塗料スプレイガン
本発明は、圧縮気分配室(8)並びにその内部に通ずる円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)及び圧縮気供給路(10)と、それら円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)及び圧縮気分配室(8)に対する圧縮気供給量を調整する手段として圧縮気分配室(8)内に設けられた設定部材と、圧縮気分配室(8)内を通る回動軸(D)を中心にその設定部材を外側から回動させる手段たる操作部材(15)と、を備える塗料スプレイガン(1)に関する。その特徴は、上記設定部材が、上記回動軸(D)を中心に回動させうるがその回動軸(D)の延長方向沿いには動かないよう保持されたロータリ分配子(14)であり、円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)又は圧縮気供給路(10)につながる通気口(6’,7’,10’)のうち1個又は複数個がそのロータリ分配子(14)の回動につれ開閉することである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の塗料スプレイガン及び請求項18の前提部分に記載の圧縮気分配カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
汎用型の塗料スプレイガンとしては特許文献1記載のものが知られている。このスプレイガンでは、圧縮気供給路に通ずる圧縮気分配器にて圧縮気がホーン向け空気供給路・円形ジェット路間分配される。ホーン向け空気供給路への圧縮気分配量は、ホーン向け空気供給路を無段階的に開閉可能な封止栓がその端部に付いたプラグを、所要深さまで螺入させることで設定される。ホーン向け空気供給路閉止時の圧縮気供給路・円形ジェット路間通流量を無段階的に調整可能な大径部が、そのプラグ上、端部から見て封止栓の奥側に設けられているので、ホーン向け空気供給路閉止時に円形ジェット路内圧が高まり上限値を超えることは少ない。そのプラグはローレットノブの回動に従い軸の延長方向沿いに変位する。この構成の難点は、プラグの軸延長方向沿い運動によって圧縮気分配器に通ずる空気供給路を開閉させる構成であるため、圧力設定に当たりローレットノブを何周も回さねばならないことである。また、プラグ上の封止栓及び円盤で乱されるため、圧縮気分配器内空気分布を不正確にしか推定・算出できない。更に、その構成部品が多いため製造するのが技術的に面倒である。そして、調整中にローレットノブ・塗料スプレイガン本体間の距離が変化することも問題となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0706832号明細書(B1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明では、上述した短所がなく、圧力を容易に設定することができ、しかもその内部における圧縮気分布を容易に算出できる塗料スプレイガン及び圧縮気分配器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、請求項1記載の特徴を有する塗料スプレイガン及び請求項18記載の特徴を有する圧縮気分配カートリッジを提案する。本発明は従属形式請求項に記載の諸形態で首尾よく且つ好適に実施することができる。
【0006】
即ち、本発明に係る塗料スプレイガンは、技術分野の欄に記載の塗料スプレイガンであって、その設定部材が、回動軸を中心に回動させうるがその回動軸の延長方向沿いには動かないよう保持されたロータリ分配子であり、円形ジェット路、広角ジェット路及び圧縮気供給路につながる通気口がそのロータリ分配子の回動につれ開閉することを特徴とする。本発明では、このようにロータリ分配子の運動を回動のみとしその回動で調整を行うようにしているので、全閉状態から全開状態に至る角度調整範囲を非常に小さくすることができる。特許文献1にて角度調整範囲が410°ほどもあり、ホーン向け通気口を全開状態から全閉状態にするのにローレットノブを一周以上させねばならなかったことと対照的である。従って、本発明によれば、そうした通気口の現在開度を単純なポジション指示で指し示すことができる。更に、ロータリ分配子の構成ひいては圧縮気分配室に通ずる諸通気口同士の関係を、シミュレーション、計算乃至経験を通じ割合容易に適正設定することができる。そして、ロータリ分配子用のロータリグリップを、塗料スプレイガン本体に対し一定距離に保つことができる。
【0007】
本発明の好適な実施形態としては、開口部、底面及びその底面と共に壁面を形成する側面を有する圧縮気分配シリンダを圧縮気分配室として設ける一方、ロータリ分配子のロータリグリップ寄りの端、当該グリップから疎遠な端又はその双方に、その圧縮気分配シリンダの側面に当接するよう案内部材を設ける形態がある。この実施形態では、構成が簡略になると共に、圧縮気分配室内でロータリ分配子を好適且つ確実に案内することができる。技術的に見て容易に製造可能な構成にするには、その案内部材を円盤又は円環とし、その外径を圧縮気分配室の内径に従い定めればよい。
【0008】
望みなら、圧縮気分配シリンダの内側面に当接しつつロータリ分配子が回動することとなるよう、ロータリ分配子を回動軸を囲む円筒の側面部分で形成することもできる。
【0009】
望みなら、圧縮気分配シリンダの内側面上に円形ジェット路向け通気口、広角ジェット路向け通気口又は圧縮気供給路向け通気口があり、円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区又は圧縮気供給路向け設定区が圧縮気分配シリンダの内側面に沿い回動する形態にすることもできる。これに代え又はこれに加え、圧縮気分配シリンダの底面上に円形ジェット路向け通気口、広角ジェット路向け通気口又は圧縮気供給路向け通気口があり、円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区又は圧縮気供給路向け設定区が圧縮気分配シリンダの底面に面する形態を採ることもできる。
【0010】
ロータリ分配子の圧縮気分配室内姿勢を簡略に指し示せるよう、そのためのポジション指示子をロータリグリップ上に設けるとよい。
【0011】
また、本発明に係る圧縮気分配カートリッジは、技術分野の欄に記載の圧縮気分配カートリッジであって、分配スピンドルの圧縮気分配室内差込側端部に、ロータリグリップに対し回動軸を中心に回動可能だがその回動軸の延長方向沿いには動かないロータリ分配子を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係り円形ジェット路及び広角ジェット路が全開している塗料スプレイガンに関し、詳細Z付の円形ジェット路沿い断面(図1a)及び詳細Y付の広角ジェット路沿い断面(図1b)を示す図である。
【図2】円形ジェット路/広角ジェット路全開時の圧縮気分配器に関し、ローレットノブ前面(図2a)、図2a中の左方から見た側面(図2b)、図2a中のA−A線に沿った断面(図2c)、図2b中のB−B線に沿った断面(図2d)並びに図2b中のC−C線に沿った断面(図2e)を示す図である。
【図3】円形ジェット路/広角ジェット路半開時の塗料スプレイガンを図1同様に表した図である。
【図4】円形ジェット路/広角ジェット路半開時の圧縮気分配器を図2同様に表した図である。
【図5】円形ジェット路/広角ジェット路全閉時の塗料スプレイガンを図1同様に表した図である。
【図6】円形ジェット路/広角ジェット路全閉時の圧縮気分配器を図2同様に表した図である。
【図7】圧縮気分配スピンドルの模式的立体図である。
【図8】圧縮気分配器に備わるローレットノブの別例を示す前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、別紙図面を参照しつつ、その好適な実施形態を参照して本発明の構成及び効果に関し説明する。
【0014】
図1aに、塗料スプレイガン1並びにそのハンドル2及び塗料ノズルヘッド3の断面を示す。ヘッド3の中央には円形ジェットノズル4、ヘッド3のホーン上には2個の広角ジェットノズル5がある。ノズル4に対する圧縮気供給は図1a中の円形ジェット路6、またノズル5に対するそれは図1b中の広角ジェット路7を介し行われる。こうした仕組みのスプレイガン1は既知のものである。ジェット路6,7それぞれのヘッド疎遠側端部には通気口6’,7’があり、供給路6,7はそこで圧縮気分配器9の圧縮気分配室たる圧縮気分配シリンダ8に通じている。
【0015】
その圧縮気分配シリンダ8に対する圧縮気供給は、通気口10’に通ずる圧縮気供給路10、既知の弁11及び圧縮気供給路12を介し行われる。供給元は図示しないコンプレッサ等の圧縮気源であり、既知の要領に従いトリガ11aひいては弁11を操作することで、その圧縮気源から供給路12経由でシリンダ8内に圧縮気を導入することができる。
【0016】
図1aは塗料スプレイガン1の円形ジェット路6沿い断面図、図1bは広角ジェット路7沿い断面図である。Z及びYに詳示の如く、円形ジェット路6は、スプレイガン1内で看者視線に沿い手前側、広角ジェット路7より上方にある。
【0017】
本実施形態の塗料スプレイガン1が従来の塗料スプレイガンと大きく相違する点、即ち本発明に係る圧縮気分配器9について、次に図2及び図7を参照して説明する。それらのうち図2aは図1のスプレイガン1に備わる分配器9の前面図である。図2bはそれを左から見た詳細な側面図であり、ジェット路6,7がよく見えている。図2cは図2a中のA−A線、図2dは図2b中のB−B線、図2eは図2b中のC−C線に沿った断面図である。
【0018】
圧縮気分配シリンダ8内圧縮気分布やジェット路6,7内圧を設定する手段としては、図7に示す如く角度可調型の分配スピンドル13が設けられ、それに連なるロータリ分配子14がシリンダ8内に差し込まれている。
【0019】
分配スピンドル13及びそれに連なるロータリ分配子14を圧縮気分配シリンダ8内で軸Dを中心に回動させる手段としては、手動操作可能なロータリグリップであるローレットノブ15が設けられている。ノブ15の回し初めが図2aの全開状態なら、広角ジェット路向け通気口7’は、ノブ15の時計方向回動につれ図4aの半開状態を経て図6aの全閉状態へと変化していく。これに伴い、塗料ノズルヘッド3のホーン上にある広角ジェットノズル5への圧縮気供給量が減り、徐々に無圧状態に近づいていく。ノブ15が図6aの状態から更に時計方向に動くことや図2aの状態から反時計方向へと動くことを防ぐ手段としてはストッパ21が設けられており、本実施形態ではそのストッパ21が図2、図4及び図6それぞれのd,eに示す如く塗料スプレイガン1本体と一体になっている。従って、例えば、図6aの状態から更に時計方向へとノブ15が回され、通気口7’から広角ジェット路7へと圧縮気が再導入されてしまうことや、最小値まで下がった円形ジェット路6内空気量に増減が生じることもない。
【0020】
ローレットノブ15は塗料スプレイガン1本体に対しほぼ一定距離22に保たれる。そのため、分配スピンドル13への余剰噴霧液滲出等を防止することができる。本実施形態では約1.2mmにしてある。こうした形態で本発明を実施することで高い機能的信頼性を得ることができる。ノブ15が大きく出っ張り煩わしく感じられることもない。
【0021】
図2c中、塗料スプレイガン1内圧縮気分配シリンダ8相当部位は円筒状空洞となっている。この空洞乃至シリンダ8の底面8aは平坦で、側面8bにほぼ90°の角度で連なっている。これらの面8a,8bはシリンダ8の内壁面を形成している。図中、そのシリンダ8の下方には圧縮気供給路10となる空洞が開口しており、そこからシリンダ8の周方向に沿い約90°ずれた位置にはジェット路6,7が開口している。ロータリ分配子14はシリンダ8の開口部8cからシリンダ8内に差し込まれている。
【0022】
ロータリ分配子14の一端、即ち図7で下側、図2cで右側を占める端部には下円盤16がある。分配子14の他端側では、分配スピンドル13側上円盤17によって、圧縮気分配シリンダ8内空間が概ね対外封止されている。これらの円盤16,17には、分配子14のシリンダ8内回動を案内しつつ、分配子14をシリンダ8内側面に押し付ける機能がある。この機能を実現するため円盤16,17はシリンダ8内径に従い設計されているので、分配子14を小さな遊びで厳密に軸芯回動させつつ内側面に対ししっかりと押し付けること、ひいては通気口6’,7’,10’の開口範囲をくっきりと画定することができる。
【0023】
本実施形態ではこうしたロータリ分配子14が2個の部品で実現されている。一方の部品25は図7中で上側にあり、ネジ山27から上円盤17までの区間を形成しており、その円盤17を含め真鍮等の金属で形成されている。こうした素材の強度は際立って高く、案内精度も際立って良好になる。その下側にある部品26は下円盤16までの区間を形成しており、その円盤16を含めポリアミド等のプラスチックで形成されている。ごく僅か幅広に形成されているので、塗料スプレイガン1本体への挿入に当たり僅かながら圧搾される。そのため、秀でた封止案内機能が得られる。しかも、複数種類の素材を使用するかなり複雑な構造ではあるが、注入成型で問題なく形成することができる。例示した組合せの素材であれば、分配子14の製造コストも許容範囲内に収めることができる。
【0024】
いうまでもないが、ロータリ分配子14を単一部品で構成することや、分配子14の各構成部品を上掲のものとは異なる金属、プラスチックその他の相応素材で形成することもできる。
【0025】
分配スピンドル13の上端が圧縮気分配シリンダ8内で螺入スリーブ18により可回動保持されているので、ロータリ分配子14は、シリンダ8内で回動軸Dを中心に回動させることが可能であるがその軸Dの延長方向に沿い変位することはない。こうした保持を螺入スリーブ18の螺入により実現するため、スリーブ18の外面には雄ネジ、シリンダ8の入口にはそれに対応する雌ネジが形成されている。上円盤17のうち分配子14本体から疎遠な環状部分には、スリーブ18のシリンダ8寄り端面を制止する働きがある。このように、スリーブ18を堅固な座とし、スピンドル13ひいてはシリンダ8内分配子14をその上に据えると共に、環状の封止材23や上円盤17を設けることで、シリンダ8内空間を好適に封止し、外部への空気漏洩を防ぐことができる。
【0026】
更に、螺入スリーブ18は塗料スプレイガン1本体に対しても封止される。
【0027】
ローレットノブ15を分配スピンドル13に可回動連結する手段としては、図2cの如くネジ19が使用されている。この連結に当たり、ネジ19はロータリ分配子14の先端にあるネジ山27に係合する。ノブ15の内面上にあるカラー24でネジ19を締め、封止材23を絞ることで、堅固な封止を実現することができる。
【0028】
ローレットノブ15の内面上にあるカラー24の動きは、塗料スプレイガン1本体に備わるストッパ21によって制限される。本実施形態では、そのストッパ21が開放ポジション,閉止ポジションそれぞれに設けられている。本実施形態では両ポジション間角度差が95°となっている。そのため、目で見てよくわかるように調整具合を指し示すことができる。
【0029】
なお、この角度差は一例であり、別の値例えば90〜180°の範囲に属する値にすることや、更に大きな値にすることもできるが、360°未満に留めるのが望ましい。
【0030】
図2aから読み取れるように、ローレットノブ15上にはノッチ状のポジション指示子20があり、広角ジェット路向け通気口7’が全開している図2の状態ではその指示子20で直上方向が指し示され、全閉している状態では図6aの如く時計方向に95°回動した方向が指し示される。
【0031】
或いは、このノッチに代わるマーキングとして印刷マーキングやスケールを設け、それをポジション指示子20として使用してもよい。いうまでもないが、指示子20をローレットノブ15上にではなく塗料スプレイガン1本体上に設けてもよい。
【0032】
図8に、ローレットノブ15の別例として、ポジション指示子20が凸状のポジションマーキング28としてノブ15上に設けられた例を示す。この例ではマーキング28が非常に長く、仮想的な直径線のそばを通り、中央部29を除きノブ15の表面全体に亘り延びている。塗料スプレイガン1本体上には、そのマーキング28に連ね凸状のポジションマーキング30が設けられている。この例でも、目で見てよくわかるように調整具合を指し示すことができる。
【0033】
次に、分配スピンドル13及びロータリ分配子14の構成に関し図7に基づき説明する。まず、広角ジェット路7が対応する通気口を介し圧縮気分配シリンダ8の下部に連通していることを踏まえ、分配子14の下円盤16寄り部位には広角ジェット路向け設定区146が設けられている。その設定区146上には広角吐出路向け閉止区146a及び広角吐出路向け開放区146bがあり、広角ジェット路向け通気口7’を閉止区146aで全閉させた後に開放区146bで開放させることができる。
【0034】
これと対照をなすように、円形ジェット路向け設定区147が、広角ジェット路向け設定区146の上方且つ上円盤17の近傍、即ち円形ジェット路6の連通先となる圧縮気分配シリンダ8上部に設けられている。円形ジェット路向け通気口6’がシリンダ8周方向に沿い広角ジェット路向け通気口7’から僅かにずれていることを踏まえ、円形ジェット路向け設定区147も周方向に沿い広角ジェット路向け設定区146から相応にずらされている。本実施形態では、円形ジェット路向け設定区147内に略長方形の円形ジェット路向け設定孔147aがあり、その位置が広角吐出路向け閉止区146aに対しずれているため、広角ジェット路7が全閉すると同時に圧縮気供給路10が全開したときでも、円形ジェット路6内ひいては円形ジェットノズル4に現れる圧力をその許容限度以下に保つことができる。
【0035】
自明な通り、円形ジェット路向け設定区147を楕円又はそれに類する形状にしてもよい。
【0036】
ロータリ分配子14の縁のうち図7上で左側にあるもの、円形ジェット路向け設定孔147a、並びに広角吐出路向け閉止区146は圧縮気供給路向け設定区を形成しており、分配子14を図6の姿勢にしたとき圧縮気供給路向け通気口10’が圧縮気分配シリンダ8に対し全開するよう且つ分配子14のどの部位でも覆われないよう形成されている。
【0037】
姿勢が図2に示す姿勢に変わると、ロータリ分配子14の縁のうち図7上で左側にあるもの、広角吐出路向け閉止区146a、並びに両者を結ぶ短い連結部148が、圧縮気供給路向け通気口10’上に張り出すため、通気口6’,7’が全開している状態でジェット路6,7内圧が許容限度以下になる。
【0038】
図1及び図2におけるロータリ分配子14の姿勢は、通気口6’,7’が全開し対応するノズル4,5で圧力が最大になる姿勢である。分配子14は通気口6’,7’・圧縮気分配シリンダ8間通流を全く妨げていない。その一方、圧縮気供給路向け通気口10’の分配子14側圧縮気供給路向け設定区による被覆量が最大になるので、圧縮気分配シリンダ8内圧は許容限度以下に留まる。
【0039】
広角ジェットノズル5に対する圧縮気供給量を絞り、ひいては圧縮気分配シリンダ8の広角ジェット路向け通気口7’における圧力を低下させるには、ローレットノブ15を図2aの姿勢から時計回りに45°回して図4aの姿勢にすればよい。ユーザはポジション指示子20を見て姿勢を知ることができる。この操作に伴い、図7の広角ジェット路向け設定区146に備わる開放区146bも回り、その傾斜押圧辺が広角ジェット路向け通気口7’上を過ぎり始める。それと同時に円形ジェット路向け設定区147が円形ジェット路向け通気口6’上に張り出し始めるため、通気口6’上では、設定区147の前縁即ち図7上の右縁で覆われる範囲が拡がり且つ円形ジェット路向け設定孔147aに連通する範囲が狭まる。ロータリ分配子14の回動につれ圧縮気供給路向け通気口10’も露わになっていくが、図4の姿勢では分配子14で部分的に覆われた状態に留まる。通気口6’,7’の連通範囲が狭まると同時に通気口10’を介した圧縮気の通流が増し、圧縮気分配器9内圧力条件が然るべく整うため、ジェット路6,7内や対応するノズルでの圧力がその許容限度を上回ることはない。
【0040】
ローレットノブ15ひいてはロータリ分配子14を時計方向に更に約45°回動させると、図4aの姿勢から図6aの姿勢に変わり、広角ジェット路向け通気口7’が全閉になる。図6b及び図6cの如く通気口7’が全閉の状態では、円形ジェット路向け通気口6’が、円形ジェット路向け設定孔147aの一部を介し、図6c〜図6eの如く全開になっている圧縮気供給路向け通気口10’からの圧縮気に曝されている。分配子14の形状が独特で、広角吐出路向け開放区146b、円形ジェット路向け設定孔147a、その回りの円形ジェット路向け設定区147及び圧縮気供給路向け設定区が円錐状狭窄形状であるため、広角ジェット路向け通気口7’を閉止させる動作全体を通じ、ジェット路6,7及びそれに対応するノズル4,5のいずれでも、圧力が上限値に達してしまうことがない。
【0041】
或いは、円形ジェット路向け設定孔147aの幾何学的形態を工夫すれば円形ジェット路向け通気口6’を全閉可能な構成にすることもできる。更に、広角吐出路向け開放区146bの形態を工夫すれば閉止特性を指数的、直線的又は累減的にすることもできる。
【0042】
上掲の構成では、圧縮気供給路10の表面形状に合致するようロータリ分配子14の形状が工夫されているため、分配子14でその供給路10に係る通気口10’を閉止することができる。こうした工夫無しで本発明を実施すること、即ち供給路10を然るべく閉止例えば全閉することができない形態で実施することも可能である。その場合でも、塗料スプレイガンに期待される機能は大過なく提供することができる。いずれにせよ、分配子14に対する圧縮気の全量供給や減量供給は可能である。
【0043】
上掲の構成では、ロータリ分配子14の回動で調整が行われるため、従来技術に比べ角度調整範囲を非常に狭くすることができる。例えば特許文献1記載の従来技術では、その角度調整範囲が約410°にも及んでいるため、ホーン向け通気口を開放状態から閉止状態にするのにローレットノブを一周以上も回す必要がある。その結果として、ホーン向け通気口の現在開度を簡明に指し示すことが難しくなっている。しかも、特許文献1で使用されている封止栓付プラグでは、圧縮気分配器に設けられた通気口間の開口比率を正しく設定するのが非常に難しく、それを可能にするシミュレーション乃至計算を行うとしたら非常に多大な労力が必要になる。塗料スプレイガン本体・ローレットノブ間の距離が変化する線形調整方式もあるが上掲の構成には及ばない。これは、ローレットノブ突出長が大きいときに条件次第で余剰噴霧液が塗料スプレイガン本体内に滲出する、といった、上掲の構成では生じないことが生じるからである。
【0044】
更に、上掲の構成では、ロータリ分配子14を支障なく片手で操作することができる。
【0045】
分配スピンドル13の構成を工夫し、ロータリ分配子の形態を別の構成にすることもできる。例えば、互いに角度的に重なり合い且つ半側面間で軸対称になるようその軸沿い半側面それぞれに円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区及び圧縮気供給路向け設定区を設けた中空円筒を、ロータリ分配子として使用することができる。この構成では、その中空円筒を180°回動させると広角ジェット路向け通気口7’が全開状態から全閉状態に変わり、同方向に更に回動させるとまた全開状態へと戻っていく。二分割ではなく四分割の中空円筒を使用すること、即ち互いに角度的に重なり合い且つ四側面間で軸対称になるようその軸沿い四半側面それぞれに円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区及び圧縮気供給路向け設定区を設けた中空円筒を使用することもできる。この構成では、その中空円筒を90°回動させるたびに1回、一周の間に都合4回、通気口7’の開放状態・閉止状態間遷移が発生する。どちらの構成でも、好適なことに、スピンドル13の各方向への過剰回動を妨げるストッパを設ける必要がない。また、これらの構成における円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区及び圧縮気供給路向け設定区を、互いに角度的に重なり合うが軸対称にならないよう設ければ、通気口7’の開放・閉止間状態遷移による圧縮気分配の特性を軸を挟み非対称にすることができる。
【0046】
中空のロータリ分配子14に代え中実円柱を使用すること、例えば圧縮気供給路10が半開閉しているときに機能する開口並びにその開口から分岐し通気口6’,7’それぞれに向かう円柱内通気路を有する中実円筒を使用することもできる。その円柱内通気路の通気口6’,7’側開口は、広角ジェット路向け通気口7’が全閉している状態で円形ジェット路向け通気口6’に許容上限値の圧力が現れるよう形成する。同様に、その中実円柱上のどの開口も、円形ジェット路6内圧や広角ジェット路7内圧が閉止動作中の全時点でその許容限度以下となるよう形成する。
【0047】
圧縮気分配シリンダ8の底面に開口を幾つか設け、それらを通気口6’,7’,10’その他の通気口として使用することもできる。それら底面にある通気口の開閉手段としては、分配スピンドル13の下方にある円盤16に、相応の開放区及び閉止区を有する設定区を各通気口に対応して設ければよい。例えば、シリンダ8の底面上に広角ジェット路向け通気口7’を偏心的に、即ちその面の中心軸から見て外寄りにずれた位置に形成する一方、その大きさが通気口7’相応の大きさから徐々に狭まりついには0になる螺旋状の広角吐出路向け開放区や、それに対し相補的な広角ジェット路閉止区を、円盤16側に設ければよい。
【0048】
その直径が一定で段差のない圧縮気分配シリンダ8に代え、互いに直径が異なる複数個の中空円筒が軸方向に沿い連なる圧縮気分配室、例えば開口部から離れ底面に近づくにつれ段階的に小径化する圧縮気分配室を使用することもできる。分配器も同様に段差付の形状にすればよい。圧縮気分配室を、その直径が段階的に変化する形状ではなくその一部又は全体が円錐的な形状にする一方、分配器をそれに応じた形状にすることも可能である。
【0049】
本発明の長所を既存の塗料スプレイガンで享受できるよう、分配スピンドル13、ロータリ分配子14、螺入スリーブ18、ローレットノブ15及びネジ19を用い圧縮気分配カートリッジを作成してもよい。即ち、既存の塗料スプレイガンに備わる圧縮気分配室に差し込める圧縮気分配カートリッジを作成してもよい。その際、挿入先の圧縮気分配室は、ロータリ分配子の形態や設計に見合う形態にするのが望ましい。同様に、圧縮気分配カートリッジを構成する諸部材も、既存の塗料スプレイガンのそれに応じた形態にするのが望ましい。ロータリ分配子の構成が簡略であるため、圧縮気分配室の形態やその動作で生じる圧縮気分配室内圧縮気分布は、当該既存の圧縮気分配室の形態に基づき容易に決定することができる。この圧縮気分配カートリッジを構成する諸部材の構成及び効果は、本発明の実施形態に係る塗料スプレイガンについての説明で詳かにした通りであり、その説明はこの圧縮気分配カートリッジにも当てはまる。分配スピンドルに装着されるロータリグリップをローレットノブ以外のものにしてもかまわない。
【0050】
本発明には他の諸形態、例えば圧縮気分配シリンダ8に対する円形ジェット路6、広角ジェット路7及び圧縮気供給路10の開口具合が、軸Dを中心にした回動で且つロータリ分配子やオリフィスプレートの軸方向変位無しに排他的に設定されるものも包含される。
【符号の説明】
【0051】
1 塗料スプレイガン、2 ハンドル、3 塗料ノズルヘッド、4 円形ジェットノズル、5 広角ジェットノズル、6 円形ジェット路、6’ 円形ジェット路向け通気口、7 広角ジェット路、7’ 広角ジェット路向け通気口、8 圧縮気分配シリンダ、8a 底面、8b 側面、8c 開口部、9 圧縮気分配器、10,12 圧縮気供給路、10’ 圧縮気供給路向け通気口、11 弁、11a トリガ、13 分配スピンドル、14 ロータリ分配子、15 ローレットノブ、16 下円盤、17 上円盤、18 螺入スリーブ、19 ネジ、20 ポジション指示子、21 ストッパ、22 距離、23 封止材、24 カラー、25 分配子上部部品、26 分配子下部部品、27 ネジ山、28,30 ポジションマーキング、29 中央部、146 広角ジェット路向け設定区、146a 広角吐出路向け閉止区、146b 広角吐出路向け開放区、147 円形ジェット路向け設定区、147a 円形ジェット路向け設定孔、148 連結部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の塗料スプレイガン及び請求項18の前提部分に記載の圧縮気分配カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
汎用型の塗料スプレイガンとしては特許文献1記載のものが知られている。このスプレイガンでは、圧縮気供給路に通ずる圧縮気分配器にて圧縮気がホーン向け空気供給路・円形ジェット路間分配される。ホーン向け空気供給路への圧縮気分配量は、ホーン向け空気供給路を無段階的に開閉可能な封止栓がその端部に付いたプラグを、所要深さまで螺入させることで設定される。ホーン向け空気供給路閉止時の圧縮気供給路・円形ジェット路間通流量を無段階的に調整可能な大径部が、そのプラグ上、端部から見て封止栓の奥側に設けられているので、ホーン向け空気供給路閉止時に円形ジェット路内圧が高まり上限値を超えることは少ない。そのプラグはローレットノブの回動に従い軸の延長方向沿いに変位する。この構成の難点は、プラグの軸延長方向沿い運動によって圧縮気分配器に通ずる空気供給路を開閉させる構成であるため、圧力設定に当たりローレットノブを何周も回さねばならないことである。また、プラグ上の封止栓及び円盤で乱されるため、圧縮気分配器内空気分布を不正確にしか推定・算出できない。更に、その構成部品が多いため製造するのが技術的に面倒である。そして、調整中にローレットノブ・塗料スプレイガン本体間の距離が変化することも問題となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0706832号明細書(B1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明では、上述した短所がなく、圧力を容易に設定することができ、しかもその内部における圧縮気分布を容易に算出できる塗料スプレイガン及び圧縮気分配器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、請求項1記載の特徴を有する塗料スプレイガン及び請求項18記載の特徴を有する圧縮気分配カートリッジを提案する。本発明は従属形式請求項に記載の諸形態で首尾よく且つ好適に実施することができる。
【0006】
即ち、本発明に係る塗料スプレイガンは、技術分野の欄に記載の塗料スプレイガンであって、その設定部材が、回動軸を中心に回動させうるがその回動軸の延長方向沿いには動かないよう保持されたロータリ分配子であり、円形ジェット路、広角ジェット路及び圧縮気供給路につながる通気口がそのロータリ分配子の回動につれ開閉することを特徴とする。本発明では、このようにロータリ分配子の運動を回動のみとしその回動で調整を行うようにしているので、全閉状態から全開状態に至る角度調整範囲を非常に小さくすることができる。特許文献1にて角度調整範囲が410°ほどもあり、ホーン向け通気口を全開状態から全閉状態にするのにローレットノブを一周以上させねばならなかったことと対照的である。従って、本発明によれば、そうした通気口の現在開度を単純なポジション指示で指し示すことができる。更に、ロータリ分配子の構成ひいては圧縮気分配室に通ずる諸通気口同士の関係を、シミュレーション、計算乃至経験を通じ割合容易に適正設定することができる。そして、ロータリ分配子用のロータリグリップを、塗料スプレイガン本体に対し一定距離に保つことができる。
【0007】
本発明の好適な実施形態としては、開口部、底面及びその底面と共に壁面を形成する側面を有する圧縮気分配シリンダを圧縮気分配室として設ける一方、ロータリ分配子のロータリグリップ寄りの端、当該グリップから疎遠な端又はその双方に、その圧縮気分配シリンダの側面に当接するよう案内部材を設ける形態がある。この実施形態では、構成が簡略になると共に、圧縮気分配室内でロータリ分配子を好適且つ確実に案内することができる。技術的に見て容易に製造可能な構成にするには、その案内部材を円盤又は円環とし、その外径を圧縮気分配室の内径に従い定めればよい。
【0008】
望みなら、圧縮気分配シリンダの内側面に当接しつつロータリ分配子が回動することとなるよう、ロータリ分配子を回動軸を囲む円筒の側面部分で形成することもできる。
【0009】
望みなら、圧縮気分配シリンダの内側面上に円形ジェット路向け通気口、広角ジェット路向け通気口又は圧縮気供給路向け通気口があり、円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区又は圧縮気供給路向け設定区が圧縮気分配シリンダの内側面に沿い回動する形態にすることもできる。これに代え又はこれに加え、圧縮気分配シリンダの底面上に円形ジェット路向け通気口、広角ジェット路向け通気口又は圧縮気供給路向け通気口があり、円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区又は圧縮気供給路向け設定区が圧縮気分配シリンダの底面に面する形態を採ることもできる。
【0010】
ロータリ分配子の圧縮気分配室内姿勢を簡略に指し示せるよう、そのためのポジション指示子をロータリグリップ上に設けるとよい。
【0011】
また、本発明に係る圧縮気分配カートリッジは、技術分野の欄に記載の圧縮気分配カートリッジであって、分配スピンドルの圧縮気分配室内差込側端部に、ロータリグリップに対し回動軸を中心に回動可能だがその回動軸の延長方向沿いには動かないロータリ分配子を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係り円形ジェット路及び広角ジェット路が全開している塗料スプレイガンに関し、詳細Z付の円形ジェット路沿い断面(図1a)及び詳細Y付の広角ジェット路沿い断面(図1b)を示す図である。
【図2】円形ジェット路/広角ジェット路全開時の圧縮気分配器に関し、ローレットノブ前面(図2a)、図2a中の左方から見た側面(図2b)、図2a中のA−A線に沿った断面(図2c)、図2b中のB−B線に沿った断面(図2d)並びに図2b中のC−C線に沿った断面(図2e)を示す図である。
【図3】円形ジェット路/広角ジェット路半開時の塗料スプレイガンを図1同様に表した図である。
【図4】円形ジェット路/広角ジェット路半開時の圧縮気分配器を図2同様に表した図である。
【図5】円形ジェット路/広角ジェット路全閉時の塗料スプレイガンを図1同様に表した図である。
【図6】円形ジェット路/広角ジェット路全閉時の圧縮気分配器を図2同様に表した図である。
【図7】圧縮気分配スピンドルの模式的立体図である。
【図8】圧縮気分配器に備わるローレットノブの別例を示す前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、別紙図面を参照しつつ、その好適な実施形態を参照して本発明の構成及び効果に関し説明する。
【0014】
図1aに、塗料スプレイガン1並びにそのハンドル2及び塗料ノズルヘッド3の断面を示す。ヘッド3の中央には円形ジェットノズル4、ヘッド3のホーン上には2個の広角ジェットノズル5がある。ノズル4に対する圧縮気供給は図1a中の円形ジェット路6、またノズル5に対するそれは図1b中の広角ジェット路7を介し行われる。こうした仕組みのスプレイガン1は既知のものである。ジェット路6,7それぞれのヘッド疎遠側端部には通気口6’,7’があり、供給路6,7はそこで圧縮気分配器9の圧縮気分配室たる圧縮気分配シリンダ8に通じている。
【0015】
その圧縮気分配シリンダ8に対する圧縮気供給は、通気口10’に通ずる圧縮気供給路10、既知の弁11及び圧縮気供給路12を介し行われる。供給元は図示しないコンプレッサ等の圧縮気源であり、既知の要領に従いトリガ11aひいては弁11を操作することで、その圧縮気源から供給路12経由でシリンダ8内に圧縮気を導入することができる。
【0016】
図1aは塗料スプレイガン1の円形ジェット路6沿い断面図、図1bは広角ジェット路7沿い断面図である。Z及びYに詳示の如く、円形ジェット路6は、スプレイガン1内で看者視線に沿い手前側、広角ジェット路7より上方にある。
【0017】
本実施形態の塗料スプレイガン1が従来の塗料スプレイガンと大きく相違する点、即ち本発明に係る圧縮気分配器9について、次に図2及び図7を参照して説明する。それらのうち図2aは図1のスプレイガン1に備わる分配器9の前面図である。図2bはそれを左から見た詳細な側面図であり、ジェット路6,7がよく見えている。図2cは図2a中のA−A線、図2dは図2b中のB−B線、図2eは図2b中のC−C線に沿った断面図である。
【0018】
圧縮気分配シリンダ8内圧縮気分布やジェット路6,7内圧を設定する手段としては、図7に示す如く角度可調型の分配スピンドル13が設けられ、それに連なるロータリ分配子14がシリンダ8内に差し込まれている。
【0019】
分配スピンドル13及びそれに連なるロータリ分配子14を圧縮気分配シリンダ8内で軸Dを中心に回動させる手段としては、手動操作可能なロータリグリップであるローレットノブ15が設けられている。ノブ15の回し初めが図2aの全開状態なら、広角ジェット路向け通気口7’は、ノブ15の時計方向回動につれ図4aの半開状態を経て図6aの全閉状態へと変化していく。これに伴い、塗料ノズルヘッド3のホーン上にある広角ジェットノズル5への圧縮気供給量が減り、徐々に無圧状態に近づいていく。ノブ15が図6aの状態から更に時計方向に動くことや図2aの状態から反時計方向へと動くことを防ぐ手段としてはストッパ21が設けられており、本実施形態ではそのストッパ21が図2、図4及び図6それぞれのd,eに示す如く塗料スプレイガン1本体と一体になっている。従って、例えば、図6aの状態から更に時計方向へとノブ15が回され、通気口7’から広角ジェット路7へと圧縮気が再導入されてしまうことや、最小値まで下がった円形ジェット路6内空気量に増減が生じることもない。
【0020】
ローレットノブ15は塗料スプレイガン1本体に対しほぼ一定距離22に保たれる。そのため、分配スピンドル13への余剰噴霧液滲出等を防止することができる。本実施形態では約1.2mmにしてある。こうした形態で本発明を実施することで高い機能的信頼性を得ることができる。ノブ15が大きく出っ張り煩わしく感じられることもない。
【0021】
図2c中、塗料スプレイガン1内圧縮気分配シリンダ8相当部位は円筒状空洞となっている。この空洞乃至シリンダ8の底面8aは平坦で、側面8bにほぼ90°の角度で連なっている。これらの面8a,8bはシリンダ8の内壁面を形成している。図中、そのシリンダ8の下方には圧縮気供給路10となる空洞が開口しており、そこからシリンダ8の周方向に沿い約90°ずれた位置にはジェット路6,7が開口している。ロータリ分配子14はシリンダ8の開口部8cからシリンダ8内に差し込まれている。
【0022】
ロータリ分配子14の一端、即ち図7で下側、図2cで右側を占める端部には下円盤16がある。分配子14の他端側では、分配スピンドル13側上円盤17によって、圧縮気分配シリンダ8内空間が概ね対外封止されている。これらの円盤16,17には、分配子14のシリンダ8内回動を案内しつつ、分配子14をシリンダ8内側面に押し付ける機能がある。この機能を実現するため円盤16,17はシリンダ8内径に従い設計されているので、分配子14を小さな遊びで厳密に軸芯回動させつつ内側面に対ししっかりと押し付けること、ひいては通気口6’,7’,10’の開口範囲をくっきりと画定することができる。
【0023】
本実施形態ではこうしたロータリ分配子14が2個の部品で実現されている。一方の部品25は図7中で上側にあり、ネジ山27から上円盤17までの区間を形成しており、その円盤17を含め真鍮等の金属で形成されている。こうした素材の強度は際立って高く、案内精度も際立って良好になる。その下側にある部品26は下円盤16までの区間を形成しており、その円盤16を含めポリアミド等のプラスチックで形成されている。ごく僅か幅広に形成されているので、塗料スプレイガン1本体への挿入に当たり僅かながら圧搾される。そのため、秀でた封止案内機能が得られる。しかも、複数種類の素材を使用するかなり複雑な構造ではあるが、注入成型で問題なく形成することができる。例示した組合せの素材であれば、分配子14の製造コストも許容範囲内に収めることができる。
【0024】
いうまでもないが、ロータリ分配子14を単一部品で構成することや、分配子14の各構成部品を上掲のものとは異なる金属、プラスチックその他の相応素材で形成することもできる。
【0025】
分配スピンドル13の上端が圧縮気分配シリンダ8内で螺入スリーブ18により可回動保持されているので、ロータリ分配子14は、シリンダ8内で回動軸Dを中心に回動させることが可能であるがその軸Dの延長方向に沿い変位することはない。こうした保持を螺入スリーブ18の螺入により実現するため、スリーブ18の外面には雄ネジ、シリンダ8の入口にはそれに対応する雌ネジが形成されている。上円盤17のうち分配子14本体から疎遠な環状部分には、スリーブ18のシリンダ8寄り端面を制止する働きがある。このように、スリーブ18を堅固な座とし、スピンドル13ひいてはシリンダ8内分配子14をその上に据えると共に、環状の封止材23や上円盤17を設けることで、シリンダ8内空間を好適に封止し、外部への空気漏洩を防ぐことができる。
【0026】
更に、螺入スリーブ18は塗料スプレイガン1本体に対しても封止される。
【0027】
ローレットノブ15を分配スピンドル13に可回動連結する手段としては、図2cの如くネジ19が使用されている。この連結に当たり、ネジ19はロータリ分配子14の先端にあるネジ山27に係合する。ノブ15の内面上にあるカラー24でネジ19を締め、封止材23を絞ることで、堅固な封止を実現することができる。
【0028】
ローレットノブ15の内面上にあるカラー24の動きは、塗料スプレイガン1本体に備わるストッパ21によって制限される。本実施形態では、そのストッパ21が開放ポジション,閉止ポジションそれぞれに設けられている。本実施形態では両ポジション間角度差が95°となっている。そのため、目で見てよくわかるように調整具合を指し示すことができる。
【0029】
なお、この角度差は一例であり、別の値例えば90〜180°の範囲に属する値にすることや、更に大きな値にすることもできるが、360°未満に留めるのが望ましい。
【0030】
図2aから読み取れるように、ローレットノブ15上にはノッチ状のポジション指示子20があり、広角ジェット路向け通気口7’が全開している図2の状態ではその指示子20で直上方向が指し示され、全閉している状態では図6aの如く時計方向に95°回動した方向が指し示される。
【0031】
或いは、このノッチに代わるマーキングとして印刷マーキングやスケールを設け、それをポジション指示子20として使用してもよい。いうまでもないが、指示子20をローレットノブ15上にではなく塗料スプレイガン1本体上に設けてもよい。
【0032】
図8に、ローレットノブ15の別例として、ポジション指示子20が凸状のポジションマーキング28としてノブ15上に設けられた例を示す。この例ではマーキング28が非常に長く、仮想的な直径線のそばを通り、中央部29を除きノブ15の表面全体に亘り延びている。塗料スプレイガン1本体上には、そのマーキング28に連ね凸状のポジションマーキング30が設けられている。この例でも、目で見てよくわかるように調整具合を指し示すことができる。
【0033】
次に、分配スピンドル13及びロータリ分配子14の構成に関し図7に基づき説明する。まず、広角ジェット路7が対応する通気口を介し圧縮気分配シリンダ8の下部に連通していることを踏まえ、分配子14の下円盤16寄り部位には広角ジェット路向け設定区146が設けられている。その設定区146上には広角吐出路向け閉止区146a及び広角吐出路向け開放区146bがあり、広角ジェット路向け通気口7’を閉止区146aで全閉させた後に開放区146bで開放させることができる。
【0034】
これと対照をなすように、円形ジェット路向け設定区147が、広角ジェット路向け設定区146の上方且つ上円盤17の近傍、即ち円形ジェット路6の連通先となる圧縮気分配シリンダ8上部に設けられている。円形ジェット路向け通気口6’がシリンダ8周方向に沿い広角ジェット路向け通気口7’から僅かにずれていることを踏まえ、円形ジェット路向け設定区147も周方向に沿い広角ジェット路向け設定区146から相応にずらされている。本実施形態では、円形ジェット路向け設定区147内に略長方形の円形ジェット路向け設定孔147aがあり、その位置が広角吐出路向け閉止区146aに対しずれているため、広角ジェット路7が全閉すると同時に圧縮気供給路10が全開したときでも、円形ジェット路6内ひいては円形ジェットノズル4に現れる圧力をその許容限度以下に保つことができる。
【0035】
自明な通り、円形ジェット路向け設定区147を楕円又はそれに類する形状にしてもよい。
【0036】
ロータリ分配子14の縁のうち図7上で左側にあるもの、円形ジェット路向け設定孔147a、並びに広角吐出路向け閉止区146は圧縮気供給路向け設定区を形成しており、分配子14を図6の姿勢にしたとき圧縮気供給路向け通気口10’が圧縮気分配シリンダ8に対し全開するよう且つ分配子14のどの部位でも覆われないよう形成されている。
【0037】
姿勢が図2に示す姿勢に変わると、ロータリ分配子14の縁のうち図7上で左側にあるもの、広角吐出路向け閉止区146a、並びに両者を結ぶ短い連結部148が、圧縮気供給路向け通気口10’上に張り出すため、通気口6’,7’が全開している状態でジェット路6,7内圧が許容限度以下になる。
【0038】
図1及び図2におけるロータリ分配子14の姿勢は、通気口6’,7’が全開し対応するノズル4,5で圧力が最大になる姿勢である。分配子14は通気口6’,7’・圧縮気分配シリンダ8間通流を全く妨げていない。その一方、圧縮気供給路向け通気口10’の分配子14側圧縮気供給路向け設定区による被覆量が最大になるので、圧縮気分配シリンダ8内圧は許容限度以下に留まる。
【0039】
広角ジェットノズル5に対する圧縮気供給量を絞り、ひいては圧縮気分配シリンダ8の広角ジェット路向け通気口7’における圧力を低下させるには、ローレットノブ15を図2aの姿勢から時計回りに45°回して図4aの姿勢にすればよい。ユーザはポジション指示子20を見て姿勢を知ることができる。この操作に伴い、図7の広角ジェット路向け設定区146に備わる開放区146bも回り、その傾斜押圧辺が広角ジェット路向け通気口7’上を過ぎり始める。それと同時に円形ジェット路向け設定区147が円形ジェット路向け通気口6’上に張り出し始めるため、通気口6’上では、設定区147の前縁即ち図7上の右縁で覆われる範囲が拡がり且つ円形ジェット路向け設定孔147aに連通する範囲が狭まる。ロータリ分配子14の回動につれ圧縮気供給路向け通気口10’も露わになっていくが、図4の姿勢では分配子14で部分的に覆われた状態に留まる。通気口6’,7’の連通範囲が狭まると同時に通気口10’を介した圧縮気の通流が増し、圧縮気分配器9内圧力条件が然るべく整うため、ジェット路6,7内や対応するノズルでの圧力がその許容限度を上回ることはない。
【0040】
ローレットノブ15ひいてはロータリ分配子14を時計方向に更に約45°回動させると、図4aの姿勢から図6aの姿勢に変わり、広角ジェット路向け通気口7’が全閉になる。図6b及び図6cの如く通気口7’が全閉の状態では、円形ジェット路向け通気口6’が、円形ジェット路向け設定孔147aの一部を介し、図6c〜図6eの如く全開になっている圧縮気供給路向け通気口10’からの圧縮気に曝されている。分配子14の形状が独特で、広角吐出路向け開放区146b、円形ジェット路向け設定孔147a、その回りの円形ジェット路向け設定区147及び圧縮気供給路向け設定区が円錐状狭窄形状であるため、広角ジェット路向け通気口7’を閉止させる動作全体を通じ、ジェット路6,7及びそれに対応するノズル4,5のいずれでも、圧力が上限値に達してしまうことがない。
【0041】
或いは、円形ジェット路向け設定孔147aの幾何学的形態を工夫すれば円形ジェット路向け通気口6’を全閉可能な構成にすることもできる。更に、広角吐出路向け開放区146bの形態を工夫すれば閉止特性を指数的、直線的又は累減的にすることもできる。
【0042】
上掲の構成では、圧縮気供給路10の表面形状に合致するようロータリ分配子14の形状が工夫されているため、分配子14でその供給路10に係る通気口10’を閉止することができる。こうした工夫無しで本発明を実施すること、即ち供給路10を然るべく閉止例えば全閉することができない形態で実施することも可能である。その場合でも、塗料スプレイガンに期待される機能は大過なく提供することができる。いずれにせよ、分配子14に対する圧縮気の全量供給や減量供給は可能である。
【0043】
上掲の構成では、ロータリ分配子14の回動で調整が行われるため、従来技術に比べ角度調整範囲を非常に狭くすることができる。例えば特許文献1記載の従来技術では、その角度調整範囲が約410°にも及んでいるため、ホーン向け通気口を開放状態から閉止状態にするのにローレットノブを一周以上も回す必要がある。その結果として、ホーン向け通気口の現在開度を簡明に指し示すことが難しくなっている。しかも、特許文献1で使用されている封止栓付プラグでは、圧縮気分配器に設けられた通気口間の開口比率を正しく設定するのが非常に難しく、それを可能にするシミュレーション乃至計算を行うとしたら非常に多大な労力が必要になる。塗料スプレイガン本体・ローレットノブ間の距離が変化する線形調整方式もあるが上掲の構成には及ばない。これは、ローレットノブ突出長が大きいときに条件次第で余剰噴霧液が塗料スプレイガン本体内に滲出する、といった、上掲の構成では生じないことが生じるからである。
【0044】
更に、上掲の構成では、ロータリ分配子14を支障なく片手で操作することができる。
【0045】
分配スピンドル13の構成を工夫し、ロータリ分配子の形態を別の構成にすることもできる。例えば、互いに角度的に重なり合い且つ半側面間で軸対称になるようその軸沿い半側面それぞれに円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区及び圧縮気供給路向け設定区を設けた中空円筒を、ロータリ分配子として使用することができる。この構成では、その中空円筒を180°回動させると広角ジェット路向け通気口7’が全開状態から全閉状態に変わり、同方向に更に回動させるとまた全開状態へと戻っていく。二分割ではなく四分割の中空円筒を使用すること、即ち互いに角度的に重なり合い且つ四側面間で軸対称になるようその軸沿い四半側面それぞれに円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区及び圧縮気供給路向け設定区を設けた中空円筒を使用することもできる。この構成では、その中空円筒を90°回動させるたびに1回、一周の間に都合4回、通気口7’の開放状態・閉止状態間遷移が発生する。どちらの構成でも、好適なことに、スピンドル13の各方向への過剰回動を妨げるストッパを設ける必要がない。また、これらの構成における円形ジェット路向け設定区、広角ジェット路向け設定区及び圧縮気供給路向け設定区を、互いに角度的に重なり合うが軸対称にならないよう設ければ、通気口7’の開放・閉止間状態遷移による圧縮気分配の特性を軸を挟み非対称にすることができる。
【0046】
中空のロータリ分配子14に代え中実円柱を使用すること、例えば圧縮気供給路10が半開閉しているときに機能する開口並びにその開口から分岐し通気口6’,7’それぞれに向かう円柱内通気路を有する中実円筒を使用することもできる。その円柱内通気路の通気口6’,7’側開口は、広角ジェット路向け通気口7’が全閉している状態で円形ジェット路向け通気口6’に許容上限値の圧力が現れるよう形成する。同様に、その中実円柱上のどの開口も、円形ジェット路6内圧や広角ジェット路7内圧が閉止動作中の全時点でその許容限度以下となるよう形成する。
【0047】
圧縮気分配シリンダ8の底面に開口を幾つか設け、それらを通気口6’,7’,10’その他の通気口として使用することもできる。それら底面にある通気口の開閉手段としては、分配スピンドル13の下方にある円盤16に、相応の開放区及び閉止区を有する設定区を各通気口に対応して設ければよい。例えば、シリンダ8の底面上に広角ジェット路向け通気口7’を偏心的に、即ちその面の中心軸から見て外寄りにずれた位置に形成する一方、その大きさが通気口7’相応の大きさから徐々に狭まりついには0になる螺旋状の広角吐出路向け開放区や、それに対し相補的な広角ジェット路閉止区を、円盤16側に設ければよい。
【0048】
その直径が一定で段差のない圧縮気分配シリンダ8に代え、互いに直径が異なる複数個の中空円筒が軸方向に沿い連なる圧縮気分配室、例えば開口部から離れ底面に近づくにつれ段階的に小径化する圧縮気分配室を使用することもできる。分配器も同様に段差付の形状にすればよい。圧縮気分配室を、その直径が段階的に変化する形状ではなくその一部又は全体が円錐的な形状にする一方、分配器をそれに応じた形状にすることも可能である。
【0049】
本発明の長所を既存の塗料スプレイガンで享受できるよう、分配スピンドル13、ロータリ分配子14、螺入スリーブ18、ローレットノブ15及びネジ19を用い圧縮気分配カートリッジを作成してもよい。即ち、既存の塗料スプレイガンに備わる圧縮気分配室に差し込める圧縮気分配カートリッジを作成してもよい。その際、挿入先の圧縮気分配室は、ロータリ分配子の形態や設計に見合う形態にするのが望ましい。同様に、圧縮気分配カートリッジを構成する諸部材も、既存の塗料スプレイガンのそれに応じた形態にするのが望ましい。ロータリ分配子の構成が簡略であるため、圧縮気分配室の形態やその動作で生じる圧縮気分配室内圧縮気分布は、当該既存の圧縮気分配室の形態に基づき容易に決定することができる。この圧縮気分配カートリッジを構成する諸部材の構成及び効果は、本発明の実施形態に係る塗料スプレイガンについての説明で詳かにした通りであり、その説明はこの圧縮気分配カートリッジにも当てはまる。分配スピンドルに装着されるロータリグリップをローレットノブ以外のものにしてもかまわない。
【0050】
本発明には他の諸形態、例えば圧縮気分配シリンダ8に対する円形ジェット路6、広角ジェット路7及び圧縮気供給路10の開口具合が、軸Dを中心にした回動で且つロータリ分配子やオリフィスプレートの軸方向変位無しに排他的に設定されるものも包含される。
【符号の説明】
【0051】
1 塗料スプレイガン、2 ハンドル、3 塗料ノズルヘッド、4 円形ジェットノズル、5 広角ジェットノズル、6 円形ジェット路、6’ 円形ジェット路向け通気口、7 広角ジェット路、7’ 広角ジェット路向け通気口、8 圧縮気分配シリンダ、8a 底面、8b 側面、8c 開口部、9 圧縮気分配器、10,12 圧縮気供給路、10’ 圧縮気供給路向け通気口、11 弁、11a トリガ、13 分配スピンドル、14 ロータリ分配子、15 ローレットノブ、16 下円盤、17 上円盤、18 螺入スリーブ、19 ネジ、20 ポジション指示子、21 ストッパ、22 距離、23 封止材、24 カラー、25 分配子上部部品、26 分配子下部部品、27 ネジ山、28,30 ポジションマーキング、29 中央部、146 広角ジェット路向け設定区、146a 広角吐出路向け閉止区、146b 広角吐出路向け開放区、147 円形ジェット路向け設定区、147a 円形ジェット路向け設定孔、148 連結部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮気分配室(8)並びにその内部に通ずる円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)及び圧縮気供給路(10)と、それら円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)及び圧縮気分配室(8)に対する圧縮気供給量を調整する手段として圧縮気分配室(8)内に設けられた設定部材と、圧縮気分配室(8)内を通る回動軸(D)を中心にその設定部材を外側から回動させる手段たる操作部材(15)と、を備える塗料スプレイガン(1)であって、上記設定部材が、上記回動軸(D)を中心に回動させうるがその回動軸(D)の延長方向沿いには動かないよう保持されたロータリ分配子(14)であり、円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)又は圧縮気供給路(10)につながる通気口(6’,7’,10’)のうち1個又は複数個がそのロータリ分配子(14)の回動につれ開閉することを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項2】
請求項1記載の塗料スプレイガン(1)であって、圧縮気分配室が、開口部(8c)と、壁面を構成する底面(8a)及び側面(8b)と、を有する圧縮気分配シリンダ(8)であることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項3】
請求項2記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記操作部材(15)寄りの端、当該操作部材(15)から疎遠な端又はその双方にあり上記側面(8b)に当接する案内部材(16,17)を有することを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項4】
請求項3記載の塗料スプレイガン(1)であって、案内部材が円盤(16,17)又は円環であり且つ圧縮気分配室(8)の内径に相応した外径を有することを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を囲む円筒の側面部分で形成されたことを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を中心にした回動の際に圧縮気分配室(8)の壁面(8a,8b)に当接しつつ回動する広角ジェット路向け設定区(146)と、互いに接するよう広角ジェット路向け設定区(146)上に設けられた広角吐出路向け閉止区(146a)及び広角吐出路向け開放区(146b)と、を有し、広角ジェット路向け設定区(146)の回動につれまず広角吐出路向け閉止区(146a)によって広角ジェット路向け通気口(7’)が全閉され、次いで広角吐出路向け開放区(146b)によって広角ジェット路向け通気口(7’)が開放されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項7】
請求項6記載の塗料スプレイガン(1)であって、広角吐出路向け開放区(146b)が、指数的、直線的又は累減的な開放又は閉止が可能な構成であることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を中心にした回動の際に圧縮気分配室(8)の壁面(8a,8b)に当接しつつ回動する円形ジェット路向け設定区(147)を有し、その回動につれまず円形ジェット路向け通気口(6’)が全面的乃至部分的に閉止され次いで開放されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、圧縮気供給路(10)につながる圧縮気供給路向け通気口(10’)がロータリ分配子(14)の回動につれ閉止されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項10】
請求項9記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を中心にした回動の際に圧縮気分配室(8)の壁面(8a,8b)に当接しつつ回動する圧縮気供給路向け設定区を有し、その回動につれまず圧縮気供給路向け通気口(10’)が部分的に閉止され次いで開放されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)又は圧縮気供給路につながる通気口が開口する側面(8b)に沿い回動する円形ジェット路向け設定区(147)、広角ジェット路向け設定区(146)及び圧縮気供給路向け設定区を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)の圧縮気分配室(8)内姿勢を指し示す1個又は複数個のポジション指示子(20,28,30)を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)に係る操作部材として設けられたロータリグリップ(15)と、ロータリ分配子(14)の圧縮気分配室(8)内姿勢を指し示すべくロータリグリップ(15)上に設けられた1個又は複数個のポジション指示子(20,28)と、を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項14】
請求項12又は13記載の塗料スプレイガン(1)であって、ポジション指示子たるポジションマーキング(30)がその上に1個又は複数個突設されたことを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)に係る操作部材(15)に設けられた1個又は複数個のストッパ、ロータリ分配子(14)に係る操作部材(15)と当接するよう塗料スプレイガン(1)の本体に設けられた1個又は複数個のストッパ(21)、或いはその双方を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項16】
請求項15記載の塗料スプレイガン(1)であって、開放時ポジション、閉止時ポジション又はその双方にストッパ(21)を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項17】
請求項16記載の塗料スプレイガン(1)であって、開放時ポジションと閉止時ポジションとの間に約90°例えば95°の角度差があることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項18】
塗料スプレイガン(1)の圧縮気分配室(8)に差し込みうる分配スピンドル(13)と、塗料スプレイガン(1)側に螺入され分配スピンドル(13)を可回動保持する螺入スリーブ(18)と、分配スピンドル(13)を操作する手段たる操作部材(15)と、を備え、塗料スプレイガン(1)にて使用される圧縮気分配カートリッジであって、分配スピンドル(13)の端部のうち塗料スプレイガン(1)の圧縮気分配室(8)に差し込まれる方の端部に、上記操作部材(15)に対し回動軸(D)を中心に回動可能だがその回動軸(D)の延長方向沿いには動かないロータリ分配子(14)を備えることを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【請求項19】
請求項18記載の圧縮気分配カートリッジであって、ロータリ分配子(14)が、互いに異なる素材で形成された第1部分(25)及び第2部分(26)を有する二部品構成であることを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【請求項20】
請求項19記載の圧縮気分配カートリッジであって、第1部分(25)が真鍮等の金属で形成されたことを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【請求項21】
請求項19記載の圧縮気分配カートリッジであって、第2部分(26)がポリアミド等のプラスチックで形成されたことを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【請求項1】
圧縮気分配室(8)並びにその内部に通ずる円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)及び圧縮気供給路(10)と、それら円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)及び圧縮気分配室(8)に対する圧縮気供給量を調整する手段として圧縮気分配室(8)内に設けられた設定部材と、圧縮気分配室(8)内を通る回動軸(D)を中心にその設定部材を外側から回動させる手段たる操作部材(15)と、を備える塗料スプレイガン(1)であって、上記設定部材が、上記回動軸(D)を中心に回動させうるがその回動軸(D)の延長方向沿いには動かないよう保持されたロータリ分配子(14)であり、円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)又は圧縮気供給路(10)につながる通気口(6’,7’,10’)のうち1個又は複数個がそのロータリ分配子(14)の回動につれ開閉することを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項2】
請求項1記載の塗料スプレイガン(1)であって、圧縮気分配室が、開口部(8c)と、壁面を構成する底面(8a)及び側面(8b)と、を有する圧縮気分配シリンダ(8)であることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項3】
請求項2記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記操作部材(15)寄りの端、当該操作部材(15)から疎遠な端又はその双方にあり上記側面(8b)に当接する案内部材(16,17)を有することを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項4】
請求項3記載の塗料スプレイガン(1)であって、案内部材が円盤(16,17)又は円環であり且つ圧縮気分配室(8)の内径に相応した外径を有することを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を囲む円筒の側面部分で形成されたことを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を中心にした回動の際に圧縮気分配室(8)の壁面(8a,8b)に当接しつつ回動する広角ジェット路向け設定区(146)と、互いに接するよう広角ジェット路向け設定区(146)上に設けられた広角吐出路向け閉止区(146a)及び広角吐出路向け開放区(146b)と、を有し、広角ジェット路向け設定区(146)の回動につれまず広角吐出路向け閉止区(146a)によって広角ジェット路向け通気口(7’)が全閉され、次いで広角吐出路向け開放区(146b)によって広角ジェット路向け通気口(7’)が開放されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項7】
請求項6記載の塗料スプレイガン(1)であって、広角吐出路向け開放区(146b)が、指数的、直線的又は累減的な開放又は閉止が可能な構成であることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を中心にした回動の際に圧縮気分配室(8)の壁面(8a,8b)に当接しつつ回動する円形ジェット路向け設定区(147)を有し、その回動につれまず円形ジェット路向け通気口(6’)が全面的乃至部分的に閉止され次いで開放されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、圧縮気供給路(10)につながる圧縮気供給路向け通気口(10’)がロータリ分配子(14)の回動につれ閉止されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項10】
請求項9記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)が、上記回動軸(D)を中心にした回動の際に圧縮気分配室(8)の壁面(8a,8b)に当接しつつ回動する圧縮気供給路向け設定区を有し、その回動につれまず圧縮気供給路向け通気口(10’)が部分的に閉止され次いで開放されることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、円形ジェット路(6)、広角ジェット路(7)又は圧縮気供給路につながる通気口が開口する側面(8b)に沿い回動する円形ジェット路向け設定区(147)、広角ジェット路向け設定区(146)及び圧縮気供給路向け設定区を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)の圧縮気分配室(8)内姿勢を指し示す1個又は複数個のポジション指示子(20,28,30)を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)に係る操作部材として設けられたロータリグリップ(15)と、ロータリ分配子(14)の圧縮気分配室(8)内姿勢を指し示すべくロータリグリップ(15)上に設けられた1個又は複数個のポジション指示子(20,28)と、を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項14】
請求項12又は13記載の塗料スプレイガン(1)であって、ポジション指示子たるポジションマーキング(30)がその上に1個又は複数個突設されたことを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項記載の塗料スプレイガン(1)であって、ロータリ分配子(14)に係る操作部材(15)に設けられた1個又は複数個のストッパ、ロータリ分配子(14)に係る操作部材(15)と当接するよう塗料スプレイガン(1)の本体に設けられた1個又は複数個のストッパ(21)、或いはその双方を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項16】
請求項15記載の塗料スプレイガン(1)であって、開放時ポジション、閉止時ポジション又はその双方にストッパ(21)を備えることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項17】
請求項16記載の塗料スプレイガン(1)であって、開放時ポジションと閉止時ポジションとの間に約90°例えば95°の角度差があることを特徴とする塗料スプレイガン。
【請求項18】
塗料スプレイガン(1)の圧縮気分配室(8)に差し込みうる分配スピンドル(13)と、塗料スプレイガン(1)側に螺入され分配スピンドル(13)を可回動保持する螺入スリーブ(18)と、分配スピンドル(13)を操作する手段たる操作部材(15)と、を備え、塗料スプレイガン(1)にて使用される圧縮気分配カートリッジであって、分配スピンドル(13)の端部のうち塗料スプレイガン(1)の圧縮気分配室(8)に差し込まれる方の端部に、上記操作部材(15)に対し回動軸(D)を中心に回動可能だがその回動軸(D)の延長方向沿いには動かないロータリ分配子(14)を備えることを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【請求項19】
請求項18記載の圧縮気分配カートリッジであって、ロータリ分配子(14)が、互いに異なる素材で形成された第1部分(25)及び第2部分(26)を有する二部品構成であることを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【請求項20】
請求項19記載の圧縮気分配カートリッジであって、第1部分(25)が真鍮等の金属で形成されたことを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【請求項21】
請求項19記載の圧縮気分配カートリッジであって、第2部分(26)がポリアミド等のプラスチックで形成されたことを特徴とする圧縮気分配カートリッジ。
【図1】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c)】
【図2d)】
【図2e)】
【図3】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図4d)】
【図4e)】
【図5】
【図6a)】
【図6b)】
【図6c)】
【図6d)】
【図6e)】
【図7】
【図8】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c)】
【図2d)】
【図2e)】
【図3】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図4d)】
【図4e)】
【図5】
【図6a)】
【図6b)】
【図6c)】
【図6d)】
【図6e)】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−532016(P2012−532016A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518769(P2012−518769)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003399
【国際公開番号】WO2011/003493
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(303033406)サタ ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003399
【国際公開番号】WO2011/003493
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(303033406)サタ ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (8)
【Fターム(参考)】
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