説明

塗布具

【課題】 軸本体の先軸の嵌合力の低下を無くして確実な嵌合を保証できる塗布具を提供する。
【解決手段】 天冠12Aの駆動筒52に小判型等の異形断面孔を設け、内周に雌ネジが形成されたネジ体54を軸本体10に固定し、前記駆動筒52の異形断面孔に合う断面形状で外周部に雄ネジ30aを形成したネジ棒30を前記ネジ体54のネジ部に螺合させ、かつ、前記駆動筒52の異形断面孔に通過させた状態で前記駆動筒52の回転によりネジ棒30を回転させる。この回転によってピストン体50が貯留部24内で前進して化粧料などの流動体の内容物を先軸20内の塗布体である穂首22に供給するようになっており、先軸20は、後部よりも先部が先細になった概略コーン状を呈し、内周には、前記軸本体と仮接合するリブ56が略全周に渡り形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキやアイライナー等液体化粧料等の流動体を塗布(筆記という概念も含むものとする)するための流動体の塗布具、より詳しくは、保管時や販売時等の使用開始前に状態において、穂先への流動体の供給をストップしておき、購入者が使用する場合に穂先へ流動体を導通させるようにした流動体の塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部にインキ保蔵した軸本体先端の先軸に塗布部を設けた塗布具において、未使用時はストッパーリングによって塗布液が塗布部に流れないように保持し、使用時にはリングを取り外し、先軸に軸体を圧入することで軸体内に収容された塗布液が塗布部に連通し、塗付可能な技術が開示されている(例えば特公平7−25259号(:特許文献1)、特許第4321909号公報(:特許文献2)、特許第4530706号公報(:特許文献3)、特開2001−88793号公報(:特許文献4)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−25259号公報
【特許文献2】特許第4321909号公報
【特許文献3】特許第4530706号公報
【特許文献4】特開2010−88793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1から4に開示される塗布具は、先軸と軸本体とはアンダーカットによって嵌合するもののため、
(i)部材の着色によって圧入・引き抜き力の差が大きい(顔料、パール、潤滑成分)。
(ii)先軸圧入時のクリック感が乏しくユーザーが圧入途中でやめてしまってシール不良が発生する場合がある。
(iii)先軸のアンダーカットが先軸の内面側に位置するので目視で確認しづらいため成形不良を見逃し易い等の問題がある。
また、アンダーカットである縦方向の凸部を無くせば、ピンゲージによって先軸の内径管理が可能となるが、取り付け時に先軸と軸本体とが滑り易く回転可能となってしまい、使用時に嵌合が緩くなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑み、軸本体の先軸の嵌合力の低下を無くして確実な嵌合を保証できる塗布具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に流動体の貯留部を設けて、使用開始前はその流動体の吐出口を栓でシールした状態を維持する軸本体と、塗布部を保持して使用開始前はストッパーを介して軸本体に仮に接合した仮接合の状態を維持し、一方、使用開始時にストッパーが外れることによってそのストッパーの長さ分、軸方向に移動して軸本体に直に接合する本接合の状態になる先軸と、該先軸の内部に配設されて先軸が軸本体に本接合する際の移動により上記軸本体の栓に当接して、その栓抜きを行なうことにより、貯留部から塗布部への流動体の供給を可能とする流動体導通管とを備えてなる流動体の塗布具において、
前記先軸の内周には、前記軸本体と仮接合するリブが略全周に渡り形成されていることを特徴とする塗布具である。
【0007】
本発明において、前記リブの軸方向に沿う断面の形状が略台形であることが好適である。
【0008】
また、本発明において、リブには、リブの一部に縦方向の凸部が形成されていることが好適である。
【0009】
また、本発明において、前記先軸と仮接合する軸本体の表面に突起部を形成したことが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗布具においては、先軸の内周に、前記軸本体と仮接合するリブが略全周に渡り形成されているので、先軸と軸本体との嵌合力をリブが無い場合や、途切れ途切れに突起が形成されている場合に比較して嵌合力が向上する。
したがって、先軸嵌入時のクリック感が十分になり、ユーザーが圧入途中でやめてしまう虞が無い。また、略全周へのリブの形成によって、先軸内周を軸中心方向から様々な角度で視認することができるので、リブを視認し易い。また、リブの無い場合のように、使用時の嵌合が緩くなることが無い。
【0011】
なお、前記リブの軸方向に沿う断面の形状が略台形であるものとして、リブの内周端面の面積を確保する等して、嵌合力を向上させることができる。本発明においては、リブの略台形形状は、台形の角部が必ずしもエッジ形状である必要は無く、円弧形状であってもよい。
【0012】
また、リブには、完全に全周に渡って形成されているものに限定されず、縦方向のリブが一部に形成されているものにできる。なお、リブは周の一部が途切れていても嵌合力に問題が生じない範囲で構成することができる。
また、前記先軸と仮接合する軸本体の表面に突起部を形成することにより、リブの溝を無くすことができる。これによって、さらに嵌合力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回転式繰出容器を用いた塗布具の全体断面の説明図であって、(a)は使用開始前でストッパーの装着された状態の塗布具、(b)は、使用開始後でストッパーの外れた状態の塗布具の各説明図である。
【図2】比較例に係る塗布具の先軸と第1の実施形態に係る塗布具の先軸を対比する説明図であって、(a)が比較例に係る先軸の横断面、(b)が同縦断面、(c)が同後方視図であり、(d)が第1の実施形態に係る先軸の横断面、(e)が同縦断面、(f)が同後方視図である。
【図3】第1の実施形態に係る塗布具の先軸の説明図であって、(a)がリブ周辺の拡大縦断面図、(b)が先軸の縦断面図である。
【図4】比較例に係る軸本体と第1の実施形態に係る軸本体における各前端部の構造を対比する説明図であって、(a)が双方の軸本体の全体縦断面図、(b)が比較例に係る軸本体の前端部の先方からの視図、(c)が同前端部の側方拡大視図であり、(d)が実施形態に係る軸本体の前端部の先方からの視図、(e)が同前端部の側方拡大視図である。
【図5】(a)、(b)は、ネジ棒の側面図、X−X線断面図である。
【図6】(a)〜(c)はピストン体の説明図であって、(a)はピストン体の前方斜視図、(b)は後方斜視図、(c)は縦断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係るノック式繰出容器の説明図であって、(a)は天冠非押圧状態のノック式繰出容器の全体の外観図、(b)は該繰り出し容器の縦断面図、(c)は(a)から軸周方向に90°回転させた状態の全体の外観図、(d)は(b)から軸周方向に90°回転させた状態の断面図を示す。
【図8】図7に示すノック式繰出容器における天冠非押圧状態のノック機構部の断面拡大図を示す。
【図9】図7のノック式繰出容器の天冠押圧状態のノック機構部の断面拡大図を示す。
【図10】(a)〜(f)は、上記ノック式繰出容器のノック機構部の作動説明図である。
【図11】(a)〜(e)は回転体の説明図であって、(a)は回転体の前方斜視図、(b)は後方斜視図、(c)は側面図、(d)は縦断面図、(e)は前方視図である。
【図12】(a)〜(h)は天冠の説明図であって、(a)は天冠の前方斜視図、(b))は側面図、(c)は後方斜視図、(d)は前方視図、(e)は(b)と別の側面視図、(f)は後方視図、(g)は(a)と別の前方斜視図、(h)は縦断面図である。
【図13】(a)〜(d)はネジ体の説明図であって、(a)はネジ体の前方斜視図、(b)は後方斜視図、(c)は縦断面図、(d)はネジ部周辺の拡大断面図である。
【図14】(a)、(b)は、軸本体の斜視図、縦断面図である。
【図15】(a)〜(g)はカム体の説明図であって、(a)は後方斜視図、(b)は前方斜視図、(c)は縦断面図、(d)は一側面図、(e)は(d)と別の側面図、(f)は縦断面図、(g)は後方視図である。
【図16】天冠とカム体との噛み合わせ状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明に係る塗布具を図に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜図6は、第1の実施形態に係る回転式繰出容器を用いた塗布具の説明図である。一部比較例も含んで記載している。図1は、第1の実施形態に係る回転式繰出容器を用いた塗布具の全体断面の説明図である。図2は、比較例に係る先軸と実施形態に係る先軸を対比する説明図である。図3は、実施形態に係る先軸の説明図である。図4は、比較例に係る軸本体と実施形態に係る軸本体に関して先方部の構造を対比する説明図である。図5は、ネジ棒の説明図である。図6はピストン体の説明図である。
【0015】
第1の実施形態に係る塗布具は、内部に流動体の貯留部(収容部)24を設けて、図1(a)に示すように、使用開始前はその流動体の吐出口を栓でシールした状態を維持する軸本体10と、塗布部を保持して使用開始前はストッパー(栓体ともいう)26cを介して軸本体10に仮に接合した仮接合の状態を維持し、一方、図1(b)に示すように、使用開始時にストッパー26cが外れることによって、そのストッパー26cの長さ分、軸方向に移動して軸本体10に直に接合する本接合の状態になる先軸20と、該先軸20の内部に配設されて先軸20が軸本体10に本接合する際の移動により上記軸本体10のシールボール(栓)24bに当接して、その栓抜きを行なうことにより、貯留部24から穂首(塗布部)22への流動体の供給を可能とする継手14、パイプ継手16、パイプ18等の流動体導通管とを備えてなる流動体の塗布具に係るものである。
【0016】
第1の実施形態に係る塗布具は、回転式の繰出容器であり、図1に示すように、軸本体10後端部に配設された天冠12Aを軸本体10に対して周方向に相対回転させることにより貯留部24内の流動体内容物を繰り出すことが可能な容器である。
【0017】
上記塗布具は、軸本体10の後端に回転可能に嵌合された天冠12Aと、使用者による天冠12Aの回転の力をネジ棒30に伝える駆動筒52と、軸本体10に固定してネジ棒30が螺合するネジ体54と、先端にピストン体50が回転可能に係合したネジ棒30と、軸本体10の貯留部24内を摺動するピストン体50とを有する。前記駆動筒52を介して天冠12Aの回転をネジ棒30に伝え、該ネジ棒30の回転によってナット状のネジ体54の雌ネジを介して該ネジ棒30及びピストン体50が前進して貯留部24内から前記内容物を繰出す構造になっている。
【0018】
軸本体10は、図4に示すように、前端部10aが縮径されているが、内周面の後端部では凹凸段状の嵌合部10bが形成され、中央部のやや後方よりには、リブ10cが内方に突出して軸方向に延在して形成されている。軸本体10にネジ体54を装着するときには、軸本体10の開口した後端部から前記ネジ体54を前方向きに挿入し、前記リブ10cにネジ体54外周の前記溝部に装着しながら前進させて嵌め込んで行く。
【0019】
天冠12Aは、図1に示すように、後端に蓋が嵌入することによって閉じられた筒状を呈する操作部が軸筒10後端部に回動可能に嵌め込まれ(嵌合部10b内に嵌着され)かつ露出しているものである。駆動筒52が天冠12A内に嵌入して回転方向に固定されており、この、駆動筒52内に回転方向固定かつ軸方向への相対移動可能にネジ体54が装着されている。
【0020】
前記回転式繰出容器において、軸本体10前端部10aには、継手14、パイプ継手16、パイプ18、先軸20、穂首22が取り付けられる。軸本体10の貯留部24には、内容物の流動体(実施形態では、流動性化粧料等塗布液)が収容され、その貯留部24から繰出された流動体はパイプ18を通り穂首22先端に吐出されて、穂首22によって塗付可能になる。また、使用後にキャップ26を穂首22及び先軸20を覆うように先軸20に装着(嵌着)できるよう形成されている。
【0021】
なお、図1において符号24aは貯留部24内の内容物を往復動によって攪拌する攪拌ボール、24bはシールボールである。
また、26aはキャップ26内のインナーキャップ、26bはインナーキャップ後方付勢用のスプリングである。
また、符号26cは、未使用時における内容物のパイプ18から穂首22に向かう塗布液の流通路を閉鎖する位置に継手14、パイプ継手16、パイプ18、先軸20、穂首22を位置させるため、前記先軸20後端と軸本体10前端部10aの段状箇所前面との間にリング状部が装着されたストッパーである。このストッパー26cは、リング状部の一部が切り離され、その切り離された箇所の反対側に摘み片が一体形成され、摘み片を引くことによって、リング状部が切り離し箇所から拡径して前記先軸20後端と軸本体10の前端部10aとの間から取り外せるものになっている。
【0022】
図1(a)に示すように、未使用時ではシールボール24bが継手14の内径部に嵌入して密封しておりパイプ18内に内容物が流れ込まないようになっている。
一方、図1(b)に示すように使用時は、ユーザーがストッパー26cを軸本体10から引き抜き、先軸20を後端側に押し込むことにより、パイプ継手16の後端細径部がシールボール24bに突き当たってシールボール24bが継手14の内径部から外されて前記貯留部24内に入り込み、当該貯留部24内の内容物の流動体が継手14、パイプ継手16の内径部からパイプ18内に流入して、流動体が穂首22にその内部から供給されて、対象部に塗布可能になる。
なお、本発明において継手を密封するのにシールボールの使用に限定されない。例えば、密封部材として薄膜を継手14に一体的に設けてシールボール24bの代わりにすることができる。
【0023】
また、図1、図4に示すように、軸本体10は、軸方向に見て前端部10aが貯留部24形成箇所よりも段状に小径になっていて、前端部10a内に筒状の継手14及びパイプ継手16が先軸20後部で覆われた状態で嵌入している。その先軸20前部内でパイプ継手16先方に塗布部(塗布体)として、多数の繊維が束ねられた、または、連続気泡体からなる筆先状の穂首22が挟持されている。なお、塗布部はこの種の穂首以外の適宜の構成を採用できる。
【0024】
前記継手14は先端がフランジ状に外周に拡径し後端が内周に小孔(シールボール24bの嵌入孔)を残して壁状になった概略筒状を呈して軸本体10の前端部10aに嵌入しており、その継手14の先方開口内に先方からパイプ継手16が挿入されこのパイプ継手16に、貯留部24内から穂首22に向けて液体誘導用のパイプ18が挿入・支持されている。そして穂首22、先軸20を覆って、前端部10aにキャップ26を嵌着するようになっている。
【0025】
図1、図5に示すように、ネジ棒30は、前記駆動筒52の内周の異形断面孔に合う断面形状で外周部に雄ネジ30aを形成した棒状長尺体である。その前端部には、フランジ状に径方向突出する嵌合部30bを形成しており、その嵌合部30bにピストン体50が嵌入している。
【0026】
このピストン体50は、図6に示すように、貯留部24内壁に摺接する本体50aと、本体50aから後方に延びる中空筒状部50bと、中空筒状部50b内の凹凸の嵌合部50cを備えている。このピストン体50の嵌合部50cは、ネジ棒30先端の嵌合部30bを前記ピストン体50の嵌合部50cに嵌合(嵌入)させて、相対回転可能に前後方向移動を規制しており、この状態でピストン体50は軸本体10の貯留部24内で進退動可能に配設される。
【0027】
図1、図5に示すように、前記天冠12Aの駆動筒52に小判型等の異形断面孔を設け、内周に雌ネジが形成されたネジ体54を軸本体10に固定し、前記駆動筒52の異形断面孔に合う断面形状で外周部に雄ネジ30aを形成したネジ棒30を前記ネジ体54のネジ部に螺合させ、かつ、前記駆動筒52の異形断面孔に通過させた状態で前記駆動筒52の回転によりネジ棒30を回転させる。この回転によってピストン体50が貯留部24内で前進して化粧料などの流動体の内容物を先軸20内の塗布体である穂首22に供給するようになっている。
【0028】
ここで、前記先軸20は図2(d)〜(f)、図3に示すように、後部よりも先部が先細になった概略コーン状を呈し、内周には、前記軸本体と仮接合するリブ56が略全周に渡り形成されている。
前記リブ56の軸方向に沿う断面の形状が略台形である。リブ56の断面の形状は、角がエッジになった台形形状に限られず、角部を面取り加工したものや円弧形状としたものでもよい。
【0029】
先軸20では、先方部内周が穂首22を収容する円筒内周形状に形成され、中央部内周に前記パイプ継手16嵌入用の係合段部20aが形成される。また、先軸20の外周面には、キャップ26を嵌着固定するための、環状の凹部が形成されている。
【0030】
先軸20の後部内周に、上記リブ56の他、軸方向に沿った方向にガイド用の縦リブ58が内向きに突出形成されている。
軸本体10の前端部10a外周部に軸方向に溝10a1と周方向に嵌合用の凸部10a2が環状に形成されている。前記先軸20を軸本体10に嵌着すると、前記縦リブ58が前記溝10a1内に嵌り込んで、前記先軸20及び軸本体10の相対回転が規制され、かつ、前記リブ56が前記凸部10a2に嵌合して、本接合して確実に先軸20の抜け止めをするようになっている。
なお、先軸20のリブ56よりも後部は拡径して後方に延びて椀状を呈しており、その拡径した部分が前記軸本体10の前端部10aの段状箇所を覆い、また、その後方の椀状の内部に段状箇所に当接・支持する凸部が配列形成されている。
【0031】
上記リブ56の嵌合力(リブ56によって従来よりも向上する先軸20の軸本体10に対する耐引き抜き力、抜けにくさ)について、比較するため、図2(a)〜(c)に比較例の先軸を示す。この比較例の先軸は、その先軸20後部内周に不連続な突起60、60が内周に配列形成されているものである。突起60、60はその周方向の長さは、配列された突起60、60同士の間隔よりも周方向に短く形成されているアンダーカットである。
【0032】
このように比較例に係る突起60のアンダーカットの嵌合に比較して、図2(d)〜(f)に示す実施形態のリブ56によれば、部材の着色による圧入・引き抜き力の差が小さく、クリック感が十分でありユーザーが圧入を途中でやめるようなシール不良が生じにくく、また、先軸成形時に先軸の後端開口から覗き易くしたがって目視確認がし易い。
なお、本発明に係るリブ56には、一部溝が形成されていて、完全全周に渡るリブでなくてもよい。その場合、周方向に沿う一部溝の長さは、リブ56の長さよりも短くかつ断面同形であることが好ましい。
【0033】
また、図4(d)、(e)に記載のように、前記先軸20と仮接合する軸本体10の前端部10a表面に突起部62を形成したものである。この突起部62は、球側面形状を呈しており、先軸20嵌合時に先軸20内面のリブ56を乗り越えてかつ先軸内面がリブ56外周に引っ掛かって無理に滑ることが無いので先軸20を軸本体10の前端10aに嵌合し易くかつ、リブ56に溝を切る必要が無く、溝が無いことからリブ56自体の嵌合力が溝有りに比べて高くなる。
【0034】
図7〜図16は、第2の実施形態に係るノック式繰出容器を用いた塗布具の説明図である。なお、図中、第1の実施形態と同様の箇所には、同一の符号を付している。
図7は、第2の実施形態に係るノック式繰出容器を用い説明図、図8は、図7に示すノック式繰出容器における天冠非押圧状態のノック機構部の断面拡大図を示す。図9は、図7のノック式繰出容器の天冠押圧状態のノック機構部の断面拡大図を示す。図10(a)〜(f)は、上記ノック式繰出容器のノック機構部の作動説明図である。
【0035】
図11(a)〜(e)は回転体の説明図、図12(a)〜(h)は天冠の説明図であって、(a)は天冠の前方斜視図、(b)は側面図、(c)は後方斜視図、(d)は前方視図、(e)は(b)と別の側面視図、(f)は後方視図、(g)は(a)と別の前方斜視図、(h)は縦断面図である。図13(a)〜(d)はネジ体の説明図である。図14(a)、(b)は、軸本体の斜視図、縦断面図である。図15(a)〜(g)はカム体の説明図である。図16は天冠とカム体との噛み合わせ状態を示す図である。
【0036】
実施形態に係るノック式繰出容器は、図7に示すように、軸本体10後端部に配設された天冠12を軸方向前方に押圧することにより貯留部24内の内容物を繰り出すことが可能な容器であって、使用者のノック操作による天冠12の押圧の力を回転の力に変換するノック機構部Aと、軸本体10に固定したネジ体28と、ネジ体28に螺合させたネジ棒30とを有し、そのノック機構部Aが変換した回転の力でネジ棒30を回転させることによってネジ体28を介して該ネジ棒30を前進させて前記内容物を繰出す構造を有する。
【0037】
前記ノック式繰出容器において、軸本体10の前端部10aには、継手14、パイプ継手16、パイプ18、先軸20、穂首22が取り付けられ、軸本体10内の内容物(実施形態では、流動性化粧料等流動体)貯留部24から繰出された内容物はパイプ18を通り穂首22先端に吐出される。また、使用後にキャップ26を装着できるよう形成されている。なお、図7中24aは貯留部24内の内容物を往復動によって攪拌する攪拌ボール、26aはインナーキャップ、26bはインナーキャップ後方付勢用のスプリング、26cは未使用時における内容物のパイプ18以降への流通を閉鎖するストッパーである。パイプ18後端部には、未使用時ではシールボール24bが継手14の内径部に密着してパイプ18内に内容物が流れ込まないようになっており、一方、使用時は、ストッパー26cを軸本体10から引き抜き、先軸20を後端側に押し込むことにより、シールボール24bが継手14の内径部から外され、内容物がパイプ18に流入し、塗布することができる。
【0038】
また、図7、図14に示すように、軸本体10は、軸方向に見て前端部10aが段状に小径になっていて、前端部10a内に筒状の継手14及びパイプ継手16が先軸20後部で覆われた状態で嵌入しており、その先軸20前部内でパイプ継手16先方に塗布体として多数の繊維が束ねられ、または、連続気泡体からなる筆先状の穂首22が挟持されている。なお、塗布体はこの種の穂首以外の適宜の構成を採用できる。
【0039】
前記継手14は先方が拡径した概略筒状を呈して軸本体10の前端部10aに嵌入しており、その継手14の先方開口内に先方からパイプ継手16が挿入されこのパイプ継手16に、貯留部24内から穂首22に向けて液体誘導用のパイプ18が挿入・支持されている。そして穂首22、先軸20を覆って、前端部10aにキャップ26を嵌着するようになっている。
【0040】
以下に、各部具体的構成を説明する。
〔押圧の力を回転の力に変換するノック機構部A〕
前記天冠12の押圧による力を回転の力に変換するノック機構部Aは、図7、図8に示すように、第1のカム面32及び第2のカム面34を有する回転体36と、第1の固定カム面38を有するネジ体28、第2の固定カム面40を有するカム体42とを主な構成要素とする。
【0041】
〔回転体36〕
回転体36は、図7、図11に示すように、天冠12が回転可能かつ軸方向移動を規制して配設され、前方向きの第1のカム面32及び後方向きの第2のカム面34が形成された円環状のものであって軸本体10に回転可能かつ軸方向移動可能に配設されている。
【0042】
回転体36は、図11に示すように、全体が概略中空筒状の円環状のものであって、軸方向の前端部には、前面に前方に向かう凸部の段差が形成された段部33を有する第1のカム面32が形成され、内径部に小判型等の異形断面孔46が形成されている。また、回転体36の軸方向中央部の外周部に段状に拡径した環状部分の後方向き面に後方向きの第2のカム面34が形成されている。また、回転体36の後端部外周には、フランジ状の凹凸の嵌合部36aが形成される。
なお、第1のカム面32だけではなく、第2のカム面34に上記段部と同様の段差のある段部を設けることも可能である。
【0043】
天冠12は図12に示すように、軸方向一端が閉ざされたほぼ筒型状容器状を呈し、後部内周部に凹凸段状の係止部12aが形成される。天冠12の前端開口から前記回転体36の後端部を押し込むと前記嵌合部36aが前記係止部12aに嵌入する。前記嵌合部36aと係止部12aの各寸法が、天冠12が回転体36に対して軸方向の移動を規制するように形成されている。また、天冠12の前方側端面から前方に向けて(軸方向に沿って)突出させた天冠突起部12bを形成している。天冠突起部12bの本数は図面では平行に2本形成しているが特に指定しない。
【0044】
〔ネジ体28〕
前記ネジ体28は、図7、図13に示すように、前端部が段状に縮径し、後端部が段状に拡径した概略中空筒状体である。前端部は段状に縮径した筒状部28aであって、内径部に雌ネジが形成されたネジ部48を有し、そのネジ部48のある筒状部28aの後面には斜面途中から前方に向かって凹む段差のある段部39を設けた第1の固定カム面38が形成される。
【0045】
ネジ体28の後端部28bはフランジ状に拡径しており、天冠12を回転及び進退動自在に内挿する部分であり、その後端部28bの前方に隣接する部分には軸方向に沿うスリット28cが複数ネジ体28内外を連通して形成されると共に、外周部に凹凸形成された嵌合部28dが形成される。さらに前部外周部には、軸方向に沿う溝部28eが複数形成されている。なお、ネジ体28の前部内周部には、後述するバネ部材44を径方向で位置決めするリブ28fが内方に突出して軸方向に延在して形成されている。
【0046】
〔軸本体10〕
軸本体10は、図14に示すように、前端部10aが縮径されているが、内周面の後端部では凹凸段状の嵌合部10bが形成され、中央部のやや後方よりには、リブ10cが内方に突出して軸方向に延在して形成されている。軸本体10にネジ体28を装着するときには、軸本体10の開口した後端部から前記ネジ体28を前方向きに挿入し、前記リブ10cを前記溝部28eに装着しながら前進させて嵌め込んで行く。
【0047】
そして、嵌合部10bにネジ体28の嵌合部28dの凹凸を乗り越えさせて押圧嵌入させて、その際に、ネジ体28の後端部28bのフランジ状に拡径した部分を軸本体10の後端面に突き当てるまで進める。リブ10cが溝部28eに、嵌合部10bが嵌合部にそれぞれ緊密に装着するので、ネジ体28は軸本体10に対して回転方向及び軸方向に固定しているので装着関係になる。
なお、軸本体10のネジ体28の前方空間は内容物の貯留部24を構成する。
【0048】
〔カム体42〕
前記カム体42は、図15に示すように、概略中空筒状で前端面に第2の固定カム面40が形成され、中央部から後部にかけての外周側面に突起部42aが軸方向に延設されている。また、カム体42の後端面側には突起部42aとは略垂直方向の位置(カム体42の軸中心とした回転方向の位置が突起部42aと90°の角度差を持った位置)にカム体溝42bが前方側に向けて切り込んで形成されている。前記カム体42において、カム体溝42bの突起部42aとの前記回転方向の位置については、突起部42aと接触する位置でなければ特に指定しない。
【0049】
このカム体42は、図7、図8に示すように、回転体36外周に移動可能に嵌めた状態でネジ体28内に挿入して、突起部42aをネジ体28のスリット28cに嵌入してネジ体28の後端部28b内に係止するように嵌める。これにより、カム体42はネジ体28に対して回転方向及び軸方向への移動できないように固定され、また、前記のようにネジ体28が軸本体10に対して固定されるので、カム体42は軸本体10に対しても回転方向及び軸方向に固定される。さらに、図16に示すようにカム体溝42bが天冠12の天冠突起部12bに遊嵌し、天冠12が(上記軸本体10に対して回転方向及び軸方向に固定された)カム体42に対して回らずかつ進退動可能な構造になっている(回り止め手段)。したがって、天冠12は、軸本体10に対して回らずかつ進退動可能な構造になっている。
なお、上記のカム体42の第2の固定カム面40に、第1の固定カム面38の段部39と同様の段部を設けてもよい。
また、天冠12の回り止め手段として天冠突起部12bをカム体42のカム体溝42b内に遊び嵌めして天冠12とカム体42の各々同士が回らないようにすることによって、天冠12と回転体36が一緒に回転してしまう現象を回避し、ノック時におけるネジ体28と回転体36とで生じるカム動作不良を防止することができる。なお、カム体42を介して天冠12を軸本体10に対して回り止めしていたが、その他、ネジ体28の後部との間や軸本体10との間に回り止め手段を形成することも本発明の範囲内である。
【0050】
〔バネ部材44〕
図7、図8に示すように、ネジ体28内には、前記回転体36の前部外周の環状突出部分の第2のカム面34反対側面と、ネジ体28の第1の固定カム面38を取り囲んだ部分との間には、バネ部材44が配設されている。このバネ部材44は、天冠12への前記押圧が解除された状態において、前記回転体36における第2のカム面34を、前記第2の固定カム面40に当接させて噛み合わせ状態になるように回転体36を後方に付勢する機能を奏する。バネ部材44には、バレル加工処理によってバネ端面のバリを除去し滑らかにすることで、スムーズな繰出動作をすることができる。
【0051】
〔ネジ棒30、ピストン体50〕
図5に示すように、ネジ棒30は、前記回転体36の異形断面孔46に合う断面形状で外周部に雄ネジ30aを形成した棒状長尺体である。その前端部には、フランジ状に径方向突出する嵌合部30bを形成している。前記ネジ棒30先端部には軸本体10と摺動可能で前記ネジ棒30と軸方向に一体的に動くピストン体50が嵌合される。
【0052】
このピストン体50は、図7、図6に示すように、貯留部24内壁に摺接する本体50aと、本体50aから後方に延びる中空筒状部50bと、中空筒状部50b内の凹凸の嵌合部50cを備えている。このピストン体50の嵌合部50cは、ネジ棒30先端の嵌合部30bを前記ピストン体50の嵌合部50cに嵌合させて、相対回転可能に前後方向移動を規制しており、この状態でピストン体50は軸本体10の貯留部24内で進退動可能に配設される。
【0053】
図7に示すように、前記回転体36に小判型等の異形断面孔46を設け、雌ネジからなるネジ部48及び第1の固定カム面38を有するネジ体28を軸本体10に固定し、前記回転体36の異形断面孔46に合う断面形状で外周部に雄ネジ30aを形成したネジ棒30を前記ネジ体28のネジ部に螺合させ、かつ、前記回転体36の異形断面孔46に通過させた状態で前記回転体36の回転によりネジ棒30を回転させる。この回転によってピストン体50が貯留部24内で前進して化粧料などの液体内容物を先軸20内の塗布体である穂首22に供給するようになっている。
【0054】
第1の固定カム面38及び第2の固定カム面40は、前記第1のカム面32及び第2のカム面34にそれぞれ対峙しかつ軸本体10に軸方向及び回転方向に固定して配置されている。
【0055】
各第1の固定カム面38及び第2の固定カム面40と、前記第1のカム面32及び第2のカム面34の詳細を図10によって説明する。図10においては、図示説明の都合上、前記第1のカム面32及び第2のカム面34を一歯のみを示しているが、実施形態では、図11のように複数歯を形成している。もちろん、対峙するカム面の一方の歯が隙間無く連続していれば他方の歯の数は一つでも複数でもよい。
【0056】
詳しくは、前記回転体36の第1のカム面32は回転体の所定回転方向(図10では正面視左方向)に対して前方(図10では正面視下方向)に傾く斜面に前方に凹状段差の段部33を有すると共に、前記ネジ体28の第1の固定カム面38は上記回転体36の所定回転方向に対して前方に傾く斜面38a1に前方に凸状段差の段部39を有する。前記回転体36の第1のカム面32及びネジ体28の第1の固定カム面38は、回転体36の所定回転方向に傾く斜面32a1に及び38a1を有した第1の歯32a及び38aを所定回転方向に同一ピッチで複数形成したものであり、前記第1のカム面32及び第1の固定カム面38が有している各第1の歯の中間部分に段部33及び39が設けられている。
【0057】
また、前記回転体36の第2のカム面34及び前記カム体42の第2の固定カム面40は、回転体36の所定回転方向(図10では正面視左方向)に対して後方(図10では正面視上方向)に傾く斜面34a1及び40a1を有した第2の歯34a及び40aを所定回転方向に同一ピッチで複数形成したものである。
【0058】
なお、実施形態では、第1のカム面32及び第1の固定カム面38と第2のカム面34及び第2の固定カム面40のピッチ同士も同じに形成している。対峙するカム面の歯の数が異なる場合は、第1のカム面32及び第1の固定カム面38の一方と第2のカム面34及び第2の固定カム面40の一方とが歯のピッチが同一であればよい。
【0059】
使用者が天冠12をノック操作した際には、前記押圧の力によって、前記回転体36における第1のカム面32が前記第1の固定カム面38に噛み合った状態で、第1のカム面32が前記第1の固定カム面38の歯38aの前方に傾く斜面38a1に沿って誘導されて行くことにより(図10(b)〜(c)参照)、前記回転体36が前方移動しかつ所定回転方に回転する。具体的には、第1のカム面32の段部33先端が前記第1の固定カム面38の斜面38a1に乗って滑って行く。
【0060】
このとき、図10(d)に示すように、第1のカム面32に設けられた段部33が第1の固定カム面38に設けられた段部39内に嵌り込む。すなわち、該第1のカム面32の歯32aの段部33が第1の固定カム面38aの段部39の凹所内に移動し、上記段部33がその段部39の凹所内に嵌り込み、第1のカム面32の歯32aの段部33の回転方向端面(壁面32a2)が第一の固定カム面38の反回転方向端の壁面38a2に当接することにより、打撃音すなわち、ノック音が発生し、繰出し容器を握っている使用者は手指にノック感覚を得ることができる。
【0061】
一方、前記押圧の解除により、前記回転体36における第2のカム面34が前記第2の固定カム面40に噛み合った状態で第2のカム面34が前記歯40aの後方に傾く斜面40a1に沿って誘導されて行くことにより(図10(e)〜(f)参照)、前記回転体36が後方移動しかつ所定回転方向に回転する。
上記動作のように各カムによる回転作動するように前記ノック機構部Aが構成され、回転体36の回転によって前記ネジ棒30を回転させるようにしたものである。
【0062】
ここで、前記回転体36の第1のカム面32が、前記第1の固定カム面38に噛み合わされた状態において(図10(d)参照)、前記第2の固定カム面40が、回転方向において第1の固定カム面38の一歯に対して位相がずれた関係に設定され、一方、前記回転体36側の第2のカム面34が、前記第2の固定カム面40に噛み合わされた状態において(図10(f)参照)、前記回転体36側の第1のカム面32と前記第1の固定カム面38が、回転方向においてカムの一歯に対して位相がずれた関係に設定されている。
【0063】
また、前記押圧が解除された状態において、前記回転体36における第2のカム面34を、前記第2の固定カム面40に当接させて噛み合わせ状態になるように回転体36を後方に付勢するバネ部材44が具備されている。
【0064】
つまり、上記ノック式繰出容器は、前記ネジ体28の中空内部には、円環状に形成され、前記第1の固定カム面38と噛み合う第1のカム面32を前部に形成しかつ第2のカム面34を後部に形成し、内径前部に異形断面孔46を設けた回転体36と、前記回転体36と前記ネジ体28との間に回転体36をネジ体28に対して後方に付勢するバネ部材44と、前記回転体36の第2のカム面34と噛み合う第2の固定カム面40を具備し前記ネジ体28の後部に固定されるカム体42とを配設し、前記回転体36を前記ネジ体28と前記カム体42で前後から挟み込み、前記バネ部材44により前記回転体36を前記カム体42に向けて付勢する構造にしている。
【0065】
そして、外径部にネジを備えて断面が異形のネジ棒30が前記ネジ体28のネジ部48に螺合し、前記回転体36の異形断面孔46により前記ネジ棒30と前記回転体36は軸方向に移動可能かつ回転方向に係止され、前記ネジ棒30先端部には軸本体10と摺動可能で前記ネジ棒30と軸方向に一体的に動くピストン体50が嵌合される。
【0066】
さらに、前記回転体36後部には前記天冠12が回転可能かつ軸方向には係止された状態で配設されている。
【0067】
図10に示すように、前記回転体36の第1のカム面32が、前記第1の固定カム面38に噛み合わされた状態において、前記回転体36側の第2のカム面34と前記第2の固定カム面40が、回転方向においてカムの一歯に対して位相がずれた関係に設定され、前記回転体36の第2のカム面34が、前記第2の固定カム面40に噛み合わされた状態において、前記回転体36側の第1のカム面32と前記第1固定カム面が、回転方向においてカムの一歯に対して位相がずれた関係に設定されている。
【0068】
次に、上記した実施形態の作動を説明する。
【0069】
上記のノック式繰出容器において、回転体36の第1のカム面32及び第2のカム面34、ネジ体28の第1の固定カム面38、カム体42の第2の固定カム面40の相互動作の概略を図10(a)〜(f)に示す。
【0070】
図7、図8に示す天冠12をノック(押圧)しない初期状態では、図10(a)に示すように、回転体36はバネ部材44によりカム体42側に押し付けられ、回転体36の第2のカム面34とカム体42の第2の固定カム面40は噛み合った状態になっている。この状態の時、回転体36の第2のカム面34は、第1のカム面32と頂点が軸方向に対し平行して同一直線状にあり、ネジ体28の第1の固定カム面38とは位相がずれた状態である。
【0071】
次に、図9に示すように、天冠12を軸線方向に押圧してノックを開始する。
【0072】
ノックを開始すると、図10(a)から(b)に変化する。つまり、天冠12と回転体36はバネ部材44を圧縮させながら一体的に前方へ移動を開始し、回転体36の第2のカム面34はカム体42の第2の固定カム面40から離れて行く。
【0073】
さらにノックを続けると図10(b)に示すように、回転体36の第1のカム面32は、ネジ体28の第1の固定カム面38に位相がずれた状態で当接する。
【0074】
図10(c)に示すように、この当接した状態からさらに押圧すると、ネジ体28の第1の固定カム面38の歯38aの斜面38a1を、回転体36の第1のカム面32の歯32aの斜面32a1が滑って行き、当該歯32aの壁部32a2が第1の固定カム面38の歯38aの壁部38a2と当接する位置まで(図10(d)に示す)、回転体36が所定方向に回転しながら前方へ移動する。この時、回転体36は天冠12に対して回転可能に取り付けられているため天冠12自体は回転しない。
【0075】
このノック時の回転体36の回転に伴い、回転体36先端に配された異形断面孔46を貫通して、回転体36と回転方向に規制され軸線方向に移動自由に設けたネジ棒30が回転体36と一体的に回転する。ネジ棒30はネジ体28ネジ部48と螺合していることによりピストン体50と共に前進し貯留部24の内容物を繰出す。
【0076】
この状態からノックを解除する。
【0077】
ネジ体28内部に配設されたバネ部材44が回転体36を押上げることでノックを解除して行くが、この時、回転体36の第2のカム面34はカム体42の第2の固定カム40の歯40aの配列ピッチは位相がずれた状態であるので、該第2のカム面34は所定回転方向に回転及び後方へ移動を開始する。
【0078】
さらにノック解除を続けると図10(e)に示すように、回転体36の第2のカム面34がカム体42の第2の固定カム面40に当接し、図10(f)に示すように、バネ部材44の押上げ力で回転体36の第2のカム面34の歯34a斜面34a1が、カム体42の第2の固定カム面40の歯40a斜面40a1を滑って行くことにより、第2のカム面34の歯34aの壁部34a2がその第2の固定カム面40の歯40aの壁部40a2と当接する位置まで回転しながら後退する。この回転時も上記の通りネジ棒30を回転させピストン体50と共に前進し、内容物を繰出す。
【0079】
上記のノック動作を繰り返すことにより、第1のカム面と第1の固定カム面が噛み合うときにはノックオンが発生し、軸線方向のノック動作及び解除動作が回転の力に変換され、ネジ棒30を回転させ、ピストン体50を押し出すことで内容物を定量的に繰出すことが可能となる。
【0080】
また初期の回転は押圧力にその回転力の強さが依存されるため、ピストン体50の張り付きなどで初期回転に一定以上の力が必要となった場合にも対応し易い。
【0081】
なお、本発明のノック式繰出容器は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
【0082】
実施形態では、各部品を樹脂成型品とすることが好適であり、軸本体がPP、回転体がPOM、カム体がABS、ネジ体がABS、天冠がPCを材料とすることが好ましい。
【0083】
また、実施形態では、回転体36の第1のカム面32及びネジ体28の第1の固定カム面38と、回転体の第2のカム面34及びカム体42の第2の固定カム面40の歯は何れも双方とも同一ピッチで複数の歯を形成していたが本発明はこのような構成に限定されない。第1のカム面及び第1の固定カム面の一方を、回転体の所定回転方向に対して前方に傾く斜面を有した第1の歯を所定回転方向に同一ピッチで複数形成し、第2のカム面及び第2の固定カム面の一方は、回転体の所定回転方向に対して後方に傾く斜面を有した第2の歯を所定回転方向に同一ピッチで複数形成したものとして、つまり、対峙するカム面の何れか一方を複数歯で形成し、他方を単数または複数の歯を有するカムとすることも本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0084】
10 軸本体
10a 軸本体の前端部
10b 嵌合部
10c リブ
12A 天冠(第1の実施形態)
12 天冠(第2の実施形態)
12a 係止部
12b 天冠突起部
14 継手
16 パイプ継手
18 パイプ
20 先軸
22 穂首
24 貯留部
24a 攪拌ボール
24b シールボール
26 キャップ
26a インナーキャップ
26b インナーキャップ後方付勢用スプリング
26c ストッパー
28 ネジ体(第2の実施形態)
28a ネジ体の前端の筒状部
28b ネジ体の後端部
28c スリット
28d 嵌合部
28e 溝部
28f リブ
30 ネジ棒
30a 雄ネジ
30b 嵌合部
32 第1のカム面
32a 第1のカム面の歯
32a1 第1のカム面の歯の斜面
32a2 歯の壁部
33 段部
34 第2のカム面
34a 第2のカム面の歯
34a1 第2のカム面の歯の斜面
34a2 第2のカム面の歯の壁部
36 回転体
36a 嵌合部
38 第1の固定カム面
38a 第1の固定カム面の歯
38a1 第1の固定カム面の歯の斜面
38a2 第1の固定カム面の歯の壁部
39 段部
40 第2の固定カム面
40a 第2の固定カム面の歯
40a1 第2の固定カム面の歯の斜面
40a2 第2の固定カム面の歯の壁部
42 カム体
42a 突起部
42b カム体溝
44 バネ部材
46 異形断面孔
48 ネジ体のネジ部
50 ピストン体
50a 本体
50b 筒状部
50c 嵌合部
52 駆動筒
54 ネジ体(第1の実施形態)
56 リブ
58 縦リブ
60 突起
62 突起部
A 押圧の力を回転の力に変換するノック機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流動体の貯留部を設けて、使用開始前はその流動体の吐出口を栓でシールした状態を維持する軸本体と、塗布部を保持して使用開始前はストッパーを介して軸本体に仮に接合した仮接合の状態を維持し、一方、使用開始時にストッパーが外れることによってそのストッパーの長さ分、軸方向に移動して軸本体に直に接合する本接合の状態になる先軸と、該先軸の内部に配設されて先軸が軸本体に本接合する際の移動により上記軸本体の栓に当接して、その栓抜きを行なうことにより、貯留部から塗布部への流動体の供給を可能とする流動体導通管とを備えてなる流動体の塗布具において、
前記先軸の内周には、前記軸本体と仮接合するリブが略全周に渡り形成されていることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記リブの軸方向に沿う断面の形状が略台形であることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記リブは、一部に凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記先軸と仮接合する軸本体の表面に突起部を形成したことを特徴とする請求項1または3に記載の塗布具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−157611(P2012−157611A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20527(P2011−20527)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)