説明

壁状地盤改良体

【目的】地盤中に地中壁構造で造成され、平面視、周囲が矩形等で、複数のコーナを有して連続して造成されてなる壁状地盤改良体で、液状化現象の発生に対しても、壁状地盤改良体における平面視、周囲をなす地中壁のコーナにおける損傷が発生し難い、強固な壁状地盤改良体を得る。
【解決手段】地中壁110の周囲における要所をなす複数のコーナ121,123の平面視、内側に、そのコーナをなす地中壁110の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁110の壁厚より厚くなるよう造成されたコーナ補強部位131を設けた。これにより、コーナ補強部位131を設けた地中壁のコーナの強度アップが図られるので、液状化現象が発生してもそのコーナにおける損傷の発生を防止で、壁状地盤改良体全体の強度アップが図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤等の地盤改良に関し、詳しくは、地震時に液状化現象の発生する可能性が高い地盤などの軟弱地盤において、建物や構造物を建設するに際して実施される地盤改良に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やビル等の建物や構造物(以下、建築物)を建設するに当っては、その耐震性能上、建築物自体の耐震強度(性能)と共に、それを建てる地盤の強化(補強)が極めて重要である。このため、軟弱地盤においては、基礎工事の前にその基礎を支持すべき地盤の少なくとも要所には、建築物を安定して支持するため、そこを強度化する地盤改良工事が行われる。通常、地盤改良工事は、軟弱地盤のうち、平面視、建築物の柱などの建築物支持体が位置する基礎部位や、建築物の壁(又は地中梁)が連なる部位など、建築物を支持すべき部位において行われる。一方、砂地盤で地下水位が高く締りが緩い地盤で行われる地盤改良工事においては、地震時における液状化(過剰間隙水圧の発生)対策が極めて重要である。
【0003】
液状化対策に有効な地盤改良例としては、平面視、設計上の建築物の柱を含む壁等に沿って、壁状に地盤改良を行うことが挙げられる。すなわち、地盤中に地中壁を形成し、これを連ねるようにして壁状地盤改良体(以下、地盤改良体又は単に改良体とも言う)を造成するというものである。このような壁状地盤改良体においては、その地中壁にて当該地盤を囲い込むように造成されることになる。また、建築物の規模に応じてこの壁状地盤改良体(地中壁)が囲い込む内側に、平面視、格子状の配置で、さらに壁状地盤改良体(格子壁状地盤改良体)を造成することも行われる(特許文献1)。このように地盤中に地中壁を形成して連ねた壁状地盤改良体を形成することで、その改良体が地盤(地中の土砂)と接する表面積を増やし、これによって揺れに対する抵抗力を増大させるというものである。また、改良体の要所に、鉛直支持力を高めてその沈下を抑制するよう、延長した地盤改良延伸体を造成する提案もなされている(特許文献2)。
【0004】
ところで、上記のような壁状地盤改良体では、内側に格子壁状地盤改良体を形成したものも含め、周囲の地中壁にて、その内側に地盤(建築物直下の地盤)を閉じ込め、或いは包囲した形となる。このため、その内側の地盤(土砂)は動きにくい。また、これには水平方向のせん断力も作用し難くいので、液状化現象が発生し難いとされている。さらに、壁状地盤改良体に加えて、改良体の要所(建築物の柱の部位)に、鉛直支持力を高めるように延長した地盤改良延伸体を造成した場合には、さらに大きな抵抗力が得られるため、液状化に起因する沈下防止に有効とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−59719号公報
【特許文献2】特開2007−285047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記したような壁状地盤改良体の上に建てられた建築物においても、地震時の液状化により、傾斜や倒壊、或いは沈下等の被害が発生しているのが実情である。上記したような壁状地盤改良体は、その内側においては液状化現象は発生しにくいが、その外側では、地盤(土砂)の動きは規制されておらず、したがって液状化の発生を防ぐことができない。このようにその外側で液状化現象(土砂の流動化)が生じると、壁状地盤改良体は、その外側(周囲)における地盤による支持力(水平支持力)が著しく低下する。すなわち、地盤中の壁状地盤改良体は、その外側においては液状化によりその支持力ないし締め付け力が極端に低下することになり、水平支持力は大きく低下する。このため、地震発生時には、その外側の地盤の液状化により、壁状地盤改良体、及びこれに包囲された地盤は平面的に大きく揺れ動くことになる。
【0007】
このような揺れ動きがあり、例えば、壁状地盤改良体が平面視矩形であると、壁状地盤改良体の平面視、周囲において直交する各地中壁のそれぞれに対して、外側から、液状化土砂による水平方向の正の土圧(液状土圧)又は負の土圧が、繰り返し作用することになる。これにより、壁状地盤改良体の平面視、壁と壁とが交差するよう一体的に固結されたコーナ(剛節部)には大きなモーメントが作用する。このモーメントの作用により、該コーナは亀裂や割れが発生しやすく、破損に至り易い。そして、建築物の大きな重量を支持するこのコーナ(柱の位置)が破損すると、そこでの鉛直支持力が大きく低下することから、そのコーナを起点として建築物の傾斜や倒壊等を発生させると考えられる。地盤改良延伸体の下端が、その多含水砂質土層(液状化層)の下の堅固な支持層(非液状化層)まで達しているとしても、壁状地盤改良体におけるこのようなコーナで破損があれば、同様に支持力が失われる。
【0008】
実際、地震被災地のうち、液状化の発生があり、傾斜や倒壊、或いは沈下があった建築物を調べてみると、建築物は、壁状地盤改良体の平面視、周囲(外周)の地中壁と地中壁とが交差するコーナ、又はその近傍において被害が多く見受けられる。また、そのような壁状地盤改良体のコーナ自体には、他より相対的に亀裂や割れ等の損傷が多く発生しているのが実情である。さらに、そのコーナの沈下も多く見受けられる。すなわち、上記した壁状地盤改良体の構造では、その外側において発生する液状化に対しては十分な強度は得られない。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、液状化現象が発生するような場合でも、壁状地盤改良体における平面視、周囲の地中壁のコーナにおける損傷が発生し難い、強固な壁状地盤改良体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、地盤中に地中壁構造で造成された壁状地盤改良体であって、平面視、周囲が矩形、若しくはその他の多角形に、又は複数のコーナを有して連続するように造成されてなる壁状地盤改良体において、
前記周囲における要所をなす複数のコーナ又は全コーナの平面視、外側及び内側に、そのコーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁の壁厚より厚くなるよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、地盤中に地中壁構造で造成された壁状地盤改良体であって、平面視、周囲が矩形、若しくはその他の多角形に、又は複数のコーナを有して連続するように造成されてなる壁状地盤改良体において、
前記周囲における要所をなす複数のコーナ又は全コーナの平面視、内側に、そのコーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁の壁厚より厚くなるよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、地盤中に地中壁構造で造成された壁状地盤改良体であって、平面視、周囲が矩形、若しくはその他の多角形に、又は複数のコーナを有して連続するように造成されてなる壁状地盤改良体において、
前記周囲における要所をなす複数のコーナ又は全コーナの平面視、外側に、そのコーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁の壁厚より厚くなるよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記要所は、該壁状地盤改良体の上に建設される建築物の柱が配置される部位に対応する部位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の壁状地盤改良体である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記コーナ補強部位に代えて、前記要所をなす複数のコーナ又は全コーナに、平面視、該コーナの隅角を跨ぐ斜め配置で火打ち状をなすよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地盤改良工法による壁状地盤改良体である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記コーナ補強部位を、前記地中壁の上端又は上端寄り部位に、部分的に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の壁状地盤改良体である。
請求項7に記載の発明は、前記コーナ補強部位を、前記地中壁の下端又は下端寄り部位と、該地中壁の上端又は上端寄り部位との上下間に、連続して設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の壁状地盤改良体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の壁状地盤改良体では、上記したように、要所をなす複数のコーナ又は全コーナに、コーナ補強部位を設けている。このため、地震時に該壁状地盤改良体の外側で液状化現象が発生して、該壁状地盤改良体が水平方向に揺れ動き、コーナに大きなモーメントが作用したとしても、コーナ補強部位を設けているコーナでは、コーナ補強部位が設けられておらず、単に地中壁と地中壁とが交差するよう一体的に固結されただけのコーナ(剛節部)よりも強度が高い。これにより、地震時に該壁状地盤改良体の外側で液状化が発生しても、該改良体ではそのコーナに破損が発生しにくい。この結果、本発明の壁状地盤改良体では、上記したように、コーナ補強部位を設けていることから、その分、このコーナの破損に基づく、建物の傾斜や倒壊等の被害の発生を小さくすることができる、という特有の効果が得られる。前記要所は、該壁状地盤改良体の上に建設される建築物を支持すべき部位の要所であり、柱が配置される部位に対応する部位が代表的箇所である。
【0017】
なお、前記コーナ補強部位は、前記地中壁の下端又は下端寄り部位と、該地中壁の上端又は上端寄り部位との上下間に連続して設けるのが、該コーナの強度化のためには好ましい。一方、当該壁状地盤改良体の外側で液状化現象が発生して、該壁状地盤改良体が水平方向に揺れ動くことによる地中壁のコーナの損傷は、その上端又は上端寄り部位に発生しがちである。このため、前記コーナ補強部位は、前記地中壁の上端又は上端寄り部位に部分的に設けるのが、コスト的にも効率的である。また、前記コーナ補強部位の壁厚は、厚い方が強度アップが図られるため、その上下方向の地中高さは、該コーナ補強部位の壁厚との関係も考慮して設定すればよい。すなわち、コーナ補強部位の強度は、前記コーナ補強部位の壁厚や、その上下方向の地中高さや部位によるが、これらは、軟弱地盤層の土質や深さ、建築物の重量、敷地面積、要求される耐震性等に応じて設定されるべきものだからである。
【0018】
また、本発明では、前記壁状地盤改良体は、それ自身の周囲を形成する地中壁と、それに包囲される内側に、平面視、格子状をなしかつ地中壁構造をなす格子状地盤改良体部位を連接してなるものとするのが、より好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の壁状地盤改良体を具体化した第1実施形態例を模式的に示したもので、Aは平面図、Bは、そのS1−S1線断面図(地中壁で包囲される内側の地盤(土砂)を示すハッチングを省略した縦断面図)。
【図2】第1実施形態例における施工状態を説明する平面図。
【図3】第1実施形態例の変形例を模式的に示した平面図。
【図4】本発明の壁状地盤改良体を具体化した第2実施形態例を模式的に示した平面図。
【図5】本発明の壁状地盤改良体を具体化した第3実施形態例を模式的に示した平面図。
【図6】本発明の壁状地盤改良体を具体化した第4実施形態例を模式的に示した平面図。
【図7】本発明の壁状地盤改良体を具体化した第5実施形態例を模式的に示した平面図。
【図8】本発明の壁状地盤改良体を具体化した第6実施形態例を模式的に示した平面図。
【図9】本発明の壁状地盤改良体の別例を模式的に示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の壁状地盤改良体を具体化した実施形態例(第1実施形態例)について、図1および図2に基づいて詳細に説明する。ただし、本例以下の各実施形態例では、説明を容易とするため、壁状地盤改良体100は、図1のAに示されるように、平面視、その全体が矩形枠形状のものとする。また、図1のBに示されるように、地中壁110の高さ(地面10からの地中深さH1)は、周囲にわたって一定とされて地盤中13に造成されているものとする。さらに、コーナ補強部位131は、本例では、平面視、矩形枠をなす壁状地盤改良体100における4つの全コーナ121〜124のうち、対角方向の2つのコーナ121、123の各内側に、平面視、斜め45度で隅肉が付くように連接して設けられたものとする。すなわち、本例では、矩形枠形状に一体となって固結されて造成されている地中壁110が平面視、交差する形のコーナのうち、対角方向の2つのコーナ121、123の各内側に、三角柱状をなすコーナ補強部位131が一体となって固結され、造成されている。これにより、そのコーナ121、123をなす地中壁110の壁厚は、そのコーナ121、123でない他の部位(平面視、矩形の辺の部位)の地中壁110の壁厚より、例えば、2〜3倍程度、厚く造成されている。なお、地面10は、説明の簡略化のため壁状地盤改良体100をなす地中壁110の上端112と一致させている。また、図1のBでは、平面視、矩形の地中壁110で包囲されるその内側にあるべき地盤(土砂)を示すハッチングを省略しており、図1のAの矢視に対応するコーナ補強部位131、及び地中壁110を図示している。
【0021】
このような本例におけるコーナ補強部位131は、地中壁110の上端112を含むその上端寄り部位に、地面10から適宜の地中深さH2で造成されている。すなわち、コーナ補強部位131は、本例ではその上端112又は上端112を含む上端寄り部位に、部分的に設けられている。ただし、コーナ補強部位131は、この地中壁110の深さ(地中内高さH1)、すなわち、地中壁110の上端112からその下端115までの高さと同じでもよいし、地中壁110の深さH1の半分程度としてもよいなど、要求される強度に応じて任意の高さとすればよい。コーナ補強部位131の高さ(地中内高さ)は、地中壁110の深さ、或いは液状化の発生しやすさ(土質)、要求される地盤強度に応じて決めるべきものだからである。いずれにしても、地中壁110の下端115又は下端寄り部位と、地中壁110の上端112又は上端寄り部位との上下間に、連続して設けるのが好ましい。なお、コーナ補強部位131は、それが深く、その壁厚が厚いほうが、コーナ121、123の強度アップが図られる。
【0022】
本例におけるコーナ補強部位131は、従来における地盤改良体の造成(形成)と同じ、公知の工法(地盤改良工事方法)で、その壁状地盤改良体131を造成する造成工程において、造成すればよい。すなわち、従来における壁状地盤改良体は、例えば、図示はしないが、地盤改良装置の回転ロッドの先端側に設けられた混合攪拌翼を、地面(地表)10から回転させながら地盤中に貫入して上下動させ、ロッド先端からセメント系等のスラリー状の固化材(固結材)を吐出する。そして、当該地盤をなす土砂と、この固化材とを混合攪拌させ、その地盤を円柱状に固結させた柱(杭)状地盤改良体を、その固結前に、平面視、設計に沿って連ねるように次々と施工、造成する。壁状地盤改良体は、こうして地盤中に地中壁を造成することで形成される。
【0023】
したがって、このような地盤改良工法を用いて、上記の壁状地盤改良体100を形成するには、図2に示したように、当該現場の地面(敷地)において、平面視、矩形の設計ラインL1〜L4に沿って、柱状地盤改良体(図2中の円)110aが接するか、一部重なるように、図示しない地盤改良装置の回転ロッドの貫入位置をずらしながら、固結前に繰り返して柱状地盤改良体が列をなすように、次々と柱状地盤改良体(図2中の円)110aが多数、形成されるようにする。そして、この工程において、コーナ121、123に対応する部位を地盤改良するとき、その内側の設計位置において、平面視、コーナ補強部位131が得られるように、周囲の固結前に適宜の回数、柱(杭)状地盤改良体(図2中の円)110aが形成されるように、回転ロッドの貫入、上下動を繰り返すこととすればよい。すなわち、本例では、壁状地盤改良体100の造成過程において、平面視矩形の4つのコーナのうち、対角方向の2つコーナ121,123の内側に、平面視、上記形状のコーナ補強部位131が造成されるように、そのコーナ121,123及びその近傍の固結前に、地盤改良装置の回転ロッドの貫入位置をずらして、そのコーナ補強部位131が得られるように造成すればよい。
【0024】
なお、壁状地盤改良体100を前記工法で形成する場合には、実際には平面視、正確な一定厚さの地中壁110の形成はできない。前記工法で壁厚の精度を高めるためには、平面視、矩形の設計ラインL1〜L4に沿って、各貫入する柱状地盤改良体(円)110aが、なるべく多くの部位で重なるように地盤改良装置の回転ロッドの貫入位置をずらしながら形成する。なお、地中壁110の厚さは、柱状地盤改良体(図2中の円)110aが多くの部位で重なるように1例で列をなすように造成することで、概略その柱状地盤改良体(図2中の円)110aの直径分となってその均一化が図られる。
【0025】
上記例による壁状地盤改良体100では、その矩形の平面視、対角方向の2つの各コーナ121,123の内側に、平面視、斜め45度で隅肉が付くように、コーナ補強部位131が、角をなして交差する各地中壁110に連接して一体的に造成されている。これにより、そのコーナ121,123をなす地中壁110の壁厚が、コーナでない他の部位(矩形の辺をなす部位)の地中壁110の壁厚より、例えば2〜3倍程度に厚く造成されている。このため、この壁状地盤改良体100の上に基礎が造成され、その上に建築物が建造された後において地震により、壁状地盤改良体100の外側(外周)において液状化が発生し、その外側における地中壁110の水平支持力が低下し、水平方向に壁状地盤改良体100が揺れ動いたり、各地中壁110の全体に、その水平方向に液状化した土圧による正、負の力が作用し、これによって、剛節部をなす各コーナ121〜124にモーメントが作用したとしても、従来のように、単に地中壁同士が直角に連なって一体化されている場合に比べると、その破損防止効果が得られる。すなわち、本例では対角方向の2つのコーナ121,123に、それぞれコーナ補強部位131が一体的に設けられている。このため、その分、それがない従来の壁状地盤改良体より、強度アップが図られているから、その分、そのコーナ121,123における亀裂や割れ等の損傷の発生を小さくできる。結果として、壁状地盤改良体100全体の強度アップが図られるため、地震による液状化現象の発生においても、被害を低減できる。
【0026】
なお、図3に示した変形例のように、平面視、矩形の壁状地盤改良体100においても、その各コーナ121〜124の全てにコーナ補強部位131を設けておけば、さらに強度アップが図られる。なお、上記例の壁状地盤改良体100は、平面視、周囲が地中壁110で矩形に連なるでなるもののみを図示しているが、該壁状地盤改良体100は、図3の変形例に示したように、その平面視、内側に、格子状(井桁状)をなしかつ周囲の矩形を呈する地中壁110と連なるように、格子状地盤改良体部位140を連接してもよい。このようにすれば、さらに、壁状地盤改良体100の強度アップが図られるため、液状化対策として有効である。なお、図3の壁状地盤改良体100は、全てのコーナ121〜124にコーナ補強部位131を設けた点と、格子状地盤改良体部位140を連接して設けた点のみが、上記例と異なるだけである。このため、同一の部位には同一の符号を付すに止め、その説明を省略する。以後の各例においても、相違点はコーナ、及びコーナ補強部位のみであるため同様とする。
【0027】
上記例の壁状地盤改良体100では、平面視、矩形の対角方向の2つのコーナ121,123における内側に、コーナ補強部位131を設けたが、第2実施形態例として図4に示した壁状地盤改良体200のように、壁状地盤改良体200の平面視、コーナ121、123の外側に、コーナ補強部位231を設けてもよい。なお、図4では、コーナ121,123の外側に、平面視、そのコーナ121,123より1回り大きいコーナが形成されるようにコーナ補強部位231が造成されているものを例示している。ただし、コーナ補強部位の平面視におけるその形状は、コーナの強度アップが図られるように、コーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁の壁厚より厚くなるように造成されていればよい。したがって、第3実施形態例として図5に示した壁状地盤改良体300のように、コーナ121,123の外側において、平面視、円弧状をなすようにコーナ補強部位331が造成されていてもよいなど、その平面形状は限定されるものではない。これは、コーナの内側にコーナ補強部位を造成する場合でも同じである。
【0028】
また、上記各例では、コーナ補強部位を、コーナの内側、又は外側において、そのコーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位(コーナとコーナの間)の地中壁の壁厚より厚く造成してなるものを例示したが、このコーナ補強部位は、上記各例においても、コーナの内側及び外側(の双方)において造成してもよい。このようにすれば、該コーナは一層強度アップが図られる。なお、コーナ補強部位をコーナの内側において造成した第1実施形態例においては、コーナ補強部位131を平面視、地中壁110が交差するコーナ121,123の内側において斜め45度で隅肉が付くように設けられている場合を例示したが、これについても、その形態は任意のものとすることができるのは前記したとおりである。例えば、第4実施形態例として図6に示した壁状地盤改良体400のように、平面視、コーナ121,123を含むその内側部位が、矩形、又は正方形となるように、平面視、四角をなすコーナ補強部位431として造成してもよい。なお、上記第2実施形態例〜第4実施形態例においても、平面視、全コーナにコーナ補強部位を設けてもよい。また、第5実施形態例として図7に示した壁状地盤改良体500のように、平面視、対角方向の2つのコーナ121,123相互間が連なるようにコーナ補強部位531を設けることもできる。このようにすれば、さらに強度アップが図られる。小規模建築物において好適である。すなわち、コーナ121,123の内側に、コーナ補強部位を設ける場合には、それらが連なるものとして造成してもよい。
【0029】
さらに、本発明では、第6実施形態例として図8に示した壁状地盤改良体600のように、コーナ補強部位631を、平面視、該コーナ121,123の内側において、その隅角を跨ぐ斜め配置で、いわば、地中において、平面視、コーナ121,123に火打ち状をなすよう造成して設けてもよい。これにより、そのコーナ121,123の地中壁110の壁厚は、他の部位の壁厚と変わらないものの、火打ち状のコーナ補強部位631を設けた分、コーナの強度アップが図られている。この場合、図8に示したように、上記各例と同様に、対角方向の各コーナ121,123に設けるだけでもよいが、全コーナに設けた方がより強度アップが図られる。なお、このような火打ち状をなすよう造成されたコーナ補強部位631とする場合においても、その深さ(地中内高さ)は、地中壁110の高さと同じとするのが、一層強度アップが図られる。ただし、コーナの破損は、地中壁110の上端を含む上端寄り部位に多く発生することから、その上端、又は上端を含む上端寄り部位に、適宜の深さで造成するのが効率的である。
【0030】
本発明に係る壁状地盤改良体は、上記した各例のものに限定されるものではなく、適宜に、変更して具体化できる。また、上記各例では、説明を容易とするため、平面視における周囲が、矩形又は正方形をなす壁状地盤改良体において説明したが、これより複雑形状をなす多角形のものにおいても同様に適用できる。例えば、図9に示した壁状地盤改良体700のように、平面視、周囲の地中壁110が、変則的な多角形(例えば、L型)をなすものでは、平面視、外向きに凹となすコーナ125を有する。このような場合でも、凹となすコーナ125を含む全コーナ121〜125にコーナ補強部位731を造成するのが、強度アップ上、好ましいといえるが、適宜の要所をなすコーナにコーナ補強部位731を造成することとしてもよい。そして、その凹となすコーナ125においては、図9に示したように、地中壁110の周囲の凹となす外側にコーナ補強部位731を造成してもよいし、その周囲の内側に造成してもよい。すなわち、本発明における壁状地盤改良体におけるコーナは、壁状地盤改良体の平面視、外向き(外周向き)凸となすものに限られず、外向き凹となすものも含まれる。そして、外向き凸となすコーナ、又は外向き凹となすコーナも含め、その各コーナの全ての、内側及び外側に、或いはその内側又は外側のすべてにコーナ補強部位を設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
13 地盤中
110 地中壁
100、200、300、400、500、600、700 壁状地盤改良体
112 地中壁の上端
115 地中壁の下端
121、122、123、124、125 コーナ
131、231、331、431、531、631、731 コーナ補強部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に地中壁構造で造成された壁状地盤改良体であって、平面視、周囲が矩形、若しくはその他の多角形に、又は複数のコーナを有して連続するように造成されてなる壁状地盤改良体において、
前記周囲における要所をなす複数のコーナ又は全コーナの平面視、外側及び内側に、そのコーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁の壁厚より厚くなるよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする壁状地盤改良体。
【請求項2】
地盤中に地中壁構造で造成された壁状地盤改良体であって、平面視、周囲が矩形、若しくはその他の多角形に、又は複数のコーナを有して連続するように造成されてなる壁状地盤改良体において、
前記周囲における要所をなす複数のコーナ又は全コーナの平面視、内側に、そのコーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁の壁厚より厚くなるよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする壁状地盤改良体。
【請求項3】
地盤中に地中壁構造で造成された壁状地盤改良体であって、平面視、周囲が矩形、若しくはその他の多角形に、又は複数のコーナを有して連続するように造成されてなる壁状地盤改良体において、
前記周囲における要所をなす複数のコーナ又は全コーナの平面視、外側に、そのコーナをなす地中壁の壁厚が、コーナでない他の部位の地中壁の壁厚より厚くなるよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする壁状地盤改良体。
【請求項4】
前記要所は、該壁状地盤改良体の上に建設される建築物の柱が配置される部位に対応する部位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の壁状地盤改良体。
【請求項5】
前記コーナ補強部位に代えて、前記要所をなす複数のコーナ又は全コーナに、平面視、該コーナの隅角を跨ぐ斜め配置で火打ち状をなすよう造成されたコーナ補強部位を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地盤改良工法による壁状地盤改良体。
【請求項6】
前記コーナ補強部位を、前記地中壁の上端又は上端寄り部位に、部分的に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の壁状地盤改良体。
【請求項7】
前記コーナ補強部位を、前記地中壁の下端又は下端寄り部位と、該地中壁の上端又は上端寄り部位との上下間に、連続して設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の壁状地盤改良体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113048(P2013−113048A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262382(P2011−262382)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(594140018)
【Fターム(参考)】