塗布材押出容器
【課題】塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことを簡易な構成で防止すると共に製造を容易化する。
【解決手段】本体筒2と操作筒3とが一方向/他方向に相対回転されると、螺合部8,9の螺合作用が共に働き移動体6が前進/後退し、螺合部8の螺合作用が所定量働くと螺合部8の螺合が解除され、一方向/他方向にさらに相対回転されると、螺合部9の螺合作用のみが働き移動体6がさらに前進/後退し、螺合部8の螺合が解除されたとき、螺合部8が螺合復帰するように付勢するバネ部5zと、操作筒3の内面に周方向に沿って複数設けられ、螺合部8の雌螺子を構成し、軸線方向視において互いに重ならない突起部33と、を備え、螺合部8の螺合解除とバネ部5zによる螺合復帰が繰り返されてクリック感が生じ、このクリック感により相対回転の度合いや移動体6の移動具合を螺合部8を利用して使用者に感知させる。
【解決手段】本体筒2と操作筒3とが一方向/他方向に相対回転されると、螺合部8,9の螺合作用が共に働き移動体6が前進/後退し、螺合部8の螺合作用が所定量働くと螺合部8の螺合が解除され、一方向/他方向にさらに相対回転されると、螺合部9の螺合作用のみが働き移動体6がさらに前進/後退し、螺合部8の螺合が解除されたとき、螺合部8が螺合復帰するように付勢するバネ部5zと、操作筒3の内面に周方向に沿って複数設けられ、螺合部8の雌螺子を構成し、軸線方向視において互いに重ならない突起部33と、を備え、螺合部8の螺合解除とバネ部5zによる螺合復帰が繰り返されてクリック感が生じ、このクリック感により相対回転の度合いや移動体6の移動具合を螺合部8を利用して使用者に感知させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この塗布材押出容器では、先筒(容器前部)と当該先筒に相対回転可能とされた本体(容器後部)とが一方向に相対回転されると、第一の螺合部の螺合作用が働き棒状体(塗布材)を充填したパイプ部材(移動体)が前進し、パイプ部材が前進限に達すると第一の螺合部の螺合作用が停止し、そして、一方向にさらに相対回転されると、第二の螺合部の螺合作用が働き棒状体用移動体が前進して棒状体が前進し、棒状体が容器から押し出される。また、先筒と本体とが一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、第一の螺合部の螺合作用が働きパイプ部材が後退し、パイプ部材が後退限に達すると第一の螺合部の螺合作用が停止し、そして、他方向にさらに相対回転されると、第二の螺合部の螺合作用が働き棒状体用移動体が後退し、棒状体が引き戻される。
【特許文献1】特開2006−305318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したような塗布材押出容器おいては、少量の塗布材を押し出して使用することが一般的である。しかしながら、上述の塗布材押出容器では、場合によっては、容器前部と容器後部とを一方向に相対回転し過ぎてしまい、第二の螺合部の螺合作用が働き過ぎて塗布材を過剰に押し出してしまうことがある。また、容器前部と容器後部とを他方向に相対回転し過ぎてしまい、第二の螺合部の螺合作用が働き過ぎて塗布材を過剰に引き戻してしまい、次回に塗布材を押し出すのに時間がかかることがある。ここで、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すのを防止するため、相対回転に同期してクリック感を付与するクリック歯を、容器前部及び容器後部のそれぞれに回転方向に係合するように複数設ける場合があるが、この場合には、塗布材押出容器の構造が複雑になる。
【0004】
また、上述したような塗布材押出容器は、通常、コアピン(中子)を用いた射出成形等の成形法が利用されて製造される。しかし、上述の塗布材押出容器では、第一の螺合部の雌螺子を構成する突起部が先筒の内面に螺旋状に設けられていることから、例えばモータを用いてコアピンを回しながら抜くこと(いわゆる、回し抜き)等が必要になり、製造に時間を要す。
【0005】
そこで、本発明は、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことを簡易な構造で防止する共に、製造の容易化を実現する塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る塗布材押出容器は、容器内に塗布材、この塗布材を前進により押し出すための移動体、第一の螺合部及び第二の螺合部を具備し、容器前部と当該容器前部に相対回転可能とされた容器後部とが一方向/当該一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、第一の螺合部の螺合作用が働き移動体が前進/後退し、第一の螺合部の螺合作用が所定量働くと当該第一の螺合部の螺合が解除され、一方向/他方向にさらに相対回転されると、第二の螺合部の螺合作用のみが働き移動体がさらに前進/後退する塗布材押出容器であって、第一の螺合部の螺合が解除されたときに、第一の螺合部が螺合復帰するように付勢する付勢手段と、容器後部の内面に周方向に沿って複数設けられ、第一の螺合部の雌螺子を構成し、軸線方向視において互いに重ならない突起部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この塗布材押出容器では、第一の螺合部の螺合が解除されて一方向/他方向にさらに相対回転される際に、第一の螺合部の螺合解除と付勢手段による螺合復帰が繰り返されてクリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体の移動具合が使用者に感知されるようになる。すなわち、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部が利用され、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことが簡易な構造で防止される。ここで、この第一の螺合部は、その雌螺子を構成する突起部が、軸線方向視において互いに重ならないように容器後部の内面に周方向に沿って複数設けられている。よって、突起部を射出成形する際、突起部の軸線方向一方側の形状に対応する凸部をその先端面に有する一方のコアピンと、突起部の軸線方向他方側の形状に対応する凸部をその先端面に有する他方のコアピンとを用い、これらのコアピンを、先端面が対向するように互いに突き合せると共に突き合せ面に隙間を設けて構成することで、この隙間に突起部を成形することが可能とされ、コアピンを回し抜き等するのではなく軸線方向一方側又は他方側に真っ直ぐ引き抜くことができ、容易且つ迅速な成形が可能となる。従って、本発明によれば、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことを簡易な構成で防止できると共に、製造の容易化を実現することができる。
【0008】
ここで、上記作用を好適に奏する塗布材押出容器の構成としては、具体的には、容器前部は、塗布材が充填される充填部材と、当該充填部材を軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する本体筒と、含んで構成され、容器後部は、本体筒に相対回転可能に係合する操作筒を含んで構成され、突起部は、操作筒の内面に周方向に沿って複数設けられている構成が挙げられる。
【0009】
また、上記作用を好適に奏する塗布材押出容器の構成としては、具体的には、容器前部は、塗布材が充填される充填部材を含んで構成され、容器後部は、本体筒を有し、突起部は、本体筒の内面、又は本体筒内に配設され当該本体筒に軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する螺子筒の内面に、周方向に沿って複数設けられている構成が挙げられる。
【0010】
また、上記作用を好適に奏する塗布材押出容器の構成としては、具体的には、移動体を軸線回り回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、容器後部に対し同期回転可能とされた軸体を備える構成が挙げられる。このとき、軸体は、容器後部の後方開口側に対し軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する部材に立設されている場合がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことを簡易な構成で防止できると共に、製造の容易化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1〜図17は、本発明の第一実施形態を、図18〜図32は、本発明の第二実施形態を各々示すものであり、先ず、図1〜図17を参照しながら第一実施形態について説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明の第一実施形態に係る塗布材押出容器の各状態を示す各縦断面図、図4は、本体筒を示す縦断面図、図5〜図7は、螺子筒を示す各図、図8及び図9は、尾栓を示す各図、図10及び図11は、移動体を示す各図、図12は、ピストンを示す縦断面図、図13及び図14は、移動螺子筒を示す各図、図15及び図16は、充填部材を示す各図、図17は、塗布材押出容器の螺子筒の製造方法について説明するための図であり、本実施形態の塗布材押出容器は、塗布材を収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
【0015】
この第一実施形態では、塗布材Mとして棒状物が用いられている。この棒状物としては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、ペースト状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
【0016】
図1に示すように、塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域1xを内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を同期回転可能に連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能且つ軸線方向離脱不能に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、充填部材1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。なお、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0017】
そして、この塗布材押出容器100は、内部に、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に操作筒3に第一の螺合部8を介して螺合し、本体筒2(充填部材1でも可)と操作筒3とが一方向に相対回転されると所定の前進限まで前進し、本体筒2と操作筒3とが一方向の反対方向である他方向に相対回転されると所定の後退限まで後退する移動螺子筒5と、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に移動螺子筒5に第二の螺合部9を介して螺合し、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進し、移動螺子筒5が前進限に達し本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると単独で前進し、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退し、移動螺子筒5が後退限に達し本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると単独で後退する移動体6と、この移動体6の先端部に装着されて充填領域1xの後端を形成するピストン7と、を概略備えている。
【0018】
図4に示すように、本体筒2は、円筒状に構成され、その軸線方向中央部の内周面に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット2aを有している。このローレット2aは、充填部材1を回転方向に係合するためのものである。また、本体筒2の先端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)2bが設けられている。さらに、本体筒2の後部側の内周面でローレット2aの後ろには、当該ローレット2aの後面に当接するようにして環状凸部2cが形成されている。この環状凸部2cは、操作筒3を軸線方向に係合するためのものであり、ローレット2aの凸部より突出高さが多少高くされている(軸心側に多少多く突出している)。
【0019】
図1に戻り、操作筒3は、円筒状の螺子筒31と、この螺子筒31の筒孔を後端側から塞ぐように当該螺子筒31に装着される尾栓35と、を含んで構成されている。
【0020】
図5及び図6に示すように、螺子筒31は、段付き円筒状に構成され、後側の外径大径部31xと、段差部31pを介してこれより前側の外径小径部31yとを備えている。これらの外径大径部31x及び外径小径部31yの内径は、外径と同様に、外径大径部31xに対して外径小径部31yが小とされている。
【0021】
外径大径部31xは、その内周面の前端である段差面から軸線方向中央部に亘る位置に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット32を有している。このローレット32の凸部は、前半部32aの凸部が後半部32bの凸部に比して突出高さが高くされている(前半部32aの凸部が軸心側に多く突出している)。ローレット32の前半部32aは、移動螺子筒5の前進時に当該移動螺子筒5の後端部のそれ以上の前進を阻止するためのものであり、ローレット32の後半部32bは、尾栓35を軸線回り回転方向に係合するためのものである。また、外径大径部31xの内周面の後端部には、尾栓35を軸線方向に係合するための環状凹部34aが設けられている。
【0022】
外径小径部31yは、その外周面の前端部に、本体筒2に対し軸線方向に係合するための環状凸凹部34bを有していると共に、軸線方向中央部の内周面に、当該内周面に沿い円弧状を成して円周方向に延びる突起部33を複数有している。突起部33は、図7に示すように、軸線方向視において互いに重ならないように、周方向に沿う六等配の位置に間欠的に設けられており、図5及び図6に示すように、隣接する各端部同士が軸線方向にズレて離間していると共に、軸線方向に沿って登り傾斜と下り傾斜を半々に有する山型に構成されている。この突起部33は、第一の螺合部8の一方の雌螺子を構成するものであり、移動螺子筒5の雄螺子5eと螺合するものである。
【0023】
なお、ここでは、突起部33が軸線方向視において互いに重ならない状態で雌螺子としての機能を充分に果たすべく、突起部33の螺子条数が移動螺子筒5の雄螺子5eにおける螺子条数の1/2とされている
【0024】
図8及び図9に示すように、尾栓35は、射出成形により一体に形成されたものであり、有底円筒状に構成され操作筒3の後方開口側に配される本体部35x(図1参照)と、本体部35xの底部中央に、先端側に向かうように立設された軸体35yと、を備えている。
【0025】
本体部35xは、その外周面の後端に円環状の鍔部36を有している。また、本体部35xの外周面の前端部は、その外径が若干小さくなっており、この前端部には、軸線方向に延びる突条37が、螺子筒31のローレット32の後半部32bに回転方向に係合するものとして周方向に沿って複数設けられている。また、本体部35xの外周面の軸線方向中央には、螺子筒31の環状凹部34aに軸線方向に係合するための環状凸部38が設けられている。
【0026】
軸体35yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体35yは、円柱体の外周面に、周方向に沿って六等配の位置に半径方向外方に突出するように配置されて軸線方向に延びる突条35gを備える横断面非円形形状とされている。
【0027】
この尾栓35は、図1に示すように、その本体部35xの鍔部36が螺子筒31の後端面に当接し鍔部36を除く部分が螺子筒31に内挿され、その本体部35xの突条37が螺子筒31のローレット32の後半部32bに軸線周り回転方向に係合すると共に、その本体部35xの環状凸部38が螺子筒31の環状凹部34aに軸線方向に係合することで、螺子筒31に対して同期回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。
【0028】
そして、これらの螺子筒31及び尾栓35からなる操作筒3は、螺子筒31の外径小径部31yが本体筒2に内挿され、螺子筒31の段差部31pが本体筒2の後端面に突き当てられると共に、螺子筒31の外径小径部31yの環状凸凹部34bが本体筒2の環状凸部2cに軸線方向に係合することで、本体筒2に回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着されている。
【0029】
図10及び図11に示すように、移動体6は、先端側に鍔部6aを有する円筒状に構成され、その鍔部6aより後側から後端部に亘る外周面に、第二の螺合部9の一方を構成する雄螺子6bを備えている。また、また、図11に示すように、移動体6には、その内周面の周方向に沿う六等配の位置に、移動体6を操作筒3に軸線回り回転方向に係合するためのものとして、放射状に内側に所定長突出し軸線方向に延びる突条6fが設けられている。
【0030】
そして、この移動体6は、図1に示すように、その後端部から、操作筒3の尾栓35の軸体35yに外挿され、その突条6fが軸体35yの突条35g、35g間に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に同期回転可能つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0031】
ピストン7は、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等、比較的柔らかい素材より成形され、図12に示すように、円柱体に後端面から先端側に凹設される凹部7qを設けると共に、先端面から所定長後端側に凹む環状凹部7dを周縁側に設けた構成とされている。先端側の外周面には、充填部材1の内周面に密着し気密性を確保するための環状凸部7cが設けられている。そして、このピストン7は、図1に示すように、移動体6の先端側に装着される。
【0032】
このように、ピストン7には、環状凹部7dが設けられているため、溶融塗布材を充填部材1に充填し固化して塗布材Mとしたときに、この塗布材Mは、ピストン7の環状凹部7dとの密着性が高く、ピストン7の後退に伴い確実に後退するようになっている(詳しくは後述)。さらに、このように、ピストン7に環状凹部7dが設けられていることにより、先端側の外周部の肉厚が薄くなる(片持ち梁状になる)ため、充填部材1に密着した際に適度な弾性が保たれ、充填部材1との密着性が高められるようになっている。
【0033】
移動螺子筒5は、樹脂による射出成形品とされ、図13及び図14に示すように、後側に行くに従って段階的に外径が大とされ、前端部5x、中央部5y及び後端部5zを備えている。
【0034】
前端部5xには、その後半の外周面に、周方向に沿って四等配の位置に軸線方向に延びる突条5bが、充填部材1と回転方向に係合するものとして設けられている。さらに、この前端部5xには、その先端部の内面に、第二の螺合部9の他方を構成する雌螺子5dが設けられている。中央部5yには、その先端部の外周面に、第一の螺合部8の他方を構成する雄螺子5eが設けられている。ここでは、雄螺子5eの螺子条数を十二条とし、また、第一の螺合部8のリード(螺子を一回転した時に軸方向に進む距離)を第二の螺合部9のリードよりも大きく設定している。
【0035】
移動螺子筒5の後端部5zは、外周面に沿って螺旋状に延び内外を連通するスリット5cを備えている。このスリット5cにより、後端部5zは、軸線方向に伸縮可能とされ、付勢手段としての弾性体(所謂樹脂バネ)であるバネ部とされている。また、このバネ部5zは、スリット5cの後側の外周面に、径方向外側に突出する環状の係止部5aを有している。この係止部5aは、移動螺子筒5の前進時において係止部5aより後側の部分を操作筒3に係止するためのものであり、操作筒3の螺子筒31におけるローレット32の前半部32aの後端に当接する。
【0036】
そして、この移動螺子筒5は、図1に示すように、移動体6に外挿され、その雌螺子5dが移動体6の雄螺子6bに螺合した状態とされると共に、その雄螺子5eが螺子筒31の突起部33に螺合した状態とされている。この状態で移動螺子筒5の後端面が尾栓35の底面に当接した状態とされている。
【0037】
充填部材1は、図1に示すように、内部の充填領域1xに塗布材Mを充填するためのものであると共に、当該塗布材Mを使用者による操作に従って先端部から吐出するためのものである。
【0038】
この充填部材1は、図15及び図16に示すように、円筒形状を成し、先端の開口1aが塗布材Mを出現させるための開口とされている。充填部材1の外周面には、本体筒2の環状凹凸部2bに軸線方向に係合するための環状凸凹部1bが設けられている。また、充填部材1の外周面の環状凸凹部1bより後側の位置で周方向の四等配の位置には、軸線方向に延びる突条1gが、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして設けられている。なお、塗布材Mが、ペースト状等の練り状の棒状物を用いる場合、充填部材1は、先端が先細りして閉じられる形状とされ、塗布材Mを出現させるためのものとして、先端に小径の開口が多数設けられる。
【0039】
さらに、充填部材1には、図16に示すように、その後端部の内周面に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット1cが、移動螺子筒5の突条5bに回転方向に係合するものとして設けられている。
【0040】
そして、充填部材1は、図1に示すように、その後部側から、本体筒2と移動螺子筒5との間に挿入され、その環状凸凹部1bに本体筒2の環状凹凸部2bが軸線方向に係合すると共に、その突条1gに本体筒2のローレット2aが回転方向に係合することで、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着され、当該本体筒2と一体化され、そのローレット1cに移動螺子筒5の突条5bが回転方向に係合することで、移動螺子筒5に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。また、充填部材1の後端部内には、ピストン7(環状凸部7c)が当該充填部材1と密着するようにして挿入されている。そして、充填部材1には、保護部材としてのキャップ10が着脱可能に装着されている。なお、
【0041】
次に、このような構成を有する塗布材押出容器100の操作筒3における螺子筒31の製造方法の一例について図17を参照しながら説明する。
【0042】
まず、一対のコアピン50(50a,50b)を互いに対向するように突き合せ、これらのコアピン50a,50bが所定に囲繞されるように割型(成形外型、不図示)を配置し、溶融樹脂を割型の内周面とコアピン50の外周面との間に射出する。これにより、溶融樹脂が、割型の内周面とコアピン50との間、及びコアピン50a,50b間の隙間に流れ込み、その後、溶融樹脂が固化することで、螺子筒31が成形される。
【0043】
コアピン50a,50bは、互いに対応する形状を各先端面に有している。一方のコアピン50aは、その先端面中央に、軸線方向視に円形状に窪む凹部52aを備えており、この凹部52aは、突き合せ時において、他方のコアピン50bの先端面中央に設けられた凸部52bに支持され当接する。また、一方のコアピン50aの先端面における凹部52a周囲の外縁には、周方向に沿って凸部53aが並設されている。この凸部53aは、螺子筒31の突起部33の個数分設けられており(周方向に沿って六等配されており)、周方向の一方側に傾斜する山型に構成されている。そして、各凸部53aの斜面の外縁部には、周方向に沿って延在する円弧状凹部54aが形成されている。他方のコアピン50bには、凸部53aと同様に、凸部53bが周方向に沿って複数設けられ、この凸部53bには円弧状凹部54bが設けられている。これらの凸部53a,53bは、コアピン50a,50bの突き合せ時において互いに対面し、凹部54a,54b同士の間の隙間が突起部33に対応する構成とされている。
【0044】
なお、一方のコアピン50aには、ローレット32の前半部32aに対応する凹凸状の前半部55xと、ローレット32の後半部32bに対応する凹凸状の後半部55yと、からなる凹凸部55が設けられている。
【0045】
そして、このようなコアピン50を用い、溶融樹脂を射出し突起部33を有する螺子筒31を成形したら、本実施形態では、コアピン50a,50bを互いに挿入方向とは逆方向(図示前側、後側)に引き抜く。すると、前述したように、軸線方向視において突起部33が互いに重ならない、すなわちコアピン50の引き抜き経路には他の突起部33が無いため、コアピン50が無理抜きとはならないのは勿論、コアピン50を回し抜き等する必要がない。従って、螺子筒31を成形するに際してコアピン50a,50bを前側、後側に引き抜くことができ、よって、塗布材押出容器100を容易且つ迅速に成形することができ、製造の容易化が実現されている。
【0046】
さらに、前述のように、突起部33が、一対のコアピン50a,50bを突き合せて成る隙間により形成されることから、突起を螺旋状に延びる構成とした場合のように回し抜き側の突起端部が鋭角のエッジを有するということがなく、強度低下及び耐久性低下を抑制することができる。
【0047】
以上のような構成を有し図1に示す初期状態の塗布材押出容器100にあっては、溶融樹脂が充填領域1xに充填され固化した塗布材Mは充填部材1の内周面及びピストン7と密着した状態にある。ここで、塗布材Mとピストン7との間には、塗布材Mとピストン7との密着性及び追従性を高めるものとして、塗布材Mとは異なる組成で粘着性や流動性を有する充填材(不図示)を少量介在させることもできる。そして、使用者によりキャップ10が取り外されて本体筒2と操作筒3とが繰り出し方向(一方向)に相対回転されると、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、且つ、移動螺子筒5と操作筒3の螺子筒31とが相対回転する。従って、移動螺子筒5の雄螺子5e及び螺子筒31の突起部33より構成された第一の螺合部8の螺合作用が作動し、移動螺子筒5の突条5bと充填部材1のローレット1cとにより構成された回り止め部との協働により、移動螺子筒5が前進し、これと同時に、移動螺子筒5の雌螺子5d及び移動体6の雄螺子6bより構成された第二の螺合部9の螺合作用が作動し、尾栓35における軸体35yの突条35gと移動体6の突条6fとにより構成された回り止め部との協働により、移動体6も前進する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進する。
【0048】
そして、本体筒2と操作筒3の繰り出し方向への相対回転が続けられると、図2に示すように、移動螺子筒5の係止部5aが螺子筒31のローレット32の前半部32aに当接して係止され、移動螺子筒5のバネ部5zが伸張されると共に、移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の先端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除され、移動螺子筒5が前進限に達する。
【0049】
そして、この前進時の螺合解除の状態にあっては、移動螺子筒5のバネ部5zにおける伸張の弾性力により移動螺子筒5の雄螺子5eが後方側へ付勢される。従って、本体筒2と操作筒3との繰り出し方向への相対回転がさらに続けられると、移動螺子筒5の雄螺子5eが、螺子筒31の突起部33における回転方向隣の先端に進入し第一の螺合部8が螺合復帰する。そして、本体筒2と操作筒3との繰り出し方向への相対回転がさらに続けられると、バネ部5zが伸張されながら移動螺子筒5が前進して当該移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の先端から外れて螺合が解除され、そして、さらなる同方向への相対回転により螺合復帰し、このような第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される。
【0050】
また、このように第一の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が所定量前進して前進限に達し、本体筒2と操作筒3の繰り出し方向への相対回転が続けられて、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される状態(第一の螺合部8の螺合作用が実質的には作動していない状態)にあっては、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみが前進する。
【0051】
ここで、移動螺子筒5が前進限に達し移動体6のみが前進している状態では、前述したように、本体筒2と操作筒3との繰り出し方向への相対回転により第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されているため、これによりクリック感が生じ、繰り出し方向への相対回転の度合いや移動体6の移動具合が使用者に好適に感知され、そして、この本体筒2と操作筒3との繰り出し方向へのクリック感を伴う相対回転により移動体6のみが前進し、先端のピストン7により塗布材Mが押し出されて開口1aを通して出現する。従って、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部8が利用され、塗布材Mが開口1aから出現することをクリック感にて使用者に感知させることができ、塗布材Mが充填部材1の開口1aから過剰に押し出されるのを簡易な構造で防止することができる。
【0052】
このとき、上述したように、第二の螺合部9は、そのリードが第一の螺合部8のリードより小さく設定されているため、移動体6はゆっくりと繰り出され、よって、塗布材Mが過剰に押し出されるのを一層防止することができる。
【0053】
一方、使用後にあって、本体筒2と操作筒3とが繰り戻し方向(他方向)へ相対回転されると、後方に付勢されている移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の先端に進入し第一の螺合部8が螺合復帰し、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転がさらに続けられると、第一の螺合部8及び第二の螺合部9の螺合作用が作動し、移動螺子筒5が後退すると同時に、移動螺子筒5に対して移動体6も後退する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退する。
【0054】
このように移動螺子筒5及び移動体6が後退すると、前述したように、ピストン7が充填部材1の内周面に密着し、塗布材Mが充填部材1の内周面に密着し、ピストン7と塗布材Mとが密着しているため、ピストン7の後退に従ってピストン7と塗布材Mとの間に減圧による吸引作用(密着を維持しようとする作用)が働き、塗布材Mが充填部材1内で引き戻されて後退し、塗布材Mが充填部材1の開口1aから出現している場合には、当該塗布材Mは開口1aから素早く没入する。さらに、上記のように、塗布材Mとピストン7との間に、粘着性や流動性を有する充填材を介在させていることから、塗布材Mとピストン7との密着性及び追従性が高められており、ピストン7の後退に従って、塗布材Mが確実に引き戻されて後退する。また、この充填材が、塗布材Mと充填部材1との間に進入することで、塗布材Mと充填部材1との摺動性が高められ、ピストン7の後退に従って、塗布材Mを低温下においても一層確実に後退することができる。
【0055】
そして、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転が続けられると、移動螺子筒5が後退限に達して、移動螺子筒5のバネ部5zの後端面が操作筒3の尾栓35の底面に当接し、さらなる相対回転により、移動螺子筒5のバネ部5zが圧縮されながら、移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の後端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除される。
【0056】
そして、この後退時の螺合解除の状態にあっては、移動螺子筒5のバネ部5zにおける圧縮の弾性力により移動螺子筒5の雄螺子5eが前方側へ付勢される。従って、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転がさらに続けられると、移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33における回転方向隣の後端に進入し第一の螺合部8が螺合復帰する。そして、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転がさらに続けられると、バネ部5zが圧縮されながら移動螺子筒5が後退して当該移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の後端から外れて螺合が解除され、そして、さらなる同方向への相対回転により螺合復帰し、このような第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される。
【0057】
また、このように第一の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が所定量後退して後退限に達し、本体筒2と操作筒3の繰り戻し方向への相対回転が続けられて、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される状態(第一の螺合部8の螺合作用が実質的には作動していない状態)にあっては、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみが後退する。
【0058】
ここで、移動螺子筒5が後退限に達し移動体6のみが後退している状態では、前述したように、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転により第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されているため、これによりクリック感が生じ、繰り戻し方向への相対回転の度合いや移動体6の移動具合が使用者に好適に感知され、そして、この本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向へのクリック感を伴う相対回転により移動体6のみが後退し、塗布材Mが引き戻される。従って、移動体6のみが後退している状態においても、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部8が利用され、塗布材Mが引き戻されることをクリック感にて使用者に感知させることができ、塗布材Mを過剰に引き戻すことを簡易な構造で防止することができる。その結果、次回に塗布材Mを押し出す際、本体筒2と操作筒3とを繰り出し方向に相対回転し始めてから塗布材Mが充填部材1の開口1aより出現するまでにかかる時間が短縮され、塗布材Mを充填部材1の開口1aより即座に出現させることができる。
【0059】
このとき、上述したように、第二の螺合部9は、そのリードが第一の螺合部8より小さく設定されているため、移動体6はゆっくりと繰り戻され、よって、塗布材Mが過剰に引き戻されるのを一層防止することができる。
【0060】
そして、以降は上記と同様な動作となり、このような動作が繰り返されることとなる。また、図3に示すように、本体筒2と操作筒3の繰り出し方向への相対回転により、ピストン7が最大に前進すると、塗布材Mが殆ど使い切られる。
【0061】
以上、本実施形態の塗布材押出容器100によれば、第一の螺合部8の螺合が解除されて一方向/他方向にさらに相対回転される際に、第一の螺合部8の螺合解除と移動螺子筒5のバネ部5zによる螺合復帰とが繰り返されてクリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体6の移動具合が使用者に感知されるようになる。すなわち、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部8が利用され、塗布材Mを過剰に押し出し/引き戻すことが簡易な構造で防止される。
【0062】
また、本実施形態では、移動体6が前進、後退して第一の螺合部8が螺合解除された際の螺合復帰の双方に、バネ部5zの伸長及び圧縮の両弾性力が利用され、バネ部5zが兼用とされているため、バネ部5zにあっては、移動体6の前進、後退に応じて、移動螺子筒5の雄螺子5eのみに両弾性力を螺合復帰するように付与でき、雄螺子5eとバネ部5zとを一体部品にすることができる。よって、塗布材押出容器100の部品点数を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態は、上述したように、バネ部5zの伸長の弾性力が付与されるように当該バネ部5zを容器内に係止する係止部5aを有している。そのため、この係止部5aによりバネ部5zを螺子筒31のローレット32の前半部32aに係止してバネ部5zを好適に伸長でき、バネ部5zの伸長の弾性力を第一の螺合部8が螺合復帰するように好適に付与できる。
【0064】
なお、本実施形態の塗布材押出容器100では、上述したように、突起部33を操作筒3の螺子筒31の内周面に周方向に沿って六等配したが、突起部33は、螺子筒31の内周面に周方向に沿って複数設けられていれば良い。また、次の理由から、突起部33は、螺子筒31の内周面に周方向に沿って四つ以上設けられていることが好ましい。
【0065】
すなわち、1回転当りのクリック回数が多い程、塗布材Mを微量ずつ出現させ易く、従って、突起部33を三つ以下とすると、1回転当りのクリック回数が少なく、塗布材Mが過剰に押し出されることを防止するという上記効果が不十分となるおそれがあるからである。
【0066】
また、突起部33を多数設ければ設ける程、コアピン50a,50bの形状が複雑になってしまうため、塗布材押出容器100の製造面の観点からは、突起部33の数は少ないほうが好ましい。従って、塗布材Mを過剰に押し出し/引き戻すのを確実に防止する上記観点と、塗布材押出容器100の製造面の上記観点との両観点に鑑みると、突起部33を操作筒3の螺子筒31の内周面に周方向に沿って六〜八つ設けることが好ましく、本実施形態のように、突起部33を六つ設けることが一層好ましい。このように、突起部33を操作筒3の螺子筒31の内周面に周方向に沿って六つ設けると共に、上記のように移動螺子筒5の雄螺子5eを十二条螺子とすると、相対回転1回転当りに12回のクリック感が生じることになる。ちなみに、突起部33を周方向に沿って八つ設けると共に、雄螺子5eを八条螺子とする場合もあり、この場合には、相対回転1回転当りに8回のクリック感が生じる。
【0067】
次に、図18〜図32を参照しながら第二実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、上記第一実施形態と異なる点を主に説明する。
【0068】
図18〜図21は、本発明の第二実施形態に係る塗布材押出容器の各状態を示す各縦断面図、図22は、本体筒を示す縦断斜視図、図23及び図24は、中間部材を示す各図、図25及び図26は、回転部材を示す各図、図27〜図29は、螺子筒を示す各図、図30〜図32は、移動螺子筒を示す各図である。
【0069】
図18に示すように、塗布材押出容器200は、充填部材1と、その前部に充填部材1の後部を内挿して当該充填部材1を相対回転可能且つ軸線方向離脱不能に連結する本体筒102と、を外形構成として具備し、充填部材1により容器前部が構成されると共に、本体筒102により容器後部が構成されている。
【0070】
そして、この塗布材押出容器200は、内部に、第1実施形態と同様な移動体6、螺子筒31に対応して螺子筒104、移動螺子筒5に対応して移動螺子筒105、ピストン7に対応してピストン107を備えると共に、新たに、回転部材110、中間部材111を備えている。
【0071】
本体筒102は、図22に示すように、有底円筒状に構成された本体部102xと、この本体部102xの底部中央に、先端側に向かうように立設された軸体102yと、を備える構成とされている。本体部102xは、その先端部の内周面に、中間部材111を軸線方向に係合するための環状凸凹部102aを備えると共に、この環状凸凹部102aより後側の内周面に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット102bを、中間部材111を回転方向に係合するためのものとして備えている。また、本体部102xは、その底部側の内周面に、周方向に沿って多数が並設されて底部から先端側に向かって延びる突条102cを、螺子筒104を回転方向に係合するためのものとして備えている。軸体102yは、円柱体の外周面に周方向に沿う六等配の位置に半径方向外方に突出するように配置されて軸線方向に延びる突条102dを備える横断面非円形形状とされている。
【0072】
そして、本体筒102は、図18に示すように、その軸体102yに第1実施形態と同様な構成の移動体6が内挿され、その突条102d、102d間に移動体6の突条6fが侵入し回転方向に係合することで、移動体6を同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着する。
【0073】
中間部材111は、図23及び図24に示すように、略円筒状とされ、軸線方向中程の外面が径方向に拡大した鍔部111aを具備し、この鍔部111aより後側の外周面に、環状凹凸部111bを、本体筒102の環状凸凹部102aに軸線方向に係合するものとして備えている。また、中間部材111の環状凹凸部111bより後ろ側の外周面には、周方向に沿って複数並設されて軸線方向に延びる突条111dが、本体筒102のローレット102bに回転方向に係合するものとして設けられている。
【0074】
この中間部材111は、図18に示すように、その鍔部111aより後側の部分が本体筒102に内挿され、鍔部111aの後端面が本体筒102の先端面に突き当てられ、その突条111dが本体筒102のローレット102bに回転方向に係合すると共にその環状凹凸部111bが本体筒102の環状凸凹部102aに軸線方向に係合することで、本体筒102に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着され、本体筒102と一体化されている。
【0075】
ピストン107は、先端部を傘状に湾曲し突出させた釣り鐘形状を呈し、移動体6の先端側に装着される。
【0076】
回転部材110は、図25及び図26に示すように、段付き円筒状とされ、後方側に行くに従って段階的に外径が大とされ、後部に、螺子筒104を軸線方向に押えるための鍔部110aを具備し、この鍔部110aの前側の外周面に、充填部材1の後端面を突き当てるための鍔部110cを有すると共に、この鍔部110cより前側の外周面に、環状凸凹部110dを、充填部材1を軸線方向に係合するものとして有している。さらに、環状凸凹部110dより前側の外周面には、周方向に沿って複数が並設されて軸線方向に延びる突条110eが、充填部材1を回転方向に係合するものとして設けられている。また、図26に示すように、軸線方向中程の内周面には、周方向に沿って複数の位置に軸線方向に延びる突条110fが、移動螺子筒105に回転方向に係合するものとして設けられている。
【0077】
この回転部材110は、図18に示すように、本体筒102に内挿され、鍔部110aが中間部材111の後端面に相対回転可能に当接することで、軸線方向前側への離脱が阻止されている。
【0078】
螺子筒104は、図27及び図28に示すように、段付き円筒状に構成され、後側の小径部104yと、段差面104cを介してこれより前側の大径部104xとを備えている。小径部104yの外周面の前端部には、周方向に沿って複数並設されて軸線方向に延びる突条104aが、本体筒102の突条102cに回転方向に係合するものとして設けられている。図28に示すように、この小径部104yは、その内周面の前端部に、当該内周面に沿い円弧状を成して円周方向に延びる突起部104dを複数有している。突起部104dは、図29に示すように、軸線方向視において互いに重ならないように、周方向に沿う八等配の位置に間欠的に設けられており、図28に示すように、隣接する各端部同士が軸線方向にズレて離間していると共に、軸線方向に沿って登り傾斜と下り傾斜を半々に有する山型に構成されている。この突起部104dは、第一の螺合部8の一方の雌螺子を構成するものであり、移動螺子筒105の螺合突起105e(後述)と螺合するものである。
【0079】
この螺子筒104は、図18に示すように、本体筒102に内挿され、その先端面が、回転部材110の鍔部110aに当接することで、その段差面104cが本体筒102の突条102cの先端面に当接すると共に、その突条104aが本体筒102の突条102cに回転方向に係合し、本体筒102に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着され、本体筒102と一体化されている。
【0080】
このような螺子筒104の製造方法は、第一実施形態の塗布材押出容器100の螺子筒31における上記製造方法と同様である。
【0081】
移動螺子筒105は、樹脂による射出成形品とされ、図30〜図32に示すように、段付き円筒状に構成され、後側の外径大径部105yと、段差面105pを介してこれより前側の外径小径部105xとを備えている。
【0082】
移動螺子筒105の外径小径部105xには、軸線方向中央の外周面に、周方向に沿って四等配の位置に軸線方向に延びる突条105bが、回転部材110の突条110fを回転方向に係合するものとして設けられている。また、図30に示すように、外径小径部105xには、その先端から突条105bの近傍まで延び内外を連通するスリット105nが、軸線を挟んだ両側に一対設けられている。さらに、外径小径部105xには、その先端部の内面に、第二の螺合部9の他方を構成する雌螺子105dが、スリット105n,105nを横切り半円弧状を成すようにして設けられている。
【0083】
移動螺子筒105の外径大径部105yには、その先端側の外周面に、第一の螺合部8の他方(雄螺子)を構成する螺合突起(螺旋状の突起)105eが対向して複数設けられている。また、外径大径部105yにあっては、螺合突起105eより後側に、軸線方向に伸縮可能とされた所謂樹脂バネ(付勢手段)であるバネ部105aが一体的に連設されている。さらに、外径大径部105yは、そのバネ部105aの後側の外周面に、円環状の鍔部105cを有している。この鍔部105cは、図19に示すように、移動螺子筒105の前進時に螺子筒104の後端面に当接し、当該移動螺子筒105の前進限の係止部として機能するものである。
【0084】
そして、この移動螺子筒105は、図18に示すように、移動体6に外挿されると共に螺子筒104に内挿され、その雌螺子105dが移動体6の雄螺子6bに螺合した状態とされ第二の螺合部9が構成されている。この状態で、移動螺子筒105の螺合突起105eが螺子筒104の104dに螺合した状態とされ第一の螺合部8が構成されている。また、この状態で、移動螺子筒105は、そのバネ部105aの後端面が本体筒102の底面に当接している。さらに、また、移動螺子筒105の突条105bに回転部材110の突条110fが回転方向に係合し、当該移動螺子筒105が回転部材110に対して同期回転可能且つ軸線方向移動可能とされている。
【0085】
このように構成された図18に示す初期状態の塗布材押出容器200にあっては、充填部材1と本体筒102とが繰り出し方向に相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が作動し、突条110f,105bから成る回り止め部との協働により移動螺子筒105が前進し、同時に、第二の螺合部9の螺合作用が作動し、突条102d,6fから成る回り止め部との協働により移動体6も前進する。
【0086】
続いて、移動螺子筒105が所定量前進し、図19に示すように、鍔部105cが螺子筒104の後端面に当接し、さらに繰り出し方向へ相対回転されると、移動螺子筒105のバネ部105aが伸張されながら、当該移動螺子筒105の螺合突起105eが螺子筒104の突起部104dの先端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除され、さらなる繰り出し方向への相対回転に従って、移動螺子筒105のバネ部105aにおける伸張の弾性力により第一の螺合部8が螺合復帰し、この螺合解除と螺合復帰が繰り返される。そして、さらに同方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されながら、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみがクリック感を伴い前進し、先端のピストン107により塗布材Mが適度に押し出されて開口1aを通して出現し使用状態とされる。
【0087】
一方、使用後にあって、充填部材1と本体筒102とが繰り戻し方向へ相対回転されると、移動螺子筒105のバネ部105aにおける伸張の弾性力により第一の螺合部8が螺合復帰し、さらなる同方向への相対回転により、第一の螺合部8及び第二の螺合部9の螺合作用が作動し、移動螺子筒105が後退すると同時に、移動螺子筒105に対して移動体6も後退し、ピストン107の後退に従う減圧による吸引作用で塗布材Mが充填部材1内で引き戻されて後退する。
【0088】
続いて、さらなる同方向への相対回転により、移動螺子筒105が後退すると、図20に示すように、初期状態と同様に、移動螺子筒105の後端面が本体筒102の底面に当接し、さらに同方向へ相対回転されると、移動螺子筒105のバネ部105aが圧縮されながら、移動螺子筒105が後退し当該移動螺子筒105の螺合突起105eが螺子筒104の突起部104dの先端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除され、さらなる繰り戻し方向への相対回転に従って、移動螺子筒105のバネ部105aにおける圧縮の弾性力により第一の螺合部8が螺合復帰し、この螺合解除と螺合復帰が繰り返される。そして、さらに同方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されながら、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみがクリック感を伴い後退する。なお、充填部材1と本体筒102との繰り出し方向への相対回転により、ピストン107が最大に前進すると、図21に示すように、塗布材Mが殆ど使い切られる。
【0089】
このような本実施形態の塗布材押出容器200によれば、第一実施形態とほぼ同様な効果を得ることができるというのはいうまでもない。
【0090】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限
定されるものではない。
【0091】
例えば、上記第二実施形態では、本体筒102に軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する螺子筒104を本体筒102内に配設し、この螺子筒104の内面に突起部104dを周方向に沿って複数設けたが、螺子筒を有さずに、本体筒102の内面に突起部を周方向に沿って複数設けても良い。
【0092】
また、上記実施形態では、付勢手段として、移動螺子筒5,105に、軸線方向に伸縮可能とされた所謂樹脂バネであるバネ部5z,105aを一体的に設けているが、金属コイルバネ等を一体的に設けても良く、また、可撓性を有する軟質材から成るもの(例えばウレタン樹脂やシリコン樹脂等の合成樹脂、ゴム等)を一体的に設けても良い。
【0093】
なお、雄螺子、雌螺子は、間欠的に配される突起群又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山と同様な働きをするものであっても良い。
【0094】
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
【0095】
また、上記実施形態では、容器前部と容器後部とが一方向/他方向に相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が作動すると同時に第二の螺合部9の螺合作用が作動するように構成したが、第一の螺合部8の螺合作用のみが作動するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す状態からキャップが取り外され使用者の操作により移動螺子筒及び移動体が前進し、移動螺子筒が最大に前進した時の縦断面図である。
【図3】図2に示す状態から使用者の操作により移動体が最大に前進した時の縦断面図である。
【図4】図1〜図3中の本体筒の縦断面図である。
【図5】図1〜図3中の操作筒を構成する螺子筒の縦断斜視図である。
【図6】図5に示す螺子筒の縦断面図である。
【図7】図5に示す螺子筒の正面図である。
【図8】図1〜図3中の操作筒を構成する尾栓の斜視図である。
【図9】図1〜図3中の尾栓の一部破断側面図である。
【図10】図1〜図3中の移動体を示す側面図である。
【図11】図10に示す移動体の縦断面図である。
【図12】図1〜図3中のピストンを示す縦断面図である。
【図13】図1〜図3中の移動螺子筒を示す斜視図である。
【図14】図13に示す移動螺子筒の縦断面図である。
【図15】図1〜図3中の充填部材を示す側面図である。
【図16】図15のXVI−XVI矢視図である。
【図17】図5に示す螺子筒の製造方法について説明するための図である。
【図18】本発明の第二実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図19】図18に示す状態からキャップが取り外され使用者の操作により移動螺子筒及び移動体が前進し、移動螺子筒が最大に前進した時の縦断面図である。
【図20】図19に示す状態で塗布材が使用者により使用されてから使用者の操作により移動螺子筒及び移動体が後退し移動螺子筒が後退限に後退した時の縦断面図である。
【図21】図20に示す状態から使用者の操作により移動体が最大に前進した時の縦断面図である。
【図22】図18〜図21中の本体筒を示す縦断斜視図である。
【図23】図18〜図21中の中間部材を示す斜視図である。
【図24】図23に示す中間部材の縦断斜視図である。
【図25】図18〜図21中の回転部材を示す斜視図である。
【図26】図25に示す回転部材の縦断斜視図である。
【図27】図18〜図21中の螺子筒を示す斜視図である。
【図28】図27に示す螺子筒の縦断面図である。
【図29】図27に示す螺子筒の背面図である。
【図30】図18〜図21中の移動螺子筒を示す斜視図である。
【図31】図30に示す移動螺子筒の側面図である。
【図32】図31のXXXII−XXXII矢視図である。
【符号の説明】
【0097】
1…充填部材(容器前部)、1a…開口、2…本体筒(容器前部)、3…操作筒(容器後部)、5z,105a…バネ部(付勢手段)、6…移動体、8…第一の螺合部、9…第二の螺合部、33,104d…突起部、35y,102y…軸体、100,200…塗布材押出容器、102…本体筒(容器後部)、104…螺子筒、M…塗布材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この塗布材押出容器では、先筒(容器前部)と当該先筒に相対回転可能とされた本体(容器後部)とが一方向に相対回転されると、第一の螺合部の螺合作用が働き棒状体(塗布材)を充填したパイプ部材(移動体)が前進し、パイプ部材が前進限に達すると第一の螺合部の螺合作用が停止し、そして、一方向にさらに相対回転されると、第二の螺合部の螺合作用が働き棒状体用移動体が前進して棒状体が前進し、棒状体が容器から押し出される。また、先筒と本体とが一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、第一の螺合部の螺合作用が働きパイプ部材が後退し、パイプ部材が後退限に達すると第一の螺合部の螺合作用が停止し、そして、他方向にさらに相対回転されると、第二の螺合部の螺合作用が働き棒状体用移動体が後退し、棒状体が引き戻される。
【特許文献1】特開2006−305318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したような塗布材押出容器おいては、少量の塗布材を押し出して使用することが一般的である。しかしながら、上述の塗布材押出容器では、場合によっては、容器前部と容器後部とを一方向に相対回転し過ぎてしまい、第二の螺合部の螺合作用が働き過ぎて塗布材を過剰に押し出してしまうことがある。また、容器前部と容器後部とを他方向に相対回転し過ぎてしまい、第二の螺合部の螺合作用が働き過ぎて塗布材を過剰に引き戻してしまい、次回に塗布材を押し出すのに時間がかかることがある。ここで、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すのを防止するため、相対回転に同期してクリック感を付与するクリック歯を、容器前部及び容器後部のそれぞれに回転方向に係合するように複数設ける場合があるが、この場合には、塗布材押出容器の構造が複雑になる。
【0004】
また、上述したような塗布材押出容器は、通常、コアピン(中子)を用いた射出成形等の成形法が利用されて製造される。しかし、上述の塗布材押出容器では、第一の螺合部の雌螺子を構成する突起部が先筒の内面に螺旋状に設けられていることから、例えばモータを用いてコアピンを回しながら抜くこと(いわゆる、回し抜き)等が必要になり、製造に時間を要す。
【0005】
そこで、本発明は、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことを簡易な構造で防止する共に、製造の容易化を実現する塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る塗布材押出容器は、容器内に塗布材、この塗布材を前進により押し出すための移動体、第一の螺合部及び第二の螺合部を具備し、容器前部と当該容器前部に相対回転可能とされた容器後部とが一方向/当該一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、第一の螺合部の螺合作用が働き移動体が前進/後退し、第一の螺合部の螺合作用が所定量働くと当該第一の螺合部の螺合が解除され、一方向/他方向にさらに相対回転されると、第二の螺合部の螺合作用のみが働き移動体がさらに前進/後退する塗布材押出容器であって、第一の螺合部の螺合が解除されたときに、第一の螺合部が螺合復帰するように付勢する付勢手段と、容器後部の内面に周方向に沿って複数設けられ、第一の螺合部の雌螺子を構成し、軸線方向視において互いに重ならない突起部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この塗布材押出容器では、第一の螺合部の螺合が解除されて一方向/他方向にさらに相対回転される際に、第一の螺合部の螺合解除と付勢手段による螺合復帰が繰り返されてクリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体の移動具合が使用者に感知されるようになる。すなわち、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部が利用され、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことが簡易な構造で防止される。ここで、この第一の螺合部は、その雌螺子を構成する突起部が、軸線方向視において互いに重ならないように容器後部の内面に周方向に沿って複数設けられている。よって、突起部を射出成形する際、突起部の軸線方向一方側の形状に対応する凸部をその先端面に有する一方のコアピンと、突起部の軸線方向他方側の形状に対応する凸部をその先端面に有する他方のコアピンとを用い、これらのコアピンを、先端面が対向するように互いに突き合せると共に突き合せ面に隙間を設けて構成することで、この隙間に突起部を成形することが可能とされ、コアピンを回し抜き等するのではなく軸線方向一方側又は他方側に真っ直ぐ引き抜くことができ、容易且つ迅速な成形が可能となる。従って、本発明によれば、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことを簡易な構成で防止できると共に、製造の容易化を実現することができる。
【0008】
ここで、上記作用を好適に奏する塗布材押出容器の構成としては、具体的には、容器前部は、塗布材が充填される充填部材と、当該充填部材を軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する本体筒と、含んで構成され、容器後部は、本体筒に相対回転可能に係合する操作筒を含んで構成され、突起部は、操作筒の内面に周方向に沿って複数設けられている構成が挙げられる。
【0009】
また、上記作用を好適に奏する塗布材押出容器の構成としては、具体的には、容器前部は、塗布材が充填される充填部材を含んで構成され、容器後部は、本体筒を有し、突起部は、本体筒の内面、又は本体筒内に配設され当該本体筒に軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する螺子筒の内面に、周方向に沿って複数設けられている構成が挙げられる。
【0010】
また、上記作用を好適に奏する塗布材押出容器の構成としては、具体的には、移動体を軸線回り回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、容器後部に対し同期回転可能とされた軸体を備える構成が挙げられる。このとき、軸体は、容器後部の後方開口側に対し軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する部材に立設されている場合がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗布材を過剰に押し出し/引き戻すことを簡易な構成で防止できると共に、製造の容易化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1〜図17は、本発明の第一実施形態を、図18〜図32は、本発明の第二実施形態を各々示すものであり、先ず、図1〜図17を参照しながら第一実施形態について説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明の第一実施形態に係る塗布材押出容器の各状態を示す各縦断面図、図4は、本体筒を示す縦断面図、図5〜図7は、螺子筒を示す各図、図8及び図9は、尾栓を示す各図、図10及び図11は、移動体を示す各図、図12は、ピストンを示す縦断面図、図13及び図14は、移動螺子筒を示す各図、図15及び図16は、充填部材を示す各図、図17は、塗布材押出容器の螺子筒の製造方法について説明するための図であり、本実施形態の塗布材押出容器は、塗布材を収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
【0015】
この第一実施形態では、塗布材Mとして棒状物が用いられている。この棒状物としては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、ペースト状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
【0016】
図1に示すように、塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域1xを内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を同期回転可能に連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能且つ軸線方向離脱不能に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、充填部材1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。なお、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0017】
そして、この塗布材押出容器100は、内部に、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に操作筒3に第一の螺合部8を介して螺合し、本体筒2(充填部材1でも可)と操作筒3とが一方向に相対回転されると所定の前進限まで前進し、本体筒2と操作筒3とが一方向の反対方向である他方向に相対回転されると所定の後退限まで後退する移動螺子筒5と、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に移動螺子筒5に第二の螺合部9を介して螺合し、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進し、移動螺子筒5が前進限に達し本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると単独で前進し、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退し、移動螺子筒5が後退限に達し本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると単独で後退する移動体6と、この移動体6の先端部に装着されて充填領域1xの後端を形成するピストン7と、を概略備えている。
【0018】
図4に示すように、本体筒2は、円筒状に構成され、その軸線方向中央部の内周面に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット2aを有している。このローレット2aは、充填部材1を回転方向に係合するためのものである。また、本体筒2の先端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)2bが設けられている。さらに、本体筒2の後部側の内周面でローレット2aの後ろには、当該ローレット2aの後面に当接するようにして環状凸部2cが形成されている。この環状凸部2cは、操作筒3を軸線方向に係合するためのものであり、ローレット2aの凸部より突出高さが多少高くされている(軸心側に多少多く突出している)。
【0019】
図1に戻り、操作筒3は、円筒状の螺子筒31と、この螺子筒31の筒孔を後端側から塞ぐように当該螺子筒31に装着される尾栓35と、を含んで構成されている。
【0020】
図5及び図6に示すように、螺子筒31は、段付き円筒状に構成され、後側の外径大径部31xと、段差部31pを介してこれより前側の外径小径部31yとを備えている。これらの外径大径部31x及び外径小径部31yの内径は、外径と同様に、外径大径部31xに対して外径小径部31yが小とされている。
【0021】
外径大径部31xは、その内周面の前端である段差面から軸線方向中央部に亘る位置に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット32を有している。このローレット32の凸部は、前半部32aの凸部が後半部32bの凸部に比して突出高さが高くされている(前半部32aの凸部が軸心側に多く突出している)。ローレット32の前半部32aは、移動螺子筒5の前進時に当該移動螺子筒5の後端部のそれ以上の前進を阻止するためのものであり、ローレット32の後半部32bは、尾栓35を軸線回り回転方向に係合するためのものである。また、外径大径部31xの内周面の後端部には、尾栓35を軸線方向に係合するための環状凹部34aが設けられている。
【0022】
外径小径部31yは、その外周面の前端部に、本体筒2に対し軸線方向に係合するための環状凸凹部34bを有していると共に、軸線方向中央部の内周面に、当該内周面に沿い円弧状を成して円周方向に延びる突起部33を複数有している。突起部33は、図7に示すように、軸線方向視において互いに重ならないように、周方向に沿う六等配の位置に間欠的に設けられており、図5及び図6に示すように、隣接する各端部同士が軸線方向にズレて離間していると共に、軸線方向に沿って登り傾斜と下り傾斜を半々に有する山型に構成されている。この突起部33は、第一の螺合部8の一方の雌螺子を構成するものであり、移動螺子筒5の雄螺子5eと螺合するものである。
【0023】
なお、ここでは、突起部33が軸線方向視において互いに重ならない状態で雌螺子としての機能を充分に果たすべく、突起部33の螺子条数が移動螺子筒5の雄螺子5eにおける螺子条数の1/2とされている
【0024】
図8及び図9に示すように、尾栓35は、射出成形により一体に形成されたものであり、有底円筒状に構成され操作筒3の後方開口側に配される本体部35x(図1参照)と、本体部35xの底部中央に、先端側に向かうように立設された軸体35yと、を備えている。
【0025】
本体部35xは、その外周面の後端に円環状の鍔部36を有している。また、本体部35xの外周面の前端部は、その外径が若干小さくなっており、この前端部には、軸線方向に延びる突条37が、螺子筒31のローレット32の後半部32bに回転方向に係合するものとして周方向に沿って複数設けられている。また、本体部35xの外周面の軸線方向中央には、螺子筒31の環状凹部34aに軸線方向に係合するための環状凸部38が設けられている。
【0026】
軸体35yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体35yは、円柱体の外周面に、周方向に沿って六等配の位置に半径方向外方に突出するように配置されて軸線方向に延びる突条35gを備える横断面非円形形状とされている。
【0027】
この尾栓35は、図1に示すように、その本体部35xの鍔部36が螺子筒31の後端面に当接し鍔部36を除く部分が螺子筒31に内挿され、その本体部35xの突条37が螺子筒31のローレット32の後半部32bに軸線周り回転方向に係合すると共に、その本体部35xの環状凸部38が螺子筒31の環状凹部34aに軸線方向に係合することで、螺子筒31に対して同期回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。
【0028】
そして、これらの螺子筒31及び尾栓35からなる操作筒3は、螺子筒31の外径小径部31yが本体筒2に内挿され、螺子筒31の段差部31pが本体筒2の後端面に突き当てられると共に、螺子筒31の外径小径部31yの環状凸凹部34bが本体筒2の環状凸部2cに軸線方向に係合することで、本体筒2に回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着されている。
【0029】
図10及び図11に示すように、移動体6は、先端側に鍔部6aを有する円筒状に構成され、その鍔部6aより後側から後端部に亘る外周面に、第二の螺合部9の一方を構成する雄螺子6bを備えている。また、また、図11に示すように、移動体6には、その内周面の周方向に沿う六等配の位置に、移動体6を操作筒3に軸線回り回転方向に係合するためのものとして、放射状に内側に所定長突出し軸線方向に延びる突条6fが設けられている。
【0030】
そして、この移動体6は、図1に示すように、その後端部から、操作筒3の尾栓35の軸体35yに外挿され、その突条6fが軸体35yの突条35g、35g間に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に同期回転可能つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0031】
ピストン7は、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等、比較的柔らかい素材より成形され、図12に示すように、円柱体に後端面から先端側に凹設される凹部7qを設けると共に、先端面から所定長後端側に凹む環状凹部7dを周縁側に設けた構成とされている。先端側の外周面には、充填部材1の内周面に密着し気密性を確保するための環状凸部7cが設けられている。そして、このピストン7は、図1に示すように、移動体6の先端側に装着される。
【0032】
このように、ピストン7には、環状凹部7dが設けられているため、溶融塗布材を充填部材1に充填し固化して塗布材Mとしたときに、この塗布材Mは、ピストン7の環状凹部7dとの密着性が高く、ピストン7の後退に伴い確実に後退するようになっている(詳しくは後述)。さらに、このように、ピストン7に環状凹部7dが設けられていることにより、先端側の外周部の肉厚が薄くなる(片持ち梁状になる)ため、充填部材1に密着した際に適度な弾性が保たれ、充填部材1との密着性が高められるようになっている。
【0033】
移動螺子筒5は、樹脂による射出成形品とされ、図13及び図14に示すように、後側に行くに従って段階的に外径が大とされ、前端部5x、中央部5y及び後端部5zを備えている。
【0034】
前端部5xには、その後半の外周面に、周方向に沿って四等配の位置に軸線方向に延びる突条5bが、充填部材1と回転方向に係合するものとして設けられている。さらに、この前端部5xには、その先端部の内面に、第二の螺合部9の他方を構成する雌螺子5dが設けられている。中央部5yには、その先端部の外周面に、第一の螺合部8の他方を構成する雄螺子5eが設けられている。ここでは、雄螺子5eの螺子条数を十二条とし、また、第一の螺合部8のリード(螺子を一回転した時に軸方向に進む距離)を第二の螺合部9のリードよりも大きく設定している。
【0035】
移動螺子筒5の後端部5zは、外周面に沿って螺旋状に延び内外を連通するスリット5cを備えている。このスリット5cにより、後端部5zは、軸線方向に伸縮可能とされ、付勢手段としての弾性体(所謂樹脂バネ)であるバネ部とされている。また、このバネ部5zは、スリット5cの後側の外周面に、径方向外側に突出する環状の係止部5aを有している。この係止部5aは、移動螺子筒5の前進時において係止部5aより後側の部分を操作筒3に係止するためのものであり、操作筒3の螺子筒31におけるローレット32の前半部32aの後端に当接する。
【0036】
そして、この移動螺子筒5は、図1に示すように、移動体6に外挿され、その雌螺子5dが移動体6の雄螺子6bに螺合した状態とされると共に、その雄螺子5eが螺子筒31の突起部33に螺合した状態とされている。この状態で移動螺子筒5の後端面が尾栓35の底面に当接した状態とされている。
【0037】
充填部材1は、図1に示すように、内部の充填領域1xに塗布材Mを充填するためのものであると共に、当該塗布材Mを使用者による操作に従って先端部から吐出するためのものである。
【0038】
この充填部材1は、図15及び図16に示すように、円筒形状を成し、先端の開口1aが塗布材Mを出現させるための開口とされている。充填部材1の外周面には、本体筒2の環状凹凸部2bに軸線方向に係合するための環状凸凹部1bが設けられている。また、充填部材1の外周面の環状凸凹部1bより後側の位置で周方向の四等配の位置には、軸線方向に延びる突条1gが、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして設けられている。なお、塗布材Mが、ペースト状等の練り状の棒状物を用いる場合、充填部材1は、先端が先細りして閉じられる形状とされ、塗布材Mを出現させるためのものとして、先端に小径の開口が多数設けられる。
【0039】
さらに、充填部材1には、図16に示すように、その後端部の内周面に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット1cが、移動螺子筒5の突条5bに回転方向に係合するものとして設けられている。
【0040】
そして、充填部材1は、図1に示すように、その後部側から、本体筒2と移動螺子筒5との間に挿入され、その環状凸凹部1bに本体筒2の環状凹凸部2bが軸線方向に係合すると共に、その突条1gに本体筒2のローレット2aが回転方向に係合することで、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着され、当該本体筒2と一体化され、そのローレット1cに移動螺子筒5の突条5bが回転方向に係合することで、移動螺子筒5に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。また、充填部材1の後端部内には、ピストン7(環状凸部7c)が当該充填部材1と密着するようにして挿入されている。そして、充填部材1には、保護部材としてのキャップ10が着脱可能に装着されている。なお、
【0041】
次に、このような構成を有する塗布材押出容器100の操作筒3における螺子筒31の製造方法の一例について図17を参照しながら説明する。
【0042】
まず、一対のコアピン50(50a,50b)を互いに対向するように突き合せ、これらのコアピン50a,50bが所定に囲繞されるように割型(成形外型、不図示)を配置し、溶融樹脂を割型の内周面とコアピン50の外周面との間に射出する。これにより、溶融樹脂が、割型の内周面とコアピン50との間、及びコアピン50a,50b間の隙間に流れ込み、その後、溶融樹脂が固化することで、螺子筒31が成形される。
【0043】
コアピン50a,50bは、互いに対応する形状を各先端面に有している。一方のコアピン50aは、その先端面中央に、軸線方向視に円形状に窪む凹部52aを備えており、この凹部52aは、突き合せ時において、他方のコアピン50bの先端面中央に設けられた凸部52bに支持され当接する。また、一方のコアピン50aの先端面における凹部52a周囲の外縁には、周方向に沿って凸部53aが並設されている。この凸部53aは、螺子筒31の突起部33の個数分設けられており(周方向に沿って六等配されており)、周方向の一方側に傾斜する山型に構成されている。そして、各凸部53aの斜面の外縁部には、周方向に沿って延在する円弧状凹部54aが形成されている。他方のコアピン50bには、凸部53aと同様に、凸部53bが周方向に沿って複数設けられ、この凸部53bには円弧状凹部54bが設けられている。これらの凸部53a,53bは、コアピン50a,50bの突き合せ時において互いに対面し、凹部54a,54b同士の間の隙間が突起部33に対応する構成とされている。
【0044】
なお、一方のコアピン50aには、ローレット32の前半部32aに対応する凹凸状の前半部55xと、ローレット32の後半部32bに対応する凹凸状の後半部55yと、からなる凹凸部55が設けられている。
【0045】
そして、このようなコアピン50を用い、溶融樹脂を射出し突起部33を有する螺子筒31を成形したら、本実施形態では、コアピン50a,50bを互いに挿入方向とは逆方向(図示前側、後側)に引き抜く。すると、前述したように、軸線方向視において突起部33が互いに重ならない、すなわちコアピン50の引き抜き経路には他の突起部33が無いため、コアピン50が無理抜きとはならないのは勿論、コアピン50を回し抜き等する必要がない。従って、螺子筒31を成形するに際してコアピン50a,50bを前側、後側に引き抜くことができ、よって、塗布材押出容器100を容易且つ迅速に成形することができ、製造の容易化が実現されている。
【0046】
さらに、前述のように、突起部33が、一対のコアピン50a,50bを突き合せて成る隙間により形成されることから、突起を螺旋状に延びる構成とした場合のように回し抜き側の突起端部が鋭角のエッジを有するということがなく、強度低下及び耐久性低下を抑制することができる。
【0047】
以上のような構成を有し図1に示す初期状態の塗布材押出容器100にあっては、溶融樹脂が充填領域1xに充填され固化した塗布材Mは充填部材1の内周面及びピストン7と密着した状態にある。ここで、塗布材Mとピストン7との間には、塗布材Mとピストン7との密着性及び追従性を高めるものとして、塗布材Mとは異なる組成で粘着性や流動性を有する充填材(不図示)を少量介在させることもできる。そして、使用者によりキャップ10が取り外されて本体筒2と操作筒3とが繰り出し方向(一方向)に相対回転されると、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、且つ、移動螺子筒5と操作筒3の螺子筒31とが相対回転する。従って、移動螺子筒5の雄螺子5e及び螺子筒31の突起部33より構成された第一の螺合部8の螺合作用が作動し、移動螺子筒5の突条5bと充填部材1のローレット1cとにより構成された回り止め部との協働により、移動螺子筒5が前進し、これと同時に、移動螺子筒5の雌螺子5d及び移動体6の雄螺子6bより構成された第二の螺合部9の螺合作用が作動し、尾栓35における軸体35yの突条35gと移動体6の突条6fとにより構成された回り止め部との協働により、移動体6も前進する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進する。
【0048】
そして、本体筒2と操作筒3の繰り出し方向への相対回転が続けられると、図2に示すように、移動螺子筒5の係止部5aが螺子筒31のローレット32の前半部32aに当接して係止され、移動螺子筒5のバネ部5zが伸張されると共に、移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の先端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除され、移動螺子筒5が前進限に達する。
【0049】
そして、この前進時の螺合解除の状態にあっては、移動螺子筒5のバネ部5zにおける伸張の弾性力により移動螺子筒5の雄螺子5eが後方側へ付勢される。従って、本体筒2と操作筒3との繰り出し方向への相対回転がさらに続けられると、移動螺子筒5の雄螺子5eが、螺子筒31の突起部33における回転方向隣の先端に進入し第一の螺合部8が螺合復帰する。そして、本体筒2と操作筒3との繰り出し方向への相対回転がさらに続けられると、バネ部5zが伸張されながら移動螺子筒5が前進して当該移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の先端から外れて螺合が解除され、そして、さらなる同方向への相対回転により螺合復帰し、このような第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される。
【0050】
また、このように第一の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が所定量前進して前進限に達し、本体筒2と操作筒3の繰り出し方向への相対回転が続けられて、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される状態(第一の螺合部8の螺合作用が実質的には作動していない状態)にあっては、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみが前進する。
【0051】
ここで、移動螺子筒5が前進限に達し移動体6のみが前進している状態では、前述したように、本体筒2と操作筒3との繰り出し方向への相対回転により第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されているため、これによりクリック感が生じ、繰り出し方向への相対回転の度合いや移動体6の移動具合が使用者に好適に感知され、そして、この本体筒2と操作筒3との繰り出し方向へのクリック感を伴う相対回転により移動体6のみが前進し、先端のピストン7により塗布材Mが押し出されて開口1aを通して出現する。従って、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部8が利用され、塗布材Mが開口1aから出現することをクリック感にて使用者に感知させることができ、塗布材Mが充填部材1の開口1aから過剰に押し出されるのを簡易な構造で防止することができる。
【0052】
このとき、上述したように、第二の螺合部9は、そのリードが第一の螺合部8のリードより小さく設定されているため、移動体6はゆっくりと繰り出され、よって、塗布材Mが過剰に押し出されるのを一層防止することができる。
【0053】
一方、使用後にあって、本体筒2と操作筒3とが繰り戻し方向(他方向)へ相対回転されると、後方に付勢されている移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の先端に進入し第一の螺合部8が螺合復帰し、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転がさらに続けられると、第一の螺合部8及び第二の螺合部9の螺合作用が作動し、移動螺子筒5が後退すると同時に、移動螺子筒5に対して移動体6も後退する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退する。
【0054】
このように移動螺子筒5及び移動体6が後退すると、前述したように、ピストン7が充填部材1の内周面に密着し、塗布材Mが充填部材1の内周面に密着し、ピストン7と塗布材Mとが密着しているため、ピストン7の後退に従ってピストン7と塗布材Mとの間に減圧による吸引作用(密着を維持しようとする作用)が働き、塗布材Mが充填部材1内で引き戻されて後退し、塗布材Mが充填部材1の開口1aから出現している場合には、当該塗布材Mは開口1aから素早く没入する。さらに、上記のように、塗布材Mとピストン7との間に、粘着性や流動性を有する充填材を介在させていることから、塗布材Mとピストン7との密着性及び追従性が高められており、ピストン7の後退に従って、塗布材Mが確実に引き戻されて後退する。また、この充填材が、塗布材Mと充填部材1との間に進入することで、塗布材Mと充填部材1との摺動性が高められ、ピストン7の後退に従って、塗布材Mを低温下においても一層確実に後退することができる。
【0055】
そして、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転が続けられると、移動螺子筒5が後退限に達して、移動螺子筒5のバネ部5zの後端面が操作筒3の尾栓35の底面に当接し、さらなる相対回転により、移動螺子筒5のバネ部5zが圧縮されながら、移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の後端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除される。
【0056】
そして、この後退時の螺合解除の状態にあっては、移動螺子筒5のバネ部5zにおける圧縮の弾性力により移動螺子筒5の雄螺子5eが前方側へ付勢される。従って、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転がさらに続けられると、移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33における回転方向隣の後端に進入し第一の螺合部8が螺合復帰する。そして、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転がさらに続けられると、バネ部5zが圧縮されながら移動螺子筒5が後退して当該移動螺子筒5の雄螺子5eが螺子筒31の突起部33の後端から外れて螺合が解除され、そして、さらなる同方向への相対回転により螺合復帰し、このような第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される。
【0057】
また、このように第一の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が所定量後退して後退限に達し、本体筒2と操作筒3の繰り戻し方向への相対回転が続けられて、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返される状態(第一の螺合部8の螺合作用が実質的には作動していない状態)にあっては、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみが後退する。
【0058】
ここで、移動螺子筒5が後退限に達し移動体6のみが後退している状態では、前述したように、本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向への相対回転により第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されているため、これによりクリック感が生じ、繰り戻し方向への相対回転の度合いや移動体6の移動具合が使用者に好適に感知され、そして、この本体筒2と操作筒3との繰り戻し方向へのクリック感を伴う相対回転により移動体6のみが後退し、塗布材Mが引き戻される。従って、移動体6のみが後退している状態においても、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部8が利用され、塗布材Mが引き戻されることをクリック感にて使用者に感知させることができ、塗布材Mを過剰に引き戻すことを簡易な構造で防止することができる。その結果、次回に塗布材Mを押し出す際、本体筒2と操作筒3とを繰り出し方向に相対回転し始めてから塗布材Mが充填部材1の開口1aより出現するまでにかかる時間が短縮され、塗布材Mを充填部材1の開口1aより即座に出現させることができる。
【0059】
このとき、上述したように、第二の螺合部9は、そのリードが第一の螺合部8より小さく設定されているため、移動体6はゆっくりと繰り戻され、よって、塗布材Mが過剰に引き戻されるのを一層防止することができる。
【0060】
そして、以降は上記と同様な動作となり、このような動作が繰り返されることとなる。また、図3に示すように、本体筒2と操作筒3の繰り出し方向への相対回転により、ピストン7が最大に前進すると、塗布材Mが殆ど使い切られる。
【0061】
以上、本実施形態の塗布材押出容器100によれば、第一の螺合部8の螺合が解除されて一方向/他方向にさらに相対回転される際に、第一の螺合部8の螺合解除と移動螺子筒5のバネ部5zによる螺合復帰とが繰り返されてクリック感が生じ、相対回転の度合いや移動体6の移動具合が使用者に感知されるようになる。すなわち、クリック感を生じさせるクリック機構として第一の螺合部8が利用され、塗布材Mを過剰に押し出し/引き戻すことが簡易な構造で防止される。
【0062】
また、本実施形態では、移動体6が前進、後退して第一の螺合部8が螺合解除された際の螺合復帰の双方に、バネ部5zの伸長及び圧縮の両弾性力が利用され、バネ部5zが兼用とされているため、バネ部5zにあっては、移動体6の前進、後退に応じて、移動螺子筒5の雄螺子5eのみに両弾性力を螺合復帰するように付与でき、雄螺子5eとバネ部5zとを一体部品にすることができる。よって、塗布材押出容器100の部品点数を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態は、上述したように、バネ部5zの伸長の弾性力が付与されるように当該バネ部5zを容器内に係止する係止部5aを有している。そのため、この係止部5aによりバネ部5zを螺子筒31のローレット32の前半部32aに係止してバネ部5zを好適に伸長でき、バネ部5zの伸長の弾性力を第一の螺合部8が螺合復帰するように好適に付与できる。
【0064】
なお、本実施形態の塗布材押出容器100では、上述したように、突起部33を操作筒3の螺子筒31の内周面に周方向に沿って六等配したが、突起部33は、螺子筒31の内周面に周方向に沿って複数設けられていれば良い。また、次の理由から、突起部33は、螺子筒31の内周面に周方向に沿って四つ以上設けられていることが好ましい。
【0065】
すなわち、1回転当りのクリック回数が多い程、塗布材Mを微量ずつ出現させ易く、従って、突起部33を三つ以下とすると、1回転当りのクリック回数が少なく、塗布材Mが過剰に押し出されることを防止するという上記効果が不十分となるおそれがあるからである。
【0066】
また、突起部33を多数設ければ設ける程、コアピン50a,50bの形状が複雑になってしまうため、塗布材押出容器100の製造面の観点からは、突起部33の数は少ないほうが好ましい。従って、塗布材Mを過剰に押し出し/引き戻すのを確実に防止する上記観点と、塗布材押出容器100の製造面の上記観点との両観点に鑑みると、突起部33を操作筒3の螺子筒31の内周面に周方向に沿って六〜八つ設けることが好ましく、本実施形態のように、突起部33を六つ設けることが一層好ましい。このように、突起部33を操作筒3の螺子筒31の内周面に周方向に沿って六つ設けると共に、上記のように移動螺子筒5の雄螺子5eを十二条螺子とすると、相対回転1回転当りに12回のクリック感が生じることになる。ちなみに、突起部33を周方向に沿って八つ設けると共に、雄螺子5eを八条螺子とする場合もあり、この場合には、相対回転1回転当りに8回のクリック感が生じる。
【0067】
次に、図18〜図32を参照しながら第二実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、上記第一実施形態と異なる点を主に説明する。
【0068】
図18〜図21は、本発明の第二実施形態に係る塗布材押出容器の各状態を示す各縦断面図、図22は、本体筒を示す縦断斜視図、図23及び図24は、中間部材を示す各図、図25及び図26は、回転部材を示す各図、図27〜図29は、螺子筒を示す各図、図30〜図32は、移動螺子筒を示す各図である。
【0069】
図18に示すように、塗布材押出容器200は、充填部材1と、その前部に充填部材1の後部を内挿して当該充填部材1を相対回転可能且つ軸線方向離脱不能に連結する本体筒102と、を外形構成として具備し、充填部材1により容器前部が構成されると共に、本体筒102により容器後部が構成されている。
【0070】
そして、この塗布材押出容器200は、内部に、第1実施形態と同様な移動体6、螺子筒31に対応して螺子筒104、移動螺子筒5に対応して移動螺子筒105、ピストン7に対応してピストン107を備えると共に、新たに、回転部材110、中間部材111を備えている。
【0071】
本体筒102は、図22に示すように、有底円筒状に構成された本体部102xと、この本体部102xの底部中央に、先端側に向かうように立設された軸体102yと、を備える構成とされている。本体部102xは、その先端部の内周面に、中間部材111を軸線方向に係合するための環状凸凹部102aを備えると共に、この環状凸凹部102aより後側の内周面に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット102bを、中間部材111を回転方向に係合するためのものとして備えている。また、本体部102xは、その底部側の内周面に、周方向に沿って多数が並設されて底部から先端側に向かって延びる突条102cを、螺子筒104を回転方向に係合するためのものとして備えている。軸体102yは、円柱体の外周面に周方向に沿う六等配の位置に半径方向外方に突出するように配置されて軸線方向に延びる突条102dを備える横断面非円形形状とされている。
【0072】
そして、本体筒102は、図18に示すように、その軸体102yに第1実施形態と同様な構成の移動体6が内挿され、その突条102d、102d間に移動体6の突条6fが侵入し回転方向に係合することで、移動体6を同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着する。
【0073】
中間部材111は、図23及び図24に示すように、略円筒状とされ、軸線方向中程の外面が径方向に拡大した鍔部111aを具備し、この鍔部111aより後側の外周面に、環状凹凸部111bを、本体筒102の環状凸凹部102aに軸線方向に係合するものとして備えている。また、中間部材111の環状凹凸部111bより後ろ側の外周面には、周方向に沿って複数並設されて軸線方向に延びる突条111dが、本体筒102のローレット102bに回転方向に係合するものとして設けられている。
【0074】
この中間部材111は、図18に示すように、その鍔部111aより後側の部分が本体筒102に内挿され、鍔部111aの後端面が本体筒102の先端面に突き当てられ、その突条111dが本体筒102のローレット102bに回転方向に係合すると共にその環状凹凸部111bが本体筒102の環状凸凹部102aに軸線方向に係合することで、本体筒102に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着され、本体筒102と一体化されている。
【0075】
ピストン107は、先端部を傘状に湾曲し突出させた釣り鐘形状を呈し、移動体6の先端側に装着される。
【0076】
回転部材110は、図25及び図26に示すように、段付き円筒状とされ、後方側に行くに従って段階的に外径が大とされ、後部に、螺子筒104を軸線方向に押えるための鍔部110aを具備し、この鍔部110aの前側の外周面に、充填部材1の後端面を突き当てるための鍔部110cを有すると共に、この鍔部110cより前側の外周面に、環状凸凹部110dを、充填部材1を軸線方向に係合するものとして有している。さらに、環状凸凹部110dより前側の外周面には、周方向に沿って複数が並設されて軸線方向に延びる突条110eが、充填部材1を回転方向に係合するものとして設けられている。また、図26に示すように、軸線方向中程の内周面には、周方向に沿って複数の位置に軸線方向に延びる突条110fが、移動螺子筒105に回転方向に係合するものとして設けられている。
【0077】
この回転部材110は、図18に示すように、本体筒102に内挿され、鍔部110aが中間部材111の後端面に相対回転可能に当接することで、軸線方向前側への離脱が阻止されている。
【0078】
螺子筒104は、図27及び図28に示すように、段付き円筒状に構成され、後側の小径部104yと、段差面104cを介してこれより前側の大径部104xとを備えている。小径部104yの外周面の前端部には、周方向に沿って複数並設されて軸線方向に延びる突条104aが、本体筒102の突条102cに回転方向に係合するものとして設けられている。図28に示すように、この小径部104yは、その内周面の前端部に、当該内周面に沿い円弧状を成して円周方向に延びる突起部104dを複数有している。突起部104dは、図29に示すように、軸線方向視において互いに重ならないように、周方向に沿う八等配の位置に間欠的に設けられており、図28に示すように、隣接する各端部同士が軸線方向にズレて離間していると共に、軸線方向に沿って登り傾斜と下り傾斜を半々に有する山型に構成されている。この突起部104dは、第一の螺合部8の一方の雌螺子を構成するものであり、移動螺子筒105の螺合突起105e(後述)と螺合するものである。
【0079】
この螺子筒104は、図18に示すように、本体筒102に内挿され、その先端面が、回転部材110の鍔部110aに当接することで、その段差面104cが本体筒102の突条102cの先端面に当接すると共に、その突条104aが本体筒102の突条102cに回転方向に係合し、本体筒102に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着され、本体筒102と一体化されている。
【0080】
このような螺子筒104の製造方法は、第一実施形態の塗布材押出容器100の螺子筒31における上記製造方法と同様である。
【0081】
移動螺子筒105は、樹脂による射出成形品とされ、図30〜図32に示すように、段付き円筒状に構成され、後側の外径大径部105yと、段差面105pを介してこれより前側の外径小径部105xとを備えている。
【0082】
移動螺子筒105の外径小径部105xには、軸線方向中央の外周面に、周方向に沿って四等配の位置に軸線方向に延びる突条105bが、回転部材110の突条110fを回転方向に係合するものとして設けられている。また、図30に示すように、外径小径部105xには、その先端から突条105bの近傍まで延び内外を連通するスリット105nが、軸線を挟んだ両側に一対設けられている。さらに、外径小径部105xには、その先端部の内面に、第二の螺合部9の他方を構成する雌螺子105dが、スリット105n,105nを横切り半円弧状を成すようにして設けられている。
【0083】
移動螺子筒105の外径大径部105yには、その先端側の外周面に、第一の螺合部8の他方(雄螺子)を構成する螺合突起(螺旋状の突起)105eが対向して複数設けられている。また、外径大径部105yにあっては、螺合突起105eより後側に、軸線方向に伸縮可能とされた所謂樹脂バネ(付勢手段)であるバネ部105aが一体的に連設されている。さらに、外径大径部105yは、そのバネ部105aの後側の外周面に、円環状の鍔部105cを有している。この鍔部105cは、図19に示すように、移動螺子筒105の前進時に螺子筒104の後端面に当接し、当該移動螺子筒105の前進限の係止部として機能するものである。
【0084】
そして、この移動螺子筒105は、図18に示すように、移動体6に外挿されると共に螺子筒104に内挿され、その雌螺子105dが移動体6の雄螺子6bに螺合した状態とされ第二の螺合部9が構成されている。この状態で、移動螺子筒105の螺合突起105eが螺子筒104の104dに螺合した状態とされ第一の螺合部8が構成されている。また、この状態で、移動螺子筒105は、そのバネ部105aの後端面が本体筒102の底面に当接している。さらに、また、移動螺子筒105の突条105bに回転部材110の突条110fが回転方向に係合し、当該移動螺子筒105が回転部材110に対して同期回転可能且つ軸線方向移動可能とされている。
【0085】
このように構成された図18に示す初期状態の塗布材押出容器200にあっては、充填部材1と本体筒102とが繰り出し方向に相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が作動し、突条110f,105bから成る回り止め部との協働により移動螺子筒105が前進し、同時に、第二の螺合部9の螺合作用が作動し、突条102d,6fから成る回り止め部との協働により移動体6も前進する。
【0086】
続いて、移動螺子筒105が所定量前進し、図19に示すように、鍔部105cが螺子筒104の後端面に当接し、さらに繰り出し方向へ相対回転されると、移動螺子筒105のバネ部105aが伸張されながら、当該移動螺子筒105の螺合突起105eが螺子筒104の突起部104dの先端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除され、さらなる繰り出し方向への相対回転に従って、移動螺子筒105のバネ部105aにおける伸張の弾性力により第一の螺合部8が螺合復帰し、この螺合解除と螺合復帰が繰り返される。そして、さらに同方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されながら、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみがクリック感を伴い前進し、先端のピストン107により塗布材Mが適度に押し出されて開口1aを通して出現し使用状態とされる。
【0087】
一方、使用後にあって、充填部材1と本体筒102とが繰り戻し方向へ相対回転されると、移動螺子筒105のバネ部105aにおける伸張の弾性力により第一の螺合部8が螺合復帰し、さらなる同方向への相対回転により、第一の螺合部8及び第二の螺合部9の螺合作用が作動し、移動螺子筒105が後退すると同時に、移動螺子筒105に対して移動体6も後退し、ピストン107の後退に従う減圧による吸引作用で塗布材Mが充填部材1内で引き戻されて後退する。
【0088】
続いて、さらなる同方向への相対回転により、移動螺子筒105が後退すると、図20に示すように、初期状態と同様に、移動螺子筒105の後端面が本体筒102の底面に当接し、さらに同方向へ相対回転されると、移動螺子筒105のバネ部105aが圧縮されながら、移動螺子筒105が後退し当該移動螺子筒105の螺合突起105eが螺子筒104の突起部104dの先端から外れ、第一の螺合部8の螺合が解除され、さらなる繰り戻し方向への相対回転に従って、移動螺子筒105のバネ部105aにおける圧縮の弾性力により第一の螺合部8が螺合復帰し、この螺合解除と螺合復帰が繰り返される。そして、さらに同方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合解除と螺合復帰が繰り返されながら、第二の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6のみがクリック感を伴い後退する。なお、充填部材1と本体筒102との繰り出し方向への相対回転により、ピストン107が最大に前進すると、図21に示すように、塗布材Mが殆ど使い切られる。
【0089】
このような本実施形態の塗布材押出容器200によれば、第一実施形態とほぼ同様な効果を得ることができるというのはいうまでもない。
【0090】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限
定されるものではない。
【0091】
例えば、上記第二実施形態では、本体筒102に軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する螺子筒104を本体筒102内に配設し、この螺子筒104の内面に突起部104dを周方向に沿って複数設けたが、螺子筒を有さずに、本体筒102の内面に突起部を周方向に沿って複数設けても良い。
【0092】
また、上記実施形態では、付勢手段として、移動螺子筒5,105に、軸線方向に伸縮可能とされた所謂樹脂バネであるバネ部5z,105aを一体的に設けているが、金属コイルバネ等を一体的に設けても良く、また、可撓性を有する軟質材から成るもの(例えばウレタン樹脂やシリコン樹脂等の合成樹脂、ゴム等)を一体的に設けても良い。
【0093】
なお、雄螺子、雌螺子は、間欠的に配される突起群又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山と同様な働きをするものであっても良い。
【0094】
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
【0095】
また、上記実施形態では、容器前部と容器後部とが一方向/他方向に相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が作動すると同時に第二の螺合部9の螺合作用が作動するように構成したが、第一の螺合部8の螺合作用のみが作動するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す状態からキャップが取り外され使用者の操作により移動螺子筒及び移動体が前進し、移動螺子筒が最大に前進した時の縦断面図である。
【図3】図2に示す状態から使用者の操作により移動体が最大に前進した時の縦断面図である。
【図4】図1〜図3中の本体筒の縦断面図である。
【図5】図1〜図3中の操作筒を構成する螺子筒の縦断斜視図である。
【図6】図5に示す螺子筒の縦断面図である。
【図7】図5に示す螺子筒の正面図である。
【図8】図1〜図3中の操作筒を構成する尾栓の斜視図である。
【図9】図1〜図3中の尾栓の一部破断側面図である。
【図10】図1〜図3中の移動体を示す側面図である。
【図11】図10に示す移動体の縦断面図である。
【図12】図1〜図3中のピストンを示す縦断面図である。
【図13】図1〜図3中の移動螺子筒を示す斜視図である。
【図14】図13に示す移動螺子筒の縦断面図である。
【図15】図1〜図3中の充填部材を示す側面図である。
【図16】図15のXVI−XVI矢視図である。
【図17】図5に示す螺子筒の製造方法について説明するための図である。
【図18】本発明の第二実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図19】図18に示す状態からキャップが取り外され使用者の操作により移動螺子筒及び移動体が前進し、移動螺子筒が最大に前進した時の縦断面図である。
【図20】図19に示す状態で塗布材が使用者により使用されてから使用者の操作により移動螺子筒及び移動体が後退し移動螺子筒が後退限に後退した時の縦断面図である。
【図21】図20に示す状態から使用者の操作により移動体が最大に前進した時の縦断面図である。
【図22】図18〜図21中の本体筒を示す縦断斜視図である。
【図23】図18〜図21中の中間部材を示す斜視図である。
【図24】図23に示す中間部材の縦断斜視図である。
【図25】図18〜図21中の回転部材を示す斜視図である。
【図26】図25に示す回転部材の縦断斜視図である。
【図27】図18〜図21中の螺子筒を示す斜視図である。
【図28】図27に示す螺子筒の縦断面図である。
【図29】図27に示す螺子筒の背面図である。
【図30】図18〜図21中の移動螺子筒を示す斜視図である。
【図31】図30に示す移動螺子筒の側面図である。
【図32】図31のXXXII−XXXII矢視図である。
【符号の説明】
【0097】
1…充填部材(容器前部)、1a…開口、2…本体筒(容器前部)、3…操作筒(容器後部)、5z,105a…バネ部(付勢手段)、6…移動体、8…第一の螺合部、9…第二の螺合部、33,104d…突起部、35y,102y…軸体、100,200…塗布材押出容器、102…本体筒(容器後部)、104…螺子筒、M…塗布材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に塗布材、この塗布材を前進により押し出すための移動体、第一の螺合部及び第二の螺合部を具備し、容器前部と当該容器前部に相対回転可能とされた容器後部とが一方向/当該一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、前記第一の螺合部の螺合作用が働き前記移動体が前進/後退し、前記第一の螺合部の螺合作用が所定量働くと当該第一の螺合部の螺合が解除され、前記一方向/前記他方向にさらに相対回転されると、前記第二の螺合部の螺合作用のみが働き前記移動体がさらに前進/後退する塗布材押出容器であって、
前記第一の螺合部の螺合が解除されたときに、前記第一の螺合部が螺合復帰するように付勢する付勢手段と、
前記容器後部の内面に周方向に沿って複数設けられ、前記第一の螺合部の雌螺子を構成し、軸線方向視において互いに重ならない突起部と、を備えていることを特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記容器前部は、塗布材が充填される充填部材と、当該充填部材を軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する本体筒と、含んで構成され、
前記容器後部は、前記本体筒に相対回転可能に係合する操作筒を含んで構成され、
前記突起部は、前記操作筒の内面に周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記容器前部は、塗布材が充填される充填部材を含んで構成され、
前記容器後部は、本体筒を有し、
前記突起部は、前記本体筒の内面、又は前記本体筒内に配設され当該本体筒に軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する螺子筒の内面に、周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記移動体を軸線回り回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、前記容器後部に対し同期回転可能とされた軸体を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項5】
前記軸体は、前記容器後部の後方開口側に対し軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する部材に立設されていることを特徴とする請求項4記載の塗布材押出容器。
【請求項1】
容器内に塗布材、この塗布材を前進により押し出すための移動体、第一の螺合部及び第二の螺合部を具備し、容器前部と当該容器前部に相対回転可能とされた容器後部とが一方向/当該一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、前記第一の螺合部の螺合作用が働き前記移動体が前進/後退し、前記第一の螺合部の螺合作用が所定量働くと当該第一の螺合部の螺合が解除され、前記一方向/前記他方向にさらに相対回転されると、前記第二の螺合部の螺合作用のみが働き前記移動体がさらに前進/後退する塗布材押出容器であって、
前記第一の螺合部の螺合が解除されたときに、前記第一の螺合部が螺合復帰するように付勢する付勢手段と、
前記容器後部の内面に周方向に沿って複数設けられ、前記第一の螺合部の雌螺子を構成し、軸線方向視において互いに重ならない突起部と、を備えていることを特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記容器前部は、塗布材が充填される充填部材と、当該充填部材を軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する本体筒と、含んで構成され、
前記容器後部は、前記本体筒に相対回転可能に係合する操作筒を含んで構成され、
前記突起部は、前記操作筒の内面に周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記容器前部は、塗布材が充填される充填部材を含んで構成され、
前記容器後部は、本体筒を有し、
前記突起部は、前記本体筒の内面、又は前記本体筒内に配設され当該本体筒に軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する螺子筒の内面に、周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記移動体を軸線回り回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、前記容器後部に対し同期回転可能とされた軸体を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項5】
前記軸体は、前記容器後部の後方開口側に対し軸線回り回転方向及び軸線方向に係合する部材に立設されていることを特徴とする請求項4記載の塗布材押出容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2009−39174(P2009−39174A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204542(P2007−204542)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
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