塗装ブースにおけるスラッジ処理用回収装置
【課題】 処理水を使用する塗装ブースに捕集されるスラッジを短時間で効率よく回収し、作業者の負担を軽減する。
【解決手段】
塗装ブースのスラッジ回収装置において、水槽中に配置したポンプの吸込み部に水中で開口する吸引口とフレキシブルホースの接続口を設け、そのフレキシブルホースの一方には吸込み管を形成するハンドルを接続すると共に、その先端に吸込収集装置を設ける。吸込収集装置はハンドルで水槽内を簡単に移動できるよう構成し、ポンプの吐出部にはスラッジ分離装置に接続される吐出管と、別の撹拌ホースによって接続されて水槽内の所定の位置に設置される槽内撹拌用噴射管に分岐接続する。
【解決手段】
塗装ブースのスラッジ回収装置において、水槽中に配置したポンプの吸込み部に水中で開口する吸引口とフレキシブルホースの接続口を設け、そのフレキシブルホースの一方には吸込み管を形成するハンドルを接続すると共に、その先端に吸込収集装置を設ける。吸込収集装置はハンドルで水槽内を簡単に移動できるよう構成し、ポンプの吐出部にはスラッジ分離装置に接続される吐出管と、別の撹拌ホースによって接続されて水槽内の所定の位置に設置される槽内撹拌用噴射管に分岐接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、塗料用ミストの捕集に処理水を用い、処理水中に取り込まれた塗料スラッジを効率的に回収処理するための装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
塗装用ブースは、塗料ミストの捕集方法により、大きく分けて乾式と湿式に分類される。 捕集の効率化を考慮した場合多くが処理水を使用した水洗式ないしはこれに近い方式の塗装ブースが使用されている。これらの塗装ブースは処理水を貯留する水槽を下部に備え、噴霧されて浮遊する塗料ミストを吸引し処理水で捕集した状態で水槽内に取り込まれる。このような塗料ミストは処理水に取り込まれた状態でスラッジとなり、水槽内に浮遊もしくは沈殿する。
【０００３】
一方水槽内の処理水は、塗料ミストを捕集するための水洗シャワーや水幕の形成に使用するためポンプ等によって循環使用されるように構成されている。したがって処理水にはスラッジが蓄積することになり定期的、あるいは継続的にスラッジの回収が必要となる。スラッジの回収はその発生程度によって異なるが、日常的に使用される塗装ブースの場合、頻繁に行う必要があり、ポンプで処理水とスラッジを回収し、遠心分離等の方法でスラッジと処理水を分離し、処理水は水槽に戻すなり、前記ミスト捕集のために所定の箇所に送り込まれる構成が多く用いられている。
【０００４】
スラッジの分離装置に送り込む処理水は、効率的にスラッジを回収するために集中的にスラッジを吸引することが求められるが、塗装ブースの水槽内には広い範囲で還流されてくるため、全体に分散する状態になる。このため、例えば特開平６−２７７４０５号公報や特開平１０−１１３５７８号公報に記載されている如く、水槽内に戻す分離後の処理水やポンプからの吐出水の一部を用い、水槽内の一部に配置した回収用の吸い込み部、ないしはポンプの吸込み部に向けて水流を形成し、スラッジを集めるようにしている。
【０００５】
また特開平６−２９６９１１号公報や特開２００３−２８４９７８号公報等のように、回収用に別の水槽を設け、集中的にスラッジを回収できるようにしたり、流れによって集まってくるスラッジを効率的に流し込む収集用の装置を設けたり、いくつかの提案がされている。しかしこのように対応しても、水槽内に集積されるスラッジは大きな水槽になるほど集まりにくく、水流だけでは効率のよい回収が出来ない状況にあった。
【０００６】
スラッジの回収とその分離は、塗装ブースを安定して使用し、結果的に塗装品質を維持するために重要であり、いくつかの改善がなされている状況にあってもまだ十分でなく、作業者は定期的な清掃管理を余儀なくされている。このような作業は作業者の大きな負担になるだけでなく、工業的な生産性にも影響を与え、さらに効率的に回収可能な装置が望まれている。
【特許文献１】特開平６−２７７４０５号公報特開平１０−１１３５７８号公報特開平６−２９６９１１号公報特開２００３−２８４９７８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上記のように制限ある水流ではスラッジを所定の吸い込み部に簡単に集めることは難しく、回収作業に伴うメンテナンスに多くの時間が費やされていた。本発明は塗装ブースにおいて水槽内の処理水に取り込まれたスラッジを効率的に収集し、作業者の回収作業に於いても短時間の処理で簡単に行うことが出来、その負担を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
ブースのスラッジ回収装置において、水槽中に配置したポンプの吸込み部に水中で開口する吸引口とフレキシブルホースの接続口を設け、該フレキシブルホースの一方には吸込み管を形成するハンドルを接続すると共に、その先端に吸込収集装置を設け、ポンプの吐出部にはスラッジ分離装置に接続される回収管路と、別の管路によって水槽内の所定の位置に設置される槽内撹拌ホースに接続される噴射管とを分岐接続させる。ハンドルの先端に接続する吸込収集装置は、異なる吸引口を有するものが用意され、それぞれ交換可能とする。
【０００９】
さらに効果的の行うために、吸込収集装置は下面に高さ調整可能な滑動脚を設けた枡の上端部に流入切欠きを設け、内底部と前記吸込み管とを接続する。流入切欠きはＶ字形状として枡の側板に設け、上下に調整可能とする。ポンプの吸込み部には、吸引口とホース接続口の流通を調整する切替弁を設ける。
【発明の効果】
【００１０】
上記本発明によれば、塗装ブースの運転により、水槽に貯留された処理水の中に取り込まれたスラッジは、定期的もしくは必要の際、吸込管を形成するハンドルの先端に設けた吸込収集装置によって、スラッジの集中する箇所に容易に移動して効率よく吸込むことが出来る。水槽中に分散するスラッジは水中ポンプから吐出された処理水の一部が水槽内に配置された噴射ノズルによって形成される流れによって集められることで高い密度のスラッジを含んだ処理水を吸引でき、短時間でのスラッジ処理が可能となる。
【００１１】
またスラッジの性状によって水槽底部に沈殿するものは、水中ポンプの吸込み口から吸引されるときの水流によっても同時に吸引されるため、さらに効率を高めることも可能で、必要に応じて使い分けることも出来る。同様に前記噴射ノズルからの水流が必要ないときには停止させることは容易であり、水槽の液面を静止させた状態で効率よく吸引することも可能となる。
【００１２】
より使い易く、効率よく作業を可能にする上で、水面に浮上するスラッジに対しては吸込収集装置を、水面部分で一部切欠きを設けた枡によって水面に浮いたスラッジを枡内に流れこむようにすれば、その時に処理水が落ち込む流れによって周囲のスラッジが徐々に引き寄せられて吸収されることになる。この枡はハンドルによって水槽内を自由に移動でき、スラッジの多いところから集中的に吸込み、さらに切欠きの位置を上下させることで開口部の広さを変化させることでも効率を高めることが出来る。
【００１３】
また沈殿性の高いスラッジである場合には、吸込収集装置を幅広のスリットで形成される吸引口を持つものに変えることによって水槽の底部に沈殿したスラッジを効率よく吸引することが出来る。この場合に水槽内に不要な水流が形成されないように噴射ノズルからの噴流や水中ポンプの吸込み流を停止させることもでき、使用される塗装ブースと塗料等による塗装条件によって種々の対応が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
図１は本発明を実施する塗装ブースの一例を示す概要図である。一般的に汎用の塗装ブースは塗装室1とミスト処理室2によって形成され、下部に水槽3を備えている。この場合ミスト処理に液体、多くは水を使用しているためで、飛散した塗料の噴霧粒子を捕集し、きれいな空気のみを外部に排出することが塗装ブースに求められる大きな機能となっている。水等を使用しない乾式の塗装ブースも使用されているが、本発明では処理水を使用する塗装ブースにかかるものである。
【００１５】
下部の水槽に貯留された処理水は、ポンプにより噴霧粒子を捕捉するウォーターカーテン4の形成や、水洗シャワー5を形成する噴霧ノズル6に送りこまれる。これらのミスト捕集機構は塗装ブースによっても異なるが処理水に取り込まれた塗料ミストは処理水と共に水槽内に還流し、処理薬剤の作用によってスラッジとして分離し、浮遊もしくは沈殿する。
【００１６】
この処理水を再びポンプにて吸込み、送り出す場合は、図示されていないが、フィルター等を通しスラッジを濾過した上で、前記噴霧ノズル6等に送り込まれる。したがって詰まりなどを起こさないきれいな処理水を常に送り込むことが必要で、これを怠ると塗装ブースの捕集性能を十分に発揮できない状態や、スラッジによる悪臭、塗装ブース各部や周囲への汚染を引き起こすことになる。なお塗装ブースの形態によっては、ポンプを使用せずに吸引気流の作用によりミスト捕集の処理水膜を形成したり噴霧域を形成する場合があるが、本発明において使用され図示されたポンプ7は、水槽中のスラッジを処理水と共に吸引し、分離装置によってスラッジのみを回収する手段として使用される水中ポンプであり、前記いずれの塗装ブースにも用いられるものである。
【００１７】
これらのスラッジは少量であれば、定期的に取り除くことでも良いが、工業的に使用される塗装ブースでは処理水と共に吸引し、遠心分離等の分離装置8によりスラッジのみを取り除き、きれいになった処理水を水槽に戻す装置が使用されることが多い。図２はスラッジを処理水と共に吸引するポンプ7と吸引装置部分を示している。
【００１８】
水槽3内には水中ポンプ7が設置され、その吐出側は前記分離装置8に送り込む吐出管11と、この吐出管から分岐された水槽撹拌ホース12が接続されている。水槽撹拌ホース12は図５に示すふたつの例のように塗装ブースの水槽中にそのまま還流させるもので、水槽内に一定の水流を形成し、スラッジを集中させることによって捕集しやすくしている。水槽撹拌ホース12は塗装ブースの大きさや形状によって配管され、噴射する先端に設けた噴射管13は必要に応じた箇所に必要な個数設けられている。またこれらの噴射管からの処理水は必要に応じて噴射したり、停止したりすることができるようにバルブ14を設けている。
【００１９】
吐出管より、別途設けられたスラッジ分離装置8に送り込まれた処理水は、スラッジと処理水に分離され、処理水は戻り管によって再び水槽3内に還流される。分離装置8はいろいろな種類の装置が提案されているが、最も一般的な装置として遠心分離による脱水方式の装置が用いられる。これはスラッジが含まれる処理水を回転する遠心槽内に入れ、スラッジのみを内周に集め、余った水分を水槽3に戻して再使用する方式である。これらの装置は一般的であるので詳細な説明は省略する。尚、水槽3に戻す場合は、水槽内に好ましい水流を作り、前記スラッジを回収し易いように配置されることが望ましい。
【００２０】
また水中ポンプ7の吸込み側には水槽内の処理水を直接吸込む吸引口15と、フレキシブルホース16が接続されるホース接続口17が設けられ、このフレキシブルホース16の先端に浮遊スラッジもしくは沈殿スラッジを取り込む吸引収集装置20が接続される。さらに吸引口15とホース接続口17のそれぞれの流通を切替えもしくは流通を制限する切替弁18が設けられている。一例ではポンプ吸引口15を常時流通状態とし、ホース接続口17側に調節弁として設けているが、2つの通路が均等に開口する位置を中心としてそれぞれの開口比が変動する分配弁を用いても良い。これにより吸引口15と吸引収集装置20の双方から吸引したり、いずれか一方からの吸引に切り替えることができる。
【００２１】
図３の例は吸引収集装置20としての一例を示す浮遊スラッジ回収用の立方体の枡21で構成され、側面の少なくとも１箇所は、上端にＶ字型の切込み22を設けた側板23が上下に取付位置を調節可能として取り付けられている。簡単な例として金具の取付位置を替えられるようにしたり、差込みによる取付けでとめる位置を変えるなどいくつかの方法が考えられる。
【００２２】
このV字型の切込み22は、枡21が水槽中に置かれたとき水面が切込み22の位置にくるように設定され、これによって浮遊するスラッジと共に処理水が勢いよく枡21内に流入する構成となっている。この時に流入量が切込み22の位置によって調整され、またスラッジの状態によって狭くしたり、広くしたり調整される。この方式の枡21はすでに提案されていて、切込み22からの流入により付近の浮遊スラッジは落ち込む時の水流に引き寄せられながら徐々に枡に流入するが、その距離が離れると急激に引き寄せられる力が弱くなり十分なスラッジ回収ができないため、前述の如く別の水流を使用することで効率を上げるようにしている。
【００２３】
枡21には底部において、入り込んだ処理水を回収する吸込み管24が接続されている。該吸込み管24は軽量化されたパイプが使用され、ハンドルとして機能するように構成される。枡21との接続部は固定でも良いが操作性を考慮して取付角度が自由に可動するユニバーサル方式の継手を使用することでも良い。前記吸込み管24はさらに枡21の下部は滑動が容易にできる脚25が取り付けられ、この脚25は高さが調節できる構成を有している。すなわち予め水槽3の水面高さを考慮して作成されるが、使用時の条件により水面高さを厳密に調整する必要がある場合等に準備されることが望ましい。さらに水槽3の底面とは移動時の抵抗が少ないことが望ましく、形状や材質を滑りやすいものとするか、もしくは回転体を設けた構造とするなど、枡21の大きさや移動頻度など、使用条件によっていくつかの手段が選択できる。
【００２４】
本構成によれば、枡21自体を容易に水槽3内で移動可能とし、流入させる切込み22部分を集中して浮遊するスラッジの近くに置くことができ、極めて効率的に浮遊スラッジを短時間で回収することができる。作業の頻度は使用状態によって定期的もしくは都度行えばよく、通常の塗装時は固定しておくことで回収ができる。またスラッジ回収時のみの使用であれば短時間の作業によって動力の消費も大幅に削減することができる。
【００２５】
同様に吸引収集装置の代表的な他の実施例として、沈殿性のスラッジが多い場合は、これを効率よく収集する装置として、図４の構成を提案することができる。前記枡21と交換して使用し、ハンドルとなる吸込管24の先端に設けられた吸引収集装置26は、前記吸込み管24に着脱が容易にできる吸引ノズル27で構成されている。この場合開口は、吸込み量に応じて細長いスリット28で形成され、吸引するスラッジの比率が多く、作業性を上げることができる。必要によりスリット幅を可変とすれば、状況に応じた効率の高い吸引を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明が適用される塗装ブースの一実施例を示す概要構成図。
【図２】処理水をスラッジと共に吸引しスラッジ処理装置に送るポンプと吸引収集装置の実施例を示す構成図。
【図３】浮遊スラッジを回収する吸引収集装置の一実施例を示す外観図
【図４】沈殿スラッジを回収する吸引収集装置の実施例を示す側面図と平面図
【図５】水槽の大きさによる水槽内の水流の違いを示す平面図
【符号の説明】
【００２７】
１ 塗装室
２ ミスト処理室
３ 水槽
７ ポンプ
８ 分離装置
11 吐出管
12 水槽撹拌ホース
13 噴射管
14 バルブ
15 吸引口
16 フレキシブルホース
17 ホース接続口
18 切替弁
20 吸引収集装置
21 枡
22 切込み
23 側板
24 吸込み管
25 脚
27 吸引ノズル
28 スリット
【技術分野】
【０００１】
本発明は、塗料用ミストの捕集に処理水を用い、処理水中に取り込まれた塗料スラッジを効率的に回収処理するための装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
塗装用ブースは、塗料ミストの捕集方法により、大きく分けて乾式と湿式に分類される。 捕集の効率化を考慮した場合多くが処理水を使用した水洗式ないしはこれに近い方式の塗装ブースが使用されている。これらの塗装ブースは処理水を貯留する水槽を下部に備え、噴霧されて浮遊する塗料ミストを吸引し処理水で捕集した状態で水槽内に取り込まれる。このような塗料ミストは処理水に取り込まれた状態でスラッジとなり、水槽内に浮遊もしくは沈殿する。
【０００３】
一方水槽内の処理水は、塗料ミストを捕集するための水洗シャワーや水幕の形成に使用するためポンプ等によって循環使用されるように構成されている。したがって処理水にはスラッジが蓄積することになり定期的、あるいは継続的にスラッジの回収が必要となる。スラッジの回収はその発生程度によって異なるが、日常的に使用される塗装ブースの場合、頻繁に行う必要があり、ポンプで処理水とスラッジを回収し、遠心分離等の方法でスラッジと処理水を分離し、処理水は水槽に戻すなり、前記ミスト捕集のために所定の箇所に送り込まれる構成が多く用いられている。
【０００４】
スラッジの分離装置に送り込む処理水は、効率的にスラッジを回収するために集中的にスラッジを吸引することが求められるが、塗装ブースの水槽内には広い範囲で還流されてくるため、全体に分散する状態になる。このため、例えば特開平６−２７７４０５号公報や特開平１０−１１３５７８号公報に記載されている如く、水槽内に戻す分離後の処理水やポンプからの吐出水の一部を用い、水槽内の一部に配置した回収用の吸い込み部、ないしはポンプの吸込み部に向けて水流を形成し、スラッジを集めるようにしている。
【０００５】
また特開平６−２９６９１１号公報や特開２００３−２８４９７８号公報等のように、回収用に別の水槽を設け、集中的にスラッジを回収できるようにしたり、流れによって集まってくるスラッジを効率的に流し込む収集用の装置を設けたり、いくつかの提案がされている。しかしこのように対応しても、水槽内に集積されるスラッジは大きな水槽になるほど集まりにくく、水流だけでは効率のよい回収が出来ない状況にあった。
【０００６】
スラッジの回収とその分離は、塗装ブースを安定して使用し、結果的に塗装品質を維持するために重要であり、いくつかの改善がなされている状況にあってもまだ十分でなく、作業者は定期的な清掃管理を余儀なくされている。このような作業は作業者の大きな負担になるだけでなく、工業的な生産性にも影響を与え、さらに効率的に回収可能な装置が望まれている。
【特許文献１】特開平６−２７７４０５号公報特開平１０−１１３５７８号公報特開平６−２９６９１１号公報特開２００３−２８４９７８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上記のように制限ある水流ではスラッジを所定の吸い込み部に簡単に集めることは難しく、回収作業に伴うメンテナンスに多くの時間が費やされていた。本発明は塗装ブースにおいて水槽内の処理水に取り込まれたスラッジを効率的に収集し、作業者の回収作業に於いても短時間の処理で簡単に行うことが出来、その負担を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
ブースのスラッジ回収装置において、水槽中に配置したポンプの吸込み部に水中で開口する吸引口とフレキシブルホースの接続口を設け、該フレキシブルホースの一方には吸込み管を形成するハンドルを接続すると共に、その先端に吸込収集装置を設け、ポンプの吐出部にはスラッジ分離装置に接続される回収管路と、別の管路によって水槽内の所定の位置に設置される槽内撹拌ホースに接続される噴射管とを分岐接続させる。ハンドルの先端に接続する吸込収集装置は、異なる吸引口を有するものが用意され、それぞれ交換可能とする。
【０００９】
さらに効果的の行うために、吸込収集装置は下面に高さ調整可能な滑動脚を設けた枡の上端部に流入切欠きを設け、内底部と前記吸込み管とを接続する。流入切欠きはＶ字形状として枡の側板に設け、上下に調整可能とする。ポンプの吸込み部には、吸引口とホース接続口の流通を調整する切替弁を設ける。
【発明の効果】
【００１０】
上記本発明によれば、塗装ブースの運転により、水槽に貯留された処理水の中に取り込まれたスラッジは、定期的もしくは必要の際、吸込管を形成するハンドルの先端に設けた吸込収集装置によって、スラッジの集中する箇所に容易に移動して効率よく吸込むことが出来る。水槽中に分散するスラッジは水中ポンプから吐出された処理水の一部が水槽内に配置された噴射ノズルによって形成される流れによって集められることで高い密度のスラッジを含んだ処理水を吸引でき、短時間でのスラッジ処理が可能となる。
【００１１】
またスラッジの性状によって水槽底部に沈殿するものは、水中ポンプの吸込み口から吸引されるときの水流によっても同時に吸引されるため、さらに効率を高めることも可能で、必要に応じて使い分けることも出来る。同様に前記噴射ノズルからの水流が必要ないときには停止させることは容易であり、水槽の液面を静止させた状態で効率よく吸引することも可能となる。
【００１２】
より使い易く、効率よく作業を可能にする上で、水面に浮上するスラッジに対しては吸込収集装置を、水面部分で一部切欠きを設けた枡によって水面に浮いたスラッジを枡内に流れこむようにすれば、その時に処理水が落ち込む流れによって周囲のスラッジが徐々に引き寄せられて吸収されることになる。この枡はハンドルによって水槽内を自由に移動でき、スラッジの多いところから集中的に吸込み、さらに切欠きの位置を上下させることで開口部の広さを変化させることでも効率を高めることが出来る。
【００１３】
また沈殿性の高いスラッジである場合には、吸込収集装置を幅広のスリットで形成される吸引口を持つものに変えることによって水槽の底部に沈殿したスラッジを効率よく吸引することが出来る。この場合に水槽内に不要な水流が形成されないように噴射ノズルからの噴流や水中ポンプの吸込み流を停止させることもでき、使用される塗装ブースと塗料等による塗装条件によって種々の対応が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
図１は本発明を実施する塗装ブースの一例を示す概要図である。一般的に汎用の塗装ブースは塗装室1とミスト処理室2によって形成され、下部に水槽3を備えている。この場合ミスト処理に液体、多くは水を使用しているためで、飛散した塗料の噴霧粒子を捕集し、きれいな空気のみを外部に排出することが塗装ブースに求められる大きな機能となっている。水等を使用しない乾式の塗装ブースも使用されているが、本発明では処理水を使用する塗装ブースにかかるものである。
【００１５】
下部の水槽に貯留された処理水は、ポンプにより噴霧粒子を捕捉するウォーターカーテン4の形成や、水洗シャワー5を形成する噴霧ノズル6に送りこまれる。これらのミスト捕集機構は塗装ブースによっても異なるが処理水に取り込まれた塗料ミストは処理水と共に水槽内に還流し、処理薬剤の作用によってスラッジとして分離し、浮遊もしくは沈殿する。
【００１６】
この処理水を再びポンプにて吸込み、送り出す場合は、図示されていないが、フィルター等を通しスラッジを濾過した上で、前記噴霧ノズル6等に送り込まれる。したがって詰まりなどを起こさないきれいな処理水を常に送り込むことが必要で、これを怠ると塗装ブースの捕集性能を十分に発揮できない状態や、スラッジによる悪臭、塗装ブース各部や周囲への汚染を引き起こすことになる。なお塗装ブースの形態によっては、ポンプを使用せずに吸引気流の作用によりミスト捕集の処理水膜を形成したり噴霧域を形成する場合があるが、本発明において使用され図示されたポンプ7は、水槽中のスラッジを処理水と共に吸引し、分離装置によってスラッジのみを回収する手段として使用される水中ポンプであり、前記いずれの塗装ブースにも用いられるものである。
【００１７】
これらのスラッジは少量であれば、定期的に取り除くことでも良いが、工業的に使用される塗装ブースでは処理水と共に吸引し、遠心分離等の分離装置8によりスラッジのみを取り除き、きれいになった処理水を水槽に戻す装置が使用されることが多い。図２はスラッジを処理水と共に吸引するポンプ7と吸引装置部分を示している。
【００１８】
水槽3内には水中ポンプ7が設置され、その吐出側は前記分離装置8に送り込む吐出管11と、この吐出管から分岐された水槽撹拌ホース12が接続されている。水槽撹拌ホース12は図５に示すふたつの例のように塗装ブースの水槽中にそのまま還流させるもので、水槽内に一定の水流を形成し、スラッジを集中させることによって捕集しやすくしている。水槽撹拌ホース12は塗装ブースの大きさや形状によって配管され、噴射する先端に設けた噴射管13は必要に応じた箇所に必要な個数設けられている。またこれらの噴射管からの処理水は必要に応じて噴射したり、停止したりすることができるようにバルブ14を設けている。
【００１９】
吐出管より、別途設けられたスラッジ分離装置8に送り込まれた処理水は、スラッジと処理水に分離され、処理水は戻り管によって再び水槽3内に還流される。分離装置8はいろいろな種類の装置が提案されているが、最も一般的な装置として遠心分離による脱水方式の装置が用いられる。これはスラッジが含まれる処理水を回転する遠心槽内に入れ、スラッジのみを内周に集め、余った水分を水槽3に戻して再使用する方式である。これらの装置は一般的であるので詳細な説明は省略する。尚、水槽3に戻す場合は、水槽内に好ましい水流を作り、前記スラッジを回収し易いように配置されることが望ましい。
【００２０】
また水中ポンプ7の吸込み側には水槽内の処理水を直接吸込む吸引口15と、フレキシブルホース16が接続されるホース接続口17が設けられ、このフレキシブルホース16の先端に浮遊スラッジもしくは沈殿スラッジを取り込む吸引収集装置20が接続される。さらに吸引口15とホース接続口17のそれぞれの流通を切替えもしくは流通を制限する切替弁18が設けられている。一例ではポンプ吸引口15を常時流通状態とし、ホース接続口17側に調節弁として設けているが、2つの通路が均等に開口する位置を中心としてそれぞれの開口比が変動する分配弁を用いても良い。これにより吸引口15と吸引収集装置20の双方から吸引したり、いずれか一方からの吸引に切り替えることができる。
【００２１】
図３の例は吸引収集装置20としての一例を示す浮遊スラッジ回収用の立方体の枡21で構成され、側面の少なくとも１箇所は、上端にＶ字型の切込み22を設けた側板23が上下に取付位置を調節可能として取り付けられている。簡単な例として金具の取付位置を替えられるようにしたり、差込みによる取付けでとめる位置を変えるなどいくつかの方法が考えられる。
【００２２】
このV字型の切込み22は、枡21が水槽中に置かれたとき水面が切込み22の位置にくるように設定され、これによって浮遊するスラッジと共に処理水が勢いよく枡21内に流入する構成となっている。この時に流入量が切込み22の位置によって調整され、またスラッジの状態によって狭くしたり、広くしたり調整される。この方式の枡21はすでに提案されていて、切込み22からの流入により付近の浮遊スラッジは落ち込む時の水流に引き寄せられながら徐々に枡に流入するが、その距離が離れると急激に引き寄せられる力が弱くなり十分なスラッジ回収ができないため、前述の如く別の水流を使用することで効率を上げるようにしている。
【００２３】
枡21には底部において、入り込んだ処理水を回収する吸込み管24が接続されている。該吸込み管24は軽量化されたパイプが使用され、ハンドルとして機能するように構成される。枡21との接続部は固定でも良いが操作性を考慮して取付角度が自由に可動するユニバーサル方式の継手を使用することでも良い。前記吸込み管24はさらに枡21の下部は滑動が容易にできる脚25が取り付けられ、この脚25は高さが調節できる構成を有している。すなわち予め水槽3の水面高さを考慮して作成されるが、使用時の条件により水面高さを厳密に調整する必要がある場合等に準備されることが望ましい。さらに水槽3の底面とは移動時の抵抗が少ないことが望ましく、形状や材質を滑りやすいものとするか、もしくは回転体を設けた構造とするなど、枡21の大きさや移動頻度など、使用条件によっていくつかの手段が選択できる。
【００２４】
本構成によれば、枡21自体を容易に水槽3内で移動可能とし、流入させる切込み22部分を集中して浮遊するスラッジの近くに置くことができ、極めて効率的に浮遊スラッジを短時間で回収することができる。作業の頻度は使用状態によって定期的もしくは都度行えばよく、通常の塗装時は固定しておくことで回収ができる。またスラッジ回収時のみの使用であれば短時間の作業によって動力の消費も大幅に削減することができる。
【００２５】
同様に吸引収集装置の代表的な他の実施例として、沈殿性のスラッジが多い場合は、これを効率よく収集する装置として、図４の構成を提案することができる。前記枡21と交換して使用し、ハンドルとなる吸込管24の先端に設けられた吸引収集装置26は、前記吸込み管24に着脱が容易にできる吸引ノズル27で構成されている。この場合開口は、吸込み量に応じて細長いスリット28で形成され、吸引するスラッジの比率が多く、作業性を上げることができる。必要によりスリット幅を可変とすれば、状況に応じた効率の高い吸引を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明が適用される塗装ブースの一実施例を示す概要構成図。
【図２】処理水をスラッジと共に吸引しスラッジ処理装置に送るポンプと吸引収集装置の実施例を示す構成図。
【図３】浮遊スラッジを回収する吸引収集装置の一実施例を示す外観図
【図４】沈殿スラッジを回収する吸引収集装置の実施例を示す側面図と平面図
【図５】水槽の大きさによる水槽内の水流の違いを示す平面図
【符号の説明】
【００２７】
１ 塗装室
２ ミスト処理室
３ 水槽
７ ポンプ
８ 分離装置
11 吐出管
12 水槽撹拌ホース
13 噴射管
14 バルブ
15 吸引口
16 フレキシブルホース
17 ホース接続口
18 切替弁
20 吸引収集装置
21 枡
22 切込み
23 側板
24 吸込み管
25 脚
27 吸引ノズル
28 スリット
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ブースのスラッジ回収装置において、水槽中に配置したポンプの吸込み部に水中で開口する吸引口とフレキシブルホースの接続口を設け、該フレキシブルホースの一方には吸込み管を形成するハンドルを接続すると共に、その先端に水槽内で移動自在とした吸込収集装置を設け、ポンプの吐出部には分岐管によりスラッジ分離装置に接続される回収管路と、別の管路によって水槽内の所定の位置に設置される槽内撹拌用噴射ノズルに接続される噴射管路とが接続されているスラッジ処理用回収装置
【請求項２】
吸込み吸引装置は下面に高さ調整可能な滑動脚を設けた枡の上端部に流入切欠きを設け、内底部と前記吸込み管とを接続する請求項１のスラッジ処理用回収装置。
【請求項３】
流入切欠きは枡の側板に形成し、該側板を上下に調整可能として枡に取り付けた請求項２のスラッジ処理用回収装置。
【請求項４】
ポンプの吸込み部には、吸引口とホース接続口の流通を調整する切替弁を設けた請求項１のスラッジ処理用回収装置。
【請求項１】
ブースのスラッジ回収装置において、水槽中に配置したポンプの吸込み部に水中で開口する吸引口とフレキシブルホースの接続口を設け、該フレキシブルホースの一方には吸込み管を形成するハンドルを接続すると共に、その先端に水槽内で移動自在とした吸込収集装置を設け、ポンプの吐出部には分岐管によりスラッジ分離装置に接続される回収管路と、別の管路によって水槽内の所定の位置に設置される槽内撹拌用噴射ノズルに接続される噴射管路とが接続されているスラッジ処理用回収装置
【請求項２】
吸込み吸引装置は下面に高さ調整可能な滑動脚を設けた枡の上端部に流入切欠きを設け、内底部と前記吸込み管とを接続する請求項１のスラッジ処理用回収装置。
【請求項３】
流入切欠きは枡の側板に形成し、該側板を上下に調整可能として枡に取り付けた請求項２のスラッジ処理用回収装置。
【請求項４】
ポンプの吸込み部には、吸引口とホース接続口の流通を調整する切替弁を設けた請求項１のスラッジ処理用回収装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１０−１１５６２６（Ｐ２０１０−１１５６２６Ａ）
【公開日】平成２２年５月２７日（２０１０．５．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２９２６８０（Ｐ２００８−２９２６８０）
【出願日】平成２０年１１月１４日（２００８．１１．１４）
【出願人】（３９００２８４９５）アネスト岩田株式会社 (224)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年５月２７日（２０１０．５．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１１月１４日（２００８．１１．１４）
【出願人】（３９００２８４９５）アネスト岩田株式会社 (224)
【Ｆターム（参考）】
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