説明

塗装材剥離シートの製造方法

【課題】 塗装材及びマーキングフィルムを溶解することなく、可塑化して軟化させ、塗装材及びマーキングフィルムの剥離作業を容易にでき、かつ、環境への悪影響の少ない塗装材剥離シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 上記塗装材剥離剤を上記支持体の面に均一に塗布する工程と、上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせる工程とを含む製造方法により塗装材剥離シートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅、集合住宅、工場等の建築物における外壁、内壁、屋根、床、フローリングや、木工家具、建具、工芸品、楽器等の木材や、漁船、旅客船、貨物船、プレジャーボート等の船舶や、航空機、電車、自動車、バス等の車輌や、産業機械等の工業用製品、あるいは、橋梁、標識、遊具等の設備等の表面に形成されてなる仕上げ材及びマーキングフィルムの剥離に適した塗装材剥離シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、仕上げ材には、様々な塗装材が使用されている。また、船舶、車輌、工業用製品、設備などのフリートマーキングや、サインの装飾の為に、マーキングフィルムが使用されている。
【0003】
その改修の為に、新塗装材を旧塗装材の上に再塗装する場合もあるが、旧塗装材を剥離してから新塗装材を塗装することも行われる。また、マーキングフィルムを剥がし、新しいマーキングフィルムの貼り付けが行われる。
【0004】
塗装材及びマーキングフィルムを剥離する場合には、剥離作業時間の短縮などの観点から、通常、剥離剤を塗装材の上から塗布することが一般的に行われている。使用される剥離剤としては、塩化メチレンなどを主成分とする剥離剤が一般的に使用されている。
【0005】
しかし、塩化メチレンなどの塩素系溶剤は、燃焼時にダイオキシンが発生するなどの環境汚染をもたらす可能性があり、優れた剥離性を有するものの、今後、その使用が制限される可能性がある。
【0006】
また、長期間使用したマーキングフィルムを、剥離剤を使用せずに剥がそうとした場合、マーキングフィルムを構成する粘着剤が筐体表面に残り、その除去がより一層困難となる。
【0007】
以上のような観点から、近年、塩素系溶剤からなる剥離剤を使用せず、高圧水洗機などを使用して、物理的な力で塗装材を剥離する方法や、非塩素系溶剤からなる剥離剤を使用する方法などが開発されている。
【0008】
しかし、高圧水洗機などを使用する方法では、水圧に起因する反力等の安全性に注意が必要である。また、非塩素系溶剤からなる剥離剤を使用する方法では、剥離性能の点から、塗装材によっては長時間の養生が必要となり、いずれの場合にも作業効率が低下し、その改善が望まれていた。
【0009】
以上のような観点から、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、金属面や壁面等の塗膜剥離剤及びその剥離方法などが開示されている。
【特許文献1】特開平10−279850号公報
【特許文献2】特開平11−21482号公報
【特許文献3】特開平11−246801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1〜3に記載の方法は、塗膜を剥離する能力を一層高めることは勿論のこと、剥離剤を均一に塗布することが難しく、結果的に、剥離状態にばらつきが発生するという問題があった。また、剥離剤を塗布後、養生する間に剥離剤が蒸発するなどの問題が発生し、その改善なども望まれていた。
【0011】
本発明の目的は、各種塗装材及びマーキングフィルムを溶解することなく、可塑化して軟化させ、塗装材及びマーキングフィルムの剥離作業を容易にでき、かつ、環境への悪影響の少ない塗装材剥離シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は特許請求の範囲に記載の構成とするものである。
【0013】
すなわち、本発明は、支持体の表面上に均一に塗布した塗装材剥離剤を、塗装材剥離剤層とした塗装材剥離シートを製造する方法において、上記塗装材剥離剤を上記支持体の面に均一に塗布する工程と、上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせる工程を含む。
【0014】
この場合、上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と、上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせることで、上記塗装材剥離剤が均一に含浸された上記塗装材剥離シートを2枚作製する。
【0015】
また、これらの場合、上記支持体を、繊維集合体と有機フィルム基材とからなる複合基材、もしくは、繊維集合体と金属シート基材とからなる複合基材とする。
【0016】
また、これらの場合、上記支持体に塗装材剥離剤を50〜2000g/m含浸させる。
【0017】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤を、実質的にハロゲン系化合物を含まない組成物とする。
【0018】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤を、可溶性有機高分子化合物を高沸点有機溶剤に溶解又は分散させた溶液とする。
【0019】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤を、可溶性有機高分子化合物とチクソトロピー剤とを高沸点有機溶剤に溶解又は分散させた溶液とする。
【0020】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤を、高沸点有機溶剤と可溶性有機高分子化合物からなる溶液100重量部に対して、上記可溶性有機高分子化合物が1〜50重量部、上記チクソトロピー剤が1〜15重量部配合されてなる塗装材剥離剤とする。
【0021】
これらの場合、上記チクソトロピー剤を、有機系又は無機系微粉末とする。
【0022】
また、これらの場合、上記高沸点有機溶剤の沸点を、106℃〜278℃とする。
【0023】
また、これらの場合、上記可溶性有機高分子化合物の重量平均分子量を、3000〜200万とする。
【発明の効果】
【0024】
すなわち、本発明は、支持体の表面上に均一に塗布した塗装材剥離剤を塗装材剥離剤層とした塗装材剥離シートを製造する方法において、上記塗装材剥離剤を上記支持体の面に均一に塗布する工程と、上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせる工程を含むから、上記塗装材剥離剤が均一に含浸された塗装材剥離シートを製造することができる。
【0025】
この場合、上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と、上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の塗装材剥離剤を含浸させる面とを一時的に貼り合わせることで、上記塗装材剥離剤が均一に含浸された上記塗装材剥離シートを2枚作製できるから、作業効率が2倍となる。また、セパレーターを使用していないから、使用時のごみの発生もなく、かつ、2枚ともに使用できるため、極めて好都合である。
【0026】
また、これらの場合、上記支持体が、繊維集合体と有機フィルム基材とからなる複合基材、もしくは、繊維集合体と金属シート基材とからなる複合基材であるから、含浸させた塗装材剥離剤の揮発を抑えることができる。
【0027】
また、これらの場合、上記支持体に塗装材剥離剤を50〜2000g/m含浸させてあるから、各種塗装材及びマーキングフィルムに対する均一な剥離性を有する。
【0028】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤が、実質的にハロゲン系化合物を含まない組成物であるから、環境汚染の面においても優れている。
【0029】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤が、可溶性有機高分子化合物を高沸点有機溶剤に溶解又は分散させた溶液であるから、各種塗装材及びマーキングフィルムに対する均一な剥離性を有する。
【0030】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤が、可溶性有機高分子化合物とチクソトロピー剤とを高沸点有機溶剤に溶解又は分散させた溶液であるから、各種塗装材及びマーキングフィルムに対する均一な剥離性を有する。
【0031】
また、これらの場合、上記塗装材剥離剤が、高沸点有機溶剤と可溶性有機高分子化合物からなる溶液100重量部に対して、上記可溶性有機高分子化合物が1〜50重量部、上記チクソトロピー剤が1〜15重量部配合されているから、塗装材及びマーキングフィルムに対する優れた軟化性を有する。
【0032】
これらの場合、上記チクソトロピー剤が、有機系又は無機系微粉末であるから、各種塗装材及びマーキングフィルムに対して、均一な剥離性を有する。
【0033】
また、これらの場合、上記高沸点有機溶剤の沸点が、106℃〜278℃であるから、塗装材及びマーキングフィルムに対する優れた軟化性を有する。
【0034】
また、これらの場合、上記可溶性有機高分子化合物の重量平均分子量が、3000〜200万であるから、塗装材及びマーキングフィルムに対する優れた軟化性を有する。
[発明を実施するための最良の形態]
発明者らは製造方法・各種材料を検討した結果、塗装材剥離剤を支持体の表面上に均一に塗布する工程と、上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせる工程を含む製造方法とすることで、上記塗装材剥離剤が均一に含浸された塗装材剥離シートを製造できることを見い出した。
【0035】
この場合、塗装材剥離剤を支持体の表面上に均一に塗布した後、塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせることで、塗装材剥離剤が均一に塗布された塗装材剥離シートを2枚得られることを見出した。
【0036】
また、これらの場合、支持体が繊維集合体と有機フィルム基材とからなる複合基材、もしくは、繊維集合体と金属シート基材とからなる複合基材を使用し、複合基材の繊維集合体面側に塗装材剥離剤を含浸させることで塗装材剥離シートが得られることを見出した。
【0037】
この場合、塗装材剥離剤を塗布する支持体と、一時的に貼り合わせる支持体とは、同一でなくとも良く、例えば、複合基材の材質が異なる支持体同士や、繊維集合体の坪量が異なる支持体であっても良い。
【0038】
更に、上記塗装材剥離シートは、使用前は、支持体の塗装材剥離剤を含浸させた繊維集合体面側にセパレーターを重ねておくこともできるが、2枚の塗装材剥離シートの塗装材剥離剤が含浸した面同士が重なっていることで、使用時のごみの発生もなく、また、支持体の塗装材剥離剤を含浸させた繊維集合体面側にセパレーターを重ねていないので、セパレーターに塗装材剥離剤を取られることもなく、極めて好都合である。
【0039】
また、上記塗装材剥離剤は、少なくとも、高沸点有機溶剤と可溶性有機高分子化合物を主成分としてなる実質的にハロゲン系化合物を含まない組成物を塗装材剥離剤として使用すればよいことを見出した。この場合、必要に応じ、界面活性剤、着色剤や充填剤などを添加しても良いことを見出した。
【0040】
また、上記塗装材剥離剤は、少なくとも、高沸点有機溶剤と可溶性有機高分子化合物及びチクソトロピー剤を主成分としてなる実質的にハロゲン系化合物を含まない組成物を塗装材剥離剤として使用すればよいことを見出した。この場合も、必要に応じ、界面活性剤、着色剤や充填剤などを添加しても良いことを見出した。
【0041】
すなわち、塗装材及びマーキングフィルムの剥離に使用する塗装材剥離シートを製造する場合には、シート状の支持体が巻き取られている支持体供給ロールと、この支持体供給ロールからの支持体に塗装材剥離剤を所望の厚さに塗布する塗工部と、巻き取り時の張力を低減させるテンションカット部と、塗装材剥離剤を塗布していないシート状の支持体が巻き取られている支持体供給ロールと、塗装材剥離剤を均一に塗布した支持体と塗装材剥離剤を塗布していない支持体とを一時的に貼り合わせる貼り合わせ部と、一時的に貼り合わされて塗装材剥離剤が均一に含浸した2枚の支持体を巻き取る巻き取り部とで構成された製造装置を用いることで製造できる。
【0042】
本発明の塗装材剥離シートの製造方法により作製した塗装材剥離シートは、当然のことながら、塗装材剥離剤の塗布むらもなく、また、塗装材剥離剤の揮発などもほとんどないことから、均一に、かつ、安定して塗装材及びマーキングフィルムを軟化させ、可塑化させることができる。
【0043】
本発明の塗装材剥離シートの製造方法により作製した塗装材剥離シートの塗装材剥離剤が含浸した面を、剥離しようとする塗装材及びマーキングフィルムに貼り付け、塗装材及びマーキングフィルムを軟化させ、可塑化させることにより、ヘラ等により下地より容易に剥離させることができるから、剥離に要する作業時間を短縮することができ、難しい熟練度も必要ではなくなる。
【0044】
次に、本発明に係る塗装材剥離シートの製造装置について、以下に説明する。
【0045】
塗装材剥離シートの製造装置は、大きく分けて、シート状の支持体が巻き取られている支持体供給ロールと、この支持体供給ロールからの支持体に塗装材剥離剤を所望の厚さに塗布する塗工部と、巻き取り時の張力を低減させるテンションカット部と、塗装材剥離剤を塗布していないシート状の支持体が巻き取られている支持体供給ロールと、塗装材剥離剤を均一に塗布した支持体と塗装材剥離剤を塗布していない支持体とを一時的に貼り合わせる貼り合わせ部と、一時的に貼り合わされて塗装材剥離剤が均一に含浸した2枚の支持体を巻き取る巻き取り部とで構成されている。
【0046】
支持体供給ロールは、シート状の支持体が巻き取られている。
【0047】
塗工部は、支持体供給ロールからの支持体に塗装材剥離剤を、その支持体の幅方向における所望の幅で、なお、かつ、所望の厚さとなるように塗工するためのものである。この塗工部は、例えば塗装材剥離剤を供給するための給液層と、所望の幅に合わせて給液層から供給された塗装材剥離剤を支持体の表面に均一に塗布するコンマダイレクトコーターを備えている。
【0048】
なお、塗工部の構成は上述したようなコンマダイレクトコーターに限定されるものではなく、ナイフコーターやリップコーター等の他の塗工方式のものであってもよく、塗装材剥離剤の塗布量調整の手法も各塗工方式に合わせて、適宜に変更実施することが可能である。
【0049】
テンションカット部は、巻き取り時の張力を低減させるためのものであり、巻き取り部での支持体側面からの、塗装材剥離剤の漏出を防ぐためにサクションロール等を使用するのが好ましい。
【0050】
貼り合わせ部は、塗工部で塗装材剥離剤が均一に塗布された支持体の面と塗装材剥離剤が塗布されていない支持体の面とを一時的に貼り合わせるものであり、塗装材剥離剤が2面ともに均一に含浸されるように、適度な貼り合わせ圧力により、貼り合わせを行っている。
【0051】
巻き取り部は、塗装材剥離剤が均一に含浸した2枚の支持体を巻き取るものであり、巻き取り時に支持体側面からの、塗装材剥離剤の漏出を防ぐため、適度な巻き取り張力により、巻き取っている。
【0052】
次に、上記のように構成された製造装置によって塗装材剥離シートを製造する製造工程で使用される材料について、以下に説明する。
【0053】
塗装材剥離シートに使用される基材としては、塗装材剥離剤を含浸でき、かつ、塗装材剥離剤の揮発を抑制し、安定して保持できるような基材が好ましく、例えば、不織布、フェルト、立毛編織物、起毛編織物等の繊維集合体と有機フィルムとの複合基材もしくは、上記繊維集合体と金属シートとの複合基材が挙げられる。繊維集合体の坪量としては、必要量の塗装材剥離剤を含浸・保持できる厚みであれば良いが、特に、坪量が20〜200g/mであるものが好ましい。また、上記繊維集合体の替わりにスポンジ等からなるシートを用いても良い。
【0054】
また、上記基材に含浸させる塗装材剥離剤の量は、剥離しようとする塗装材及びマーキングフィルムの種類にも依存するが、通常、50〜2000g/mの範囲で含浸させることが望ましい。塗装材剥離剤の量が50g/mより少ない場合には、剥離性能が不十分となる場合があり、2000g/mより多い場合には、塗装材剥離剤の保持性の観点から、実用上好ましくない。
【0055】
次に、塗装材剥離剤に使用される非ハロゲン系高沸点有機溶剤としては、沸点が106℃〜278℃の範囲である有機溶剤が望ましい。さらに好ましくは、沸点が130℃〜250℃の範囲である有機溶剤が望ましい。沸点が106℃未満の場合、溶剤が揮発し易く、塗装材を剥離し難くなり、沸点が278℃を超えると、塗装材への浸透力が低下し、剥離性能が劣る。非ハロゲン系高沸点有機溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロパギルアルコールなどのアルコール系有機溶剤、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどの酢酸エステル系有機溶剤、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、2,2−ジメチルヘキサン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリジノン、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらの非ハロゲン系高沸点有機溶剤は、単独もしくは2種類以上混合して使用される。
【0056】
使用される非ハロゲン系高沸点有機溶剤としては、剥離性能が高いことは勿論のこと、臭気が少ないこと、安全性が高いこと、などが必要である。
【0057】
更に、塗装材剥離剤の粘度を上げると同時に、塗装材剥離シートを塗装材及びマーキングフィルムへ貼り合わせた際の塗装材及びマーキングフィルムへの密着性、塗装材剥離シートの保持性を高めるために、可溶性有機高分子化合物を使用する。本発明で使用される可溶性有機高分子化合物としては、重量平均分子量が3000〜200万の範囲の可溶性有機高分子化合物が好ましく、例えば、商品名バイロンRV−103、バイロンRV−200、バイロンRV−220などのポリエステル系高分子材料、商品名パラクロンSN−50DR、パラクロンAS−3000DR、パラクロンME−3500DRなどのポリアクリル酸エステル系高分子材料、商品名ハイパールM−4003、ハイパールM−4006、ハイパールM−4202、ハイパールM−5000、ハイパールM−5001、ハイパールM−4501、ポリエチルメタクリレートなどのポリメタクリル酸エステル系高分子材料などが挙げられる。
【0058】
その配合量は、上記非ハロゲン系高沸点有機溶剤と上記可溶性有機高分子化合物からなる溶液100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましい。さらに好ましくは、1〜30重量部であることが望ましい。上記可溶性有機高分子化合物が1重量部より少ない場合には、塗装材剥離剤の保持性が低下し、また、50重量部より多い場合には、特に、塗装材剥離剤が高粘度過ぎる為に、いずれの場合も実用上好ましくない。
【0059】
なお、上記可溶性有機高分子化合物は、単独もしくは2種以上で使用される。
【0060】
また、更に、塗装材剥離剤を塗装材及びマーキングフィルムへ塗布した際の塗装材剥離剤の保持性、及び、塗装材剥離シートを塗装材及びマーキングフィルムへ貼り合わせた際のシートの保持性を高めるために、チクソトロピー剤を使用する。本発明で使用されるチクソトロピー剤としては、有機系のものでは、例えば、商品名ディスパロン6500、ディスパロン6700などの脂肪酸アマイド系が挙げられ、無機系のものでは、例えば、商品名アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380などの二酸化ケイ素系の超微粉末などが挙げられる。
【0061】
その配合量は、上記非ハロゲン系高沸点有機溶剤と可溶性有機高分子化合物からなる溶液100重量部に対して、1〜15重量部であることが好ましい。チクソトロピー剤が1重量部より少ない場合には、塗装材剥離剤の保持性が低下し、また、15重量部より多い場合には、塗装材剥離剤が複合基材に含浸しにくくなる為に、いずれの場合も実用上好ましくない。
【0062】
さらに、必要に応じてノニオン系、アニオン系またはカチオン系界面活性剤、着色剤、その他充填剤を添加してもよい。
【0063】
本発明の塗装材剥離シートの製造方法及び、作製した塗装材剥離シートを使用して、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた実験結果を実施例によって具体的に説明する。但し、本発明の塗装材剥離シートの製造方法、及び、塗装材剥離シートは、これに限定されるものではない。
【0064】
実施の形態の実施例及び比較例の記述中における「部」は重量部を表わす。
【実施例】
【0065】
〔実施例1〕
エチルセロソルブアセテート(沸点156℃)90部、メチルセロソルブ(沸点125℃)9部、重量平均分子量約100万のポリメタクリル酸エステル樹脂(根上工業製パラクロンAX−2DR)1部、超微粉二酸化ケイ素(アエロジル200)15部を十分に混合し、粘度が約100mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量20g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面に、コンマコーターで100g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量20g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。この場合、塗装材剥離剤が含浸している複合基材の不織布面を塗装材面に押し付けて貼り付けた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0066】
なお、実験に使用した塗装材のうち、塩化ゴム系、ビニル系、エポキシ系船底さび止め塗装や、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系船底防汚塗装や、合成樹脂調合ペイント塗装、アクリル樹脂エマルションペイント塗装、MIO塗装、タールエポキシ樹脂塗装、塩化ゴム塗装、塩化ビニル樹脂塗装、エポキシ樹脂塗装、ポリウレタン樹脂塗装、熱硬化アミノアルキド樹脂塗装、熱硬化アクリル樹脂塗装については、24時間放置後、スクレーパーによって塗装材を剥離することができた。また、屋内用マーキングフィルム、屋外用マーキングフィルムともに、6時間放置後、スクレーパーによって剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0067】
〔実施例2〕
ブチルカルビトール(沸点230℃)85部、プロパギルアルコール(沸点113℃)10部、重量平均分子量約1万のポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロンRV−600)5部、超微粉二酸化ケイ素(アエロジル300)8部を十分に混合し、粘度が約500mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記した塗装材剥離剤を坪量200g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面に、ナイフコーターで2000g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量200g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0068】
〔実施例3〕
カルビトールアセテート(沸点218℃)72部、ピルビン酸エチル(沸点148℃)8部、重量平均分子量約2万のポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロンRV−103)20部、脂肪酸アマイド系粉末(ディスパロン6500)6部を十分に混合し、粘度が約2500mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量100g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面に、コンマコーターで800g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量100g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0069】
〔実施例4〕
カルビトールアセテート(沸点218℃)65部、ピルビン酸メチル(沸点123℃)5部、重量平均分子量約2万のポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロンRV−103)30部、超微粉二酸化ケイ素(アエロジル300)6部を十分に混合し、粘度が約3000mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量100g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面に、ナイフコーターで1200g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量100g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0070】
〔実施例5〕
カルビトール(沸点202℃)40部、N−メチル−2−ピロリジノン(沸点202℃)10部、重量平均分子量約60万のポリアクリル酸エステル樹脂(根上工業製ハイパールM−4003)50部、脂肪酸アマイド系粉末(ディスパロン6500)1部を十分に混合し、粘度が約4500mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量80g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面に、リップコーターで500g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量80g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0071】
〔実施例6〕
N−メチル−2−ピロリジノン(沸点202℃)60部、カルビトールアセテート(沸点218℃)20部、重量平均分子量約2万のポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロンRV−103)20部、超微粉二酸化ケイ素(アエロジル300)6部を十分に混合し、粘度が約2500mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量50g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面に、コンマコーターで200g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量50g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0072】
〔実施例7〕
トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(沸点278℃)40部、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点256℃)40部、重量平均分子量約200万のポリメタクリル酸樹脂(ポリエチルメタクリレート)20部、超微粉二酸化ケイ素(アエロジル200)5部を十分に混合し、粘度が約10000mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量20g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面に、リップコーターで50g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量20g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0073】
〔実施例8〕
2,2−ジメチルヘキサン(沸点106℃)20部、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)40部、重量平均分子量約3千のポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロンRV−220)40部、超微粉二酸化ケイ素(アエロジル300)6部を十分に混合し、粘度が約3500mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量200g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面に、コンマコーターで500g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量200g/mの不織布と12μm厚のポリエステルフィルムとからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0074】
以上のように、本発明の製造方法は、塗装材剥離シートの製造方法に適しており、また、作製した塗装材剥離シートは、優れた剥離性を示すとともに、作業性にも優れていることを確認した。
【0075】
〔実施例9〕
トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(沸点278℃)45部、
N−メチル−2−ピロリジノン(沸点202℃)35部、重量平均分子量約200万のポリメタクリル酸樹脂(ポリエチルメタクリレート)20部を十分に混合し、粘度が約10000mPa・s(測定条件:25℃)の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量30g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面に、リップコーターで60g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量20g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0076】
〔実施例10〕
トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(沸点278℃)40部、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点256℃)40部、重量平均分子量約200万のポリメタクリル酸樹脂(ポリエチルメタクリレート)20部、超微粉二酸化ケイ素(アエロジル200)5部を十分に混合し、粘度が約10000mPa・s(測定条件:5回転、25℃)のペースト状の塗装材剥離剤を得た。次に、上記塗装材剥離剤を坪量50g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面に、リップコーターで60g/mとなるように塗布した後、サクションロールを通し、塗装材剥離剤を塗布していない坪量50g/mの不織布と12μm厚のアルミニウム箔とからなる複合基材の不織布面とを一時的に貼り合わせ、貼り合わせた2枚の複合基材を巻き取り、塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、複合基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていた。このようにして作製した塗装材剥離シートを使用して、実施例1と同様に、各種塗装材及びマーキングフィルムを剥離させた。塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて放置したが、塗装材剥離シートがずれることもなく、十分な保持性があることを確認した。その後、一定時間放置後、塗装材剥離シートを除去し、ヘラによって塗装材及びマーキングフィルムを剥離したが、剥離できるまでの時間に差はあるものの、実施例1と同様に、いずれの塗装材及びマーキングフィルムもきれいに剥離することができた。また、シート除去後、高圧水洗機を用いて塗装材を除去した場合、適度に塗装材が軟化、膨潤している為、容易に、かつ、きれいに剥離することができた。
【0077】
〔比較例1〕
塗装材剥離剤の塗布量を40g/mとした以外は、実施例3と同様の配合並びに製造方法にて塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、シート基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていたが、実施例3と同様に、塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて24時間放置したところ、塗装材剥離シートがずれ、シート保持性が不十分であることが分かった。
【0078】
〔比較例2〕
塗装材剥離剤の塗布量を2500g/mとした以外は、実施例3と同様の配合並びに製造方法にて塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、シート基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていたが、実施例3と同様に、塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて24時間放置したところ、塗装材剥離シートがずれ、シート保持性が不十分であることが分かった。
【0079】
〔比較例3〕
可溶性有機高分子化合物を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の配合並びに製造方法にて塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、シート基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていなかった。また、実施例1と同様に、塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて24時間放置したところ、塗装材剥離シートがずれ、シート保持性が不十分であることが分かった。
【0080】
〔比較例4〕
チクソトロピー剤を使用しなかったこと以外は、実施例2と同様の配合並びに製造方法にて塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、シート基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていたが、実施例2と同様に、塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて24時間放置したところ、塗装材剥離シートがずれ、シート保持性が不十分であることが分かった。
【0081】
〔比較例5〕
可溶性有機高分子材料の配合量を60部としたこと以外は、実施例3と同様の配合並びに製造方法にて塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、シート基材の不織布部へ塗装材剥離剤が含浸しにくく、実施例3と同様に、塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて24時間放置したところ、塗装材剥離剤の浸透性が不十分であることが分かった。
【0082】
〔比較例6〕
チクソトロピー剤の配合量を20部としたこと以外は、実施例4と同様の配合並びに製造方法にて塗装材剥離シートを得た。この塗装材剥離シートは、シート基材の不織布部に塗装材剥離剤が適度に含浸されていなかった。また、実施例1と同様に、塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて24時間放置したところ、塗装材剥離シートがずれ、シート保持性が不十分であることが分かった。また、塗装材剥離剤の浸透性が不十分であることも分かった。
【0083】
〔比較例7〕
基材に複合基材でなく、不織布単体を使用したこと以外は、実施例5と同様の配合並びに製造方法にて塗装材剥離シートを作製した。この場合、塗工時に塗装材剥離剤が支持体の背面に染み出してしまい、塗工に適さないことが分かった。また、実施例5と同様に、得られた塗装材剥離シートを貼り付けた塗装材剥離試験用の試料を垂直に立てて24時間放置したところ、塗装材剥離剤の揮発が認められた。また、塗装材剥離シートがずれ、シート保持性が不十分であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の表面上に均一に塗布した塗装材剥離剤を塗装材剥離剤層とした塗装材剥離シートを製造する方法において、上記塗装材剥離剤を上記支持体の面に均一に塗布する工程と、上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせる工程とを含むことを特徴とする塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項2】
上記塗装材剥離剤を均一に塗布した上記支持体の面と、上記塗装材剥離剤を塗布していない他の支持体の面とを一時的に貼り合わせることで、上記塗装材剥離剤が均一に含浸された上記塗装材剥離シートを2枚作製できることを特徴とする請求項1記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項3】
上記支持体が、繊維集合体と有機フィルム基材とからなる複合基材、もしくは、繊維集合体と金属シート基材とからなる複合基材であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項4】
上記支持体に上記塗装材剥離剤を50〜2000g/m含浸させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項5】
上記塗装材剥離剤が、実質的にハロゲン系化合物を含まない組成物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項6】
上記塗装材剥離剤が、可溶性有機高分子化合物を高沸点有機溶剤に溶解又は分散させた溶液であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項7】
上記塗装材剥離剤が、可溶性有機高分子化合物とチクソトロピー剤とを高沸点有機溶剤に溶解又は分散させた溶液であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項8】
上記塗装材剥離剤が、高沸点有機溶剤と可溶性有機高分子化合物からなる溶液100重量部に対して、上記可溶性有機高分子化合物が1〜50重量部、上記チクソトロピー剤が1〜15重量部配合されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項9】
上記チクソトロピー剤が、有機系又は無機系微粉末であることを特徴とする請求項7乃至請求項8のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項10】
上記高沸点有機溶剤の沸点が、106℃〜278℃であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。
【請求項11】
上記可溶性高分子化合物の重量平均分子量が、3000〜200万であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の塗装材剥離シートの製造方法。



【公開番号】特開2007−181764(P2007−181764A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1115(P2006−1115)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000194332)株式会社スリオンテック (46)
【Fターム(参考)】