説明

増強された薬物送達

【課題】治療薬を含有する脂質被包性粒子及び超音波エネルギーを使用する治療薬の送達方法を提供すること。
【解決手段】例えば、油を含有する脂質被包性エマルションと共に超音波を使用する。該エマルションはターゲッティングリガンドとカップリングすると共に、治療薬を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して言えば、治療薬を含有する脂質被包性粒子(lipid-encapsulated particles)を使用すると共に、脂質被包が崩壊しないように超音波エネルギーを付与する、治療薬の増強された送達方法に関する。本発明は、詳細には、油又はペルフルオロカーボンを有する脂質被包性ナノ粒子エマルションと共に超音波を使用する方法に関し、該エマルションは、ターゲッティングリガンド(targeting ligand)とカップリングすると共に、治療薬を含有する。
【背景技術】
【0002】
脂質被包性ナノ粒子エマルション上の及び/又はその中に治療薬を有するリガンド標的化エマルション(ligand-targeted emulsion)は、特定の標的細胞、器官又は組織への投薬に有用である。例えば、液状ペルフルオロカーボン(PFC;perfluorocarbon)ナノ粒子は、特異的細胞エピトープと選択的に結合することによって細胞への治療薬送達に使用されてきた(非特許文献1参照)。この場合、脂質/界面活性剤被包液状ペルフルオロカーボン(例えば、ペルフルオロオクチルブロマイド、PFOB;perfluorooctyl bromide)エマルションが、治療薬送達に使用された。このようなPFCナノ粒子は、従来のマイクロバブル超音波造影システムとは異なる。PFCナノ粒子は、例えば、PFCナノ粒子の脂質膜内にある脂質付加物と複合化した二官能性中間体による脂質膜への選択されたリガンド(例えば、モノクローナル抗体、小さい分子等)の取り込みによって標的(ターゲット)にされる。また、PFCナノ粒子がマイクロバブルのメカニズムとは完全に異なるメカニズムによって結合した表面の反射性を著しく増強することによって、PFCナノ粒子は音波造影剤としても機能する(非特許文献2参照)。
【0003】
マイクロバブル剤を使用する超音波方法(例えば、キャビテーション又は空洞化(cavitation))は、in vitro及びin vivoにおいて、薬物、遺伝子及び他の治療薬の送達を増強する試みに使用されてきた。例えば、非特許文献3〜8参照。しかしながら、キャビテーションは、細胞及び組織破壊をもたらす可能性がある。
【0004】
個体内の種々の及び/又は特定の部位及び組織への到達に有用であると共に、特異性及び治療薬送達が増強される方法及び組成物を開発する継続的な必要性が存在する。特に、正常な組織及び細胞に損傷を与える可能性のある空洞化メカニズム(cavitational mechanism)に依存しないような方法及び組成物が必要である。
【0005】
本明細書において引用するすべての文献及び特許出願は、参照をもって完全に援用することとする。
【0006】
【非特許文献1】Lanzaら、 Circulation、2002年、第106巻、2842‐2847頁
【非特許文献2】Lanzaら、J.Acoust.Soc.Am.、1998年、第104巻、3665‐3672頁
【非特許文献3】Dijkmansら、Eur.J.Echocardiogr.、2004年、第5巻、245−256頁
【非特許文献4】Guzmanら、J.Acoust.Soc.Am.、2001年、第110巻、588−596頁
【非特許文献5】Liuら、Pharmaceutical Res.、1998年、第15巻、918−924頁
【非特許文献6】Postemaら、Ultrasound Med.Biol.、2004年、第30巻、827‐840頁
【非特許文献7】Songら、J.Am.College of Cardiol.、2001年、第39巻、726−731頁
【非特許文献8】Taniyamaら、Circulation、2002年、第105巻、1233−1239頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、標的とする細胞及び/又は組織への増強された治療薬送達に係る方法及び組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方法は、治療薬を含有する非ガス状の脂質被包性粒子に、標的への治療薬の送達を改善する周波数及び機械的指数(mechanical index)の超音波エネルギーを付与することを含む方法であって、該粒子は標的に位置している。超音波エネルギーを付与する間、該粒子は、脂質被包層が崩壊されていない十分に非ガス状の状態を維持している。したがって、治療薬は、粒子自体を破壊することなく、かつ粒子の活性化又は破壊が生じることになる一時的又は恒久的な孔を細胞内に(超音波化学療法(sonoporation)のように)作成することなく送達される。該粒子は、該粒子が標的に位置することを容易にするターゲッティングリガンドとカップリングすることができる。
【0009】
本発明の方法の適用においては、好適な治療薬は、患者の健康状態の診断に基づき、又は、in vitro方法が実施されるのであれば、所望の細胞代謝の調節特性に基づき、意図する標的への送達のために選択される。選択された治療薬及びターゲッティング剤は、特異的治療又は予防薬を特定の位置へ施すように設計される。したがって、一実施形態において、本発明は、診断された病気又は健康状態について患者を治療する方法に関する。該方法は、該病気又は健康状態に適していると共に、非ガス状脂質被包性粒子に含有させることによって送達する治療薬を選択すること、患者に該粒子を送達すること、及び薬物送達の前に該粒子を破壊することなく、かつ従来の超音波化学療法の場合のように、細胞膜内に人工的な孔を形成することなく、上述のような超音波エネルギーを付与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明によれば、非ガス状脂質被包性粒子(ナノ粒子含む)と細胞膜との相互作用を増大すると共に、潜在的に有害な効果を他の細胞に与えることなく増強した治療薬送達を顕在化させるために、非破壊的(すなわち非空洞形成(noncavitational))超音波エネルギーが使用される。本発明の方法及び組成物は、非空洞形成治療薬送達の増強に使用される。本明細書に示すように、標的に向かうペルフルオロカーボン(PFC)を基礎とするナノ粒子の送達は、臨床レベルの超音波エネルギーを使用して増強した。
【0011】
特定の理論によって束縛されることなく、本発明の方法は、圧縮波が伝播することによって誘導される1次及び2次の「放射力(radiation force)」を使用することができ、それは、標的細胞表面との接触を増加させることによって該粒子に影響を及ぼすことができる。これにより、増加した接触が、細胞への治療化合物の輸送の改善を容易にする。このような力は、分子エピトープとの接触を増加させることによって、標的となるリガンドとの粒子結合を改善することもできる(Daytonら、Ultrasound in Medicine and Biology、1999年、第25巻、1195‐1201頁)。ターゲッティングリガンドは、持続的な超音波相互作用によって該粒子と細胞表面とをつなぐことによって該処置を増強することもできる。
【0012】
これにより、超音波等の外部付与エネルギーによりガス含有粒子の崩壊を実施することによって、又は恒久的もしくは一時的な膜孔を通じて薬物送達を実施する超音波化学療法(sonoporation methods)によって薬剤の放出を促進する、気泡を含有する粒子送達システムを使用する従来の方法と対比される。本発明の粒子は、ターゲット部位に送達されるときに非ガス状であり、薬物送達過程の間、非ガス状を維持する。(以下に説明するように、微量のガスは存在するかもしれないが、これらは粒子を崩壊させるには不十分である。その代わり、治療薬の送達は、送達媒体を被包する脂質と組織自体との間の相互作用を増強させることによって実施され、該相互作用により、粒子と細胞膜との直接融合、又はより単純には脂質交換が導かれる。)
【0013】
本発明に使用する脂質被包性粒子は、治療薬及び/又は診断薬として使用するために、限定はされないが、生物活性、放射性、化学療法的及び/又は遺伝的薬剤を含む治療薬を取り込むことによって変更される。治療薬は、脂質被包性粒子の表面上にあるか、もしくは該表面に付着していてもよく、又は該粒子のコア内にあってもよい。
【0014】
ある実施形態においては、脂質被包性粒子は、造影剤として機能することもでき、標的への送達は、超音波画像によって検出することができる。このような粒子は、例えば、治療部位の治療の進捗を監視するために、続いて治療部位に向かう治療薬の用量を好適に調節するために、及び該粒子に向かう超音波エネルギーを調節するために、治療部位の画像化を可能にする。
【0015】
本明細書において説明するように、本発明の使用に適した脂質被包性粒子は、限定はされないが、脂質被包性ナノ粒子、脂質被包性リポソーム、脂質被包性エマルション、及び脂質被包性ミセルを含む非ガス状粒子である。
【0016】
ある実施形態において、本発明は、標的への粒子の投与及び局在後に超音波エネルギーを使用することによって標的への治療薬送達を改善する薬(medicament)を調製するための非ガス状脂質被包性粒子の使用を提供する。該薬は、予防処置に、又は病気もしくは健康状態を診断された患者の治療に使用することができる。
【0017】
本発明は、in vivo、ex vivo、in situ及びin vitro適用を含む種々の適用において該粒子を使用する方法を提供する。
【0018】
少なくとも1つの治療薬を組み込んでいる粒子に向けられる超音波の使用は、選択された細胞、組織及び/又は器官へ特異的に付与するときに、改善された危険/利益プロフィール(risk/benefit profiles)を有する病気又は障害の治療に特に有効である。治療部位へ向かう脂質被包性粒子への有効周波数及び機械的指数での超音波パルスの付与は、薬物送達の他の形態と結合する非標的細胞への潜在的に有害な影響を低下させながら、標的組織への治療薬の送達を効率を上げて提供する。ある特定の理論に束縛されることなく、超音波的に増強した治療薬送達は、従来の超音波化学療法、又はガス状造影剤と協同して超音波力によって誘導される細胞膜内の小さく一時的な孔の形成もしくは恒久的な孔の形成でさえ関連しない非空洞形成送達メカニズムを提供する。したがって、本発明の方法は、非標的細胞又は組織への望ましくない効果を限定すると同時に、特定の細胞又は組織への治療薬送達を増大するのに有効である。
【0019】
(治療薬送達を増強する方法)
本発明は、標的とする細胞及び/又は組織に治療薬を送達する改善された方法を提供する。該方法は、治療薬を含有する非ガス状脂質被包性粒子が標的に位置するときに、超音波エネルギーのパルスを該粒子にかけることを含む。超音波エネルギーは、該粒子のみを使用した治療薬送達と比較して、標的への治療薬送達を増強する周波数及び機械的指数で付与される。超音波パルスの結果として、標的細胞と該粒子間の脂質表面相互作用の増加した頻度及び/又は持続時間により、拡散のみの効果の他に、標的細胞膜又は標的細胞への治療薬の正味の移動が実質的に増強する。超音波からの十分な音圧レベルによって、標的にある該粒子は標的細胞と併合し、脂質小胞融合過程によって細胞に取り込まれることができる。
【0020】
治療薬を含有する脂質被包性粒子は、ターゲッティングリガンドをさらに有していてもよいし、又は有していなくても良い。ある実施形態においては、該粒子は、ターゲッティングリガンドとカップリングし、これにより標的へ指向する。
【0021】
治療薬を含有する脂質被包性粒子に向けられる超音波の使用は、in vitro及びin vivo環境の両方において、標的細胞への増強された治療薬送達を提供する。特に、ランタニド(例えばガドリニウム)、放射性各種、酸化鉄類、光学活性剤(例えば発蛍光団(fluorophores))、又はX線造影剤(例えばヨウ素)を含有する脂質結合化合物等の、他の細胞への画像化剤を送達することもできる。
【0022】
超音波エネルギーを付与する間、該粒子は、該粒子の脂質被包層が崩壊されていない、十分に非ガス状の状態を維持する。本明細書において使用されるように、脂質被包性粒子又は該粒子の脂質被包層の「崩壊(disruption)」とは、細胞膜と脂質被膜との融合以外のことをいう、すなわち「崩壊」は、該粒子が破裂すること又は被包脂質に孔が生成することをいう。したがって、「崩壊」は、該粒子と細胞膜間の脂質交換、又は該粒子と細胞膜との直接的融合を含まない。
【0023】
本発明の方法においては、典型的には、整相列トランスデューサ(phased array transducers)を使用するが、単一素子トランスデューサ(single element transducers)を使用してもよい。付与される超音波エネルギーは、周波数、機械的指数及び照射時間に依存する。本発明の方法において、焦点を合わせた超音波エネルギーは、典型的には、臨床的周波数及びパワーで付与される。超音波の周波数及び機械的指数、及び照射時間は、薬剤送達を最適化するために、当業者によってすべて調節することができる。本発明の方法の使用における機械的指数は、治療上適度なレベルか又はそれ以上である。例えば、ある例においては、約1.0〜約1.9の機械的指数を使用することができ、他の例においては約0.5〜約1.0の機械的指数を使用することができる。ある例においては、1.9よりも大きい機械的指数を使用しても良い。ある場合においては、薬物移動を実現するために、約0.1〜約0.5のより低い機械的指数をより長時間かけて使用しても良い。超音波エネルギーは、既存のパルス列(複数)(pulsing sequences)を使用して付与することができ、これらのパルス周波数(pulsing frequencies)を最適化してもよいし、又は脂質交換を増強するために特殊化したパルス列を開発してもよい。
【0024】
ある実施形態においては、例えば、標的細胞は、超音波画像技術を用いて識別することもでき、細胞への薬剤送達は、適当な細胞標識試薬を使用した画像化処置を通じて確認することもできる。薬剤を送達する脂質被包性粒子を画像化する能力は、薬剤が送達される細胞又は組織の識別及び/又は確認のために付与される。このような粒子は、治療部位の治療状況を監視するために及び続いて治療部位に向かう治療薬を所望の用量に調節するために、又は標的細胞もしくは組織への増強した薬剤送達を保障するために超音波拍動(ultrasound pulsation)の周波数及び/もしくは振幅を調節するために、例えば、治療部位の画像化を可能にする。ある例においては、臨床用トランスデューサは、画像化、及び標的と脂質被包性粒子間の脂質交換の増強に同時に使用することもできる。
【0025】
したがって、本発明は、例えば従来の画像化装置を使用している患者において、血栓、梗塞、感染、癌、アテローム性動脈硬化及び炎症性異常の治療処置のための非侵襲性(noninvasive)手段を提供する。
【0026】
本発明の方法は、限定はされないが、心臓組織及びすべての心血管、脈管形成組織、心血管のいずれかの部分、心血管に入るかもしくは心血管を塞ぐ何らかの物質又は細胞(例えば血栓、血塊もしくは破裂血塊、血小板筋肉細胞等)を含む例えば心血管関連組織への治療薬の送達に使用される。本発明の方法を使用して処置される病気状態は、限定はされないが、脈管構造が病状に重要な役割を果たすいずれかの病気状態、例えば、心血管疾患、癌、慢性関節リウマチを含む種々の障害を特徴付ける炎症箇所、再狭窄を生じさせる血管形成によって作用される箇所等の刺激箇所、腫瘍、及びアテローム性動脈硬化に冒されている箇所、を含む。使用されるターゲッティングリガンドに依存して、超音波エネルギーと共に使用する本発明の脂質被包性粒子は、脈管(vascular)及び/又は再狭窄病理学に関連する改善症状に特に使用される。例えば、αβインテグリン(integrin)に結合するリガンドを含む脂質被包性粒子は、高い発現レベルのαβインテグリンを包含する組織に向けられる。高い発現レベルのαβインテグリンは、活性内皮細胞に典型的なものであり、心血管新生の指標と考えられる。高い発現レベルのαβインテグリンを包含する組織に位置する粒子に対して好適な周波数及び振幅の超音波エネルギーを指向させることは、粒子のみの薬剤送達に比べて、粒子から標的組織への治療薬送達が増強されることになる。治療される利益のある他の組織には、特定の悪性組織及び/又は腫瘍を包含する組織、及び関節炎、脈管炎、もしくは自己免疫疾患等の炎症性反応を示す組織が含まれる。
【0027】
本発明において説明する脂質被包性粒子は、本発明の方法において有用である。脂質被包性粒子は、該粒子表面上の細胞及び/又は組織に対して指向するリガンドの使用により特定の細胞型及び/又は組織へ向けられる。脂質被包性粒子及び超音波エネルギーは、in vivo、ex vivo、in situ及びin vitroで細胞又は組織と共に使用することができる。例えば、標的に向かう非ガス状脂質被包性粒子に付与する超音波エネルギーは、移植(implantation)又は細胞へのさらなる使用前に、ex vivo又はin vitroで、細胞(例えば幹細胞)へ及び/又は標識細胞(例えば幹細胞)への遺伝物質の送達に使用することができる。
【0028】
in vivo及びin vitroにおける本発明の脂質被包性粒子の投与方法は、当業者に周知である。本発明の脂質被包性粒子は、例えば静脈注射によって、投与される。ある例においては、該粒子は、約3μL/kg/minの速度で注入投与される。ある実施形態においては、脂質被包性粒子は、例えば特定の部位へのカテーテル注入、及び粒子送達部位への経皮的超音波(transcutaneous insonification)を通じて付与される超音波エネルギー、によって局所的に投与することができる。該粒子は、典型的には脈管構造を標的にして投与されるが、投与後、該粒子は、脈管構造外へ出て、付加的な細胞及び/又は組織に到達することもできる。治療薬を含有する脂質被包性粒子の投与後、臨床レベルの超音波エネルギーを送達する公知技術は、標的細胞又は組織への治療薬送達の増強に使用される。画像化が行われる場合、超音波検査の公知技術を使用することができる。適切な調剤が治療送達と協調して得られる場合、画像化は、MRI、核的(nuclear)、光学的(optical)、CT又はPET方法によって行うこともできる。
【0029】
(脂質被包性粒子組成物)
本発明の方法において使用する脂質被包性粒子には、例えば米国特許第5,780,010号、米国特許5,958,371号及び米国特許第5,989,520号において説明されるようなナノ粒子エマルションが含まれる。ナノ粒子エマルションは、完全に分散される少なくとも2つの不混和性液体、好ましくは例えば油のような水中で分散される疎水性材料、から構成される。エマルションは、典型的には約0.2μmの直径を有する小滴又はナノ粒子の形態をとる。エマルションナノ粒子の安定性を高めるため、界面活性剤又は微細粉末(finely-divided solids)のような添加物をエマルションナノ粒子に組み込むこともできる。ナノ粒子は、疎水性コアに結合する脂質単層(単分子層)を有する。
【0030】
フルオロカーボンエマルション、とりわけペルフルオロカーボンエマルションは、生物医学的分野への適用に好適であり、本発明の実施における使用にも好適である。ペルフルオロカーボンエマルションは、安定で、生物学的に不活性で、主として経肺胞蒸発(trans-pulmonic alveolae evaporation)によって容易に代謝されることが知られている。さらに、その粒子サイズは小さいため、経肺通路(transpulmonic passage)に容易に適応し、かつその循環の半減期(「β排出」半減期("beta elimination" half time):1〜2時間)は、他の薬剤の循環半減期よりも大きいので有利である。さらに、ベルフルオロカーボンエマルションは、高い超音波エネルギーレベルを和らげるために照射によって破裂する微小泡(microbubbles)と比べて、すべての臨床的なパワー設定の超音波インソニフィケーション(ultrasound insonification)に対し無限界的に安定である。また、ペルフルオロカーボンは、人工血液代用剤としての使用を含む、広範囲に亘る生物医学分野への適用にこれまで使用されてきた。本発明において使用するために、フルオロカーボンがフルオロカーボン炭化水素、ペルフルオロアルキル化エーテル、ポリエーテル又はクラウンエーテルであるようなフルオロカーボンエマルションを含む種々のフルオロカーボンエマルションを使用してもよい。有用なペルフルオロカーボンエマルションは、米国特許第4,927,623号、米国特許第5,077,036号、米国特許第5,114,703号、米国特許第5,171,755号、米国特許第5,304,325号、米国特許第5,350,571号、米国特許第5,393,524号、及び米国特許第5,403,575号に記載されており、ペルフルオロカーボン化合物が、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロオクチルブロマイド、ペルフルオロジクロロオクタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカン、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリメチルシクロヘキサン、又は他のペルフルオロカーボン化合物であるようなペルフルオロカーボンエマルションを含む。さらに、そのようなペルフルオロカーボン化合物の混合物が、治療薬送達を目的とするガス状ペルフルオロカーボンへの相転換を伴わない限り、そのような混合物を、本発明の実施に使用されるエマルションに組み込んでもよい。
【0031】
例えば界面活性剤等の乳化剤は、エマルションの形成を容易にしかつその安定性を向上するために使用される。典型的には、水相界面活性剤は、水中油型エマルション(oil-in-water emulsion)の形成を容易にするために使用されてきた。界面活性剤は、親水性部分と疎水性部分を両方とも含む物質であればどんな物質でもよい。水又は溶媒に添加されると、界面活性剤は、表面張力を低減する。
【0032】
水中油型エマルションの油相は、エマルションの質量に関し、例えば5〜50質量%、ある例においては20〜40質量%である。ある実施形態においては、油相は、トリアシルグリセロール(トウモロコシ油)等の脂肪酸エステルを含有してもよい。ある実施形態においては、油ないし疎水性成分は、フルオロケミカル液体である。フルオロケミカル液体は、直鎖状、有枝鎖状、及び環状ペル(過)フルオロカーボン、直鎖状、有枝鎖状、及び環状ペルフルオロ第三アミン、直鎖状、有枝鎖状、及び環状ペルフルオロエーテル及びチオエーテル、クロロフルオロカーボン、及びペルフルオロエーテル重合体等を含む。50%まで水素置換された化合物を使用することも可能であるが、ペルハロゲン(過ハロゲン)化合物が好ましい。最も好ましいのは、全フッ素化(フッ素置換)(perfluorochemical)化合物である。フルオロケミカル液体、即ち大気圧下、体温(例えば37℃)以上の温度で液体である物質、であればなんでも、本発明のフルオロケミカルエマルションを調製するために使用することができる。しかしながら、多くの目的に供するためには、安定性がより高められたエマルションフルオロケミカルが好ましい。そのようなエマルションを得るためには、50℃より高い沸点を有するフルオロケミカル液体を使用することができ、ある場合においては約80℃より高い沸点を有するフルオロケミカル液体を使用することができる。指針をなす決定的要因は、意図した条件下において、例えばフルオロケミカル等の油が液相中に残存する(気体への転化は10%未満)ことが予期されることであろう。
【0033】
脂質被包性粒子がエマルションではなくリポソームによって構成される場合、そのようなリポソームは、文献(例えば、Kimelbergら、CRC Crit. Rev. Toxicol.、1978年、第6巻、25頁;Yatvinら、Medical Physics、1982年、第9巻、149頁参照)に一般的に記載されているような方法で調製することができる。リポソームは、当業者には公知であり、一般的に、レシチン及びステロール、卵ホスファチジルコリン、卵ホスファチジン酸、コレステロール及びα−トコフェロールを含む脂質材料から構成される。
【0034】
リポソームは、球状二重層に配列された脂質によって取り囲まれた水性媒体から構成される小さな小胞(vesicle)である。リポソームは、通常、小さな一枚膜リポソーム(SUV; small unilamellar vesicle)、大きな一枚膜リポソーム(LUV; large unilamellar vesicle)、又は多重膜リポソーム(MLV; multi-lamellar vesicle)として分類される。SUVs及びLUVsは、定義上、脂質二分子層を1つだけ有するのに対し、MLVsは、多数の同心二分子層を含む。リポソームは、水性内部媒体(aqueous interior)もしくは二分子層間に親水性分子を捕捉することによって、又は二分子層内部に疎水性分子を捕捉することによって、種々の治療薬及び物質の被包に使用することができる。
【0035】
リポソームの構造的基礎を形成する脂質二分子層の構成は、一般的には、リン脂質から少なくとも構成され、より一般的には、(それ自体で脂質となる)脂質とリン脂質の混合物から構成される。例えば、リポソームにおいて、ホスファチジルコリン誘導体、ホスファチジルグリセロール誘導体等は、好ましくはコレステロール等の非リン脂質成分に加えて使用される。好適な別の実施形態は、例えばトリグリセリド類とリン脂質類の混合物を含む。さらに、リン脂質類を含有するか、もしくは含有しないいずれかの安定な脂質二分子層に含有可能な、脂肪酸類、脂質ビタミン類、ステロイド類、脂肪親和性薬剤及び他の脂肪親和性化合物を使用することができる。リポソームに使用する他の脂質には、例えば、ジアシルグリセロール類が含まれる。本発明のリポソームは、エーテル脂質類(ether lipids)、ホスファチジン酸、ホスファネート類、セラミド及びセラミド類似体、スフィンゴシン及びスフィンゴシン類似体、及びセリン含有脂質類を含む治療脂質を含有することもできる。好適な脂質については、例えば、Lasic、1993年、"Liposomes:from Physics to Applications"エルゼビア社、アムステルダム参照。一般に、リポソームは、スメクチック(smectic)中間層として参照される。
【0036】
あるリポソーム実施形態において、リン脂質類は含有され、リポソームは、正味正電荷、正味負電荷を帯びることができるか、又は中性であることができる。ジアセチルホスフェートの包含は、負電荷を付与する簡便な方法であり、正電荷の付与にはステアリルアミンを使用することができる。ある例においては、リン脂質の少なくとも1つの頭部(head group)は、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロール、ホスホセリン、又はホスホイノシトールである。
【0037】
ある実施形態において、非ガス状脂質被包性粒子は、脂質ミセル又はリポ蛋白ミセルである。ミセルは、疎水性コアに存在する難溶解性薬剤の送達に利用される両親媒性脂質又は重合化合物から構成される自己集合粒子である。ミセルの送達媒体の調製には種々の手段が利用することができ、それらは当業者によって容易に実施することができる。例えば、脂質ミセルは、PerkinsらInt. J. Pham.、2000年、第200巻、27‐39頁に記載されるように調製することができる。リポ蛋白ミセルは、低濃度及び高濃度のリポ蛋白及びカイミクロンを含有する天然又は人工リポ蛋白から調製することができる。
【0038】
ある実施形態において、非ガス状脂質被包性粒子は、脂質層もしくは脂質二分子層によって架橋されるか、さもなければ取り囲まれることができるポリマー殻(ナノカプセル)、ポリマー基質(ナノ球体)もしくはブロック共重合体から構成される脂質被包性ナノ粒子又はマイクロ粒子である。このような脂質被包性ナノ粒子及びマイクロ粒子は、さらに、基質中に及び/又は疎水性コア内に分散された治療薬を該殻内に含有する。これらのナノ粒子及びマイクロ粒子を調製する一般的な方法は、文献、例えばSoppimathら、J Control Release、2001年、第70巻、1−20頁及びAllenら、J Control Release、2000年、第63巻、275−286頁、に記載されている。例えば、ポリカプロラクトン及びポリ(D,L−ラクチド)等のポリマーは、脂質層が、本発明に記載されたような脂質混合物から構成される場合に使用することができる。誘導された単鎖ポリマーは、ポリマー剤結合(polymer-agent conjugate)を形成する生物学的活性剤の共有結合に適合したポリマーである。多数のポリマーが、ポリアミノ酸類、デキストリン及びデキストラン等の多糖類、及びN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)共重合体等の合成ポリマーを含むポリマー剤結合の合成に提案されてきた。好適な調製方法は、文献、例えばVeroneseら、IL Farmaco、1999年、第54巻、497−516頁、に記載されている。他の好適なポリマーは、薬学分野で知られているいずれのものでもよく、限定はされないが、ヒドロキシエチル澱粉等の天然ポリマー、蛋白質類、グリコペプチド類及び脂質類を含む。合成ポリマーは、直鎖又は有枝鎖、置換又は非置換、単独重合体、共重合体又は2以上の異なる合成モノマーのブロック共重合体であってもよい。
【0039】
特別な例においては、脂質被包性粒子は、ペルフルオロカーボンエマルションから構成されてもよいが、該粒子は、誘導体化された天然又は合成リン脂質、脂肪酸、コレステロール、脂質、スフィンゴミエリン、トコフェロール、糖脂質、ステリルアミン、カルジオリピン、エーテル又はエステル結合した脂肪酸を有する脂質、又は脂質重合体からなる外被膜を有する。
【0040】
本発明において有用なペルフルオロカーボンエマルションの特別な例として、ペルフルオロジクロロオクタン又はペルフルオロオクチルブロマイドのエマルションを挙げることができるが、このエマルションの脂質被膜は、約50〜約99.5モルパーセントのレシチン、好ましくは約55〜約70モルパーセントのレシチン、0〜50モルパーセントのコレステロール、好ましくは約25〜約45モルパーセントのコレステロール、及び約0.5〜約10モルパーセントのビオチン化ホスファチジルエタノールアミン、好ましくは約1〜約5モルパーセントのビオチン化ホスファチジルエタノールアミンを含有する。ホスファチジルセリン等の他のリン脂質類をビオチン化し、ステアリルアミン等の脂肪族アシル基をビオチンと結合し、又はコレステロールもしくは他の脂溶性化合物をビオチン化して、脂質被包性粒子の脂質被膜に組み込んでもよい。本発明の実施に使用される例示したビオチン化ペルフルオロカーボンの調製は、公知の手順に従う。
【0041】
本発明の脂質被包性粒子の説明において用語「非ガス状(nongaseous)」又は「液体(liquid)」についての言及は、通常、該粒子の内部体積に気相が含まれないことを意味するよう意図している。ある例においては、該粒子の総体積に対し、該粒子の内部体積の約2%未満(すなわち、v/v)が気相となり、ある例においては、わずか約1%(v/v)である。本発明において使用するように、用語「約(about)」は、表示した数値の前後10%の範囲を含むことを意図している。例えば、約1%とは、0.9%〜1.1%の範囲の値を含むことを意図している。該粒子の非ガス状の性質とは、薬物送達を実施するために超音波が付与されるときに、脂質被包層を崩壊するのに不十分なガスが該粒子内に存在すようなことである。したがって、「非ガス状」は、それに合うように定義される。
【0042】
脂質被包性粒子の「脂質膜(lipid membrane)」又は「脂質二分子層(lipid bilayer)」又は「脂質単分子層(lipid monolayer)」は、脂質類のみから構成される必要はなく、限定はされないが、コレステロール及び他のステロイド類、脂溶性化合物、蛋白質類(長さは問わない)、及び他の両親媒性分子を含む、どんな好適な他の成分でも付加的に含むことができることは言うまでもない。脂質単分子層を有する該粒子において、膜の一般的構造は、疎水性コアを包んでいる単一の親水性表面である。脂質二分子層を有する該粒子において、膜の一般的構造は、疎水性コアを挟んでいる2つの親水性表面のシートである。膜構造の一般的な論文については、J. KendrewによるThe Encyclopedia of Molecular Biology(1994年)を参照。
【0043】
本明細書において使用されるように用語「リガンド(ligand)」は、該粒子自体から分離しかつ該粒子自体とは異なる生物学的標的の他の分子に特異的に結合するターゲッティング分子を指すことを意図する。反応には、配位化合物の金属原子と配位共有結合を形成するため電子対を供与又は受容する分子を必要とはしないが排除もしない。従って、リガンドは、該粒子表面の表面に対して、直接的結合に対しては共有結合的に又は間接的結合に対しては非共有結合的に付着することができる。
【0044】
有用な脂質被包性粒子は、例えば、広範な名目粒径(nominal particle diameter)、例えば、約0.01μm〜約10μm、好ましくは約50nm〜1000nm、より好ましくは50nm〜500nm、ある例においては約50nm〜約300nm、ある例においては約100nm〜300nm、ある例においては約200nm〜250nm、ある例においては約200nm、ある例においては約200nm未満、を有することができる。一般に、小さい径の粒子、例えばサブミクロン粒子、は、より長く循環し、より大きい粒子よりも安定である傾向がある。
【0045】
(結合リガンド(coupled ligand)を含むことができる、又は所望の成分を表面に結合するための試薬を閉じ込めることできる)該粒子に外被膜を形成するのに使用される脂質/界面活性剤には、天然又は合成のリン脂質類、脂肪酸類、コレステロール類、リゾ脂質(lysolipid)類、スフィンゴミエリン類、トコフェロール類、糖脂質類、ステアリルアルニン(stearylarnine)類、カルジオリピン類、プラスマロゲン類、エーテル又はエステル結合した脂肪酸を有する脂質、及び脂質類の重合体(polymerized ligand)が含まれる。ある例においては、脂質/界面活性剤は、脂質結合(lipid conjugated)ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)を含むことができる。Tween系、Span系、及びTriton系等を含む種々の市販のアニオン、カチオン、並びに非イオン界面活性剤も使用することができる。ある実施形態において、好ましい界面活性剤は、リン脂質類及びコレステロールである。
【0046】
乳化される油に可溶なフッ素化界面活性剤(fluorinated surfactant)も使用することができる。好適なフルオロケミカル界面活性剤には、ペルフルオロヘキサン酸及びペルフルオロオクタン酸等の全フッ素化カルボン酸(perfluorinated alkanoic acid)類、及びアミドアミン誘導体が含まれる。これらの界面活性剤は、一般的に、0.01〜5.0質量%の濃度、好ましくは0.1〜1.0質量%の濃度で使用される。他の好適なフルオロケミカル界面活性剤には、全フッ素化アルコールリン酸エステル類及びそれらの塩、全フッ素化スルホンアミドアルコールリン酸エステル類及びそれらの塩、全フッ素化アルキルスルホンアミド、アルキレン第四アンモニウム塩類、N,N−(カルボキシル置換低級アルキル)全フッ素化アルキルスルホンアミド類、及びそれらの混合物が含まれる。本明細書において使用されるように用語「全フッ素化(perfluorinated)」は、界面活性剤が少なくとも1つの全フッ素化したアルキル基を含むことを意味する。
【0047】
好適な全フッ素化アルコールリン酸エステルには、モノ−及びビス(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキル)リン酸塩(エステル)類のジエタノールアミン塩の遊離酸が含まれる。このようなリン酸塩は、商品名ZONYL RP(デュポン社(Dupont)、デラウェア州ウィルミントン)から入手可能であるが、公知の方法によって対応する遊離酸に転化される。好適な全フッ素化スルホンアミドアルコールリン酸エステル類は、米国特許第3,094,547号に記載されている。好適な全フッ素化スルホンアミドアルコールリン酸エステル類及びそれらの塩には、ペルフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチルリン酸エステル(リン酸塩)、ビス(ペルフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチル)リン酸エステル(リン酸塩);ビス(ペルフルオロ−n−オクチル−N−エチルスルホンアミドエチル)リン酸のアンモニウム塩、ビス(ペルフルオロデシル−N−エチルスルホンアミドエチル)リン酸エステル(リン酸塩)、及びビス(ペルフルオロヘキシル−N−エチルスルホンアミドエチル)リン酸エステル(リン酸塩)が含まれる。好ましい調剤は、ホスファチジルコリン、誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン、及びコレステロールを脂質界面活性剤として使用する。
【0048】
他の公知の界面活性剤添加物、例えば、PLURONIC F−68、HAMPOSYL L30(W.R.Grace社、ニューハンプシャー州ナシュア)、ドデシル硫酸ナトリウム、Aerosol 413(American Cyanamid社、ニュージャージー州ウェイン)、Aerosol 200(American Cyanamid社)、LIPOPROTEOL LCO(Rhodia社、ニュージャージー州マンモス(Mammoth))、STANDAPOL SH 135(Henkel社、ニュージャージー州ティーネック)、FIZUL 10−127(Finetex社、ニュージャージー州エルムウッドパーク)、及びCYCLOPOL SBFA30(Cyclo Chemicals社、フロリダ州マイアミ);両性界面活性剤(amphoterics)、例えば以下の商品名で販売されているもの:DERIPHAT 170(Henkel社)、LONZAINE JS(Lonza社)、NIRNOL C2N−SF(Miranol Chemical社、ニュージャージー州デイトン)、AMPHOTERGE W2(Lonza社)、及びAMPHOTERGE 2WAS(Lonza社);非イオン界面活性剤(non-ionics)、例えば以下の商品名で販売されているもの:PLURONIC F−68(BASF社Wyandotte、ミシガン州ワイアンドット)、PLURONIC F−127(BASF社Wyandotte)、BRIJ 35(ICI Americas社;デラウェア州ウィルミントン)、TRITON X−100(Rohm and Haas社、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)、BRIJ 52(ICI Americas社)、SPAN 20(ICI Americas社)、GENEROL 122 ES(Henkel社)、TRITON N−42(Rohm and Haas社)、TRITON N−101(Rohm and Haas社)、TRITON X−405(Rohm and Haas社)、TWEEN 80(ICI Americas社)、TWEEN 85(ICI Americas社)、及びBRIJ 56(ICI Americas社)等を、該エマルションの安定化を促進するために、0.10質量%〜5.0質量%の濃度で、単独で又は組み合わせて、使用してもよい。
【0049】
脂質被包性粒子は、核酸類及びアプタマ(aptamer)等のリガンドを粒子表面に捕捉又は付着することを容易にする界面活性剤層のカチオン性脂質と共に調製してもよい。典型的なカチオン性脂質は、DOTMA,N−[1−(2,3−ジオレオイロキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド;DOTAP,1,2−ジオレオイロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン;DOTB,1,2−ジオレオイル−3−(4’−トリメチル−アンモニウム)ブタノイル−sn−グリセロール;DAP、1,2−ジアシル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン;TAP、1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン;1,2−ジアシル−sn−グリセロール−3−エチルホスホコリン;3β−[N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモル]コレステロール−HCl;DC−chol、DC−コレステロール;及びDDAB、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイドを含んでもよい。一般に、脂質界面活性剤単分子膜中におけるカチオン性脂質と非カチオン性脂質のモル比は、例えば、1:1000〜2:1であり、好ましくは2:1〜1:10、より好ましくは1:1〜1:2.5、最も好ましくは1:1である(カチオン性脂質のモル数と非カチオン性脂質、例えばDPPC、のモル数の比)。さまざまな脂質が、界面活性剤の非カチオン性脂質成分を構成することができる。上述の化合物に加え、とりわけジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジル−エタノールアミン又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミンがこれに該当する。上述したカチオン性脂質の代わりに、ポリリジン又はポリアルギニンのようなカチオン性ポリマーを有する脂質も脂質界面活性剤に含まれうるが、これらは、遺伝子材料又はその類似体等の負に帯電した治療薬をエマルション粒子の外側に結合させることができる。脂質は、in vivo使用の粒子に安定性を付与するために架橋されてもよいが、架橋は、脂質成分が、融合する細胞へ自由に流入・流出することを抑制することができるので、そのような架橋は不利益となる。したがって、該粒子の脂質成分は、架橋されないほうが好ましい。
【0050】
特定の実施形態においては、脂質/界面活性剤被膜には、ターゲッティングリガンド及び/又は治療に有用な補助物質のカップリング(結合)に使用可能な活性基を有する成分が含まれる。ある実施形態においては、1以上の所望成分の多数の複製を該粒子に結合させる媒体を提供する脂質/界面活性剤被膜が好ましい。後述するように、脂質/界面活性剤成分は、当該脂質/界面活性剤成分に含まれる官能性(基)を介してこのような活性基とカップリングすることができる。例えば、ホスファチジルエタノールアミンは、そのアミノ基を介して所望の構造と直接的にカップリングすることができるし、後述するようなカルボキシル基、アミノ基又はメルカプト基を提供し得る短いペプチドのようなリンカーとカップリングすることもできる。或いは、マレイミド等の標準的な結合剤(linking agent)を使用することもできる。ターゲッティングリガンド及び補助物質と該粒子との結合には種々の方法を使用することができる。そのようなストラテジーには、例えばポリエチレングリコール又はペプチド等のスペーサー(spacer)基の使用が含まれ得る。
【0051】
例えば、脂質/界面活性剤被覆ナノ粒子は、典型的には、コアを形成する油と、エマルションを形成するための水性媒体中の浮遊物(分散質)の外層を形成する脂質/界面活性剤混合物との混合物のマイクロ流動化(microfluidizing)によって形成される。この方法では、脂質/界面活性剤は、ナノ粒子に乳化されるとき付加的リガンドと予めカップリングしていてもよく、又は後のカップリングのための活性基を単に含んでいてもよい。或いは、脂質/界面活性剤層に含有されるべき成分は、補助材料(物質)の溶解特性によって、当該層に単に溶解するだけでもよい。水性媒体中の脂質/界面活性剤の懸濁を得るために、超音波処理(sonication)及び他の技術を必要としてもよい。典型的には、脂質/界面活性剤外層中の少なくとも1つの材料が、所望の付加的成分と結合するのに有用なリンカーもしくは官能基を含むか、又は該成分が、エマルション調製時に予め該材料とカップリングしていてもよい。
【0052】
脂質被包性粒子におけるターゲッティングリガンドと該材料との共有結合は、本明細書の記載に基づいて、当業者に公知となっているであろう有機合成技術を使用して達成することができる。例えば、ターゲッティングリガンドは、周知のカップリング剤又は活性剤を使用することによって、脂質を含む該材料と結合してもよい。
【0053】
ターゲッティングリガンド又は他の有機構造と、外層の成分との共有結合によるカップリングのために、種々のタイプの結合及びリンク剤を使用することができる。そのようなカップリングを形成するための典型的な方法には、カルボジアミド類の使用によるアミドの形成、又はマレイミド等の不飽和成分の使用によるスルフィド結合(linkage)の形成が含まれる。他のカップリング剤には、例えば、グルタルアルデヒド、プロパンジアル(propanedial)又はブタンジアル(butanedial)、2−イミノチオラン(iminothiolane)ヒドロクロライド、ジスクシンイミジルスベレート(suberate)、ジスクシンイミジルタートレート(tartrate)、及びビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン等の二官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート及びスクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート等のヘテロ二官能性試薬、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロジフェニルスルホン、4,4’−ジイソチオシアノ−2,2’−ジスルホン酸スチルベン、p−フェニレンジイソチオシアネート、カルボニルビス(L−メチオニンp−ニトロフェニルエステル)、4,4’−ジチオビスフェニルアジド、及びエリトリトールビスカルボネート等のホモ二官能性試薬、並びにジメチルアジピミデート(adipimidate)ヒドロクロライド、ジメチルスベリミデート(suberimidate)、ジメチル3,3’−ジチオビスプロピオンイミデートヒドロクロライド等の二官能性イミドエステル等が含まれる。結合(linkage)は、アシル化、スルホン化、還元性アミノ化等によって達成することも可能である。所望のリガンドを外層の1以上の成分と、共有結合的に、カップリングする多くの方法が、当業者に周知である。リガンド自体は、その特性が適している場合に、界面活性剤層に含まれていてもよい。例えば、リガンドが高親油性構造を有する場合、リガンド自体を脂質/界面活性剤被膜中に埋め込んでもよい。さらに、リガンドが該被膜に直接吸着することができる場合、これもまたカップリングを形成するであろう。例えば、核酸は、その負電荷のため、カチオン性界面活性剤に直接吸着する。
【0054】
共有結合は、架橋及び又は重合を伴ってもよい。架橋は、一般的には、化学的共有結合によって鎖の所定の炭素原子を接合する、元素、基もしくは化合物のいずれかからなる、橋によるポリマー分子(複数)の2つの鎖の付着(attachment)のことをいう。例えば、架橋は、シスチン残基のジスルフィド結合によって結合されるポリペプチド類において生ずる。架橋は、例えば、(1)化学物質(架橋剤)の添加及び該混合物の加熱、又は(2)ポリマーへの高エネルギー放射線の照射、によって、達成することができる。
【0055】
非共有結合的な会合(association)は、ターゲッティングリガンドと、脂質被包性粒子の表面上の構造(moiety)内にある残基とが関係するイオン性相互作用によって生ずることもできる。非共有結合的な会合は、ターゲッティングリガンドと、帯電したアミノ酸類等のプライマー内の残基とが関係するイオン性相互作用によって、又はターゲッティングリガンドと脂質被包性粒子表面の両方と相互作用可能な帯電した残基を含むプライマー部分の使用によって、生ずることもできる。例えば、非共有結合的接合は、脂質被包性粒子表面上の通常は負に帯電したターゲッティングリガンド又は構造と、プライマーの正に帯電したアミノ酸残基、例えばポリリジン、ポリアルギニン及びポリヒスチジン残基、との間に生ずることができる。
【0056】
リガンドは該粒子と直接的に結合することができる、すなわちリガンドは該粒子自体と会合される。或いは、間接的な結合が、ターゲッティングリガンド又はその他の有機構造と該粒子の脂質/界面活性剤被膜とをカップリングさせるために、加水分解性の脂質アンカー等の加水分解性アンカーを用いて行われてもよい。ビオチン/アビジンにより生じるような間接的な結合もリガンドのために利用することができる。例えば、ビオチン/アビジン媒介ターゲッティングにおいて、ターゲッティングリガンドは、該粒子とカップリングするのではなく、むしろビオチン化した形態で標的組織とカップリングする。
【0057】
被覆層に取り込まれることにより脂質被包性粒子とカップリング可能な補助剤には、放射性核種が含まれる。放射性核種は、治療的であっても診断的であってもよい。そのような放射性核種を使用する診断イメージングは周知であり、所望の組織に放射性核種を向かわせることにより、治療上の効果も同様に得ることができる。診断イメージング用の放射線核種は、多くの場合、ガンマエミッター(例えば、96Tc)を含み、治療目的用の放射性核種は、多くの場合、アルファエミッター(例えば、225Ac)及びベータエミッター(例えば、90Y)を含む。典型的な診断用放射性核種には、99mTc、96Tc、95Tc、lllIn、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga及び192Irが含まれ、治療用放射性核種には、225Ac、186Re、188Re、153Sm、166Ho、177Lu、149Pm、90Y、212Bi、103Pd、109Pd、159Gd、140La、198Au、199Au、169Yb、175Yb、165Dy、166Dy、l23I、l3lI、67Cu、105Rh、111Ag及び192Irが含まれる。放射性核種は、予め形成された粒子に種々の方法で供与することができる。例えば、99Tc-ペルテクネート(pertechnate)は、過剰の塩化スズと混合し、ナノ粒子の予め形成されたエマルションに組み込むことができる。塩化スズの代わりに、スズオキシネート(Stannous oxinate)を使用することもできる。さらに、市販のキット、例えばニコメド・アマシャム社(Nycomed Amersham)よりCeretek(登録商標)として販売されているHM−PAO(exametazine)キット、も使用することができる。本発明の脂質被包性粒子に種々の放射性核種を付着する手段は、当業者に既知である。
【0058】
例えば核磁気共鳴映像法で使用するための金属イオンを含むキレート化剤も、補助剤として使用することができる。典型的には、常磁性金属又は超常磁性金属を含むキレート化剤は、該粒子上の被膜の脂質/界面活性剤と結合(会合)され、初期混合物に取り込まれる。キレート化剤は、被膜層の1以上の成分と直接カップリングすることができる。好適なキレート化剤は、大環状又は直鎖のキレート化剤であり、これらには、EDTA、DPTA、DOTA等を含む種々の多座配位化合物が含まれる。これらのキレート化剤は、例えばホスファチジルエタノールアミン、オレアート類、又はいずれかの他の合成天然もしくは官能性を持たせた脂質もしくは脂質可溶性化合物に含まれる官能基に直接的にカップリングすることができる。或いは、これらのキレート化剤は、結合基(linking groups)を介してカップリングすることができる。
【0059】
ある例における使用に適したキレート化剤には、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(DOTA)及びその誘導体、特にメトキシベンジル誘導体(MEO−DOTA)、及びホスファチジルエタノールアミンのアミノ基と、又はそのペプチド誘導構造とカップリング可能なイソチオシアネート官能基を有するメトキシベンジル誘導体(MEO−DOTA−NCS)が含まれる。この種の誘導体は、米国特許第5,573,752号に記載され、他の好適なキレート化剤は、米国特許第6,056,939号に開示されている。
【0060】
DOTAイソシアネート誘導体は、脂質/界面活性剤と直接的に又はペプチドスペーサーを介してカップリングすることも可能である。スペーサーとしてのgly−gly−glyの使用は、以下の反応スキームに図示する。直接的カップリングに対し、MEO−DOTA−NCSは、ホスホエタノールアミン(PE)と簡単に反応し、カップリング生成物が得られる。ペプチド、例えばトリグリシル結合、が使用される場合、PEは、まず、t−boc保護トリグリシンとカップリングする。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)のいずれかと共にジイソプロピルカルボジイミド(又はその等価物)を用いてt−boc−トリグリシンの遊離酸の活性エステルを生成するような標準的なカップリング技術を使用し、t−boc−トリグリシン−PEを精製する。
【0061】
t−boc−トリグリシン−PEをトリフルオロ酢酸で処理することにより、トリグリシン−PEが得られ、その後、これをDMF/CHCl中50℃で過剰のMEO−DOTA−NCSと反応させる。過剰の溶媒及び未反応又は加水分解されたMEO−DOTA−NCSを除去するために、溶媒を除去し、次いで過剰の水で固形残渣を水洗することによって、最終生成物が単離される。
【0062】
【化1】

【0063】
他の補助剤には、フルオロフォア(fluorophore)(フルオレセイン、ダンシル(dansyl)、及び量子ドット(quantum dots)等)が含まれ、赤外染料又は金属を、光学又は光画像法(例えば、共焦点顕微鏡及び蛍光画像法)において使用してもよい。PET画像法等の核映像法に関しては、トシル化及び18Fフッ素化化合物を補助剤として、該ナノ粒子と結合(会合)させてもよい。
【0064】
上記何れの場合でも、結合構造がターゲッティングリガンドであろうと補助剤であろうと、所定の構造は、脂質/界面活性剤層と非共有結合的に結合(会合)してもよく、脂質/界面活性剤層の成分(複数)と直接的にカップリングしてもよく、又はスペーサー構造を介して該成分と間接的にカップリングしてもよい。
【0065】
治療標的は、in vivo又はin vitro標的であってもよく、好ましくは、生物学的材料であってもよいが、該標的は生物学的材料である必要はない。標的は、造影物質(contrast substance)が結合する表面、又は造影物質が浸透し、表面下の標的部分と結合する三次元構造から構成されることができる。
【0066】
該粒子表面とカップリングするターゲッティングリガンドは、一般的に、活性ターゲッティング(active targeting)を可能にするために、所望の標的に対して特異的である。活性ターゲッティングとは、局在化による細胞、組織又は器官への薬剤のリガンド指向的、部位特異的蓄積、及び細胞の表面膜又は細胞外もしくは細胞内マトリクスに現出した分子エピトープ、例えばレセプタ、脂質類、ペプチド類、細胞付着分子(cell adhesion molecules)、多糖類、生体高分子等、への結合をいう。抗体、抗体のフラグメント、小さなオリゴペプチド等のポリペプチド、三次元構造を有する大きなポリペプチドもしくはタンパク質、ペプチド擬似体(peptidomimetic)、多糖、アプタマ、脂質、核酸、レクチン、又はこれらの組み合わせを含む多種のリガンドを使用することができる。一般的に、リガンドは、細胞のエピトープ又はレセプタと特異的に結合する。
【0067】
ある実施形態においては、例えばin vivoでの使用において、その特異的標的に対するリガンドの結合親和力は、約10−7M以上である。ある実施形態においては、例えばin vitroでの使用において、その特異的標的に対するリガンドの結合親和力は、10−7未満とすることができる。
【0068】
アビジン−ビオチン相互作用は、既に多くの生物学的及び分析システムに取り入れられかつin vivo適用に選択されている極めて有用な非共有結合的ターゲッティングシステムである。アビジンは、生理学的条件下における迅速かつ安定な結合を可能にする、ビオチンに対する高い親和性(10−15M)を有する。この手法を利用するあるターゲットシステムは、調剤に応じて、2ステップ又は3ステップで投与される。これらのシステムにおいて典型的には、まず、モノクローナル抗体等のビオチン化リガンドが投与され、特定の分子エピトープに対して「プレターゲット(pretarget)」する。次に、「プレターゲット」したリガンドのビオチン構造に結合するアビジンが投与される。最後に、ビオチン化エマルションが添加され、アビジンに残存している非占有のビオチン結合部位に結合し、これによりリガンド−アビジン−エマルションの「サンドイッチ」が完成する。アビジン−ビオチン法は、表面抗体の存在に従属的な細網内皮系によるターゲット化剤(targeted agent)の促進される尚早の除去(クリアランス)を回避することができる。さらに、アビジンは、独立した4つのビオチン結合部位を有するが、信号の増幅を提供し、検出の感度を改善する。
【0069】
本明細書において使用されるように、用語「ビオチン剤(biotin agent)」又はビオチンエマルションもしくはビオチン剤へとの結合に関する「ビオチン化(biotinylated)」は、ビオチン、ビオサイチン、並びにビオチンアミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン−4−アミド安息香酸、ビオチンアミドカプロイルヒドラジド及び他のビオチン誘導体及び複合体等の他のビオチン誘導体及び類似体を含むものとする。他の誘導体としては、ビオチン−デキストラン、ビオチン−ジスルフィド−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチン−6−アミドキノリン、ビオチンヒドラジド、d−ビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチンマレイミド、d−ビオチン−p−ニトロフェニルエステル、ビオチン化ヌクレオチド、及びN,イプシロン−ビオチニル−l−リジン等のビオチン化アミノ酸も含む。用語「アビジンエマルション(avidin emulsion)」、又はアビジンエマルションもしくはアビジン剤との結合に関する「アビジン化(avidinized)」は、アビジン、ストレプトアビジン、及びストレプトアビジン又はアビジン複合体等の他のアビジン類似体、高精製分画種(highly purified and fractionated species)のアビジン又はストレプトアビジン、及び非アミノ酸又は部分アミノ酸変異体、組換え又は化学合成アビジンを含むものとする。
【0070】
ターゲッティングリガンドを、粒子表面の性質に応じて種々の方法により脂質被包性粒子の表面に化学的に付着させてもよい。結合(conjugations)は、使用するリガンドに応じてエマルション粒子が形成される前又は後に行ってもよい。リガンドのタンパク質剤(proteinaceous)への直接的化学結合では、多くの場合、その表面に内在する多数のアミノ基(例えばリジン)を利用する。或いは、ピリジルジチオプロピオネート、マレイミド又はアルデヒド等の機能的化学活性基は、該粒子が形成された後、リガンド結合のための化学的「フック(hooks)」としてその表面に組み込むことも可能である。別の一般的な後処理法は、リガンドを付加する前に、カルボジイミドによって、表面カルボン酸塩(エステル)(carboxylates)を活性化することである。選択される共有結合ストラテジーは、主として、リガンドの化学的性質によって決定される。抗体及び他の大きなタンパク質は、厳しい処理条件下では変性する場合もある;他方、炭水化物、短ペプチド、アプタマ、薬剤又はペプチド擬似体の生理活性は、多くの場合、保護可能である。高レベルのリガンド結合の完全性(integrity)を確保すると共に、ターゲット粒子の結合活性(avidity)を最大化するために、例えばポリエチレングリコール又は単純なカプロン酸エステルブリッジ(caproate bridges)のようなフレキシブルなポリマースペーサアームを、活性化された表面官能基とターゲッティングリガンドの間に挿入することができる。このような付加部分は、10nm以上とすることができ、粒子表面の相互作用によるリガンド結合の障害を最小にすることができる。
【0071】
抗体、特にモノクローナル抗体、は、病理的分子エピトープ(pathologic molecular epitopes)を含む分子エピトープの広範囲のスペクトルの何れにも(何れか)に対して指向される部位ターゲッティングリガンドとして使用することもできる。既に、免疫グロブリン−γ(IgG)クラスモノクローナル抗体は、リポソーム、エマルション及び他の脂質被包性粒子に結合され、活性的な部位特異的ターゲッティングを提供している。一般的に、これらのタンパク質は、H鎖及びL鎖の同一の対からなる対称的な糖タンパク質(分子量約150,000ダルトン)である。2つのアームの各々の末端の超可変領域は、同一の抗原結合領域を提供する。大きさが可変の分枝炭水化物領域は、補体活性化部位(complement-activation regions)に連結し、ヒンジ領域は、還元されてより小さいフラグメントを生成できる特に接触可能な鎖間ジスルフィド結合を有する。
【0072】
ある例においては、モノクローナル抗体は、本発明の抗体組成物において使用される。細胞の表面上で、選択された抗原に特異的なモノクローナル抗体は、従来技術を用いて容易に生成することができる(例えば、米国特許第RE32,011号、第4,902,614号、第4,543,439号、及び第4,411,993号参照)。ハイブリドーマ細胞は、抗原と特異的に反応する抗体の製造のために、免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体は単離可能となる。また、他の技術を利用してモノクローナル抗体を構築してもよい(例えば、Huseら、Science、1989年、第246巻、1275−1281頁;Sastryら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1989年、第86巻、5728−5732頁;Alting−Meesら、Strategies in Molecular Biology、1990年、第3巻、1−9頁)。
【0073】
本発明の説明において、抗体が、必ずしも限定はされないが、天然の抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗原結合特異性を保有する抗体フラグメント(例えば、Fab、及びF(ab’))及び組換え生成結合パートナー、単一領域抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体(humanized antibodies)等を含む種々の抗体を含むことはいうまでもない。一般に、抗体が10−1と同等か又はそれ以上の親和力(結合定数)で結合する場合には、抗体が、細胞の選択された抗原に対して反応的であることはいうまでもない。エマルションと共に使用するための選択された抗原に対する抗体は、市販物から入手することができる。
【0074】
本発明において部位ターゲッティングリガンドとして使用する種々の抗体は、本明細書においては、特に、後にこの「脂質被包性粒子組成物」の章においてさらに説明される。
【0075】
本発明において使用される脂質被包性粒子は、その抗体又はフラグメント以外のリガンドであるターゲッティング剤も使用する。例えば、ポリペプチドは、抗体のように、標的化された造影剤用ベクター分子として使用するための高い特異性及びエピトープ親和性を有していてもよい。これらは、(例えば、血小板GIIbIIIaレセプタのRGDエピトープ等の)特定のレセプタ配列(receptor sequence)に対し特異的な、例えば5〜10アミノ酸を有する、小さなオリゴペプチドであってもよく、又はコレシストキニン等の、より大きな生物学的活性ホルモンであってもよい。より小さなペプチドは、非ヒト化マウス抗体(nonhumanized murine antibodies)よりも潜在的に小さい内在的(固有的)免疫原性(inherent immunogenicity)を有する。細胞付着分子、サイトカイン類、セレクチン類、カドヘリン(cadhedrin)類、Igスーパーファミリー、インテグリン類等のペプチド類又はペプチド(非ペプチド)類似体は、目的とする治療薬送達に利用することができる。
【0076】
ある例においては、リガンドは、米国特許第6,130,231号(例えば、式1に示される);第6,153,628号;第6,322,770号;及びPCT公開公報WO01/97848号に記載されているような、非ペプチド有機分子である。「非ペプチド」構造とは、一般に、遺伝子コード化されているかいないかに関わらず、アミノ酸のポリマーにすぎない化合物以外の構造をいう。従って、「非ペプチド」リガンドとは、ポリマーの特性を欠如しており、かつアミノ酸ポリマー以外の中心(core)構造の必要性によって特徴付けられる「小分子(small molecules)」として通常言及される構造をいう。本発明に有用な非ペプチドリガンドは、ペプチドとカップリングしてもよく、又は標的部位への親和力の原因となるリガンド部分とカップリングするペプチド類を含んでもよい。しかしながら、その結合能力の原因となるのは、該リガンドの非ペプチド領域である。例えば、αβインテグリンに特異的な非ペプチドリガンドが、米国特許第6,130,231号及び6,153,628号に記載されている。
【0077】
炭水化物保有脂質は、例えば、米国特許第4,310,505号に記載されている、脂質被包性粒子のターゲッティングに使用することができる。
【0078】
アシアロ糖タンパク質類は、肝細胞にのみ局在するアシアロ糖タンパク質レセプタに対する高い親和性のために、肝臓への特異的送達に使用されてきた。アシアロ糖タンパク質指向剤(asialoglycoproteins directed agents)(主として酸化鉄と結合した磁気共鳴剤)は、原発性及び続発性の肝腫瘍及び肝炎等の良性のびまん性肝臓疾患を検出するために使用されてきた。アシアロ糖タンパク質レセプタは、肝細胞に極めて豊富に存在し(細胞当り約500,000)、急速に内部移行し、その後細胞表面へ再生される。また、アラビノガラクタン等の多糖は、肝ターゲットにエマルションを局在化させるために利用することもできる。アラビノガラクタンは、アシアロ糖タンパク質肝レセプタに対する高親和性を呈する多末端アラビノース基を有する。
【0079】
アプタマは、in vitroでの選択試験(SELEX:systematic evolution of ligands by exponential enrichment)によって生成される、高親和性、高特異性RNA又はDNAベースリガンドである。アプタマは、20〜30ヌクレオチドのランダム配列から作成され、分子抗原又は細胞への吸着(吸収)によって選択的にスクリーニングされ、特異的高親和性結合リガンドを精製するために濃縮される。in vivoでの安定性及び有用性を高めるために、アプタマは、一般的に、ヌクレアーゼ消化を抑制し、かつ薬剤、標識又は粒子との結合が容易となるように化学的に修飾される。他のより単純な化学的ブリッジが、リガンド相互作用に特異的に関与しない核酸の代わりに使用されることもよくある。溶液中では、アプタマは、構造化されていないが、特異的認識を供するターゲットエピトープを覆ったり包んだりすることはできる。エピトープを覆う核酸の特有の覆いにより、水素結合、静電相互作用、スタッキング(stacking)、及び形状相補性(shape complementarity)を介して、差別的分子間接触が可能となる。タンパク質ベースのリガンドと比較すると、一般的に、アプタマは、安定で、加熱殺菌に対しより伝導的であり、そして免疫原性がより低い。アプタマは、現在、血管新生、活性化血小板(activated platelet)、及び固体腫瘍を含む多数の臨床関連病理をターゲットするために使用されており、このような使用は増加している。イメージング及び/又は治療エマルション粒子用のターゲッティングリガンドとしてのアプタマの臨床上の有効性は、核酸のリン酸基によってクリアランス速度に与えられる負の表面電荷の影響に依存させてもよい。脂質ベースのパーティクルに関する以前の研究は、負のゼータ電位がリポソームの循環半減期を著しく減少させるのに対して、中性又はカチオン性粒子は同様のより長い全身残存性(systemic persistence)を有していることを示している。
【0080】
ある適用に関する脂質被包性粒子に、特異的結合種をカップリングさせるための「プライマー材料」と称されているものを使用することも可能である。本明細書において使用されるように、「プライマー材料」は、該粒子と、ターゲッティングリガンド又はターゲッティングリガンドのサブユニット等のターゲッティングリガンドの構成部分との間で共有結合を形成するために化学的に利用可能なエマルション脂質界面活性剤層に組み込まれる何らかの成分又は誘導化された成分を意味する。
【0081】
従って、ターゲッティングリガンドは、油/水界面への直接吸着又はプライマー材料の使用によって、カプセル被覆する脂質単分子層上に固定してもよい。プライマー材料は、特異的結合又はターゲッティング種と化学的に結合又は吸着するために該粒子に組み込まれるいずれかの界面活性剤適合性化合物(surfactant compatible compound)であればよい。例えば、エマルションは、水性連続相と、連続及び不連続相の界面でプライマー材料と吸着又は結合する生物学的活性リガンドとを用いて形成してもよい。アミン、カルボキシル、メルカプト、又はカップリング剤と特異的に反応することができる他の官能基を有する天然又は合成ポリマー、及び高帯電ポリマーは、カップリングプロセスに利用することができる。特異的結合種(例えば抗体)は、直接的吸着又は化学的結合によって、エマルション粒子表面に固定することができる。直接的吸着によって固定可能な特異的結合種の例として、小ペプチド、ペプチド擬似体、又は多糖ベース薬剤が挙げられる。そのようなエマルジョンを作成するために、エマルション形成前に、特異的結合種を水相に懸濁又は溶解させてもよい。或いは、エマルション形成後、特異的結合種を添加して、pH7.0の緩衝液(典型的にはリン酸緩衝食塩水)中、室温(約25℃)で1.2〜18時間穏やかに撹拌してインキュベート(環境維持)(incubate)してもよい。
【0082】
特異的結合種がプライマー材料にカップリングされる場合、従来のカップリング技術が利用されてもよい。特異的結合種は、当業者に既知の方法により、カップリング剤を用いて、プライマー材料と共有結合させてもよい。プライマー材料は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、N−カプロイルアミン−PE、n−ドデカニルアミン、ホスファチジルチオエタノール、N−1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキシレート]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N[PDP(ポリエチレングリコール)2000]、N−スクシニル−PE、N−グルタリル−PE、N−ドデカニル−PE、N−ビオチニル−PE、又はN−カプロイル−PEを含んでもよい。付加的なカップリング剤は、例えば、カルボジイミド、又はエチレン不飽和を有するかもしくは複数のアルデヒド基を有するアルデヒドの使用を含む。使用に適した付加的カップリング剤については、本発明において、特に、後にこの脂質被包性粒子組成物の章でさらに説明される。
【0083】
特異的結合種とプライマー材料との共有結合は、例えば、中性のpH、25℃未満の温度の水溶液中で、1時間から一晩中行う従来の周知反応によって、本明細書において示した試薬及びその他の試薬を使用して形成することができる。リガンド(非ペプチドリガンド含む)をカップリングするリンカーの例は、当業者に公知である。
【0084】
ある実施形態においては、ターゲッティングリガンドは、非共有結合的会合(結合)を介して該組成物に組み込むことができる。当業者に公知のように、非共有結合的会合は、一般的に、例えば、関係する分子の極性、関係する分子の、もしあるなら、電荷(正又は負)、分子ネットワークを通る水素結合の広がり等、を含む種々の要素の機能である。非共有結合は、一般的に、イオンの相互作用、双極子−双極子相互作用、水素結合、極性相互作用、ファンデルワールス力、及びこれらのいずれかの組み合わせから構成される群から選択される。
【0085】
非共有結合的相互作用は、標的細胞指向構造を、脂質とカップリングさせるために、又は脂質被包性粒子表面の別の成分と直接的にカップリングさせるために使用することができる。例えば、アミノ酸配列Gly−Gly−Hisは、好ましくはPEG等のプライマー材料によって、脂質被包性粒子表面と結合することができ、その後、銅、鉄又はバナジルイオンが添加されてもよい。ヒスチジン残基を含む抗体等の蛋白質は、米国特許第5,466,467号に記載されているように、銅イオンを有するイオン性ブリッジを介して脂質被包性粒子と結合することができる。水素結合の例として、脂質組成に組み込むことができるカルジオリピン脂質類が挙げられる。非共有結合的会合は、帯電したアミノ酸等の、プライマー内又は脂質被包性粒子上のターゲッティングリガンド及び残基を伴うイオン性相互作用によっても生じ、通常負帯電標的細胞指向構造又は脂質被包性粒子表面の構造と、例えばポリリジン、ポリアルギニン及びポリヒスチジン残基等の、プライマーの正帯電アミノ酸残基との相互作用を含む。
【0086】
アミン又は水酸基等の反応性基を含む、ポリエチレングリコールエチルアミン等の、親水性プライマーの自由末端は、標的細胞指向構造のカップリングに使用することができる。例えば、ポリエチレングリコールエチルアミンは、N−スクシンイミジルビオチン又はp−ニトロフェニルビオチンと反応して、スペーサー上に有用な結合基を導入することができる。例えば、ビオチンは、スペーサーとカップリングすることができ、これにより、非共有結合的タンパク質、又はアビジンもしくはストレプトアビジンを保有する他の標的細胞指向構造を容易に結合することができる。
【0087】
乳化剤及び/又は可溶化剤をエマルションと共に使用してもよい。そのような薬剤には、限定はされないが、アラビアゴム(acacia)、コレステロール、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンアルコール類、レシチン、モノ−及びジ−グリセリド類、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロクサマー(poloxamer)、ピーナッツオイル、パルミチン酸、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシル35ひまし油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸、トロラミン(trolamine)、及び乳化ろうが含まれる。植物又は動物由来の脂質に見出される飽和又は不飽和炭化水素脂肪酸の代わりに、脂質の成分としてペルフルオロ脂肪酸を有するすべての脂質を使用することができる。エマルションと共に使用可能な懸濁剤及び/又は増粘剤には、限定はされないが、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、マグマ、カルボマー934P、カルボキシメチルセルロース、カルシウム及びナトリウム及びナトリウム12、カラゲナン、セルロース、デキストリン、ゼラチン、グアールガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレングリコールアルギナート、二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントゴム、及びキサンタンガム(xanthum gum)が含まれる。
【0088】
本明細書において説明するように、本発明の脂質被包性粒子は、治療薬(例えば、薬物、プロドラッグ、遺伝子材料、放射性同位元素、又はこれらの組み合わせ)を天然の形態(native form)で、又は該粒子への組み込みもしくは吸着を増強するために疎水性もしくは荷電構造で誘導された形態で、組み込んでもよい。治療薬は、プロドラッグであってもよく、プロドラッグには、Sinkylaら、J.Pharm.Sci.、1975年、第64巻、181−210頁、Koningら、Br.J.Cancer、1999年、第80巻、1718−1725頁、米国特許第6,090,800号及び米国特許第6,028,066号に記載されたものも含まれる。
【0089】
本発明の非ガス状脂質被包性粒子における特定の治療薬は、予防手段又は診断された病気もしくは状態の治療における使用に適切なものとして選択される。ある実施形態においては、治療薬は、脂質被包性粒子のコア内に組み込まれる。本発明の方法に使用されるそのような治療薬は、限定はされないが、抗腫瘍薬、放射性薬品、核酸、ホルモン類を含むタンパク質及び非タンパク質天然物(natural products)又はその類似体/擬似体、鎮痛薬、筋弛緩薬、麻酔性作用薬、麻酔性作用−拮抗薬(narcotic agonist-antagonists)、麻酔性拮抗薬、非ステロイド系抗炎症薬、麻酔薬及び鎮静薬、神経筋遮断薬、サイトカイン、抗菌薬、駆虫薬(anti-helmintics)、抗マラリア薬、駆虫薬(antiparasitic agents)、抗ウイルス薬、抗疱疹薬(antiherpetic agents)、抗高血圧薬、抗糖尿病薬、痛風関連薬(gout related medicants)、抗ヒスタミン薬、抗潰瘍薬、抗凝血薬、及び血液製剤を含んでもよい。
【0090】
ある場合においては、治療薬は、細胞膜を通じて効率的に転位(translocate)することができる所定のタンパク質類又はペプチド類と連結することができる。そのような転位タンパク質類又はペプチド類(translocatory proteins or peptides)は、それらが融合する治療薬、例えばペプチド類又はタンパク質類、の細胞間及び/又は細胞内送達を媒介することができる。これらの転位タンパク質類又はペプチド類の例は、当業者に公知であり、限定はされないが、ヒト免疫不全ウイルスTatペプチド及びTat類似ペプチド、単純疱疹ウイルスVP22ペプチド、及びドロソフィラアンテナペディアタンパク質(Drosophila antennapedia protein)が含まれる。細胞間転移機能は、タンパク質導入領域(PTD;Protein Transduction Domains)と呼ばれる高塩基性アミノ酸残基の短ペプチド類に存在する。例えば、Fawellら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1997年、第91巻、664〜668頁;Elliottら、Cell、1997年、第88巻、223〜233頁;Leifertら、Mol.Ther.、2003年、第8巻、13〜20頁参照。
【0091】
遺伝子材料には、例えば、組換えRNA及びDNA並びにアンチセンスRNA及びDNAを含む、天然又は合成の、核酸、RNA及びDNA;ハンマーヘッド(hammerhead)RNA、リボザイム、ハンマーヘッドリボザイム、抗原核酸(antigene nucleic acids)、一本鎖及び二本鎖RNA及びDNA並びにそれらの類似体、免疫刺激核酸(immunostimulatory nucleic acid)、リボオリゴヌクレオチド、アンチセンスリボオリゴヌクレオチド、デオキシリボオリゴヌクレオチド、及びアンチセンスデオキシリボオリゴヌクレオチド等、が含まれる。使用可能な他のタイプの遺伝子材料には、例えば、プラスミド、ファジミド、コスミド、酵母人工染色体、及び欠陥又は「ヘルパー(helper)」ウイルス等の発現ベクターに運ばれる遺伝子、抗原核酸、並びにホスホロチオエート及びホスホロジチオエートオリゴデオキシヌクレオチド等の一本鎖及び二本鎖RNA及びDNA及びそれらの類似体が含まれる。さらに、遺伝子材料は、例えば、タンパク質又はその他のポリマーと組み合わせてもよい。
【0092】
使用に適した付加的治療薬のさらなる説明は、本明細書において、後にこの「脂質被包性粒子」の欄で詳細に提示される。
【0093】
本明細書において説明するように、脂質被包性粒子は、天然又は化学的に合成された形態の常磁性又は超常磁性成分(限定はされないがガドリニウム、マグネシウム、鉄、マンガンを含む)を該粒子上に組み込んでもよい。同様に、天然又は化学的に合成された形態の放射性核種(陽電子エミッタ、ガンマエミッタ、ベータエミッタ、アルファエミッタを含む)が、該粒子状又は該粒子内に含まれていてもよい。ある例においては、これらの成分の添加により、超音波画像法に加えて、核磁気共鳴画像法、陽電子断層撮影法、核医学画像技術等の他の臨床画像化治療法の付加的な使用が可能となる。
【0094】
さらに、紫外と赤外間のスペクトル範囲の電磁エネルギーを患者の組織又は部位に照射し、該照射の結果として生じる反射、散乱、吸収及び/又は蛍光エネルギーの何れかを分析することによって得られる患者の組織又は部位の可視的表示の作成に関する光学画像法は、標的に向かうエマルションの超音波画像法と組み合わせてもよい。光学画像法の例として、限定はされないが、可視写真術(visible photography)及びその変形、紫外線画像法、赤外線画像法、蛍光測定法、ホログラフィ、可視顕微鏡検査法、蛍光顕微鏡検査法、分光測定法、分光法、蛍光偏光法等が挙げられる。
【0095】
光活性剤、すなわち光に対し活性があるか又は光に対し反応を示す化合物又は材料(例えば、発色団(例えば所定の波長の光を吸収する材料、フルオロフォア(fluorophores)(例えば所定の波長の光を放射する材料)、光増感剤(例えばin vitro及び/又はin vivoにおいて組織壊死及び/又は細胞死を引き起こす材料)、蛍光材料、リン光材料等が含まれる)、は、診断又は治療分野において使用することができる。「光(light)」は、紫外線(UV)波長領域、可視光波長領域及び/又は赤外線(IR)波長領域を含む全ての光源に関する。本発明において使用可能な好適な光活性剤は、他(例えば、米国特許第6,123,923号)に開示されている。使用に適した付加的な光活性剤のさらなる説明は、本明細書において、後にこの「脂質被包性粒子」の欄において詳細に提示される。
【0096】
さらに、例えば、抗体、ペプチドフラグメント(断片)、又は生物学的活性リガンドの擬似体(mimetics)等のあるリガンドは、特異的エピトープに結合したとき、拮抗薬又は作用薬としてその固有の治療効果を発揮してもよい。例えば、新生血管内皮細胞のαβインテグリンに対する抗体は、固体腫瘍の成長及び転移を一時的に阻害することが示されている。αβインテグリンに向けられた治療エマルション粒子の効能は、該粒子自体によって取り込まれて送達される治療薬の効果に加えて、ターゲッティングリガンドの改善された拮抗作用から生じることになる。
【0097】
本明細書の上記説明に加えて、本発明の脂質被包性粒子中のターゲッティングリガンド及び/又は該粒子を備えるターゲッティングリガンドとしての使用に適した種々の抗体について、以下にさらに説明される。
【0098】
二価F(ab’)及び一価F(ab)フラグメントはリガンドとして使用可能であり、これらは、それぞれ、ペプシン又はパパイン消化による全抗体の選択的開裂から誘導される。抗体は、従来技術を用いてフラグメント化することができ、フラグメント(「Fab」フラグメント含む)は、全抗体についての上記記載と同様の方法で有用性についてスクリーニングすることができる。「Fab」領域とは、H鎖又はL鎖の枝部分を有する配列とおおよそ同等、又は類似、であり、特異性抗原と免疫学的に結合することが示されているが、エフェクターFc部分が欠如しているH鎖及びL鎖部分をいう。「Fab」は、指定された抗原又は抗原ファミリーと選択的に反応する能力がある、一つのH鎖及び一つのL鎖(Fab’として一般に知られている)の集合体、並びに2H鎖及び2L鎖(F(ab)として言及される)を含む四量体を含む。抗体のFabフラグメントを製造する方法は、当業者に公知であり、例えば、タンパク質分解、及び組換え技術による合成を含む。例えば、F(ab’)フラグメントは、ペプシンで抗体を処理することによって生成することができる。生じたF(ab’)フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元するよう処理され、Fab’フラグメントを生成することができる。「Fab」抗体は、本明細書において記載したものと類似のサブセット(subsets)、すなわち、「ハイブリッドFab(hybrid Fab)」、「キメラFab(chimeric Fab)」、及び「変性Fab(altered Fab)」、に分類することができる。Fc領域の除去により、分子の免疫原性が大きく減少し、結合した炭水化物に二次的な非特異的肝臓取り込み(nonspecific liver uptake)が減少し、さらに補体活性化(complement activation)及び結果として生じた抗体依存性細胞毒性が低減する。補体固定(complement fixation)及び結合した細胞の細胞毒性は、標的部位が保護されなければならない場合には有害となり、ホストキラー細胞(host killer cell)の増加及び標的細胞の破壊が望まれる(例えば、抗腫瘍剤)場合には有益となる。
【0099】
モノクローナル抗体は、大抵、マウスに由来しており、程度はそれぞれ異なるが他の種に対して本来的に免疫原性である。遺伝子工学技術によるマウス抗体のヒト化により、生体適合性が改善されかつ循環半減期が長いキメラリガンドが開発された。本発明において使用される抗体には、ヒト化したもの、又はこれらの抗体を投与する予定の個体により適合させたものが含まれる。ある場合においては、標的となる分子エピトープに対する組換え抗体の結合親和性は、結合イディオタイプ(binding idiotype)の選択的特定部位突然変異誘発(selective site-directed mutagenesis)によって改善することができる。抗体分子のこのような遺伝子工学の方法及び技術は、当業者に公知である。「ヒト化した(humanized)」とは、ヒトに投与されたときに、抗体及び/又は免疫応答がヒト化抗体に対してほとんど誘導されないような、抗体のアミノ酸配列の変性(alteration)を意味する。ヒト以外の哺乳動物における抗体の使用に関し、抗体は、その種の形式に転換されてもよい。
【0100】
抗体産生動物(antibody-producing animal)を必要とすることなく広範囲の異なる抗原に対する組換えヒトモノクローナル抗体フラグメントを生成するために、ファージディスプレイ技術を使用してもよい。一般に、クローニングにより、ヒトBリンパ球の全メッセンジャーRNA(mRNA)に由来し、酵素「逆転写酵素(reverse transcriptase)」によって合成された対応するDNA(cDNA)鎖の大きな遺伝子ライブラリが作成される。一例として、免疫グロブリンcDNA鎖は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅され、所定の抗原に特異的なL鎖及びH鎖が、ファジミドベクターに導入される。このファジミドベクターの適切なバクテリアへのトランスフェクションにより、scFv免疫グロブリン分子がバクテリオファージの表面に発現する。特定の免疫グロブリンを発現するバクテリオファージは、所望の抗原(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、及び糖)に対し免疫吸着/ファージ増殖サイクルを繰り返すことにより、選択される。ターゲット抗原に厳密に特異的なバクテリオファージが、適切なベクター(例えば、大腸菌、酵母、細胞)に導入され、発酵によって、一般に天然の抗体に極めて類似する構造を有するヒト抗体フラグメントが大量に生成するために増殖される。ファージディスプレイ技術は、当業者に公知であり、これによってターゲッティング及び治療用送達のための特有のリガンドの生産が可能となった。
【0101】
選択した抗原に対するポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、各種のトリ、ウサギ、マウス、又はラット等の種々の温血動物から当業者によって容易に生成することができる。ある場合において、選択した抗原に対するヒトポリクローナル抗体は、ヒト原料(human sources)から精製されてもよい。
【0102】
本明細書おいて使用するように、「単一ドメイン抗体(single domain antibody)」(dAb)は、V領域からなる抗体であり、これは指定した抗原と免疫学的に反応する。dAbは、V領域を含まないが、抗体中に存在することが知られている他の抗原結合領域、例えば、カッパ及びラムダ領域、を含んでもよい。dAbを調製する方法は当業者に公知である。例えば、Wardら、Nature、1989年、第341巻、541−546頁参照。抗体は、V領域及びV領域に加えて他の公知の抗原結合領域から構成されていてもよい。これらのタイプの抗体の例及びそれらの調製方法は当業者に公知である(例えば、米国特許第4,816,467号参照)。
【0103】
別の典型的な抗体として、第二H鎖のFc(すなわち、定常(constant))領域と結合したH鎖/L鎖二量体からなる集合体である、「一価抗体(univalent antibody)」が挙げられる。このタイプの抗体は、一般に、抗原モジュレーションを免れる。例えば、Glennieら、Nature、1982年、第295巻、712−714頁参照。
【0104】
「ハイブリッド抗体(hybrid antibodies)」は、H鎖及びL鎖の一方の対が第一抗体のものと同種(homologous)であるが、H鎖及びL鎖の他方の対が別の第二抗体のものと同種である抗体である。典型的には、これら二つの対のそれぞれは、特に種々の抗原上の、種々のエピトープを結合するであろう。これにより、「二価(divalence)」の特性、すなわち二つの抗原を同時に結合する能力、が生ずる。このようなハイブリッドは、本明細書において説明されるように、キメラ鎖を用いて形成することもできる。
【0105】
本発明は、脊椎動物抗体の天然アミノ酸配列が変化した抗体を意味する「変性抗体(altered antibodies)」も包含する。組換えDNA技術を利用して、抗体は、所望の特性を得るように再設計することができる。可能なバリエーションは、数多くあり、1以上のアミノ酸を変化させることから、領域、例えば定常部位、の完全な再設計までの範囲に及ぶ。可変部位は、抗原結合特性を変化させるように変えられてもよい。抗体は、特定の細胞又は組織部位へのエマルションの特異的送達を促進するように変えられてもよい。所望の変化は、分子生物学における公知の技術、例えば、組換え技術、特定部位の突然変位誘発、及び他の技術、によって行うことができる。
【0106】
「キメラ抗体(chimeric antibodies)」は、H鎖及び/又はL鎖が融合タンパク質である抗体である。典型的には、鎖の定常部位は、ある特定の種及び/又はクラスからのものであり、可変部位は、異なる種及び/又はクラスからのものである。本発明には、キメラ抗体誘導体、すなわち非ヒト動物可変部位とヒト定常部位とを結合する抗体分子、が含まれる。キメラ抗体分子は、例えば、ヒト定常部位を有する、マウス、ラット、又は他の種の抗体からの抗原結合領域を含むことができる。キメラ抗体を作成するための種々のアプローチは、すでに開示されており、標的となる細胞及び/又は組織の表面上の選択した抗原を認識する免疫グロブリン可変部位を包含するキメラ抗体を作成することに使用することができる。例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1985年、第81巻、6851頁;Takedaら、Nature、1985年、第314巻、452頁;米国特許第4,816,567号及び第4,816,397号;欧州特許公報第171496号及び第173494号;英国特許第2177096B号参照。
【0107】
二重特異性抗体(bispecific antibody)は、抗標的部位抗体(anti-target site antibody)の可変部位及び脂質被包性エマルションの表面上の少なくとも一つの抗原に対して特異的な可変部位を包含することができる。他の場合においては、二重特異性抗体は、抗標的部位抗体の可変部位及びリンカー分子に対して特異的な可変部位を包含することができる。二重特異性抗体は、例えば体細胞ハイブリダイゼーション(somatic hybridization)によってハイブリッドハイブリドーマを形成して得ることができる。ハイブリッドハイブリドーマは、Staerzら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1986年、第83巻、1453頁)及びStaerzら(Immunology Today、1986年、第7巻、241頁)に開示された方法のような当業者に公知の方法を用いて調製することができる。体細胞ハイブリダイゼーションには、クアドローマ(quadroma)を生成する二つの株化ハイブリドーマ(established hybridomas)の融合(Milsteinら、Nature、1983年、第305巻、537−540頁)又はトリオーマ(trioma)を生成する第二抗原で免疫性を与えられたマウスから得られるリンパ球と一つの株化ハイブリドーマの融合(Nolanら、Biochem.Biophys.Acta、1990年、第1040巻、1−11頁)が含まれる。ハイブリッドハイブリドーマは、特定の薬剤耐性マーカー(drug resistance marker)に耐性のある各ハイブリドーマ細胞系(cell line)を作成することによって(De Lauら、J.Immunol.Methods、1989年、第117巻、1−8頁)、又は各ハイブリドーマを異なる蛍光色素で標識し、かつヘテロ蛍光細胞(heterofluorescent cell)を分類することによって(Karawajewら、J.Immunol.Methods、1987年、第96巻、265−270頁)選択される。
【0108】
二重特異性抗体は、Staerzら、Nature、1985年、第314巻、628頁及びPerezら、Nature、1985年、第316巻、354頁に記載された方法のような方法を用いる化学的手段によって構築することもできる。化学結合は、例えば、ε−アミノ基又はヒンジ領域チオール基を有するホモ及びヘテロ二官能性試薬の使用に基づいてもよい。5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DNTB)等のホモ二官能性試薬は、二つのFab間にジスルフィド結合を生成し、O−フェニレンジマレイミド(O−PDM)は、二つのFab間にチオエーテル結合を生成する(Brennerら、Cell、1985年、第40巻、183−190頁、Glennieら、J.Immunol、1987年、第139巻、2367−2375頁)。N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)等のヘテロ二官能性試薬は、クラス又はアイソタイプに関わらず、抗体の露出されたアミノ基とFabフラグメントとを結合する(Van Dijkら、Int.J.Cancer、1989年、第44巻、738−743頁)。
【0109】
二官能性抗体は、遺伝子工学技術によって調製することもできる。遺伝子工学は、抗体の特異性フラグメントをプラスミドにコード化し、組換えタンパク質を発現するDNA配列を縛るための、組換えDNAに基づく技術の使用を伴う。二重特異性抗体は、リンカーを用いて二つの単鎖Fv(scFv)フラグメントを結合することによって一重共有結合構造として(Winterら、Nature、1991年、第349巻:293−299頁);転写因子fos及びjunから誘導した配列を同時発現する(coexpressing)ロイシンジッパーとして(Kostelnyら、J.Immunol.、1992年、第148巻:1547−1553頁);p53の相互作用領域を同時発現するらせん−反転−らせん(helix-turn-helix)として(Rheinneckerら、1996年、第157巻、2989−2997頁)、又はダイアボディ(diabodies)として(Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1993年、第90巻:6444−6448頁)作成することもできる。
【0110】
本明細書において他で説明したことに加えて、プライマー材料を、例えば、特異的結合又はターゲッティングリガンドとカップリングさせる際の使用に適したカップリング剤について以下にさらに説明する。付加的カップリング剤は、1−エチル−3−(3−N,N−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド又は1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホネート等のカルボジイミドを使用する。他の好適なカップリング剤には、アクロレイン、メタクロレイン、もしくは2−ブテナール等のエチレン不飽和を有するか、又はグルタルアルデヒド、プロパンジアルもしくはブタンジアル等の複数のアルデヒド基を有するアルデヒドカップリング剤が含まれる。他のカップリング剤には、2−イミノチオランヒドロクロライド(2-iminothiolane hydrochloride);ジスクシンイミジル基質、ジスクシンイミジルタルトレート、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ジスクシンイミジルプロピオナート、エチレングリコールビス(スクシンイミジルサクシネート)等の二官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類;N−(5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、p−アジドフェニルブロマイド、p−アジドフェニルグリオキサル、4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドベンゾアート、m−マレイミドベンゾイル N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、メチル−4−アジドフェニルグリオキサル、4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドベンゾアートヒドロクロライド、p−ニトロフェニル 2−ジアゾ−3,3,3−トリフルオロプロピオネート、N−スクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、N−スクシンイミジル(4−アジドフェニルジチオ)プロピオネート、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、N−(4−アジドフェニルチオ)フタルアミド等のヘテロ二官能性試薬;1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジニトロジフェニルスルホン、4,4’−ジイソチオシアノ−2,2'−ジスルホン酸スチルベン、p−フェニレンジイソチオシアネート、カルボニルビス(L−メチオニン p−ニトロフェニルエステル)、4,4’−ジチオビスフェニルアジド、エリトリトールビスカーボネート等のホモ二官能性試薬;並びにジメチルアジピミデートヒドロクロライド、ジメチルスベリミデート、ジメチル 3,3’−ジチオビスプロピオンイミデートヒドロクロライド等の二官能性イミドエステル等が含まれる。
【0111】
本明細書において他で説明したことに加えて、本発明のナノ粒子上に又はその内部に取り込むことが可能な治療薬について、以下にさらに説明する。一般に、治療薬を脂質可溶性にして、又は脂質における溶解性を高めて、エマルションの脂質層における及び/又は標的細胞の脂質膜における治療薬の保持力を増大するために、治療薬は、脂質アンカーを用いて誘導することができる。そのような治療用エマルションには、限定はされないが、白金化合物(例えば、スピロプラチン、シスプラチン、及びカルボプラチン)、メトトレキサート、フルオロウラシル、アドリアマイシン、マイトマイシン、アンサミトシン(ansamitocin)、ブレオマイシン、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトポリリジン(mercaptopolylysine)、ビンクリスチン、ブスルファン、クロラムブシル、メルファラン(例えば、PAM、L−PAM又はフェニルアラニンマスタード(phenylalanine mustard))、メルカプトプリン(mercaptopurine)、ミトタン、塩酸プロカルバジン ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、タキソール、プリカマイシン(ミトラマイシン)、アミノグルテチミド、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、酢酸ロイプロリド、酢酸メゲストロール、クエン酸タモキシフェン、テストラクトン、トリロスタン、アムサクリン(m−AMSA)、アスパラギナーゼ(L−アスパラギナーゼ)エルウィニア(Erwina)アスパラギナーゼ、インターフェロン α−2a、インターフェロン α−2b、テニポシド(VM−26)、硫酸ビンブラスチン(VLB)、硫酸ビンクリスチン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、メトトレキサート、アドリアマイシン、アラビノシル、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ダカルバジン、並びにエトポシド及び他のビンカアルカロイド類等の有糸分裂阻害剤等の抗腫瘍薬;限定はされないが、放射性ヨウ素、サマリウム、ストロンチウムコバルト、イットリウム等の放射性医薬品;限定はされないが、成長ホルモン、ソマトスタチン、プロラクチン、甲状腺製剤(thyroid)、ステロイド類、アンドロゲン類、プロゲスチン類、エストロゲン類及び抗エストロゲン類等のホルモン類を含む等のタンパク質及び非タンパク質天然物又はこれらの類似体/擬似体(mimetics);限定はされないが、オーラノフィン、メトトレキサート、アザチオプリン、スルファザラジン(sulfazalazine)、レフルノミド(leflunomide)、ヒドロクロロキン、及びエタネルセプト(etanercept)等の抗リウマチ薬を含む鎮痛薬;バクロフェン、ダントロレン、カリソプロドール、ジアゼパム、メタキサロン、シクロベンザプリン、クロルゾキサゾン、チザニジン等の筋弛緩薬;コデイン、フェンタニール、ヒドロモルホン、レアボルファノール(lleavorphanol)、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン等の麻薬性作用薬;ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン(dezocine)、ナルブフェン、ペンタゾシン等の麻薬性作用−拮抗薬;ナルメフェン(nalmefene)及びナロキソン、並びにASA、アセトミノフェン(acetominophen)、トラマドール、又はこれらの組み合わせを含む他の鎮痛薬等の麻薬性拮抗薬;限定はされないが、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナプロキセン、オキサプロキセン(oxaproxen)、ロフェコキシブ、サリサレート(salisalate)、スルジンダク(suldindac)、トルメチン等を含む非ステロイド性抗炎症薬;エトミデート、フェンタニル、ケタミン、メトヘキシタール、プロポフォール、スフェンタニル、及びチオペンタール等の麻酔薬及び鎮静薬;限定はされないが、パンクロニウム、アトラクリウム、シスアトラクリウム、ロクロニウム(rocuronium)、スクシニルコリン、ベルクロニウム(vercuronium)等の神経筋遮断薬;アミノグリコシド類を含む抗菌薬、アンホテリシンB、クロトリマゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ナイスタチン、及びテルビナフィン(terbinafien)を含む抗真菌薬;駆虫薬(anti-helmintics);クロロキン、ドキシサイクリン、メフロキン、プリマキン、キニーネ等の抗マラリア薬;ダプソン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジンアミド、リファブチン(rifabutin)、リファンピン、リファペンチン(rifapentine)を含む抗ミコバクテリア薬;アルベンダゾール、アトバコン(atovaquone)、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メトロニダゾール、ペンタミジン、プラジカンテル、ピランテル、ピリメタミン、チアベンダゾールを含む抗寄生虫薬;アバカビル(abacavir)、ジダノシン、ラミブジン、スタブジン(stavudine)、ザルシタビン、ジドブジン並びにインジナビル(indinavir)及び関連化合物等のプロテアーゼ阻害剤、並びに限定はされないが、シドフォビル(cidofovir)、ホスカネット、及びガンシクロビル等を含む抗CMV剤を含む抗ウイルス薬;アマンタジン(amatadine)、リマンタジン、ザナミビルを含む抗疱疹薬;インターフェロン類、リバビリン、レベトロン(rebetron);カルバペネム類、セファロスポリン類、フルオロキノン類、マクロライド類、ペニシリン類、スルホンアミド類、テトラサイクリン類、及びアズトレオナム、クロラムフェニコール(chloramphenieol)、ホスホマイシン、フラゾリドン、ナリジクス酸、ニトロフラントイン、バンコマイシン等を含む他の抗菌薬;硝酸塩、利尿薬を含む抗高血圧薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬、抗アドレナリン作用薬、抗不整脈薬、抗高脂血薬(antihyperlipidemic agents)、抗血小板化合物、昇圧薬、血栓溶解薬、座瘡製剤(acne preparations)、抗乾癬薬(antipsoriatics);コルチコステロイド類;アンドロゲン類、タンパク同化ステロイド類、ビスホスホネート類;スルホ尿素類(sulfonoureas)及び他の抗糖尿病薬;痛風関連薬;抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、鬱血除去薬、及び去痰薬;制酸薬、5−HT受容体拮抗薬、H2拮抗薬、ビスマス化合物、プロトンポンプ阻害薬、緩下薬、オクトレオチド(octreotide)及びその類似体/擬似体を含む抗潰瘍薬;抗凝血薬;免疫抗原(immunization antigens)、免疫グロビン(immunoglobins)、免疫抑制薬;抗痙攣薬、5−HT受容体作用薬、他の偏頭痛治療薬;抗コリン作用薬、及びドーパミン作用薬を含むパーキンソン症候群薬;エストロゲン類、GnRH作用薬、プロゲスチン類、エストロゲン受容体調節因子(estrogen receptor modulators)、早産防止薬、子宮収縮薬、ヨウ素製品等の甲状腺製剤及び抗甲状腺製剤;非経口鉄(parenteral iron)、ヘミン、ヘマトポルフィリン類及びこれらの誘導体等の血液製剤が含まれる。
【0112】
本明細書において他で説明したことに加えて、本発明のナノ粒子の光学画像法における使用に好適な付加的光活性剤について、以下にさらに説明する。好適な光活性剤には、限定はされないが、例えば、フルオレセイン類、インドシアニングリーン、ローダミン、トリフェニルメチン類(triphenylmethines)、ポリメチン類(polymethines)、シアニン類、フラーレン類、オキサテルラゾール類(oxatellurazoles)、ベルジン類、ロジン類、パーフィセン類(perphycenes)、サプフィリン類(sapphyrins)、ルビリン類(rubyrins)、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート、コレステリル12−(N−メチル−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ドデカネート、コレステリルシス−パリナレート(cholesteryl cis-parinarate)、コレステリル3−((6−フェニル)−1,3,5−ヘキサトリエニル)フェニル−プロピオネート、コレステリル1−ピレンブチレート(pyrenebutyrate)、コレステリル−1−ピレンドデカノエート、コレステリル1−ピレンヘキサノエート、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル(bisnor)−5−コレン(cholen)−3β−オール、22−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)−23,24−ビスノル−5−コレン−3β−イル シス−9−オクタデセノエート(octadecenoate)、1−ピレンメチル3−ヒドロキシ−22,23−ビスノル−5−コレネート(cholenate)、1−ピレン−メチル3β−(シス−9−オクタデセノイロキシ(octadecenoyloxy))−22,23−ビスノル−5−コレネート、アクリジンオレンジ10−ドデシルブロマイド、アクリジンオレンジ10−ノニルブロマイド、4−(N,N−ジメチル−N−テトラデシルアンモニウム)−メチル−7−ヒドロキシクマリン)クロライド、5−ドデカノイルアミノフルオレセイン、5−ドデカノイルアミノフルオレセイン−ビス−4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエーテル、2−ドデシルレゾルフィン(dodecylresorufin)、フルオレセインオクタデシルエステル、4−ヘプタデシル−7−ヒドロキシクマリン、5−ヘキサデカノイルアミノエオシン、5−ヘキサデカノイルアミノフルオレセイン、5−オクタデカノイルアミノフルオレセイン、N−オクタデシル−N’−(5−(フルオレセイニル))チオ尿素、オクタデシルローダミンBクロライド、2−(3−(ジフェニルヘキサトリエニル)−プロパノイル)−1−ヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、6−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾル−4−イル)アミノ)ヘキサン酸、1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−インドカルボシアニンパークロレート、12−(9−アントロイロキシ(anthroyloxy))オレイン酸、5−ブチル−4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ノナン酸、N−(リサミン(LissaminTM)ローダミンBスルホニル)−1,2−ジヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩、フェニルグリオキサル一水和物、ナフタレン−2,3−ジカルボキサルデヒド(dicarboxaldehyde)、8−ブロモメチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン、o−フタルジアルデヒド、リサミン(LissaminTM)ローダミンBスルホニルクロライド、2’,7’−ジフルオロフルオレセイン、9−アントロニトリル(anthronitrile)、1−ピレンスルホニルクロライド、4−(4−(ジヘキサデシルアミノ)−スチリル)−N−メチルピリジニウムヨー化物、クロリン類(例えば、クロリン、クロリンe6、ボネリン(bonellin)、モノ−L−アスパルチルクロリンe6、メソクロリン、メソテトラフェニルイソバクテリオクロリン、及びメソテトラフェニルバクテリオクロリン)、ハイポクレリン(hypocrellin)B、プルプリン類(例えば、オクタエチルプルプリン、エチオプルプリン亜鉛(II)、エチオプルプリンスズ(IV)及びエチルエチオプルプリンスズ)、テキサフィリンルテチウム、(lutetium texaphyrin)フォトフリン(photofrin)、メタロポルフィリン、プロトポルフィリンIX、プロトポルフィリンスズ、ベンゾポルフィリン、ヘマトポルフィリン、フタロシアニン類、ナフトシアニン類、メロシアニン類(merocyanines)、ランタニド錯体、フタロシアニンケイ素、フタロシアニン亜鉛、フタロシアニンアルミニウム、オクタブチオキシフタロシアニンゲルマニウム類、メチルフェオホルビド(pheophorbide)−α−(ヘキシル−エーテル)、ポルフィセン類(porphycenes)、ケトクロリン類(ketochlorins)、スルホン化テトラフェニルポルフィリン類、δ−アミノレブリン酸、テキサフィリン類(texaphyrins)(例えば、1,2−ジニトロ−4−ヒドロキシ−5−メトキシベンゼン、1,2−ジニトロ−4−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−5−メトキシベンゼン、4−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−5−メトキシ−1,2−フェニレンジアミン、及びテキサフィリン金属キレート類(金属類Y(III)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)及びランタニド金属類Gd(III)、Dy(III)、Eu(III)、La(III)、Lu(III)及びTb(III)を含む)を含む)、クロロフィル、カロチノイド類、フラボノイド類、ビリン類、フィトクロム類、フィコビリン類、フィコエリトリン類、フィコシアニン類、レチノイン酸類、レチノイン類、レチネート類(retinates)、又は上記光活性剤の任意の組み合わせが含まれる。
【0113】
当業者によれば、上記化合物のうちどの化合物が、例えば、蛍光材料及び/又は光増感剤であるかは、容易に理解するであろうし、又は容易に判断することができる。リサミン(LISSAMINE)は、N−エチル−N-[4−[[4−[エチル[(3−スルホフェニル)メチル]アミノ]フェニル](4−スルホフェニル−l)−メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホベンゼン−メタナミニウム(methanaminium)ヒドロキサイド、内部塩(inner salt)、二ナトリウム塩(disodium salt)及び/又はエチル[4[p[エチル(m−スルホベンジル)アミノ]−α−(p−スルホフェニル)ベンジリデン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン](m−スルホベンジル)アンモニウムヒドロキサイド 内部塩 二ナトリウム塩(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン、から市販されている)に対する商標である。本発明の使用に好適な他の光活性剤には、米国特許第4,935,498号に記載されているもの、例えば、4,5,9,24−テトラエチル−16−(1−ヒドロキシヘキシル)オキシ−17−メトキシペンタアザペンタシクロ−(20.2.1.1,6.1,11.014,19)−ヘプタコサ(heptacosa)−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエンのジスプロシウム錯体及び2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピル−6−(4,5,9,24−テトラエチル−17−メトキシペンタアザペンタシクロ−(20.2.1.1,6.1,11.014,19)−ヘプタコサ−1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18,20,22(25),23−トリデカエン−16−(1−オキシ)ヘキシルホスホラミダイト(hexylphosphoramidite)のジスプロシウム錯体、が含まれる。
【0114】
(脂質被包性粒子の調製方法)
本発明の脂質被包性粒子は、種々の技術によって調製することができる。典型的には、脂質被包性粒子の脂質膜は、限定はされないが音波処理(sonication)、押し出し(extrusion)、又は脂質−界面活性剤(洗浄剤)複合体からの界面活性剤の除去を含む、当業者に公知の任意の方法によって、リン脂質類、糖脂質類、脂質類、コレステロール等のステロイド類、関連分子、又はこれらの組み合わせから人工的に作成される。例えば、ペルフルオロカーボン基材ナノ粒子を調製する典型的な方法においては、ペルフルオロカーボン及び脂質/界面活性剤被膜の成分を流動化させて、エマルションを形成する。表面層の官能成分は、エマルションに最初から含まれていてもよく、又はナノ粒子エマルションの形成後に表面層に共有結合的にカップリングされてもよい。例えば、核酸ターゲッティング剤又は治療薬が含まれるようなある特定の例においては、被膜には、カチオン性界面活性剤及び該粒子形成後に表面に吸着される核酸を使用することができる。
【0115】
一般的に、乳化工程は、水溶液、プライマー材料又は特異的結合種、油、例えばペルフルオロカーボン、及び(もしあれば)界面活性剤を含有する混合物の高圧流を制御して、これらを互いに衝突させて、小さい粒径及び狭い粒径分布のエマルションを作製することを必要とする。好ましいエマルションを作成するために、MICROFLUIDIZER装置(Microfluidics社、マサチューセッツ州ニュートン)を使用することができる。この装置は、音波処理又は他の従来の方法によって作成されるエマルションを後処理することにも有用である。MICROFLUIDIZER装置を通じてエマルション小滴の流れを供給することにより、径が小さく、かつ狭い粒径分布の製剤が得られる。
【0116】
エマルションを作成する別の方法は、油、例えばペルフルオロカーボン、と好適なプライマー材料及び/又は特異的結合種を含有する水溶液との混合物を音波処理することを含む。一般に、これらの混合物には、界面活性剤が含まれる。乳化されている混合物を冷却し、界面活性剤の濃度を最小限にし、そして塩水緩衝液(saline buffer)で緩衝させることにより、典型的には、特異的結合特性の保持も、プライマー材料のカップリング能力も最大化されるだろう。これらの技術により、吸着(吸収)されたプライマー材料又は特異的結合種の単位当りの活性が高い優れたエマルションが提供される。
【0117】
リン脂質類は、卵もしくは大豆のホスファチジルコリン、脳のホスファチジン酸、脳もしくは植物のホスファチジルイノシトール、心臓のカルジオリピン、又は植物もしくは細菌のホスファチジルエタノールアミン等の自然物から得ることができる。本発明の被包組成物に使用するリン脂質類は、化学薬品供給業者から購入するか、又は当業者に公知の技術を使用して合成する。
【0118】
高濃度のプライマー材料又は標的結合種が脂質エマルションに被膜されたら、該混合物は、一般的に、音波処理の間加熱され、比較的低いイオン強度及び中程度から低いpHを有するようにする。イオン強度が低く過ぎたり、pHが低く過ぎたり又は加熱し過ぎたりすると、特異的結合種の有用な結合特性又はプライマー材料のカップリング能力がいくらか低下するか、又はそのすべてが喪失することになる。乳化条件を注意深く制御及び変化させることにより、プライマー材料又は特異的結合種の特性を最適化しながら、高濃度の被膜を得ることができる。
【0119】
エマルションの粒径は、乳化技術及び化学成分の変更によって制御及び変化させることができる。粒径を測定する技術及び装置は、当業者に公知であり、これには、限定はされないが、レーザ光散乱(laser light scattering)及び粒子によりレーザ光散乱を測定する分析器が含まれる。
【0120】
ある場合においては、脂質被包性粒子は、典型的には、治療薬、ターゲッティングリガンド、及び/又は放射性核種の数百又は数千の分子を含有する。一粒子当たりのターゲッティング剤の数は、典型的には、数百のオーダーであるが、該粒子は、治療薬、フルオロフォア、及び/又は放射性核種を、濃度を変化させて含有することもできる。
【0121】
送達のための生物学的活性材料の含有に加えて、放射性核種の含有により、本発明の粒子及び方法は、放射線治療又は画像診断にさらに有用になる。ある場合には、該粒子自体が超音波造影剤として特に有用であるので、該粒子に補助的な薬剤を含有させる必要がない。他の画像化剤には、フルオレセイン又はダンシル等のフルオロフォアが含まれる。このような多数の活性を含有させることができるので、活性物質が標的組織に送達されると同時に、標的組織の画像を得ることができる。
【0122】
リポソームの調製方法は当業者に公知である。脂質小胞(lipid vesicles)は、当業者に公知の好適な任意の技術によって調製することができる。方法としては、限定はされないが、微小被包化(microencapsulation)、微小流動化(microfluidization)、LLC法、エタノール注入、フレオン(freon)注入、界面活性剤分離(detergent dialysis)、水和、音波処理、及び逆相蒸発(reverse-phase evaporation)が挙げられる。例えば、Watweら、Curr.Sci.、1995年、第68巻、715−724頁参照。最も好ましい性質を有する小胞を提供するためには、技術(複数)が組み合わされる。一般的に、リポソームの大きさは選択した方法に依存する。方法の選択に依存して、得られるリポソームは、水性材料を閉じ込め、かつ空間−脂質比(space-to-lipid ratios)が異なる様々な能力を有するであろう。
【0123】
例えば、リポソームは、リン脂質と、有機溶媒中においてリポソーム構造の一部を形成する他の成分とを混合し、溶媒を蒸発除去し、水性溶媒中に再懸濁させ、最後に脂質/リン脂質組成物を凍結乾燥する(lyophilizing)ことによって調製することができる。その後、凍結乾燥された組成物は、被包される物質を含有する緩衝液において元に戻される(再形成される)。
【0124】
別の方法においては、リポソームは、リポソームの予想される懸濁液より10倍大きい体積を有するガラス製洋ナシ形フラスコ等の容器に、使用予定の脂質を所望の割合で混合することによって調製される。溶媒は、ロータリエバポレータを使用して、負圧下約40℃で除去される。組成物は、真空デシケータ内でさらに乾燥させることができ、約1週間は安定である。乾燥させた脂質は、すべての脂質膜がガラスから離れるまで振ることによって、滅菌の、発熱物質(pyrogen)の無い水中で約30mMのリン脂質に再びに戻す(再形成する)ことができる。それから、水性リポソームは、複数部分(aliquots)に分離され、凍結乾燥され、そして真空下でシールされる。
【0125】
あるいは、リポソームは、Banghamら、J.Mol.Biol.、1965年、第13巻、238−252頁、 G.Gregoriadis編、Drug Carriers in Biology and Medicine、1979年、287−341頁; Szokaら、Proc Natl Acad Sci USA、1978年、第75巻、4194‐4198頁に記載の方法によって調製することができる。
【0126】
循環寿命を向上させるために、ポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)等の、表面を安定化する親水性ポリマー−脂質結合(conjugates)を有するリポソームを調製することもできる。キャリア(carrier)の循環寿命を延ばすために、ホスファチジルグリセロール(PG)及びホスファチジルイノシトール(PI)等の負帯電脂質の取り込みをリポソーム製剤に追加してもよい。これらの脂質は、表面安定化剤として親水性ポリマー脂質結合の代わりに使用してもよい。本発明の実施形態においては、凝集を防止することによって複合体の血液滞留時間(blood residence time)を延ばすために、PG又はPIを含有する無コレステロールリポソームを使用してもよい。
【0127】
安定化剤は、凍結乾燥した脂質混合物の製剤に適切な割合の安定化剤を添加するか、又は再形成緩衝液(reconstitution buffer)に安定化剤を添加することによって、組成物に含有させることができる。安定化剤は、単一の界面活性剤として添加することができ、又は、当然に、適切な界面活性剤(複数)の混合物として添加することもできる。安定化剤は、適切な物理的特性を有する非イオン性界面活性剤であってもよい。特に、非イオン性界面活性剤は、リポソームの完全性(integrity)に悪影響を及ぼさず、かつ標的細胞と結合するターゲッティングリガンドの能力を変性しない、あるいは阻害しない温度で溶解可能でなければならない。例えば、界面活性剤は、生物学的に適当な温度で溶解可能でなければならない。
【0128】
当初のリン脂質/脂質混合物に含有される安定化剤の割合又は再形成緩衝液中の安定化剤濃度は、被包される物質の性質に依存するであろうし、通常の実験を使用して最適化することができる。ある実施形態においては、安定化剤は、リポソームの脂質混合物に対して約0.2〜5mol%で存在するであろう。
【0129】
本発明は、標的への治療薬の送達に使用する治療薬を充填した、ターゲッティングリガンドを保持する脂質被包性粒子に関する。本発明において使用するように、用語「充填(付加)(loading)」は、脂質被包性粒子内に又は上に、少なくとも1つの治療薬を導入することをいう。ある実施形態においては、薬剤は、脂質被包性粒子の中に内在化されることによって充填される。別の実施形態においては、薬剤は、脂質被包性粒子の表面上にカップリングされることによって、及び/又は脂質被包性粒子を被膜する脂質に埋め込まれることによって充填される。脂質被包性粒子への二以上の薬剤の充填は、薬剤が個別に(次々と)充填されるように行ってもよいし、又は合わせて(一斉に又は同時に)充填されるように行ってもよい。ターゲッティングリガンドが脂質被包性粒子の表面とカップリングする前に、間に及び/又は後で、充填を実施することができる。充填は、ターゲッティングリガンドを脂質被包性粒子の表面にカップリングする手順とは別の手順で行うことができ、又は、ある場合においては、これらの手順を同時に行うことができる。薬剤は、脂質被包性粒子と接触させたときに初めて混合してもよいし、接触前に混合してもよい。
【0130】
充填は、当業者に公知の手順によって行うことができ、使用される特別の技術は、脂質被包性粒子及び薬剤の性質に依存する。例えば、薬剤は、受動的方法と能動的方法の両方を使用してリポソーム中に充填してもよい。当業者は、脂質被包性粒子への関心のある薬剤の充填を容易するために、方法(複数)の組み合わせを使用してもよいことを、認識するであろう。同様に、二以上の薬剤、例えば第1及び第2薬剤、を充填するときに、第1及び第2薬剤を、脂質被包性粒子に同時に充填してもよいし、又は連続して、任意の順序で、充填してもよいことも認識するであろう。
【0131】
リポソームに薬剤を充填する受動的方法は、リポソームを調製する間に薬剤を被包することを伴う。この方法においては、薬剤は、膜と連結されてもよいし、又は閉じ込められた水の空間内に被包されてもよい。これには、関心のある薬剤を含有する水相を、反応容器の壁に付着した乾燥小胞形成脂質(dried vesicle-forming lipids)の膜と接触させる、Banghamら、J.Mol.Biol.、1965年、第12巻、238頁に記載された受動的閉じ込め方法が含まれる。機械的手段による撹拌により、脂質の膨張(swelling)が起こり、多重膜小胞(MLV;multilamellar vesicles)が形成されるだろう。押出(extrusion)を使用して、MLVは、大きな一枚膜小胞(LUV;large unilamellar vesicles)又は小さな一枚膜小胞(SUV;small unilamellar vesicles)に変換することができる。使用可能な受動的充填の別の方法には、Deamerら、Biochim.Biophys.Acta、1976年、第443巻、629頁に記載された方法が含まれる。この方法は、小胞形成脂質をエーテル中に溶解することを含み、この方法によれば、最初にエーテルを蒸発させて表面に薄膜を形成し、その後この被膜を、被包される水相に接触させるのではなく、エーテル溶液を該水相に直接注入し、その後エーテルを蒸発させることによって、薬剤を被包したリポソームが得られる。使用可能なさらに別の方法は、Szokaら、P.N.A.S.、1978年、第75巻、4194頁に記載された逆相蒸発(REV;Reverse Phase Evaporation)方法であり、この方法においては、非水溶性有機溶媒の脂質溶液が水性キャリア相(aqueous carrier phase)に乳化され、続いて有機溶媒が減圧下で除去される。
【0132】
使用可能な受動的閉じ込めの他の方法には、リポソームに連続的な脱水及び再含水処理、又は凍結(凝固)及び解凍(融解)を施すことが含まれる。脱水は、蒸発又は凍結乾燥によって実施される。例えば、Gregoriadisら、Vaccine、1987年、第5巻、145−151頁;Kirbyら、Biotechnology、1984年、979−984頁参照。また、音波処理によって調製されるリポソームは、水溶液において、被包される溶質と混合され、該混合物は、回転フラスコ中、窒素下で乾燥される。脱水により、溶質の重要な画分(fraction)が被包された大きなリポソームが作製される。Shewら、Biochim.et Biophys.Acta、第816巻、1−8頁参照。
【0133】
2以上の治療薬の受動的被包化は、薬剤の多くの組み合わせが可能である。このアプローチは、水性緩衝溶液における薬剤の溶解性及び送達システム内において閉じ込められない薬剤の大きな比率によって限定される。充填は、薬物を脂質試料と共に凍結乾燥し、薬物の可溶化を可能にする最小限の体積中で再含水することによって改善することができる。溶解性は、緩衝液のpHを変化させることによって、温度を上げることによって、又は緩衝液に塩類を付加もしくは緩衝液から塩類を除去することによって改善することができる。
【0134】
充填の能動的方法も使用することができる。例えば、リポソームは、金属錯体化又はpH勾配充填技術により充填することができる。pH勾配充填を用いると、選択したpHの水相を被包するリポソームが形成される。含水したリポソームは、被包される薬剤上の電荷を取り除くか又は最小にするために、選択された異なるpHの水性環境におかれる。ひとたび薬剤がリポソーム内部に移動すると、内部のpHは、薬剤が脂質二分子層に浸透することを防止する帯電薬剤状態(charged agent state)となり、これによりリポソーム内に薬剤が閉じ込められる。
【0135】
pH勾配を作成するために、最初の外相(external midium)は、異なるプロトン濃度を有する新たな外相と置換することができる。外相の置換は、種々の技術によって、例えば、新たな相と平衡に達しているゲル濾過カラム、例えばSephadex G−50カラム、に脂質小胞調剤を通すことによって、又は遠心分離、透析もしくは関連技術によって、達成することができる。内相(internal medium)は、外相に対して酸性でも塩基性でもよい。
【0136】
pH勾配の確立後、pH勾配充填可能薬剤(pH gradient loadable agent)は混合物に添加され、リポソームへの薬剤の被包化が上記のように生ずる。pH勾配を使用する充填は、参照することによって本明細書に援用される米国特許第5,616,341号、第5,736,155号、及び5,785,987号に記載された方法にしたがって実施することができる。リポソームをまたがるpH勾配を確立及び維持するために当業者に公知の種々の方法を使用することができる。例えば、米国特許第5,837,282号、5,785,987号、及び5,939,096号参照。
【0137】
2以上の薬剤は、同一の能動的充填方法を使用してリポソームに充填してもよいし、又は異なる能動的充填方法の使用を伴ってもよい。例えば、金属錯体化充填は、複数の薬剤を能動的に充填するために利用してもよいし、又はpH勾配充填等の別の能動的充填技術と連結してもよい。金属に基づく能動的充填は、典型的には、(受動的に充填された治療薬を有する又は有しない)受動的に被包された金属イオンを有するリポソームを使用する。金属イオンの種々の塩類が使用され、塩は薬学的に水溶液に受容可能及び溶解可能であると考えられる。能動的に充填される薬剤は、金属イオンと錯体を形成することが可能であり、これによりリポソーム内で錯体化したときに保持されることが可能であること、さらには金属イオンと錯体化しないときにリポソームに充填可能であることに基づいて選択される。金属イオンと配位結合することが可能な薬剤は、典型的には、アミン類、カルボニル基類、エーテル類、ケトン類、アシル基類、アセチレン類、オレフィン類、チオール類、ヒドロキシルもしくはハロゲン基類、又は金属イオンに電子を供与可能であり、これにより金属イオンと錯体を形成することが可能な他の好適な基等の配位部位を備える。薬剤の取り込みは、外相に薬剤を添加した後、好適な温度に混合物をインキュベート(環境維持)することによって確立してもよい。リポソームの組成、内相の温度及びpH、並びに薬剤の化学的性質に依存して、薬剤の取り込みは、数分又は数時間をかけて行われる。リポソーム内で薬剤と金属間に配位が生ずるかどうかを測定する方法には、分光測光分析及び当業者に周知の他の従来技術が含まれる。
【0138】
さらに、リポソームにイオン透過担体(ionophore)がないときに実施される、金属を基礎とする方法を使用するリポソームの充填効率及び保持特性は、使用される金属及びリポソームの脂質組成に依存する。脂質組成及び金属を選択することによって、充填又は保持特性は、リポソームへの選択された薬剤の所望の充填又はリポソームからの選択された薬剤の所望の放出を達成するように調整することができる。
【0139】
本明細書において使用されるように、「個体(individual)」は、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類には、限定はされないが、ヒト、畜産動物、スポーツ動物(sport animals)、げっ歯動物及び愛玩動物が含まれる。
【0140】
本明細書において使用されるように、物質の「効果的な量(effective amount)」又は「十分な量(sufficient amount)」とは、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るのに十分な量のことであり、それ自体としては、「効果的な量」は、それが適用されている文脈に依存する。効果的な量は、1以上の投与で投与することができる。
【0141】
本明細書において使用されるように、単数形には、他の指示がない限り、複数形表示も含まれる。例えば、標的細胞には、1以上の標的細胞が含まれる。
【0142】
以下の実施例は、本発明を実例で説明するために提示されているものであり、本発明を限定するものではない。
【0143】
以下の実施例は、薬剤の細胞内送達を改善するための超音波方法の使用を説明する。インテグリンαβを発現している細胞を標的とする例示のPFCナノ粒子と共に臨床レベルの超音波エネルギーを使用すると、これらの結果は、超音波的に増強された非キャビテーション薬物送達について、このようなナノ粒子の使用可能性を支持する。
【実施例1】
【0144】
αβを標的とするリガンドと複合化したナノ粒子を、培養中にαβを発現するC32メラノーマ細胞と共にインキュベートした。また、αβへのターゲッティングリガンドを有しない対照ナノ粒子もC32メラノーマ細胞と共にインキュベートした。ナノ粒子は、粒子及び細胞の共焦点顕微鏡画像のために、界面活性剤層に組み込んだフルオレセイン結合リン脂質を含有した。
【0145】
培養中の細胞に超音波付与するための広帯域(2〜3.5MHz、3Va2)整相列トランスデューサ(phased-array transducer)と共に臨床医学画像装置(Acuson Sequoia)を使用した。改良した組織培養皿に横から30°の角度(図1A)でトランスデューサを当てた。改良組織培養皿に関しては、組織培養皿(ポリメチルペンテン、Nalge)に穴を開け、耐水シーラントを使用して該培養皿の底面にカバーガラス(Thermanox、Nunc)を固定した。実験条件にさらす前の付着を考慮して、37℃で2日間、カバーガラス上で細胞を成長させた。細胞に超音波を連結するために使用する2%アガロースディスクを該培養皿に合うように作成し、カバーガラス上のアガロースから芯穴をくり抜いた。実験条件にさらす前の付着を考慮して、37℃で2日間、カバーガラス上で細胞を成長させた。
【0146】
較正レベル(calibrated levels)の超音波エネルギー(機械的指数(MI;mechanical index):1.9;照射時間:5分;2〜3MHz整相列トランスデューサ:Acuson 3Va2)を照射する間、細胞相互作用の同時顕微鏡視覚化を可能にする倒立位相差顕微鏡(Nikon Diaphot 300)上で実験を行った。処置グループ間の違いは、統計解析システム(SAS;Statistical Analysis System、Cary、NC)による分散分析(ANOVA;analysis of variance)を使用して有意性について評価した。p値0.05は、統計的に有意であると考えた。
【0147】
細胞とナノ粒子の結合は、ガスクロマトグラフィを使用してペルフルオロカーボン(PFC;perfluorocarbon)コアの存在を分析することによって定量した。ガスクロマトグラフィ(Agilent、6890 Series)によって測定したPFC含有量は、細胞への粒子送達量を測定するためのトレーサとして使用した。処置後の蛍光画像化(fluorescent imaging)は、フルオレセインフィルタセットを使用して、共焦点顕微鏡(BioRad MRC1024)で行った。処置後すぐ(1時間以内)及び24時間の生存性をトリパンブルー排除(trypan blue exclusion)によって測定した。各条件(対照、超音波のみ、ナノ粒子のみ、及びナノ粒子と超音波)におけるトリパンブルー陽性細胞の割合を使用して、細胞生存(cell survival)を算出した。処置(isonification)後1時間以内では、細胞生存力(cell viability)は、各条件の細胞について98%を超えていた。処置後(treatment)24時間では、細胞生存力は、処置細胞及び未処置細胞共に約90%であった。したがって、粒子も使用されるエネルギーも細胞生存力に影響を及ぼさなかった。
【0148】
細胞とナノ粒子の結合及び超音波付与後、標的(αβ)細胞のPFC含有量について2倍を超える増加を超音波無しよりも超音波有りで観測した。図2に示すように、超音波無しではPFC2.10+/−0.20マイクログラム(p<0.005)であるのに対し、超音波有りではPFC4.79+/−0.66マイクログラムであった。標的に向かわない対照ナノ粒子においても、超音波照射により、細胞内のPFC沈着が増大したが、全体的レベルは実質的には少なかった。
【0149】
共焦点顕微鏡で画像化された、界面活性剤層に取り込まれた蛍光脂質を使用して、ナノ粒子の脂質単分子層から細胞へ送達される脂質の相対量を測定した。この技術は、C32細胞に生ずる脂質送達の直接的視覚化を可能にした。図3に示すように、全細胞において蛍光シグナルを本質的に飽和させたので、脂質交換の劇的増加が、細胞に結合した標的粒子の音波処理(insonification)後に生じた。この場合、超音波処置細胞について、顕微鏡の絞りは、超音波処置無し細胞の画像化に使用する絞り直径に比べて、その直径を1/3未満まで閉じた。画像のデジタル処理に使用するCCDカメラに影響する強度は、光の通過を可能にする絞り面積に比例するので、この結果は、未処置細胞の少なくとも10倍となる、超音波処置後の増強された蛍光脂質交換による蛍光強度の潜在的な増加を強く示唆している。特別の理論に拘束されることなく、測定したPFC含有量の増加に比例する蛍光強度の大幅な増加は、超音波付与により増強された優位な相互作用が、エンドソームの画分(endosomal compartments)における完全な粒子取り込み(intact particle uptake)よりむしろ脂質交換及び/又は脂質小胞融合であることを示唆している。さらに、細胞内における標識化した脂質の分布は、画分されておらず(すなわち、それは細胞膜及び細胞質中に広く分布されている)、完全な粒子取り込みよりも脂質交換メカニズムを示している。
【0150】
ビデオ濃度データ(videodensitometric data)は、ナノ粒子が超音波照射によって破壊されなかったことを示し、入射音響場(incident acoustic field)に関するナノ粒子の配列は、音響放射力(1次及び2次)がナノ粒子に影響することをもっぱら示し、増強された送達に関与物(participants)としてこれらの力に関係する(例えば、図1B参照)。一次放射力により、波源から離れるように向いた方向に沿った粒子運動が生じ、二次放射力により、相対的配向が入射波に対して平行である粒子間の斥力及び相対的配向が入射波に対して垂直である粒子間の引力が生じる(Daytonら、Supra、1999年;Weiserら、Acustica、1984年、第56巻、114〜119頁)。各処置タイプについての細胞生存力の分析は、超音波及び/又はナノ粒子による検知可能な悪影響が無かったことを明らかにし、破壊的かもしれないキャビテーション手段によるよりも接触介在メカニズム(contact-mediated mechanisms)によって増強がなされることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1Aは、整相列トランスデューサ、倒立顕微鏡、及び細胞相互作用の視覚化と同時の超音波付与を可能にする特注の標本保持器からなるin vitro装置を示す。図1Bは、放射力の結果として、超音波伝播の方向(矢印参照)に垂直に整列した粒子の画像(2MHz、1.9機械的指数(MI))である。
【図2】通常の及び超音波で増加させた状態(n=12、+/−SEM、*p=0.01、**p=0.003、ANOVA)において、対照又はαβ標的ナノ粒子用のC32メラノーマ細胞と結合したペルフルオロカーボン量を示す棒グラフである。
【図3】上図は、超音波活性化なしで、C32細胞上のαβインテグリンを標的とするフルオレセイン標識ナノ粒子の画像である。細胞膜の着色は、緩やかな脂質送達が生じたことを示している。下図は、超音波活性化有りで、C32細胞上のαβインテグリンを標的とするフルオレセイン標識ナノ粒子の画像である。超音波活性化による脂質送達の顕著な増加に注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的に治療薬を送達する改善された方法であって、
治療薬を含有する非ガス状脂質被包性粒子に、標的への前記治療薬の送達を増強する周波数及び機械的指数の超音波エネルギーを付与する工程を含み、
前記粒子は前記標的に位置しており、
前記粒子を被包している脂質は、前記送達の間に崩壊されないことを特徴とする治療薬の送達方法。
【請求項2】
前記粒子は、少なくとも1つのフルオロカーボンを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロカーボンは、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロオクチルブロマイド、又はペルフルオロジクロロオクタンであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ターゲッティングリガンドは、ポリペプチド、ペプチド擬似体(peptidomimetic)、多糖、脂質又は核酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、抗体の少なくとも一部であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標的は、哺乳類の被検体に存在していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記被検体はヒトであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
病気ないし健康状態について前記被検体を診断し、
前記病気ないし健康状態に適切な前記治療薬を選択することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記粒子は、ターゲッティングリガンドとカップリングすることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−511616(P2007−511616A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541595(P2006−541595)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/039095
【国際公開番号】WO2005/051305
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503271970)バーンズ−ジューイッシュ ホスピタル (4)
【Fターム(参考)】