説明

塗料組成物

【課題】 耐屈曲性及び耐クラック性に優れた、2液常温硬化型のオルガノポリシロキサン系塗料組成物の提供。
【解決手段】 (a)Si含量が15重量%以上であるアルコキシ基含有有機シラン化合物、(b)グリシジル基と反応し得る官能基を有するアクリル系共重合体、(c)硬化触媒、(d)グリシジル基含有オルガノシロキサン、及び(e)エポキシ当量が100〜1500であり、重量平均分子量が200以上、100,000以下である、Si原子を含有しないグリシジル基含有化合物を含む、オルガノポリシロキサン系塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料組成物に係り、更に詳しくは、耐屈曲性及び耐クラック性に優れた、常温硬化が可能な2液型オルガノポリシロキサン系塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、耐候性及び耐汚染性に優れた塗料組成物として、オルガノポリシロキサン系塗料が用いられている。オルガノポリシロキサン系塗料のこれらの性能は、三次元に形成されるシロキサン結合に起因するものであるが、その反面、塗膜の脆さ、基材への密着不良という問題を有しており、また、塗膜の耐アルカリ性に関しても充分な性能が得られていない。そこで、これらの性能を向上させるため、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂を塗料中に導入することが試みられてきた。
【0003】例えば、特開2000−63612号公報には、(A)エポキシ基との反応性官能基を有するアクリル樹脂成分、有機金属化合物からなる硬化触媒成分及び着色顔料を含有する有機質組成物と、(B)エポキシ基を有するシラン化合物又はそのオリゴマー成分及びシリコーン樹脂成分を含有する無機質組成物とからなる、2液型の塗料組成物が提案されている。そして、この2液型塗料組成物を用いることで、耐候性及び旧塗膜に対する付着性に優れた塗膜が得られることが開示されている。また、この塗料組成物は、良好な貯蔵安定性を有していることも記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のオルガノポリシロキサン系塗料では、塗膜にした際の耐クラック性、耐屈曲性が充分ではないことが分かってきた。特に、建築や土木構造物の分野においては、フレキシビリティーに富んだ部材が多く、優れた耐屈曲性、耐クラック性を有する無機系の低汚染高耐候性塗料が強く求められている。また、近年、戸建て住宅においても、窯業系・金属系サイディング材を中心に10年、20年といった長期に渡る塗膜性能の維持が求められている。
【0005】そこで、得られる塗膜の耐屈曲・耐クラック性を改善するために、オルガノポリシロキサン系塗料における有機樹脂の導入量を多くする検討がなされている。有機樹脂を増量することで、確かに塗膜の耐屈曲性・耐クラック性を改善することは可能であるが、一方、オルガノポリシロキサン系塗料の特徴である耐候性能や耐汚染性能が悪化することが分かった。
【0006】このように、従来のオルガノポリシロキサン系塗料においては、耐候性・耐汚染性と耐屈曲性・耐クラック性との両立は達成されておらず、オルガノポリシロキサン系塗料本来の耐候性能を損なうことなく、耐屈曲性及び耐クラック性にも優れたオルガノポリシロキサン系塗料組成物が望まれている。
【0007】本発明は、かかる要望に基づきなされたものであって、その目的とするところは、優れた耐屈曲性及び耐クラック性を有する2液常温硬化型のオルガノポリシロキサン系塗料組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、(a)Si含量が15重量%以上であるアルコキシ基含有有機シラン化合物、(b)グリシジル基と反応し得る官能基を有するアクリル系共重合体、(c)硬化触媒、(d)グリシジル基含有オルガノシロキサン、及び(e)エポキシ当量が100〜1500であり、重量平均分子量が200以上、100,000以下である、Si原子を含有しないグリシジル基含有化合物を含む、オルガノポリシロキサン系塗料組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の2液常温硬化型のオルガノポリシロキサン系塗料組成物は、上記した(a)〜(e)成分を必須成分として含有するものであるが、使用に際しては、第1液と第2液とからなる2液を混合して調製される。まず、本発明の塗料組成物に用いられる各成分について以下に説明する。
【0010】<(a)成分>(a)成分として用いるアルコキシ基含有有機シラン化合物は、塗料の耐候性能及び耐汚染性能の点から、Si含量の下限が15重量%であり、好ましくは20重量%である。一方、Si含量の上限については特に制限はないが、一般的に40重量%、好ましくは35重量%である。
【0011】ここで、(a)成分のSi含量は、道路公団規格である熱分解方法より求めることができる。具体的には、テフロン(登録商標)耐圧容器に約1gの(a)成分(固形分)を精秤し、濃硫酸を2〜3ml加える。次いで、150〜160℃に加熱して24時間放置し、アルコキシ基含有有機シラン化合物を分解する。得られた硫酸溶液を、予め質量(重量)を量った白金皿に移し、ゆっくりと大気中で700〜800℃まで昇温してアルコキシ基含有有機シラン化合物分を完全に分解する。冷却後秤量し、残分から次式により、まず、シリカ(SiO2)量(重量%)を求める。


【0012】そして、求められたシリカ(SiO2)量(重量%)から、次式により、Si含量(重量%)を求める。


【0013】また、本発明においては、アルコキシ基含有有機シラン化合物が、下記の一般式(1)、

(式中、R1は、水素原子又はアルキル基であり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、OR1、アルキル基又はアリール基である)を有するシラン化合物またはその縮合物であることが好ましい。なお、縮合物である場合、その縮合度としては2〜100の範囲が一般的であり、相溶性の点からは、縮合度が2〜15である液状のものが好ましい。また、本発明において、(a)成分であるアルコキシ基含有有機シラン化合物は、1種類のみとしてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】本発明においては、(a)成分として、上記一般式(1)中、R1がメチル基であり、R2、R3、R4がそれぞれ独立にメチル基、フェニル基又はメトキシ基である化合物を用いることがより好ましい。
【0015】好ましいアルコキシ基含有有機シラン化合物として、具体的には、DC3074、DC3037、SR2402(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製品)、KR9218、KR500、KR400、X40−9225、KR−510、X40−9227、X40−9247(以上、信越化学工業(株)製品)などを例示することができる。
【0016】<(b)成分>(b)成分として用いるアクリル系共重合体は、グリシジル基と反応し得る官能基を有していることが必要である。かかる官能基としては、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、メルカプト基、水酸基等を挙げることができる。反応性の点から、アミノ基が好ましく、特に、第三級アミノ基が好ましい。
【0017】また、アクリル系共重合体は、重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)が3,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜50,000である。
【0018】なお、(b)成分におけるグリシジル基と反応し得る官能基の量は、(d)及び(e)成分のグリシジル基1当量に対して、0.01〜2当量となるものが好ましく、より好ましくは0.1〜1.2当量である。具体的には、アミン当量が300〜10000の範囲にある第三級アミノ基を含有するアクリル系共重合体が挙げられる。
【0019】(b)成分を構成するモノマー組成は、グリシジル基と反応し得る官能基を有していれば、特に制限はないが、(b)成分のTgが−10〜30℃になるようなモノマー組成とすることが好ましい。Tgが−10〜30℃の範囲にある(b)成分は、例えば、エチレン性不飽和モノマー(b1)、及びこのモノマー(b1)と共重合可能な、グリシジル基と反応し得る官能基(好ましくは、アミノ基)含有エチレン性不飽和モノマー(b2)を溶剤中においてラジカル重合開始剤を用いて共重合することにより得ることができる。
【0020】ここで、エチレン性不飽和モノマー(b1)としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C24アルキルまたはシクロアルキルエステル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC3〜C8のヒドロキシアルキルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジンなどの塩基性芳香族不飽和モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられる。なお、上記したモノマー(b1)は、二種類以上組み合わせて使用しても差しつかえない。
【0021】また、エチレン性不飽和モノマー(b1)として、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを用いることも可能である。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数は2〜4であり、アルキレンオキシドの付加モル数は1〜50である。)、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(ダイセル化学(株)製、商品名:プラクセルFM、FA)、N−メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。
【0022】グリシジル基と反応し得る官能基(好ましくは、アミノ基)含有エチレン性不飽和モノマー(b2)は、上記モノマー(b1)と共重合可能なモノマーであり、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアミノ基含有(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、反応性の点から、ジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましい。なお、これらのモノマーも二種類以上組み合わせて使用することができる。
【0023】重合に用いられる溶媒としては、溶液重合が可能であり、使用するモノマー及び得られるポリマーを溶解させることができるものであれば、特に制限はない。具体的には、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、イソプロピルアルコール、ミネラルスピリット等が挙げられる。また、これらは二種類以上組み合わせて使用しても差しつかえない。
【0024】なお、溶媒としてミネラルスピリット等の石油炭化水素系溶剤を用いた場合には、モノマーとして、炭化数4〜8の側鎖アルキルを有するビニル系モノマー、特にn−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート又はシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むものが好ましい。
【0025】重合開始剤に関しても、熱または還元性物質などによってラジカル分解してモノマーへの付加重合を起こさせるものであれば、特に制限はない。例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどを単独もしくは数種類を混合して使用することができる。また、樹脂の分子量の調節のため、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を添加することも可能である。
【0026】(b)成分の具体的重合方法としては、溶媒に、ラジカル重合開始剤の存在下、エチレン性不飽和モノマー(b1)、及びグリシジル基と反応し得る官能基(好ましくは、アミノ基)含有エチレン性不飽和モノマー(b2)の混合物を滴下するモノマー滴下法;溶媒、ラジカル重合開始剤、並びにモノマー(b1)及び(b2)からなる混合物のラジカル重合を行う一浴重合法(モノマー等を一括装入して重合する方法)が挙げられる。安全性及び分子量の制御の点から、モノマー滴下法が好ましい。
【0027】本発明の(b)成分として、具体的には、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルから構成される共重合体、またはメタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルから構成される共重合体等が挙げられる。
【0028】<(c)成分>(c)成分として用いる硬化触媒は、有機金属化合物であることが好ましく、具体的には、Ti、Al、Zr、Sn等の金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属エステル化合物を用いることができる。金属アルコキシド化合物としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラ−n−ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ−n−ラウリルチタネート等のチタニウムアルコキシド;テトラエチルジルコネート、テトラ−n−プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ−n−ブチルジルコネート、テトラ−sec−ブチルジルコネート、テトラ−tert−ブチルジルコネート、テトラ−n−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ヘキシルジルコネート、テトラ−n−ヘプチルジルコネート、テトラ−n−オクチルジルコネート、テトラ−n−ステアリルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド;ジブチルスズジブトキシド等が挙げられ、金属キレート化合物としては、例えば、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(イソプロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロポニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシプロピオニルアセトナトアルミニウム、アセチルアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、モノエチルアセトアセテート・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム、アセチルアセトナトアルミニウム・ジ−sec−ブチレート、メチルアセトアセテ10−sec−ブチレート、ジ(メチルアセトアセテート)アルミニウム・モノ−tert−ブチレート、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセトナ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタネート、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタネート、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタネート等のチタニウムキレート化合物;テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)等が挙げられ、金属エステル化合物としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジベンジル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレエート等の錫エステル化合物等が挙げられる。これらの反応触媒は1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0029】また、硬化触媒によって塗料のポットライフや貯蔵安定性に問題が生じる場合には、ケト・エノール型互変異性化合物を併用することが好ましい。ケト・エノール型互変異性化合物としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルエステル、マロン酸ジエステル、ベンゾイルアセトン、ジベンジイルメタン、ダイアセトンアルコール、サリチル酸メチル等が挙げられる。
【0030】<(d)成分>(d)成分として用いるグリシジル基含有オルガノシロキサンについては、特に制限はなく、具体的には、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル(ジメチル)メトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシポリシロキサン等を挙げることができる。これらの中でも、相溶性及び反応性の点から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0031】また、本発明においては、(d)成分として、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシシランとグリシジル(メタ)アクリレートのようなグリシジル基含有不飽和モノマーと、加水分解性シリル基含有不飽和モノマーとの共重合体を用いることもできる。
【0032】<(e)成分>(e)成分として用いるグリシジル基含有化合物は、エポキシ当量を100〜1500とする必要があり、好ましくは150〜1000、より好ましくは200〜500である。エポキシ当量が上記範囲から外れる場合には、得られる塗料組成物の耐屈曲性及び付着性が充分とはいえない。
【0033】ここで、エポキシ当量は、以下の方法により求めることができる。まず、エポキシ化合物を0.2〜1g程度精秤し、室温でメチルエチルケトン90mlに溶解して試料溶液とする。これに氷酢酸を約10ml、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)を1.0g、CV(クリスタルバイオレット)溶液(指示薬)を10〜15滴加え、撹拌しながら0.1Nの過塩素酸標準液で青緑色を呈するまで滴定する。終点は、青緑色が1分持続する点とする。同様の方法で空試験を行い、次式により、グリシジル基含有化合物のエポキシ等量(WPE)を求める。


W : 試料の重量(g)
Vs : 0.1Nの過塩素酸標準液の使用量(滴下量) ml数Vb : 空試験の過塩素酸標準溶液の使用量(滴下量) ml数N : 過塩素酸液の規定度
【0034】また、(e)成分のグリシジル基含有化合物は、塗料組成物における他の成分(特に、(a)及び(b)成分)との相溶性の点から、200以上、100,000以下の重量平均分子量を有していることが好ましい。更に、得られる塗膜にフレキシビリティーを与え耐屈曲性及び付着性を向上させるという点から、以下の(i)〜(iii)に示すものを用いることが好ましい。
【0035】(i)ヒドロキシル基含有化合物をグリシジルエーテル化した化合物ここで、ヒドロキシ基含有化合物としては、(イ)メタノール、エタノール、プロピルアルコール、高級アルコール等の一価のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリアルキレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール;(ロ)コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トリメット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール;(ハ)低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオール;(ニ)低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0036】具体的には、下記一般式で表せるような末端にグリシジル基を有するエーテル化合物が挙げられる。


【0037】(ii)環状オキシラン型、グリシジルエステル型、脂肪族不飽和化合物のエポキシ化型、多価カルボン酸エステル型、ビスフェノールA型又はノボラック型の化合物かかる化合物の例としては、下記の一般式で示されるようなものが挙げられる。
【0038】


【0039】(iii)アクリル系重合体にグリシジル基含有成分をグラフトした化合物かかる化合物として具体的には、グリシジル基含有不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーの共重合体が挙げられる。ここで、グリシジル基含有不飽和モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも反応性の点からグリシジルメタクリレートが好ましい。また、耐屈曲性、耐クラック性の点から、グリシジル基含有成分がグラフトされたアクリル系重合体のTgが−50〜10℃の範囲であり、エポキシ当量が500〜1500となるようなモノマー組成にすることが好ましい。例えば、グリシジルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルメタクリレート及びn−ブチルアクリレートから構成される共重合体を用いることができる。
【0040】<(f)成分>本発明の塗料組成物は、上記した必須成分である(a)〜(e)成分に加えて、(f)成分として、着色顔料、体質顔料及び有機溶剤を適宜含んでいてもよい。
【0041】着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料が挙げられる。
【0042】体質顔料としては、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等が挙げられる。
【0043】有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、ミネラルスピリット等の石油炭化水素系溶剤等が使用できる。これらの中でも、特に、ミネラルスピリット等の石油炭化水素系溶剤は、旧塗膜や基材を侵しにくく、また、低臭であるため作業環境の改善に大きく役立つため、非常に好ましい。
【0044】更に、本発明の塗料組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、可塑剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光触媒酸化チタン等の塗料用添加剤を適宜配合することができる。
【0045】続いて、本発明の塗料組成物中における、各成分の配合量について説明する。
【0046】まず、必須成分である(b)成分、(c)成分及び(d)成分は、(a)成分100重量部に対して、それぞれ、30〜130重量部(固形分)、0.1〜30重量部、1〜50重量部であることが好ましい。ここで、(b)成分の量が少なくなると塗膜の耐アルカリ性が不充分となり、多すぎると塗膜の耐候性が低下する。また、(d)成分の量が少ないと塗膜の付着性が悪化し、一方、多量に用いると塗膜のフレキシビリティーが低下し耐屈曲性等に悪影響を及ぼす。なお、(c)成分の量が0.1重量部より少ない場合には、硬化触媒として充分に機能することができず、また、30重量部より多く用いても塗膜性能の向上はなく、経済的観点からも好ましくない。耐候性、耐汚染性、耐屈曲性、耐クラック性及び耐アルカリ性のバランスという点からは、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の配合量を、(a)成分100重量部に対して、それぞれ50〜100重量部(固形分)、5〜15重量部、5〜30重量部とすることが特に好ましい。
【0047】同じく必須成分である(e)成分については、その分子量により好ましい配合量が異なってくる。すなわち、(e)成分の重量平均分子量が200以上、5000未満の場合には、(a)成分100重量部に対して5〜30重量部(固形分)であることが好ましい。一方、(e)成分の重量平均分子量が5000以上、100,000以下の場合には、(a)成分100重量部に対して10〜60重量部(固形分)であることが好ましく、より好ましくは25〜45重量部(固形分)である。(e)成分の配合量が少ないと塗膜のフレキシビリティーが低下する傾向があり、また、多くなると塗膜の耐汚染性が悪化する場合がある。
【0048】次に、任意成分である(f)成分についてであるが、これらの成分は、各種用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で配合すればよい。なお、有機溶剤の量は、塗料固形分100重量部に対して20〜200重量部とすることが好ましい。
【0049】上記したように、本発明の塗料組成物は第1液と第2液とからなり、使用に際して、かかる2液を混合する。本発明の塗料組成物においては、貯蔵安定性の点から、(b)成分と(d)及び(e)成分とが使用直前に混合されるように、第1液及び第2液を調製することが望ましい。すなわち、本発明の2液型塗料組成物に含まれる各成分は、以下のように調製されていることが好ましい。また、任意成分である(f)成分は、第1液若しくは第2液のいずれかに、または、第1液及び第2液の両方に存在させることが可能である。
【0050】
(a)成分:第1液及び/又は第2液に存在、(b)成分:第1液に存在、(c)成分:第1液及び/又は第2液に存在、(d)成分:第2液に存在、(e)成分:第2液に存在。
【0051】本発明の2液型塗料組成物においては、塗料の貯蔵安定性を良好にし、また、塗料の使用環境や使用用途に柔軟に対応させるという点から、(a)〜(e)成分を以下のように調製することが、特に好ましい。
【0052】
(a)成分:第1液及び第2液に存在、(b)成分:第1液に存在、(c)成分:第1液に存在、(d)成分:第2液に存在、(e)成分:第2液に存在。
なお、(f)成分として、第1液に着色顔料及び有機溶剤を、第2液に有機溶剤を存在させることがより好ましい。
【0053】
(a)成分:第2液に存在、(b)成分:第1液に存在、(c)成分:第1液に存在、(d)成分:第2液に存在、(e)成分:第2液に存在。
なお、(f)成分として、(1)第1液に着色顔料及び有機溶剤を、第2液に有機溶剤を存在させるか、又は、(2)第1液に有機溶剤を、第2液に着色顔料及び有機溶剤を存在させることがより好ましい。
【0054】
(a)成分:第1液に存在、(b)成分:第1液に存在、(c)成分:第1液に存在、(d)成分:第2液に存在、(e)成分:第2液に存在。
なお、(f)成分として、第1液に着色顔料及び有機溶剤を、第2液に有機溶剤を存在させることがより好ましい。
【0055】
(a)成分:第1液に存在、(b)成分:第2液に存在、(c)成分:第1液に存在、(d)成分:第1液に存在、(e)成分:第1液に存在。
なお、(f)成分として、第1液に着色顔料及び有機溶剤を、第2液に有機溶剤を存在させることがより好ましい。
【0056】本発明の塗料組成物の製造方法については、特に制限はなく、使用の際に第1液と第2液とを混合・攪拌すればよい。なお、第1液と第2液との混合割合についても特に制限はない。また、塗料としての可使時間は3〜8時間とすることが好ましい。
【0057】本発明の塗料組成物は、常温硬化、低汚染高耐候性であることから、機械、船舶、車両、航空機、土木、建築、重防食、インキ、その他一般工業分野において好適に用いられる。特に、本発明の塗料組成物を用いると、優れた耐屈曲性及び耐クラック性に優れた塗膜を得ることが可能となるため、フレキシビリティーに富んだ部材が多い建築及び土木構造物用の素材に対して好適である。また、本発明の塗料組成物は、10〜20年といった長期に渡る塗膜性能の維持が求められている戸建て住宅の窯業系や金属系サイディング材に対しても好適に用いることができる。
【0058】
【発明の効果】以上のように、本発明の塗料組成物においては、(a)成分〜(e)成分という特定の5成分を組み合わせることにより、オルガノポリシロキサン系塗料本来の耐候性及び耐汚染性を損なうことなく、耐屈曲性及び耐クラック性にも優れたオルガノポリシロキサン系塗料組成物を得ることができる。また、(a)成分〜(e)成分の配合量を特定の量とすることにより、耐候性、耐汚染性、耐屈曲性、耐クラック性及び耐アルカリ性の全てにおいて優れた性能を有する塗料組成物を得ることが可能となる。
【0059】更に、本発明の塗料組成物に(f)成分として石油炭化水素系溶剤を配合した場合、旧塗膜や基材を侵しにくい塗料となるため、旧塗膜や基材の塗り替えを容易に行うことが可能となる。また、石油炭化水素系溶剤が配合された塗料は、低臭であるため作業環境を大幅に改善することも可能となる。
【0060】
【実施例】以下、本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定される訳ではない。まず、実施例及び比較例で用いられる塗料組成物の物性評価法について説明する。なお、以下において、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0061】<耐屈曲性>耐屈曲性の評価は、JIS K5400 8.1の方法に準拠し、心棒の直径が10mmのものを使用した。また、試験片としては、150×50×0.3mmの鋼板に、乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物をスプレーで塗布し、23℃,50%RHの条件下で4日間養生後、さらに80℃で3日間の強制乾燥を行ったものを使用した。評価は、目視により塗膜の屈曲部を観察し、試験片の割れ、剥がれのないものを「○」とし、それ以外を「×」とした。
【0062】<耐クラック性>耐クラック性は、JIS K5400 9.4(耐湿潤冷熱繰返し性試験)に準じ、20℃の水に18時間浸水し、その後−20℃の冷凍庫で3時間、更に50℃で3時間加温した。この繰り返しを10サイクル行い、試験終了後の塗膜の状態を目視にて観察し、塗膜における割れ、膨れ及び白化の程度を以下の3段階で評価した。なお、試験片は、70×70×6mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物をスプレーで塗装し、23℃,50%RHの条件下で4日間養生後、さらに80℃で3日間の強制乾燥を行うことにより作製した。
○:塗膜に変化が見られない。
△:塗膜の一部に割れ、膨れが認められる。
×:塗膜に著しい割れ、膨れが認められる。
【0063】<促進耐候性>促進耐候性試験は、超促進耐候試験機(岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスター)を用いて行った。また、試験片は、50×50×4mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物をスプレーで塗装し、23℃,50%RHの条件下で7日間乾燥を行うことにより作製した。試験条件としては、波長295〜450nm、紫外線照射度100mW/cm2、ブラックパネル温度63℃,50%RH、1サイクルを照射4時間、結露4時間とし、125サイクル(1000時間)試験した。試験終了後、塗膜の初期60度鏡面光沢値に対する光沢保持率を求め、以下の3段階で評価した。
○:光沢保持率 70%以上△:光沢保持率 50%以上 70%未満×:光沢保持率 50%未満
【0064】<耐アルカリ性>耐アルカリ性試験は、JIS K5400 8.21に準じ、水酸化ナトリウムを脱イオン水で5W/V%に調整した液に、試験片を23℃の条件下で7日間浸せきさせた。浸せき後、試験片を流水で静かに洗い、2時間乾燥させて、塗膜の膨れ、割れ、剥がれ、つやの変化を目視によって観察し、3段階で評価した。なお、試験片としては、150×70×4mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるようにスプレーで塗装し、23℃,50%RHの条件下で14日間乾燥したものを用いた。
○:現状試験片と比べて大きな変化が見られない。
△:現状試験片と比べてやや艶引けがある。
×:現状試験片と比べて著しい艶引け、割れ、剥がれがある。
【0065】<付着性>付着性試験は、JIS K5400 8.5.2碁盤目テープ法に準じ、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、碁盤目状(25マス;縦5分割×横5分割)に切り傷をつけ、この碁盤目の上にセロハン粘着テープをはり、テープの一端を持って塗面に直角方向に瞬間的に引き剥がし、塗膜の剥がれの面積を測定することで行った。なお、試験片としては、150×70×4mmのフレキシブルボードに乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物をスプレーで塗装し、23℃,50%RHの条件下で14日間乾燥したものを用いた。塗膜の全面積に対する塗膜の剥がれの面積から、付着性を以下の通り評価した。
○:塗膜の剥がれの面積が全面積の5%未満の場合△:塗膜の剥がれの面積が全面積の5%以上、35%未満の場合×:塗膜の剥がれの面積が全面積の35%以上の場合
【0066】<強制汚染>150×70×0.8mmのアルミ板に乾燥塗膜厚が50μmになるように塗料組成物をスプレーで塗装し、23℃,50%RHの条件下で14日間乾燥し、試験片を作製した。得られた試験片に、カーボン懸濁水(デグサ・ヒュルス社製カーボンブラック Color Black FW200 5部と脱イオン水95部にガラスビーズを加えペイントシェーカーで2時間分散した分散液)をエアスプレーで、隠ぺいするまで塗布し、直ちに60℃で1時間乾燥させた。乾燥後、室温まで放冷し、試験片の表面を流水下にてガーゼを使用して、汚れ物質が落ちなくなるまで洗浄した。洗浄後、室温で3時間乾燥し、汚れの程度を色差計にて測定して、試験前後における塗膜の明度差(ΔL*)を求め、以下の3段階で評価した。なお、明度差が小さいものほど、耐汚染性に優れた塗料であることを示している。
明度差(ΔL*)=[試験後の塗膜明度(L*1)−試験前の塗膜明度(L*0)]
○:明度差 −5以上△:明度差 −10以上 −5未満×:明度差 −10未満
【0067】<総合評価>上に示した塗料組成物の性能測定の結果に基づき、塗料組成物の総合評価を以下に示す基準で行った。
○:全てが○の評価であり、塗料組成物として非常に好適に使用できるレベル。
△:△の評価があり、塗料組成物として使用できるレベルであるが、その用途が限られる場合がある。
×:×の評価があり、塗料組成物として使用が困難なレベル。
【0068】次に、塗料組成物に配合する成分について説明する。
<(a)成分>(a−1) メチルフェニル系アルコキシシランオリゴマー(商品名:DC3074、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、有効成分100%、Si原子約25%含有)
(a−2) メチル系アルコキシシランオリゴマー(SR2402、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、有効成分100%,Si原子約30%含有)
【0069】<(b)成分>(b−1) 攪拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管、滴下装置を備えた反応器に、トルエン400部を仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温した。そこに、メチルメタクリレート200部、n−ブチルアクリレート130部、n−ブチルメタクリレート120部、ジメチルアミノエチルメタクリレート部50部、アゾビスイソブチロニトリル5部、トルエン10部からなる混合物を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた。さらに、アゾビスイソブチロニトリル2.5部、トルエン90部からなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で3時間反応させ、不揮発分(固形分)50%、粘度1000mPa・s(25℃)、重量平均分子量20000、アミン当量3100の、透明な第3級アミン含有アクリル樹脂溶液(b−1)を得た。
【0070】(b−2) 攪拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管、滴下装置を備えた反応器に、石油炭化水素系溶剤(商品名:LAWS、シェルジャパン株式会社製)300部、及び石油炭化水素系溶剤(商品名:HAWS、シェルジャパン株式会社製)100部を仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温した。そこに、n−ブチルアクリレート50部、n−ブチルメタクリレート200部、シクロヘキシルメタクリレート部200部、ジメチルアミノエチルメタクリレート50部、アゾビスイソブチロニトリル5部、LAWS10部からなる混合物を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた。さらに、アゾビスイソブチロニトリル2.5部、LAWS 90部からなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で3時間反応させ、不揮発分(固形分)50%、粘度1000mPa・s(25℃)、重量平均分子量15000、アミン価当量3100の、透明な第3級アミノ基含有アクリル樹脂溶液(b−2)を得た。
【0071】<(c)成分>(c−1) アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(商品名:アルミキレートM、川研ファインケミカル社製)
【0072】<(d)成分>(d−1) γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:SH6040、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
【0073】<(e)成分>(e−1) ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:エポライト400P、共栄社化学製、エポキシ当量315)
(e−2) ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:エポライト400E、共栄社化学製、エポキシ当量290)
(e−3) 攪拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管、滴下装置を備えた反応器に、トルエン400部を仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温した。そこに、メチルメタクリレート70部、n−ブチルアクリレート130部、n−ブチルメタクリレート150部、グリシジルメタクリレート70部、2酸2−エチルヘキシルアクリレート80部、アゾビスイソブチロニトリル5部、トルエン10部からなる混合物を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた。さらに、アゾビスイソブチロニトリル2.5部、トルエン90部からなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で3時間反応させ、不揮発分(固形分)50%、粘度1000mPa・s(25℃)、重量平均分子量20000、エポキシ当量1000の、透明なグリシジル含有アクリル樹脂溶液(e−3)を得た。
【0074】<(f)成分>(f−1) 酢酸ブチル(f−2) 石油炭化水素系溶剤(商品名:LAWS、シェルジャパン株式会社)
(f−3) 酸化チタン(商品名:TIPAQUE CR−90、石原産業製)
【0075】<塗料組成物の配合>
【例1】塗料配合例1〈第1液〉(a−1)18部、(b−1)30部、(f−1)24部、(f−3)25部、及びガラスビーズ100部を混合容器に仕込み、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。分散終了後、ガラスビーズの除去を行い、(c−1)3部を添加して、撹拌機で3分間混合した。得られた第1液は、固形分60%、粘度300mPa・s(25℃)であった。
【0076】〈第2液〉(e−1)10部、(a−2)30部、(d−1)15部、及び(f−1)45部を混合容器に仕込み、撹拌機で3分間撹拌した。得られた第2液は、固形分55%、粘度10mPa・s(25℃)であった。
【0077】上記第1液及び第2液を、第1液/第2液=5/1の重量比で混合、攪拌し、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物について、上記した方法で物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
【例2〜17】各成分の組成、及び第1液と第2液の重量比を表1に従い変更した以外は、例1と同様にして塗料組成物を作製し、得られた塗料組成物について、上記した方法で物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】


【0080】塗料配合例2〈第1液〉(a−1)30部、(a−2)10部、(f−3)41.7部、(d−1)5部、(e−1)3.3部、(f−1)10部、及びガラスビーズ100部を混合容器に仕込み、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。分散終了後、ガラスビーズの除去を行った。得られた第1液は、固形分90%、粘度500mPa・s(25℃)であった。
【0081】〈第2液〉(b−1)50部、(c−1)5部、及び(f−1)45部を混合容器に仕込み、撹拌機で3分間撹拌を行った。得られた第2液は固形分30%、粘度100mPa・s(25℃)であった。
【0082】上記第1液及び第2液を、第1液/第2液=1/1の重量比で混合、攪拌し、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物について、上記した方法で物性評価を行ったところ、例1の塗料組成物と同等の物性が確認された。
【0083】塗料配合例3〈第1液〉(b−1)37.5部、(f−3)31.2部、(f−1)27.5部、及びガラスビーズ100部を混合容器に仕込み、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。分散終了後、ガラスビーズの除去を行い、(c−1)3.8部を添加して、撹拌機で3分間混合した。得られた第1液は、固形分54%、粘度500mPa・s(25℃)であった。
【0084】〈第2液〉(a−1)45部、(a−2)15部、(d−1)7.5部、(e−1)5部、及び(f−1)27.5部を混合容器に仕込み、撹拌機で3分間撹拌を行った。得られた第2液は、固形分72.5%、粘度50mPa・s(25℃)であった。
【0085】上記第1液及び第2液を、第1液/第2液=2/1の重量比で混合、攪拌し、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物について、上記した方法で物性評価を行ったところ、例1の塗料組成物と同等の物性が確認された。
【0086】塗料配合例4〈第1液〉(a−1)18部、(a−2)6部、(b−1)30部、(f−1)18部、(f−3)25部、及びガラスビーズ100部を混合容器に仕込み、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。分散終了後、ガラスビーズの除去を行い、(c−1)3部を添加して、撹拌機で3分間混合した。得られた第1液は、固形分67%、粘度300mPa・s(25℃)であった。
【0087】〈第2液〉(e−1)10部、(d−1)15部、及び(f−1)75部を混合容器に仕込み、撹拌機で3分間撹拌を行った。得られた第2液は、固形分25%、粘度10mPa・s(25℃)であった。
【0088】上記第1液及び第2液を、第1液/第2液=5/1の重量比で混合、攪拌し、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物について、上記した方法で物性評価を行ったところ、例1の塗料組成物と同等の物性が確認された。
【0089】塗料配合例5〈第1液〉(a−1)22.5部、(a−2)7.5部、(f−3)31.2部、(d−1)3.8部、(e−1)2.5部、(f−1)28.7部、及びガラスビーズ100部を混合容器に仕込み、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。分散終了後、ガラスビーズの除去を行い、(c−1)3.8部を添加して、撹拌機で3分間混合した。得られた第1液は、固形分71%、粘度500mPa・s(25℃)であった。
【0090】〈第2液〉(b−1)75部、(f−1)25部を混合容器に仕込み、撹拌機で3分間撹拌を行った。得られた第2液は固形分38%、粘度100mPa・s(25℃)であった。
【0091】上記第1液及び第2液を、第1液/第2液=2/1の重量比で混合、攪拌し、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物について、上記した方法で物性評価を行ったところ、例1の塗料組成物と同等の物性が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)Si含量が15重量%以上であるアルコキシ基含有有機シラン化合物、(b)グリシジル基と反応し得る官能基を有するアクリル系共重合体、(c)硬化触媒、(d)グリシジル基含有オルガノシロキサン、及び(e)エポキシ当量が100〜1500であり、重量平均分子量が200以上、100,000以下である、Si原子を含有しないグリシジル基含有化合物を含む、オルガノポリシロキサン系塗料組成物。
【請求項2】 (e)成分の重量平均分子量が200以上、5000未満であり、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分の量が、(a)成分100重量部に対して、それぞれ、30〜130重量部(固形分)、0.1〜30重量部、1〜50重量部及び5〜30重量部(固形分)である、請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】 (e)成分の重量平均分子量が5,000以上、100,000以下であり、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分の量が、(a)成分100重量部に対して、それぞれ、30〜130重量部(固形分)、0.1〜30重量部、1〜50重量部及び10〜60重量部(固形分)である、請求項1記載の塗料組成物。
【請求項4】 さらに、有機溶剤を含む、請求項1記載の塗料組成物。
【請求項5】 有機溶剤が石油炭化水素系溶剤である、請求項4記載の塗料組成物。
【請求項6】 前記塗料組成物が第1液及び第2液からなる2液型の塗料組成物であり、(a)成分が第1液及び/又は第2液に存在し、(b)成分が第1液に存在し、(c)成分が第1液及び/又は第2液に存在し、(d)及び(e)成分が第2液に存在する、請求項1記載の塗料組成物。
【請求項7】 前記塗料組成物が第1液及び第2液からなる2液型の塗料組成物であり、(a)成分が第1液及び/又は第2液に存在し、(b)成分が第1液に存在し、(c)成分が第1液及び/又は第2液に存在し、(d)及び(e)成分が第2液に存在し、有機溶剤が第1液及び/又は第2液に存在する、請求項4記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2003−238895(P2003−238895A)
【公開日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−38137(P2002−38137)
【出願日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【出願人】(000116301)亜細亜工業株式会社 (18)
【出願人】(591137086)恒和化学工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】