説明

塗布機能付化粧料容器

【課題】粘性化粧料が乾燥しにくく、しかも塗布面を衛生的に保つことのできる、優れた塗布機能付化粧料容器を提供する。
【解決手段】粘性化粧料を収納した略筒状の化粧料収納部21の一端側に、略有天筒状の弾性体からなる化粧料塗布部22が取り付けられているとともに、上記化粧料収納部21の他端側に、収納された粘性化粧料に押圧動作を加えて液体塗布部側に押し出すための回動体23が取り付けられた化粧料容器であって、上記化粧料塗布部22の天面22bに、左右方向に延びるスリット24が形成されており、上記回動体23による押出動作によって、上記スリット24から粘性化粧料が押し出され、塗布に供されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップグロスやネイルカラー等の粘性化粧料を収納する容器であって、その容器を手に持って直接塗布に供することのできる塗布機能付化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リップグロスやネイルカラー等の粘性化粧料は、瓶タイプの容器内に収納され、化粧筆等を用いて唇等に塗布することが行われてきたが、最近、略棒状の容器内に粘性化粧料を収容し、この容器を手に持って、その先端から少量ずつ中身である粘性化粧料を押し出しながら、その先端面を唇に当てて塗布することのできる塗布機能付化粧料容器が、多く出回っている。
【0003】
このような塗布機能付化粧料容器としては、例えば、図7に示すものをあげることができる(特許文献1参照)。この容器は、筒状の容器本体1内に、粘性化粧料の収納部1aが設けられており、その傾斜した先端壁2に、収納部1a内の粘性化粧料を吐出するための分配口3が、複数個設けられている。そして、上記収納部1aの下側には、容器本体1の底部側に取り付けられた回動体4を回動させることによって、繰り出し棒5を介して所定ピッチずつ上昇するよう設定された中皿6が装着されており、この中皿6の上昇に伴い、収納部1a内の粘性化粧料が、少量ずつ分配口3から押し出されるようになっている。
【0004】
したがって、この容器を手に持ち、上記回動体4を回動させて先端壁2の分配口3から粘性化粧料(例えばリップグロス)を押し出し、その傾斜した先端壁2の上面を利用して唇に塗布すれば、簡単に化粧を施すことができるという利点を有する。
【0005】
しかし、上記容器は、唇等に押し当てる先端壁2が、硬いプラスチックで形成されており、塗布時の感触が好ましくないことから、例えば、図8に示すように、その先端部に、連続気孔を有する樹脂多孔質体からなる塗布芯10を取り付けるようにしたものが提案 されている(特許文献2参照)。11は、粘性化粧料を導入させるための貫通孔である。
【特許文献1】特開2005−168745号公報
【特許文献2】特開2006−141979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たしかに、上記特許文献2の塗布芯10によれば、特許文献1のものに比べて、塗布時の感触がある程度向上する。しかし、上記特許文献1、2のいずれのタイプも、容器の先端壁2に設けられた分配口3や塗布芯10の貫通孔11(+連続気孔)から漸次化粧料に含まれる溶剤や水分が揮散するため、最初に押し出されてくる粘性化粧料の伸びが悪く、化粧しにくいという問題がある。
【0007】
また、上記分配口3や貫通孔11の開口が比較的大きく、空気中の塵や肌に付着していた雑菌等が開口内に取り込まれて不潔になりやすいため、肌に当てる塗布面を清浄に保つことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、粘性化粧料が乾燥しにくく、しかも塗布面を衛生的に保つことのできる、優れた塗布機能付化粧料容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、粘性化粧料を収納した略筒状の化粧料収納部の一端側に、略有天筒状の弾性体からなる化粧料塗布部が取り付けられているとともに、上記化粧料収納部の他端側に、収納された粘性化粧料に押圧動作を加えて液体塗布部側に押し出す化粧料押出部が取り付けられた化粧料容器であって、上記化粧料塗布部の天面に、左右方向に延びるスリットが形成されており、上記化粧料押出部の押出動作によって、上記スリットから粘性化粧料が押し出され、塗布に供されるようになっている塗布機能付化粧料容器を第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記化粧料塗布部の天面が、水平面に対し15〜60°傾斜した傾斜面になっている塗布機能付化粧料容器を第2の要旨とし、さらに、上記化粧料塗布部の天面が、その縦断面の曲率半径Rが5mm以上の円弧状をなす凹面に設定されている塗布機能付化粧料容器を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、本発明の塗布機能付化粧料容器は、収納部に収納された粘性化粧料を押し出して塗布するための化粧料塗布部として、天面に、左右方向に延びるスリットが形成された略有天筒状の弾性体が用いられている。したがって、この容器によれば、粘着化粧料の塗布面が弾性体で形成されており、塗布時の感触がよいだけでなく、上記スリットの隙間が開閉して、その都度粘性化粧料が押し出されるようになっているため、中身の粘性化粧料が殆ど空気に触れず、粘性化粧料から溶剤や水分が揮散しにくいという利点を有する。また、塗布作業後も、上記スリットの隙間が閉じるため、スリットの内側を、比較的清浄に保つことができるという利点も有する。
【0012】
そして、本発明の塗布機能付化粧料容器のなかでも、特に、上記化粧料塗布部の天面を、化粧料収納部の軸方向に対し15〜60°傾斜させたもの、あるいは、さらに上記天面を、その縦断面の曲率半径Rが5mm以上の円弧状をなす凹面に設定したものは、上記化粧料塗布部の天面を肌や唇に当てて化粧料を塗布する作業がしやすく、しかも、その際、スリットの隙間が開きにくく、余分な化粧料が垂れたり、スリット開口から塵や雑菌が入りにくく、より衛生的に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0014】
図1は、本発明の最良の実施形態の一例を示す斜視図、図2(a)は、そのA−A′断面図である。これらの図において、20は円筒状の容器本体で、内部が、粘性化粧料を収納するための化粧料収納部21に形成されている。そして、この化粧料収納部21の上端部には、略有天筒状に形成されたシリコーンゴム弾性体(厚み1mm)からなる化粧料塗布部22が取り付けられており、化粧料収納部21の下側には、上記化粧料収納部21の下面に当接する中皿と、この中皿を上昇させる機構とが内蔵されており(これらは図示せず)、容器本体の下端に設けられた回動体23を、矢印で示すように回動させることにより、上記内蔵された機構を介して、中皿を所定ピッチずつ上昇させて、化粧料収納部21内の粘性化粧料を、化粧料塗布部22側に押し出すことができるようになっている。したがって、上記中皿、その上昇機構および回動体23によって、本発明の「化粧料押出部」が構成されている。
【0015】
上記化粧料塗布部22をより詳しく説明すると、その周壁部22aは、上にいくほどやや小径に縮径され、全体として緩やかな曲面になっている。そして、その天面22bは、水平面に対する角度θが40°となる傾斜角で傾斜しており、その傾斜面は、天面22bの縦断面の曲率半径Rが18mmとなる凹面になっている。
【0016】
また、上記天面22bには、図2(b)で示すように、その中央に、左右方向に延びる直線状のスリット24が形成されている。このスリット24の隙間幅Dは0.02mmで、実際には殆ど閉じた状態になっている。そして、上記スリット24の長さLは1.2mmである。
【0017】
そして、上記化粧料塗布部22の下端部の外周縁にはフランジ22cが形成されており、このフランジ22cの下面を容器本体20の上端縁に当接し、スリーブ25で締め込むことにより、化粧料塗布部22を、収納部21の上側に固定している。すなわち、スリーブ25の内周面に形成された環状溝25aと、容器本体20の外周面に形成された環状突起20aの係合によって、両者が化粧料塗布部22のフランジ22cを締め込んで固定するのである。なお、40は、上記化粧料塗布部22を保護するために、着脱自在に取り付けられるキャップである。
【0018】
したがって、この塗布機能付化粧料容器において、化粧料収納部21と化粧料塗布部22内に粘性化粧料を充填した状態で、容器本体20の下端に設けられた回動体23を回動させることにより、上記化粧料塗布部22のスリット24から少量ずつ粘性化粧料を押し出して、上記化粧料塗布部22の天面22bを利用して、唇等に粘性化粧料を塗布することができる。
【0019】
このとき、スリット24は、ごく細い隙間であることから、粘性化粧料押出時のみ開き、使用後は閉じて、スリット24内の気密性が保たれるため、内側の粘性化粧料に含まれる水分や溶剤が揮散しにくい構造となっている。したがって、常に、粘性化粧料の粘度が良好に保たれ、次回の最初の塗布時に、押し出された粘性化粧料が塗布しにくくなるようなことがない。また、スリット24の隙間から塵や雑菌が入りにくいため、衛生的である。
【0020】
なお、上記の例において、化粧料塗布部22の材質は、シリコーンゴムに限らず、弾性変形しやすく、しかも繰り返し変形を与えても形状を維持するものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、ニトリルゴム(NBA)、エチレン−プロピレン−共重合ゴム(EPR)、ブチルゴム(IIR)、ポリウレタンゴム、ポリエチレンゴム、ポリピロピレンゴム等があげられる。ただし、耐薬品性、形状付与性等の点から、上記シリコーンゴムを用いることが好適である。そして、その硬さ(ゴム〔ショア〕硬度)は、塗布作業性や肌(唇を含む)への感触の良好性の点から、60〜90のものを用いることが好適である。
【0021】
また、その厚みは、上記の例に限らず、0.8〜2mmに設定することが好適である。すなわち、厚みが0.8mm未満では強度が弱くなるとともに、スリット24の開口が伸びやすくなるのであり、逆に、2mmを超えると、塗布作業時に、肌への追従感に乏しくなり、感触が悪くなるおそれがあるからである。
【0022】
そして、上記の例において、化粧料塗布部22に形成するスリット24の幅Dは、この部分の材質や厚みにもよるが、通常、0.2mm以下に設定することが好適である。すなわち、スリットは、閉じた状態では隙間がないこと(D=0mmの状態)が望ましいのであり、逆に、0.2mmを超えると、液垂れしたり、内側の粘性化粧料の水分や溶剤が揮散しやすくなって好ましくない。また、スリット24の長さは、特に限定するものではないが、天面22bの周縁まで到達してしまうと、押出動作を与えないときであってもスリット24が開くおそれがあり、好ましくない。
【0023】
なお、上記の例では、上記スリット24の形状を、左右に伸びる直線状にしたが、その形状は、特に限定するものではなく、図3(a)、(b)に示すように、浅いU字状になっていたり,図3(c)、(d)に示すように、浅いVの字状になっていてもよい。これらの形状のものは、横に一直線状のものに比べて、スリット24の隙間の開閉が適正になされるため、好適である。ただし、化粧料塗布部22の天面22bが傾斜面になっている場合、その傾斜方向を横切る形でスリット24が形成されていることが望ましい。
【0024】
そして、上記スリット24は、例えば、図4に示すように、上下に複数本(この図では2本)設けるようにしても差し支えない。ただし、粘性化粧料の押出動作を繰り返しても、上記スリット24、24′の隙間の開閉が損なわれないよう、スリット24、24′の間隔を充分に確保しておく必要がある。
【0025】
また、上記の例では、化粧料塗布部22の天面22bを、水平面に対し傾斜面とし、その傾斜面を、凹んだ湾曲面としたが、その傾斜角θは、上記の例に限らず、15〜60°の間で適宜に設定することが好ましい。また、上記天面22bの、縦断面の曲率半径Rも、上記の例に限るものではないが、塗布作業性、スリット24の開きにくさの点から、5mm以上に設定することが好適である。
【0026】
ただし、上記天面22bを、必ずしも凹状の湾曲面にする必要はなく、例えば、図5(a)に示すように、平面的な傾斜面にしたり、場合によっては、図5(b)に示すように、凸状の湾曲面にすることもできる。
【0027】
また、化粧料塗布部22の全体形状も、上記の例に限るものではなく、天面22bを傾斜面にする必要もない。例えば、図6(a)に示すように、天面を水平にして、前後方向に潰した形状にしたものや、図6(b)に示すように、全体を円錐台形状にして、天面を小円形にしたものを用いることができる。
【0028】
さらに、容器本体20の下部に設けられる押出操作部の構成は、従来公知のどのようなものであってもよく、例えば、図7に示すような、おすねじとめすねじの組み合わせの他、ラチェット機構を利用したもの、また、回動部23の回転によらず、ノック式を利用したものであってもよい。
【0029】
そして、容器本体20の構成も、その内側に略筒状の化粧料収納部21を備えたものであれば、特に限定するものではなく、例えば、周囲に装飾のための凹凸が付与されていたりしてもよい。また、中身の粘性化粧料の種類や色を変えたものを複数本組み合わせてセットにしたものであってもよい。
【0030】
なお、これらの例において、化粧料収納部21と化粧料塗布部22とは、図1に示すように、完全に連通した構成になっていてもよいが、液漏れ等のトラブルが生じないように、例えば、図1において鎖線で示すように、化粧料収納部21に、中心に連通孔を有する上皿30を取り付け、この上皿30の連通孔と、化粧料塗布部22のスリット24とを連通する連通路31を設けて、粘性化粧料が、連通路31を通って押し出されるようにしてもよい。
【0031】
また、本発明の塗布機能付化粧料容器に収納する粘性化粧料としては、特に限定するものではなく、リップグロス、リップカラー、アイライナー、美容液、ネイルカラー、ネイニリムーバー、ヘアカラー、マッサージオイル等、各種の液状化粧料があげられる。特に、液垂れ防止等の点から、全く粘度がないものではなく、ある程度、粘度のあるものが好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のA−A′断面図、(b)はそのB矢視図である。
【図3】(a)〜(d)は、いずれも上記実施例におけるスリットの変形例を示す説明図である。
【図4】上記実施例におけるスリットの他の変形例を示す説明図である。
【図5】(a)、(b)は、ともに上記実施例における化粧料塗布部の変形例を示す説明図である。
【図6】(a)、(b)は、ともに上記実施例における化粧料塗布部の他の変形例を示す説明図である。
【図7】従来の塗布機能付化粧料容器の一例を示す説明図である。
【図8】従来の塗布機能付化粧料容器の他の例を示す部分的な説明図である。
【符号の説明】
【0033】
21 化粧料収納部
22 化粧料塗布部
22b 天面
23 回動体
24 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性化粧料を収納した略筒状の化粧料収納部の一端側に、略有天筒状の弾性体からなる化粧料塗布部が取り付けられているとともに、上記化粧料収納部の他端側に、収納された粘性化粧料に押圧動作を加えて液体塗布部側に押し出す化粧料押出部が取り付けられた化粧料容器であって、上記化粧料塗布部の天面に、左右方向に延びるスリットが形成されており、上記化粧料押出部の押出動作によって、上記スリットから粘性化粧料が押し出され、塗布に供されるようになっていることを特徴とする塗布機能付化粧料容器。
【請求項2】
上記化粧料塗布部の天面が、水平面に対し15〜60°傾斜した傾斜面になっている請求項1記載の塗布機能付化粧料容器。
【請求項3】
上記化粧料塗布部の天面が、その縦断面の曲率半径Rが5mm以上の円弧状をなす凹面に設定されている請求項2記載の塗布機能付化粧料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−212214(P2008−212214A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50080(P2007−50080)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)