説明

塗布具

【目的】キャップ装着時に内筒内の空気を塗布液タンク内に簡単に侵入させて塗布液タンク内を加圧することができ、使用時に塗布液タンクを指先で押圧する必要がなくて製造コストの低い塗布具を提供する。
【構成】キャップ6の内筒7内に、可撓性に富んだ材料からなり、隔壁81を有する筒状の開弁部材8を配置し、または隔壁81に球状部82が形成された開弁部材8を配置し、キャップを装着する過程において、塗布体4が開弁部材の隔壁ないし球状部に当接すると後退してチップ3の内向きの先端縁から離れ、キャップの装着が完了したときは、弾性変形した開弁部材の隔壁ないし球状部がチップの先端開口を閉塞するようにする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、修正液や化粧液、接着剤、ペイントなどの粘度の高い塗布液が充填された塗布具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塗布体が球状の塗布具は、塗布液が充填された塗布液タンクの先端に先口を介してチップが取り付けられており、ボールペンと同様に、チップの先端からその一部が先端から臨出した状態で球状塗布体が回転自由に抱持されている。そして、球状塗布体をスプリングで弾発し、不使用時に、球状塗布体をチップの内向きの先端縁に密着させ、球状塗布体とチップの先端縁で弁構造を構成して塗布液が吐出しないようにしている。
【0003】
使用時において、球状塗布体を塗布面に押し付けると球状塗布体がスプリングの弾発力に抗して後退し、球状塗布体とチップの先端縁との間に隙間ができるので、球状塗布体のチップ内の部分に付着した塗布液が球状塗布体の回転に伴ってこの隙間を通ってチップの外側に出て塗布されるが、塗布液の粘度が高いので、自然状態では塗布液が球状塗布体の表面に十分には供給さない。このため、塗布液タンクを可撓性材によりブロー成形して変形可能とし、使用時に塗布液タンクを指先で押圧して内部を加圧し、その圧力を利用して塗布液を球状塗布体の表面に供給している。
【0004】
また、塗布体が棒状であっても、塗布体の中腹のテーパー部を形成し、スプリングで弾発された塗布体のテーパー部をチップの内向きの先端縁に密着させ、棒状塗布体とチップの先端縁で弁構造を構成して塗布液が吐出しないようにしている。そして、塗布体を塗布面に押し付けると塗布体がスプリングの弾発力に抗して後退し、塗布体のテーパー部とチップの先端縁との間に隙間ができるので、塗布液タンクを指先で押圧して内部を加圧すると、塗布液が塗布体に供給されて塗布可能になる。
【0005】
このように、使用時に塗布液タンクを指先で押圧して内部を加圧する必要があるので操作が煩雑であり、しかも塗布液タンクを可撓性材によりブロー成形するために製造コストが高くなる不具合がある。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
このため、キャップを装着するときに、キャップの内筒がチップの先端を密封した状態で更にキャップを押し込み可能にし、内筒内の密封空間の容積を減少させれば、内筒内の圧力が高くなる。従って、内筒内の空気が塗布液タンク内に侵入し、塗布液タンク内が加圧されるので、使用時に塗布液タンクを指先で押圧する必要がなくなる。
【0007】
しかし、塗布体がスプリングで弾発されているので、内筒内の空気を塗布液タンク内に侵入させるには、このスプリングの弾発力に打ち勝って塗布体を後退させる必要がある。従って、内筒内の圧力を十分に強くする必要がある。つまり、内筒がチップの先端を密封した状態でのキャップの押し込み距離を大きくする必要があり、キャップの内筒が長くなるとともに、加圧操作を行いにくい不具合がある。
【0008】
そこで本考案は、キャップ装着時に内筒内の空気を塗布液タンク内に簡単に侵入させて塗布液タンク内を加圧することができ、使用時に塗布液タンクを指先で押圧する必要がなくて製造コストの低い塗布具を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本考案は、塗布体がその一部がチップの先端開口から臨出した状態で保持されるとともに、塗布体がスプリングで弾発されてチップの内向きの先端縁に接触し、チップを保持した先口が塗布液タンクに接続され、塗布液タンクに粘度の高い造膜性塗布液が充填され、先口の外周面がキャップの内筒の内周面に密接してチップを密封する塗布具であって、キャップの内筒内に、可撓性に富んだ材料からなり、隔壁を有する筒状の開弁部材を配置し、キャップを装着する過程において、塗布体が開弁部材の隔壁に当接すると後退してチップの内向きの先端縁から離れ、キャップの装着が完了したときは、弾性変形した開弁部材の隔壁がチップの先端開口を閉塞するようにする。
【0010】
または、開弁部材の隔壁に球状部を一体に形成し、キャップを装着する過程において、塗布体が開弁部材の球状部に当接すると後退してチップの内向きの先端縁から離れ、キャップの装着が完了したときは、弾性変形した開弁部材の球状部がチップの先端開口を閉塞するようにする。
【0011】
【作用】
すなわち、キャップを装着する過程において、塗布体が球状の開弁部材の隔壁に当接するので、その反動で球状塗布体が後退してチップの内向きの先端縁から離れ、弁機構がひらく。従って、内筒内の加圧された空気が容易に塗布液タンク内に侵入し、加圧される。そして、キャップの装着が完了したときは、開弁部材の隔可壁が大きく弾性変形してチップの先端開口を閉塞するので、塗布液タンク内の加圧状態が維持され、使用時に塗布液タンクを指先で押圧する必要がない。
そして、塗布液タンクを可撓性材によりブロー成形する必要がなく、通常の硬質合成樹脂で射出成形できるので、低コストで製造することができる。
【0012】
また、開弁部材の隔壁に球状部を一体に形成すると、塗布体が球状の開弁部材の球状部に当接するので、その反動で球状塗布体が後退してチップの内向きの先端縁から離れて弁機構が開き、キャップの装着が完了したときは、開弁部材の球状部が大きく弾性変形してチップの先端開口を閉塞するが、塗布体が当接する部分の形状が球状であるので、弁機構が開いてから球状部が大きく弾性変形してチップの先端開口を閉塞するまでの時間が平面状の隔壁に比べて長く、効率良く塗布液タンク内を加圧することができる。
【0013】
【実施例】
以下に図面に示す実施例に基いて本考案を具体的に説明する。図1において、先端外周に環状突起 21 が形成された先口2の先端開口にチップ3が嵌着されている。チップ3は、ステンレスにて砲弾型に形成されており、チップ3先端のボールハウスに、直径が1.0mmφの超硬ボールからなる球状塗布体4がその一部がチップ3の先端から臨出した状態で回転自由に抱持されている。なお、チップ3は金属パイプからなるものであってもよい。
【0014】
チップ3内には、バネ力が40gの小さなスプリング5が配置されており、このスプリング5が球状塗布体4を弾発してチップ3の内向きの先端縁 31 に圧接させ、球状塗布体4とチップ3の先端縁 31 で弁機構を構成している。そして、先口2が塗布液タンク1に一体に接続されている。塗布液タンク1は、通常の硬質合成樹脂で射出成形されたものであり、可撓性材によりブロー成形したものに比べて製造コストが低くなっている。そして、塗布液タンク1および先口2内部からチップ3にかけて、例えば粘度が30〜40cpsであって造膜性の高い修正液である塗布液が充填されている。
【0015】
キャップ6は、合成樹脂で成形されており、図2に示すように、内部に内筒7が一体に形成されている。内筒7の先端縁 7a の内周面が先口2の環状突起 21 に密着すると、内筒7内は密封空間となる。そして、内筒7内に、可撓性に富んだ材料で成形された開弁部材8が配置されている。開弁部材8は、隔壁 81 を有する筒状体であり、断面形状がH字形をしている。断面形状がH字形をした開弁部材8は、前後の方向性がないので組立が容易であるが、筒状体の上面に隔壁 81 が形成された断面形状がU字形のものであってもよい。
【0016】
しかして、キャップ6を先口2に装着するとき、その過程で、内筒7の先端縁 7a が先口2の環状突起 21 に密接し、内筒7内が密封空間になる。この状態から更に、矢印の方向にキャップ6を押し込んで行くと、内筒7の内周面が環状突起 21 に密接した状態で摺動し、内筒7内の密封空間の容積が減少するので、内筒7内の空気が加圧される。そして、図2に示すように、球状塗布体4が開弁部材8の隔壁 81 に当接するが、この状態で押し込むと、開弁部材8の反発力で球状塗布体4が後退する。つまり、球状塗布体4とチップ3の先端縁 31 との間に隙間ができるので、内筒7内の空気が塗布液タンク1内に侵入し、塗布液タンク1内が加圧される。
【0017】
図2に示す状態から更に押し込んで、キャップ6の合口端 61 が塗布液タンク1の段面 11 に当接すると、図3に示すように、キャップ6の装着が完了する。
このとき、可撓性に富んだ材料で成形された開弁部材8の隔壁 81 が大きく弾性変形してチップ3の先端開口を閉塞する。従って、塗布液タンク1内は加圧された状態が維持される。
【0018】
次に図4に他の実施例を示す。キャップ6の構造は図2に示すものと同じであるが、開弁部材8の隔壁 81 の中央に球状部 82 が一体に形成されている。従って、キャップ6を先口2に装着する過程で、球状塗布体4が開弁部材8の球状部 82 に当接するが、この状態で押し込むと、開弁部材8の反発力で球状塗布体4が後退し、球状塗布体4とチップ3の先端縁 31 との間に隙間ができるので、内筒7内の空気が塗布液タンク1内に侵入し、塗布液タンク1内が加圧される。図4に示す状態から更に押し込んで、キャップ6の合口端 61 が塗布液タンク1の段面 11 に当接すると、図5に示すように、キャップ6の装着が完了するが、このとき、可撓性に富んだ材料で成形された開弁部材8の隔壁 81 および球状部 82 が大きく弾性変形して球状部 82 がチップ3の先端開口を閉塞する。
【0019】
この実施例においては、球状塗布体4が当接する球状部 82 の形状が球状であるので、弁機構が開いてから球状部 82 が大きく弾性変形してチップ3の先端開口を閉塞するまでの時間が平面状の隔壁 81 に比べて長く、効率良く塗布液タンク内を加圧することができる。
【0020】
このように、キャップ6の装着が完了すると、内筒7内をあまり高圧にすることなく、内筒7内の空気が容易に塗布液タンク1内に侵入し、塗布液タンク1内が加圧される。従って、キャップ6を取って塗布するとき、塗布液が球状塗布体4に十分に供給される。つまり、塗布液タンク1を指先で押圧する必要がなく、ボールペンで筆記する要領で確実に塗布することができる。
【0021】
以上の実施例では、塗布体が球状である例を説明したが、塗布体が棒状であり、中腹部にテーパー部が形成されたものであってもよい。
【0022】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の塗布具は、キャップを先口に装着する過程において、塗布体が開弁部材の隔壁、もしくは隔壁に形成された球状部に当接し、その反動で球状塗布体が後退してチップの内向きの先端縁から離れ、弁機構が開くようにしたので、内筒内の加圧された空気が容易に塗布液タンク内に侵入し、塗布液タンク内が加圧される。そして、キャップの装着が完了したときは、弾性変形した開弁部材の隔壁ないし球状部がチップの先端開口を閉塞するので塗布液タンク内の加圧状態が維持される。従って、使用時に塗布液タンクを指先で押圧する必要がなく、更には、塗布液タンクを可撓性材によりブロー成形する必要がなく、通常の硬質合成樹脂で射出成形できるので、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】塗布具の断面図である。
【図2】キャップの装着過程の説明図である。
【図3】キャップの装着完了の説明図である。
【図4】他の実施例のキャップの装着過程の説明図である。
【図5】他の実施例のキャップの装着完了の説明図である。
【符号の説明】
1 塗布液タンク
2 先口
21 環状突起
3 チップ
31 チップの先端縁
4 球状塗布体
5 スプリング
6 キャップ
7 内筒
7a 内筒の先端縁
8 開弁部材
81 開弁部材の隔壁
82 球状部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 塗布体がその一部がチップの先端開口から臨出した状態で保持されるとともに、該塗布体がスプリングで弾発されてチップの内向きの先端縁に接触し、該チップを保持した先口が塗布液タンクに接続され、該塗布液タンクに粘度の高い造膜性塗布液が充填され、該先口の外周面がキャップの内筒の内周面に密接してチップを密封する塗布具であって、前記キャップの内筒内に、可撓性に富んだ材料からなり、隔壁を有する筒状の開弁部材が配置され、キャップを装着する過程において、塗布体が開弁部材の隔壁に当接すると後退してチップの内向きの先端縁から離れ、キャップの装着が完了したときは、弾性変形した開弁部材の隔壁がチップの先端開口を閉塞することを特徴とする塗布具。
【請求項2】 塗布体がその一部がチップの先端開口から臨出した状態で保持されるとともに、該塗布体がスプリングで弾発されてチップの内向きの先端縁に接触し、該チップを保持した先口が塗布液タンクに接続され、該塗布液タンクに粘度の高い造膜性塗布液が充填され、該先口の外周面がキャップの内筒の内周面に密接してチップを密封する塗布具であって、前記キャップの内筒内に、可撓性に富んだ材料からなり、球状部が一体に形成された隔壁を有する筒状の開弁部材が配置され、キャップを装着する過程において、塗布体が開弁部材の球状部に当接すると後退してチップの内向きの先端縁から離れ、キャップの装着が完了したときは、弾性変形した開弁部材の球状部がチップの先端開口を閉塞することを特徴とする塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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