説明

塗工紙用塗被組成物及びそれを用いた塗工紙

【課題】 澱粉と顔料を主成分とする塗被組成物を用いて得られる従来の塗工紙の表面強度を向上させ、印刷に対する適性も改善した塗工紙を提供する。
【解決手段】 澱粉、C8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマー及び顔料を含有する塗工紙用塗被組成物;及び該塗工紙用塗被組成物を原紙に塗布し、乾燥して得られる塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料及び接着剤を主成分とする塗工紙用塗被組成物及びそれを用いた塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の塗工紙はメカニカルパルプや古紙パルプを主体とする紙が使用されるようになり、特にゴミ増加等の環境問題や省資源の観点から古紙の多配合化が求められている。従来のように化学パルプを多配合化した塗工紙に比べて、紙自身の強度も低下する傾向である。
【0003】
更に近年、印刷はオフセット化、カラー化及び高速化が急速に進んでおり、印刷媒体となる印刷用塗工紙に対して、より優れたカラー印刷適性や印刷作業性が求められている。特にオフセット印刷は画線部を親油性に、非画線部を親水性に処理した版胴に湿し水とインキを同時に与え、水と油の反発を利用して画線部のみにインキを付着させる版式である。版胴に次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインキを転移させた後、紙に転移させて印刷を行うが、この時非画線部の水も紙に転移する。水とインキの混ざりを少なくするために、従来から使用されていた凸版印刷方式と比べて、比較的タックの強い印刷インキを使用すること、印刷時に紙が水を吸収すること等から、塗工紙としては表面強度の強いことが要求される。表面強度が弱いと、基紙から遊離した繊維や塗被層に含まれる顔料等がブランケットに堆積する所謂ブランケットパイリングの問題や、それらがインキに混入することにより、紙面の印刷面に所謂カスレ等が生じ、印刷品質の低下や印刷作業性の低下といったトラブルが起こる。また、美装箱等に用いられる白板紙は、印刷適性も必要であるが、擦れ、引っ掻き等で表面の顔料が剥がれ落ちないよう、塗被層中の顔料を強力に接着し、強靱な塗被層を形成させる必要がある。
このように印刷や擦れに対する表面強度向上の要求は時と共に高まっている。
【0004】
塗工紙の表面強度向上の対策としては、一般的に塗被層の接着剤の一部であるラテックス種類を替えることが多い。これはラテックスが最も接着力が強いため、表面強度を左右させる大きな要因となるためである。ラテックス以外の接着剤はラテックスの補助剤的な役割が多く、澱粉も接着性の他に塗料の保水性を高める効果があるが、どちらかといえば後者の性能を重視する傾向にある。
【0005】
ラテックス種類を替える以外に他の接着剤を添加して表面強度を向上させる方法として、アクリルアミド水溶性ポリマーを添加する方法(特許文献1)やポリアミノアミド系硬化剤を添加して、特にウェット印刷強度を向上させる方法(特許文献2)等がある。しかし、高価な合成系の試薬を使用すること、また、前者は比較的接着性能の高い接着剤を用いて強度を向上させていること、後者は接着剤の耐水化によりウェット強度を向上させるがドライ強度はあまり向上しないこと等、いずれも、接着性能の相乗効果による表面強度向上には十分な効果を得られていない。
【0006】
【特許文献1】特開平10−46490号公報
【特許文献2】特開平7−229092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、澱粉と顔料を主成分とする塗被組成物を用いて得られる従来の塗工紙の表面強度を向上させ、印刷に対する適性も改善した塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、澱粉を塗工紙用塗被組成物中の接着剤として利用することについて見直し、鋭意研究した結果、塗工紙用塗被組成物中にC8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマー配合してなる組成物を原紙の表面に塗布し、乾燥することにより得られた塗工紙の表面強度が非常に向上することを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)澱粉、C8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマー及び顔料を含有する塗工紙用塗被組成物。
(2)顔料100質量部に対して、固形分換算量で、澱粉1〜30質量部及びC8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマー0.001〜3質量部を含有する前記(1)に記載の塗工紙用塗被組成物。
【0010】
(3)澱粉及びC8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを含有する混合物を糊化させて得られる糊液と顔料を混合してなる前記(1)又は(2)に記載の塗工紙用塗被組成物。
(4)澱粉を糊化させた後、C8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを混合して得られる糊液と顔料を混合してなる前記(1)又は(2)に記載の塗工紙用塗被組成物。
【0011】
(5)澱粉及びC8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを含有する混合物を糊化させて得られる糊液と顔料を混合することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の塗工紙用塗被組成物の製造方法。
(6)澱粉を糊化させた後、C8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを混合して得られる糊液と顔料を混合することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の塗工紙用塗被組成物の製造方法。
【0012】
(7)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の塗工紙用塗被組成物を原紙に塗布し、乾燥して得られる塗工紙。
(8)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の塗工紙用塗被組成物を原紙に塗布し、乾燥することを特徴とする塗工紙の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面強度が非常に優れ、大きな印刷負荷に耐えうる塗工紙を提供することができる。特にウェット表面強度ばかりでなくドライ表面強度も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いる澱粉の原料澱粉としては、例えばトウモロコシ澱粉(コーンスターチ)、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、米澱粉等の未加工澱粉や、これらの未加工澱粉に公知の方法によりカチオン化、リン酸エステル化、アセチル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化等の置換基を導入した化学修飾澱粉等を用いることができる。また、これらの澱粉を2種類以上組み合わせて使用することもできる。
【0015】
本発明においては、好ましくは前記原料澱粉を公知の方法により塗工紙用塗被組成物の接着剤として利用しやすいように低粘度化処理した澱粉を用いる。即ち、次亜塩素酸を用いた方法により酸化させて得られた酸化澱粉や、リン酸、尿素、塩酸を用いて加熱焙焼して得られた尿素リン酸澱粉、塩酸やリン酸を用いて加熱焙焼、或いは澱粉スラリー反応を行って得られた酸変性澱粉等を用いるのが好ましい。また、前記原料澱粉を酵素変性やAPS(過硫酸アンモニウム)変性を行って低分子化した糊液を用いてもよい。なお、各種澱粉の化工度に制限範囲は特にないが、塗被組成物(塗料)粘度が著しく増大して塗工に支障がないように、澱粉糊液の50℃、20%のB型粘度が5〜500mPa・sの範囲になるように化工処理することが好ましい。
【0016】
本発明に用いるスチレンアクリル系ポリマーは、C8−24−アルキル基を有するメタクリル酸エステル単量体(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体(B)と、スチレン型単量体(アルケニル芳香族単量体)(C)とから得られる共重合体である。
【0017】
前記メタクリル酸エステル単量体(A)としては、例えばメタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ノナデシル、メタクリル酸エイコシルが挙げられ、特に、C12−20−アルキル基を有するものが好ましく、C12−18−アルキル基を有するものが更に好ましい。
【0018】
前記α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体(B)としては、例えば(メタ)アクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸等が挙げられる。
【0019】
前記スチレン型単量体(C)とは、スチレン骨格を有し、スチレン部分以外に不飽和結合を有しない化合物をいい、例えばスチレン、ビニルケトン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、好ましくはスチレン等が挙げられる。
【0020】
前記スチレンアクリル系ポリマーにおけるメタクリル酸エステル単量体(A)、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体(B)及びスチレン型単量体(アルケニル芳香族単量体)(C)の割合は、好ましくは単量体(A)5〜60質量%、単量体(B)5〜50質量%、単量体(C)90〜20質量%であり、更に好ましくは単量体(A)10〜50質量%、単量体(B)5〜40質量%、単量体(C)85〜10質量%である。
【0021】
前記スチレンアクリル系ポリマーの数平均分子量は、通常2,000〜50,000、好ましくは3,000〜30,000、更に好ましくは5,000〜15,000である。
【0022】
前記スチレンアクリル系ポリマーは、アルカリ金属塩、アルカリ金属土類塩、アンモニウム塩、有機アミンとの塩等の塩の形態で用いてもよい。前記塩を形成するアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等、有機アミンとしては、アルカノールアミン(エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルメタノールアミン等)、アルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン等)等が挙げられる。
【0023】
本発明の塗被組成物における澱粉と前記スチレンアクリル系ポリマーの割合は、通常質量比で100:0.1〜10.0、好ましくは100:0.5〜5.0である。
【0024】
本発明の塗被組成物の製造に際しては、澱粉を糊化(糊炊き)後、スチレンアクリル系ポリマーを混合してもよいが、澱粉及び前記スチレンアクリル系ポリマーを含有する混合物を糊化(糊炊き)することがより好ましい。
【0025】
以下、本発明における糊液の製造の好ましい態様について説明する。
先ず、澱粉(好ましくは、塗工紙用塗被組成物の接着剤として利用しやすいように低粘度化処理した澱粉)に前記スチレンアクリル系ポリマーの水溶液を混合させ、熱風乾燥機にて乾燥させ、水分18%以下の粉体を得る。澱粉とスチレンアクリル系ポリマーを混合する装置は特に限定されないが、均一に混合されるよう、澱粉にスチレンアクリル系ポリマーの水溶液をスプレーにて散布させる方法が好ましい。
【0026】
澱粉とスチレンアクリル系ポリマーの混合物の10質量%スラリーのpHが6.0〜8.0になるよう、予めスチレンアクリル系ポリマーの水溶液のpHを調整しておくことが好ましい。澱粉スラリーを加熱糊化した際、pHが6.0未満では糊液中の澱粉老化物が多く発生しやすく、pHが8.0よりも大きいと加熱糊化中に澱粉分子の解重合が生じ、澱粉分子の切断、不溶解性物の発生が起こりやすくなる。
【0027】
澱粉とスチレンアクリル系ポリマーの水溶液を混合後、水分を18%以内に乾燥させるが、フラッシュドライヤー等の熱風乾燥機を用いるのが好ましい。なお、乾燥時に該混合物が加熱により糊化しなければ、乾燥時の温度には特に制限はない。
【0028】
本発明において、糊炊きは常圧、加圧方式のいずれを用いてもよいが、必要以上に加熱時間を長くしないことが好ましい。糊炊き後の、澱粉とスチレンアクリル系ポリマーの混合物10質量%を含有する糊液の25℃におけるpHが6.0〜8.0になっていれば、目的とする糊液を得られる。
【0029】
本発明の塗被組成物は、前記のようにして得られる糊液と顔料を混合することにより得ることができる。
【0030】
顔料としては、例えば焼成クレー、構造化カオリン及びデラミネーテッドクレー等の通常のクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、サチンホワイト、タルク等の無機顔料、また、近年より塗工紙の光沢性、平滑性、軽量化を向上させるために有機顔料が用いられるようになったが、アクリル重合体、スチレン重合体、スチレン−アクリル共重合体の密実粒子、中空粒子の有機顔料等の一般塗被紙製造分野で使用されている顔料の1種以上が使用できる。
【0031】
本発明の塗被組成物における顔料と澱粉及び前記スチレンアクリル系ポリマーとの配合割合は、顔料100質量部に対して、固形分換算量で、澱粉は、好ましくは1〜30質量部、更に好ましくは3〜25質量部であり、前記スチレンアクリル系ポリマーは、好ましくは0.001〜3質量部、更に好ましくは0.05〜1.5質量部である。ちなみに、澱粉の前記配合割合が、1質量部未満では、十分な塗工面の平滑性、透気性が発揮されないため、良好な印刷適性を得ることができなくなり、一方、30質量部を超えると、塗被液粘度が高くなり、高速操業性が低下する。
【0032】
本発明の塗被組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、澱粉、前記スチレンアクリル系ポリマー及び顔料以外の成分を適宜配合してもよい。
【0033】
例えば、接着剤成分としては、澱粉の他に、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル酸系重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基を含有する単量体で変性したアルカリ溶解性あるいは非アルカリ溶解性の重合体ラテックスの一種以上が適宜選択して使用される。更に、一般塗被紙の製造分野で使用されている接着剤も本発明の効果を損なわない範囲で適宜使用できる。具体例として、例えばカゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白類、ポリビニルアルコール、オレフィン・無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成樹脂系接着剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の如き通常の接着剤が例示でき、これらを二種以上混合使用してもよい。
【0034】
その他、必要に応じて、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、染料、耐水化剤、流動変性剤等を適宜添加することもできる。
【0035】
次に、本発明の塗工紙及びその製造方法について説明する。
本発明の塗工紙は、原紙の片面又は両面に、前述した本発明の塗被組成物を塗布し、乾燥して得られるものである。本発明の塗被組成物は、シングル塗工、あるいはダブル塗工における下塗り層、上塗り層のいずれの塗工層にも適用することができる。本発明の塗被組成物からなる塗料の塗工量は、特に限定されるものではない。
【0036】
塗料を塗工するための塗工装置としては特に限定されるものではなく、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター及びゲートロールコーター、サイズプレス等のロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドェルコーター等が使用される。
【0037】
なお、塗工する前にマシンキャレンダー、ソフトキャレンダー、あるいはヤンキードライヤー等を使用して、予め基紙及び下塗り層を設けた紙の平滑化処理を行うこともできる。また、必要に応じて上塗り層用塗料を塗工、乾燥した後にマシンキャレンダー、ソフトキャレンダー、あるいはスーパーキャレンダー等を使用して平滑化処理を施すことができる。
【0038】
基紙を構成するパルプとしては特に限定されるものではなく、例えば化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等の1種又は2種以上を適宜混合して使用される。その他、基紙には必要に応じて、サイズ剤、紙力増強剤、濾水剤、填料、着色剤及び蛍光増白剤等の助剤を適宜添加することもできる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、以下において部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0040】
[接着剤の調製]
(接着剤Aの調製)
エースA(王子コーンスターチ社製の酸化澱粉;澱粉糊液の50℃、20%のB型粘度200mPa・s)100部にスチレンアクリル系ポリマー30%水溶液(メタクリル酸テトラデシル/スチレン/アクリル酸=20/45/35%;数平均分子量7000)1.0部(各固形分換算)をスプレーにて散布、混合後、フラッシュドライヤーにて水分12%まで乾燥し、接着剤Aを得た。接着剤Aの10%スラリーpHは7.5、10%糊液pHは6.8であった。
【0041】
(接着剤Bの調製)
エースY(王子コーンスターチ社製の酸化澱粉;澱粉糊液の50℃、20%のB型粘度90mPa・s)100部にスチレンアクリル系ポリマー30%水溶液(メタクリル酸テトラデシル/スチレン/アクリル酸=20/45/35%;数平均分子量7000)1.5部(各固形分換算)をスプレーにて散布、混合後、フラッシュドライヤーにて水分12%まで乾燥し、接着剤Bを得た。接着剤Bの10%スラリーpHは7.5、10%糊液pHは6.8であった。
【0042】
(接着剤Cの調製)
エースP−140(王子コーンスターチ社製の尿素リン酸澱粉;澱粉糊液の50℃、20%のB型粘度60mPa・s)100部にスチレンアクリル系ポリマー30%水溶液(メタクリル酸テトラデシル/スチレン/アクリル酸=20/45/35%;数平均分子量7000)1.5部(各固形分換算)をスプレーにて散布、混合後、フラッシュドライヤーにて水分12%まで乾燥し、接着剤Cを得た。接着剤Cの10%スラリーpHは7.2、10%糊液pHは7.0であった。
【0043】
(接着剤Dの調製)
ETHYLEX−2020(STALEY社製のヒドロキシエチル化澱粉;澱粉糊液の50℃、20%のB型粘度100mPa・s)100部にスチレンアクリル系ポリマー30%水溶液(メタクリル酸テトラデシル/スチレン/アクリル酸=20/45/35%;数平均分子量7000)1.5部(各固形分換算)をスプレーにて散布、混合後、フラッシュドライヤーにて水分12%まで乾燥し、接着剤Dを得た。接着剤Dの10%スラリーpHは7.3、10%糊液pHは6.8であった。
【0044】
[澱粉糊液の調製]
各接着剤100部に水300部を加え、スラリーを攪拌しながら95℃、30分加熱糊化した。得られた糊液を25%(固形分量)になるように水を加えて調整し、80℃にて30分保存した。
【0045】
(実施例1)
[塗料の調製]
顔料として、カオリンクレー(商品名:UW−90/エンゲルハード社)80部及び重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90/備北粉化社)20部を使用し、これに分散剤(商品名:アロンA−9/東亞合成社)0.1部、水酸化ナトリウム0.1部と水を加えてよく分散し、顔料スラリーを調製した。このスラリーにラテックス(商品名:T−2621/日本合成ゴム社)10部、接着剤Aの糊液5部(各固形分換算)をそれぞれ添加し、更に水を加えて固形分濃度が62%の塗料を調製した。
【0046】
[塗工紙の作成]
上質紙原紙(64g/m)に、前記で得た塗料をバーコーターを用いて、片面当たり乾燥重量で7g/mとなるように塗被し、ドラムドライヤーで乾燥して後、ソフトカレンダーにて2ニップ処理して塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0047】
RI印刷ウェット強度はRI印刷機にてモルトンロールにて試験片に湿し水を付けた直後、PRINTING INK SMX T.V.=13(印刷試験用インキ、東洋インキ製)を用いて印刷を行い、印刷後の紙剥け状態を目視で観察し、1点を劣(全面的に顔料、紙剥け)、3点を比較例1と同等、5点を優(顔料、紙剥けがない)とした相対評価を行い、紙に塗布した澱粉の耐水性を確認した。
【0048】
また、RI印刷ドライ強度は前記のウェット強度測定のモルトンロールを使用しない以外は同様に評価を行った。
【0049】
(実施例2)
実施例1の塗料の調製において、接着剤Bの糊液(商品名:GRS−T120/王子コーンスターチ社製)に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
実施例1の塗料の調製において、接着剤Cの糊液に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
実施例1の塗料の調製において、接着剤Dの糊液に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
実施例1の塗料の調製において、エースA(王子コーンスターチ社製)を糊炊き後にスチレンアクリル系ポリマー(メタクリル酸テトラデシル/スチレン/アクリル酸=20/45/35%;数平均分子量7000)1.0部を添加して得られた糊液(10%糊液pH6.8)に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
実施例1の塗料の調製において、エースA(王子コーンスターチ社製)の糊液に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
実施例1の塗料の調製において、エースY(王子コーンスターチ社製)の糊液に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0055】
(比較例3)
実施例1の塗料の調製において、エースP−140(王子コーンスターチ社製)の糊液に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0056】
(比較例4)
実施例1の塗料の調製において、ETHYLEX−2020(STALEY社製)の糊液に変更した以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。得られた塗工紙のRI印刷強度結果を表1に示す。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉、C8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマー及び顔料を含有する塗工紙用塗被組成物。
【請求項2】
顔料100質量部に対して、固形分換算量で、澱粉1〜30質量部及びC8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマー0.001〜3質量部を含有する請求項1記載の塗工紙用塗被組成物。
【請求項3】
澱粉及びC8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを含有する混合物を糊化させて得られる糊液と顔料を混合してなる請求項1又は2記載の塗工紙用塗被組成物。
【請求項4】
澱粉を糊化させた後、C8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを混合して得られる糊液と顔料を混合してなる請求項1又は2記載の塗工紙用塗被組成物。
【請求項5】
澱粉及びC8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを含有する混合物を糊化させて得られる糊液と顔料を混合することを特徴とする請求項1又は2記載の塗工紙用塗被組成物の製造方法。
【請求項6】
澱粉を糊化させた後、C8−24−アルキルメタクリレート基を有するスチレンアクリル系ポリマーを混合して得られる糊液と顔料を混合することを特徴とする請求項1又は2記載の塗工紙用塗被組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工紙用塗被組成物を原紙に塗布し、乾燥して得られる塗工紙。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工紙用塗被組成物を原紙に塗布し、乾燥することを特徴とする塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2006−37316(P2006−37316A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223470(P2004−223470)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000122243)王子コーンスターチ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】