の振動伝播低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188897(P2012−188897A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55186(P2011−55186)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】