説明

塗床改修方法

【課題】比較的大掛かりな装置を用いることなく、迅速且つ経済的に舗装を改修することができる塗床改修方法を提供する。
【解決手段】基盤層、舗装層2、及び保護層3を有して構成される既設の塗床層4の表面を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程によって洗浄された塗床層4の表面を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程によって乾燥された塗床層4の保護層3を削る研削工程と、研削工程によって研削された保護層3を収集し、舗装層2の表面を清掃する集塵工程と、集塵工程によって清掃された舗装層2の表面に、液状の樹脂の混合物を塗布して硬化させ、新たな保護層3を再形成する保護層再形成工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗床の改修方法に関するものであり、特に、基盤層の表面が樹脂の混合物で舗装されている塗床層を改修する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントコンクリートなどで不陸処理された基盤層の表面に、タイルやレンガを敷設したり、着色したモルタルを塗布するなどして舗装層を作成する舗装方法が知られている。このような舗装方法は、歩道や広場、公園、または駅のコンコースやプラットフォームなど、景観を重視する道路環境において広く用いられている。
【0003】
ところで、上述のような景観を重視する道路環境では、舗装層上を行き交う通行人の安全性を確保するため耐久性や耐候性に優れる強固な舗装層が要求されることはもとより、舗装層の一部が汚れたり傷ついたりした場合には、迅速に当該箇所を修復することが要求される。そこで、専用の装置を用いて舗装層及び基盤層(以下、単に「舗装層等」と云う)を地面等の施工面より剥離し、修復作業に要する時間を短縮することなどが行われている。より具体的には、特許文献1に示すように、舗装層等を破砕する破砕爪33と、破砕された舗装層等を施工面より剥離する剥離爪12とを具備するコンクリート剥離機を用いて、舗装層等を一緒に破砕して施工面上より剥離し、露出した施工面上に基盤層と舗装層とを再舗装する場合が例示できる。
【特許文献1】特開平5−339908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、舗装層を破砕する際に、舗装層の下地となっている基盤層(舗装路盤)も一緒に破砕され、施工面(道路の地盤)上より剥離される。従って、再舗装をするには、基盤層の施工から再度やり直す必要があり、このようなやり直しの手間は修復時間の短縮に関して足枷となっていた。
【0005】
また、前述のコンクリート破砕機のような、所謂重機を操作するためには専門の技術が必要とされることに加え、当該破砕機は特殊な車輌であるため購入や維持に費用が嵩み、その結果、再舗装に要するコストが上昇するという問題があった。また、上述のような舗装の改修方法においては、舗装層の一部分のみ(改修が必要な部位のみ等)を破砕・剥離することが比較的難しく、大掛かりな改修作業にならざるを得ないため、このことも舗装の改修に要するコストを上昇させる一因となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、比較的大掛かりな装置を用いることなく、迅速且つ経済的に舗装を改修することができる塗床改修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塗床改修方法は、「基盤層、舗装層、及び保護層を有して構成される既設の塗床層の表面を洗浄する洗浄工程と、該洗浄工程によって洗浄された前記塗床層の表面を乾燥させる乾燥工程と、該乾燥工程によって乾燥された前記塗床層の前記保護層を削る研削工程と、該研削工程によって研削された前記保護層を収集し、前記舗装層の表面を清掃する集塵工程と、該集塵工程によって清掃された前記舗装層の表面に、液状の樹脂の混合物を塗布して硬化させ、新たな保護層を再形成する保護層再形成工程とを具備する」ものである。
【0008】
ここで、「既設の塗床層」とは、エポキシ樹脂系塗床、ウレタン樹脂系塗床、メタクリル樹脂系塗床、ポリエステル樹脂系塗床、ビニルエステル系塗床、またはアクリル樹脂系塗床など、主に合成樹脂を用いた塗布形の塗床が例示できる。また、「洗浄する」とは、水洗い、洗剤を使用する、布などを用いて拭き掃除する、等の方法が例示でき、これらの方法の何れか一つを用いるものであっても良いし、夫々を適宜に組み合わせるものであっても当然構わない。さらに、「乾燥させる」とは、舗装層の表面に付着する水分や湿気、溶剤等を揮発させる工程を示し、大気中にて乾燥させたり、公知の送風機(または温風器)を用いる場合が例示できる。
【0009】
また、「研削工程」における「前記保護層を削る」状態とは、少なくとも保護層の一部を削り取る状態を示し、保護層の一部が残存するものであっても良いし、保護層だけではなく舗装層の一部を削り取るものであっても良いが、舗装層の全てを削り取ったり、基盤層をも削り取る状態ではないことが好ましい。また、「保護層を削る」方法としては、基盤層や舗装層を破砕する場合とは違って、塗床層の表層の保護層を主に削る方法を示し、公知の小型研削機、例えばディスクサンダーや回転カッター等が例示できる。さらに、「集塵工程」における「研削された保護層を収集」する状態とは、塗装層の表面上に残存する全ての不純物を収集する状態が好ましいため、「研削された保護層」だけではなく、ゴミ・塵・埃等も含めて集塵すると、より好ましい。また、「樹脂の混合物」の「樹脂」とは、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、メチルメタクリレートモノマー重合体、及びポリ酢酸ビニルが挙げられ、「樹脂の混合物」とは、当該樹脂を結合材とする樹脂モルタル、または塗料などが例示できる。
【0010】
従って、本発明の塗床改修方法によれば、まず、傷や汚れなどによって見栄えの悪くなった塗床層(以下、「補修箇所」と云う)の表面を、「洗浄工程」において、水や洗剤、その他適宜の洗浄方法によって洗浄し、表面に付着している油やゴミを除去する。そして、「乾燥工程」において、洗浄工程で使用した水分や洗剤、その他空気中の湿気などを揮発させて補修箇所を乾燥させる。続いて、「研削工程」では、公知の小型研削機を用いて補修箇所の最表面である保護層を削り取り、「洗浄工程」及び「乾燥工程」で除去しきれなかった補修箇所の傷や汚れを削り取る。そして、「集塵工程」で、当該削り取った保護層等を集塵して清掃する。そして、「保護層再形成工程」において、液状の樹脂の混合物を、補修箇所の舗装層表面に塗布し、新たな保護層を形成させる。これにより、最も人目につきやすい層である保護層を再舗装して美観性を改善することができることに加え、基盤層や舗装層を再度塗りなおす必要が無いため、極めて迅速且つ経済的な塗床改修方法が提供できる。
【0011】
ところで、基盤層を破砕せずに再舗装を行う方法として、バーナーなどの小型火器を用いる方法も考え得る。例えば、難燃性の基盤層の表面に、熱可塑性の樹脂から成る舗装層及び保護層を適用し、所望の補修箇所に対して熱を加える方法が例示できる。この方法によれば、熱を加えた舗装層及び保護層のみが軟化し、基盤層を再舗装することなく塗床層を改修することができる。しかし、この方法では、火器を用いることから、可燃性の物質の多い場所や人気の多い場所(例えば、住宅街や駅のコンコース等)での施工について、安全性に問題が生ずる恐れがあった。また、保護層だけではなく、舗装層も再形成する必要があることから、改修に要する手間を、十分に削減できない可能性もあった。これに対し、本発明では、火器を使わずに、削り取るという方法によって汚れた保護層を除去する方法であるため、火災などの安全性に関する問題に悩まされることが無い。また、保護層のみを削り取る方法であるため、既設の基盤層及び舗装層を再利用することができ、極めて経済的である。
【0012】
また、本発明に係る塗床改修方法は、上記の構成に加え、「前記樹脂の混合物は、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂である」ものとすることができる。
【0013】
従って、本発明の舗装改修方法によれば、新たな保護層にメチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と云う)を適用する。これにより、保護層再形成工程において、液状のMMA樹脂を既設の舗装層上に塗布した後、当該樹脂が常温で極めて迅速に硬化するため、施工時間を短縮することができる。
【0014】
また、本発明の塗床改修方法において、さらに「前記集塵工程の後、且つ前記再舗装工程の前に、前記塗床層の表面の欠陥を補修する欠陥補修工程をさらに具備する」ものとすることができる。
【0015】
ここで、「欠陥」とは、例えば経年劣化によって生じた凹凸や亀裂、ピンホールやヘアークラック(微細なひび割れ)、日焼けによる色あせが例示できる。また、「欠陥を補修する」とは、具体的には、液状の樹脂の混合物(保護層と同じであっても良いし、別のものであっても構わない)を、当該欠陥部に塗布し、穴や凹凸などを埋め合わせて平滑する方法や、適宜の顔料を混合した液状の樹脂の混合物(前述に同じ)を舗装層の表面に塗布し、日焼けによって色あせた舗装層を補修する方法などが例示できる。
【0016】
従って、本発明の塗床改修方法によれば、欠陥補修工程をさらに具備しているため、保護層を再形成するだけではなく、経年劣化によって生じた舗装層の欠陥も補修し、塗床層をリニューアルすることができる。これにより、経済的な方法を用いて、美観性の高い塗床層の改修方法が提供できる。
【0017】
また、本発明の塗床改修方法において、さらに「前記樹脂の混合物は、紫外線吸収剤または紫外線遮蔽剤のうち、少なくとも何れか一方を含有している」ものとすることができる。
【0018】
ここで、「紫外線吸収剤」及び「紫外線遮蔽剤」としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、二酸化チタン、及び酸化亜鉛等が例示できる。
【0019】
従って、本発明の塗床改修方法によれば、新たな保護層として塗布する液状の樹脂の混合物の中に、紫外線を吸収または/及び遮蔽する添加剤(「紫外線吸収剤」又は/及び「紫外線遮蔽剤」)が混合されている。従って、屋外での使用に対しての耐久性に優れる、より経済的な塗床層を再構築できるため好適である。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明の舗装改修方法によれば、塗床層の最表層である保護層を削り取って再舗装する方法であるため、舗装層の下地となっている基盤層ごと破砕して施工をやり直す場合に比べて、極めて簡易かつ経済的に再舗装を行うことができる。また、塗床層の一部のみを舗装することが容易であるため、舗装に係る工期を大幅に短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図7に基づき説明する。図1は本発明の塗床改修方法によって改修された塗床層を示す斜視図であり、図2は塗床層の断面を模式的に表した断面模式図であり、図3は洗浄工程を示す説明図であり、図4は乾燥工程を示す説明図であり、図5は研削工程を示す説明図であり、図6は集塵工程を示す説明図であり、図7は保護層再形成工程を示す説明図である。
【0022】
本実施形態の舗装改修方法は、図1及び図2に示すような基盤層1、舗装層2、及び保護層3を有して構成される塗床層4の表面を改修するものである。基盤層1とは、舗装層2の基盤となる層を示し、公知のアスファルトコンクリートやセメントコンクリート、または地面等から構成されている。
【0023】
舗装層2は、基盤層1の表面に形成され、施工領域(歩道や広場、公園、または駅のコンコースやプラットフォーム等)の美観性や歩行性を向上させるものであり、具体的には図2に示すように、下地層5、目地層6、及び表層材7を有して構成されている。下地層5は、基盤層1上の凹凸を埋め合わせて表面を平滑にするものであり、本例では、樹脂を結合材とする樹脂モルタルが適用されている。より具体的には、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする熱可塑性の樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と云う)を結合材とし、粒径が5mm以下の骨材を主に配合して得られる樹脂モルタルを適用するものであり、水を結合材とする一般的なセメントモルタルに比べて、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性などに優れる。なお、MMA樹脂とは、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有するものである。ここで、下地層5に用いられる樹脂モルタルの結合材としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、フラン、ポリウレタン等が例示できる。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、雲母が例示できる。
【0024】
目地層6は、目地部8(後述する)の色を表現する層に該当し、下地層5と同様に、MMA樹脂を結合材とする樹脂モルタルが適用されている。目地層6に配合されている骨材及び結合材としては、下地層5に例示したものが同様に適用可能であり、さらに、目地部8の色を表現するための顔料が配合されている。
【0025】
表層材7は、舗装層2の表層部を主に構成する層であり、目地部8によって区画され、碁盤目状に形成されている。また、本例の表層材7には、ワックスが配合されており、表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、表層材7内部のMMA樹脂による重合反応を阻害しないよう考慮されている。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材7には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
【0026】
保護層3は、表層材7の表面H及び目地部8を被覆する層であり、下地層5、目地層6、及び表層材7と同様に、MMA樹脂を結合材とするMMA樹脂モルタルが適用されている。なお、本例の保護層3は透過性を有しており、表層材7の表面に、奥行きのある高級な質感を付与している。また、保護層3には、紫外線による表層材7の変質・劣化を低減するための紫外線吸収剤がさらに配合されている。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、二酸化チタン、及び酸化亜鉛等が例示でき、紫外線を吸収(または遮蔽)する機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。ここで、MMA樹脂モルタルが、本発明の「樹脂の混合物」に該当する。
【0027】
続いて、本発明の塗床改修方法について説明する。本発明の塗床改修方法は、六つの工程、すなわち、「洗浄工程」、「乾燥工程」、「研削工程」、「集塵工程」、「欠陥補修工程」、及び「保護層再形成工程」に大別することができる。
【0028】
まず、「洗浄工程」では、図3に示すように、傷や汚れKが付着した塗床層4の表面を洗浄する。具体的には、洗剤9を塗床層4の表面に散布し、洗浄用装置10でこすり洗いをする。そして、改修する塗床層4をくまなく洗浄した後に、水を流し、洗剤9やこすり落とされた汚れK等を洗い流す。洗剤9としては、油分や付着物が洗い落とせるものであれば如何なるものであっても良く、公知の酸性洗剤、中性洗剤、アルカリ性洗剤、酸素系漂白剤、または塩素系漂白剤などが挙げられるが、本例においては、比較的取扱が容易である公知の中性洗剤を適用している。また、洗浄装置10は、所謂デッキブラシ状のものを用いて手動で洗浄作業を行う場合を図示しているが、この方法に限定されるものではない。モップやタワシ等、他の手動洗浄装置を用いるものであっても構わないし、電動または機械式の自動洗浄装置を用いても構わない。要するに、塗床層4の表面の油分や付着物を簡易に洗い流せるものであれば、如何なるものであっても良い。このように、改修する塗床層4の表面を洗浄することによって、後述する保護層3の密着性を向上させることができる。
【0029】
次に、「乾燥工程」では、洗浄工程において水に濡れた塗床層4上を、適宜の工具(例えばスクイジー等)を用いて大まかに水切りする。そして、モップやウェス11などで丁寧に乾拭きし、塗床層4上を乾燥させる(図4参照)。なお、乾燥工程において用いられる工具は、上述に限定されるものではなく、塗床層4上の水分や湿気を除去できるものであれば、如何なるものであっても良い。例えば、ドライヤーなどの乾燥装置を用いても良いし、風通しの良い状態で放置し、自然乾燥させるものであっても良い。なお、「洗浄工程」において、揮発性の洗剤を用いたり、固体洗剤を用いて汚れKを拭取る方法を適用した場合であっても、大気中の湿気によって塗床層4上が湿っていることも考え得る。従って、前述の水や溶剤を使わない洗浄方法を適用した場合であっても、本工程(乾燥工程)を行うと、後述する保護層3の密着性をより向上させることができ効果的である。
【0030】
続いて、「研削工程」では、塗床層4の保護層3を研削し、「洗浄工程」で落としきれなかった傷や汚れKを除去する。具体的には、図5に示すように、回転刃を有する公知のグラインダー12(研削機または研磨機)を用いて、保護層3を研削する。このように、保護層3を研削することによって、保護層3上に残る傷や汚れKを取り除く(または目立たなくする)ことが可能となる。さらに、研削することで、舗装層2上に細かな傷が付くため、舗装層2と新たな保護層3(後述する)との密着性が向上する(所謂「目荒らし」ができる)。なお、本工程において、既設の保護層3の全てを除去する必要は無く、汚れKの除去と目荒らしとが必要十分に行われる程度に除去するものであれば良い。すなわち、保護層3の一部が残存しても良いし、舗装層2の一部を削り取るものであっても構わない。但し、舗装層2の全てを除去すると、新たな舗装層2を再形成する必要が生じ、作業性が低下するため好ましくない。
【0031】
そして、「集塵工程」では、図6に示すように、表面が研削された塗床層4(ほぼ舗装層3)上のゴミを、集塵装置13を用いて除去する。ここでいう「ゴミ」とは、「研削工程」において削り出された保護層3や、塵や埃、その他舗装層2上の全ての不純物を示す。なお、本例の塗床層4は、目地部8によって碁盤目状の模様が形成されているため、舗装層2の表面だけではなく、目地部8にもゴミが溜まりやすい。従って、図示する電機集塵装置13に加え、竹箒のような小回りの利く集塵装置を併用して目地部8のゴミを取り除くと、より好適である。
【0032】
次に、清掃された舗装層2の表面に、プライマーを塗布する。プライマーとは、舗装層2と保護層3との密着性をより向上させるための下地材料であり、下地層5と同様のものが適用できる。そして、プライマーが十分に乾燥した後、「欠陥補修工程」に移行する。欠陥補修工程では、下地層5、目地層6、または表層材7と同様のMMA樹脂モルタルを用いて、舗装層2の欠陥を補修する。「欠陥」とは、具体的には、経年劣化によって生じた舗装層2上の亀裂、ヘアークラック(微細なひび割れ)、色あせ、凹凸などが挙げられる。ここで、欠陥の補修に用いられる樹脂の混合物に、適宜の顔料や紫外線吸収剤を配合すると、改修以前の舗装層2よりも美観性(または耐候性)に優れる新たな舗装層2を提供できる。
【0033】
そして、「保護層再形成工程」で、新たな保護層3を形成する。まず、施工面積を所要の小エリア(例えば、全施工面積の1/3毎)に分割する。そして、当該小エリアを被膜するのに必要とされる保護層3のMMA樹脂モルタルの量を計算し、バケツなどに小分けしておく。このように、保護層3のMMA樹脂モルタルを小分けにすると、全施工面積の保護層3を一気に再形成する場合に比べて、保護層3の膜厚ムラを低減することができる。これは、保護層3を一気に塗布すると、塗り始めと塗り終わりとで、塗布器具14(図7参照)に付着したMMA樹脂モルタルの量に大きな差が生じ、舗装層2上に形成される保護層3の膜厚分布にムラが生じやすいためである。特に保護層3に、公知の紫外線吸収剤を配合した場合には、紫外線吸収剤の持つ微妙な色合い(青みを帯びた色)が塗床層4の表面に現れ、色むらが顕著になる場合も考え得るが、本例のように、塗布する保護層3を小分けにすることによって、係る懸念を払拭することが可能となる。
【0034】
そして、小分けされたMMA樹脂モルタルを、舗装層2上に塗布していく。具体的には、まず、塗布器具14を前述のMMA樹脂モルタルのバケツに浸し、余剰分のMMA樹脂モルタルを搾り落とした後に、図7(a)に示すように、舗装層2上に塗布していく。この時、塗布する方向は、矢印15に示すように、所定の一方向に塗布器具14を展開させていく。次に、前述と同様にして、塗布器具14に再度MMA樹脂モルタルを充填させ、図7(b)に示すように、矢印15に対して直交する所定の方向(矢印16)に、塗布器具14を展開させていく。このように、互いに直交する二方向に塗布器具14を展開させていくことで、保護層3の膜厚ムラを、より見せ難くすることができ好適である。この作業を、小分けされた小エリア毎に繰り返し、保護層3を再形成していく。そして、保護層3を乾燥させることによって、塗床層4の改修が完成する。
【0035】
以上のように、本例の塗床改修方法によれば、塗床層4の表層部分、主に保護層3のみを研削して改修する方法であるため、基盤層1や舗装層2を破砕して改修する方法に比べて、極めて施工時間を短縮することができる。また、施工に必要とされる装置を小型化・簡素化することができると共に、改修に必要とされる人員及び材料を削減することができるから、極めて経済的な塗床改修方法を提供できる。また、バーナーなどの火器を使用する必要もないため、人通りの多い施工場所(たとえば、駅のコンコースや公園の広場など)の改修により適している。
【0036】
また、本例の塗床改修方法によれば、保護層3にMMA樹脂モルタルを適用しているため、硬化に要する時間が極めて短く、改修時間を短縮できる。さらに、本例の保護層3には、紫外線吸収剤が配合されているため、紫外線に起因する劣化(主に黄変など舗装層2の変色)を低減することができ、屋外の塗床層4に適した塗床改修方法を提供できる。また、欠陥補修工程を具備しているため、経年劣化によって生じた各種の欠陥(色あせ、亀裂、凹凸など)を改修することができ、より意匠性の高い改修方法が提供できる。
【0037】
さらに、本例の塗床改修方法によれば、洗浄工程及び乾燥工程を具備しているため、既設の舗装層2と新たな保護層3との密着性を向上させることができる。さらに、研削工程において、既設の舗装層2の表面を目荒らしすることから、舗装層2と新たな保護層3との密着性がさらに向上するため効果的である。
【0038】
また、本例の塗床改修方法によれば、保護層3を塗布するエリアを小分けし、且つ矢印15及び矢印16に示す如く直交する二方向に分割して塗布する保護層再形成工程を具備するため、色むらや膜厚ムラを低減し、美観性に優れる塗床改修方法を提供できる。
【0039】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0040】
上記実施形態では、舗装層2として、下地層5、目地層6、及び表層材7を具備するものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、着色された下地層5や目地層6を具備せず、表層材7のみの舗装層2にも適用が可能である。また、下地層5や目地層6に加え、断熱層や防滑層をさらに具備する舗装層2であっても良いし、防滑処理の施された表層材7を用いるものであっても良い。さらに、保護層3を具備しない既設の舗装層2の表面を削り取り、新たに保護層3を形成するものであっても良く、要するに、塗床層4の一部を削り、保護層3を形成することのできるものであれば、如何なるものであっても良い。
【0041】
上記実施形態では、手動で塗布作業を行うローラー状の塗布器具14を例示したが、機械式・電動式の塗布器具14を適用可能であることは言うまでも無い。また、刷毛やコテ、スプレーガンなど、比較的簡易な他の手動器具を用いることも当然可能である。ただし、前述のどの器具を用いた場合であっても、本例のように、保護層3の塗布に用いられるMMA樹脂モルタルの量を小分けにし、且つ塗布方向を二方向に分割する方法を採り入れて塗布作業を行うことが、より望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の塗床改修方法によって改修された塗床層を示す斜視図である。
【図2】塗床層の断面を模式的に表した断面模式図である。
【図3】洗浄工程を示す説明図である。
【図4】乾燥工程を示す説明図である。
【図5】研削工程を示す説明図である。
【図6】集塵工程を示す説明図である。
【図7】保護層再形成工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 基盤層
2 舗装層
3 保護層
4 塗床層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤層、舗装層、及び保護層を有して構成される既設の塗床層の表面を洗浄する洗浄工程と、
該洗浄工程によって洗浄された前記塗床層の表面を乾燥させる乾燥工程と、
該乾燥工程によって乾燥された前記塗床層の前記保護層を削る研削工程と、
該研削工程によって研削された前記保護層を収集し、前記舗装層の表面を清掃する集塵工程と、
該集塵工程によって清掃された前記舗装層の表面に、液状の樹脂の混合物を塗布して硬化させ、新たな保護層を再形成する保護層再形成工程と
を具備することを特徴とする塗床改修方法。
【請求項2】
前記樹脂の混合物は、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂である
ことを特徴とする請求項1に記載の塗床改修方法。
【請求項3】
前記集塵工程の後、且つ前記保護層再形成の前に、前記舗装層の表面の欠陥を補修する欠陥補修工程をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗床改修方法。
【請求項4】
前記樹脂の混合物は、紫外線吸収剤または紫外線遮蔽剤のうち、少なくとも何れか一方を含有している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の塗床改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−113319(P2007−113319A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307396(P2005−307396)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(391034488)イビケン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】