説明

塗型剤、塗型剤用バインダー及びそれらの製造方法

【目的】 塗型剤としての必要な特性を保持しながら、塗膜の寿命を従来よりも数倍以上延ばすことができる長寿命の塗型剤を提供する。
【構成】 珪酸ナトリウムと炭化珪素とを含有するバインダーを含む塗型剤、又は珪酸ナトリウムと炭化珪素とコロイダルシリカとを含有するバインダーを含む塗型剤である。また、少なくとも、バインダーの製造工程として、珪酸ナトリウム液を撹拌しながらその中に炭化珪素を少量ずつ添加することにより珪酸ナトリウム液中に炭化珪素が分散した液体を作製する工程と、前記作製した液体を珪酸ナトリウムと炭化珪素の反応により発生するガスが液体表面に浮上する現象が終了するまで継続して撹拌する工程と、を含む塗型剤の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型用の塗型剤、特にアルミニウム及びアルミニウム合金の重力金型鋳造(GDC)や低圧金型鋳造(LP)及び高圧金型鋳造に用いられる金型に使用するのに適した塗型剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型表面を保護するための保護膜としての機能、溶湯が金型に完全に充填されるまで溶湯が凝固することを防ぐための保温機能、溶湯の金型への充填時の残留エアーを吸収するための通気機能、指向性凝固を可能にするための凝固スピード調整機能、及び金型内に充填され凝固した製品の離型を可能にする離型・潤滑機能などを金型に付与するために、金型表面に塗型剤を塗布して塗膜を形成することが行われている。そして、このような塗型剤には、保温性、通気性、湯流れ性、滑り性、塗膜強度などの特性が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−38448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の塗型剤においては、塗型剤が短期間で磨耗により消失してしまうと、金型取り外し、付着金属清掃、塗膜の除去、予熱などの工程を含む塗型の再施工が短いサイクルで必要となり、高価な金型を含む設備の稼動率が低下してしまうという問題があった。もし塗膜が長期間摩耗しないような塗型剤が実現できれば、設備稼動率を向上させ金型の個数を低減できるというメリットが得られるため、このようなメリットを実現できる長寿命の塗型剤が求められていた。
【0005】
本発明はこのような従来技術の課題に着目してなされたものであって、塗型剤としての必要な特性を保持しながら、塗膜の寿命を従来よりも数倍以上延ばすことができる長寿命の塗型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するための本発明による塗型剤は、骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは珪酸ナトリウムと炭化珪素とを含有することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による塗型剤は、骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは、珪酸ナトリウム30〜70重量%と炭化珪素3〜30重量%とを含有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明による塗型剤の製造方法は、バインダーの製造工程として、珪酸ナトリウム液を撹拌しながらその中に炭化珪素を少量ずつ添加することにより、珪酸ナトリウム液中に炭化珪素が分散した液体を作製する工程と、前記作製した液体を、珪酸ナトリウムと炭化珪素の反応により発生するガスが液体表面に浮上する現象が終了するまで、継続して撹拌する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による塗型剤は、骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは珪酸ナトリウムとコロイダルシリカと炭化珪素とを含有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明による塗型剤は、骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは、珪酸ナトリウム20〜60重量%とコロイダルシリカ3〜20重量%と炭化珪素3〜20重量%とを含有することを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明による塗型剤の製造方法は、バインダーの製造工程として、珪酸ナトリウム液を撹拌しながらその中にコロイダルシリカを少量ずつ添加することにより、珪酸ナトリウム液の中にコロイダルシリカが分散した白濁液を作製する工程と、前記白濁液を撹拌しながらその中に炭化珪素を少量ずつ添加することにより、前記白濁液中に炭化珪素が分散した液体を作製する工程と、前記作製した液体を、珪酸ナトリウムと炭化珪素の反応により発生するガスが液体表面に浮上する現象が終了するまで、継続して撹拌する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、珪酸ナトリウムと炭化珪素とをバインダーに含有するようにしたことにより、珪酸ナトリウムの有する粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)、及び、炭化珪素の有する耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)などの特性から、従来技術よりも金型表面への付着強度(粘着性・密着性が高いほど付着強度は大きくなる)を格段に向上させることができ、その結果、塗型剤の耐摩耗性(長寿命性)を大幅に向上させることができるバインダーを作製することができた(なお、上記の珪酸ナトリウムと炭化珪素との調合組成物には、珪酸ナトリウムと炭化珪素のそれぞれの特性も残存している)。そして、その結果、このようなバインダーを含有する塗型剤を使用して形成された塗膜の長寿命化が実現でき、塗型の再施工のサイクルの間隔を延ばし、金型の連続使用回数を増大化し、連続鋳造期間を長期化することが可能になった。
【0013】
特に本発明においては、バインダーの製造工程として、珪酸ナトリウム液中に炭化珪素を調合・分散させた液体を、珪酸ナトリウムと炭化珪素の反応により発生するガスが液体表面に浮上する現象が終了するまで、継続して撹拌するようにしており、これにより炭化珪素の粉末界面と珪酸ナトリウムを長時間攪拌し混合反応させるようにしたので、珪酸ナトリウムの有する粘着性・密着性と、炭化珪素の有する耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)とを兼ね備え且つ異物が混入していない高品質のバインダーを作製することができた。
【0014】
また、本発明においては、珪酸ナトリウムとコロイダルシリカと炭化珪素とをバインダーに含有するようにしたことにより、珪酸ナトリウムの有する粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)、炭化珪素の有する耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)、及び、コロイダルシリカの有する膜形成性(塗膜強度を高める性質)などの特性から、従来技術よりも金型表面への付着強度(粘着性・密着性が高いほど付着強度は大きくなる)及び塗膜の強度(膜形成性が強いほど膜強度は大きくなる)が格段に向上し、その結果、塗型剤の耐摩耗性(長寿命性)を大幅に向上させることができるバインダーを作製することができた(なお、上記の珪酸ナトリウムと炭化珪素とコロイダルシリカとの調合組成物には、珪酸ナトリウムと炭化珪素とコロイダルシリカのそれぞれの特性も残存している)。そして、その結果、このようなバインダーを含有する塗型剤を使用して形成された塗膜の長寿命化が実現でき、塗型の再施工のサイクルの間隔を延ばし、金型の連続使用回数を増大化し、連続鋳造期間を長期化することが可能になった。なお、コロイダルシリカには、前記の膜形成性だけでなく保温性及び湯(溶けた金属)流れ性などの特性もあるため、コロイダルシリカをバインダーに含有させることにより、これらの特性にも優れた塗型剤を作製することができる。
【0015】
特に本発明においては、バインダーの製造工程として、珪酸ナトリウム液にコロイダルシリカを少量ずつ添加し攪拌混合させることで粘性を上げ、この珪酸ナトリウム液にコロイダルシリカが混合・分散された白濁液の中に炭化珪素を添加し分散させた液体を、珪酸ナトリウムと炭化珪素の反応により発生するガスが液体表面に浮上する現象が終了するまで、継続して撹拌するようにしており、これにより炭化珪素の粉末界面と珪酸ナトリウムを長時間攪拌し混合反応させるようにしたので、珪酸ナトリウムの有する粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)と、コロイダルシリカの有する膜形成性(塗膜強度を高める性質)と、炭化珪素の有する耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)とを兼ね備え且つ異物が混入していない高品質のバインダーを作製することができた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
塗型剤の製作においては、混合攪拌機を使用して、バインダー溶液中に各々の使用目的と用途に応じた原料粉末を順次、少量ずつ添加しながら撹拌・分散し、一昼夜混合攪拌終了後、製品中に固まり状のものが残留しないようにするため、297μm(48mesh)の金網で濾す処理をしている。また、塗型剤のバインダー以外の主原料(骨材)については、多種の原材料から、塗型剤の使用箇所や使用用途に応じて、離型性、通気性、保温性、流動性等の特徴を生かした配合・組み合わせにより塗型剤の製作を行っている。
【0017】
本発明者は、アルミニウム及びアルミニウム合金の重力金型鋳造(GDC)や低圧金型鋳造(LP)及び高圧金型鋳造に用いられる金型に使用されるのに適した長寿命の塗型剤を得るために、様々な試行錯誤の結果、珪酸ナトリウム(水ガラス)と炭化珪素(SiC)とを調合し混合反応させることにより、従来より格段に粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)が強く、その結果、従来より大幅に金型表面への付着強度が大きく、耐摩耗性が高く長寿命の塗型剤用バインダーを作製した。具体的には、珪酸ナトリウム液(バインダーの全量に対して30〜70重量%)中に炭化珪素粉末(バインダーの全量に対して3〜30重量%)を分散・調合し混合反応させることにより、珪酸ナトリウム(水ガラス)の粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)、炭化珪素の耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)などの特性を併せ有するバインダーを作製することができた。
【0018】
すなわち、本実施形態1では、撹拌中の珪酸ナトリウム液中に炭化珪素粉末を添加しながら混合調合し、炭化珪素の粉末界面と珪酸ナトリウムの反応により発生するガスが前記混合調合液の表面に浮上する現象が終了するまでの長時間、攪拌混合を継続するようにした(炭化珪素界面と珪酸ナトリウムの反応により、COやCOなどのガスが発生し前記混合調合液の表面に浮上し、またC(黒鉛)も発生し前記混合調合液中を浮遊する。なお、前述のような反応が生じるのは炭化珪素の界面だけであり、炭化珪素の界面以外の部分は元の特性を維持したまま前記混合調合液中に分散・混合されている)。これにより、珪酸ナトリウムの持つ粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)と、炭化珪素の有する耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)とを兼ね備えたバインダーを作製した。
【0019】
本実施形態1では、さらに、上記のように製作したバインダーで複数種類の骨材を結合することにより、従来の塗型剤と比較して約2〜10倍もの長寿命化が実現できる塗型剤を作製した。なお本実施形態の塗型剤に含有される骨材としては、第二酸化鉄(熱伝導性が高い、着色等でも使用。金型面での皮膜効果有り)、TiO(保温性が高く、アルミの濡れ性が低い。膜厚強度が強くなる)、酸化アルミ(保温性が高く、アルミの濡れ性が低い。膜厚強度が強くなる)、木節粘土(保温性が高い、膜形成性あり、割れ緩衝性)、カオリン(保温性が高い、湯流れ、膜形成性あり、骨材的働き)、水酸化アルミ(金型保護性)、チタン酸カリ(塗膜消耗を抑制する、通気性)、マイカ(湯流れ性、保温性、通気性)、ジルコン(保温性)、タルク(潤滑性)、セリサイト(保温性、潤滑性、通気性)、バーミキュライト(保温性、通気性)、ベントナイト(膜形成性あり。保温性が高い)、窒化硼素(滑り性が高い、保温性が高く、塗膜強度が弱くなる)、黒鉛(滑り性が高い、熱伝導性が高い、塗膜強度が弱くなる)、及び珪藻土(保温性が高い)の1つ又は複数を選択できるが、これらに限られない(なお、本実施形態のように珪酸ナトリウムを含むバインダーを使用する場合は、珪酸ナトリウムに炭化珪素を添加すると通常は発泡状態となってしまうため、骨材に炭化珪素を含めないことが望ましい)。
【0020】
〔実施形態2〕
また、本発明者は、アルミニウム及びアルミニウム合金の重力金型鋳造(GDC)や低圧金型鋳造(LP)及び高圧金型鋳造に用いられる金型に使用されるのに適した長寿命の塗型剤を得るために、様々な試行錯誤の結果、珪酸ナトリウム(水ガラス)とコロイダルシリカと炭化珪素(SiC)とを調合し混合反応させることにより、従来より格段に粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)や膜形成性(塗膜の強度を高める性質)が高く、その結果、従来より大幅に金型表面への付着強度や塗膜の強度が大きく、耐摩耗性が高く長寿命の塗型剤用バインダーを作製した。具体的には、珪酸ナトリウム(バインダーの全量に対して20〜60重量%)中にコロイダルシリカ(バインダーの全量に対して3〜20重量%)と炭化珪素(バインダーの全量に対して3〜20重量%)を順次分散・調合し混合反応させることにより、珪酸ナトリウム(水ガラス)の粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)、コロイダルシリカの膜成形性(塗膜強度を高める性質)、炭化珪素の有する耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)などの特性を併せ有するバインダーを作製することができた。
【0021】
すなわち、本実施形態2では、一般的に珪酸ナトリウムは粘着性・密着性が高いが、多く使用すると加熱時の発泡が生じて、緻密性が低下し、耐熱性も下がるため、高温での塗型施工が困難になってしまう。そこで、この解決のため、珪酸ナトリウム液中に、これと性質の異なるコロイダルシリカを、大きな塊状にゲル化しないように(コロイダルシリカが珪酸ナトリウム液中に分散するように)少量ずつ添加しながら、攪拌・混合させることにより、珪酸ナトリウム液全体の粘性を上げるようにした。そして、さらに、これに炭化珪素粉末を添加しながら撹拌、混合調合し、炭化珪素の粉末界面と珪酸ナトリウムの反応により発生するガスが前記混合調合液の表面に浮上する現象が終了するまでの長時間、攪拌混合を継続するようにした(炭化珪素界面と珪酸ナトリウムの反応により、COやCOなどのガスが発生し前記混合調合液の表面に浮上し、またC(黒鉛)も発生し前記混合調合液中を浮遊する。なお、前述のような反応が生じるのは炭化珪素の界面だけであり、炭化珪素の界面以外の部分は元の特性を維持したまま前記混合調合液中に分散・混合されている)。これにより、珪酸ナトリウムの持つ粘着性・密着性(金型表面への付着強度を高める性質)と、コロダルシリカの持つ膜形成性(塗膜強度を高める性質)と、炭化珪素の有する耐摩耗性(及び、珪酸ナトリウムと反応する炭化珪素界面に生じる強い粘着性・密着性)とを兼ね備えたバインダーを作製した。
【0022】
本実施形態2では、さらに、上記のように製作したバインダーで複数種類の骨材を結合することにより、従来の塗型剤と比較して約2〜10倍もの長寿命化が実現できる塗型剤を作製した。なお本実施形態の塗型剤に含有される骨材としては、第二酸化鉄(熱伝導性が高い、着色等でも使用。金型面での皮膜効果有り)、TiO(保温性が高く、アルミの濡れ性が低い。膜厚強度が強くなる)、酸化アルミ(保温性が高く、アルミの濡れ性が低い。膜厚強度が強くなる)、木節粘土(保温性が高い、膜形成性あり、割れ緩衝性)、カオリン(保温性が高い、湯流れ、膜形成性あり、骨材的働き)、水酸化アルミ(金型保護性)、チタン酸カリ(塗膜消耗を抑制する、通気性)、マイカ(湯流れ性、保温性、通気性)、ジルコン(保温性)、タルク(潤滑性)、セリサイト(保温性、潤滑性、通気性)、バーミキュライト(保温性、通気性)、ベントナイト(膜形成性あり。保温性が高い)、窒化硼素(滑り性が高い、保温性が高く、塗膜強度が弱くなる)、黒鉛(滑り性が高い、熱伝導性が高い、塗膜強度が弱くなる)、及び珪藻土(保温性が高い)の1つ又は複数を選択できるが、これらに限られない(なお、本実施形態のように珪酸ナトリウムを含むバインダーを使用する場合は、珪酸ナトリウムに炭化珪素を添加すると通常は発泡状態となってしまうため、骨材に炭化珪素を含めないことが望ましい)。
【実施例1】
【0023】
1.塗型剤の製作
バインダー部の調合では珪酸ナトリウム(水ガラス)60部に炭化珪素(SiC)20部を少量づつ徐々に撹拌をしながら添加した。炭化珪素の撹拌混合後、20部の水を添加し調合した。この調合バインダー溶液では反応による発泡(反応生成物)が出なくなるまで数日間撹拌を続けた。塗型剤の骨材部(粉末部)には、酸化アルミ、二酸化チタン、第二酸化鉄、カオリン、木節粘土、ベントナイト、チタン酸カリウム、水酸化アルミ、マイカ、バーミキュライト、ジルコン、タルク、セリサイト、窒化硼素、黒鉛、及び珪藻土などの天然鉱物原料及び合成原料の中からの8種類、例えば酸化アルミ、二酸化チタン、第二酸化鉄、カオリン、木節粘土、ベントナイト、チタン酸カリウム、及び水酸化アルミを選択し、その合計が60部の原料を、各々撹拌しながら添加し(例えば比重の軽いものから1種類ずつ順番に添加し)、一昼夜撹拌を行い調合作製した。
【0024】
比較例として、従来品の珪酸ナトリウムのみから成るバインダーに、実施例1と同じ骨材部(粉末部)を調合した塗型剤を作製した。
【0025】
2.塗型剤の塗布
前記塗型剤を塗型剤1:水1の割合で希釈した後、それを230℃に予熱されたSKD61材質(金型材)に約100〜150μm厚に焼付け塗布した。その後450℃の焼成炉内で1時間加熱焼成した。比較塗型剤についても、同様の処理を行った。
【0026】
3.磨耗・塗型強度評価試験結果
本実施例1及び比較例によるそれぞれの塗膜の耐摩耗性の確認を目的とした評価試験を行なった。その結果は、下表1のとおりで、本実施例1の塗型剤は、比較例と比較して落砂試験での磨耗量が半分近く少なくなっていた。このことから、本実施例1の塗型剤は、比較例と比較して、金型表面への密着性及び塗膜の強度が高く、極めて耐摩耗性が高く長寿命であることが確認できた。
【0027】
【表1】

【実施例2】
【0028】
1.塗型剤の製作
バインダー部の調合では、珪酸ナトリウム(水ガラス)50部にコロイダルシリカ15部を、大きな塊状にゲル化しないように(コロイダルシリカが珪酸ナトリウム液中に分散するように)、撹拌しながら少量づつ添加した。更に炭化珪素(SiC)15部を撹拌しながら少量づつ添加した。コロイダルシリカと炭化珪素の撹拌混合後、20部の水を添加し調合した。この調合バインダー溶液では反応による発泡(反応生成物)が出なくなるまで数日間撹拌を続けた。塗型剤の骨材部(粉末部)には、酸化アルミ、二酸化チタン、第二酸化鉄、カオリン、木節粘土、ベントナイト、チタン酸カリウム、水酸化アルミ、マイカ、バーミキュライト、ジルコン、タルク、セリサイト、窒化硼素、黒鉛、及び珪藻土などの天然鉱物原料及び合成原料の中からの8種類、例えば酸化アルミ、二酸化チタン、第二酸化鉄、カオリン、木節粘土、ベントナイト、チタン酸カリウム、及び水酸化アルミを選択し、その合計が60部の原料を、各々撹拌しながら添加し(例えば比重の軽いものから1種類ずつ順番に添加し)、一昼夜撹拌を行い調合作製した。
【0029】
比較例として、従来品の珪酸ナトリウムのみから成るバインダーに、実施例2と同じ骨材部(粉末部)を調合した塗型剤を作製した。
【0030】
2.塗型剤の塗布
前記塗型剤を塗型剤1:水1の割合で希釈した後、それを230℃に予熱されたSKD61材質(金型材)に約100〜150μm厚に焼付け塗布した。その後450℃の焼成炉内で1時間加熱焼成した。比較塗型剤についても、同様の処理を行った。
【0031】
3.磨耗・塗型強度評価試験結果
本実施例2及び比較例によるそれぞれの塗膜の耐摩耗性の確認を目的とした評価試験を行なった。その結果は、下表2のとおりで、本実施例2の塗型剤は、比較例と比較して落砂試験での磨耗量が半分以上少なくなっていた。このことから、本実施例2の塗型剤は、比較例と比較して、金型表面への密着性及び塗膜の強度が高く、極めて耐摩耗性が高く長寿命であることが確認できた。
【0032】
【表2】

【0033】
4.塗膜の寿命比較試験結果
さらに、本発明者は、本実施例2と比較例とをそれぞれアルミホイール、シリンダーヘッド、ピストンの製造工程に使用する金型に施工して、その金型表面の塗膜の寿命を比較した。その結果は、下表3に示すとおりであった。すなわち、アルミホイール用金型に使用したときは、比較例では3直(240ショット。1直は8時間作業のこと)の連続操業後に塗型の再施工をする必要が生じたのに対して、本実施例2では塗型の再施工までに6直(480ショット)の連続操業が可能になり、塗膜の寿命が2倍に延命したことを確認できた。また、シリンダーヘッド用金型に使用したときは、比較例では6直(450ショット)の連続操業後に塗型の再施工をする必要が生じたのに対して、本実施例2では塗型の再施工までに20直(3,000ショット)の連続操業が可能になり、塗膜の寿命が3倍以上に延命でき、不良率も低下した。さらに、ピストン用金型に使用したときは、比較例では800ショットの連続操業後に塗型の再施工をする必要が生じたのに対して、本実施例2では塗型の再施工までに2,000ショットの連続操業が可能になり、塗膜の寿命が2倍以上に延命したことを確認できた。
【0034】
【表3】

【0035】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は前記各実施例として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記各実施例においては、骨材として酸化アルミ、二酸化チタン、第二酸化鉄、カオリン、木節粘土、ベントナイト、チタン酸カリウム、及び水酸化アルミを選択したが、本発明では他の骨材を使用することができることはもちろんである。例えば、前記実施例1においては、バインダーとして、珪酸ナトリウム60部、炭化珪素(SiC)20部、水20部を調合して作製するようにしたが、本発明ではこれに限られるものではなく、例えば、珪酸ナトリウム60部、炭化珪素(SiC)10部、水30部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム60部、炭化珪素(SiC)5部、水35部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム70部、炭化珪素(SiC)15部、水15部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム70部、炭化珪素(SiC)10部、水20部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム70部、炭化珪素(SiC)5部、水25部を調合して作製することも、可能である。また、前記実施例2においては、バインダーとして、珪酸ナトリウム50部、コロイダルシリカ15部、炭化珪素(SiC)15部、水20部を調合して作製するようにしたが、本発明ではこれに限られるものではなく、例えば、珪酸ナトリウム50部、コロイダルシリカ15部、炭化珪素(SiC)10部、水25部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム50部、コロイダルシリカ15部、炭化珪素(SiC)5部、水30部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム40部、コロイダルシリカ20部、炭化珪素(SiC)20部、水20部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム40部、コロイダルシリカ20部、炭化珪素(SiC)15部、水25部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム40部、コロイダルシリカ20部、炭化珪素(SiC)10部、水30部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム60部、コロイダルシリカ10部、炭化珪素(SiC)10部、水20部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム60部、コロイダルシリカ15部、炭化珪素(SiC)15部、水10部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム60部、コロイダルシリカ20部、炭化珪素(SiC)5部、水15部を調合して作製することも、珪酸ナトリウム60部、コロイダルシリカ10部、炭化珪素(SiC)5部、水25部を調合して作製することも、可能であることはもちろんである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは珪酸ナトリウムと炭化珪素とを含有することを特徴とする塗型剤。
【請求項2】
骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは、珪酸ナトリウム30〜70重量%と炭化珪素3〜30重量%とを含有することを特徴とする塗型剤。
【請求項3】
骨材とバインダーを含む塗型剤の製造方法であって、
バインダーの製造工程として、
珪酸ナトリウム液を撹拌しながらその中に炭化珪素を少量ずつ添加することにより、珪酸ナトリウム液中に炭化珪素が分散した液体を作製する工程と、
前記作製した液体を、珪酸ナトリウムと炭化珪素の反応により発生するガスが液体表面に浮上する現象が終了するまで、継続して撹拌する工程と、
を含むことを特徴とする塗型剤の製造方法。
【請求項4】
骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは珪酸ナトリウムとコロイダルシリカと炭化珪素とを含有することを特徴とする塗型剤。
【請求項5】
骨材とバインダーを含む塗型剤であって、前記バインダーは、珪酸ナトリウム20〜60重量%とコロイダルシリカ3〜20重量%と炭化珪素3〜20重量%とを含有することを特徴とする塗型剤。
【請求項6】
骨材とバインダーを含む塗型剤の製造方法であって、
バインダーの製造工程として、
珪酸ナトリウム液を撹拌しながらその中にコロイダルシリカを少量ずつ添加することにより、珪酸ナトリウム液の中にコロイダルシリカが分散した白濁液を作製する工程と、
前記白濁液を撹拌しながらその中に炭化珪素を少量ずつ添加することにより、前記白濁液中に炭化珪素が分散した液体を作製する工程と、
前記作製した液体を、珪酸ナトリウムと炭化珪素の反応により発生するガスが液体表面に浮上する現象が終了するまで、継続して撹拌する工程と、
を含むことを特徴とする塗型剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−223801(P2012−223801A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94791(P2011−94791)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【特許番号】特許第4806106号(P4806106)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(590001991)日新リフラテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】