説明

塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング

【課題】カメラを収容したカメラハウジングの前面ガラス前方近傍位置に逆極性の電位を印加することで、一方の電極で塵埃を帯電させ、他方の電極で帯電した塵埃を付着するようにして前面ガラスが汚れるのを防止した塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングを提供する。
【解決手段】 塵埃付着防止装置は、外部を覗くための透過部材の前方近傍位置に設置された荷電電極と、前記透過部材の前方位置であって前記荷電電極の近傍位置に設置された集塵電極と、前記荷電電極並びに集塵電極に電気を供給する電極電源と、を少なくとも備え、前記電極電源から供給される電位が前記荷電電極と前記透過部材とは同一極性になるようにし、前記集塵電極は逆極性になるように帯電させ、前記荷電電極が前記透過部材の前方近傍位置に浮遊する塵埃などの浮遊物を荷電させ、該荷電された浮遊物が前記透過部材との間に斥力を生じさせると共に、前記集塵電極との間に働く引力により前記集塵電極に付着するようにしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングに関し、詳しくは清掃などのメンテナンスが不要な透過部材、例えば外部視認用ガラスに関するものであり、具体的には浮遊塵埃が多い道路沿いの建物の窓ガラスや、カメラハウジングの前面ガラス、自動車のフロントガラス、照明灯のカバーガラスなどに利用される外部視認用ガラスに、塵埃を付着させないようにした塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における外部視認用ガラス、例えば従来のカメラハウジングにおける、外部視認用ガラス即ち、前面ガラスの塵埃などを取り除くため、特開平8−254738号公報に「テレビカメラハウジングのワイパー装置」として開示されている。
このワイパー装置は、図2に示すように、カメラ111にはレンズ112が取り付けられ、前面ガラス113とカメラケース114とからなるカメラハウジングにカメラ111が収納されている。又、前面ガラス113側には前面ガラス113に付着した塵埃を取り除くためのワイパー115とワイパー115を駆動させるためのワイパー用モータ116が備えられており、定期的或は任意にワイパー115を駆動させ、前面ガラス113の清掃を行う。
【0003】
又、特開2003−259173号公報に「カメラのウオッシャ機構制御方法」で開示されているように、前面ガラスにウオッシャ液を吹き付けるウオッシャ機構を付随させて、前面ガラスの汚れを清掃しているものが周知である。
【特許文献1】特開平10−90777号公報(第2頁 第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術で説明した、ワイパー装置においては、モータなどの可動部分があるため、故障が置きやすく、又、道路脇やトンネル内などの特に粘液性のある塵埃の場合、粘液性の塵埃が前面ガラスに付着するとワイパーと前面ガラスが張り付いてしまい動作不良を起こす問題があった。
【0005】
このような理由から現状では、特に道路脇やトンネル内に設置されるカメラにおいては、ワイパー装置を用いず、作業員による1〜3ヶ月毎の定期的な洗浄作業が行われている。洗浄作業を行うためには、道路の車両通行を止めなければならず、交通渋滞などの社会的損失を招いていた。又、作業員には、高所での危険な作業が要求され、またカメラを維持管理するコストの増大を招いた。
また、ウオッシャ機構については、ウオッシャ液の補充が定期的に必要であるため、前述のように、道路の車両通行止めや、作業員による危険な作業、維持管理コストの発生などの問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワイパーなどの可動部を持たずに、またウオッシャ液の補充作業なく、外部視認用ガラスへの塵埃の付着を防止し、外部視認用ガラスとして良好な視界を確保することができる塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明の塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングは、次に示す構成にしたことである。
【0008】
(1)外部を覗くための透過部材の前方近傍位置に設置された荷電電極と、
前記透過部材の前方位置であって前記荷電電極の近傍位置に設置された集塵電極と、
前記荷電電極並びに集塵電極に電気を供給する電極電源と、を少なくとも備え、
前記電極電源から供給される電位が前記荷電電極と前記透過部材とは同一極性になるように配線し、前記集塵電極は逆極性になるように帯電させたことを特徴とする塵埃付着防止装置。
(2)前記荷電電極は前記透過部材の前方中央近傍位置に設置し、前記集塵電極は前記透過部材の前方周辺近傍位置に設置したことを特徴とする(1)に記載の塵埃付着防止装置。
(3)前記透過部材は、外部が視認できるガラスである(1)又は(2)に記載の塵埃付着防止装置。
(4)前記透過部材には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする(1)、(2)又は(3)に記載の塵埃付着防止装置。
(5)前記荷電電極には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする(1)又は(2)に記載の塵埃付着防止装置。
(6)前記集塵電極には、集塵した塵埃などを取り除くために超音波振動を発生させる超音波振動子を取付けたことを特徴とする(1)又は(2)に記載の塵埃付着防止装置。
【0009】
(7)前面に外部を覗くための透過部材を設け、内部に撮像手段を収容してなるカメラハウジングであって、
前記カメラハウジングには、前記透過部材の前方近傍位置に設置した荷電電極と、前記透過部材の前方位置であって前記荷電電極の近傍位置に設置した集塵電極と、前記荷電電極並びに前記集塵電極に電気を供給する電極電源と、を少なくとも備え、
前記電極電源から供給される電位が前記荷電電極と前記透過部材とは同一極性になるように配線し、前記集塵電極は逆極性になるように帯電させたことを特徴とする塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
(8)前記荷電電極は前記透過部材の前方中央近傍位置に設置し、前記集塵電極は前記透過部材の前方周辺近傍位置に設置したことを特徴とする(7)に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
(9)前記透過部材は、外部が視認できるガラスである(7)又は(8)に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
(10)前記透過部材には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする(7),(8)又は(9)に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
(11)前記荷電電極には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする(7)又は(8)に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
(12)前記集塵電極には、集塵した塵埃などを取り除くために超音波振動を発生させる超音波振動子を取付けたことを特徴とする(7)又は(8)に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塵埃付着防止装置及び塵付着防止装置を備えたカメラハウジングは、外部をみるための透過部材、例えば、前面ガラスの前方近傍位置に荷電電極を備え、その前方周辺近傍位置に集塵電極を備え、それらの電極に極性が逆になる電位を印加して帯電させることで、前面ガラスの前方位置の塵埃の浮遊物を荷電させて集塵電極に付着するようにしたことで、前面ガラスが汚れるのを防止できる。そのため、故障の原因となるワイパー機能やウオッシャ液の定期的補充が必要なウオッシャ機構を必要とせず、しかも定期的な洗浄などのメンテナンスを不要とした塵埃付着防止機能を有する装置及びこの装置を備えたカメラハウジングが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本願発明に係る塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングの実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
本願発明の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングは、図1に示すように、撮像手段を形成するカメラ11にはレンズ12が取り付けられ、前面に外部を覗くための透過部材である前面ガラス13とカメラケース14とからなるカメラハウジングに収納されている。
このカメラハウジングには、透過部材である前面ガラス13の前方中央近傍位置に設置した荷電電極15と、前面ガラス13の前方周辺近傍位置に設置した集塵電極16と、荷電電極15並びに集塵電極16に電気を供給する電極電源17と、を備えた構成になっている。
荷電電極15が前面ガラス13の前方中央近傍位置に設置され、集塵電極16は前面ガラス13の前方周辺近傍位置に設置されたときの両電極15、16の位置関係は両電極15、16に逆極性に帯電したときに、塵埃が引き付けられる程度の距離間隔を持って配置されている。
電極電源17から供給される電位が荷電電極15と前面ガラス13とはマイナス電位の同一極性になるように配線し、集塵電極16は逆極性、即ちプラス電位になるように配線して帯電させ、荷電電極15が前面ガラス13の前方近傍位置に浮遊する塵埃Aなどの浮遊物を荷電させ、この荷電された浮遊物Bが前面ガラス13との間に斥力を生じさせると共に、集塵電極16との間に働く引力により集塵電極16に塵埃Cが付着するように構成されている。
【0013】
このように、前面ガラス13の外側の前方近傍位置に荷電電極15が設置されており、電極電源17から供給される電力により、前面ガラス13の外側に浮遊する塵埃Aをマイナスに荷電する。一方、前面ガラス13も導電性部材で構成されマイナス電圧が印加されているため、マイナスに荷電された塵埃Bと前面ガラス13との間には斥力が働き、塵埃は前面ガラス13に付着しない。一方、集塵電極16はプラスに荷電されているため、マイナスに荷電された塵埃Bと引き合い、塵埃Cは集塵電極16に付着し集められる。このため、前面ガラス13は、洗浄などのメンテナンスを行うことなく、良好な視界を確保することができる。
尚、電極電源が直流のものを示したが、極性が逆のものでもよく、或は交流でもよい。
【0014】
更に、図1に示す、荷電電極15、集塵電極16、前面ガラス13の全て、又はその一部に超音波振動子18a、18b、18cを取り付ける構成にする。
今、前面ガラス13に超音波振動を発生させる超音波振動子18cを取り付けるようにすると、前面ガラス13を振動させることで塵埃などの付着を防止することができる。
このとき、超音波振動子18cの周波数を前面ガラス13の固有共振周波数と等しくすることにより屈曲振動し塵埃を取り除ける。また、超音波振動子18cの周波数を変化させることにより、前面ガラス13に発生する振動の腹と節の位置が変化し、周波数に応じた振動の腹と節を、前面ガラス13全体に発生することができるのである。
荷電電極15に超音波振動子18aを取り付けるようにすると、荷電電極15自体に振動を与えて付着した塵埃を取り除くことができる。
集塵電極16に超音波振動子18bを取り付けるようにすると、集塵電極16自体に振動を与えることにより集塵電極16に付着した塵埃を取り除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
外部視認用透過部材、例えば前面ガラスの前方近傍位置に荷電電極を備え、その前方周辺近傍位置に集塵電極を備え、それらの電極に逆になる電位を印加して帯電させることで、前面ガラスの前方近傍位置の塵埃の浮遊物が荷電することで集塵電極に付着し、前面ガラスが汚れるのを防止できる塵埃付着防止装置及び塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジングを示す説明図である。
【図2】従来技術のワイパー機能を備えたカメラハウジングを示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
11 カメラ
12 レンズ
13 前面ガラス
14 カメラケース
15 荷電電極
16 集塵電極
17 電極電源
18a 超音波振動子
18b 超音波振動子
18c 超音波振動子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部を覗くための透過部材の前方近傍位置に設置された荷電電極と、
前記透過部材の前方位置であって前記荷電電極の近傍位置に設置された集塵電極と、
前記荷電電極並びに集塵電極に電気を供給する電極電源と、を少なくとも備え、
前記電極電源から供給される電位が前記荷電電極と前記透過部材とは同一極性になるように配線し、前記集塵電極は逆極性になるように帯電させたことを特徴とする塵埃付着防止装置。
【請求項2】
前記荷電電極は前記透過部材の前方中央近傍位置に設置し、前記集塵電極は前記透過部材の前方周辺近傍位置に設置したことを特徴とする請求項1に記載の塵埃付着防止装置。
【請求項3】
前記透過部材は、外部が視認できるガラスである請求項1又は2に記載の塵埃付着防止装置。
【請求項4】
前記透過部材には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の塵埃付着防止装置。
【請求項5】
前記荷電電極には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の塵埃付着防止装置。
【請求項6】
前記集塵電極には、集塵した塵埃などを取り除くために超音波振動を発生させる超音波振動子を取付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の塵埃付着防止装置。
【請求項7】
前面に外部を覗くための透過部材を設け、内部に撮像手段を収容してなるカメラハウジングであって、
前記カメラハウジングには、前記透過部材の前方近傍位置に設置した荷電電極と、前記透過部材の前方位置であって前記荷電電極の近傍位置に設置した集塵電極と、前記荷電電極並びに前記集塵電極に電気を供給する電極電源と、を少なくとも備え、
前記電極電源から供給される電位が前記荷電電極と前記透過部材とは同一極性になるように配線し、前記集塵電極は逆極性になるように帯電させたことを特徴とする塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
【請求項8】
前記荷電電極は前記透過部材の前方中央近傍位置に設置し、前記集塵電極は前記透過部材の前方周辺近傍位置に設置したことを特徴とする請求項7に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
【請求項9】
前記透過部材は、外部が視認できるガラスである請求項7又は8に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
【請求項10】
前記透過部材には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする請求項7、8又は9に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
【請求項11】
前記荷電電極には、塵埃が付着しないように超音波振動を発生させる超音波振動子を取り付けたことを特徴とする請求項7又は8に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。
【請求項12】
前記集塵電極には、集塵した塵埃などを取り除くために超音波振動を発生させる超音波振動子を取付けたことを特徴とする請求項7又は8に記載の塵埃付着防止装置を備えたカメラハウジング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−98817(P2006−98817A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285760(P2004−285760)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】