説明

塗料製造管理方法及び塗料製造管理用非接触ICタグ

【課題】ユーザーが所望する塗色に対応する塗料の注文に対して、迅速に出荷するシステムを提供すること。
【解決手段】本発明は、非接触ICタグに塗料の配合情報を記憶させる工程、前記非接触ICタグを塗料容器に装着する工程、前記非接触ICタグに記憶された塗料の配合情報を読み取る工程及び前記配合情報に基づいて前記塗料容器に原色塗料及び/又は着色ペーストを装填する工程とを含むことを特徴とする塗料製造管理方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料製造管理方法及び塗料製造管理用非接触ICタグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ユーザーが所望する塗料の塗色は多種多様である。また、1回の注文で必要とされる量も少量である場合が多い。そこで、ユーザーから塗料の注文を受けた塗料会社や塗料販売店は、ユーザーが所望する塗色が得られる塗料を、原色塗料及び/又は着色ペーストを混合する調色を行なって製造する場合が多い。
【0003】
塗料会社の調色工場や塗料販売店においては、ユーザーが所望する塗色の色見本を参照して、調色者が手作業で調色したり、塗色の塗色コードや色名から配合情報を検索し、得られた配合情報に基づいて調色する場合がある。または、前記配合情報を自動調合機に入力して、出荷する容器内で該配合情報に基づいて缶内調色を行なう場合がある。
【0004】
特許文献1には、調色者が所望の色の塗料を簡便に正確に調色する調色支援システムとして、コード化された塗料配合データを計算機で処理し、表示することによって調色者に調色情報を提供するシステムが記載されている。しかしながら、コード化は、バーコードによるものであって、内容を変更できるものではないため、塗料製造後の管理を行なうことはできなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−269745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ユーザーが所望する塗色に対応する塗料の注文に対して、正確で迅速に出荷できるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
1.非接触ICタグに塗料の配合情報を記憶させる工程、前記非接触ICタグを塗料容器に装着する工程、前記非接触ICタグに記憶された塗料の配合情報を読み取る工程及び前記配合情報に基づいて前記塗料容器に原色塗料及び/又は着色ペーストを装填する工程とを含むことを特徴とする塗料製造管理方法、
2.非接触ICタグに塗料の塗色情報を記憶させる工程、前記非接触ICタグを塗料容器に装着する工程、前記非接触ICタグに記憶された塗料の塗色情報を読み取る工程、前記塗色情報に基づいて塗料の配合情報を取得する工程及び取得した配合情報に基づいて容器に原色塗料及び/又は着色ペーストを装填する工程とを含むことを特徴とする塗料製造管理方法、
3.前記塗色情報に基づく配合情報の取得をコンピュータカラーマッチングによって行なう2項記載の塗料製造管理方法、
4.塗色情報に対応した配合情報が蓄積されたデータベース内を検索して塗色情報に基づく配合情報を取得する2項記載の塗料製造管理方法、
5.塗料製造管理方法に使用する非接触ICタグであって、該非接触ICタグが装着される容器に装填される塗料の塗色情報及び配合情報のうちの少なくとも1つの情報、及び必要に応じて容器の識別コード、前記容器に装填される塗料の品種、塗料の製造ロット番号、塗料の製造年月日、塗料の使用期限、塗料の使用方法、塗料の安全情報、塗料の価格及び塗料の内容量、配送先から選択される1つ以上の情報が記憶されていることを特徴とする非接触ICタグ
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗料製造管理方法は、塗料容器に装着するICタグにユーザーから受注した塗色が得られる塗料の配合情報を記憶させることにより、前記配合情報を読み取る機構を具備した調合装置によって、該配合情報に基づいて原色塗料及び/又は着色ペーストなどを前記塗料容器に装填して前記塗色が得られる塗料を、短期間で簡便に調製し出荷可能とする効果を奏する。又は前記ICタグに所望の塗色の塗色情報を記憶させ、該塗色情報を読み取る機構を具備した調合装置等において、該塗色情報を読み取り、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を検索及び/又は計算取得して、取得した配合情報に基づいて塗料を調製することによって、短期間で簡便に塗料を出荷可能な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の一例を説明する。
【0010】
本発明は、塗料容器に装着が可能で、情報処理装置等に設けられたリーダ・ライタから各種情報が書き込み可能であって、調合装置等に設けられたリーダ・ライタによって該情報を読み取り可能な非接触ICタグを使用する塗料製造管理方法及び該非接触ICタグに関するものである。非接触ICタグとは、内部にアンテナを持ち、外部の情報処理装置等との間で無線通信を行なってデータを送受信することが可能な半導体集積回路が埋め込まれた小型のタグを意味する。
【0011】
図1及び図2は、本発明の実施の形態を示すフローチャート図である。
【0012】
ステップS1では、リーダ・ライタが設けられた情報処理装置において、所望の塗色に対応する塗料の配合情報が既知であるかを判断する。YESの場合には、ステップS6に進む。NOの場合には、ステップS2に進む。
【0013】
ステップS2では、非接触ICタグに書き込む情報を、所望の塗色の塗色情報とするか、所望の塗色に対応する塗料の配合情報であるかを決定する。書き込む情報が塗色情報である場合は、図2のステップS10に進む。配合情報である場合には、ステップS3に進む。
【0014】
ステップS3では、前記情報処理装置と電子データを送受信可能なネットワーク回線によって接続されている配合データベース内に、所望の塗色に対応する塗料の配合情報が格納されているかを判断する。YESであればステップS5に進む。NOであればステップS4に進む。
【0015】
ステップS4では、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を公知のCCM(Computer Color Matching)によって計算取得する。
【0016】
ステップS5では、前記配合データベース内を検索して、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を取得する。ステップS5までで、前記情報処理装置は、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を取得することができる。
【0017】
ステップS6では、前記情報処理装置は、これまでに取得している所望の塗色に対応する塗料の配合情報をリーダ/ライタによって、非接触ICタグに書き込む。
【0018】
ステップS7では、前記非接触ICタグを、塗料容器に装着する。
【0019】
ステップS8では、調合装置は、設けられたリーダ・ライタを使用して前記非接触ICタグから、配合情報を読み取る。
【0020】
ステップS9では、調合装置は、前記配合情報に基づいて、塗料容器に原色塗料や顔料ペースと等を所定量充填する。その後、攪拌混合し、必要に応じて容器を乾燥した不活性ガスで封入した後に密栓して、所望の塗色に対応する塗料の調製が終了する。
【0021】
図には示していないが、リーダ・ライタが設けられた計量装置や表示装置に読み取った配合情報を表示せしめて、表示された配合情報に基づいて作業者が塗料を製造してもよい。
【0022】
次に図2を参照して、前記非接触ICタグに、所望の塗色の塗色情報を書き込む場合について説明する。
【0023】
ステップS10では、前記情報処理装置は、所望の塗色の塗色情報をリーダ・ライタによって、非接触ICタグに書き込む。
【0024】
ステップS11では、前記非接触ICタグを、塗料容器に装着する。
【0025】
ステップS12では、調合装置は、設けられたリーダ・ライタを使用して前記非接触ICタグから、塗色情報を読み取る。
【0026】
ステップS13では、調合装置と電子データを送受信可能なネットワーク回線によって接続されている配合データベース内に、所望の塗色に対応する塗料の配合情報が格納されているかを判断する。YESであればステップS14に進む。NOであればステップS13に進む。
【0027】
ステップS14では、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を公知のCCM(Computer Color Matching)によって計算取得する。
【0028】
ステップS15では、前記配合データベース内を検索して、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を取得する。ステップS15までで、前記調合装置は、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を取得することができる。
【0029】
ステップS16では、調合装置は、前記配合情報に基づいて、塗料容器に原色塗料や顔料ペースと等を所定量充填する。その後、攪拌混合し、必要に応じて容器を窒素封入した後に密栓して、所望の塗色に対応する塗料の調製が終了する。
【0030】
なお、図1又は図2を参照して説明する手順は、本実施の形態に係る調色配合取得方法を示す1例であり、ステップの順序が相違してもよく、特定のステップが省かれてもよく、別のステップを含んでいてもよい。
【0031】
図3は、本発明方法を実施可能なシステム体系のモデル図である。ここでは、本発明の塗料製造管理方法の形態として、情報処理装置において、所望の塗色に対応する塗料の配合情報を取得して、取得した配合情報を非接触ICタグに書き込んで、前記配合情報が書き込まれた非接触ICタグを塗料容器に装着し、一方、調合装置において塗料容器に装着された前記非接触ICタグから配合情報を読み取り、該配合情報に基づいて、前記塗料容器に原色塗料及び/又は着色ペーストを装填する例を挙げて説明するが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0032】
図3に示すように、本発明の塗料製造管理方法は、非接触ICタグへの電子データの読み書きが可能なリーダ・ライタが設けられた情報処理装置1、情報処理装置1と電子データの送受信が可能な配合データベース2、装着される容器に装填される塗料の塗色情報及び配合情報のうちの少なくとも1つの情報、及び必要に応じて容器の識別コード、前記容器に装填される塗料の品種、塗料の製造ロット番号、塗料の製造年月日、塗料の使用期限、塗料の使用方法、塗料の安全情報、塗料の価格及び塗料の内容量、配送先などから選択される1つ以上の情報が記憶することができる非接触ICタグ3、前記情報処理装置1と同様にリーダ・ライタが設けられていて、非接触ICタグから配合情報又は塗色情報を読み出して該配合情報又は塗色情報より検索等を行なって取得した配合情報に基づいて、塗料容器に原色塗料、クリヤ塗料、着色ペースト等の少なくとも1種を装填する調合装置4を有するシステムによって実施することができる。また、本発明は、予め塗料容器に白色塗料やクリヤ塗料が一定量装填している場合も包含する。
【0033】
情報処理装置1は、所望の塗色に対応する塗料の配合情報や塗色情報などを電子データとして非接触ICタグ3に書き込むことができるリーダ・ライタ1Aが設けられている装置であって、例えば市販のパーソナルコンピュータ、携帯端末装置等を挙げることができる。
【0034】
非接触ICタグ3に書き込む配合情報とは、原色塗料及び/又は着色ペーストなどの量及び組成を意味する。そのほかにも所望の塗色に対応する塗料を調製するために必要な周辺情報も同時に書き込むことができる。該周辺情報としては、例えば希釈溶媒の種類や量、艶調製剤やレオロジーコントロール剤、硬化触媒等の添加剤の種類や量等を挙げることができる。所望の塗色に対応する塗料の配合情報は、例えば前記情報処理装置1が、塗料調色工場に設置されたパーソナルコンピュータであれば、予め内部に電子データとして格納されていることがある。しかし、情報処理装置1内部に格納されていない場合においては、以下の方法で取得することができる。
【0035】
塗色情報に基づいて所望の塗色に対応する塗料の配合情報を取得する方法としては、塗色情報に基づき配合検索することにより行なうことができる。配合データベース2には、塗色情報と対応する塗料の配合情報とが予め格納されている。情報処理装置1は、配合データベース2内を所望の塗料の塗色情報に基づいて検索して、配合情報を取得することができる。配合データベース2は、情報処理装置1と電子データの送受信が可能なネットワーク回線で接続されている。
【0036】
配合検索に換えて、公知のCCM(Computer Color Matching)によって、所望の塗料の塗色情報に基づき、計算してもよい。
【0037】
前記非接触ICタグ3には、配合情報及び塗色情報のほかに、非接触ICタグ3が装着される容器の識別コード、前記容器に装填される塗料の品種、塗料の製造ロット番号、塗料の製造年月日、塗料の使用期限、塗料の使用方法、塗料の安全情報、塗料の価格及び塗料の内容量、配送先等を書き込むことができる。ここで書き込まれた情報は、リーダ・ライタが設けられた各種の情報端末装置であれば、適宜読み取ることが可能なので、塗料の調製だけでなく、調製された塗料の出荷や配送等の流通の過程においても使用することができる。
【0038】
配合情報及び必要に応じて他の情報が書き込まれた非接触ICタグ3は、図2に示していない塗料容器に装着される。塗料容器とは、例えば金属缶やプラスチックコンテナ等、調製された塗料が充填され、消費されるまで保存可能な容器を意味する。
【0039】
調合装置4は、配合情報に基づいて、原色塗料及び/又は着色ペーストを容器に装填することができる装置である。情報処理装置1と同様にリーダ・ライタ4Aが設けられていて、非接触ICタグ2に塗料の配合情報が書き込まれる場合には、該配合情報を塗料容器に装着された非接触ICタグ2から読み取ることができる。また、非接触ICタグから読み取った配合情報を表示する機構を具備していてもよい。
非接触ICタグに塗色情報が書き込まれている場合においては、前記塗色情報を読み取り、塗色情報から対応する塗料の配合情報を検索、計算によって取得することが可能な情報処理機能を備えていてもよく、図3には示していないが、情報処理機能を備えた装置と電子データを送受信可能なネットワークで接続されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の塗料製造管理方法及び塗料製造管理用非接触ICタグは、調色工場及び塗料販売店等において、ユーザーから受注した塗色に対応する塗料を迅速に出荷する塗料製造流通分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の実施の形態を示すフローチャート図である。
【図3】本発明を実施可能なシステム体系を示すモデル図である。
【符号の説明】
【0042】
1.情報処理装置
1A.リーダ・ライタ
2.配合データベース
3.非接触ICタグ
4.調合装置
4A.リーダ・ライタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICタグに塗料の配合情報を記憶させる工程、前記非接触ICタグを塗料容器に装着する工程、前記非接触ICタグに記憶された塗料の配合情報を読み取る工程及び前記配合情報に基づいて前記塗料容器に原色塗料及び/又は着色ペーストを装填する工程とを含むことを特徴とする塗料製造管理方法。
【請求項2】
非接触ICタグに塗料の塗色情報を記憶させる工程、前記非接触ICタグを塗料容器に装着する工程、前記非接触ICタグに記憶された塗料の塗色情報を読み取る工程、前記塗色情報に基づいて塗料の配合情報を取得する工程及び取得した配合情報に基づいて容器に原色塗料及び/又は着色ペーストを装填する工程とを含むことを特徴とする塗料製造管理方法。
【請求項3】
前記塗色情報に基づく配合情報の取得をコンピュータカラーマッチングによって行なう請求項2記載の塗料製造管理方法。
【請求項4】
塗色情報に対応した配合情報が蓄積されたデータベース内を検索して塗色情報に基づく配合情報を取得する請求項2記載の塗料製造管理方法。
【請求項5】
塗料製造管理方法に使用する非接触ICタグであって、該非接触ICタグが装着される容器に装填される塗料の塗色情報及び配合情報のうちの少なくとも1つの情報、及び必要に応じて容器の識別コード、前記容器に装填される塗料の品種、塗料の製造ロット番号、塗料の製造年月日、塗料の使用期限、塗料の使用方法、塗料の安全情報、塗料の価格及び塗料の内容量、配送先から選択される1つ以上の情報が記憶されていることを特徴とする非接触ICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−327017(P2007−327017A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161650(P2006−161650)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】