説明

塗布用ライン

【課題】 塗布用ラインの設置スペース及び構成設備を削減することを目的とする。
【解決手段】 ベース材料を塗布手段まで搬送する管路を、複数の管路に分岐し、前記複数の管路のいずれかに、添加剤投入手段及び混合手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の床裏・ホイールハウス内側等の鋼板を保護するために塗布するアンダーボディーコート、鋼板接合部のシール材、或いは、自動車下部が石等により傷つくことを防ぐためのストーンガードコート材等の材料を塗布するためのラインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車には、その用途や目的に応じて複数の種類の材料が選択して塗布されている。実際に塗布用ラインでは、各材料は、5〜10tの容量の受け入れタンクに収容され、各受け入れタンクから100m弱の長さの配管等及び塗布用ガンを経由して塗布されることになる。
このように材料毎に塗布用ガンまでの搬送経路を設けることは工場の敷地を無駄に使用することになり問題があった。また、例えば、特許文献1において開示されるように、複数の種類の材料の共通化を図っても、発泡剤を含有する材料と、含有しない材料とでは、そもそも別の機能を有するため困難であった。
【0003】
【特許文献1】特開2004−18537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、塗布用ラインの設置スペース及び構成設備を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、ベース材料に、別の機能を付与するための添加剤を、管路途中で添加するとともに混合するようにすれば、受け入れタンクの数を減らし、且つ、ラインを構成する総配管長を短くすることができるという知見に基づき、下記の通り解決手段を見出した。
即ち、本発明の塗布用ラインは、請求項1に記載の通り、ベース材料を塗布手段まで搬送する管路を、複数の管路に分岐し、前記複数の管路のいずれかに、添加剤投入手段及び混合手段を設けたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の塗布用ラインにおいて、前記管路は、前記塗布手段側において分岐したことを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の塗布用ラインにおいて、前記混合手段と前記塗布手段との間に中継タンクを設けたことを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のベース材料の混合方法において、前記ベース材料は、熱可塑性重合体粒子、可塑剤、無機充填材及び接着付与剤の少なくとも何れかを含むことを特徴とする。
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のベース材料の混合方法において、前記添加剤は、有機発泡剤、未膨張バルーン及び着色剤の少なくとも何れかを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塗布用ラインによれば、工場において、塗布される材料を搬送するための配管長を短くするとともに、その設置スペースを削減することができる。また、受け入れタンクの数を減らし、その設置スペースを減らすことができる。更に、新しく塗布用ラインを設ける場合には、工期を短縮し、工費を削減することができる。
また、本発明によれば、塗料の種類を減らすことができるので、製品管理にかかる負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、被着体に塗布される2種以上の材料の搬送スペースを減らすことを主たる目的とするものであり、ベース材料及び添加剤は、被着体の使用目的や用途に応じて適宜選択することができる。これにより、複数の種類の材料を、ベース材料単独及びベース材料に添加剤を加えることにより得ることができる。
ベース材料は、熱可塑性重合体粒子、可塑剤、無機充填材及び接着付与剤の少なくとも何れかを含むことが好ましい。
前記熱可塑性重合体粒子としては、塩化ビニル系重合体やアクリル系重合体粒子を使用することができる。
前記可塑剤としては、フタル酸エステル等の1次可塑剤や、或いは、これにアジピン酸系、トリメリト酸系等の2次可塑剤を少量添加するようにしてもよいし、また、互いに混合してもよい。
前記無機質充填剤としては、表面処理炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク等を使用することができる。
前記接着付与剤としては、ポリアミド樹脂、ブロックドイソシアネート樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができ、これらは、必要に応じて単独又は組み合わせて使用することができる。
【0008】
また、添加剤としては、前記ベース材料に機能を付加したり、或いは、粘度調整が可能な材料を選択することができる。
ベース材料に機能を付加する場合には、例えば、有機発泡剤、未膨張バルーン又は着色剤を可塑剤中に分散させたゾルを使用することができる。
また、粘度調製を行う場合には、上記ベース材料と同じ材料で粘度を異なるように調製したものを使用することができる。具体的には、塩化ビニル樹脂(又はアクリル樹脂)若しくは炭酸カルシウムを可塑剤中に分散させたゾルを使用することができる。
尚、添加剤に使用する可塑剤は、ベース材料に使用する可塑剤と同じものを使用することが好ましいが、DINP、DOP等のフタル酸エステル等の一次可塑剤に加えて、ポリエステル系やエポキシ樹脂、スルフォン酸系、トリメリト酸エステル系等の二次可塑剤を使用するようにしてもよい。
【0009】
上記説明では、広い概念での被着体について説明してきたが、次に、自動車のボディーを被着体とする場合について説明する。
自動車のボディの場合に、塗布される材料としては、以下に具体的に説明する、アンダーボディーコート材(以下、「UBC」とする。)、発泡UBC材、シール材及びストーンガードコート材がある。
【0010】
(薄膜高物性UBC材)
膜厚300〜500μm、粘度30〜100Pa・S程度で、主に自動車の床裏等の自動車下部やホイールハウス等に石や砂等から保護するために塗布されるもので、例えば、特許文献1に開示される材料により構成される。
【0011】
(発泡UBC材)
膜厚1000〜3000μm、粘度30〜100Pa・S程度で、主にホイールハウス等に石、砂、水等が衝突する際に生じる騒音を防ぐために塗布されるもので、例えば、特許文献1に開示される材料やPVC系の材料に、発泡剤や未膨張バルーンを添加して構成される。
【0012】
(内外板シール材)
膜厚1000〜2000μm、粘度50〜100Pa・S程度で、主にエンジンルーム、フード、ドア、トランクルーム等の鋼板の接合部に塗布されるもので、例えば、特許文献1に開示されるPVC系の材料により構成される。
【0013】
(ストーンガードコート材)
膜厚50〜350μm、粘度3〜50Pa・S程度で、主にドア下部、サイドシル部に塗布されるもので、例えば、特許文献1に開示されるPVC系の材料により構成される。
【0014】
上記薄膜高物性UBC材を構成する材料をベース材料として、発泡UBC材を作成するには、ベース材料として特許文献1に記載の材料を使用し、発泡材を含有する添加剤を添加して混合する。
ベース材料への添加剤の混合条件は、ベース材料又はベース材料に添加剤を加えた材料の使用目的に応じて適宜決めることができるが、混合比について、一例を挙げると、ベース材料の全重量に対して1〜10重量%程度の割合で混合する。
この場合、添加剤の粘度は、20±15Pa・Sとすることが好ましい。5Pa・S未満となると、添加剤の粘度が低すぎてベース材料の粘度の差が大きくなり、均一に混合することが難しく、35Pa・Sを超えると、粘度調整が困難となるからである。
また、未膨張バルーン(有機発泡剤)と可塑剤との混合比率は、未膨張バルーン(有機発泡剤):可塑剤=3〜5:4〜6とすることが好ましい。可塑剤の比率が極端に高い場合、添加剤の粘度が低下し、ベース材料との混合性に問題が生じるからである。また、逆に未膨張バルーン(有機発泡剤)の比率が高い場合には、単位当たりの発泡剤濃度が高くなり、多段階的に発泡率を調整しづらくなるという問題がある。従って、ベース材料との混合性と発泡UBC材へ展開する際の発泡率の調整のし易さから、前記比率は4:5とすることが更に好ましい。
尚、ここでいう未膨張バルーンとしては、膨張剤である低沸点炭化水素(コア)をマイクロカプセル化した熱膨張性微少球をいい、松本油脂製薬(株)のマツモトマイクロスフェアーや積水化学工業(株)のADBANCELL等を使用することができる。また、有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)やオキシビスベンゼンスホニルヒドラジド(OBSH)に代表される物質をいい、永和化学工業(株)のビニホール、ネオセルボン、スパンセル、大塚化学のユニフォーム等を使用することができる。
【0015】
発泡UBC材の発泡倍率については、添加剤の添加比率を適宜変化させることにより、多段階的に変更することができる。例えば、130〜160℃の温度下で30分焼き付けを行い100〜300%で発泡させるためには、ベース材料100重量部に対して、添加剤の添加量を0.5〜4.0重量部とすることが好ましく、特に2.0〜3.0重量部とすることが好ましい。
【0016】
また、塗布用ラインにおいて、薄膜高物性UBC材とストーンガードコート材とを塗布する場合には、特許文献1に代表される薄膜高物性UBCをベース材料とし、可塑剤を主成分とし、その中に、塩化ビニル樹脂若しくはアクリル樹脂又は炭酸カルシウム等を分散させた添加剤を使用すればよい。
【0017】
また、薄膜高物性UBC材と内外板シール材とを塗布する場合には、粘度50〜100Pa・Sの薄膜高物性UBC材を構成する材料をベース材とし、塩化ビニル樹脂若しくはアクリル樹脂又は炭酸カルシウム等を可塑剤中に分散させて得られた可塑剤を使用すればよい。
【0018】
また、内外板シール材と発泡UBC材とを塗布する場合には、粘度50〜100Pa・Sの薄膜高物性UBC材を構成する材料をベース材料兼内外板シール材とし、添加剤としては、未膨張バルーン又は有機発泡剤を可塑剤中に分散させた添加剤を使用すればよい。
【0019】
次に、本発明における管路の分岐する位置についてであるが、塗布手段までの如何なる場所において分岐しても結果として管路長を短くすることができるが、各塗布手段に近い側で分岐すればより管路長を短くすることができるので好ましい。
【0020】
また、添加剤投入手段についてであるが、管路内を搬送される材料に対して材料を投入することができるものであれば特に制限はなく、管路に設けた開口やホッパー等の公知の投入手段を使用することができる。
【0021】
また、混合手段についても、ベース材料に添加剤を加え、混合することができるものであれば特に制限はない。
尚、高物性UBC材を構成する材料に、発泡剤又は未膨張バルーンを分散させた添加剤を添加し、撹拌して発泡UBC材とする場合には、単純な添加撹拌ではエアーを巻き込んでしまい、焼き付け時に膨れ等の外観異常が生じる。つまり、中継タンクへ直接添加剤成分を投入したところでの撹拌では、中継タンク内では随時に供給と排出が起こり、均一な混合物を得ることはできず、発泡UBC材焼き付け時の異常発泡となる。別途に、撹拌用タンクを設置したとして均一な混合物を得られても、エアーの巻き込みにより焼き付け時の異常発泡が生じる。このため、混合手段を設ける位置については、分岐された管路の塗布手段側であって、混合された材料を収容する中継タンクの上流側に設けることが好ましい。
また、混合時には、エアーを巻き込まない方式のものを選択することが好ましく、例えば、スタッティックミキサー((株)ノリタケカンパニー)を使用することができる。これにより、エアーをかむことなく、均一な混合物とすることができる。このスタティックミキサーへの電気制御等による供給量調整によって添加剤の添加量を調整し、それにより多段階的に発泡率を変えた発泡UBC材を調整することが可能となる。
【0022】
また、塗布用手段についても、被着体に材料が塗布することができるものであれば特に制限はなく、塗布用ガン等の公知のものを使用することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の一実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例の塗布用ラインは、図1に示すように、容積10tの一次受け入れタンク1を備え、この中に、製品コンテナ2からベース材料が収容される。このベース材料は、ポンプ3により、長さ100m、内径75mmの管路4を経由して容積1tの中継タンク5に圧送される。この先、管路4は、長さ35m、内径75mmの発泡UBC材用の管路4aと、長さ35m、内径75mmの高物性UBC材用の管路4bの2本に分岐される。発泡UBC材用の管路4aには、分岐点5の下流側において、添加剤投入手段であるホッパー6が設けられ、混合手段であるスタティックミキサー7により混合された後、容積1tの中継タンク8に収容され、ここから塗布用ガン9により塗布される。一方、高物性UBC材用の管路4bは、塗布用ガン10に接続される。
【0024】
次に、比較のために従来の塗布用ラインを図2に示す。
図2の塗布用ラインでは、発泡UBC材及び高物性UBC材を構成する材料が、それぞれが容積10tの受け入れタンク1,1に収容される。両材料は、それぞれ、受け入れタンク1,1から長さ100m、内径75mmの管路4,4、容積1tの中継タンク8,8及び長さ20m、内径75mmの管路11,11を経由して塗布用ガンに接続される。
【0025】
実施例と従来例の塗布用ラインについて、管路長及び収容タンク数について比較すると次のようになる。
実施例の場合、総管路長は170mであり、容積10tの一次受け入れタンクは1個であり、容積1tの中継タンクは2個である。
これに対して、従来例の場合、総管路長は、240mであり、容積10tの一次受け入れタンクは2個であり、容積1tの中継タンクは2個である。
従って、本実施例は、従来例に対して、総管路長を70m短縮でき、容積10tの一次受け入れタンクを1個減量することができ、容積1tの中継タンクを1個減量することができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例の塗布用ラインの説明図
【図2】従来例の塗布用ラインの説明図
【符号の説明】
【0027】
1 一次受け入れタンク
2 製品コンテナ
3 ポンプ
4 管路
4a,4b 分岐された管路
5 分岐点
6 ホッパー(添加剤投入手段)
7 スタティックミキサー(混合手段)
8 中継タンク
9 塗布用ガン
10 塗布用ガン
11 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース材料を塗布手段まで搬送する管路を、複数の管路に分岐し、前記複数の管路の何れかに、添加剤投入手段及び混合手段を設けたことを特徴とする塗布用ライン。
【請求項2】
前記管路は、前記塗布手段側において分岐したことを特徴とする請求項1に記載の塗布用ライン。
【請求項3】
前記混合手段と前記塗布手段との間に中継タンクを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布用ライン。
【請求項4】
前記ベース材料は、熱可塑性重合体粒子、可塑剤、無機充填材及び接着付与剤の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のベース材料の混合方法。
【請求項5】
前記添加剤は、有機発泡剤、未膨張バルーン及び着色剤の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のベース材料の混合方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−301533(P2007−301533A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135670(P2006−135670)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(598109187)アサヒゴム株式会社 (27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】