説明

塗布材押出容器

【課題】高級感を有するクリック感を生じさせることができる塗布材押出容器を提供する。
【解決手段】塗布材押出容器100では、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されて第1の螺合部8の螺子山同士が外れ、さらに相対回転が続けられて第2の螺合部9のみで移動体6が前進するとき、第1の螺合部8を構成する突条41,56が係合及び係合解除を繰り返し、使用者にクリック感が付与される。このとき、突条41が突条56よりも軟らかくされているため、かかるクリック感のクリック音を小さくしつつ(緩和しつつ)、該クリック音を重厚なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用するための塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。この塗布材押出容器では、本体筒(容器前部)と操作筒(容器後部)とが一方向又は一方向の反対方向である他方向に相対回転されると、雌螺子及び雄螺子より構成される螺合部の螺合作用によって移動体が前進又は後進される。また、この塗布材押出容器においては、相対回転に従う移動体の移動の際、クリック手段によってクリック感を生じさせることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−150098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年、上述した塗布材押出容器としては、使用者ニーズの多様化に伴い、高級感を有するものが望まれる場合がある。そのため、上述した塗布材押出容器として、高級感を有するクリック感を生じさせ得るものが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、高級感を有するクリック感を生じさせることができる塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る塗布材押出容器は、容器内に移動体及び螺合部を具備し、容器前部と容器後部とが相対回転されると、螺合部の螺合作用が働き移動体が前進又は後退する塗布材押出容器であって、一方のクリック部及び他方のクリック部を有し、相対回転に従う移動体の移動に伴い一方のクリック部と他方のクリック部とが係合及び係合解除を繰り返すことでクリック感を生じさせるクリック手段を備え、一方のクリック部は、他方のクリック部よりも軟らかいことを特徴とする。
【0007】
この本発明の塗布材押出容器では、一方のクリック部が他方のクリック部よりも軟らかいことから、生じるクリック感のクリック音を小さくしつつ該クリック音を重厚なものにすることができる。従って、本発明によれば、高級感を有するクリック感を生じさせることが可能となる。
【0008】
また、クリック手段は、一方のクリック部を構成する螺合部の雄螺子と、他方のクリック部を構成する螺合部の雌螺子と、螺合作用が開放された螺合部が螺合復帰するように螺合部を付勢する弾性部と、を含むことが好ましい。この場合、容器前部と容器後部との相対回転に従う移動体の移動に伴って螺合部の係合及び係合解除が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に、高級感を有するクリック感が生じることとなる。なお、ここでの螺合復帰は、螺合部において雄螺子が雌螺子の螺子山の側面に当接するまで戻る段階を意味している。
【0009】
また、クリック手段は、一方のクリック部を構成する第1のクリック歯と、第1のクリック歯と回転方向に係合し、他方のクリック部を構成する第2のクリック歯と、を含むことが好ましい。この場合、容器前部と容器後部との相対回転に従う移動体の移動に伴って第1及び第2のクリック歯の係合及び係合解除が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に、高級感を有するクリック感が生じることとなる。
【0010】
また、回転止筒をさらに備え、回転止筒は、一方のクリック部が設けられた軟質部と、軟質部に外挿されて固定されると共に容器に係合し、軟質部よりも硬い硬質部と、を含んでいることが好ましい。この場合、高級感を有するクリック感を生じさせるという上記作用効果を好適に発揮させつつ、軟質部よりも硬い硬質部が容器に係合することから、容器に対して回転止筒を確実に係合させることができる。
【0011】
また、一方のクリック部は、タイプDデュロメータによるデュロメータ硬さが63よりも小さいことが好ましい。この場合、高級感を有するクリック感を好適に生じさせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高級感を有するクリック感を生じさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断側面である。
【図2】図1の塗布材押出容器における移動体の前進限の状態を示す縦断側面図である。
【図3】図1の塗布材押出容器の操作筒を示す分解斜視図である。
【図4】図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す背面図である。
【図7】図1の塗布材押出容器の回転止筒における硬質部を示す斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿っての断面図である。
【図9】図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を示す側面図である。
【図10】図9のX−X線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面であり、図2は、図1の塗布材押出容器における移動体の前進限の状態を示す縦断面図である。図1,2に示すように、本実施形態の塗布材押出容器100は、塗布材Mを収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
【0016】
この塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
【0017】
塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域を内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を軸線方向及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、充填部材1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。そして、この塗布材押出容器100は、その内部に、回転止筒4、移動螺子筒5、移動体6及びピストン7を概略備えている。なお、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味する(以下、同じ)。
【0018】
回転止筒4は、本体筒2に対し相対回転可能にして軸線方向に係合する。また、回転止筒4は、ラチェット機構101によって、本体筒2と操作筒3との一方向の相対回転時にて操作筒3に対し同期回転可能に係合すると共に、本体筒2と操作筒3との他方向の相対回転時にて、操作筒3に対し所定回転力よりも小さい回転力(以下、「小回転力」という)で同期回転可能、且つ所定回転力以上の回転力(以下、「大回転力」という)で相対回転可能に係合する。ちなみに、この「他方向」とは、回転方向のうちの一方向とは反対方向を意味する。
【0019】
移動螺子筒5は、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に回転止筒4に第1の螺合部8を介して螺合し、本体筒2(充填部材1でも可)と操作筒3とが一方向に相対回転されると一定量前進し、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると一定量後退する。
【0020】
移動体6は、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に移動螺子筒5に第2の螺合部9を介して螺合し、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進し、移動螺子筒5が前進限に達し本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると単独で前進し、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されると移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退し、移動螺子筒5が後退限に達し本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると単独で後退する。ピストン7は、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域の後端を形成する。
【0021】
本体筒2は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)で成形され、円筒状に構成されている。本体筒2は、その軸線方向中央部の内周面に、充填部材1及び移動螺子筒5を回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びてなるローレット2aを有している。また、本体筒2の前端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)2bが設けられている。
【0022】
本体筒2の後部側の内周面でローレット2aの後側には、回転止筒4を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2cが互いに対向するように一対形成されている。さらにまた、本体筒2の内周面で円弧状凸部2cの後側には、操作筒3を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2dが、互いに対向するように一対形成されている。これら円弧状凸部2c,2dは、軸線方向視において、互いに重ならないように周方向に間欠的に設けられている。
【0023】
図3は、図1の塗布材押出容器の操作筒を示す分解斜視図である。図3に示すように、操作筒3は、本体部31と、本体部31の後端部に外挿された有底円筒状の尾栓部38と、尾栓部38内に設けられた円柱状の錘部39と、を含んで構成されている。本体部31は、例えばABS樹脂で成形され、有底円筒状に構成された筒部31xと、前端側に向かうように筒部31xの底部中央に立設された軸体31yと、を有している。
【0024】
筒部31xの外周面の前部には、本体筒2に軸線方向に係合し且つ回転止筒4の後端に突き当たる環状凸部32が設けられている。また、筒部31xの外周面の中央には、本体筒2の後端面に当接するためのものとして、円環状の鍔部33が設けられている。筒部31xの外周面において、鍔部33の前側には、Oリング102を装着するための環状溝123(図1参照)が形成されている。さらにまた、筒部31xの後端部には、尾栓部38を軸線方向に係合するための凸部34と、尾栓部38を回転方向に係合するための溝部35が設けられている。
【0025】
この筒部31xは、ラチェット機構101の一方のラチェット歯(クリック歯)を構成する複数の凸部36を有している。凸部36は、回転止筒4の凸部44(上述)と係合するものとして、筒部31xの外周面の前側において径方向外側に向かって突設されている。ここでの凸部36は、周方向に鋸歯形状となるように、外周面において周方向八等配の位置に設けられている。
【0026】
これら凸部36における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部36における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36bは、外周面に対し側面36aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
【0027】
軸体31yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体31yは、円柱体の外周面に、周方向六等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条37を備える横断面非円形形状とされている。
【0028】
尾栓部38は、例えばABS樹脂で成形され、本体部31の後部を覆うように当該本体部31に同期回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。錘部39は、金属で形成され、尾栓部38に覆われるよう本体部31と尾栓部38との間に配置されている。この錘部39によって、塗布材押出容器100全体に対し、重量感を与えることができ、高級感を高めることが可能となる。
【0029】
図1に示すように、この本体部31、尾栓部38及び錘部39からなる操作筒3は、その本体部31の前側が本体筒2に内挿され、その鍔部33が本体筒2の後端面に突き当てられると共に、本体部31の環状凸部32が本体筒2の円弧状凸部2dに軸線方向に係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。このとき、操作筒3は、その環状溝123にOリング102が設けられており、その本体部31の外周面がOリング102を介して本体筒2の内周面に当接されている。
【0030】
図4は図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す斜視図、図5は図4のV−V線に沿っての断面図、図6は図1の塗布材押出容器の回転止筒における軟質部を示す背面図、図7は図1の塗布材押出容器の回転止筒における硬質部を示す斜視図、図8は図7のVIII−VIII線に沿っての断面図である。回転止筒4は、軟質部104と、軟質部104の前側に外挿されて固定される硬質部105と、を含んで構成されている(図1参照)。
【0031】
図4〜6に示すように、軟質部104は、その前側に位置する円筒状の小径部104xと、該小径部104xの後側に段差面104pを介して連続する円筒状の大径部104yと、を有している。小径部104xは、内周面の前側に設けられリード12mmでピッチ2mmの第1の螺合部8を構成する雌螺子としての突条41を複数有している。
【0032】
これら突条41は、内周面に沿って螺旋状を成して延びると共に、隣接する突条41の端部同士は、軸線方向に互いにズレて離間している。また、突条41は、軸線方向視において互いに重ならないように間欠的に6つ設けられている。
【0033】
大径部104yは、ラチェット機構101の他方のラチェット歯(クリック歯)を構成する複数の凸部44を有している。凸部44は、操作筒3の凸部36と周方向に係合するものとして、大径部104yの内周面の後側において径方向内側に向かって突設されている。ここでの凸部44は、周方向に鋸歯形状となるように、内周面において周方向四等配の位置に設けられている。
【0034】
これら凸部44における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部44における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44bは、外周面に対し側面44aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
【0035】
この軟質部104は、移動螺子筒5及び操作筒3よりも軟らかいものとされている。具体的には、軟質部104は、移動螺子筒5の材質であるPOM(ポリアセタール)よりも軟らかく、且つ、操作筒3の材質であるABS樹脂よりも軟らかい材質で成形されており、ここでは、熱可塑性エラストマでインジェンクション成形されている。なお、熱可塑性エラストマとしては、ポリエステル系、ポリステレン系、ポリオレフィン系、等の何れのものを用いることができる。
【0036】
より具体的には、軟質部104は、好ましいとして、タイプDデュロメータによるデュロメータ硬さ(以下、「D型デュロメータ硬さ」という)が63よりも小さくされている。また、突条41を雌螺子として充分に機能させる点からは、好ましいとして、D型デュロメータ硬さが30以上で63よりも小さくされている。換言すると、軟質部104のD型デュロメータ硬さは、ABS樹脂で成形された他部材(操作筒3の本体部31等)のD型デュロメータ硬さに対し、20以上低くなっている。
【0037】
なお、“デュロメータ硬さ”とは、デュロメータ(ゴム・プラスチック硬度計)という硬さ試験機を用い、定められた形状の押針を、定められたばねの力で試験片表面に押し付け、そのときの押針の押込み深さから得られる硬さである。そして、“タイプDデュロメータによるデュロメータ硬さ”とは、試験方法及び試験機の種類にタイプDデュロメータを適用して測定したデュロメータ硬さを意味する。ここでは、JIS K 6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」に規定される測定方法に準拠して測定される値を意味する。
【0038】
図7,8に示すように、硬質部105は、筒状を呈しており、その内径が軟質部104の小径部104xの外径と等しくされている。硬質部105の外周面の後端部には、本体筒2に軸線方向に係合するための環状凸部106が設けられている。また、硬質部105の内周面の前端部には、軟質部104に対する挿入方向を規制する(つまり、前後方向が逆にならないようにする)ためのものとして、環状凸部107が設けられている。
【0039】
この硬質部105は、軟質部104よりも硬いものとされている。具体的には、硬質部105は、POM、ABS樹脂又はHDPE(高密度ポリエチレン)でインジェンクション成形されており、軟質部104よりもD型デュロメータ硬さが大きいものとなっている。そして、硬質部105は、図1に示すように、その環状凸部107が前側に位置する状態にして、その後端面105a(図8参照)が段差面104pに当接するまで軟質部104の小径部104xに外挿され、嵌合されて装着(固定)されている。
【0040】
このような回転止筒4にあっては、その前側から本体筒2に内挿され、その環状凸部106が本体筒2の円弧状凸部2cに軸線方向に係合している。また、回転止筒4は、その後側が操作筒3の本体部31に外挿され、その後端面が環状凸部32に突き当てられている。これにより、回転止筒4は、軸線方向に挟持され、本体筒2に対して相対回転可能にして軸線方向に係合され装着される。
【0041】
これと共に、回転止筒4は、軟質部104の凸部44が操作筒3の凸部36に当接し、回転方向(周方向)に係合している。そして、凸部44と凸部36との間には、例えば軟質部104の柔軟性に起因した弾性力(可撓性)等によって、所定係合力が生じることとなる。これにより、操作筒3と回転止筒4とは、一方向に相対回転される場合には、同期回転可能となると共に、他方向に相対回転される場合であって、これらに小回転力が加わると同期回転可能、且つ大回転力が加わると相対回転可能となる(詳しくは後述)。

【0042】
図9は図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を示す側面図、図10は図9のX−X線に沿っての断面図である。図9,10に示すように、移動螺子筒5は、例えばPOMで成形され、筒状を呈している。移動螺子筒5の前端部5xは、前端から軸線方向に所定長延在し対向するよう一対形成されたスリット51によって、径方向外側に拡開可能に構成されている。前端部5xの外周面の前側においてスリット51に近接する位置には、前端部5xの外径を調整するためのものとして、複数(ここでは4つ)の凸部52が設けられている。
【0043】
また、前端部5xの内周面において前端から所定長後方に亘る領域には、第2の螺合部9を構成する雌螺子53(図13参照)が設けられている。なお、ここでの第2の螺合部9のピッチは、第1の螺合部8のピッチより細かいものとされており、第1の螺合部8のリード(本体筒2と操作筒3との相対回転一回転当たりの推進量)が第2の螺合部9のリードよりも大きく設定されている。
【0044】
また、移動螺子筒5の中央部の外周面における後側には、円環状の鍔部54が設けられている。鍔部54の外周面には、本体筒2のローレット2aに係合するものとして、軸線方向に沿って延びる突条55が複数設けられている。また、移動螺子筒5の後端部の外周面には、第1の螺合部8を構成する雄螺子としての突条56が設けられている。これら突条56は、外周面おいて軸線を挟んで対向する一対の対向部分に設けられている。つまり、かかる対向部分にのみ螺旋状を成して延在するように、間欠的に設けられている。
【0045】
この移動螺子筒5は、図1に示すように、本体筒2に内挿され、その突条55が本体筒2のローレット2aに係合することで、本体筒2に対し回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に装着されている。また、移動螺子筒5は、操作筒3の軸体31yに外挿されると共に、その後端部の突条56が回転止筒4の軟質部104の突条41と螺合するように構成されている。ここでは、軟質部104が軟らかいことから、第1の螺合部8の螺合作用を充分に発揮させるべく、複数の突条56が複数の突条56に同時に係合するようになっている。
【0046】
移動体6は、例えばPOMで成形され、先端側に鍔部6aを有する円筒状に構成されている。移動体6は、その鍔部6aより後側から後端部に亘る外周面に、第2の螺合部9の雄螺子6bを備えている。この移動体6の内周面において周方向六等配の位置には、操作筒3に回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条6cが設けられている。
【0047】
そして、この移動体6は、その後端側から、操作筒3の軸体31yと移動螺子筒5との間に外挿されている。このとき、移動体6は、その雄螺子6bが移動螺子筒5の雌螺子53と螺合すると共に、その突条6cが軸体31yの突条37,37間に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
【0048】
ピストン7は、例えばPP(ポリプロピレン)、HDPE、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン7は、前端に向けて先細りとされた釣り鐘形状を呈しており、後端面に凹設された凹部7aの内周面には、移動体6に対し軸線方向に所定長だけ移動可能にして係合する環状突部7bが設けられている。
【0049】
このピストン7は、移動体6に外挿され、その環状突部7bが移動体6に軸線方向に係合することで、移動体6に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能(所定の範囲内を移動可能)に装着されている。
【0050】
充填部材1は、内部の充填領域に充填した塗布材Mを使用者による操作に従って前端部から吐出する。この充填部材1は、ABS樹脂で成形され、円筒形状を成し、その先端の開口1aが塗布材Mを出現させるための開口とされている。開口1aは、軸線方向に対し所定角度で傾斜する傾斜角度面で形成されている。なお、この開口1aは、軸線方向の垂直面で形成するフラット形状とする場合や山形形状とする場合もある。
【0051】
また、充填部材1の外周面には、本体筒2の環状凹凸部2bに軸線方向に係合するための環状凸凹部1bが設けられている。また、充填部材1の外周面において環状凸凹部1bより後側の周方向四等配位置には、軸線方向に延びる突条1gが、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして設けられている。
【0052】
この充填部材1の内周面11は、移動螺子筒5における前端部5xの外径よりも僅かに大きくされており、前端部5xの拡開を阻止するように当該前端部5xの外径を規制する。また、充填部材1の内周面において後端から所定長前側に亘る領域には、前端部5xの外径の規制及び規制解除を好適に実行させるためのものとして拡径部12が設けられている。
【0053】
この充填部材1は、その後側から、本体筒2と移動螺子筒5との間に挿入され、その環状凸凹部1bに本体筒2の環状凹凸部2bが軸線方向に係合すると共に、その突条1gに本体筒2のローレット2aが回転方向に係合することで、本体筒2に軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒2と一体化されている。また、充填部材1の後端部内には、ピストン7が密着するようにして挿入される。
【0054】
さらに、塗布材押出容器100では、本体筒2内において充填部材1の後端面と移動螺子筒5の鍔部54との間に、所定弾性力を有するコイルバネ(弾性部)14が同軸で介在するように装着されており、移動螺子筒5が軸線方向後方に付勢されている。これにより、移動螺子筒5が一定量前進して第1の螺合部8の螺合作用が解除されたとき、移動螺子筒5は、第1の螺合部8が螺合復帰するように付勢されることとなる。ちなみに、ここでいう螺合復帰は、第1の螺合部8の雄螺子としての突条56が、雌螺子としての突条41の螺子山の側面に当接するまで戻る段階を意味している(以下、同じ)。
【0055】
コイルバネ14としては、例えば、POMやPP(ポリプロピレン)等の樹脂を利用し一部を切り欠いた円筒形状を射出成形で製造した樹脂バネや、ステンレス製線材をコイル状にしたスプリングを採用することができる。
【0056】
以上のような構成を有し図1に示す初期状態の塗布材押出容器100にあっては、充填領域に充填された塗布材Mが充填部材1の内周面11及びピストン7と密着して装填された状態にある。そして、充填部材1内に密着されたピストン7の前進で充填部材1の開口1aから塗布材Mが押し出される一方、充填部材1内に密着されたピストン7の後退で充填部材1内に減圧作用による吸引力が働き、塗布材Mが充填部材1内に引き戻される。
【0057】
具体的には、まず、使用者によりキャップ13が取り外されて本体筒2と操作筒3とが繰り出し方向である一方向に相対回転されると、回転止筒4の凸部44の側面44bが操作筒3の凸部36の側面36b(図7参照)に当接して所定係合力で回転方向に係止(強固に係合)され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転することから、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、移動螺子筒5の突条56及び回転止筒4の突条41により構成された第1の螺合部8の螺合作用が働き、移動螺子筒5の突条55と充填部材1の突条1gとにより構成された回止め部との協働により、移動螺子筒5が前進する。
【0058】
これと同時に、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、移動螺子筒5の雌螺子53及び移動体6の雄螺子6bにより構成された第2の螺合部9の螺合作用が働き、操作筒3における軸体31yの突条37と移動体6の突条6cとにより構成された回り止め部との協働により、移動体6も前進する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に単独でも前進する。
【0059】
さらに、一方向の相対回転が続けられると、移動体6が前進すると共に移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41の前端から外れ、第1の螺合部8の螺合作用が解除され、移動螺子筒5が前進限に達する。この移動螺子筒5の前進限の状態においては、コイルバネ14の縮小の弾性力により移動螺子筒5が後方側へ付勢されることから、繰戻し方向である他方向へ本体筒2と操作筒3とが相対回転された場合、移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41における回転方向隣の先端に直ちに進入し、第1の螺合部8が直ちに螺合復帰することになる。そして、一方向の相対回転がさらに続けられると、螺合復帰するように第1の螺合部8がコイルバネ14で付勢されながら第2の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6がさらに前進する。
【0060】
ここで、第2の螺合部9の螺合作用のみで移動体6がさらに前進する際、螺合解除された第1の螺合部8がコイルバネ14の付勢力で螺合復帰する方向に付勢されていることから、突条41,56同士の係合及び係合解除が繰り返され(つまり、突条41,56が互いに当接したり離れたりするのが繰り返され)、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与されることとなる。これにより、相対回転1回転当り6回のクリック感が生じ、塗布材Mの押し出しが使用者が感知される。
【0061】
このとき、上述したように、突条41が設けられた軟質部104は突条56が設けられた移動螺子筒5よりも低いD型デュロメータ硬さを有しており、突条41は突条56よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音(音量)が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされている。
【0062】
そして、図2に示すように、移動体6の突条6cが操作筒3における軸体31yの突条37の先端から外れて回止め部が働かなくなり、移動体6が前進限に達する。この移動体6の前進限の状態においては、移動体6の突条6cが操作筒3の突条37から外れているものの第2の螺合部9が螺合されたままであることから、第2の螺合部9及び移動螺子筒5を介して移動体6がコイルバネ14で後方に引っ張られる。そのため、かかる前進限の状態にて、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転された場合、突条6c,37同士が直ちに係合して回止め部が働き、移動体6が直ちに後退することになる。
【0063】
一方、例えば使用後にあって、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転されると、操作筒3及び回転止筒4に小回転力が加わり、回転止筒4の凸部44の側面44aが操作筒3の凸部36の側面36a(図7参照)に当接して所定係合力で周方向に係合され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転することから、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、第1の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が後退する。
【0064】
これと同時に、充填部材1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、第2の螺合部9の螺合作用が働いて移動体6も後退する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に単独でも後退する。
【0065】
さらに、他方向の相対回転が続けられると、移動螺子筒5の鍔部54が回転止筒4の前端面に当接し、第1の螺合部8の螺合作用が停止され、例えば第1の螺合部8による軸力で移動螺子筒5と回転止筒4とが同期回転可能な状態となり、移動螺子筒5が後退限に達する(図1参照)。このように、第1の螺合部8の螺合作用が停止され移動螺子筒5と回転止筒4とが同期回転可能になると、その後においては、操作筒3及び回転止筒4に小回転力が加わってもこれらが相対回転されない。よって、第1の螺合部8の螺合作用の停止後では、停止前と同じ操作回転力(使用者による回転力を意味する。以下同じ)によって本体筒2と操作筒3とを他方向へ相対回転しようとしても、本体筒2と操作筒3とが相対回転されないことになる。
【0066】
しかし、第1の螺合部8の螺合作用が停止されたが、使用者は本体筒2と操作筒3との相対回転を停止せずにそのまま停止前よりも大きい操作回転力を加えることになり、本体筒2と操作筒3とが他方向へさらに相対回転され、操作筒3及び回転止筒4に大回転力が加わると、凸部44が凸部36の側面36aを駆け上がるように摺動して凸部36を乗り越え、操作筒3と回転止筒4とが相対回転(以下、「空回転」ともいう)される。よって、充填部材1、移動螺子筒5及び回転止筒4と、移動体6及び操作筒3とが相対回転し、第1の螺合部8の螺合作用が停止された状態で第2の螺合部9の螺合作用のみが働き、移動体6がさらに後退する。
【0067】
ここで、第2の螺合部9の螺合作用のみで移動体6がさらに後退する際に回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36を乗り越えるとき、クリック感が生じる。すなわち、移動体6がさらに後退するに際して、凸部44,36同士の係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与されることとなる。これにより、相対回転1回転当り8回のクリック感が生じ、ピストン7及び移動体6の後退が感知される。
【0068】
このとき、上述したように、凸部44が設けられた軟質部104は凸部36が設けられた操作筒3よりも低いD型デュロメータ硬さを有しており、凸部44は凸部44よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされている。
【0069】
そして、停止前よりも大きい操作回転力によって他方向の相対回転が続けられると、移動体6の後端が操作筒3の本体部31の底面に達し、移動体6が後退限に達する。この移動体6の後退限の状態では、その後に他方向に相対回転されて過大な回転力が第2の螺合部9に加わっても、前端部5xが拡開されて第2の螺合部9の螺合作用が解除される。
【0070】
以上において、第1の螺合部8及びラチェット機構101のそれぞれがクリック手段を構成し、突条41及び凸部44のそれぞれが一方のクリック部を構成し、突条56及び凸部36のそれぞれが他方のクリック部を構成する。
【0071】
以上、本実施形態では、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されて第1の螺合部8の螺子山同士が外れ、さらに相対回転が続けられて第2の螺合部9のみで移動体6が前進するとき、第1の螺合部8を構成する突条41,56が係合及び係合解除を繰り返し、使用者にクリック感が付与される。このとき、突条41が突条56よりも軟らかくされているため、かかるクリック感のクリック音を小さくしつつ(緩和しつつ)、該クリック音を重厚なものとすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されて第1の螺合部8の螺合作用が停止し、さらに他方向の相対回転が続けられて第2の螺合部9のみで移動体6が後退するとき、回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36を乗り越え、使用者にクリック感が付与される。このとき、凸部44は凸部36よりも軟らかくされているため、かかるクリック感のクリック音を小さくしつつ(緩和しつつ)、該クリック音を重厚なものとすることができる。
【0073】
従って、本実施形態によれば、クリック音を高級感溢れる付加価値の高いものにすることができ、高級感を有するクリック感を生じさせることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の回転止筒4では、上述したように、軟質部104よりも硬い硬質部105が軟質部104の小径部104xに外挿されて固定されている。そして、この硬質部105の環状凸部106が本体筒2の円弧状凸部2cに軸線方向に係合している。これにより、例えば、環状凸部106が軟らかいために環状凸部106と円弧状凸部2cとの係合が容易に解除されてしまうのを抑制することができ、本体筒2に対して回転止筒4を軸線方向に確実に係合させることができる。その結果、通常は用いられないような軟らかい軟質部104をも、塗布材押出容器100内に好適に備えて該塗布材押出容器100を成立させることができる。
【0075】
なお、このように硬質部105が軟質部104の小径部104xに外挿されていると、軟質部104の柔軟性で小径部104xが拡径して該小径部104xの内面の雌螺子53が拡径してしまうのを抑制することができる。よって、軟質部104に雌螺子53が形成される場合でも、第2の螺合部9の螺合作用を充分に発揮させることが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、上述したように、軟質部104の柔軟性に起因した弾性力(可撓性)によって凸部44が径方向内側に付勢され、凸部44が凸部36に係合している。よって、凸部44に径方向の弾性力を付与するためのスリット(切欠)やアーム構造を回転止筒4の軟質部104の外壁に形成することを不要にできる。すなわち、回転止筒4にスリットを形成する従来のラチェット構造を採用しなくとも、凸部44と凸部36との係合及び係合解除を確実に実現することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上述したように、軟質部104のD型デュロメータ硬さが、好ましいとして63よりも小さくされている。これにより、クリック感のクリック音を小さくしつつ該クリック音を重厚なものとするという上記作用効果を好適に発揮することが可能となる。
【0078】
ここで、本実施形態の上述した塗布材押出容器100に関し、回転止筒4の軟質部104のD型デュロメータ硬さを変化させたときのクリック感の評価を行った。軟質部104の材料としては、D型デュロメータ硬さが異なる複数の熱可塑性エラストマを用いており、ここでは、Hytrel(Dupon社製:登録商標)を用いている。その結果を下表1に示す。なお、下表1に示す材料の欄においては、そのグレード番号を示している。また、評価結果の欄において、「A」は、クリック音を小さくしつつ該クリック音を重厚なものにし、クリック感に高級感が充分に得られたことを意味し、「B」は、上記「A」に比べて多少クリック音が大きいもののクリック感に高級感が得られたことを意味する。一方、「C」は、クリック感に高級感が得られなかったことを意味している。
【表1】

【0079】
上表1に示すように、タイプDデュロメータによるデュロメータ硬さが55以下であると、高級感を有するクリック感を生じさせるという上記作用効果が顕著であることが確認できる。また、軟質部104のD型デュロメータ硬さが63以上であると、上記作用効果が充分に発揮されず、クリック感に高級感が充分得られないことが確認できる。
【0080】
ちなみに、塗布材押出容器100の部材は、通常、ABS樹脂やPOM等で成形される。よって、軟質部104のD型デュロメータ硬さが63以上以外のものであると、軟質部104と他部材とのD型デュロメータ硬さの差が充分となり、高級感を有するクリック感を生じる一方、軟質部104のD型デュロメータ硬さが63以上であると、軟質部104と他部材とのD型デュロメータ硬さの差が充分でなく、クリック感に充分な高級感が得られないともいえる。
【0081】
また、本実施形態では、上述したように、操作筒3の環状溝123にOリング102が設けられ、操作筒3の本体部31の外周面がOリング102を介して本体筒2の内周面に当接されている。よって、このOリング102は、本体筒2と操作筒3との相対回転に程好い摺動抵抗(回転抵抗)を付与することができるだけでなく、突条41,56及び凸部36,44で生じたクリック音が本体筒2と操作筒3との間から外部に出力されるのを抑制すると共に、本体筒2及び操作筒3に伝播したクリック音による振動の振幅を抑制することができる。よって、クリック音を一層小さくことが可能となる。
【0082】
なお、Oリング102にあっては、クリック音を小さくする上記効果に鑑みると、本体筒2と操作筒3との間に設けられ、生じたクリック音が本体筒2と操作筒3との間から外部に出力されるのを抑制すると共に、本体筒2及び操作筒3に伝播したクリック音による振動の振幅を抑制するクリック音抑制部材といえる。
【0083】
また、本実施形態では、軟質部104に突条41及び凸部44が設けられており、柔軟性を有する突条41及び凸部44が軟質部104として一体に構成されている。つまり、これら突条41及び凸部44を別部材にすることが不要にできる。
【0084】
ちなみに、本実施形態では、次の効果も奏される。すなわち、上述したように、第1の螺合部8のリードが第2の螺合部9のリードよりも大きく設定されていることから、次の作用効果を奏する。すなわち、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されると、使用時まで塗布材Mが素早く押し出されてその後はゆっくり押し出されるため、塗布材Mの出し過ぎを防止することができる。また、他方向に相対回転されると、塗布材Mが一定量素早く後退してその後はゆっくり後退するため、塗布材Mの戻し過ぎを防止することができる。
【0085】
また、本実施形態のような回転止筒4を採用することで、第1の螺合部8による移動体6と移動螺子筒5との一定量前進(又は後退)を、1〜2mm程度やそれ以下の微量なリードに設定することも可能となる。そして、一定量前進(又は後退)後の第2の螺合部9のみによる前進(又は後退)においては、0.5mm程度のリードで移動体6をゆっくり前進(又は後退)することができ、塗布材Mが非常に柔らかいものでも当該塗布材Mを崩さずに使い続けることが可能となる。
【0086】
なお、充填部材1への塗布材Mの装填方法は、溶融した塗布材Mを充填部材1の先端側から充填したり、塗布材Mを充填部材1の後端側から充填した後に当該充填部材1を組み付けたりすることが可能である。また、塗布材Mが金型や押出成形等で成形した棒状物の場合、塗布材Mを組立後に装填することも可能となる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、軟質部104に熱可塑性エラストマの材料を用いているが、比較的柔らかいLDPE(低密度ポリエチレン)やLLDPEの熱可塑性樹脂や、NBR(ニトリルゴム)やSi(シリコン)ゴム等の熱硬化性の合成ゴム材料を用いてもよい。また、上記実施形態では、軟質部104の全体が軟らかく構成されているが、突条41及び凸部44が少なくとも軟らかくされていればよい。
【0089】
また、上記実施形態では、クリック手段として第1の螺合部8とラチェット機構101を備えているが、これらの少なくとも一方のみを備えていてもよい。また、第1の螺合部8やラチェット機構101に加えて若しくは代えて、他のクリック手段を備えていてもよい。
【0090】
例えば、軸線方向に突出し且つ周方向に沿って山型の一方のクリック部と、軸線方向に突出し且つ周方向に沿って山型の他方のクリック部とを有し、これら一方及び他方のクリック部が周方向に係合するクリック手段を備えていてもよい。要は、クリック手段として、本体筒と操作筒との相対回転に従う移動体の移動に伴ってクリック感を生じさせるものを備えていればよい。
【0091】
なお、回転止筒4が硬質部105を有していない場合もあり、この場合、環状凸部106が軟質部104に設けられ、環状凸部106と円弧状凸部2cとが軸線方向に確実に係合できればよい。
【0092】
また、上記実施形態では、本体筒2と操作筒3とが一方向/他方向に相対回転されると、第1の螺合部8の螺合作用が働くと同時に第2の螺合部9の螺合作用が働くように構成したが、第1の螺合部8の螺合作用のみが働いた後、第2の螺合部8の螺合作用のみが働いように構成してもよい。また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。
【0093】
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…充填部材(容器前部)、2…本体筒(容器前部)、3…操作筒(容器後部)、4…回転止筒、5…移動螺子筒、6…移動体、6b…雄螺子(第2の螺合部の雄螺子)、8…第1の螺合部(クリック手段)、9…第2の螺合部、14…コイルバネ(弾性部)、36…凸部(クリック歯,他方のクリック部)、41…突条(第1の螺合部の雌螺子,一方のクリック部)、44…凸部(クリック歯,一方のクリック部)、53…雌螺子(第2の螺合部の雌螺子)、56…突条(第1の螺合部の雄螺子,他方のクリック部)、100…塗布材押出容器、101…ラチェット機構(クリック手段)、104…軟質部、105…硬質部、M…塗布材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に移動体及び螺合部を具備し、容器前部と容器後部とが相対回転されると、前記螺合部の螺合作用が働き前記移動体が前進又は後退する塗布材押出容器であって、
一方のクリック部及び他方のクリック部を有し、前記相対回転に従う前記移動体の移動に伴い前記一方のクリック部と前記他方のクリック部とが係合及び係合解除を繰り返すことでクリック感を生じさせるクリック手段を備え、
前記一方のクリック部は、前記他方のクリック部よりも軟らかいことを特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記クリック手段は、
前記一方のクリック部を構成する前記螺合部の雄螺子と、
前記他方のクリック部を構成する前記螺合部の雌螺子と、
前記螺合作用が開放された前記螺合部が螺合復帰するように前記螺合部を付勢する弾性部と、を含むことを特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記クリック手段は、
前記一方のクリック部を構成する第1のクリック歯と、
前記第1のクリック歯と回転方向に係合し、前記他方のクリック部を構成する第2のクリック歯と、を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
回転止筒をさらに備え、
前記回転止筒は、
前記一方のクリック部が設けられた軟質部と、
前記軟質部に外挿されて固定されると共に前記容器に係合し、前記軟質部よりも硬い硬質部と、を含んでいることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項5】
前記一方のクリック部は、タイプDデュロメータによるデュロメータ硬さが63よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の塗布材押出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−115274(P2011−115274A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273639(P2009−273639)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)