説明

塗装用ポールガン

【課題】ポールを必要な強度を確保しながら軽量化が図り得る複合構成とすることによって、長いポールを採用でき高所に対する塗装作業でも作業効率よく行なうことができる塗装用ポールガンを提供する。
【解決手段】塗料圧送ホース4が接続され引き金3を備えた把持体1と、塗料を吐出するノズルヘッド8との間を中空のポール5を介して連結したものにおいて、前記ポール5は、内側に配したアルミニウム製の内筒と、該内筒の外周面に密着固定されたFRP等の強化プラスチック層とからなる複合構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドガンタイプの塗装用ポールガンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なハンドガンは、ピストル形をしていて作業者が把持体の引き金を操作することで、先端のノズル部分から塗料を吐出し塗装していた。この場合、全体構成がピストル形であるため被塗装物に対し接近した塗装作業となる制約を有する。従って、斯かるハンドガンを用いて船舶や橋梁等の高所部位を塗装する作業では、足場を組んだり作業者が頻繁に移動しながら行なわねばならず、作業能率が低下するだけでなく落下事故などの安全性も危惧される。
そこで、対策として把持体と先端のノズルヘッドとの間に、中空のポール(pole)を介在することにより、高所はもとより離間した位置とする作業条件にあっても、能率よく塗装することができるようにした提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平01−25624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
確かに、上記ポールを長くすればするほど高所などに対する塗装も容易に行なえる。しかしながら、上記ポールは単一部材にて強度や耐久性の観点から鋼製としていて、例えば高強度で高比重のステンレス製としているため、当然長くすればするほど重くなり、しかも塗料を圧送する圧力や把持体に接続された圧送ホースなどの負担も加わり、特に高所の塗装物に向けてハンドガンを持ち上げながら作業する姿勢は(図3参照)、作業者にとって辛い作業であり重量過多という新たな問題が生じて作業性が悪いとする憂いを有していた。
【0004】
その対策案として、ポールを上記ステンレス製から比重の軽い例えばアルミニウム製にすることが考えられる。しかしながら、この単なる材料置換では強度不足は免れず、且つ強度アップのために肉厚を大とすれば、結果的にステンレス製とほぼ同等の重量となってしまう。特に、この種のハンドガンにおけるエアレスタイプでは、ポンプによる圧送圧力が100メガパスカル(Mpa)に達するなど内圧が高く、たわみ変形等も考慮した強度を必要とし単に材料置換のみでは解決できない問題を有していた。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するため、ポールを必要な強度を確保しながら軽量化が図り得る複合構成とすることによって、長いポールを採用でき高所に対する塗装作業でも作業能率よく行なうことができる塗装用ポールガンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の塗装用ポールガンは、塗料圧送ホースが接続され引き金を備えた把持体と、塗料を吐出するノズルヘッドとの間を中空のポールを介して連結したものにおいて、前記ポールは、内側に配したアルミニウム製の内筒と、該内筒の外周面に密着固定されたFRP等の強化プラスチック層とからなる複合構成としたことを主たる特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によれば、ポールを複合構成とすることでアルミニウム製の内筒の肉厚を抑えながら必要な耐圧性などの強度を確保し、以って大幅な軽量化が達成できてポールの長さを延長可能にし、高所に対する塗装作業を容易で且つ安全に行なえる実用的効果が期待できる塗装用ポールガンを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の塗装用ポールガンの一実施例を示す図1ないし図3を参照して説明する。そのうち、図1は一部破断して示す塗装用ポールガンの外観図、図2は図1中のA−A線に沿って切断して示す断面図、図3は塗装作業の使用形態を示す説明図である。
まず、図1に基づき塗装用ポールガン全体の概略構成につき説明すると、1は金属製(例えば、アルミニウム製)の把持体で、ハンドガード2で囲われた引き金3を備えている。この把持体1の後端部(図示右方)には、図示しない塗料ポンプにより高圧力の液体塗料が圧送される塗料圧送ホース4が接続されている。
【0009】
そして、上記把持体1の前端部(図示左方)には中空のポール5の一端がハブナット6等により接続固定され、他端はノズルヘッド8側にハブナット7等により接続固定されている。このノズルヘッド8は、詳細は略すが塗料を直接吐出する吐出孔を有するノズルチップ等を備えており、塗料は把持体1からポール5内を圧送されノズルヘッド8から吐出される。しかるに、このノズルヘッド8と把持体1との間に連結固定された前記ポール5は、本実施例では例えばおよそ長さ2メートル(m)としている。従って、図3に使用形態の一例を示すように、作業者Mが把持する把持体1からおよそ2メートル(m)先のノズルヘッド8から高所の被塗装物に向けて塗装することを可能としている。
【0010】
このようなポール5の具体構成につき述べると、該ポール5は内側にアルミニウム製で円筒状の内筒9を備え、この内筒9の外周面に密着固定された例えばガラス繊維強化プラスチック(Fiberglass Reinforced Plastics、以下、FRPと称す)の強化プラスチック層10を具備した二層からなる所謂複合構成としている。因みに、上記FRPに代えてカーボン繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics、以下、CFRPと称す)を強化プラスチック層10として採用してもよい。
【0011】
しかるに、このような強化プラスチック層10は、内筒9の外周面に対して例えば接着剤を塗布したシート状にして複数回巻き付けた所謂積層巻きとし、その後に熱処理により強固に接合して一体化した構成としている。このように形成された強化プラスチック層10は、高強度で低比重材料からなるとともに、図2に示すようにその肉厚t1を本実施例ではおよそ1ミリ(mm)となる積層巻きとしている。
これに対し、アルミニウム製の内筒9は本実施例では肉厚t2を2ミリ(mm)とし、その内外面にはアルマイト処理が施され、特に耐アルカリ性に対し強化している。
【0012】
なお、斯かる構成からなるポール5の中心部には細長い弁操作杆11が挿通され、これは前記把持体1の引き金3の操作に連動し、図示しない開閉弁を開閉し塗料の流れを制御する。この開閉弁は、通常ノズルヘッド8の近傍に配設されポール5の前方に位置しておることから、特に該開閉弁を閉じた際にはポール5内に塗料の圧送圧力が急激に高まる構成にある。
【0013】
次に、上記構成の塗装用ポールガンの作用について説明する。
例えば、図3に示すように被塗装物(図示せず)が高所に位置する場合、作業者Mは片方の手でポールガンの把持体1を把持し、他方の手で長いポール5のやゝ下方部位を支えるようにして、先端であるノズルヘッド8を高所に向けた状態で持ち構える。そして、引き金3を回動操作することで弁操作杆11を介して図示しない開閉弁を開放するとともに、塗料ポンプの駆動に基づく液体塗料が塗料圧送ホース4を介して、把持体1、ポール5、図示しない開閉弁等を経てノズルヘッド8から吐出される。
【0014】
斯くして、把持体1とノズルヘッド8間を連結したポール5を長くしているため(本実施例では、およそ2m)、高所の塗装部位にも塗料が容易に届くことはもとより、頻繁に移動することなく且つ安全に塗装作業が行なえる。しかも、このポール5を長寸法としたにも係わらず該ポール5をアルミニウム製の内筒9と、その外周面に施したFRPの強化プラスチック層10とによる複合構成としているから、従来のステンレス製(肉厚2mm)に比し約40パーセント(%)の軽量化が図れ、ハンドガンとして特に高所に向けた塗装作業でも長時間容易に対処でき、特には持ち上げている腕部への負担を軽くできる。
【0015】
一方、単にポール5を低比重のアルミニウム化しただけでは圧送塗料の圧力に耐えられず、曲げ剛性等も含め機械的強度が不十分で実用に供し得ない。しかるに、本実施例ではアルミニウム製の内筒9の外周面にFRPの強化プラスチック層10を巻装し密着固定することで、耐圧に優れ実用に供し得る十分な強度アップが達成できた。これは、特にポール5の内圧が高くなる本実施例に如きエアレスタイプのハンドガンでも、十分に実使用できることを確認している。
【0016】
勿論、これら部材の肉厚を大きくすることなく、例えば従来のステンレス製ポールの肉厚2mmに対し、本実施例も上記と同等の肉厚t2を2mmとする内筒9にあって、この内筒9に積層巻きした強化プラスチック層10の肉厚t1も、およそ1mm前後の薄さで十分に対処でき、従ってポール5を径大化や肉厚大にして従来のハンドガンとの違和感や汎用性を損なうこともない。
【0017】
加えて、塗料を圧送する内筒9は軽量化すべくアルミニウム製としたので、これにアルマイト処理を施して耐アルカリ性の強化を図り、長期に亘り腐食することなく使用可能である。なお、本実施例では内筒9の内外面ともアルマイト処理して両面とも耐久性の向上を図っている。
なお、FRPの強化プラスチック層10はシート状にして積層巻きした構成なので、その巻き数を適宜調整することでポール5としての所望の耐圧や機械的強度が得られ、それだけ設計製作の自由度を広げ容易化している。
【0018】
以上説明したように、本実施例によれば次の効果を有する。
ポール5を複合構成とすることでアルミニウム製の内筒9の肉厚を抑えながら必要な耐圧性や曲げ剛性などの強度を確保し、その上で低比重材料を主体としたポール5の大幅な軽量化が達成できる。従って、ポール5の長さを延長可能にして、高所に対する塗装作業を頻繁に移動することなく且つ安全で容易に実行できる。
【0019】
また、アルミニウム製の内筒9の内外面にはアルマイト処理を施したことにより耐アルカリ性が向上し、塗装用のポール5として長期使用に耐える。そして、FRP或はCFRPなどからなる強化プラスチック層10は、シート状にして積層巻きして形成する構成なので、適宜の巻き数に調整容易で所望の強度を得るのに好都合である。斯くして、高所の塗装に対しても作業能率よく、しかも安全な塗装作業が期待できるなど実用に好適する塗装用ポールガンを提供できる。
【0020】
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例に限定されず、例えばポールガン全体を軽量化する上では上記実施例の如きアルミニウム製の把持体1とする以外に、ノズルヘッドも耐圧性を要しない部位にはプラスチック製とするなど軽量化が可能で、一層作業性の向上が期待できる。また、強化プラスチック層の外表面に例えばエポキシ樹脂を塗布して、耐紫外線の強化や付着した塗料を剥がし易くするように表面処理を施してもよい。その他、エアレスタイプに限らずハンドガンタイプに広く適用できるなど、実施に際して本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す塗装用ポールガンの一部破断して示す全体構成図
【図2】図1中のA−A線に沿って切断して示す拡大断面図
【図3】使用形態を示す説明図
【符号の説明】
【0022】
図中、1は把持体、4は塗料圧送ホース、5はポール、8はノズルヘッド、9は内筒、10は強化プラスチック層、及び11は弁操作杆を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料圧送ホースが接続され引き金を備えた把持体と、塗料を吐出するノズルヘッドとの間を中空のポールを介して連結したものにおいて、
前記ポールは、内側に配したアルミニウム製の内筒と、該内筒の外周面に密着固定されたFRP等の強化プラスチック層とからなる複合構成としたことを特徴とする塗装用ポールガン。
【請求項2】
内筒は、少なくとも内周面にアルマイト処理を施したことを特徴とする請求項1記載の塗装用ポールガン。
【請求項3】
強化プラスチック層は、シート状にして内筒の外周面に積層巻きして接合固定したことを特徴とする請求項1記載の塗装用ポールガン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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