説明

填料処理剤およびそれにより処理した填料を含有する紙

【課題】紙及び板紙の製造工程において、紙力を低下させることなく白色度や不透明度が向上する紙を製造することが可能な填料処理剤及びこの填料処理剤により処理した填料を含む紙を提供することを課題とする。
【解決手段】水溶性高分子の一種を含有する水溶液中において、ビニル系水溶性単量体あるいは単量体混合物を分散重合することによって得たカチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性から選択された一種以上の微細粒子からなる水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤を、填料スラリーに添加し、その填料水性分散液を製紙原料スラリーに混合した後、抄紙する。その結果、紙力を低下させることなく白色度や不透明度が向上した紙を製造することが可能であり本発明の課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、填料処理剤に関するものであり、詳しくは水溶性高分子一種を含有する水溶液中において、ビニル系水溶性単量体あるいは単量体混合物を分散重合することによって得たカチオン性、両性、非イオン性およびアニオン性から選択された一種以上の微細粒子からなる水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤を填料スラリーに添加し、その填料水性分散液をパルプスラリーに混合した後、抄紙することにより紙力を低下させることなく白色度や不透明度が向上する紙を製造することが可能な填料処理剤およびこの填料処理剤により処理した填料を含む紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製紙工場では環境保全やコスト削減の観点から、軽坪量化、低パルプ量の紙の製造が求められている。しかし、坪量やパルプ量を減らすことで紙が薄くなると、不透明度が低下する問題が発生し、特に印刷時に印刷が反対面に透けて見える裏抜けが発生する。更に製紙原料中の填料の定着率も低下し、白色度も低下する傾向にある。そのため、坪量やパルプ量を減らしても高不透明度、高白色度を維持する要求が高まっている。
【0003】
不透明度や白色度向上のためには、填料の配合を高める方法が有効であるが、同時に紙力が低下してしまう問題がある。また、紙を嵩高にすることにより、不透明度を向上させ、裏抜けを防止させる方法も提案されているが、嵩高の紙は繊維間の距離が離れているため、やはり紙力が低下してしまうという問題があった。これらの問題を解決するため、填料に添加剤を加えた填料水性分散液を作成し、その填料水性分散液をパルプに添加し抄紙することで、填料のパルプ定着を改善し、強度低下を抑制する方法が検討されている。この添加剤として、カチオン化澱粉やカチオン化グアーガムのようなカチオン性半天然高分子や、ジアリルアミン塩やジアリルジメチルアンモニウムクロリドの重合体のようなカチオン性合成高分子、アニオン性填料処理剤としてスチレン−アクリルポリマー、両性ポリマー等が用いられてきた。(特許文献1〜3)
【0004】
しかし、既存の填料処理剤においては、白色度、不透明度、紙力に対して何れかは改善されるものの、全ての効果を同時に満足させるには不十分であった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−60794号公報
【特許文献2】特開平5−263010号公報
【特許文献3】特開2009−242980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、不透明度、白色度、紙力が向上した紙を製造可能にする填料処理剤を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水溶性高分子の一種を含有する水溶液中において、ビニル系水溶性単量体あるいは単量体混合物を分散重合することによって得たカチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性から選択された一種以上の微細粒子からなる水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤を、填料スラリーに添加し、その填料水性分散液を製紙原料スラリーに混合した後、抄紙する。その結果、紙力を低下させることなく白色度や不透明度が向上した紙を製造することが可能であり本発明の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の填料処理剤は、様々な填料に対して効果を発現する。本発明の水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤は、比較的高カチオン密度を有する低分子量の水溶性高分子中で分散重合して製造するが、得られたポリマーは比較的高分子量域と分散媒となる比較的高カチオン密度、低分子量の高分子を含有する。
この高カチオン密度の低分子量の高分子は、填料の表面を改質し、また微細な凝集粒子を生成させ、もう一つの比較的高分子量域の高分子が、適度な大きさの凝集粒子に成長させる。その結果、集合した填料粒子が均一に分散し、また成紙に吸着するため紙力を低下させることなく白色度、不透明度を向上することが可能であると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を更に記述する。
【0010】
本発明の填料処理剤は、少なくとも下記水溶性高分子(A)〜(E)のいずれか一種を含有する水溶液中において、ビニル系水溶性単量体あるいは単量体混合物を分散重合することによって得たカチオン性、両性、非イオン性およびアニオン性から選択された一種以上の微細粒子からなる水溶性重合体分散液を含有する。
(A)ポリアルキレンイミン硫酸中和物。
(B)ポリアルキレンイミン変性物の硫酸中和物。
(C)アンモニア、脂肪族モノアミン及びポリアミンより選択された一種以上のアミン類とエピハロヒドリンおよび/またはその誘導体を反応させて得られる反応物と無機塩の混合物。
(D)上記(A)および(B)の混合物、上記(A)および(C)の混合物、あるいは上記(B)および(C)の混合物。
(E)下記一般式(1)および/または(2)で表わされるカチオン性単量体50〜100モル%、非イオン性単量体0〜50モル%からなる単量体混合物の重合物。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【0011】
前記カチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性から選択された一種以上の微細粒子からなる水溶性重合体分散液は、前記(A)〜(E)から選択される一種の高分子水溶液中において、前記一般式(1)および/または(2)で表わされる単量体0〜100モル%、下記一般式(3)で表わされる単量体0〜50モル%、非イオン性単量体0〜100モル%からなる単量体あるいは単量体混合物を分散重合し製造することによって得ることができる。これら高分子水溶液中は、一種の分散媒として使用され、この中で上記単量体が分散重合される。
【化3】

一般式(3)
は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOO、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0012】
一般式(1)、(2)で表されるカチオン性水溶性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの塩などの三級アミノ基含有カチオン性単量体、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩基含有カチオン性単量体、また、アリルアミン、ジアリルメチルアミン及びこれらの塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、その他、カチオン基を有する単量体等が挙げられる。
【0013】
一般式(3)で表されるアニオン性水溶性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。これらのアニオン性単量体のうち、一種、もしくは複数種用いてもよい。これらは、未中和、部分中和、全中和のいずれの中和状態を用いることもできる。
【0014】
本発明の水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤の製造に関して説明する。
該填料処理剤は、前記水溶性高分子(A)〜(E)の何れか一種を含有する高分子水溶液中において、ビニル系水溶性単量体あるいは単量体混合物を分散重合することにより製造し得ることができる。水溶性高分子(A)で表されるポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミンあるいはポリプロピレンイミン等である。水溶性高分子(B)で表されるポリアルキレンイミン変性物は、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどで架橋により変性したポリアルキレンイミンも使用することができるが、下記一般式(4)あるいは(5)で表される構造単位を有するポリアルキレンイミン変性物を使用することが好ましい。これはポリアルキレンイミンあるいはポリアルキレンイミンとポリアミンとの混合物と、一般式(6)及び/又は(7)で表されるポリカチオン物質との反応によって合成されたものである。このポリカチオン物質は、アンモニア、脂肪族第1級〜第3級アミン(以下、第1級アミンなどと記載する)から選択された1種以上のアミン類とエピハロヒドリンを反応させて製造することができる。
【化4】

一般式(4)

【化5】

一般式(5)
但し、式(4)、(5)中のpは0〜20の整数であり、R10〜R17は水素、又は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基或いはベンジル基、X3〜X6は陰イオンである。
【化6】

一般式(6)
【化7】

一般式(7)
但し、式(6)、(7)中のPはエポキシ基あるいはハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R18〜R26は水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいはベンジル基、X7〜X10は陰イオンである。
【0015】
変性反応時のモル比については以下の範囲で行う。即ち、ポリアルキレンイミン中あるいはポリアルキレンイミンとポリアミンとの混合物中のアミノ基をC(モル単位)と、前記一般式(6)及び/または(7)で表されるポリカチオン物質中のハロヒドリン基及び/またはエポキシ基をD(モル単位)とすると、C/D=5〜300(モル%)の範囲で反応する。たとえば、ポリアルキレンイミンの分子量が数万〜数十万と高い場合は、特に上記一般式(6)で表されるポリカチオン物質を高い比率で仕込むと、架橋反応が進み過ぎてポリアルキレンイミンが水不溶化してしまう。従って、仕込みモル%としては、通常5〜50モル%、好ましくは5〜30モル%である。一方、ポリアルキレンイミンの分子量が1,000〜10,000など低い場合は、仕込みモル%としては、通常50〜300モル%、好ましくは70〜150モル%である。
【0016】
前記ポリカチオン物質は、一般式(6)で表される両末端反応性のある架橋作用のあるものと、一般式(7)で表される片末端反応性のあるグラフト反応作用のあるものとがある。前者の架橋作用のあるものは、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類のモル比が、凡そ0.25〜0.9の範囲で反応させると一般式(6)で表されるポリカチオン物質の生成比率が高く、後者のグラフト作用のあるものは、エピハロヒドリンに対するアンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類のモル比が、0.8〜1.2の範囲で反応させると一般式(7)で表されるポリカチオン物質の生成比率が高くなる。
【0017】
重合は一般的には中性〜酸性で行うのが、単量体も安定であり、反応性も良好であり、重合度や重合率も向上するので、ポリアルキレンイミン或いはポリアルキレンイミン変性物は、中和して弱アルカリ〜酸性の水溶液とすることが好ましい。pHとしては12〜2であるが、好ましくは10〜3であり、更に好ましくは6〜3である。中和する酸は、有機あるいは無機の酸を使用する。有機酸としては、蟻酸、酢酸、アジピン酸、無機酸としては、塩酸、硫酸、スルファミン酸などで中和する。中和度としては、分子中のアミノ基に対して、50〜100当量%である。
【0018】
初めにポリアルキレンイミンあるいはポリアルキレンイミン変性物の20〜50質量%水溶液を用意し、有機又は無機酸によりアミン当量の50〜100%を中和する。この時の水溶液pHは、2〜12に調整した後、この水溶液に単量体を加え混合する。単量体濃度としては、10〜40質量%であり、好ましくは15〜30質量%である。ポリアルキレンイミンあるいはポリアルキレンイミン変性物の水溶性重合体分散液を製造する前の単量体あるいは単量体混合物に対する添加量は、20〜200質量%であるが、好ましくは20〜150質量%、更に好ましくは40〜150質量%である。
【0019】
その後、窒素雰囲気下にて、重合開始剤、例えば2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物または2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物のような水溶性アゾ系重合開始剤、あるいは過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウム併用のような水溶性レドックス系重合開始剤を添加し、撹拌下ラジカル重合を行う。重合の反応温度は0〜100℃の範囲で重合開始剤の性質に応じて任意に選ぶ事ができるが、好ましくは10〜60℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。
【0020】
ポリアルキレンイミンあるいはポリアルキレンイミン変性物の一部に一般式(1)〜(3)で表される単量体がグラフト重合していると推定される。更にポリアルキレンイミン或いはポリアルキレンイミン変性物は、非常に枝分かれした構造をしているため、それだけグラフト重合も起こりやすいと考えられ、分散液の安定化にも大いに寄与すると推定され、重合の分散媒としては非常に適した材料である。
【0021】
次に、水溶性高分子(C)について説明する。水溶性高分子(C)は、アンモニア、脂肪族モノアミン及びポリアミンより選択された一種以上のアミン類とエピハロヒドリン及び/又はその誘導体を反応させて得られる反応物と無機塩の混合物である。
【0022】
使用するアミン類とエピハロヒドリンとの反応物の製法や重合度について特に制約はないが、たとえば、アンモニアや脂肪族アルキルモノアミンとエピハロヒドリンから合成されるものや、脂肪族ポリアミンやアルキレンジアミンとエピハロヒドリンとから合成されるものが挙げられる。アルキルモノアミンの例としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン或いはイソブチルアミン等である。又、アルキレンジアミン或いはポリアミンの例としては、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン等である。実用的には、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンから合成されるものや、アミノエチル-メチルアミンとエピクロロヒドリンから合成されるものが挙げられる。又、エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリンやエピブロモヒドリン等である。
【0023】
実際の合成法としては、アンモニア、モノアミン類の第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類にエピハロヒドリンを滴下して反応することができる。反応の仕込み例は、エピハロヒドリンを反応器に仕込み、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンから選択された1種以上のアミン類を滴下し反応することなどが考えられる。又、この反応物にポリアミンを添加し、前記反応物の末端反応部位と反応させ分子量を増大させることも出来る。又、初めからモノアミン類とポリアミン類を混合させておき、エピハロヒドリンと反応させることもできる。この時、反応を二段階にするならアミン類の当量値に対しエピハロヒドリンを1から1.5倍に設定し、反応を一段階で終了するならアミン類の当量値に対しエピハロヒドリンを0.80から1.0倍以下に設定するなど工夫が必要である。
【0024】
上記の反応によって生成した重縮合物の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000であり、好ましくは3,000〜50,000である。また溶液の粘性としては50質量%、25℃において50〜10,000mPa・sであり、好ましくは100〜5,000mPa・sである。
【0025】
分散媒として水溶性高分子(C)を用いて分散重合を行なうときは、上記重縮合物と無機塩類を共存させることが特徴である。使用する塩類としては、ハロゲン化アルカリ金属塩や、硫酸塩、燐酸塩などである。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、塩化アンモニウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム等を例示することができるが、硫酸塩が特に好ましい。塩を共存させることにより分散媒と単量体との相分離が促進され、分散重合が進行しやすく、生成した水溶性重合体分散液の流動性も良好になる。しかし、本発明は本質的に塩水溶液中の分散重合ではなく、互いに混和しない高分子物質同士の混合分散液である。従って塩の液中濃度を20質量%より高くしても見かけ粘度が低下するなどの現象は見られない。反って、分散液の流動性が低下する場合もあるので注意を要する。よって、塩の液中濃度を1.0質量%〜20質量%として用いることが好ましく、更に好ましくは3.0質量%〜15質量%である。
【0026】
具体的な製造法としては、初めに脂肪族モノアミン及びポリアミンより選択された一種以上のアミン類とエピハロヒドリン及び/又はその誘導体を反応させて得られる反応物、無機塩、単量体を加え、必要に応じ、連鎖移動性の化合物を混合する。単量体濃度としては、10〜40質量%であり、好ましくは15〜30質量%である。アミン類とエピハロヒドリンとの反応物の水溶性重合体分散液を製造する前の単量体混合物に対する添加量は、50〜400質量%であるが、好ましくは70〜300質量%、更に好ましくは100〜200質量%である。また、無機塩を全量に対し1.0質量%〜20質量%となるよう溶解する。重合条件は、分散媒として水溶性高分子(A)あるいは(B)を用いる時と同様である。またこれら水溶性高分子(A)、(B)および(C)は混合して用いることもできる。すなわち上記(A)および(B)の混合物、上記(A)および(C)、あるいは上記(B)および(C)の混合物を使用することが好ましい。これらはまとめて水溶性高分子(D)とする。
【0027】
次に、水溶性高分子(E)について説明する。水溶性高分子(E)は、一般式(1)及び/又は(2)で表わされるカチオン性単量体50〜100モル%、非イオン性単量体0〜50モル%からなる単量体混合物の重合物である。水溶性高分子(D)を製造する際使用するカチオン性単量体は以下の様な例がある。即ち、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルジアリルアミン等が挙げられ、四級アンモニウム基含単量体の例は、前記三級アミノ含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物等である。
【0028】
非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0029】
水溶性高分子(E)は公知の重合方法によって得た種々の製品形態の重合物を溶解して水溶液として使用することができる。又、重合する時に架橋性単量体を添加し、架橋性重合体を使用することができる。架橋性単量体の具体例としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタアクリルアミド、ジビニルベンゼン、N、N−ジアリルアミン、N、N−ジアリルアミンヒドロクロリド、N、N、N−トリアリルアミン、N、N、N−トリアリルアミンヒドロハライド、N−メチル−N、N、N−トリアンモニウムハライド、N−メチル−N、N、N−トリアリルアンモニウムハライド、N、N、N、N−テトラアリルアンモニウムハライド、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等の複数のビニル基を有する多官能性単量体、N−ジメチルアクリルアミド等の熱架橋性単量体、ホルムアルデヒド等の後架橋促進剤等が挙げられる。このうち複数のビニル基を有する単量体を架橋剤として使用する場合は、重合時添加し重合と並行して架橋反応を行うことができる。これらの中でもN,N’−メチレンビスアクリルアミドの使用が好ましい。
【0030】
一般式(1)は、ジアルキルアミノアルキレン(メタ)アクリレ−トあるいは
ジアルキルアミノアルキレン(メタ)アクリルアミドなどの三級塩あるいは四級アンモニウム塩であり、これら単量体から選択される一種以上の重合体あるいは共重合体である。又、一般式(2)は、ジアリルジアルキルアンモニウム塩であり、これら単量体から選択される一種以上の重合体あるいは共重合体である。又、アクリルアミドなどの非イオン性水溶性単量体との共重合体も使用できる。異なる高分子化合物の溶液は、一般的に相溶することは少なく分離状態になる。本発明はこの性質を利用し分散重合を行っている。従って、一般式(1)で表わされる単量体の重合物或いは共重合物を水溶液中で分散重合する場合は、一般式(2)を重合あるいは共重合することが好ましく、一般式(2)で表わされる単量体あるいは共重合物を重合物水溶液中で分散重合する場合は、一般式(1)で表わされる単量体を重合あるいは共重合することが好ましい。
【0031】
前記の関係から水溶性高分子(E)の一般式(1)で表わされる単量体の重合物あるいは非イオン性単量体との共重合物中で分散重合する場合は、共重合比が100:0〜50:50の重合物或いは共重合物を使用することが好ましい。この場合、分散重合する単量体の組成は一般式(2)で表わされる単量体と非イオン性単量体との共重合比が、100:0〜50:50であることが好ましい。この共重合比にすることにより、分散媒としての重合物あるいは共重合物との物性の差が大きくなり、分散重合する場合に都合がよい。同様な関係から一般式(2)で表わされる単量体の重合物或いは非イオン性単量体との共重合物中で分散重合する場合は、共重合比が100:0〜50:50の重合物或いは共重合物を使用することが好ましい。この場合、分散重合する単量体の組成は一般式(1)で表わされる単量体と非イオン性単量体との共重合比が、100:0〜50:50であることが好ましい。
【0032】
これら分散媒として使用する水溶性高分子(E)の分子量は、光散乱による重量平均分子量で1,000〜100万であり、好ましくは10,000〜50万である。この場合、粘性で表わせばB型粘度計(回転粘度計の一種)で測定して、25℃、20質量%濃度において100〜10,000mPa・sであり、好ましくは100〜5,000mPa・sである。
【0033】
水溶性重合体分散液を製造する前の単量体混合物に対する水溶性高分子(E)の添加量は、50〜400質量%であるが、好ましくは70〜300質量%、更に好ましくは100〜200質量%である。重合条件は、分散媒として水溶性高分子(A)あるいは(B)を用いる時と同様である。
【0034】
本発明の水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤において、カチオン性水溶性重合体分散液を製造する場合には、一般式(1)及び/又は(2)で表わされるカチオン性単量体の一種以上を使用し、また非イオン性単量体との共重合をすることもできる。
【0035】
非イオン性単量体の例として、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジン等が挙げられる。これらの非イオン性単量体を複数組み合わせて使用することも可能である。
【0036】
両性水溶性重合体分散液を製造する場合には、前記カチオン性と非イオン性単量体に加えて、更に一般式(3)で表されるアニオン性単量体を共重合する。
【0037】
アニオン性水溶性重合体分散液を製造する場合には、前記一般式(3)で表されるアニオン性単量体の一種以上の共重合、あるいは前記アニオン性単量体と非イオン性単量体との共重合によって製造する。
【0038】
更に非イオン性水溶性重合体分散液を製造する場合には、前記非イオン性単量体の一種以上を使用する。特に好ましい非イオン性単量体としては、アクリルアミドである。
【0039】
水溶性重合体分散液を製造時に架橋性単量体を添加することができる。架橋性単量体の具体例としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタアクリルアミド、ジビニルベンゼン、N、N−ジアリルアミン、N、N−ジアリルアミンヒドロクロリド、N、N、N−トリアリルアミン、N、N、N−トリアリルアミンヒドロハライド、N−メチル−N、N、N−トリアンモニウムハライド、N−メチル−N、N、N−トリアリルアンモニウムハライド、N、N、N、N−テトラアリルアンモニウムハライド、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等の複数のビニル基を有する多官能性単量体、N−ジメチルアクリルアミド等の熱架橋性単量体、ホルムアルデヒド等の後架橋促進剤等が挙げられる。このうち複数のビニル基を有する単量体を架橋剤として使用する場合は、重合時添加し重合と並行して架橋反応を行うことができる。これらの中でもN,N’−メチレンビスアクリルアミドの使用が好ましい。
【0040】
本発明の水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤を製紙原料スラリーに添加する前に填料水性分散液の調製を行う。
【0041】
前記填料水性分散液の調製は、最初に水中に粉末状の填料を投入し、攪拌機等を用いて均一に分散させることにより、填料スラリーを調整する。分散させる方法は、公知のいずれの方法を用いても良い。その後、本発明の水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤を填料分散液に添加し、一定時間攪拌することで填料水性分散液が調製できる。
【0042】
前記填料としては、一般的に使用されているものであれば良い。例えば、粉砕した天然の石灰石、沈降性炭酸カルシウム(PCC)、ホワイトカーボン、クレー、焼成クレー、カオリン、タルク、シリカ、沈降性シリカ、アルミノ珪酸塩、二酸化チタン等が挙げられるが、特に制限はない。
【0043】
本発明の水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤の填料に対する混合比率は、特に制限は無いが、好ましくは填料に対して、填料処理剤を固形分換算で0.01〜5質量%であり、更に好ましくは0.02〜3質量%である。填料処理剤の量が0.01質量%未満の場合、効果が充分に発揮されない可能性がある。また、5質量%以上の場合には、使用する填料によっては過度の凝集を引き起こし、紙の地合いが悪化することがあり、填料処理剤を増量したことに見合う不透明度向上効果を期待することができない場合がある。このように処理して得られた填料水性分散液の製紙原料に対する添加量は、填料水性分散液の濃度により異なるが、製紙原料100質量%に対して乾燥固形分5〜60質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。
【0044】
本発明の填料処理剤によって処理された填料を含有する紙は、填料水性分散液が混合されて成る製紙原料スラリーを抄紙することによって製造できる。填料水性分散液の添加場所は、ミキシングチェスト、種箱、マシンチェスト、ヘッドボックス、白水タンクなどのタンク、またこれらの設備と接続した配管中(ファンポンプ前後)等である。
【0045】
本発明では、必要に応じて凝結剤、紙力剤、濾水性向上剤、歩留向上剤、サイズ剤等、一般的に用いられる製紙用薬剤と併用しても良い。
【0046】
また、本発明の紙の製造方法は、新聞用紙、書籍用紙、印刷・情報用紙等、填料を使用する紙の製造に適用できる。
【0047】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明する。但し本発明は、以下の実施例に制約されない。
【実施例1】
【0048】
攪拌機、窒素曝気管および温度制御装置を備えた反応器に50重量%ポリエチレンイミン水溶液(重量平均分子量;50,000)50gをイオン交換水21.5gに溶解し、75重量%硫酸28.5gを冷却攪拌下添加し、pHを4.8〜5.5に調整した。この反応物、即ち、中和したポリエチレンイミンは、水溶性高分子(A)に相当する。攪拌機、窒素曝気管および温度制御装置を備えた反応器に前記操作により中和したポリエチレンイミン水溶液78.0gを仕込み、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド80%水溶液48.8g、イオン交換水63.2gを仕込み混合した。窒素で置換しながら10重量%の2,2‐アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロライド水溶液を重合開始剤として対モノマーあたり重量で500ppm添加し、撹拌下36℃で18時間重合した。その結果、微粒子の水溶性重合体分散液が得られた。この得られた水溶性重合体分散液を試作−1とする。
【実施例2】
【0049】
温度計、攪拌機、滴下漏斗を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、エピクロロヒドリン146.6gとイオン交換水29.6gを仕込み、ジメチルアミンの50重量%水溶液123.8gを40〜45℃で2時間かけて滴下し、滴下終了後45℃で1時間反応後、イオン交換水29.6gを加えポリカチオン生成物を得た。
【0050】
次ぎに温度計、攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、ポリエチレンイミン(重量平均分子量;10,000)、100%品を23.3gとイオン交換水を60.0g加えて撹拌後、前記ポリカチオン生成物を26.9g加え、28℃で45分間反応させ、反応物の粘度上昇が認められた時点で、75%硫酸4.5gを加えて反応を停止させポリエチレンイミン変性物を得た。重量平均分子量を測定すると50,000であった。
【0051】
次いで、攪拌機および温度制御装置を備えた反応器に、前記調製したポリエチレンイミン変性物109gを採取し、硫酸で溶液pHを5.5に中和した。この反応物は水溶性高分子(B)に相当する。これに、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド80%水溶液48.8g、イオン交換水63.2gを仕込み混合した。窒素で置換しながら10重量%の2,2−アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロライド水溶液を重合開始剤として対モノマーあたり重量で500ppm添加し、撹拌下36℃で18時間重合した。その結果、微粒子の重合体分散液が得られた。この得られた水溶性重合体分散液を試作−2とする。
【実施例3】
【0052】
温度計、攪拌機、滴下漏斗を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、エピクロロヒドリン146.6gとイオン交換水29.6gを仕込み、ジメチルアミンの50重量%水溶液123.8gを40〜45℃で2時間かけて滴下し、滴下終了後45℃で1時間反応後、イオン交換水147.0gを加え反応物の濃度として50質量%とした。この反応物の25℃の粘度は、1150mPa・sであった。
【0053】
次に攪拌機、窒素曝気管および温度制御装置を備えた反応器に上記(ジメチルアミン/エピクロロヒドリン)反応物の50質量%水溶液180gに、硫酸アンモニウム12gを仕込んだ。これは、水溶性高分子(C)に相当する。次いで、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド80%水溶液75.0g、メタクリルスルホン酸ナトリウム1.2g、イオン交換水31.8gを仕込み混合した。窒素で置換しながら、2,2−アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロライド水溶液を重合開始剤として対モノマーあたり重量で400ppm添加する(2%水溶液で1.2g)。撹拌下36℃で18時間重合した。その結果、微粒子の水溶性重合体分散液が得られた。この得られた水溶性重合体分散液を試作−3とする。
【実施例4】
【0054】
攪拌機、窒素曝気管および温度制御装置を備えた反応器に35質量% ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液111.5gを仕込んだ。ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドは、水溶性高分子(D)に相当する。これに、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド80%水溶液48.8g、イオン交換水63.2gを仕込み混合した。窒素で置換しながら10重量%の2,2−アゾビス(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロライド水溶液を重合開始剤として対モノマーあたり重量で500ppm添加し、撹拌下36℃で18時間重合した。その結果、微粒子の水溶性重合体分散液が得られた。この得られた水溶性重合体分散液を試作−4とする。
【実施例5】
【0055】
填料として炭酸カルシウムを使用し、濃度10質量%になるよう水で希釈し、炭酸カルシウムが分散するまで充分に攪拌し、填料スラリーとした。これに本発明の水溶性重合体分散液、即ち、実施例1の試作−1〜4を填料スラリー乾燥固形分に対して0.3質量%添加し、マグネティックスターラーにより400回転/分で10分間攪拌し、填料水性分散液を調整した。それぞれの填料水性分散液を処方−1〜4とした。次いで、カナディアン・スタンダード・フリーネス(C.S.F.)の値が410mLのLBKPを濃度0.5質量%に調整しパルプスラリーとした。このパルプスラリーを抄紙後のシート坪量が64g/mになるように採取し、水溶性重合体分散液で処理した填料水性分散液、処方−1〜4をパルプに対して純分25質量%添加した。これらを1/16mTAPPIスタンダード抄紙機にて抄紙し、湿紙を得た。湿紙を3.0kg/mで5分間プレスした後、鏡面ドライヤーを用いて105℃で3分間乾燥した。乾燥した紙を、23℃、50%RHの条件で1日間調湿した後、その坪量(g/m)と厚み(mm)を測定し(熊谷理機工業製JIS紙厚計TM−600)、坪量/厚みにより紙の密度を求めた。紙中灰分は、525℃で灰化することにより測定した。また同じ紙の別の部分を使用し、分光光度計型測色計(テクニダイン社製、カラータッチPC)によりISO白色度(JIS、P8148;2001)、不透明度(JIS、P8149;2000)、内部結合強度(JAPAN−TAPPI−No.18−1:2000)を、オリエンテック社製テンシロン−RTC−1210A、移送速度20mm/min.により測定した。それぞれの結果を表1に示す。
【0056】
(比較例1)炭酸カルシウムを10質量%になるよう水で希釈し、炭酸カルシウムが分散するまで充分に攪拌し、填料スラリーとした。これに比較試料(市販の凝結剤、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、重量平均分子量50万)を填料スラリー乾燥固形分に対して0.3%添加し、マグネティックスターラーにより400回転/分で10分間攪拌し、填料水性分散液を調整した。この填料水性分散液を処方−5とした。次いで、実施例5と同様なパルプスラリーを用いて、抄紙後のシート坪量が64g/mになるように採取し、水溶性重合体分散液で処理した填料水性分散液、処方−5をパルプに対して純分25質量%添加した。実施例5と同様な条件、操作により1/16mTAPPIスタンダード抄紙機にて抄紙し、紙の密度、紙中灰分、ISO白色度、不透明度、内部結合強度を測定した。それぞれの結果を表1に示す。
【0057】
(比較例2)炭酸カルシウムを10質量%になるよう水で希釈し、炭酸カルシウムが分散するまで充分に攪拌し、この填料スラリーを処方−6とした。次いで、実施例5と同様な条件、操作により、1/16mTAPPIスタンダード抄紙機にて抄紙し、紙の密度、紙中灰分、ISO白色度、不透明度、内部結合強度を測定した。それぞれの結果を表1に示す。
【0058】
(表1)

【0059】
実施例5の本発明の水溶性重合体分散液試作−1〜4を填料に添加した場合では、比較例2の無添加に対してISO白色度、不透明度、内部結合強度何れも向上を示した。一方、比較例1の比較試料を添加した場合では、不透明度は向上したがISO白色度、内部結合強度は低下を示した。これは、本発明の水溶性重合体分散液試作−1〜4を添加した場合、比較試料を添加した場合に比べて填料のパルプへの分布状態と凝集度が異なるためISO白色度、不透明度共に向上したことが考えられる。特に比較試料添加時では、試作−1〜4添加時に比べて、パルプ繊維間の結合をより阻害しているため内部結合強度が低下していると考えられる。本発明の水溶性重合体分散液試作−1〜4を填料に添加、抄紙することにより、紙力を低下させることなく白色度や不透明度が向上する紙を製造することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記水溶性高分子(A)〜(D)のいずれか一種を含有する水溶液中において、ビニル系水溶性単量体あるいは単量体混合物を分散重合することによって得たカチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性から選択された一種以上の微細粒子からなる水溶性重合体分散液を含有する填料処理剤。
(A)ポリアルキレンイミン硫酸中和物。
(B)ポリアルキレンイミン変性物の硫酸中和物。
(C)アンモニア、脂肪族モノアミンおよびポリアミンより選択された一種以上のアミン類とエピハロヒドリンおよび/またはその誘導体を反応させて得られる反応物と無機塩の混合物。
(D)上記(A)および(B)の混合物、上記(A)および(C)の混合物、あるいは上記(B)および(C)の混合物
(E)下記一般式(1)および/または(2)で表わされるカチオン性単量体50〜100モル%、非イオン性単量体0〜50モル%からなる単量体混合物の重合物。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記カチオン性、両性、非イオン性及びアニオン性から選択された一種以上の微細粒子からなる水溶性重合体分散液が、前記一般式(1)および/または(2)で表わされる単量体0〜100モル%、下記一般式(3)で表わされる単量体0〜50モル%、非イオン性単量体0〜100モル%からなる単量体混合物を分散重合し製造したものであることを特徴とする請求項1に記載の填料処理剤。
【化3】

一般式(3)
は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOO、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載の填料処理剤を含有する填料水性分散液。
【請求項4】
請求項1あるいは2に記載の填料処理剤によって処理した填料を含有する紙。