説明

塩塵を生成する方法および塩塵発生器

【課題】塩治療において使用される塩塵を生成する方法、および該方法において使用される塩塵発生器を提供する。
【解決手段】塩塵は、気流7a〜7dの速さを調整することによって塩粒子を搬送する能力を変化させて、気流に乗って移動する塩粒子が互いに衝突すると同時に、塩塵発生器の一部に衝突する際に生成される。例えば、塩塵発生器の容器1内部に設置されるネット8などの障害物を用いることによって、塩粒子の衝突の量を増加させて、塩塵9fの形成をより効率的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の目的は、塩塵を生成するデバイス(すなわち、塩塵発生器)を用いて、呼吸空気中に微細な塩塵を生成する方法、および該方法において使用する塩塵発生器である。
【0002】
本発明に係る方法および発生器は、例えばソルトルーム(salt room)治療において使用される。この治療では、塩塵発生器によって、塩を並べた部屋の中へ微細な塩塵が吹き込まれる。この塩塵は、負に帯電した粒子を室内気に提供する。この負に帯電した粒子は、吸入されると気道において感染を抑制する効果および痰を取り除く効果を有し、結果気道を開いて呼吸を楽にする。ソルトルーム治療では、生体系に到達する塩の量が非常に少ないので、余分な腫れあるいは有害な血圧上昇を招くことがない。通常、一回の治療は、成人の場合にはおよそ40分、小さな子供の場合にはおよそ5分〜10分かかる。
【0003】
現在、上述したような治療時には、塩発生器が適量の顆粒状の塩を自動的に計測して鋼鉄製タンクに供給し、該鉄鋼製タンク内においてこの塩をモータ駆動式ブレードで細かく挽く方法が使用される。このようにして得られた塩塵はその後気流によってソルトルームの空気中へ運ばれて、患者に吸入される。塩粒子は、5μm未満のサイズを有している場合に、治療効果を有することが知られている。
【0004】
先行技術による微細な塩塵を生成するためのもう1つの方法は、蓋および底部がネットで形成された容器の中に空気を通過させる方法である。容器内に入れられた塩粒子は、気流にのって飛び、互いに衝突してより小さな粒子に粉砕される。この方法では、容器内でネットなどの障害物を使用して、衝突回数を増加させることも可能である。障害物を通過した塩粒子が容器の他端に到達するときには、塩粒子の一部は健康にとって好ましいさらに小さなサイズ(すなわち、5μm未満の粒子サイズ)に到達している。
【0005】
先行技術の主な欠点は、先行技術の方法によって生成される塩粒子の大部分では粒子サイズが5μmを超え、治療目的には役に立たないことにあると考えられる。したがって、多大な努力をしなければ、塩の粒子サイズに関して最適な結果は得られない。
【0006】
上述した先行技術は、ソルトルーム治療およびソルトマスク(salt mask)治療において広く採用されている。先行技術による微細な塩塵を生成するための方法および装置が、国際特許出願公開第2008/060173号明細書に開示されている。この明細書に係る装置は、微細化する塩の材料を入れた容器を有し、さらに容器内には2つのネットの間に配置されたフィルタを備えている。空気が容器の底部の穴を通って容器内に吹き込まれると、塩粒子は互いに衝突し、フィルタを貫流する。マスクに達した一部の塩粒子は、粒子サイズが5μg未満であることが好ましい。しかし、この先行技術では、最大5μmの粒子サイズを有する粒子だけが通過することができるようなフィルタのサイズに設定することは不可能であることは明らかである。なぜならば、このように設定したとすれば、フィルタがすぐに詰まってしまうと考えられるからである。この状況では、治療に使用される粒子の一部のみが5μm未満の粒子サイズを有しているという最終的な結果に納得せざるを得ない。
【0007】
本発明は、先行技術の欠点を回避できる方法および該方法において使用する装置を提供することを目的とする。本発明に係る方法の特徴は請求項1の特徴部分に開示されており、塩塵発生器の特徴は請求項2の特徴部分に開示されている。
【0008】
先行技術と対比すると、本発明の主要な効果は、本発明に係る方法によって生成されるすべての塩粒子が治療上有用であって、粒子サイズが5μm未満であることにあると言ってもよい。したがって、本方法が提供する治療法は、先行技術の治療法に比べて安全であり、ターゲットを精度よく捕らえることができる。本発明に係る方法を使用することによって得られる各種効果の一例として、乾燥した十分に微細な塩塵が気道の周辺に効率よく貫入することも挙げることができる。また以前と比べて、皮膚の孔に入った際の周囲の空気からの湿気の吸収性が良好であるため、皮膚に潤いと張りとがある状態を維持する。
【0009】
本発明の方法と共に使用される塩塵発生器を用いても、明白な効果が達成されるが、その理由は該塩塵発生器の構造および動作原理が単純だからである。塩塵発生器内で塩粒子を挽く過程は、単純な機械的過程に基づいて行われる。また、治療に適した粒子を他の粒子から分離する過程は、物理的な現象に基づいて行われる。そのため、本発明に係る装置は構造が単純であり、製造しやすい。さらに、このことは経済的な有利さになる。
【0010】
以下に列挙する添付の図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に記載する。
【0011】
図1は、動作できる状態にある本発明に係る塩塵発生器の鉛直方向の概略的な断面図を示している。
【0012】
図2は、本発明に係る塩塵発生器の容器下部の概略的な断面図を示している。
【0013】
図3は、本発明に係る塩塵発生器において使用される装置の概略図を示している。
【0014】
以下の記載においては、上記の図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について、その構造および機能の一例を挙げて説明する。
【0015】
本例における塩塵発生器は、直立状態にある円筒状の形状を有する容器1によって形成される(図1)。この容器1は、好ましくは高さが約300mm、直径D1が約80mmである。この容器1の上には流動スペース2が存在する。この流動スペース2は、本例では略卵状の形状を有しており、最大直径が約250mmである。容器1の底部3は部分的にネット状である。このネット4は、底部3の中央部に位置し、底部3において、直径D1を有する面A1の約半分を覆う。底部3の周辺部は、中実材料からなるリング状領域5を形成している。顆粒状の塩6の約20mmの層が底部3上に設けられる(図2)。塩粒子は底部3の中央部のネット4のメッシュサイズよりも大きいため、該塩粒子は容器1の内部に残る。送風機を用いて、底部のネット4を介して空気7aを吹き込むことによって、塩粒子が移動し始める。移動中、塩粒子は互いに衝突すると同時に、容器1の内側下部に(すなわち、ネット8に対向して)設置された衝突用障害物に衝突する。これによって粒子のサイズは減少し、粒子の量は増加する。底部3の周辺領域5は気流が通過できないので、気流7aは中央部にあるネットだけを通過し、周辺領域10aは気流の外側に位置することになる。気流7aを適切に調整すれば、飛翔する塩粒子9aの中で最大の粒子は、気流が比較的弱いこの領域10aに入ると落下して上記の底部に戻る。強い気流と弱い気流との圧力の差によって、これらの粒子は強い気流7aに吸い戻されて再度上昇し、再び互いに衝突すると同時に、ネット8に衝突する。挽かれて小さく砕けた塩粒子、および該塩粒子よりも大きく、容器1の中央部の気流7a中を上昇することができる塩粒子9bは、容器1の上の流動スペース2に達するが、気流の進行方向(すなわち、上方向)に向かうにつれて断面積は大きくなるため、気流7bの速さは減少していく。その結果、気流7bは最も重い塩粒子をこれ以上飛翔させておくことができなくなり、これらの塩粒子は下向きに落下し始める。中程度のサイズの塩粒子のうち、塩治療にはまだ不適切なものは、引き続き上向きに移動して、流動スペース2の上部に位置するプレート11に衝突する。これは、これらの塩粒子は重量が重すぎるため、気流7cに合わせて流れる方向を変えることによってプレート11を迂回して、該プレート11の周辺領域に位置する複数の開口部12を通過することができないからである。これらの開口部12の合計面積は、後ほどさらに詳述するチューブ13の水平部15の直径D3に対応する面積A3よりも小さいことが好ましい。プロセスのこの段階において十分に小さな塩粒子9cは、気流7cに合わせて方向を変え、各開口部12を通って流動スペース2から出る。該塩粒子9cはさらに進んでチューブ13に達する。水平部15の断面積は、開口部12の合計面積よりも大きく、かつチューブ13の鉛直部の断面積よりも大きい。これらの面積の差によって、気流7dはチューブ13の水平部15に達すると速度を落とし、その力は、治療には好ましくない粒子サイズ(5μmを超える粒子サイズ)の塩粒子9cをさらにチューブ内を搬送するには十分ではない。結果、これらの塩粒子9dは、チューブ13の水平部15の底部14に落下する。容器1の下部の周辺領域10aにおける塩粒子の循環が十分に長い間継続し、塩粒子の衝突量が十分であれば、すべての塩粒子は非常に軽くなり、気流7aに乗って流動スペース2まで移動できるようになる。流動スペース2に達したが、気流7cに合わせて方向を変えることがまだできない塩粒子9eは、流れのないスペース10b内において十分に長い間プレート11に衝突すると、上記のように方向を変えることができるようになり、開口部12を通って流動スペース2から出る。気流7d中を飛翔する塩塵9fは、ソルトマスク、ソルトテント(salt tent)、またはソルトルームなどの治療器具Wに導かれる。この塩塵9fの粒径は、略完全に5μm未満である。
【0016】
本発明に係る容器1と、流動スペース2と、塩塵発生器のチューブ13の形状とは、上述の例において説明したものと異なっていても構わない。これらの特徴は、全体的な状況に合わせて各々のケースで選択すればよい。チューブ13の鉛直部は屈曲性を有する物質で形成されていてもよい。この場合は、上記の治療器具W(例えば、ソルトマスク)および塩塵発生器の相互の位置は、特定の制限の下で変更してもよい。互いに衝突する塩粒子が微細粒子になり、粒子を搬送する空気の能力が粒子を分離することによって、最終的には略すべてが5μm未満の粒子だけが治療に用いられるように、装置の各部における気流の速度と相対的な速度の差とを好適に構成することが重要である。
【0017】
同様に、使用する塩の量は変更してもよく、塩塵発生器の上述の能力に合わせればよい。使用する塩の粒径は、本発明に係る方法または塩塵発生器の使用範囲を限定するものではなく、逆に使用中の塩の粒径に合わせて常に動作するように、該方法および装置を設定することができる。
【0018】
チューブ13の水平部15の底部14に落ちる塩粒子9dは、度々メンテナンスの停止期間中にチューブから十分に除去される。チューブ13の底部14は、これらの塩粒子9dが特定の場所(例えば、これらの粒子のためにチューブ13の底部14に設けられた中空部)に集まるように形成してもよい。塩粒子9dの除去は、例えば治療器具Wから塩塵発生器を取り外すことによって実施してもよい。
【0019】
本発明に係る塩塵発生器の容器1の中実の周辺領域5と底部ネット状領域4との関係は、適当な関係であれば、いかなる関係であっても構わない。
【0020】
本発明に係る塩塵発生器は、容器1の内側のネット8を設けないで構成されていてもよい。この場合には、塩塵9fは、塩粒子が互いに衝突すると同時に、容器1のプレート11に衝突することによって得られる。
【0021】
本発明に係る塩塵発生器の各部材は、上述の例とは異なる位置に配置されていてもよい。容器1、流動スペース2、およびパイプ13のいかなる配置も、請求項に記載する本発明の範囲を逸脱しない限り、塩塵9fの生成にとって好ましいのであれば検討しても構わない。
【0022】
本発明に係る塩塵発生器は、その目的に応じた物質であれば、いかなる物質で形成してもよい。容器1、流動スペース2、およびパイプ13の水平部15の好ましい物質の1つはガラスである。この場合には、塩塵9fが形成される様子を容易に観察することができる。
【0023】
なお、以上の説明は、本発明の特定のタイプの好ましい適用例に関連しているが、本発明の使用をこのタイプの例に限定することを意図しているわけでは決してなく、請求項に記載する本発明の創意の範囲内で多数の変形例が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】動作できる状態にある本発明に係る塩塵発生器の鉛直方向の概略的な断面図を示している。
【図2】本発明に係る塩塵発生器の容器下部の概略的な断面図を示している。
【図3】本発明に係る塩塵発生器において使用される装置の概略図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩塵発生器によって、呼吸空気中に微細な塩塵を生成する方法であって、
・顆粒状の塩の粒(6)が容器(1)内の底部(3)に設置され、
・略下から上へと向かう上向きの空気(7a)が上記容器(1)の上記底部(3)のネット(4)を通って上記容器(1)を通過し、
・気流(7a)によって塩粒子は上向きに飛び始め、互いに衝突すると同時に上記容器(1)に衝突し、
・上記気流の進行方向に向かうにつれて流動スペース(2)の断面積が変化する(例えば、断面積が下部よりも上部の方が大きい)ため、断面積が最大(A2)に達するまでに上記気流(7b)の速さは減少し、上記気流(7b)の搬送能力が、上記流動スペース(2)に達した最も重い上記塩粒子(9b)を持ち上げる、または同じ場所に維持させるには不十分であることから、該塩粒子(9b)は重力の影響で落下して上記容器(1)に戻り、
・上記気流(7d)は略水平な部分(15)を有するチューブ(13)の中へさらに進む方法において、
・上記底部(3)の上記ネット(4)は、上記底部(3)の中心部であって、上記底部の面積の1/10〜8/10を覆う中心部にしか到達しないため、上記底部(3)の中実の周辺領域(5)の上方には弱い気流(7a)(すなわち、静かな気流(10a))が形成され、上記空気の搬送能力はこの空間に入った上記塩粒子(9a)を空中に保持するには不十分であることから、該塩粒子(9a)は重力の影響で落下して上記底部(3)に戻り、
・上記塩粒子が空中で飛翔すると、該塩粒子が上昇して上記容器(1)の上方の上記流動スペース(2)に達すると共に、上記底部の上記周辺領域(5)に位置する上記塩粒子が、上記気流(7a)と上記静かな気流(10a)との圧力差によって上記気流(7a)まで移動するように、上記気流(7a)の力が調整され、
・上記流動スペース(2)の上記気流(7b)中でさらに上昇する上記塩粒子のうち、最大の塩粒子(9e)は、質量が大きすぎるために上記気流(7c)に合わせて方向を変えることができず、引き続きさらに上向きに進んでプレート(11)に衝突する一方、該塩粒子(9e)よりも小さな塩粒子(9c)は、上記気流(7c)に合わせて方向を変えることができるので、上記流動スペース(2)の中間部よりも狭い上部に位置する上記プレート(11)の縁部に設けられた穴(12)を通って上記流動スペース(2)を出て、
・上記塩粒子(9aおよび9e)のすべてが衝突によって、上記気流(7c)に合わせて方向を変えることができ、上記穴(12)を通って上記流動スペース(2)から出られる粒子サイズに減少するまで、該塩粒子(9aおよび9e)は上記容器(1)および上記流動スペース(2)内において鉛直方向のループを描いて互いに衝突すると同時に、上記容器(1)および上記プレート(11)に衝突し、
・上記気流(7d)がさらに進んで、上記穴(12)の合計面積よりも大きく、かつ鉛直部の断面積よりも大きい断面積(A3)を有する上記水平部(15)を持つ上記チューブ(13)に達すると、上記気流(7d)の速さが減少して、該気流(7d)は5μmを超える粒子サイズの上記塩粒子(9d)をこれ以上搬送できなくなることから、該塩粒子(9d)は重力の影響で上記チューブ(13)の底部(14)に落下し、
・上記塩塵(9f)が上記チューブ(13)を通って進み、治療器具(W)(ソルトマスク(salt mask)、ソルトテント(salt tent)、ソルトルーム(salt room)、あるいはこれらに相当する器具)に達することを特徴とする方法。
【請求項2】
・略直立状態にある容器(1)と、
・ネット(4)を設けられた、上記容器(1)の底部(3)の開口部と、
・上記容器の上記底部に置かれた顆粒状の塩粒子(6)と、
・上記容器(1)の上方に隙間なく配置され、断面積が流れの方向に沿って大きくなった後に小さくなるように形成された流動スペース(2)と、
・上記流動スペース(2)の上方に隙間なく配置され、略水平な部分(15)を有するチューブ(13)とからなる塩塵発生器であって、
・上記容器(1)、上記流動スペース(2)、および上記チューブ(13)が、共に隙間なく連結された内部スペースを形成し、
・上記容器(1)を通過する気流が、上記流動スペース(2)および上記チューブ(13)も通過し、
・上記容器(1)を通過する上記気流(7a)の方向が上向きである塩塵発生器において、
・上記ネット(4)を有する上記容器(1)の上記底部(3)の上記開口部が、上記底部(3)の中心部に到達するように形成されていることによって、上記開口部/上記ネット(4)の面積が上記底部3の面積の1/10〜8/10だけであるため、上記底部(3)の上記周辺領域(5)は上記気流が通過できず、
・上記流動スペース(2)内側の略上部に、中実の中心部と、穴(12)が設けられた周辺部とを有するプレート(11)が設置されており、
・上記チューブ(13)の上記水平部(15)の断面積(A3)は、上記流動スペース(2)の内側の上記プレート(11)の上記穴(12)の合計面積よりも大きく、かつ上記チューブ(13)の鉛直部の断面積よりも大きく、
・上記流動スペース(2)の最大断面積(A2)が、上記容器(1)の最大断面積(A1)よりも大きいことを特徴とする塩塵発生器。
【請求項3】
上記容器(1)が、少なくとも1つの衝突用障害物(例えば、ネット(8))を備えていることを特徴とする請求項2に記載の塩塵発生器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−110708(P2012−110708A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254106(P2011−254106)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(511282922)
【氏名又は名称原語表記】Kari VIHERLAHTI
【住所又は居所原語表記】Osterkullantie 20,03100 Nummela,Finland
【Fターム(参考)】