説明

塵埃凝集路と電気掃除機

【課題】簡単な構造で、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供する。
【解決手段】塵埃凝集路は、塵埃を含む気体が流通する流路として、延長管502、サクションホース504、および、連結部505と、延長管502内に配置されて塵埃を摩擦帯電するための摩擦帯電経路161と、連結部505内に配置されて摩擦帯電経路161において帯電された塵埃どうしを衝突させて塵埃塊(クラスタ)の形成を促進させるための衝突促進経路162とを備え、摩擦帯電経路161は、第1の材質で形成されている第1摩擦帯電部と、第2の材質で形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路162は、第3の材質で形成され、第1の材質の接触電位が第3の材質の接触電位よりも大きく、第3の材質の接触電位が第2の材質の接触電位よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃を含む気体を流通させて塵埃を凝集するための塵埃凝集路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塵埃を含む気体が流通する管の内壁面に突起を設けた例としては、特開2002−320578号公報(特許文献1)に記載されている電気掃除機の延長管がある。これは、電気掃除機本体にホースを介して接続された延長管の入り口付近に増速手段として案内羽根を設け、延長管の内壁面近傍の空気流を増速させることを目的としている。
【0003】
また、特開平9−131522号公報(特許文献2)には、流体の混合効率を高めるミキシングエレメントが記載されている。これは筒状の通路管と一体的に螺旋状羽根を設けることで、羽根面に沿う流体に位置移動や合流、せん断という作用を与えて、混合効率を高めることを目的としている。
【0004】
一方、特開2005−324094号公報(特許文献3)には、コロナ放電を利用して微粒子を帯電した後、電圧を印加された導電性体で微粒子を捕集する粒子凝集器が記載されている。これは、その導電性体の表面において、捕集された微粒子が凝集していき、ある程度の大きさになると、気流によって凝集粒子群が導電性体から引き離されて排気されるという機構の粒子凝集器である。
【0005】
特許第2517877号公報(特許文献4)には、摩擦接触帯電により粒子を帯電することが記載されている。この公報には、微粒子を管との接触帯電により、一方に正の静電気を、他方に負の静電気をそれぞれ帯電させたのち、両者を混合し、電気的に結合させる微粒子複合体の製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開2002−320578号公報
【特許文献2】特開平9−131522号公報
【特許文献3】特開2005−324094号公報
【特許文献4】特許第2517877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1は、電気掃除機の延長管のような、円筒状の管の内部における気流を模式的に示す図である。図1に示すように、流路1内に矢印の方向に気体Pが流入すると、流路1の壁2と気体が接触する部分に剥離領域3が形成される。そのため、流路内の気流Qの速度が位置によって不均一になり、速度勾配4が生じる。気体の流れに沿った方向の剥離領域3の長さは、流路1の直径Dの4倍〜5倍程度である。
【0007】
特開2002−320578号公報(特許文献1)に記載されている電気掃除機の延長管に設けられた案内羽根は、塵埃を効果的に集塵室に搬送するために、図1に示すような流路入口部の剥離を抑制し、見かけ上の吸い込み口面積を大きくして、圧損低減の効果を狙ったものである。しかしながら、気流に含まれる粒子同士の衝突凝集に関しては特に記述されていない。
【0008】
また、特開平9−131522号公報(特許文献2)に記載されているミキシングエレメントは、流体の混合を主な目的としているため、塵埃同士を衝突凝集させることで特に小さな塵埃の数を低減させる手段については記述されていない。
【0009】
特開2005−324094号公報(特許文献3)に記載の粒子凝集器では、粒子を帯電するためにコロナ放電を利用しているので、流路中に高電圧部を設けている。このような場合に、流路径に相当するような物体、特に糸状の物が本高電圧部に引っ掛ると電極ショートにより火災などが発生する危険性がある。
【0010】
また、特許第2517877号公報(特許文献4)に記載の微粒子複合体の製造方法では、2系統の管を用いて、一方の管を通る微粒子は正の静電気に、他方の管を通る微粒子は負の静電気に帯電させた後に、両者を合流している。
【0011】
このように2系統の流路を設けるには、1つの吸入口を途中で分岐するか、吸入口を2つにするかしなければならない。しかし、1つの吸入口を途中で分岐すると、分岐箇所での微粒子の堆積が発生しやすくなる。これを、吸入口を2つにすることで回避すると、それぞれの吸入口間の距離を大きくしなければならず、占有面積が多くなってしまう上に構造も複雑になってしまう。
【0012】
そこで、この発明の目的は、簡単な構造で、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に従った塵埃凝集路は、塵埃を含む気体が流通する流路と、流路内に配置されて塵埃を摩擦帯電するための摩擦帯電経路と、流路内に配置されて摩擦帯電経路において帯電された塵埃どうしを衝突させて塵埃塊(クラスタ)の形成を促進させるための衝突促進経路とを備え、摩擦帯電経路は、第1の材質で形成されている第1摩擦帯電部と、第2の材質で形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路は、第3の材質で形成され、第1の材質の接触電位が第3の材質の接触電位よりも大きく、第3の材質の接触電位が第2の材質の接触電位よりも大きい。
【0014】
接触電位が高い物質ほど、他の物質と接触した際に他の物質から電子を奪う力が強い。すなわち、接触電位が高い物質は、負に帯電しやすく、接触する相手を正に帯電させやすい。一方、接触電位が低い物質ほど、他の物質と接触した際に他の物質に電子を奪われやすい。すなわち、接触電位が低い物質は、正に帯電しやすく、接触する相手を負に帯電させやすい。
【0015】
そこで、このようにすることにより、塵埃凝集路の材質の選択に制限がある場合においても、3つの異なる接触電位をもつ材質を選択し、接触電位が上記の大小関係になるように考慮して構成すれば、従来に比べて塵埃の凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0016】
このようにして、簡単な構造で、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供することができる。
【0017】
この発明に従った塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、流路内を流通する所定の塵埃に対して大きい接触電位を持つ材質によって形成されている第1摩擦帯電部と、流路内を流通する所定の塵埃に対して小さい接触電位を持つ材質によって形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路は、流路内を流通する塵埃に対してほぼ同一の接触電位を持つ材質によって形成されていることが好ましい。
【0018】
このようにすることにより、特定の物質からなる塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化することができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0019】
この発明に従った塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、流路内を流通する複数の塵埃のうちで最大の接触電位を持つ塵埃よりも大きい接触電位を持つ材質によって形成されている第1摩擦帯電部と、流路内を流通する複数の塵埃のうちで最小の接触電位を持つ塵埃よりも小さい接触電位を持つ材質によって形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路は、流路内を流通する塵埃の平均接触電位に対してほぼ同一の接触電位をもつ材質で形成されていることが好ましい。
【0020】
このようにすることにより、複数の物質から成る塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化することができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0021】
また、このようにすることにより、凝集させる塵埃の組成が不明の場合においても、塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化させることができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0022】
この発明に従った塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、摩擦帯電経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されていることが好ましい。
【0023】
このようにすることにより、摩擦帯電経路内の気流を撹拌し、塵埃と摩擦帯電部との接触確率を増大させて、帯電する塵埃の数と、塵埃の帯電量とを増加させることができる。
【0024】
この発明に従った塵埃凝集路においては、衝突促進経路は、衝突促進経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されていることが好ましい。
【0025】
このようにすることにより、塵埃を効果的に衝突させることができる。
【0026】
この発明に従った塵埃凝集路においては、突起は、突起の下流側を流通する気体に渦を発生させることが可能であるように形成されていることが好ましい。
【0027】
このようにすることにより、渦の作用で全ての粒子どうしが衝突し、効果的に塵埃塊(クラスタ)を形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、この発明によれば、簡単な構造で、塵埃を帯電し、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図2から図5は、この発明の実施形態にかかる摩擦帯電経路の摩擦帯電部によって塵埃が帯電されて凝集することを説明する図である。
【0031】
図2は、この発明の一つの実施の形態として、摩擦帯電経路の第1と第2の摩擦帯電部の構成を説明する図である。
【0032】
図2に示すように、第1摩擦帯電部10および第2摩擦帯電部11は、円筒管を軸方向に2分割したハーフパイプ形状をしている。第1摩擦帯電部10は塵埃を正に帯電させやすい材質で構成されている。また、第2摩擦帯電部11は塵埃を負に帯電させやすい材質で形成されている。このハーフパイプ形状は、帯電の性能、構成部分の機能により適宜変形した形状にすることが可能である。
【0033】
図3は、この発明の一つの実施の形態として、摩擦帯電経路の第1と第2の摩擦帯電部の組み立てを説明する図である。
【0034】
図3に示すように、図2に示す第1摩擦帯電部10と第2摩擦帯電部11を組み合わせると、図3に示される摩擦帯電経路12に組み合わせることができ、内部を気密に保って気流を流すことが可能となる。摩擦帯電経路12が形成された第1摩擦帯電部10と第2摩擦帯電部11の、一方の接合面13と他方の接合面14に垂直な面をA−A'断面とする。
【0035】
図4は、図3に示す摩擦帯電経路をA−A'線の方向から見た断面図である。
【0036】
図4は、細塵が本発明により帯電されるモデルを説明している。以下、図4に基づいて、塵埃の帯電状態を説明する。
【0037】
摩擦帯電経路12に気流が発生すると、塵埃として数ミクロン程度の細塵15A、細塵16A、細塵17Aが通風路12の入口18より出口19に向かって搬送される。細塵15Aが第1摩擦帯電部10の近くに搬送され、第1摩擦帯電部10に接触したとき、摩擦帯電作用により細塵15Aは、正に帯電させられる。また細塵17Aは、第2摩擦帯電部11の近くに搬送され、第2摩擦帯電部11に接触したとき、摩擦帯電作用により細塵17Aは、負に帯電させられる。このようにして正に帯電した細塵15Aは、負に帯電した細塵17Aと通風路12の中で混ざり合い、静電気力により相互に吸引されるので吸着し、塵埃塊19Aを形成する。通風路12と帯電部の形状を適宜長く設定することにより塵埃塊19Aは、第1摩擦帯電部10、第2摩擦帯電部11と再度接触することになり、更に帯電される。このようにして細塵15A、細塵17A、塵埃塊19Aは、帯電と吸着を繰り返すので、塵埃塊19Aは更にサイズが大きくなる。図3では、第1摩擦帯電部10もしくは第2摩擦帯電部11と細塵が一回の衝突で1回の吸着を行うように図示されているが、通風路12の長さと直径を適宜設定することで、複数回の接触を行わせることができる。また材質の選定を適宜行うことで、細塵15A、細塵17Aと第1摩擦帯電部10と第2摩擦帯電部11が接触するときの帯電量を選択し、設定することができる。
【0038】
図5は、本発明により塵埃塊が形成される他の場合のモデルを示す図である。
【0039】
図5に示すように、図4と同様にして第1摩擦帯電部10と第2摩擦帯電部11に接触した細塵15B、細塵17Bが、気流もしくは静電気の吸引作用により相互に吸着し、更に近傍を浮遊している帯電されていないもしくは空気により微量に帯電した細塵16Bと吸引することにより大きい塵埃塊(クラスタ)19Bが形成される。
【0040】
この発明の摩擦帯電経路は、以上に示した第1と第2の摩擦帯電部を備える。
【0041】
次に、この発明の実施形態にかかる衝突促進経路における塵埃の凝集について説明する。
【0042】
図6は、流路内の気流が層流速度分布の場合に粒子が凝集する様子を模式的に示す図である。
【0043】
図6に示すように、流路1内には矢印の方向に気体Pが流入する。流路1内の気流Qが層流である場合、流路1の壁2の内面の摩擦と内部を流通する気体の粘性の影響で、気流Q内に速度差が生じ、境界層の速度勾配4が発達する。気体Pとともに流路1内に流入した塵埃5aと、塵埃5aよりも遅れて流路1内に流入した塵埃5bは、気流Q内に生じた速度差によって、塵埃5aと塵埃5bが二点鎖線で示すように近付いて、粒子同士が接触し、凝集する。
【0044】
流路1内の流れが乱流である場合には、乱流の不均一な速度分布に加えて、乱流速度の時間的変動に対する粒子の追従性が粒子の慣性力により異なるために粒子が凝集する。乱流の不均一な速度分布は、層流の場合と同様の現象が部分的に起きることによって生じているものと考えられる。
【0045】
いずれの場合においても、塵埃中の粒子どうしの接触確率増大のメカニズムにおいては、流れのせん断が支配的であるため、気流に速度分布を積極的に与えることで粒子同士の凝集を促進させることができる。
【0046】
しかしながら、流路の流れが層流である場合、粒子径の大きさによって、速度分布が粒子に及ぼす力の大きさと向きとが異なる。そのため、流路内には様々な大きさの粒子が均一に分布せず、粒子の径によって分布に偏りができる。このような流路中での粒子径分布は、粒子どうしの接触確率に影響を及ぼす。このことを以下に説明する。
【0047】
図7は、流路内の気流が層流速度分布の場合に、径の大きい粒子が速度勾配より受ける影響を示した模式図である。
【0048】
図7に示すように、流路1の中央部付近では気流Qの速度が大きいため、粒子5に生じる抗力も大きい。一方、流路1の壁2に近付くほど気流Qの速度が小さくなるため、粒子5に生じる抗力も小さい。流路1内に気体Pとともに流入した塵埃中の粒子5の径が大きい場合、粒子5は流路1内に生成された速度勾配4の影響を強く受ける。すなわち、粒子5の中央部側に働く抗力が大きく、粒子5の壁側に働く抗力が小さいため、粒子5において中央部と壁側に生じる抗力の差によって、粒子5には、流路1の中央から壁面方向に向かう回転力が加わる。その結果、粒子5が方向Vの向き、すなわち、流路1の壁2の方向に移動する。その結果、流路1の壁2側には径の大きい粒子が集まる。
【0049】
図8は、流路内の気流が層流速度分布の場合に、径の小さい粒子が速度勾配より受ける影響を示した模式図である。
【0050】
図8に示すように、粒子5の径が小さい場合、粒子5の周囲の気流Qには速度の差があまりない。そのため、粒子5に働く流路1内に生成された速度勾配4の影響が弱く、粒子5は、流路1に流入した時の位置を大きく変えずに、方向Vの向きにそのまま直進する。そのため、流路1の中央部には、相対的に径の小さい粒子が集まる。
【0051】
その結果、流路1の中央部における径の小さい粒子同士が接触する確率は低くなる。さらに、流路1の中央部には径の小さい粒子、流路1の壁2の付近には径の大きい粒子、というように、径の異なる粒子がそれぞれ分離しているため、表面積の大きい径の大きい粒子に径の小さい粒子が接触する確率も低くなり、全体的に粒子同士の接触確率が低下する。
【0052】
以上のことから、粒子どうしの凝集効率向上のためには、以下の3点が重要であるといえる。
【0053】
(1)乱流速度場を形成する。
【0054】
(2)速度分布を積極的に与える。
【0055】
(3)粒子径の分布を均一にする。
【0056】
これらを全て同時に満足するためには、気流に乱れを発生させる手段、すなわち渦発生手段を流路内に設けることが考えられる。
【0057】
一方、粒子どうしが衝突すると、衝突した粒子は、粒子間に生じる力により凝集するものと考えられる。この力は一般的に粒子間距離の累乗に反比例するため、粒子間の距離が小さくなるとその値は非常に大きくなるものと考えられる。そのため一度接触した粒子の凝集を分散するためには粒子の衝突時に生じた力以上の外力が必要となるものと考えられるため、凝集状態を保持し続けるものと考えられる。
【0058】
さらに、上記の力は、粒子が巨大化するほど、より大きな引力として働くため、径の大きい粒子と接触した径の小さい粒子の分散はさらに生じにくい。
【0059】
また、粒子どうしの凝集が生じると、見かけ上、径の大きな粒子が増加するため、さらに粒子同士の接触確率が増加する。
【0060】
この発明の塵埃凝集路は、上述したような、塵埃を摩擦帯電するための摩擦帯電経路と、摩擦帯電経路において帯電された塵埃どうしを衝突させて塵埃塊(クラスタ)の形成を促進させるための衝突促進経路とを備える。
【0061】
この発明の塵埃凝集路においては、特定の物質からなる塵埃を、塵埃に対し十分大きい接触電位をもつ第1の材質により構成された第1摩擦帯電部と、塵埃に対し十分小さい接触電位をもつ第2の材質により構成された第2摩擦帯電部とを並列に配置して形成した摩擦帯電経路の中を、気流により上流側から下流側へ搬送する。
【0062】
これにより、第1の材質により構成された第1摩擦帯電部に衝突接触した塵埃は、より接触電位の高い第1の材質により電子を奪われ、正の電荷を持ち、故に正に帯電する。また、第2の材質により構成された第2摩擦帯電部に衝突接触した塵埃は、より接触電位の低い第2の材質から電子を奪い、負の電荷を持ち、故に負に帯電する。
【0063】
この正に帯電した塵埃と、負に帯電した塵埃は、帯電していない塵埃を吸着しながら、塵埃塊(小クラスタ)に成長し、さらに、相対する電荷を持つ塵埃塊(小クラスタ)同士が、クーロン力(引力)により衝突接触し、さらに大きな塵埃塊(大クラスタ)へと成長する。
【0064】
これが、上記構成により得られる、塵埃の凝集効果である。これにより、より大きな塵埃塊にクラスタ化して成長した塵埃は、クラスタ化していない塵埃に比べ、例えば流路のさらに下流に設けられる遠心分離機やフィルタにより、より効率よく分離または集塵される。
【0065】
このとき、塵埃が搬送される気流の流速が増加すると、塵埃塊に働くクーロン力に対して慣性力が支配的となり、十分に塵埃は帯電しているにもかかわらず、塵埃または塵埃塊が衝突接触しにくく、または、塵埃または塵埃塊がある程度以上の衝突接触をしないためにある程度以上の塵埃塊が成長しないことが懸念される。
【0066】
この問題を効果的に解決するためには、気流に渦や乱れを発生させ、塵埃または塵埃塊同士の衝突接触の回数を増加してやればよい。例えば、衝突促進部(例えば、強い渦を生成する突起からなるもの)を備えた衝突促進経路を、摩擦帯電経路のさらに下流側に設けることが考えられる。
【0067】
しかしながらこのとき、摩擦帯電経路と衝突促進経路との間の経路に曲がりがあるか、または十分に距離が長い場合には、衝突促進部(例えば、下流側に強い渦を生成する突起からなるもの)の材質を安易に選んでしまうと、次のようなデメリットが生ずる。
【0068】
例えば、上記第1の材質により構成された衝突促進部を、摩擦帯電経路のさらに下流側に設けた場合、第1の材質は、上記に記載の通り、塵埃から電子を奪う性質がある。
【0069】
故に、例えば、まだ電荷を持たない塵埃か、または、正負に帯電した塵埃同士の衝突凝集により電荷が中和されて電荷を持たない塵埃塊が、上記第1の材質により構成された衝突促進部に衝突接触すれば、衝突促進部は上記第1の材質により構成されているため、塵埃または塵埃塊が衝突促進部に衝突すれば、塵埃または塵埃塊は正に帯電する。
【0070】
例えば、既に正に帯電した塵埃または塵埃塊が、上記第1の材質により構成された衝突促進部に衝突接触すれば、衝突促進部は上記第1の材質により構成されているため、塵埃または塵埃塊からさらに電子を奪うため、ますます塵埃または塵埃塊は正の電荷量を増強される。または、塵埃または塵埃塊が既に飽和点まで正に帯電している場合には、衝突促進部と塵埃または塵埃塊との間で電子のやり取りはない。
【0071】
例えば、既に負に帯電した塵埃または塵埃塊が、上記第1の材質により構成された衝突促進部に衝突接触すれば、衝突促進部は上記第1の材質により構成されているため、負に帯電している塵埃または塵埃塊から電子を奪い、塵埃または塵埃塊のもつ電荷を中和して負の電荷の量を減らし、結果として塵埃または塵埃塊のもつ負の電荷は小さくなるか、あるいはさらに電子を奪われる場合には、正に帯電してしまうこともあり得る。
【0072】
上記のような場合、衝突促進部を通過する塵埃または塵埃塊は、正の電荷をもつものの数が増加し、負の電荷をもつものの数が減少してしまう。
【0073】
ところで、正の電荷をもつ塵埃または塵埃塊同士は、斥力のため反発しあい、衝突による凝集が阻害されるため、衝突促進部を通過する塵埃または塵埃塊は、正の電荷をもつものの数が増加し、負の電荷をもつものの数が減少して、全体として正の電荷を持つ塵埃または塵埃の割合が多くなってしまうと、結果として、当初期待していた塵埃または塵埃塊同士の衝突接触による凝集効果を、逆に損なわせてしまうこととなる。
【0074】
また仮に、衝突促進部が、第1の材質ほどは接触電位が大きくない材質により構成されていたとしても、塵埃よりも大きい接触電位をもつ材質で構成されていれば、程度は違えども、上記に近いデメリットが生ずる。
【0075】
また同様に、上記第2の材質により構成された衝突促進部を、摩擦帯電経路のさらに下流側に設けた場合、第2の材質は、上記に記載の通り、塵埃により電子を奪われる性質がある。
【0076】
故に、例えば、まだ電荷を持たない塵埃か、または、正負に帯電した塵埃同士の衝突凝集により電荷が中和されて電荷を持たない塵埃塊が、上記第2の材質により構成された衝突促進部に衝突接触すれば、衝突促進部は上記第2の材質により構成されているため、塵埃または塵埃塊が衝突促進部に衝突すれば、塵埃または塵埃塊は負に帯電する。
【0077】
例えば、既に負に帯電した塵埃または塵埃塊が、上記第2の材質により構成された衝突促進部に衝突接触すれば、衝突促進部は上記第2の材質により構成されているため、塵埃または塵埃塊によりさらに電子が奪われるため、ますます塵埃または塵埃塊は負の電荷量を増強される。または、塵埃または塵埃塊が既に飽和点まで負に帯電している場合には、衝突促進部と塵埃または塵埃塊との間で電子のやり取りはない。
【0078】
例えば、既に正に帯電した塵埃または塵埃塊が、上記第2の材質により構成された衝突促進部に衝突接触すれば、衝突促進部は上記第2の材質により構成されているため、正に帯電している塵埃または塵埃塊により電子が奪われ、塵埃または塵埃塊のもつ電荷を中和して正の電荷の量を減らし、結果として塵埃または塵埃塊のもつ正の電荷は小さくなるか、あるいはさらに電子を奪う場合には、負に帯電してしまうこともあり得る。
【0079】
上記のような場合、衝突促進部を通過する塵埃または塵埃塊は、正の電荷をもつものの数が増加し、負の電荷をもつものの数が減少してしまう。
【0080】
ところで、負の電荷をもつ塵埃または塵埃塊同士は、斥力のため反発しあい、衝突による凝集が阻害されるため、衝突促進部を通過する塵埃または塵埃塊は、負の電荷をもつものの数が増加し、正の電荷をもつものの数が減少して、全体として負の電荷を持つ塵埃または塵埃の割合が多くなってしまうと、結果として、当初期待していた塵埃または塵埃塊同士の衝突接触による凝集効果を、逆に損なわせてしまうこととなる。
【0081】
また仮に、衝突促進部が、第2の材質ほどは接触電位が小さくない材質により構成されていたとしても、塵埃よりも小さい接触電位をもつ材質で構成されていれば、程度は違えども、上記に近いデメリットが生ずる。
【0082】
また、上流側に設置された摩擦帯電経路により摩擦帯電した塵埃または塵埃塊は、下流へ流通する間に、その軌道は流れに任されるため、一般的には管理が極めて難しく、電荷をもつ塵埃または塵埃塊を衝突促進部に衝突接触しないようにするのは困難か、または、衝突促進部に衝突接触しないように新たな工夫を加えれば、今度は、下流側に設けた衝突促進部により、気流に渦や乱れを発生させ、塵埃または塵埃塊同士の衝突接触の回数を充分に増加させることができなくなってしまう。
【0083】
そこで、衝突促進経路に設けられる衝突促進部の材質を、塵埃に対し略同一の接触電位をもつ第3の材質により構成する。
【0084】
このようにすることで、衝突促進部と塵埃または塵埃塊との衝突の際に、電子のやり取りを抑制することができる。これにより、衝突促進経路の上流側に設けられた摩擦帯電経路によりバランスよく正負に帯電した塵埃または塵埃塊を、その電荷量をほとんど変化させることなく、塵埃同士の衝突を促進することができ、塵埃の凝集効果をより高めることができる。
【0085】
これにより、塵埃または塵埃塊を、さらに大きな塵埃塊にクラスタ化して成長させることができるので、上記の衝突促進経路を流通させない場合に比べ、例えば流路のさらに下流に設けられる遠心分離機やフィルタにより、さらに効率よく分離または集塵される。
【0086】
なお、摩擦帯電経路と衝突促進経路との間の経路に曲がりがなく、かつ、十分に距離が短い場合には、衝突促進部の材質も摩擦帯電経路と同じ2種類の材質を選択し、第1の材質により構成された第1摩擦帯電部のすぐ下流に備えられた衝突促進部も第1の材質により構成し、第2の材質により構成された第2摩擦帯電部のすぐ下流に備えられた衝突促進部も第2の材質により構成することにより、塵埃または塵埃塊を、より大きな塵埃塊にクラスタ化して成長させることができるので、例えば流路のさらに下流に設けられる遠心分離機やフィルタにより、より効率よく分離または集塵される。
【0087】
図9は、物質の帯電のしやすさを表した帯電列を示す図である。
【0088】
図9に示すように、帯電列表に記された物質は、表の右側ほど接触電位が高く、すなわち、負に帯電しやすく、接触相手を正に帯電させやすい。一方、帯電列表の左側ほど接触電位が低く、すなわち、正に帯電しやすく、接触相手側を負に帯電させやすい。
【0089】
したがって、この発明の摩擦帯電経路と衝突促進経路について、接触電位の大きい材質としては、図9に示す帯電列の右側にある物質を用い、接触電位の小さい材質としては、図9に示す帯電列の左側にある物質を用いることができる。
【0090】
このような考察に基づいて、以下に本発明の実施形態を説明する。
【0091】
(実施形態1−1)
図10は、この発明の実施形態1−1として、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機の全体を示す図である。
【0092】
図10に示すように、電気掃除機6bは、流路として延長管502、サクションホース504、連結部505を備える。延長管502と、サクションホース504と、連結部505は、順番に接続されている。電気掃除機6bは、長さaの延長管502の上流側の端部から距離c下流側に長さbの摩擦帯電経路161を備え、さらにその下流側である本体接続部505に長さdの衝突促進経路162を備える。摩擦帯電経路161においては、塵埃を正に帯電させる第1摩擦帯電部と、塵埃を負に帯電させる第2摩擦帯電部が対向するように配置されて塵埃凝集路の壁を形成している。
【0093】
摩擦帯電経路161は、粒子を帯電させることが可能な機能材料によって形成されているため、塵埃粒子が壁面に接触することで塵埃粒子を帯電させ、帯電した塵埃間に生じるクーロン力を用いて効果的に塵埃粒子の衝突確率を向上させる。
【0094】
このようにして、摩擦帯電経路161においては、粒子同士の衝突確率を増加する。内壁面との接触確率を増加し、帯電した粒子数と粒子の荷電量を増加する。
【0095】
衝突促進経路162においては、塵埃粒子を効果的に撹拌し、衝突確率を高め、摩擦帯電経路161で帯電した塵埃粒子を全て凝集させる。衝突促進経路162は、粒子が壁面と衝突しても電荷の授受を生じにくい材料によって形成されている。
【0096】
摩擦帯電経路161において帯電した粒子の中には、衝突促進経路162に到達するまでに粒子同士で衝突しないものも存在する。また、塵埃凝集路からの距離が遠くなるにつれて渦強度は弱くなるため、撹拌能力が弱まり、粒子同士の衝突確率も低くなる。そのため、衝突促進経路162が、粒子を帯電しやすい機能材料で形成されていない塵埃凝集路として設けられることで、摩擦帯電経路161において帯電した粒子同士の衝突確率を高くし、さらに粒子の凝集を促進させる。
【0097】
このように、粒子の帯電状態を作り出し、さらに効果的に衝突させることによって、凝集を効率的に生じさせることが可能となる。
【0098】
摩擦帯電経路161においていずれかの極性に帯電した塵埃粒子を新たに帯電させる効果のある機能材料で衝突促進経路162を形成すると、摩擦帯電経路161と衝突促進経路162によって塵埃粒子が同一極性に帯電される場合は、粒子の帯電量がさらに増加され、より強いクーロン力を生み出すことができるが、摩擦帯電経路161と衝突促進経路162によって塵埃粒子が異極性に帯電される場合は、粒子の電荷が中和される。
【0099】
粒子の電荷が中和される別の例としては、流路内において気流が流通する方向に、粒子を正に帯電する機能材料と粒子を負に帯電する機能材料とを等間隔に交互に配置し、突起により流路の中心付近を旋回中心とした流路全体の旋回流を生じさせる場合がある。粒子を正に帯電させる壁面と接触して正に帯電した塵埃粒子が、次に粒子を負に帯電させる壁面と接触して負に帯電するため、結果的に塵埃粒子の電荷は中和される。
【0100】
また、流路内において気流が流通する方向に平行な方向に流路を二分割し、正と負に帯電する機能材料を同一比率で片側ずつ配置し、突起により旋回流を生じさせた場合も同様に、まず粒子を正に帯電させる壁面と接触して正に帯電した塵埃粒子が、次に粒子を負に帯電させる壁面と接触して負に帯電するため、結果的に塵埃粒子の電荷は中和される。
【0101】
しかし、本実施形態のように、衝突促進経路162を電荷の授受の生じにくい材料によって形成し、衝突促進経路162において、摩擦帯電経路161で与えられた塵埃粒子の帯電を中和させることなく、衝突促進経路で形成された渦の作用で全ての粒子同士が衝突することによって、効果的に塵埃塊(クラスタ)を形成することができる。
【0102】
塵埃凝集路の上流部である、摩擦帯電経路は、第1の材質により構成された第1摩擦帯電部と、第2の材質により構成された第2摩擦帯電部とを並列に配置して形成される。
【0103】
また、衝突促進経路は、第3の材質により構成された衝突促進部を備えている。
【0104】
そして、第1の材質、第2の材質、第3の材質のそれぞれの接触電位は、第1の材質>第3の材質>第2の材質になるようにされる。
【0105】
例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロンの3種類の材料のみから選択しなければならないといった制約がある場合には、第1の材質はポリエチレン(PE)、第2の材質はポリスチレン(PS)、第3の材質はナイロン(ポリアミド)といった組合せにすることによって、本発明の効果を比較的よく得ることができる。
【0106】
これにより、塵埃凝集路の材質の選択に制限がある場合においても、3つの異なる接触電位をもつ材質を選択し、接触電位が上記の大小関係になるように考慮して構成すれば、従来に比べて、凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0107】
このように、塵埃凝集路は、塵埃を含む気体が流通する延長管502と、延長管502内に配置されて塵埃を摩擦帯電するための摩擦帯電経路161と、連結部505内に配置されて摩擦帯電経路161において帯電された塵埃どうしを衝突させて塵埃塊(クラスタ)の形成を促進させるための衝突促進経路162とを備え、摩擦帯電経路161は、第1の材質で形成されている第1摩擦帯電部と、第2の材質で形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路は、第3の材質で形成され、第1の材質の接触電位が第3の材質の接触電位よりも大きく、第3の材質の接触電位が第2の材質の接触電位よりも大きい。
【0108】
このようにすることにより、塵埃凝集路の材質の選択に制限がある場合においても、3つの異なる接触電位をもつ材質を選択し、接触電位が上記の大小関係になるように考慮して構成すれば、従来に比べて塵埃の凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0109】
このようにして、簡単な構造で、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供することができる。
【0110】
(実施形態1−2)
図11は、本発明の実施形態1−2として、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機の全体を示す図であり、図12は、本発明の電気掃除機の本体の構成の説明図である。
【0111】
実施形態1−2が実施形態1−1と異なる点としては、摩擦帯電経路が接続管の内部に配置されている。実施形態1−2のその他の部分は、実施形態1−1と同様である。
【0112】
図11と図12に示すように、電気掃除機500においては、吸引口501は、延長管細側511、延長管太側512、把手503aを有する接続管503、折り曲げ自在のサクションホース504と順次連結され、連結部505を経由して掃除機本体506に接続されている。掃除機本体506には、電動送風機567、集塵部561、集塵ケース563、HEPAフィルター570、コードリール(図示せず)、電動送風機567の通電を制御する制御回路(図示せず)等が収容されている。
【0113】
図11、図12中には、塵埃を含んだ空気の流れが矢印で示されている。電動送風機567が駆動すると、吸引口501から空気が吸引され、塵埃を含む空気が、延長管細側511、延長管太側512、接続管503、サクションホース504、連結部505を通り、掃除機本体506へと搬送される。掃除機本体506に吸引された塵埃は、集塵部561、電動送風機567、HEPAフィルター570を通り排気部571より排出される。このようにして吸引口501より吸引された塵埃の中でサイズの大きい塵埃は、集塵部561に集積される。また、塵埃が捕集され清浄になった空気は、電動送風機567を冷却するために電動機569内部を通過し、掃除機本体506の外に排気される構造となっている。また、掃除機本体506の側面には、回転自在に設けられ、掃除機本体506を床面508上にて移動自在に支持する車輪507が備えられている。
【0114】
延長管細側511の外径と、延長管太側512の内径とは略同等であり、延長管細側511を延長管太側512の内部へスライドして延長管全体の長さを伸縮することができるので、使用者は各人に適した状態で掃除をすることができる。
【0115】
電気掃除機500においては、摩擦帯電経路が接続管503の内部に配置され、衝突促進経路が連結部505の内部に配置されている。
【0116】
図13は、摩擦帯電経路が配置された接続管の断面を示す図である。
【0117】
図13に示すように、摩擦帯電経路200は、下流側がサクションホース504の上流側の一端に覆われるように挿入される一方、上流端から接続管503に挿入されている。ここで、摩擦帯電経路200の下流端は接続管503の下流端より深さtだけ接続管503の内側に保持されている。このようにすることにより、サクションホース504が下方に湾曲しても、接続管503の下流端により湾曲度合いが制限され、摩擦帯電経路200にかかる応力が大幅に緩和される。したがって、摩擦帯電経路200内の圧力損失が高くならないように摩擦帯電経路200の内径を大きくしたり、摩擦帯電経路200を二重構造としたりすることも可能となる。
【0118】
摩擦帯電経路200の下流端にかかる応力を緩和するためには、深さtを長くすればよいので、接続管503を長くすることが考えられる。しかし、これでは把手503aの後方の可動箇所が、把手503aより離れていくことになるため、電気掃除機500の操作性が低減してしまう。本発明者は、種々の試作品での操作の結果、接続管503の内径が58mm、摩擦帯電経路200の外径が46mm、摩擦帯電経路200の内径が42mmの時、深さtを19mmとすれば、摩擦帯電経路200にかかる応力を充分に低減することができること見出した。余裕度を小さくとれば、深さtを12mmとしても摩擦帯電経路200の下流端にかかる応力はかなり緩和される。
【0119】
摩擦帯電経路200の外枠203には、外周に沿って溝203cが形成されており、接続管503は、内部に摩擦帯電経路200を保持するための保持具513を備える。保持具513は接続管503の内部に固定されている。保持具513には、突起(凸部)513aが形成されており、突起513aは、溝203cと嵌合する形状である。したがって、摩擦帯電経路200は、サクションホース504と接続されて、接続管503から抜けないように保持された上で、周方向には回転自在となる。
【0120】
また、摩擦帯電経路200の下流側の端をサクションホース504で包み込む構造なので、シール性が高く、第1帯電部201、第2帯電部202、外枠203を密着性の高い構造にしなくても空気が漏れず、超音波溶着やねじ止めなどをしなくてもよい。このため、摩擦帯電経路200の製造時間の短縮や、製造効率の向上、製造コストの低減などにより、利益率を向上することができる。
【0121】
図14は、この発明の実施形態1−2にかかる連結部505の断面図である。
【0122】
図14に示すように、衝突促進経路300の外枠303はサクションホース504の下流側の一端に覆われるように挿入された後、その他端から連結部505に挿入されている。衝突促進経路300の上流側の端を、サクションホース504で包み込む構造なので、シール性が高く、空気が漏れない(超音波溶着やねじ止めなどをしなくてもよい)。このため、製造時間の短縮や、製造効率の向上、製造コストの低減などにより、利益率を向上することができる。
【0123】
電動送風機567が駆動すると、ファン568により、吸い込みの気流が発生し、サクションホース504、連結部505より掃除機本体506に塵埃を含む空気が流入し、接続部562、集塵フィルター564、接続部565、ファン568、電動機本体569、HEPAフィルター570、排気口571、に向けて送風が行われる。このとき、吸気に含まれる塵埃は、接続管503の内部に配置された摩擦帯電経路200を通過するときに帯電されて凝集する。細塵、塵埃塊を含む空気は搬送される途中で気流が混合されながら搬送されるので、接触、吸引、吸着が行われ、本発明による塵埃塊が更に大きく成長する。
【0124】
大きく成長した塵埃塊は、集塵フィルター564の目の大きさより大きくなるので、集塵フィルター564に捕集される。帯電部を複数個所設けたり、細塵と帯電部の接触を多く出来るような構成を取れば、集塵塊は集塵フィルター564の目の大きさより大きくなるので、HEPAフィルター570は不要とすることができる。
【0125】
なお、ここで塵埃塊が集塵フィルター564の目の大きさよりも大きく成長されなかった場合は、フィルター564を通過することもある。このような場合は、HEPAフィルター570を設けて捕集してもよい。
【0126】
以上の実施形態1−1と実施形態1−2とにおける摩擦帯電経路と衝突促進経路は、以下の実施形態1−Aから実施形態1−Cの摩擦帯電経路と衝突促進経路であってもよい。
【0127】
(実施形態1−A)
凝集させるべき塵埃が特定の物質から成る場合、特定の物質から成る塵埃を吸引して集塵する集塵装置であって、塵埃を空気とともに吸引する吸込口と、塵埃を空気の流れ、即ち気流にのせて下流側へ搬送する経路と、経路に連通し、気流を生じさせる駆動源と、経路に配され、空気と塵埃を分離し、塵埃を留める集塵部と、塵埃から分離された空気を外部に排出する吹出口と、を有する集塵装置において、経路の、集塵部よりも上流側に、塵埃を凝集させる塵埃凝集路が配され、塵埃凝集路は、上流部が摩擦帯電経路を成し、下流部が衝突促進経路を成す。
【0128】
なお、塵埃凝集路の上流部である、摩擦帯電経路は、上記特定の物質から成る塵埃の接触電位に対し十分大きい接触電位をもつ第1の材質により構成された第1摩擦帯電部と、上記特定の物質から成る塵埃の接触電位に対し十分小さい接触電位をもつ第2の材質により構成された第2摩擦帯電部と、を並列に配置して形成される。
【0129】
第1摩擦帯電部の構成は、第1の材質により形成された壁面と、その壁面から一体的に突出した第1の材質により形成された複数の突起と、から成る。また、第2摩擦帯電部の構成は、第2の材質により形成された壁面と、その壁面から一体的に突出した第2の材質により形成された複数の突起と、から成る。
【0130】
第1摩擦帯電部と第2摩擦帯電部とは、形状は同一であり、材質が異なる。例えば、第1摩擦帯電部と第2摩擦帯電部とは、どちらも、円筒を軸方向に半分にカットした形状の内壁に複数の突起を持つ形状となっており、それらがカット面にて接合されて1つの管を成し、摩擦帯電経路を成す。
【0131】
また、塵埃凝集路の下流部である、衝突促進経路は、上記特定の物質から成る塵埃の接触電位に対し略同等の接触電位をもつ第3の材質により構成された壁面と、その壁面から一体的に突出した第3の材質により形成された複数の衝突促進部を備えている。衝突促進部は、第3の材質により形成された突起であり、空気の流れによりその下流側に強い渦が発生する形状を成す。
【0132】
例えば、凝集させるべき塵埃が、鉄粉の場合、例えば、第1の材質はポリプロピレン(PP)、第2の材質はナイロン(ポリアミド)、第3の材質は鉄といった組合せとすれば、本発明の効果を得ることができる。
【0133】
これにより、特定の物質からなる塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化して、集塵部により集塵することができるので、従来に比べて、極めて集塵効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0134】
このように、塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、流路内を流通する所定の塵埃に対して大きい接触電位を持つ材質によって形成されている第1摩擦帯電部と、流路内を流通する所定の塵埃に対して小さい接触電位を持つ材質によって形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路は、流路内を流通する塵埃に対してほぼ同一の接触電位を持つ材質によって形成されている。
【0135】
このようにすることにより、特定の物質からなる塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化することができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0136】
また、塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、摩擦帯電経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されている。
【0137】
このようにすることにより、摩擦帯電経路内の気流を撹拌し、塵埃と摩擦帯電部との接触確率を増大させて、帯電する塵埃の数と、塵埃の帯電量とを増加させることができる。
【0138】
また、塵埃凝集路においては、衝突促進経路は、衝突促進経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されている。
【0139】
このようにすることにより、塵埃を効果的に衝突させることができる。
【0140】
(実施形態1−B)
凝集させるべき塵埃が複数の物質から成る場合、複数の物質から成る塵埃を吸引して集塵する塵埃凝集路であって、本実施形態は第1の実施形態の塵埃凝集路に対して、構成する材質が異なる。
【0141】
即ち、塵埃凝集路の上流部である、摩擦帯電経路は、上記複数の物質から成る塵埃のうち、最大の接触電位をもつものよりも大きい接触電位をもつ第1の材質により構成された第1摩擦帯電部と、上記複数の物質から成る塵埃のうち、最小の接触電位をもつものよりも小さい接触電位をもつ第2の材質により構成された第2摩擦帯電部とを並列に配置して形成される。
【0142】
また、塵埃凝集路の下流部である、衝突促進経路は、上記複数の物質から成る塵埃の平均接触電位に対し略同一の接触電位をもつ第3の材質により構成された壁面と、その壁面から一体的に突出した第3の材質により形成された複数の衝突促進部を備えている。
【0143】
例えば、凝集させるべき塵埃が、複数の物質から成り、例えば、人などの皮膚、木綿などの綿埃、紙くず、で構成されているならば、例えば、第1の材質はポリプロピレン(PP)、第2の材質はナイロン(ポリアミド)、第3の材質はガラス繊維入り樹脂、といった組合せだと、本発明の効果を得ることができる。
【0144】
これにより、複数の物質から成る塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化して、集塵部により集塵することができるので、従来に比べて、極めて集塵効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0145】
このように、塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、流路内を流通する複数の塵埃のうちで最大の接触電位を持つ塵埃よりも大きい接触電位を持つ材質によって形成されている第1摩擦帯電部と、流路内を流通する複数の塵埃のうちで最小の接触電位を持つ塵埃よりも小さい接触電位を持つ材質によって形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路は、流路内を流通する塵埃の平均接触電位に対してほぼ同一の接触電位をもつ材質で形成されている。
【0146】
このようにすることにより、複数の物質から成る塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化することができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0147】
またこのようにすることにより、凝集させる塵埃の組成が不明の場合においても、塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化させることができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0148】
また、塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、摩擦帯電経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されている。
【0149】
このようにすることにより、摩擦帯電経路内の気流を撹拌し、塵埃と摩擦帯電部との接触確率を増大させて、帯電する塵埃の数と、塵埃の帯電量とを増加させることができる。
【0150】
また、塵埃凝集路においては、衝突促進経路は、衝突促進経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されている。
【0151】
このようにすることにより、塵埃を効果的に衝突させることができる。
【0152】
(実施形態1−C)
凝集させるべき塵埃の組成が不明の場合、複数の物質から成る塵埃を吸引して集塵する塵埃凝集路であって、本実施形態は第1の実施形態の塵埃凝集路に対して、構成する材質が異なる。
【0153】
即ち、塵埃凝集路の上流部である摩擦帯電経路は、摩擦帯電経路に使用しうる材質のうち、最大の接触電位をもつ第1の材質により構成された第1摩擦帯電部と、摩擦帯電経路に使用しうる材質のうち、最小の接触電位をもつ第2の材質により構成された第2摩擦帯電部とを並列に配置して形成される。
【0154】
また、塵埃凝集路の下流部である衝突促進経路は、上記第1の材質の接触電位と第2の材質の接触電位との平均の接触電位をもつ第3の材質により構成された壁面と、その壁から一体的に突出した第3の材質により形成された複数の衝突促進部を備えている。
【0155】
例えば、第1の材質は、ポリテトラフルオロエチレン、第2の材質は硝子、第3の材質はアルミニウムといった組合せとすれば、本発明の効果を得ることができる。
【0156】
これにより、集塵する塵埃の組成が不明の場合においても、塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化することができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0157】
このように、塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、流路内を流通する複数の塵埃のうちで最大の接触電位を持つ塵埃よりも大きい接触電位を持つ材質によって形成されている第1摩擦帯電部と、流路内を流通する複数の塵埃のうちで最小の接触電位を持つ塵埃よりも小さい接触電位を持つ材質によって形成されている第2摩擦帯電部とを有し、衝突促進経路は、流路内を流通する塵埃の平均接触電位に対してほぼ同一の接触電位をもつ材質で形成されている。
【0158】
このようにすることにより、複数の物質から成る塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化することができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0159】
またこのようにすることにより、凝集させる塵埃の組成が不明の場合においても、塵埃を効果的に凝集し、大きな塵埃塊にクラスタ化させることができるので、従来に比べて、極めて凝集効率の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0160】
また、塵埃凝集路においては、摩擦帯電経路は、摩擦帯電経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されている。
【0161】
このようにすることにより、摩擦帯電経路内の気流を撹拌し、塵埃と摩擦帯電部との接触確率を増大させて、帯電する塵埃の数と、塵埃の帯電量とを増加させることができる。
【0162】
また、塵埃凝集路においては、衝突促進経路は、衝突促進経路を形成する壁を有し、壁の内面上には突起が形成されている。
【0163】
このようにすることにより、塵埃を効果的に衝突させることができる。
【0164】
以上に示された実施形態の摩擦帯電経路と衝突促進経路については、それぞれ、以下の実施形態2−1から実施形態2−8が適用される。
【0165】
(実施形態2−1)
図15は実施形態2−1の摩擦帯電経路の要部を透視した斜視図であり、図16は実施形態2−1の塵埃凝集路の要部を示す正面図、図17は、実施形態2−1の塵埃凝集路の側断面を示す図である。
【0166】
図15から図17に示すように、本発明の実施形態2−1においては、複数の突起113が流路111の壁112の内面上に設けられている。突起113は、流れ方向の長さ:JM=(1/4)D、三角錐高さ:NM=(1/16)Dの三角錐状突起により形成されている。
【0167】
実施形態2−1の摩擦帯電経路110によると、突起113により、双子渦が生ずる。1つの突起113により生ずる双子渦は、突起が大きい場合に比べると強度は弱くなるが、その分突起113の個数を多く設定しているため、略同様の攪乱を流れに与えることができる。
【0168】
被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、径がDの流路111の壁面から(1/8)Dまでの位置において特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるが、実施形態2−1の複数かつ多段に配置された突起113は、高さが(1/16)Dに設定されているため、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路111の壁112から(1/8)Dまでの距離の位置のうち、積極的に攪乱を与えることができるのは約半分の領域のみに限られる。
【0169】
実施形態2−1の突起113には、次のような利点がある。即ち、突起113の高さは、(1/16)Dに設定されており、圧力損失が格段に小さくなる。
【0170】
さらに、実施形態2−1の突起113の高さは、(1/16)Dに設定されているため、突起113により発生する双子渦が摩擦帯電経路110の流路111の壁112に発達する速度の境界層に影響を与え、境界層厚みを薄くする効果が得られる。
【0171】
一般に、流路の壁面部近傍には、流路内部を流通する流体の粘性により、速度の境界層ができる。境界層内部の流速は、流路中央部に比べて風速が遅く、その領域は流れに対する抵抗が大きい。即ち、境界層が発達して境界層の厚みが厚くなると、それだけ流れやすい領域の面積が減少し、見かけ上、流路の断面積が小さくなったような挙動を示す。従って、境界層が発達して境界層の厚みが厚くなると、その流路の圧力損失は増大する。
【0172】
実施形態2−1の突起113により発生する双子渦は、渦のスケールが小さく、また、より壁面部近傍に発生するため、突起113により発生する双子渦が上記の境界層の発達を抑制し、そのため、流路壁面の流れに対する抵抗が小さくなり、流路111の圧力損失が大幅に低下する。
【0173】
例えば、流路111の径DがD=40mm、流れの代表流速が25m/秒、常温常圧の場合、実験結果によると、(乱れ発生部による圧力損失)<(乱れ発生部による境界層の発達抑制効果)となり、多数の突起113が存在するにもかかわらず、突起のない流路よりも圧力損失が小さい摩擦帯電経路110が得られた。
【0174】
また、摩擦帯電経路110を流通する流体に、異物その他が混入していた場合においても、突起113は高さが低いため、異物がより一層引っ掛かりにくい。
【0175】
従って、実施形態2−1の摩擦帯電経路110を用いれば、多数の双子渦の攪乱により、十分な凝集性能を得ながら、さらに、管路摩擦抵抗を低減することができるため、圧力損失を大幅に低減した摩擦帯電経路110を得ることができる。また、例えば、流れに異物その他が混入する可能性のある場合においても、異物が突起113に引っ掛かってつまるといった不具合を略完全に防止することができるため、極めて信頼性の高い摩擦帯電経路110を得ることができる。
【0176】
また、突起113を構成する各辺に1mmのアールを形成することで、大幅にごみ詰まりを低減することができる。さらに、鋭角的な溝を排除することでメンテナンス性能のよい塵埃凝集路を形成することができる。
【0177】
(実施形態2−2)
図18は、実施形態2−2の衝突促進経路の要部を透視した斜視図であり、図19は実施形態2−2の塵埃凝集路の要部を示す正面図、図20は、実施形態2−2の塵埃凝集路の側断面を示す図である。
【0178】
図18から図20に示すように、実施形態2−2の衝突促進経路100においては、複数の突起103が流路101の壁102の内面上に設けられている。それぞれの突起103は三角錐状突起により形成されている。上流側から投影すると、複数の突起103は互いに重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起103は、一定の間隔をあけられて配置されている。また、流れ方向に垂直な方向の面内に、複数の突起103が配置されない配列でもよい。
【0179】
実施形態2−2の衝突促進経路100によると、突起103により双子渦が生ずる。但し、突起103の個数が少なく、また、上流側から投影すると、複数の突起103は互いに重なり合わない配列になっているため、流路101の壁102に沿って流通する流れの多くは突起103に一度だけ出会い、突起103と突起103の間を流通する流れは、突起103に一度も出会わない。故に、実施形態2−2の衝突促進経路100においては、流れに与えることができる攪乱は大幅に低下する。
【0180】
しかしながら、実施形態2−2の衝突促進経路100は、成型方法が極めて容易となる利点がある。すなわち、上流側から投影すると、複数の突起103は互いに重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起103は、一定の間隔をあけられて配置されているため、例えば、衝突促進経路100を樹脂成型する場合、衝突促進経路100の上流側を金型の可動側に設定し、衝突促進経路100の下流側を金型の固定側に設定し、金型を構成すれば、複雑な金型構成を必要とせず、衝突促進経路100を一体で成型することができる。
【0181】
また、衝突促進経路100内を流通する流体に、例えば流路101の断面と同程度の面積を持つ板状の異物(例えば牛乳キャップといったもの)その他が混入していた場合、流れ方向に垂直な方向の面内に、複数の乱れ発生部が配置していると、流路の断面と同程度の面積を持つ板状の異物の端部が同時に複数の突起に引っ掛かる可能性が高く、そのため塵埃凝集路の内部に異物がつまってしまうといった不具合が生ずる可能性があるが、実施形態2−2においては、突起103は流れ方向に垂直な方向の面内に、複数の突起103が配置されない配列に設定されるため、流路101の断面と同程度の面積を持つ板状の異物その他は引っ掛かりにくい。
【0182】
従って、実施形態2−2の衝突促進経路100を用いれば、極めて成形性が良いとともに、例えば、流れに流路の断面と同程度の面積を持つ板状の異物その他が混入する可能性のある場合には、異物が乱れ発生部に引っ掛かってつまるといった不具合を未然に防止することができる。このようにして、極めて高い成形性と極めて高い信頼性の両方を同時に有する塵埃凝集路を得ることができる。
【0183】
図21から図25は、実施形態2−2にかかる突起の他の配列を模式的に示す図である。(A)流路方向に垂直な方向に見た図と、(B)その流れの上流側から投影した模式図である。
【0184】
図21に示すように、流れ方向に垂直な方向の面の周上に、複数の突起103が配置されるが、それぞれの突起は互いに近い箇所、円筒状の流路の場合には、望ましくは90°程度の範囲に、流れ方向に垂直な方向の面内に配置された複数の突起103が集まっていれば、極めて高い成形性と極めて高い信頼性の両方を同時に得られる。
【0185】
図22に示すように、隣り合う突起103が互いに重ならないように多少ずらして配置し、突起によって生じる異物のつまりを防止したものや、さらに同様の効果を得るものとして、図23のように、突起をいくつかグループに分けて、そのグループを互いに流路方向にずらして配置したものや、図24と図25のように鋸歯状配列が例示できる。これらはいずれも極めて高い成形性が得られる。
【0186】
図26は、実施形態2−2の塵埃凝集路における隣接した突起の配置を示す図である。
【0187】
図26に示すように、流れ方向と平行な方向から見た投影面内に突起103が重ならないように配置したとき、隣り合う突起103の距離を距離Wとすると、次の式によりWを表すことができる。
【0188】
W=2α+γtanβ (ただしα、β、γは任意の正の整数)
突起103においてα、βをそれぞれ3mm以上、γ(mm)を任意の数とする。
【0189】
気流に平行な方向Sに分離した金型を用いて衝突促進経路100を作製すると、流路101と突起103を一度に成型することができる。このようにすることにより、成型コストを大幅に削減することができる。突起103間の距離については、最低限W(mm)確保することによって、気流に垂直となる投影面内に突起が互いに重なり合わないように配置し、また、突起と突起の間に入る金型の強度を確保することができる。
【0190】
(実施形態2−3)
図27は、この発明の実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す斜視図、図28は実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図、図29は、実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の側断面を示す図である。
【0191】
図27から図29に示すように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40は、流路41と、壁42と、渦発生手段として複数の突起43とを備える。流路41は、円筒状の壁42によって形成されている。突起43は、翼形状の突起である。突起43の形状は、流路41の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は一辺の長さ、円形流路の場合は直径)をDとして、翼弦長C=(3/8)D、食違角(翼弦と流れ方向の成す角)が上流側から下流側に見て反時計回りに22.5°、最大そり位置が前縁より0.65C位置、下流側に凸、高さh=(1/8)Dの形状をなす。突起43の配置は、流れ方向に垂直な方向の同一面に、等間隔で6個、つまり、円管状の流路41の壁42の内面に60°おきに設置されている。
【0192】
図30は、実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路における突起の周囲の気体の流れを模式的に示す図である。
【0193】
図30(A)に示すように、翼形状を呈する突起43の凹側面に沿う流れの流速V1は、突起43への流れの衝突のため、せき止められて、流路41内を流通する流体の流速に対しやや遅くなる。逆に、突起43の凸側面に沿う流れの流速V2は、流路内を流通する流体の流速に対しやや速くなる。そのため、図30(B)に示すように、突起43の周囲において、流路41内を流通する流体の流速を基準とした相対速度を考えると、凸側面においては流路41の上流側から下流側へ、凹側面においては流路41の下流側から上流側へ、突起43の周りを回転する循環V3が生ずる。
【0194】
図31は、突起の周囲に生じる渦を模式的に示す図である。
【0195】
図31に示すように、図30(B)に示す突起43の周囲の循環V3により、翼形状を呈する突起43の翼端部から強い馬蹄渦V4が発生し、その馬蹄渦V4は突起43の下流側の流路41の壁42に沿って下流へ移動する。この馬蹄渦V4は突起43の下流を流通する流れに強い旋回を与える。
【0196】
実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40においては、突起43の翼高さhは、h=(1/8)Dであるので、馬蹄渦V4の発生直後の馬蹄渦V4の直径は、流路41内を流通する流体の流速にもよるが、(1/8)Dか、またはそれよりもやや大きいサイズになる。前述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーに集中しているような場合、径がDの流路41の壁42の内面からの距離が(1/8)Dまでの位置において特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるので、突起43は、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路41の壁42から(1/8)Dまでの位置を、馬蹄渦V4によって積極的に攪拌するように設定されている。
【0197】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40においては、突起43は、壁42からの高さが、流路41の気体が流れる方向に垂直な断面の代表長さの八分の一であることにより、異物が突起43に引っかかりにくくなる。
【0198】
図32は、本発明の実施形態2−3の突起により発生する渦の様子を模式的に示した図である。図32(A)は、流路を正面から見た図であり、図32(B)は、流路を側面から見たときの図である。
【0199】
図32に示すように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40においては、気体Pが流路41内に流入すると、流路41の壁42の内面に、6か所に突起43を等間隔に設置しているので、流路41の壁42の内面近傍に6本の同一回転方向の馬蹄渦V4が略等間隔に生ずる。また、隣合う渦同士は同一方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方は流路中央部から壁面部へ向かう方向、他方は流路壁面部から中央部へ向かう方向となり、衝突しあう方向となるため、それぞれの渦の流れに運ばれる微細塵は、より衝突確率が高められる。
【0200】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40においては、突起43が複数配置されていることにより、流路41内に多数の渦を発生させて、塵埃凝集の効果を高めることができる。
【0201】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40においては、渦発生手段は突起43を含み、突起43は、突起43の周囲を通過する気体の速度を不均一にするように壁42の内面から突出して形成されている。
【0202】
このようにすることにより、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40を流通する塵埃は、塵埃が気流によって流路41内に導かれる段階と、塵埃が直進する気流によって流路41内部を搬送される段階と、塵埃が流路41の壁42から突出した突起43の下流に生ずる渦流に巻き込まれて流通する段階と、複数の塵埃が渦流により互いに衝突する段階と、衝突した複数の塵埃が塵埃塊(クラスタ)を形成する段階と、塵埃塊が気流によって流路41内部を搬送される段階を順次経る。
【0203】
このようにすることにより、簡単な構造で、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40を提供することができる。
【0204】
(実施形態2−4)
図33は、この発明の実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す斜視図、図34は実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図、図35は、実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路を示す側断面図である。
【0205】
図33から図35に示すように、実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50においては、実施形態2−3の突起43に替えて、突起53が設けられている。1つの突起53は、実施形態2−3の突起43と同一形状の翼形状突起により形成されているが、配置が異なる。
【0206】
摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50においては、流路方向に隣り合う2つの突起53が、流れの上流側から下流側に向かって、階段状に配置される。階段状に配置された2つの突起53は、上流側から見て一部が重なって配置される、すなわち、上流側に配置された突起53の終端から下流に気流の仮想線を描くと、仮想線が下流側に配置された突起53に交差するように配置される。実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50のその他の部分は、実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40と同様である。
【0207】
実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50においては、上流側に配置された突起53において発生した馬蹄渦V5を、下流側に配置された突起53において、さらに増強することにより、より強い馬蹄渦V6が生成される。渦は下流に移動するに従って徐々に減衰するが、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50において生成する渦は、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40において生成する渦よりも渦の強度が強いので、渦が減衰するまでの距離(到達距離)が長く、より下流にまで渦の影響を及ぼすことができる。流路51の壁52の内面近傍には、6本の同一回転方向の馬蹄渦が略等間隔に生ずる。
【0208】
図36は、実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路における突起の周囲の気体の流れを模式的に示す図である。
【0209】
図36に示すように、2つの突起53を階段状に配置しているため、上流側で発生した馬蹄渦V5は、下流側の突起53によって生じる渦に取り込まれて、効果的に強い馬蹄渦V6を生成できる。
【0210】
さらに、隣合う渦同士は同一方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方は流路中央部から壁面部へ向かう方向、他方は流路壁面部から中央部へ向かう方向となる。このように、流れどうしが衝突しあう方向となるため、それらの流れに運ばれる微細塵は、より衝突確率が高められる。
【0211】
従って、実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50を用いれば、より強い渦を生成できるので、渦の到達距離が長く、その分、流れにより運ばれる微細塵の衝突確率がより高められるので、塵埃の凝集能力は大幅に高められる。また、実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40よりも、流れの摩擦が低減されるので、より圧力損失を低減することができる。
【0212】
なお、実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50によれば、圧力損失は実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40と同等でありながら、微細塵の衝突確率は実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40に対して約30%向上するため、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路50によると、さらに高性能の塵埃凝集路を得ることができる。
【0213】
(実施形態2−5)
図37は、この発明の実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す斜視図、図38は実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図、図39は、実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路を示す側断面図である。
【0214】
図37から図39に示すように、実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路60においては、実施形態2−4の突起53に替えて、突起63a、突起63b、突起63c、突起63dが設けられている。突起(63a、63b、63c、63d)は、突起53と同一形状の翼形状突起により形成されており、設置個数も同一であるが、隣合う突起63aと突起63c、突起63bと突起63dは、食違角(翼弦と流れ方向の成す角)が互いに逆になるように配置されている。すなわち、突起(63a、63b、63c、63d)は、凹部を形成するように湾曲した形状を有し、気体の流れる方向に交差する方向において隣り合う二つの突起は、それぞれ二つの凹部が互いに対向するように配置されている。流路61内の壁62においては、気流の方向と垂直に交差する断面の周の方向には、3つの突起63aを、食違角が上流側から下流側に見て時計回りに22.5°になるように等間隔に配置し、その3つの突起63aのそれぞれの間に、3つの突起63cを、食違角が上流側から下流側に見て反時計回りに22.5°になるように配置する。また、突起63aと突起63cの下流側に、気流の方向と垂直に交差する断面の周の方向に、3つの突起63bを、食違角が上流側から下流側に見て時計回りに22.5°になるように等間隔に配置し、その3つの突起63bのそれぞれの間に、3つの突起63dを、食違角が上流側から下流側に見て反時計回りに22.5°になるように配置する。気流の流れる方向に沿っては、突起63aの下流側に突起63bを配置し、突起63cの下流側に突起63dを配置する。4つの突起は、突起63aと突起63cの凹部どうしの間の距離が、突起63bと突起63dの凹部どうしの間の距離よりも大きくなるように配置されている。
【0215】
実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路60においては、それぞれの突起(63a、63b、63c、63d)においては、実施形態2−3の突起43と同様の馬蹄渦が発生し、馬蹄渦がその下流側の流路61の壁62に沿って下流へ移動するため、突起の下流を流通する流れに強い旋回を与える。
【0216】
図40は、実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の突起の周囲に発生する渦の様子を模式的に示す図である。
【0217】
図40に示すように、実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路60の流路61内においては、12個の突起を、それぞれが互い違いの方向を向くように配置している。そのため、流路61の壁62の内面近傍において、隣合う渦同士がそれぞれ逆方向に回転する、6本の馬蹄渦V7が生ずる。上流側の突起63aと突起63cで発生した馬蹄渦V7は、下流側の突起63bと突起63dの間を流れる気流に取り込まれ、強い馬蹄渦V8を生成する。さらに、突起63bと突起63dを互い違いに配置しているため、下流側の突起63bと突起63dで生成された渦がそれぞれ強めあうように働くため、より強い馬蹄渦V8を生成することができる。
【0218】
また、隣合う渦同士はそれぞれ逆方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方が流路中央部から壁面部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなり、一方が流路壁面部から中央部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなるので、スムーズに合流する方向となり、流れの粘性による摩擦抵抗が減少する。そのため、実施形態2−5の流路61においては、実施形態2−4の流路51に比べて、渦による圧力損失が低減する。
【0219】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路60においては、突起(63a、63b、63c、63d)は、凹部を形成するように湾曲した形状を有し、気体の流れる方向に交差する方向において隣り合う二つの突起は、それぞれ二つの凹部が互いに対向するように配置されている。このようにすることにより、隣り合う突起で生成された渦は、互いに逆方向に回転しながら下流に進む。そのため、隣り合う渦と渦との接面においては、これらの渦を形成している気流は、同じ方向に進む流れとなる。したがって、隣り合う突起で生成された渦は、スムーズに合流し、流れの粘性による摩擦抵抗が減少する。このようにして、流路61内の圧力損失を減少することができる。
【0220】
従って、実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路60を用いれば、実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40よりも、流れの摩擦が低減されるので、より圧力損失を低減することができる。なお、流れの摩擦による微細塵の衝突確率は実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40に対して約5%低下するが、圧力損失は実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40に対して約10%低下するため、実施形態2−5によると、実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路40よりもさらに高いパフォーマンスの摩擦帯電経路および/または衝突促進経路60を得ることができる。
【0221】
(実施形態2−6)
図41は、この発明の実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図であり、図42は、実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【0222】
図41と図42に示すように、この発明の実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路70においては、実施形態2−3の突起43に替えて、流路71の壁72の内面に、複数の突起73aと突起73bが設けられている。突起73aと突起73bは、底面が三角形の突起である。
【0223】
図43は、実施形態2−6の突起を示す図である。図43(A)は、突起の底面図、図43(B)は、突起の側面図、図43(C)は、突起の正面図である。流路の上流側を正面とする。
【0224】
図43に示すように、突起73aの底面部△EFGの各辺の長さがEF:FG:GE=1:2:√3となる直角三角形を成し、直角三角形の各頂角のうち、30°を成す角Gが、流れの上流側に配置され、60°と90°の角に挟まれる辺EFは、流れ方向に対して垂直になるように配置されて、突起73aの底面部△EFGが流路71の壁72の内面と接合されている。突起73aの残りの一つの頂点Iは、壁72から流路71内に突出するように形成されている。
【0225】
突起73aは、流路71の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は一辺の長さ、円形流路の場合は直径)をDとすると、流れ方向の長さGE=(3/8)D、流れ方向と斜辺のなす角が、上流側から下流側に見て時計回りに30°、突起73aの高さhがh=(1/8)Dである形状をなしている。突起73aに隣り合う突起73bにおいては、流れ方向と斜辺のなす角は上流側から下流側に見て反時計回りに30°である。流路71の壁72上では、4つの突起73aが等間隔に配置され、4つの突起73aのそれぞれの間に突起73bが4つ配置されて、突起73aと突起73bがいわゆる互い違いの方向を向けて配置されている。
【0226】
図44は、実施形態2−6の突起の周囲の気流の様子を模式的に示す図である。
【0227】
図44に示すように、突起73aの斜辺GIに沿う流れの流速V9は、突起73aの流れの衝突のため、せき止められて、流路71内を流通する流体の流速Pに対しやや遅くなる。一方、突起73aの流れ方向の辺GEに沿う流れの流速V10は、流路71内を流通する流体の流速Pと略同等となる。そのため、突起73aの周りの、流路71内を流通する流体の流速を基準とした相対速度を考えると、流れ方向の辺GE上においては流路71の上流側から下流側へ、斜辺FG上においては流路71の下流側から上流側へ、突起73aの周りを回転する循環が生ずる。この循環により、三角錐状を呈する突起73aの頂点から馬蹄渦V11が発生し、その馬蹄渦V11は突起73aの下流側の流路71の壁72に沿って下流へ移動する。この馬蹄渦11は突起73aの下流を流通する流れに旋回を与える。突起73bにおいても、突起73aと同様に馬蹄渦が形成されるが、馬蹄渦の回転の向きは逆向きである。
【0228】
実施形態2−6においては、突起73aと突起73bの高さhはh=(1/8)Dであるので、馬蹄渦発生直後の馬蹄渦V11の直径は、流路71の内部を流通する流体の流速にもよるが、(1/8)Dか、またそれよりもやや大きいサイズになる。前述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、径がDの流路71の壁72からの距離が(1/8)Dまでの位置において、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるので、実施形態2−6の突起73aと突起73bは、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路71の壁72から(1/8)Dまでの位置を通過する気体を、馬蹄渦を発生させることによって積極的に攪拌する。
【0229】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路70においては、突起73aと突起73bは、壁72からの高さが、流路71の気体が流れる方向に垂直な断面の代表長さの1/8であることにより、異物が突起73aと突起73bに引っかかりにくくなる。
【0230】
図45は、本発明の実施形態2−6の突起により発生する渦の様子を模式的に示した図である。図45(A)は、流路を正面から見た図であり、図45(B)は、流路を側面から見たときの図である。
【0231】
図45に示すように、流路71の壁72の近傍に、隣合う渦同士はそれぞれ逆方向に回転する、8本の馬蹄渦V11が生ずる。なお、隣合う渦同士はそれぞれ逆方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方が流路中央部から壁面部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなり、一方が流路壁面部から中央部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなるので、スムーズに合流する方向となるため、流れの粘性による摩擦抵抗が減少し、そのため、実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路70においては、渦による圧力損失が低減する。
【0232】
流路71を流通する流体に、長さD、太さ0.05Dといった棒状の異物その他が混入していた場合、例えば、塵埃凝集路の突起の形状が湾曲構造を成していると、特に突起は上流側が凹、下流側が凸の形状を成しているため、棒状の異物の一端が1つの渦発生手段に引っ掛かり、棒状の異物の他端が他の渦発生手段に引っ掛かった場合、塵埃凝集路の内部に異物がつまってしまうといった不具合が生ずる可能性がある。一方、実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路70においては、突起73aに凹部は無く、例えば実施形態2−3の突起43の凹面に代わり、突起73aと突起73bにおいては斜辺面が形成されているため、前述のような棒状の異物その他は突起に引っ掛かりにくい。
【0233】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路70においては、気体の流れる方向に垂直な方向の突起73aと突起73bの断面積は、上流側で小さく下流側で大きい。このようにすることにより、異物が突起73aと突起73bに引っかかりにくくなる。
【0234】
従って、実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路70を用いれば、実施形態2−4と略同等の効果が得られるとともに、実施形態2−3から実施形態2−5の塵埃凝集路よりも、例えば、流れに棒状の異物その他が混入する可能性のある場合には、棒状の異物が乱れ発生部に引っ掛かってつまるといった不具合を未然に防止することができるため、信頼性の高い塵埃凝集路を得ることができる。
【0235】
なお、実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路70の突起の形状は、図46〜図48に示す突起の形状であってもよい。
【0236】
図46は、本発明の実施形態2−6の別の形状の突起が配置された摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図であり、図47は、本発明の実施形態2−6の別の形状の突起が配置された摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図であり、図48は、本発明の実施形態2−6の別の形状の突起が配置された摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の側断面を示す図である。
【0237】
図46から図48に示すように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路120の流路121内においては、流路121の壁122の内面上に突起123を配置している。
【0238】
(実施形態2−7)
図49は、この発明の実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図であり、図50は実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図、図51は、実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の側断面を示す図である。
【0239】
図49から図51に示すように、実施形態2−7は、実施形態2−6の突起73aと突起73bに替えて、複数の突起83が設けられている。突起83は、三角錐状の突起である。
【0240】
図52は、実施形態2−7の突起を上から見た形状(A)と横から見た形状(B)を示す図である。
【0241】
図52に示すように、突起83の形状は、三角錐の底面部△JKLの底辺KL:高さJM=1:2となる二等辺三角形を成し、底面部二等辺三角形の最小の角Jが流れの上流側に配置され、底辺KLが流れ方向に対して垂直になるように配置され、底面部にて流路壁面と接合されている。また、三角錐状突起の頂角をNとして、頂角Nから底面部二等辺三角形に下ろした垂線はMを通過する、つまり、NMは、JM、KLに対してそれぞれ垂直になるように構成されている。そして、流路81の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は一辺の長さ、円形流路の場合は直径)をDとして、流れ方向の長さJM=(1/2)D、三角錐高さNM=(1/8)Dである形状をなしている。
【0242】
また、流路81の壁82の内面には、多数の突起83が規則的に配置されている。摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80においては、複数の突起83を、流れ方向に(3/2)JM、流れに垂直な方向に(3/2)KLおきに配置するとともに、1つの突起83に対して、流れ方向に(3/4)JM、流れに垂直な方向に(3/4)KLずれた位置にさらに配置し、またそれに対して複数の突起83を、流れ方向に(3/2)JM、流れに垂直な方向に(3/2)KLおきにさらに配置するといった配列に設定されている。つまり、流れ方向の1ピッチを(3/2)JM、流れに垂直な方向の1ピッチを(3/2)KLとすると、流れ方向、流れに垂直な方向ともに、半ピッチずつずらした位置された、いわゆる千鳥配置に複数かつ多段に配置される。
【0243】
これらの突起83を上流側から投影すると、複数の突起83は互いに完全には重なり合わず、かつ、隣同士の突起83は、ある一定分だけ重なり合うように配置されている。その他の部分は実施形態2−4と同様である。
【0244】
実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80によると、流路81の壁82の内面近傍を流通する流れは、三角錐突起を成す突起83の面JNKおよび面JNLの傾斜により三角錐底面部に対して頂角N側に持ち上げられ、流路中央側に巻き上げられるとともに、頂角Nの下流側に弱い双子渦を発生させる。実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80を流通する流れは、最初に出会う突起83の作る弱い双子渦により攪乱され、下流に流通して、次に出会う突起83の作る弱い双子渦によりまた攪乱され、更に下流に流通して、更に次に出会う突起83の作る弱い双子渦によりまた更に攪乱され、といった具合に、次々と攪乱される。このような攪乱が、複数の突起83の箇所にてそれぞれ生ずる。前述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、径がDの流路であれば、流路81の壁82から(1/8)Dの距離までの位置において特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるので、実施形態2−7の複数かつ多段に配置された突起83は、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路の壁面から(1/8)Dまで距離の位置を、複数の双子渦にて積極的に攪乱する。
【0245】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80においては、突起83は、壁82からの高さが、流路81の気体が流れる方向に垂直な断面の代表長さの1/8以下であることにより、異物が突起83に引っかかりにくくなる。
【0246】
また、上流側から投影すると、複数の突起83は互いに完全には重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起83は、ある一定分だけ重なり合うように配置されているので、流路81の壁82に沿って流通する流れは、必ず突起83に出会う。その後、流路81の壁82に沿って流通する流れは、下流に流通するに従い、何度も何度も突起83に出会いながら、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80内を通過する。
【0247】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80においては、突起83は、流路81内において気体が流れる方向に沿って複数配置され、それぞれの突起83は、流路81の上流側から下流側に向かって突起83を投影したときにそれぞれの突起83の一部が重なり合うように配置されている。このようにすることにより、流路81に沿って流れる気体が突起83の周囲を通過しやすくなり、効率よく渦を発生させることができる。
【0248】
したがって、実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80においては、流路81の壁82から(1/8)Dの距離までの位置を流通する気流に対して最も効率的に攪乱できるとともに、発生する双子渦の数を多くすることができる。
【0249】
このように、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80において、突起83は、流路81内において気体が流れる方向に沿って複数配置され、それぞれの突起83は、流路81の上流側から下流側に向かって突起83を投影したときにそれぞれの突起の一部が重なり合うように配置されていることにより、流路81に沿って流れる気体が突起83の周囲を通過しやすくなり、効率よく渦を発生させることができる。
【0250】
また、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80を流通する流体に、例えば柔軟な素材でできた布状のものであって流路81の径と同程度の大きさの異物(例えば布状や網目状の素材、例えばハンカチやパンティーストッキングといったもの)その他が混入していた場合、例えば、塵埃凝集路の突起の形状が湾曲構造または矩形を成していると、布状の異物が渦発生手段に引っ掛かりやすく、そのため塵埃凝集路の内部に異物がつまってしまうといった不具合が生ずる可能性があるが、実施形態2−7においては、突起83は流れの上流側に滑らかな三角錐突起を成しているため、前述の布状の異物その他は引っ掛かりにくい。
【0251】
従って、実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80を用いれば、多数の双子渦の攪乱により、十分な凝集性能を得ながら、実施形態2−3から実施形態2−6の塵埃凝集路よりも、例えば、流れに布状の異物その他が混入する可能性のある場合には、布状の異物が乱れ発生部に引っ掛かってつまるといった不具合を未然に防止することができるため、信頼性の高い摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80を得ることができる。
【0252】
(実施形態2−8)
図53は、実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図であり、図54は実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図、図55は、実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部の側断面を示す図である。
【0253】
図53から図55に示すように、実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90においては、実施形態2−7の突起83に替えて、複数の突起93が流路91の壁92の内面上に設けられている。それぞれの突起93は、実施形態2−7の突起83と同一形状の三角錐突起により形成されており、その配列または配置が異なる。すなわち、実施形態2−8においては、実施形態2−7の突起83の個数に対して1/3の個数の突起93が、上流側から投影すると突起83の配列と一致するように配置される。つまり、上流側から投影すると、複数の突起93は互いに完全には重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起93は、ある一定分だけ重なり合うように配置されている。また、流れ方向に垂直な方向の面内には、なるべく多くの突起93が配置されず、かつ、流れ方向に垂直な方向の同一面内に配置された複数の突起93は、なるべく互いを遠い距離に配置するように設定される。その他の部分は実施形態2−7と同様である。
【0254】
この発明の実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90によると、突起93により、実施形態2−7の突起83において生じた渦と略同一の双子渦が生ずる。また、上流側から投影すると、複数の突起93は互いに完全には重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起93は、ある一定分だけ重なり合うように配置されているので、流路91の壁92に沿って流通する流れは、必ず突起93を通過する。但し、実施形態2−7の突起83に対して、突起93の個数は1/3としているので、流路91の壁92に沿って流通する流れが乱れ突起93に出会う回数も、発生する双子渦の数も1/3となり、被凝集粒子同士の衝突確率は低下する。
【0255】
しかしながら、実施形態2−8の突起93は、次のような利点がある。すなわち、実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80においては、流れ方向に垂直な方向の面内に、多数の突起83が配置されており、また、流れ方向に垂直な方向の面であって突起83の面△NKLの位置における流路81の面積は、他の流れ方向に垂直な方向の面の位置における流路81の面積に対して、(流れ方向に垂直な方向における同一面内に配置された突起83の数)×(面△NKLの面積)の分だけ小さくなる。故に、流れ方向に垂直な方向における同一面内に配置された突起83の数が多ければ多いほど、その部分における流路面積の減少幅が大きくなるので、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80の圧力損失は大きくなる。それに対して、実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90においては、流れ方向に垂直な方向の面内に、なるべく多くの突起93が配置されず、かつ、流れ方向に垂直な方向の同一面内に配置された複数の突起93は、なるべく互いを遠い距離に配置するように設定されているので、突起93が配置されている位置における流路面積の減少が小さく、その分、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90の圧力損失も小さくなる。
【0256】
つまり、例えば、実施形態2−8の流路91の流れ方向の長さを3倍に設定して、実施形態2−8の突起93の個数を、実施形態2−7の突起83の個数と同一に設定すれば、被凝集粒子同士の衝突確率については実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80とほぼ同一になるが、突起93が配置される位置における流路面積の減少幅が小さい分、長さを3倍に設定した摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90の方が圧力損失も小さい。
【0257】
従って、実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90を用いれば、大きな圧力損失の低減効果が得られる。例えば、長さを3倍に設定した摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90を用いれば、実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路80に対して、被凝集粒子同士の衝突による凝集性能を損なわず、圧力損失を低減できるので、流路91の内部を流通する流れを発生させる駆動源(例えば、ファンやブロアなど)の出力や静圧上昇が小さい場合、駆動源が圧力損失に弱い場合などには、摩擦帯電経路および/または衝突促進経路90と駆動源を含むシステム全体のパフォーマンスが向上する。
【0258】
なお、この発明の突起の形状は、以上の実施の形態に示された突起の形状に限られるものではない。突起の形状は、円柱、円錐、多角柱、多角錐、楕円錐などであってもよい。
【実施例】
【0259】
本発明の一つの効果として、電気掃除機の排気中の微粒子数を低減する効果がある。これは、電気掃除機の集塵手段の上流で微粒子を凝集させて平均サイズを大きくすることにより、集塵手段での捕集効率を高めて、排気に含まれる微粒子数を低減するものである。
【0260】
以下、従来の電気掃除機と、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機について、排気中に含まれる粒子の大きさと数との関係を調べた実験結果について説明する。
【0261】
図56は、対照機として、サイクロン集塵室を備えた従来の電気掃除機の全体的な概略を示す図であり、図57は、本発明の塵埃凝集路を備えた電気掃除機の全体的な概略を示す図である。
【0262】
図56に示すように、従来の電気掃除機6aの延長管502の管長aは、対照機と、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機のどちらについても、700mm、延長管502の管内径は35mm、管中心の風速は20m/秒とした。
【0263】
図57に示すように、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機6bには、長さbの摩擦帯電経路161を延長管502の先端から距離cの位置に形成した。摩擦帯電経路161の長さbは200mm、距離cは500mmとした。また、長さdの衝突促進経路162を連結部505に形成した。衝突促進経路162の長さdは100mmとした。粒子を正に帯電する第1摩擦帯電部を形成する材質としてポリプロピレン(PP)樹脂、粒子を負に帯電する第2摩擦帯電部を形成する材質としてナイロン(ポリアミド)樹脂、衝突促進経路を形成する材質としてアクリロニトリル・ブタジエンスチレン(ABS)樹脂を用いた。
【0264】
排気中に含まれる粒子の大きさと数は、JIS C 9802(家庭用掃除機の性能測定方法)に準拠して測定した。
【0265】
サイクロン集塵室を備えた従来の電気掃除機と、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機について、排気中の粒子の大きさと数との関係を比較した。
【0266】
本発明の塵埃凝集路としては、摩擦帯電経路として実施形態2−1の突起の形状と配置、衝突促進経路として実施形態2−2の突起の形状と配置を用いた。その結果、0.1μm以上の排気粒子の総数で比較すると、本発明の電気掃除機では、従来の電気掃除機に比べて、43.0%の低減となった。
【0267】
なお、図58から図60は、以上に開示された実施の形態の突起により発生する渦の様子の他の例を示す。図58から図60においては、流路131の壁132に形成されている突起は図示を省略している。
【0268】
図58に示すように、流路131内において、隣り合う渦V131同士が逆方向に回転する場合と順方向に回転する場合を交互に接するように配置することで、流れの粘性による摩擦抵抗を向上させることなく粒子同士の衝突確率を増加させることができる。
【0269】
また、図59に示すように、流路131内に発生する渦V132の大きさを小さくし、数を多くすることで粒子の衝突確率を低下させることなく、壁132面との摩擦抵抗を低減することが可能である。
【0270】
さらに、図60に示すように、流路131内において、隣り合う渦V133同士が全て順方向に回転する場合、渦V132と渦V132の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方が流路中央部から壁132面部へ向かう方向ならば他方はその逆の方向となるため、互いに衝突する方向となり衝突確率をより効果的に増加させることができるが、摩擦抵抗が増加する。
【0271】
このように、塵埃凝集路においては、突起は、突起の下流側を流通する気体に渦を発生させることが可能であるように形成されている。
【0272】
このようにすることにより、渦の作用で全ての粒子どうしが衝突し、効果的に塵埃塊(クラスタ)を形成することができる。
【0273】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1】円筒状の管の内部における気流を模式的に示す図である。
【図2】この発明の一つの実施の形態として、摩擦帯電経路の第1と第2の摩擦帯電部の構成を説明する図である。
【図3】この発明の一つの実施の形態として、摩擦帯電経路の第1と第2の摩擦帯電部の組み立てを説明する図である。
【図4】図3に示す摩擦帯電経路をA−A’線の方向から見た断面図である。
【図5】本発明により塵埃塊が形成される他の場合のモデルを示す図である。
【図6】流路内の気流が層流速度分布の場合に粒子が凝集する様子を模式的に示す図である。
【図7】流路内の気流が層流速度分布の場合に、径の大きい粒子が速度勾配より受ける影響を示した模式図である。
【図8】流路内の気流が層流速度分布の場合に、径の小さい粒子が速度勾配より受ける影響を示した模式図である。
【図9】物質の帯電のしやすさを表した帯電列を示す図である。
【図10】本発明の塵埃凝集路を備えた電気掃除機の全体的な概略を示す図である。
【図11】発明の実施形態1−2として、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機の全体を示す図である。
【図12】本発明の電気掃除機の本体の構成の説明図である。
【図13】摩擦帯電経路が配置された接続管の断面を示す図である。
【図14】この発明の実施形態1−2にかかる連結部505の断面図である。
【図15】実施形態2−1の摩擦帯電経路の要部を透視した斜視図である。
【図16】実施形態2−1の摩擦帯電経路の要部を示す正面図である。
【図17】実施形態2−1の摩擦帯電経路の側断面を示す図である。
【図18】実施形態2−2の衝突促進経路の要部を透視した斜視図である。
【図19】実施形態2−2の衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図20】実施形態2−2の衝突促進経路の側断面を示す図である。
【図21】実施形態2−2にかかる突起の他の配列を模式的に示す図である。
【図22】実施形態2−2にかかる突起の他の配列を模式的に示す図である。
【図23】実施形態2−2にかかる突起の他の配列を模式的に示す図である。
【図24】実施形態2−2にかかる突起の他の配列を模式的に示す図である。
【図25】実施形態2−2にかかる突起の他の配列を模式的に示す図である。
【図26】実施形態2−2の衝突促進経路における隣接した突起の配置を示す図である。
【図27】この発明の実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す斜視図である。
【図28】この発明の実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図29】この発明の実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路を示す側断面図である。
【図30】実施形態2−3の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路における突起の周囲の気体の流れを模式的に示す図である。
【図31】突起の周囲に生じる渦を模式的に示す図である。
【図32】本発明の実施形態2−3の突起により発生する渦の様子を模式的に示した図である。(A)は、流路を正面から見た図であり、(B)は、流路を側面から見たときの図である。
【図33】この発明の実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す斜視図である。
【図34】実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図35】実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路を示す側断面図である。
【図36】実施形態2−4の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路における突起の周囲の気体の流れを模式的に示す図である。
【図37】この発明の実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す斜視図である。
【図38】実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図39】実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路を示す側断面図である。
【図40】実施形態2−5の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の突起の周囲に発生する渦の様子を模式的に示す図である。
【図41】この発明の実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図である。
【図42】実施形態2−6の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図43】実施形態2−6の突起を示す図である。(A)は、突起の底面図、(B)は、突起の側面図、(C)は、突起の正面図である。
【図44】実施形態2−6の突起の周囲の気流の様子を模式的に示す図である。
【図45】本発明の実施形態2−6の突起により発生する渦の様子を模式的に示した図である。
【図46】本発明の実施形態2−6の別の形状の突起が配置された摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図である。
【図47】本発明の実施形態2−6の別の形状の突起が配置された摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図48】本発明の実施形態2−6の別の形状の突起が配置された摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の側断面を示す図である。
【図49】この発明の実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図である。
【図50】実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図51】実施形態2−7の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の側断面を示す図である。
【図52】実施形態2−7の突起を上から見た形状(A)と横から見た形状(B)を示す図である。
【図53】実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を透視した斜視図である。
【図54】実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部を示す正面図である。
【図55】実施形態2−8の摩擦帯電経路および/または衝突促進経路の要部の側断面を示す図である。
【図56】対照機として、サイクロン集塵室を備えた従来の電気掃除機の全体的な概略を示す図である。
【図57】本発明の電気掃除機の全体的な概略を示す図である。
【図58】突起の周囲に生じる渦を模式的に示す図である。
【図59】突起の周囲に生じる渦を模式的に示す図である。
【図60】突起の周囲に生じる渦を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0275】
10:第1摩擦帯電部、12:摩擦帯電経路、20:第2摩擦帯電部、40,50,60,70,80,90,120:摩擦帯電経路および/または衝突促進経路、100:衝突促進経路、110:摩擦帯電経路、41,51,61,71,81,91,101,111,121:流路、43,53,63a,63b,63c,63d,73a,73b,83,93,103,113,123:突起、161:摩擦帯電経路、162:衝突促進経路、502:延長管、503:接続管、505:連結部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を含む気体が流通する流路と、
前記流路内に配置されて塵埃を摩擦帯電するための摩擦帯電経路と、
前記流路内に配置されて前記摩擦帯電経路において帯電された塵埃どうしを衝突させて塵埃塊(クラスタ)の形成を促進させるための衝突促進経路とを備え、
前記摩擦帯電経路は、第1の材質で形成されている第1摩擦帯電部と、第2の材質で形成されている第2摩擦帯電部とを有し、前記衝突促進経路は、第3の材質で形成され、前記第1の材質の接触電位が前記第3の材質の接触電位よりも大きく、前記第3の材質の接触電位が前記第2の材質の接触電位よりも大きい、塵埃凝集路。
【請求項2】
前記摩擦帯電経路は、前記流路内を流通する所定の塵埃に対して大きい接触電位を持つ材質によって形成されている第1摩擦帯電部と、前記流路内を流通する所定の塵埃に対して小さい接触電位を持つ材質によって形成されている第2摩擦帯電部とを有し、前記衝突促進経路は、前記流路内を流通する塵埃に対してほぼ同一の接触電位を持つ材質によって形成されている、請求項1に記載の塵埃凝集路。
【請求項3】
前記摩擦帯電経路は、前記流路内を流通する複数の塵埃のうちで最大の接触電位を持つ塵埃よりも大きい接触電位を持つ材質によって形成されている第1摩擦帯電部と、前記流路内を流通する複数の塵埃のうちで最小の接触電位を持つ塵埃よりも小さい接触電位を持つ材質によって形成されている第2摩擦帯電部とを有し、前記衝突促進経路は、前記流路内を流通する塵埃の平均接触電位に対してほぼ同一の接触電位をもつ材質で形成されている、請求項1または請求項2に記載の塵埃凝集路。
【請求項4】
前記摩擦帯電経路は、前記摩擦帯電経路を形成する壁を有し、前記壁の内面上には突起が形成されている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の塵埃凝集路。
【請求項5】
前記衝突促進経路は、前記衝突促進経路を形成する壁を有し、前記壁の内面上には突起が形成されている、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の塵埃凝集路。
【請求項6】
前記突起は、前記突起の下流側を流通する気体に渦を発生させることが可能であるように形成されている、請求項4または請求項5に記載の塵埃凝集路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【公開番号】特開2008−110329(P2008−110329A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322357(P2006−322357)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】